特許第6484735号(P6484735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484735
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】月相のディスプレーデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/26 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   G04B19/26 A
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-29447(P2018-29447)
(22)【出願日】2018年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-155739(P2018-155739A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2018年2月22日
(31)【優先権主張番号】17161916.6
(32)【優先日】2017年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・ロバン
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−054496(JP,A)
【文献】 特開平02−099886(JP,A)
【文献】 特許第3004364(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/00
G04B 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
月相のディスプレーデバイス(1)であって、
− 4つのリング部分(3)を有し、その2つの連続するリング部分(3)どうしが、当該環状のカバー(2)の内側の方に半径方向に突き出ている凸状のローブ(4)によって分けられている環状のカバー(2)と、
− 月インジケーターディスク(6)と、
− 前記月インジケーターディスクが2つの連続するローブ(4)の間にてサイクロイド状軌道(19)を描くように前記月インジケーターディスク(6)を動かすように構成している駆動手段と
を有し、
これによって、前記月インジケーターディスク(6)が、前記サイクロイド状軌道(19)の1つの部分の間に、前記2つの連続するローブ(4)のそれぞれによって少なくとも部分的に隠されて、1太陰月における月相を再現する
ことを特徴とするディスプレーデバイス(1)。
【請求項2】
前記環状のカバーには中心(9)があり、
前記駆動手段は、アーム(12)を有し、このアーム(12)は、
− 前記環状のカバー(2)の前記中心(9)を通り抜ける第1の回転軸(14)のまわりに回転可能に動くことができるように構成している第1の端(13)と、
− 第2の端(15)と
を有し、
前記月インジケーターディスク(6)は、前記アームの前記第2の端(15)を通り抜ける第2の回転軸(16)のまわりの回転運動をするように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレーデバイス(1)。
【請求項3】
前記駆動手段は、
− 内側歯列(8)がある環状のクラウン(7)と、
− 前記環状のクラウン(7)の前記内側歯列(8)と噛み合う外側歯列(21)を備えるピニオン(11)と
を有し、前記アーム(12)の前記第2の端(15)は、前記ピニオンが前記第2の回転軸(16)のまわりを回転可能に動くことができるように前記ピニオン(11)に接続されており、
前記月インジケーターディスク(6)は、前記ピニオンの偏心位置に固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のディスプレーデバイス。
【請求項4】
前記第1の回転軸(14)のまわりに前記アーム(12)を回転駆動するように構成している伝達手段を有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のディスプレーデバイス。
【請求項5】
前記伝達手段は、前記アーム(12)が4太陰月の間に前記第1の回転軸(14)のまわりに完全に1回転をするように構成している
ことを特徴とする請求項4に記載のディスプレーデバイス。
【請求項6】
前記ローブ(4)はそれぞれ、前記月インジケーターディスク(6)の直径と同じ直径の丸まっている形を有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディスプレーデバイス。
【請求項7】
前記カバー(2)と前記月インジケーターディスク(6)は、前記2つの連続するローブ(4)の間に前記月インジケーターディスク(6)が同時に前記2つの連続するローブ(4)に接するような位置があるような大きさを有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のディスプレーデバイス。
【請求項8】
前記リング部分(3)のそれぞれは、円弧状である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレーデバイス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のディスプレーデバイス(1)を有する
ことを特徴とする計時器。
【請求項10】
前記環状のカバーは、当該計時器の表盤である
ことを特徴とする請求項9に記載の計時器。
【請求項11】
針(18)を有し、
前記針(18)と前記月インジケーターディスク(6)の間に表盤が配置されている
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球の表面上の所定の地点において見ることができる現在の月相をディスプレーするデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、多くの月相のディスプレーデバイス、特に、腕時計に組み入れられたもの、がある。
【0003】
例えば、欧州特許EP2392976は、月ディスクと、実質的に半円形の開口がある表盤とを有するデバイスを開示している。月ディスクは、月相を示すように開口を通して月ディスクにマークされたインジケーションをディスプレーするように回転駆動される。この機構は、月ディスクと表盤の間にて回転可能に収容された第1の掩蔽ディスクと、及びその第1の掩蔽ディスクを駆動する駆動列とを有する。これによって、月ディスクにマークされたインジケーションが当該機構の特定の動作位相のときに少なくとも部分的に見えなくなり、開口を通して現われるインジケーションが、月期の期間を通して月の自然な外観に対応するようになる。
【0004】
スイス特許CH706094は、軸がある表盤と、月インジケーターと、変動する角度に応じて月インジケーターを隠すように配置されるカバーと、及び月インジケーターを回転させて動かせる月インジケーターのための第1の回転駆動手段とを有する月相のディスプレーデバイスを開示している。
【0005】
これらのデバイスは、月の外観をうまく再現することができている。しかし、それらは複雑であり厚みが厚い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術のものよりも単純であり厚みが薄い月相のディスプレーデバイスを提案することによって最先端技術の課題を克服することを目的とする。
【課題を解決する手段】
【0007】
これを達成するために、本発明の第1の態様によって、
月相のディスプレーデバイスであって、
− 4つのリング部分を有し、その2つの連続するリング部分どうしが、当該環状のカバーの内側の方に半径方向に突き出ている凸状のローブによって分けられている環状のカバーと、
− 月インジケーターディスクと、
− 前記月インジケーターディスクが2つの連続するローブの間にてサイクロイド状軌道を描くように前記月インジケーターディスクを動かすように構成している駆動手段と
を有し、
これによって、前記月インジケーターディスクが、前記サイクロイド状軌道の1つの部分の間に、前記2つの連続するローブのそれぞれによって少なくとも部分的に隠されて、1太陰月における月相を再現するものが提案される。
【0008】
このようにして、月インジケーターディスクは、前記ディスプレーデバイスが1回の公転を完了する間に4つのサイクロイド状軌道を描く。各サイクロイド状軌道において、前記月インジケーターディスクは、ローブによって完全に隠されている位置から開始する。この位置は、新月を表す。そして、前記月インジケーターディスクは、サイクロイド状軌道の中間位置まで、徐々に見えるようにされる。前記月インジケーターディスクがサイクロイド状軌道の中間位置にあるときには、前記月インジケーターディスクは、もはやローブによって隠されておらず、満月を表すようになっている。そして、前記月インジケーターディスクはサイクロイド状軌道上を続行し、次のローブによって徐々に見えなくなり、その後に再び完全に隠れる。
【0009】
本発明の第1の態様に係るディスプレーデバイスは、さらに、個別に選択され又は技術的に可能なすべての組み合わせで選択される以下の特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0010】
好ましいことに、前記環状のカバーには中心があり、前記駆動手段は、アームを有し、このアームは、
− 前記環状のカバーの中心を通り抜ける第1の回転軸のまわりに回転可能に動くことができるように構成している第1の端と、
− 第2の端と
を有し、前記月インジケーターディスクは、前記アームの前記第2の端を通り抜ける第2の回転軸のまわりの回転運動をするように構成している。
【0011】
このようにして、以下の二重回転運動によって、月インジケーターディスクがサイクロイド状軌道を描く。すなわち、当該アームは、第1の回転軸のまわりの第1の回転運動をし、かつ、月インジケーターディスクは、アームの一端を通り抜ける第2の回転軸のまわりの第2の回転運動をする。
【0012】
好ましいことに、前記駆動手段は、さらに、
− 内側歯列がある環状のクラウンと、
− 環状のクラウンの内側歯列と噛み合う外側歯列を備えるピニオンと
を有し、このピニオンには、このピニオンが第2の回転軸のまわりを回転可能に動くことができるように、アームの第2の端が接続されている。前記月インジケーターディスクは、ピニオンの偏心位置に固定されている。
【0013】
好ましいことに、各ローブは、前記月インジケーターディスクの直径と同じ直径の丸まっている形を有しており、前記月インジケーターディスクがローブの裏にあるときに、ローブが前記月インジケーターディスクを完全に隠す。また、ディスクの中心がローブの中心に対してずれるとディスクはすぐに見えるようになる。
【0014】
好ましいことに、前記カバーと前記月インジケーターディスクは、2つの連続するローブの間に、前記月インジケーターディスクがその2つの連続するローブに同時に接する位置があるような大きさを有する。この位置は満月に対応している。
【0015】
好ましいことに、リング部分はそれぞれ、円弧の形を有する。
【0016】
好ましいことに、当該ディスプレーデバイスは、さらに、前記第1の回転軸のまわりにてアームを回転駆動するように構成している伝達手段を有する。
【0017】
好ましいことに、前記伝達手段は、前記アームが4太陰月に前記第1の回転軸のまわりの完全な1回の公転をするように構成している。
【0018】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係るディスプレーデバイスを有する計時器に関する。
【0019】
好ましいことに、前記環状のカバーは、計時器の表盤である。
【0020】
好ましいことに、前記伝達手段は、当該計時器の計時器用ムーブメントに接続している。
【0021】
好ましいことに、当該計時器は針を有し、針と月インジケーターディスクの間に表盤が配置されている。
【0022】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の説明において他の特徴及び利点が明確に記載されている。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の1つの実施形態によるディスプレーデバイスの概略図である。
図2】本発明の1つの実施形態による腕時計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1及び2を参照しながら、ディスプレーデバイス1及びこのようなディスプレーデバイスを有する腕時計について説明する。
【0025】
ディスプレーデバイス1はカバー2を有する。このカバー2は環状である。環状のカバー2は、その中心9に対して回転対称である。カバー2は4つのリング部分3を有する。2つの連続するリング部分3どうしは、カバー2の内側の方に半径方向に突き出ている凸状のローブ4によって分けられている。ローブ4は、好ましくは、リング部分3がすべて同じ長さを有するようにカバー2の周部にわたって均等に分布している。
【0026】
カバー2は、好ましくは、図2に示すような腕時計の表盤を形成する。ローブ4は、好ましくは、3時、6時、9時、12時の位置に配置されている。
【0027】
カバー2には、好ましくは、印5がある。印5はそれぞれ、好ましくは、図2に示すようなローブ4と整列している。
【0028】
当該ディスプレーデバイスは、さらに、月を表すディスク6を有する。このディスク6は、本出願書類において、「月インジケーターディスク」とも呼ぶ。このディスク6は、カバー2の裏を動くことによって4太陰月の間の月相を表すことができる。このディスク6には、好ましくは、月の見える側の面を表すデザインが施されている。
【0029】
当該ディスプレーデバイスは、2つの連続するローブ4の中心20の間にてサイクロイド状の軌跡19を描く運動を行うようにディスク6を動かすように構成している駆動手段を有する。
【0030】
これらの駆動手段は、好ましくは、内側歯列8があるクラウン7を有する。クラウン7は、環状のカバー2の中心9に重なり合った中心点を中心とする環状の幾何学的構成を有する。
【0031】
駆動手段は、さらに、クラウン7の内側歯列8と噛み合う外側歯列21を備えるピニオン11を有する。
【0032】
また、駆動手段は、アーム12を有する。アーム12は、環状のカバー2の中心を通り抜ける第1の回転軸14のまわりを回転可能に動くことができるように構成している第1の端13を有する。アーム12は、さらに、アーム12が第2の回転軸16のまわりを回転可能に動くことができるようにピニオン11に固定された第2の端15を有する。第2の回転軸16は、ピニオン11の中心を通り抜けて、アームの第2の端15を貫通する。
【0033】
月を表すディスク6は、その中心が第2の回転軸16のまわりも回転するように固定される。この目的のために、ディスク6は、好ましくは、ピニオン11に固定される。特に、ディスク6の中心17は、好ましくは、ピニオン11の偏心位置にて固定される。このようにして、ディスク6の中心とピニオン11の中心は、互いに対してずれている。
【0034】
アーム12が第1の回転軸14のまわりを回転駆動されるとき、アーム12は、ピニオン11を回転駆動する。このピニオン11は、クラウン7の内側歯列8に噛み合いながら第2の回転軸16のまわりを回転する。このようにして、ディスク6は、第2の回転軸16のまわりに回転駆動される。第2の回転軸16が第1の回転軸14のまわりの回転運動をするので、ディスク6の中心はサイクロイド状軌道19を描く。各サイクロイド状軌道19は、1つのローブ4の中心20から次のローブ4の中心20までを範囲とする。アーム12が第1の回転軸14のまわりに完全な1回の公転をしたときには、図1に示すように、ディスク6は4つのサイクロイド状軌道19を描く。
【0035】
各サイクロイド状軌道19の間、ディスク6は、ディスクが動くそのサイクロイド状軌道19の両側のローブ4によって、隠される度合いが変動するように隠される。
【0036】
特に、各サイクロイド状軌道19を開始するときには、ディスク6は、第1のローブ4の裏で完全に隠されている。この位置は新月を表している。各サイクロイド状軌道上において、ディスク6がサイクロイド状軌道19の中間位置に達するまで、ディスク6が前進するほど、ディスクの部分が多く見えるようになる。各サイクロイド状軌道の中間位置において、図1に示すように、ディスク6は完全に見えるようにされる。この位置では、ディスク6は、好ましくは、ディスク6のまわりにある2つのローブ4に接する。この位置は満月を表している。
【0037】
そして、ディスク6は、次のローブ4によって、このディスク6がこの新しい次のローブ4によって完全に隠される位置に再び達するまで、徐々に隠される。
【0038】
第1の回転軸14のまわりのアーム12の回転速度は、ディスク6が1太陰月の間に1つのサイクロイド状軌道19を描くことを完了させるように選ばれる。
【0039】
好ましくは、当該ディスプレーディスクが計時器に組み入れられるので、アーム12は、好ましくは、計時器用ムーブメントによって回転駆動される。第1の回転軸14は、好ましくは、計時器の針18の回転軸と一致している。
【0040】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱せずにいくつもの変形態様を想到することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ディスプレーデバイス
2 環状のカバー
3 リング部分
4 ローブ
5 印
6 月インジケーターディスク
7 環状のクラウン
8 内側歯列
9 環状のカバーの中心
11 ピニオン
12 アーム
13 第1の端
14 第1の回転軸
15 第2の端
16 第2の回転軸
17 月を表すディスクの中心
18 針
19 サイクロイド状軌道
図1
図2