特許第6484744号(P6484744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6484744-タンパク質検出方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484744
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】タンパク質検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20190304BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20190304BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20190304BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20190304BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G01N27/327 357
   G01N33/543 525U
   G01N33/543 525E
   G01N33/483 F
   G01N27/416 336B
   G01N27/416 336G
   G01N27/30 F
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-83176(P2018-83176)
(22)【出願日】2018年4月24日
(62)【分割の表示】特願2016-33918(P2016-33918)の分割
【原出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2018-138926(P2018-138926A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年4月24日
(31)【優先権主張番号】61/431,786
(32)【優先日】2011年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501318567
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャゴタモイ ダス
(72)【発明者】
【氏名】シャナ オー. ケリー
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005-241537(JP,A)
【文献】 特開2005-164388(JP,A)
【文献】 特表2012-501433(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/025547(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/032901(WO,A1)
【文献】 YeoHeung Yun et al.,A nanotube array immunosensor for direct electrochemical detection of antigen-antibody binding,Sensors and Actuators B,2007年,Vol.123,p.177-182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原の電気化学的検出のための方法であって、該方法は、
第1のリンカーを表面に含む第1の微小電極および第2のリンカーを表面に含む第2の微小電極を、レドックスレポーターと、そして、該抗原およびタンパク質分析物を含むサンプルと接触させる工程であって、該タンパク質分析物は該抗原とは異なり;該第1のリンカーは、該サンプルの該抗原を結合し得る第1の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられており、該第2のリンカーは、該サンプルの該タンパク質分析物を結合し得る第2の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられており、
ここで、該第1の抗体もしくはそのフラグメントへの該抗原の結合が、該レドックスレポーターと該第1の微小電極の間の電子移動を妨げ、該第1の微小電極は、100ミクロンまたはそれ未満の直径を有し、該第1の微小電極は、該抗原について、0.1U/ml〜10U/mlの検出限界を有する、工程;
該第1の微小電極および該第2の微小電極に電位を印加する工程;
該印加された電位に応答して、該第1の微小電極によって生成される第1の電気化学的シグナルおよび該第2の微小電極によって生成される第2の電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに
該第1の電気化学的シグナルと第1のコントロールシグナル、そして、該第2の電気化学的シグナルと第2のコントロールシグナル、を比較する工程;
を包含し、ここで、該第1のコントロールシグナルと比較して検出した該第1の電気化学的シグナルの変化は、該サンプル中の該抗原の存在を示し、該第2のコントロールシグナルと比較して検出した該第2の電気化学的シグナルの変化は、該サンプル中の該タンパク質分析物の存在を示す、方法。
【請求項2】
前記第1の微小電極および前記第2の微小電極はともに、微小作製チップ上に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の微小電極は、抗体標識された前記第1の微小電極に対する参照コントロールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抗原の電気化学的検出のための方法であって、該方法は、
第1のリンカーを表面に含む第1のナノ構造の微小電極および第2のリンカーを表面に含む第2のナノ構造の微小電極を、レドックスレポーターと、そして、該抗原およびタンパク質分析物を含むサンプルと接触させる工程であって、該タンパク質分析物は該抗原とは異なり;該第1のリンカーは、該サンプルの該抗原を結合し得る第1の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられており、該第2のリンカーは、該サンプルの該タンパク質分析物を結合し得る第2の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられており、
ここで、該第1の抗体もしくはそのフラグメントへの該抗原の結合が、該レドックスレポーターと該第1のナノ構造の微小電極の間の電子移動を妨げ、該第1のナノ構造の微小電極は、100ミクロンまたはそれ未満の直径を有し、該第1のナノ構造の微小電極は、該抗原について、0.1U/ml〜10U/mlの検出限界を有する、工程;
該第1のナノ構造の微小電極および該第2のナノ構造の微小電極に電位を印加する工程;
該印加された電位に応答して、該第1のナノ構造の微小電極によって生成される第1の電気化学的シグナルおよび該第2のナノ構造の微小電極によって生成される第2の電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに
該第1の電気化学的シグナルと第1のコントロールシグナル、そして、該第2の電気化学的シグナルと第2のコントロールシグナル、を比較する工程;
を包含し、ここで、該第1のコントロールシグナルと比較して検出した該第1の電気化学的シグナルの変化は、該サンプル中の該抗原の存在を示し、該第2のコントロールシグナルと比較して検出した該第2の電気化学的シグナルの変化は、該サンプル中の該タンパク質分析物の存在を示す、方法。
【請求項5】
前記第1のナノ構造の微小電極と前記第2のナノ構造の微小電極は、微小作製チップ上に作製される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のナノ構造の微小電極は、前記第1のナノ構造の微小電極に対する参照コントロールである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のナノ構造の微小電極は、第1の微小作製チップ上に作製され、前記第2のナノ構造の微小電極は、第2の微小作製チップ上に作製される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質分析物が、豊富な血清タンパク質を含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2011年1月11日に出願された米国仮出願第61/431,786号の利益を主張し、上記米国仮出願第61/431,786号は、その全容が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
臨床サンプル中のタンパク質レベルの高感度かつ簡単な測定のためのプラットフォームの開発は、疾患診断におけるタンパク質バイオマーカーのより広い使用を促進する重要なゴールである。有用な情報を提供するために、検出スキームは、高レベルの特異性、低い検出限界、ならびに血液および血清のような生物学的液体中での堅調な性能を示さねばならない。がんおよび他の疾患に関して、複数のタンパク質の特性の発生を考慮すると、多重化はまた、価値ある特徴である。内部コントロールおよび外部コントロール、ならびに標準物質(正確な診断アッセイの開発に重要である)を含めることはまた、多重化を必要とする。
【0003】
種々の高性能タンパク質検出プラットフォームが開発中であり、最も特異的かつ高感度のもののうちの多くは、それらの感知スキームにおいてマイクロおよびナノ材料を使用する。電気化学的読み取りとともに使用されるバーコード処理されたナノ粒子、ナノワイヤトランジスタ、酵素標識ビーズ、および微小流体イムノアレイは全て、バイオマーカー分析器の開発が有望であることを示す。しかし、コスト効率的で十分堅調(臨床使用に関して)である単純な分析システムの開発に関する難題は未だに残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
タンパク質分析物を電気化学的に検出するための検出システムが、本明細書において提供される。一局面において、上記検出システムは、リンカーを表面に含む電極(ここで上記リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている);およびレドックスレポーターを含む。
【0005】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの実施形態において、上記リンカーは、直接的にもしくは間接的に上記抗体もしくはそのフラグメントに連結し得る官能基を含む。他の実施形態において、上記リンカーは、官能性アミン基を含む。さらに他の実施形態において、上記リンカーは、官能性カルボン酸基を含む。さらなる実施形態において、上記リンカーは、シスタミン、システアミン、メルカプトプロピオン酸もしくは4−アミノチオフェノールである。なおさらなる実施形態において、上記リンカーは、第2のリンカーを介して上記抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている。いくつかの場合において、上記第2のリンカーは、グルタルアルデヒドもしくはホルムアルデヒドである。さらなる実施形態において、上記リンカーは、抗体もしくはそのフラグメントの複数コピーに結合させられている。
【0006】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの実施形態において、上記抗体もしくはそのフラグメントは、ポリクローナル抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体、CDRペプチドおよびダイアボディーからなる群より選択される。
【0007】
本明細書におけるシステムのいくつかの実施形態において、上記レドックスレポーターは、電位が印加される場合に、上記電極で電気化学的シグナルを生成し得る。他の実施形態において、上記レドックスレポーターは、ファラデー電流を生成する。さらに他の実施形態において、上記レドックスレポーターは、界面電子移動する能力がある。さらなる実施形態において、上記レドックスレポーターは、フェリシアニド/フェロシアニドもしくはフェロセンである。なおさらなる実施形態において、上記レドックスレポーターは、ヘキサクロロイリデート(IV)/ヘキサクロロイリデート(III)である。
【0008】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの実施形態において、上記電極は、貴金属である。他の実施形態において、上記電極は、炭素である。さらに他の実施形態において、上記電極は、酸化インジウムスズである。さらなる実施形態において、上記電極は、金、パラジウムもしくは白金である。
【0009】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの実施形態において、上記電極は、微小電極である。本明細書に提供されるシステムの特定の実施形態において、上記電極は、ナノ構造の微小電極である。いくつかの実施形態において、上記電極は、約500ミクロン未満である。他の実施形態において、上記電極は、約250ミクロン未満である。さらに他の実施形態において、上記電極は、約100ミクロン未満である。さらに他の実施形態において、上記電極は、約5〜約50ミクロンである。さらなる実施形態において、上記電極は、約10ミクロン未満である。さらなる実施形態において、上記電極は、微小作製チップ(microfabricated chip)上にある。さらなる実施形態において、基材上に配列された複数の電極が存在する。
【0010】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの実施形態において、上記タンパク質分析物は、疾患、障害もしくは状態のバイオマーカーである。いくつかの場合において、上記バイオマーカーは、がんバイオマーカーである。特定の場合において、上記バイオマーカーは、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、α−フェトプロテイン、β−2ミクログロブリン、膀胱腫瘍抗原、がん抗原15−3、がん抗原19−9、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、がん抗原72−4、がん抗原125(CA−125)、カルシトニン、がん胎児性抗原、EGFR、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、神経特異的エノラーゼ、NMP22、サイログロブリン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、S−100、およびTA−90、またはこれらの一部、バリエーションもしくはフラグメントからなる群より選択される。さらなる場合において、上記バイオマーカーは、StaphylococcusもしくはStreptococcus細菌感染のバイオマーカーである。
【0011】
タンパク質分析物を電気化学的に検出するための方法もまた、本明細書において提供される。一局面において、上記方法は、リンカーを表面に含む電極と、サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで上記リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、工程;電位が印加される場合に、上記抗体標識された電極および上記レドックスレポーターによって生成される電気化学的シグナルを測定する工程;上記電気化学的シグナルと、タンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルとを比較する工程;を包含し、ここでタンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルと比較して検出された上記シグナルの変化は、上記サンプル中の上記タンパク質分析物の存在を示す。
【0012】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態において、上記リンカーは、直接的にもしくは間接的に上記抗体もしくはそのフラグメントに連結し得る官能基を含む。他の実施形態において、上記リンカーは、官能性アミン基を含む。さらに他の実施形態において、上記リンカーは、官能性カルボン酸基を含む。さらなる実施形態において、上記リンカーは、シスタミン、システアミン、メルカプトプロピオン酸もしくは4−アミノチオフェノールである。なおさらなる実施形態において、上記リンカーは、第2のリンカーを介して、上記抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている。いくつかの場合において、上記第2のリンカーは、グルタルアルデヒドもしくはホルムアルデヒドである。さらなる実施形態において、上記リンカーは、抗体もしくはそのフラグメントの複数コピーと結合させられている。
【0013】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、上記抗体もしくはそのフラグメントは、ポリクローナル抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体、CDRペプチドおよびダイアボディーからなる群より選択される。
【0014】
本明細書中のシステムのいくつかの実施形態において、上記レドックスレポーターは、ファラデー電流を生成する。他の実施形態において、上記レドックスレポーターは、界面電子移動する能力がある。さらなる実施形態において、上記レドックスレポーターは、フェリシアニド/フェロシアニドもしくはフェロセンである。なおさらなる実施形態において、上記レドックスレポーターは、ヘキサクロロイリデート(IV)/ヘキサクロロイリデート(III)である。
【0015】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、上記電極は、貴金属である。他の実施形態において、上記電極は、炭素である。さらに他の実施形態において、上記電極は、酸化インジウムスズである。さらなる実施形態において、上記電極は、金、パラジウムもしくは白金である。
【0016】
本明細書で提供される方法の特定の実施形態において、上記電極は、ナノ構造の微小電極である。他の実施形態において、上記電極は、約100ミクロン未満である。さらに他の実施形態において、上記電極は、約5〜約50ミクロンである。さらなる実施形態において、上記電極は、約10ミクロン未満である。さらなる実施形態において、上記電極は、微小作製チップ上にある。
【0017】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、上記タンパク質分析物は、疾患、障害もしくは状態のバイオマーカーである。いくつかの場合において、上記バイオマーカーは、がんバイオマーカーである。特定の場合において、上記バイオマーカーは、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、α−フェトプロテイン、β−2ミクログロブリン、膀胱腫瘍抗原、がん抗原15−3、がん抗原19−9、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、がん抗原72−4、がん抗原125(CA−125)、カルシトニン、がん胎児性抗原、EGFR、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、神経特異的エノラーゼ、NMP22、サイログロブリン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、S−100、およびTA−90、またはこれらの一部、バリエーションもしくはフラグメントからなる群より選択される。さらなる場合において、上記バイオマーカーは、StaphylococcusもしくはStreptococcus細菌感染のバイオマーカーである。
【0018】
複数のタンパク質分析物の多重化電気化学的検出のための方法もまた、本明細書で提供される。一局面において、上記方法は、リンカーを表面に含む第1の電極と、サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで上記リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る第1の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、工程;電位が印加される場合に、上記第1の抗体標識された電極および上記レドックスレポーターによって生成される第1の電気化学的シグナルを測定する工程;表面にリンカーを含む第2の電極と、サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで上記リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る第2の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、工程;電位が印加される場合に、上記第2の抗体標識された電極および上記レドックスレポーターによって生成される第2の電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに上記第1および第2の電気化学的シグナルと、タンパク質分析物を含まないコントロールサンプルにおいて上記第1および第2の抗体標識された電極によって生成されるそれぞれのシグナルとを比較する工程;を包含し、ここでタンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのそれぞれのシグナルと比較して検出された上記第1および第2の電気化学的シグナルの変化は、上記サンプル中の上記タンパク質分析物の存在を示す。
【0019】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、上記第1および第2の電極はともに、微小作製チップ上にある。他の実施形態において、上記第1および第2の電極は、異なる微小作製チップ上にある。
【0020】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、上記第2の抗体標識された電極は、上記第1の抗体標識された電極に対する参照コントロールである。他の実施形態において、上記第2の抗体標識された電極は、豊富な血清タンパク質を検出する。
【0021】
がんを有する被験体における進行もしくは応答をモニターするための方法もまた、本明細書において提供される。一局面において、上記方法は、上記被験体から生物学的サンプルを得る工程;リンカーを表面に含む電極と、上記サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで上記リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられており、上記抗体もしくはそのフラグメントは、タンパク質分析物に結合する、工程;電位が印加される場合に、上記抗体標識された電極および上記レドックスレポーターによって生成される電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに上記電気化学的シグナルと、タンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルとを比較する工程;を包含し、ここでタンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルと比較して検出された上記シグナルの変化は、上記サンプル中の上記タンパク質分析物の存在を示す。
【0022】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、上記タンパク質分析物は、疾患、障害もしくは状態のバイオマーカーである。いくつかの場合において、上記バイオマーカーは、がんバイオマーカーである。特定の場合において、上記バイオマーカーは、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、α−フェトプロテイン、β−2ミクログロブリン、膀胱腫瘍抗原、がん抗原15−3、がん抗原19−9、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、がん抗原72−4、がん抗原125(CA−125)、カルシトニン、がん胎児性抗原、EGFR、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、神経特異的エノラーゼ、NMP22、サイログロブリン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、S−100、およびTA−90、またはこれらの一部、バリエーションもしくはフラグメントからなる群より選択される。さらなる場合において、上記バイオマーカーは、StaphylococcusもしくはStreptococcus 細菌感染のバイオマーカーである。
【0023】
タンパク質分析物の電気化学的検出のためのキットもまた、本明細書で提供される。一局面において、上記キットは、リンカーを表面に含む電極であって、ここで上記リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、電極;および電位が印加される場合に、上記電極で電気化学的シグナルを生成し得るレドックスレポーターを含む。
【0024】
(参考としての援用)
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、もしくは特許出願が、具体的かつ個々に参考として援用されることが示されるのと同程度まで、本明細書に参考として援用される。
例えば、本明細書は、以下の項目を提供する。
(項目1)
タンパク質分析物を電気化学的に検出するための検出システムであって、該検出システムは、
表面にリンカーを含む電極であって、ここで該リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、電極;および
レドックスレポーター
を含む、検出システム。
(項目2)
上記リンカーは、上記抗体もしくはそのフラグメントに直接的にもしくは間接的に連結し得る官能基を含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
上記リンカーは、官能性アミン基を含む、項目1に記載のシステム。
(項目4)
上記リンカーは、官能性カルボン酸基を含む、項目1に記載のシステム。
(項目5)
上記リンカーは、シスタミン、システアミン、メルカプトプロピオン酸もしくは4−アミノチオフェノールである、項目1に記載のシステム。
(項目6)
上記リンカーは、第2のリンカーを介して上記抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、項目1に記載のシステム。
(項目7)
上記第2のリンカーは、グルタルアルデヒドもしくはホルムアルデヒドである、項目6に記載のシステム。
(項目8)
上記リンカーは、抗体もしくはそのフラグメントの複数のコピーと結合させられている、項目1に記載のシステム。
(項目9)
上記抗体もしくはそのフラグメントは、ポリクローナル抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体、CDRペプチドおよびダイアボディーからなる群より選択される、項目1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
(項目10)
上記レドックスレポーターは、電位が印加される場合に、上記電極で電気化学的シグナルを生成し得る、項目1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
(項目11)
上記レドックスレポーターは、ファラデー電流を生成する、項目1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
(項目12)
上記レドックスレポーターは、界面電子移動する能力がある、項目1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
(項目13)
上記レドックスレポーターは、フェリシアニド/フェロシアニドもしくはフェロセンである、項目1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
(項目14)
上記レドックスレポーターは、ヘキサクロロイリデート(IV)/ヘキサクロロイリデート(III)である、項目1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
(項目15)
上記電極は、貴金属である、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目16)
上記電極は、炭素である、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目17)
上記電極は、酸化インジウムスズである、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目18)
上記電極は、金、パラジウムもしくは白金である、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目19)
上記電極は、ナノ構造の微小電極である、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目20)
上記電極は、約150ミクロン未満である、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目21)
上記電極は、約5〜約50ミクロンである、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目22)
上記電極は、約10ミクロン未満である、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目23)
上記電極は、微小作製チップ上にある、項目1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
(項目24)
上記タンパク質分析物は、疾患、障害もしくは状態のバイオマーカーである、項目1〜23のいずれか1項に記載のシステム。
(項目25)
上記バイオマーカーは、がんバイオマーカーである、項目1〜24のいずれか1項に記載のシステム。
(項目26)
上記バイオマーカーは、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、α−フェトプロテイン、β−2ミクログロブリン、膀胱腫瘍抗原、がん抗原15−3、がん抗原19−9、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、がん抗原72−4、がん抗原125(CA−125)、カルシトニン、がん胎児性抗原、EGFR、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、神経特異的エノラーゼ、NMP22、サイログロブリン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、S−100、およびTA−90、またはこれらの一部、バリエーションもしくはフラグメントからなる群より選択される、項目1〜24のいずれか1項に記載のシステム。
(項目27)
上記バイオマーカーは、StaphylococcusもしくはStreptococcus細菌感染のバイオマーカーである、項目1〜24のいずれか1項に記載のシステム。
(項目28)
タンパク質分析物の電気化学的検出のための方法であって、該方法は、
リンカーを表面に含む電極と、サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで該リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、工程;
電位が印加される場合に、該抗体標識された電極および該レドックスレポーターによって生成される電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに
該電気化学的シグナルと、タンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルとを比較する工程;
を包含し、ここでタンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルと比較して検出した該シグナルの変化は、該サンプル中の該タンパク質分析物の存在を示す、方法。
(項目29)
上記リンカーは、上記抗体もしくはそのフラグメントに直接的にもしくは間接的に連結し得る官能基を含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
上記リンカーは、官能性アミン基を含む、項目28に記載の方法。
(項目31)
上記リンカーは、官能性カルボン酸基を含む、項目28に記載の方法。
(項目32)
上記リンカーは、シスタミン、システアミン、メルカプトプロピオン酸もしくは4−アミノチオフェノールである、項目28に記載の方法。
(項目33)
上記リンカーは、第2のリンカーを介して上記抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、項目28に記載の方法。
(項目34)
上記第2のリンカーは、グルタルアルデヒドもしくはホルムアルデヒドである、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記電極は、抗体もしくはそのフラグメントの複数のコピーで標識されている、項目28〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
上記抗体もしくはそのフラグメントは、ポリクローナル抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体、CDRペプチドおよびダイアボディーからなる群より選択される、項目28〜35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
上記レドックスレポーターは、ファラデー電流を生成する、項目28〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
上記レドックスレポーターは、界面電子移動する能力がある、項目28〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
上記レドックスレポーターは、フェリシアニド/フェロシアニドもしくはフェロセンである、項目28〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
上記レドックスレポーターは、ヘキサクロロイリデート(IV)/ヘキサクロロイリデート(III)である、項目28〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
上記電極は、貴金属である、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
上記電極は、炭素である、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
上記電極は、酸化インジウムスズである、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
上記電極は、金、パラジウムもしくは白金である、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
上記電極は、ナノ構造の微小電極である、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
上記電極は、約100ミクロン未満である、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
上記電極は、約5〜約50ミクロンである、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
上記電極は、約10ミクロン未満である、項目28〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
上記電極は、微小作製チップ上にある、項目28〜48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
上記タンパク質分析物は、疾患、障害もしくは状態のバイオマーカーである、項目28〜49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
上記バイオマーカーは、がんバイオマーカーである、項目28〜50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
上記バイオマーカーは、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、α−フェトプロテイン、β−2ミクログロブリン、膀胱腫瘍抗原、がん抗原15−3、がん抗原19−9、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、がん抗原72−4、がん抗原125(CA−125)、カルシトニン、がん胎児性抗原、EGFR、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、神経特異的エノラーゼ、NMP22、サイログロブリン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、S−100、およびTA−90、またはこれらの一部、バリエーションもしくはフラグメントからなる群より選択される、項目28〜50のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
上記バイオマーカーは、StaphylococcusもしくはStreptococcus細菌感染のバイオマーカーである、項目28〜50のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
上記測定する工程は、ボルタンメトリーを介する、項目28〜53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
ボルタンメトリーは、サイクリックボルタンメトリーもしくは微分パルスボルタンメトリーである、項目54に記載の方法。
(項目56)
複数のタンパク質分析物の多重化電気化学的検出のための方法であって、該方法は、
リンカーを表面に含む第1の電極と、サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで該リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る第1の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、工程;
電位が印加される場合に、該第1の抗体標識された電極および該レドックスレポーターによって生成される第1の電気化学的シグナルを測定する工程;
リンカーを表面に含む第2の電極と、サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで該リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る第2の抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、工程;
電位が印加される場合に、該第2の抗体標識された電極および該レドックスレポーターによって生成される第2の電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに
該第1および該第2の電気化学的シグナルと、タンパク質分析物を含まないコントロールサンプルにおいて該第1のおよび該第2の抗体標識された電極によって生成されるそれぞれのシグナルとを比較する工程;
を包含し、ここでタンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのそれぞれのシグナルと比較して検出された該第1および該第2の電気化学的シグナルの変化は、該サンプル中の該タンパク質分析物の存在を示す、方法。
(項目57)
上記第1および上記第2の電極はともに、微小作製チップ上にある、項目56に記載の方法。
(項目58)
上記第1および上記第2の電極は、異なる微小作製チップ上にある、項目56に記載の方法。
(項目59)
上記第2の抗体標識された電極は、上記第1の抗体標識された電極に対する参照コントロールである、項目56〜58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
上記第2の抗体標識された電極は、豊富な血清タンパク質を検出する、項目56〜59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
がんを有する被験体における進行もしくは応答をモニターするための方法であって、該方法は、
該被験体から生物学的サンプルを得る工程;
リンカーを表面に含む電極と、該サンプルおよびレドックスレポーターとを接触させる工程であって、ここで該リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられており、ここで該抗体もしくはそのフラグメントは、タンパク質分析物に結合する、工程;
電位が印加される場合に、該抗体標識された電極および該レドックスレポーターによって生成される電気化学的シグナルを測定する工程;ならびに
該電気化学的シグナルと、タンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルとを比較する工程;
を包含し、ここでタンパク質分析物を含まないコントロールサンプルのシグナルと比較して検出される該シグナルの変化は、該サンプル中の該タンパク質分析物の存在を示す、方法。
(項目62)
上記タンパク質分析物は、がんバイオマーカーである、項目61に記載の方法。
(項目63)
上記タンパク質分析物は、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、α−フェトプロテイン、β−2ミクログロブリン、膀胱腫瘍抗原、がん抗原15−3、がん抗原19−9、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、がん抗原72−4、がん抗原125(CA−125)、カルシトニン、がん胎児性抗原、EGFR、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、神経特異的エノラーゼ、NMP22、サイログロブリン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、S−100、およびTA−90、またはその一部、バリエーションもしくはフラグメントからなる群より選択されるバイオマーカーである、項目61に記載の方法。
(項目64)
タンパク質分析物を電気化学的に検出するためのキットであって、該キットは、
リンカーを表面に含む電極であって、ここで該リンカーは、タンパク質分析物を結合し得る抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている、電極;および
電位が印加される場合に、該電極で電気化学的シグナルを生成し得るレドックスレポーター
を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲において具体的に示される。本発明の特徴および利点のよりよい理解は、本発明の原理が利用される例示的実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られる。
図1図1aは、電極の電気化学的堆積のための5μmの開き口を特徴とする微小作製チップを示す多重化センサーチップの写真(左)および開口部の図示(中央)である。金(Au)パターンは、従来のフォトリソグラフィーを使用してシリコンウェハ上に堆積され、次いで、SiOの層で覆われる;5μmの開き口は、次いで、この最上部層を貫通してエッチングされて、Auの丸い部分を露出する。Au電着によるAu電極の生成の模式図(右)。図1bは、電極官能化の模式図である;(左)シスタミンのリンカーが、Au構造上に形成される;(中央)センサー表面でのアルデヒド基を導入するための二官能性リンカーグルタルアルデヒドとの反応;(右)抗体改変された電極センサーを調製するための抗CA−125抗体もしくは抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体の付加。図1cは、CA−125抗原のための電気化学的検出の模式図である。上記抗原−抗体結合は、[Fe(CN)3−/4−の界面電子移動反応を妨げる。図1dは、上記CA−125(血清中10U/ml)の40分間にわたるインキュベーション後に観察されたシグナル減少を示す微分パルスボルタンメトリー(DPV)である。
図2図2は、3種の異なるサイズのAU電極センサーのSEM画像および特徴的なサイクリックボルタモグラムである。(a)100ミクロンセンサーのSEM画像。この構造を、200sにわたって0mVの印加電位においてDC電位アンペロメトリーを使用して製作した。(c)30ミクロンセンサー。この構造を、200sにわたって150mVの印加電位において、DC電位アンペロメトリーを使用して製作した。および(e)8ミクロンセンサー。この構造を、50sにわたって30nAの印加電流において、クロノポテンシオメトリーを使用して製作した。上記3種のセンサーの特徴的なサイクリックボルタモグラムを、サイズ(b)100ミクロン、(d)30ミクロン、および(f)8ミクロンセンサーを有するセンサーにおいて、100mV/sのスキャン速度で、2.5mM [Fe(CN)3−/4−および0.1M KClを含む10mM リン酸緩衝溶液において得た。図2(f)の挿入図は、上記サイクリックボルタモグラムの拡大図を示す。(g)各センサーサイズの表面積を反映する3つのセンサーの容量性電流。サイクリックボルタモグラムを、サイズ(外側の曲線)100ミクロン、(中央の曲線)30ミクロン、および(内側の曲線)8ミクロンを有するセンサーにおいて、100mV/sのスキャン速度で、0.1M KClを含む10mM リン酸緩衝溶液において得た。
図3図3は、3種の異なるサイズのAu構造において生成されたイムノセンサーの感度および検出限界の比較である。PBS中のCA−125の濃度でのΔΔ(I%)を、(a)100ミクロンセンサー、(b)30ミクロンセンサー、および(c)8ミクロンセンサーで得た。
図4図4は、PBS中のCA−125の異なる濃度でのインキュベーション前(灰色棒)およびその後(黒棒)の、サイズ(a)100ミクロンおよび(b)8ミクロンを有するセンサーの電流変化である。
図5図5は、血清および全血中でのCA−125の検出である。(a)添加した血清サンプル中でのCA−125およびHSAの同時検出。サンプルは、未希釈血清を含んだ。データを、血清のみおよび異なる濃度のCA−125を添加した血清で得た。灰色棒は、抗CA−125抗体改変イムノセンサーで得たデータを示し、黒棒は、抗HSA抗体改変イムノセンサーのものを表す。センサーサイズは、8ミクロンであった。(b)全血中でのCA−125の検出。サンプルは、未希釈の、未処理血液、および示された濃度のCA−125を含んだ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
(I.電気化学的検出システムおよび方法)
サンプル中の標的分析物を電気化学的に検出するためのシステムおよび方法が、本明細書で提供される。分析物の存在は、電気触媒的シグナルの変化によって検出される。このような電気的読み取りの使用は、安価で、極めて高感度で、小型化しやすく、自動化しやすい方法を提供する。
【0027】
本明細書に記載される検出システムおよび方法の一局面において、電極が提供され、ここで上記電極はリンカーを含み、上記リンカーは、抗体もしくはそのフラグメントに結合させられている。上記抗体もしくはそのフラグメントは、標的分析物(例えば、タンパク質)に結合し得る。上記電極は、レドックスレポーターの存在下にある。
【0028】
本明細書に記載されるシステムおよび方法における使用に適したレドックスレポーターは、電位が印加される場合に、上記電極で電気的シグナル(例えば、ファラデー電流)を生成し得る。ファラデー電流を生成するか、または上記電極で界面電子移動する能力のある任意のレドックスレポーターが、使用され得る。非限定的なレドックスレポーターとしては、フェリシアニド/フェロシアニド、フェロセンおよびヘキサクロロイリデート(IV)/ヘキサクロロイリデート(III)のような低分子のレドックス活性基が挙げられるが、これらに限定されない。上記検出システムは、レドックスレポーターを利用して、上記電極でベースラインの電気的シグナルを生成する。上記抗体もしくはそのフラグメントに結合する標的分析物が存在する場合、上記電気的シグナルは、減衰する。上記シグナルの減衰は、上記レドックスレポーターが上記電極の表面に効率的に接近することをブロックする上記標的分析物に起因すると考えられる。言い換えると、上記抗体−分析物結合は、界面電子移動を妨げる。例示に過ぎないが、図1cおよび図1dを参照のこと。
【0029】
一局面において、上記抗体への標的分析物結合に対応するシグナル変化は、ファラデー電流における%変化として計算される:
ΔI%={(平均I)−(平均I)}/平均I×100
ここで平均I=0標的濃度における平均電流、平均I=任意の標的の濃度における平均電流である。特定の実施形態において、上記シグナル変化は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、約25%、約30%、約40%、約50%、約65%、約75%、約85%、約90%、約95%、約100%超、約2倍、約10倍、約50倍以上である。特定の場合において、上記シグナルの変化は、上記分析物が上記抗体に結合させられていることを示す。上記ファラデー電流における変化を伴って、本明細書に記載される検出システムおよび方法は、一局面において、標的分析物の存在を決定するために使用される。
【0030】
別の局面において、本明細書に記載される検出システムおよび方法は、サンプル中の標的分析物の濃度を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、これは、上記標的分析物の既知の濃度標準での上記検出システムの較正を介して達成される。例えば、多くの陽性コントロールサンプル(各々、特定の濃度の分析物を有する)は、試験サンプル中の分析物の未知の量の決定のために、ファラデー電流における%変化を決定するために使用される。上記検出システムおよび方法の検出範囲は、上記抗体、分析物、および結合能力ならびに上記使用されるレドックスレポーターに依存する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される検出システムおよび方法は、約500フェムトモル濃度(fM)もしくは約100pg/mL以下において、分析物の濃度を検出する。
【0031】
別の局面において、本明細書に記載される検出システムおよび方法は、複数の標的分析物の濃度を検出および/もしくは決定するために多重化される。いくつかの実施形態において、多重化システムおよび方法は、少なくとも2個の電極(各々は、リンカーを含み、異なる抗体が、各リンカーに結合させられている)を含む。特定の場合において、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の電極(各々は、リンカーを含み、異なる抗体が各リンカーに結合させられている)が、多重化システムにおいて使用される。いくつかの実施形態において、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、もしくは少なくとも50個以上の電極が、多重化システムにおいて使用される(各々は、リンカーを含み、異なる抗体が、各電極において各リンカーに結合させられている)。あるいは、1個より多くの電極が、同じ抗体もしくは抗体クラスを含み得る;例えば、4個の電極の複製物(各群は、3種の別個の抗体のうちの1つを含む)は、12電極の多重化システムにおいて使用され得る。さらに、電極は、1種より多くの抗体もしくは抗体クラスを含み得る;例えば、個々の電極上に、1種より多くの抗体(各々は、タンパク質もしくは分析物の特定の領域を認識する)が合わされ得る。いくつかの場合において、検出は、タンパク質もしくは分析物が、上記電極に結合した全ての抗体に結合する場合にのみ起こる。いくつかの場合において、検出は、タンパク質もしくは分析物が、上記電極に結合した上記抗体群のうちの少なくとも1種に結合する場合に起こる。
【0032】
多重化は、非常に多くの分析物が同時に検出されることを可能にするので、「分析物パネル」が作られる。例示的な分析物パネルは、障害、疾患もしくは状態に関連する分析物(例えば、特定のがんの関連バイオマーカー)を含み得る。多重化はまた、同じかもしくは異なるエピトープを介して同じ標的分析物に結合する異なる抗体等、分析物についてのより高い感度を可能にする。異なる抗体の使用(例えば、同じ分析物を標的とするポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の使用)は、上記検出システムが、1タイプのみの抗体を使用して分析物を検出する一重システムよりも、堅調で高感度のものであることを可能にする。多重化は、偽陽性および偽陰性を低下させるための上記システムの内部較正をさらに可能にする。例えば、標的分析物の分析は、安定であることが公知の分析物(例えば、豊富な血清タンパク質)と並行して行われ得る。
【0033】
別の局面において、本明細書に記載される検出システムおよび方法は、障害、疾患もしくは状態を検出もしくは診断するために、または障害、疾患もしくは状態の進行もしくは応答をモニターするために、使用される。いくつかの実施形態において、サンプルは、患者もしくは被験体から得られ、上記検出システムおよび方法は、上記障害、疾患もしくは状態と関連した標的分析物の存在および/もしくは濃度を検出するために使用される。例示的な障害、疾患もしくは状態としては、がん(例えば、乳房、卵巣、前立腺、膵臓、結腸直腸、膀胱など)、感染性疾患(例えば、StaphylococcusもしくはStreptococcus 細菌感染、MRSA、VISA、ウイルス感染、真菌感染など)、自己免疫疾患(例えば、グレーブス病、狼瘡、関節炎、グッドパスチャー症候群など)、代謝性疾患および障害(例えば、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、I型およびII型糖尿病、クローン病、過敏性腸症候群など)、HIV/AIDS、遺伝病、ならびに治療薬もしくは毒性物質と関連した状態が挙げられる。障害、疾患もしくは状態の重篤度もしくはステージは、いくつかの実施形態においては、標的分析物の濃度(異なる濃度が重篤度もしくはステージを示す)を検出することによって決定される。同様に、他の実施形態において、障害、疾患もしくは状態の進行もしくは応答は、種々の時点にわたって上記標的分析物の濃度を検出することによって決定される。薬理学的処置、治療もしくはレジメンの治療効率はまた、いくつかの実施形態において、種々の時点にわたって上記標的分析物の濃度を検出することによって決定され得る。
【0034】
(II.電極)
本明細書に記載される検出システムおよび方法のための電極は、上記電極の表面にリンカーを許容する特性を有する任意の導電性材料である。電極は、電子をレドックスレポーターへもしくはそれから移動する能力を有し、一般に、電子制御および検出デバイスに接続される。一般に、貴金属、例えば、Ag、Au、Ir、Os、Pd、Pt、Rh、Ruおよびそれらのファミリーの中の他のものは、電極に適した材料である。貴金属は、安定性および酸化への耐性を含めて、都合のよい特性を有し、種々の方法(例えば、電着)において操作され得、チオールおよびジスルフィド含有分子に結合し、それによって、上記分子の結合を可能にする。他の材料もまた、使用され得る(例えば、窒素含有伝導性化合物(例えば、WN、TiN、TaN)もしくはケイ素/シリカベースの材料(例えば、シランもしくはシロキサン))。特定の実施形態において、上記電極は、金、パラジウムもしくは白金である。他の実施形態において、上記電極は、炭素である。さらなる実施形態において、上記電極は、酸化インジウムスズである。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記電極は、微小電極である。他の実施形態において、上記微小電極は、ナノ構造の微小電極(「NME」)である。NMEは、ナノ構造表面を特徴とする微小電極である。表面のナノテクスチャリングもしくはナノ構造は、上記電極に増大した表面積を提供し、より高い感度(特に、バイオセンシング適用において)を可能にする。NMEの製造は、電着を介して行われ得る。パラメーター(例えば、堆積時間、堆積電位、支持電解質タイプおよび金属イオン源)を変化させることによって、種々のサイズ、形態および組成のNMEが、生成され得る。特定の場合において、NMEは、樹状構造を有する。上記樹状構造の複雑さは、前述の電着パラメーターを変化させることによって達成される。本明細書に記載されるシステムおよび方法における使用のための例示的NMEは、国際特許出願番号PCT/CA2009/001212(WO/2010/025547として公開)(これは、その全体において参考として援用される)において記載される。
【0036】
他の電極構造もまた、本明細書に記載される検出システムおよび方法において使用され得る(平らな表面、ワイヤ、チューブ、円錐および粒子が挙げられる)。市販のマクロ電極および微小電極はまた、本明細書に記載される実施形態に適している。
【0037】
電極は、例えば、長さもしくは直径が約0.0001〜約5000ミクロン;長さもしくは直径が約0.0001〜約2000ミクロン;約0.001〜約250ミクロン;約0.01〜約200ミクロン;約0.1〜約100ミクロン;約1〜約50ミクロン;長さが約10〜約30ミクロン、または長さもしくは直径が約10ミクロン未満のサイズにされる。特定の実施形態において、電極は、長さもしくは直径が約100ミクロン、約30ミクロン、約10ミクロンもしくは約5ミクロンのサイズにされる。さらなる実施形態において、電極は、約8ミクロンのサイズにされる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される検出システムおよび方法は、検出のために1個の電極を含む。他の実施形態において、複数の電極が使用される。複数の電極の使用は、いくつかの実施形態においては、各電極に結合した1種の抗体タイプを介して標的分析物を検出するために、並列において使用され得る。あるいは、他の実施形態において、複数の電極は、以前に記載されるように、多重化のために使用される。複数の電極は、高密度アレイもしくは低密度アレイに構成され得る。多重化使用のための微小作製チップ上の例示的な8電極のアレイは、図1aに図示される。
【0039】
さらなる実施形態において、電極は、基材上に位置づけられる。上記基材は、広い範囲の材料(生物学的、非生物学的、有機的、無機的、もしくはこれらのうちのいずれかの組み合わせのどれか)を含み得る。例えば、上記基材は、重合化ラングミュア・ブロジェット膜、官能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、改変ケイ素、または広く種々のゲルもしくはポリマーのうちのいずれか1種(例えば、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ無水物、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−co−ビニルアセテート)、ポリシロキサン、ポリマー状シリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ、ポリカーボネート、もしくはこれらの組み合わせ)であり得る。
【0040】
基材は、平らな結晶性基材、例えば、シリカベースの基材(例えば、ガラス、石英など)、または例えば、半導体およびマイクロプロセッサ産業において使用される結晶性基材(例えば、ケイ素、ガリウムヒ素、インジウムドープGaNなど)であり得る。シリカエアロゲルはまた、基材として使用され得、任意の公知の方法によって調製され得る。エアロゲル基材は、独立の基材として、もしくは別の基材材料のための表面コーティングとして、使用され得る。
【0041】
上記基材は、任意の形態をとり得、代表的には、プレート、スライド、ビーズ、ペレット、ディスク、粒子、微粒子、ナノ粒子、ストランド(strand)、沈殿物、必要に応じて、多孔性ゲル、シート、チューブ、球、容器、キャピラリー、パッド、スライス、フィルム、チップ、マルチウェルプレートもしくはディッシュ、光ファイバーなどである。上記基材は、剛性もしくは半剛性である任意の形態であり得る。上記基材は、隆起した領域もしくは凹んだ領域を含み得、その上にアッセイ成分が位置づけられる。上記基材の表面は、所望の表面特徴(例えば、溝、v字型の溝、メサ構造(mesa structure)など)を提供するために、周知の技術を使用してエッチングされ得る。上記基材は、フォトダイオード、光電子センサー(例えば、光電子半導体チップもしくは光電子薄膜半導体)、またはバイオチップの形態をとり得る。上記基材上の電極の位置は、アドレス可能(addressable)であり得、これは、高密度フォーマットにおいて行われ得、上記位置は、マイクロアドレスアドレス可能(microaddressable)であってもよいし、ナノアドレス可能(nanoaddressable)であってもよい。いくつかの実施形態において、上記電極は、微小作製チップ上にある。
【0042】
上記基材の表面は、上記基材と同じ材料から構成され得るか、または異なる材料から作製され得、化学的手段もしくは物理的手段によって、上記基材に連結され得る。このような連結された表面は、広く種々の材料(例えば、ポリマー、プラスチック、樹脂、ポリサッカリド、シリカもしくはシリカベースの材料、炭素、金属、無機ガラス、膜、もしくは上記に列挙した基材材料のうちのいずれか)のうちのいずれかから構成され得る。
【0043】
上記基材および/もしくはその表面は、使用中に曝される条件に概して耐性であるかもしくは耐性であるように処理され、必要に応じて、このような条件への曝露後に、任意の耐性材料を除去するように処理され得る。
【0044】
(III.リンカー)
一局面において、上記電極は、上記電極の表面にリンカーを含む。リンカーは、いくつかの実施形態において、リンカー分子が表面の分子層に吸着し(absorb)、表面の分子層へと組織化される場合に形成され得る。本明細書で開示される電極とともに使用するのに適したリンカーは、金属と強く化学吸着する「ヘッド基」(例えば、チオールおよびジスルフィド)および官能基(例えば、−OH、−NH、−COOH、−CO、−OCH、−NHNH、−ビオチン、−NHS(アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド))を有するテールを有する。リンカーの例としては、官能基を有する一本鎖もしくは分枝鎖のアルキルチオールが挙げられる。他のリンカー分子としては、芳香族チオール(例えば、官能基を有するチオフェノール)が挙げられる。適切なリンカー分子は、直接的にもしくは間接的に抗体に連結し得る官能基を有する任意の分子を含む。例示的なリンカー分子としては、シスタミン、システアミン、メルカプトプロピオン酸もしくは4−アミノチオフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、シスタミンである。
【0045】
リンカーは、上記電極が上記リンカー分子の溶液に浸漬される場合に、上記電極表面に形成される。代表的濃度は、水性溶液もしくはエタノール溶液中に約0.01mM、0.05mM、0.1mM、0.5mM、1mM、約2mM、約5mM、約10mM、約20mMもしくは約50mM以上の上記リンカー分子を含む。上記浸漬は、数時間から数日の範囲におよぶ期間にわたる。いくつかの実施形態において、上記浸漬は、約4時間、約8時間、約16時間、約24時間、約2日間、約5日間もしくは約7日間である。いくつかの実施形態において、上記浸漬は、室温である。他の実施形態において、上記浸漬は、室温より高い。さらなる実施形態において、上記浸漬は、室温より低い。
【0046】
リンカーは、任意の公知の方法によって、直接的にもしくは間接的に抗体に結合させられ得る。直接的結合は、いくつかの実施形態において、抗体と反応し、結合し得る上記リンカー分子の官能基(例えば、−CO官能基)を介して達成され得る。あるいは、他の実施形態においては、第2のリンカーもしくはスペーサーが、官能基に結合体化され得、それによって、上記第2のリンカーもしくはスペーサーは、上記抗体に結合し得る。例えば、−NH官能基を有するリンカー分子は、リンカー(例えば、グルタルアルデヒドもしくはホルムアルデヒド)と反応し得、これは続いて、抗体に結合し得る。さらなる実施形態において、上記抗体は、官能基と相互作用するように誘導体化され得る。例えば、アビジン標識抗体は、リンカーのビオチン官能基に結合し得る。これらおよび他の例の直接的もしくは間接的な連結は、本明細書に記載される実施形態の範囲内にある。
【0047】
(IV.抗体)
一局面において、抗体は、標的分析物の量および/もしくは濃度を決定するために使用される。抗体は、免疫グロブリンといわれる血漿タンパク質のファミリーに属し、その基本的構成ブロック、免疫グロブリンの折りたたみもしくはドメインは、上記免疫系および他の生物学的認識システムの多くの分子において種々の形態で使用される。代表的な免疫グロブリンは、可変領域として公知の抗原結合領域および定常領域として公知の非可変領域を含む4つのポリペプチド鎖を有する。本明細書に記載される本実施形態における使用に適した抗体は、種々の形態(血清、全免疫グロブリン、抗体フラグメント(例えば、Fv、Fab、および類似のフラグメント、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)を含む一本鎖抗体、ならびに類似の形態が挙げられ、これらのうちの全ては、本明細書で使用される場合、広い用語「抗体」の中に入る)のうちのいずれかにあり得る。本明細書に記載される本実施形態は、抗体、ポリクローナルもしくはモノクローナルの任意の特異性の使用を意図し、特定の抗原を認識しかつ免疫反応する抗体に限定されない。本明細書中のいくつかの実施形態において、治療法およびスクリーニング法両方の状況において、抗体もしくはそのフラグメントが使用され、これは、標的分析物に対して免疫特異的である。
【0048】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団(すなわち、上記集団を構成する個々の抗体は、考えられる天然に存在する変異(微量で存在し得る)を除いて、同一である)から得られる抗体に言及する。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原性部位に対して向けられる。さらに、代表的には、異なる決定基(エピトープ)に向けられる異なる抗体を含む従来のポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、上記抗原の単一の決定基に対して向けられる。本明細書中のモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖および/もしくは軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一もしくは相同である一方で、上記鎖の残りは、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一かもしくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにこのような抗体のフラグメント(それらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて)を含む。例えば、米国特許第4,816,567号;Morrison et al. Proc. Natl. Acad Sci. 81, 6851 6855 (1984)を参照のこと。
【0049】
用語「抗体フラグメント」とは、全長抗体の一部(一般には、抗原結合領域もしくは可変領域)に言及する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントが挙げられる。抗体のパパイン消化は、2つの同一の抗原結合フラグメント(Fabフラグメントといわれ、各々、単一の抗原結合部位を有する)および残りのいわゆる、「Fc」フラグメント(容易に結晶化するその能力が理由で)を生じる。ペプシン処理は、抗原を架橋し得る2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab’)フラグメント、および残りの他のフラグメント(これは、pFc’といわれる)を生じる。さらなるフラグメントとしては、ダイアボディー、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成されるマルチ特異的抗体が挙げられ得る。本明細書で使用される場合、抗体に関して「機能的フラグメント」とは、Fv、F(ab)およびF(ab’)フラグメントに言及する。
【0050】
抗体フラグメントは、その抗原もしくはレセプターと選択的に結合するいくらかの能力を保持し、以下のように定義される:
(1)Fabは、抗体分子の一価抗原結合フラグメントを含むフラグメントである。Fabフラグメントは、完全抗体を酵素パパインで消化して、インタクトな軽鎖および一方の重鎖の一部を生じることによって生成され得る。
【0051】
(2)Fab’は、完全抗体をペプシンで処理して、続いて、還元して、インタクトな軽鎖および重鎖の一部を生じることによって得られ得る抗体分子のフラグメントである。2個のFab’フラグメントが、1抗体分子につき得られる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域に由来する1個以上のシステインを含む、上記重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数残基の付加によって、Fabフラグメントとは異なる。
【0052】
(3)F(ab’)は、完全抗体を、酵素ペプシンで消化して、その後の還元なしで得られ得る抗体のフラグメントである。F(ab’)は、2個のジスルフィド結合によって一緒に保持された2個のFab’フラグメントのダイマーである。
【0053】
(4)Fvは、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、緊密に非共有結合的に会合した一本の重鎖可変ドメインおよび一本の軽鎖可変ドメインのダイマー(Vダイマー)からなる。この構成において、各可変ドメインの3個のCDRは、上記Vダイマーの表面にある抗原結合部位を定義するように相互作用する。まとめると、上記6個のCDRは、上記抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(もしくは抗原に対して特異的な3個のみのCDRを含む、Fvの半分)すら、抗原を認識し、結合する能力を有するが、全結合部位より親和性は低い。
【0054】
(5)一本鎖抗体(「SCA」)とは、上記軽鎖の可変領域、上記重鎖の可変領域を含み、適切なポリペプチドリンカーによって、遺伝的に融合された単一鎖分子として連結される、遺伝的に操作された分子として定義される。このような一本鎖抗体はまた、「一本鎖Fv」もしくは「sFv」抗体フラグメントといわれる。一般に、上記Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このことは、上記sFvが、抗原結合に関して所望の構造を形成することを可能にする。sFvの総説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer−Verlag, N.Y., pp. 269 315 (1994)を参照のこと。
【0055】
用語「ダイアボディー」とは、2個の抗原結合部位を有する低分子抗体フラグメントであって、これらフラグメントは、軽鎖可変ドメイン(VL)に同じポリペプチド鎖において接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含むもの(VH VL)に言及する。同じ鎖上の上記2個のドメイン間で対形成することを可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、上記ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成して、2個の抗原結合部位を作らされる。ダイアボディーは、例えば、EP 404,097;WO 93/11161、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 90: 6444 6448 (1993)により十分に記載される。
【0056】
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小の認識ユニット」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得られ得る。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体生成細胞のRNAから可変領域を合成することによって、調製される。例えば、Larrick, et al., Methods: a Companion to Methods in Enzymology, Vol.2, ページ 106 (1991)を参照のこと。
【0057】
抗体の生成および調製は、任意の公知の方法を介する。例えば、Green, et al., Production of Polyclonal Antisera,: Immunochemical Protocols (Manson, ed.), ページ 1 5 (Humana Press); Coligan, et al., Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats Mice and Hamsters,: Current Protocols in Immunology, セクション 2.4.1 (1992)(これらは、ポリクローナル抗体の生成および調製に関して参考として援用される); Kohler & Milstein, Nature, 256:495 (1975); Coligan, et al., セクション 2.5.1 2.6.7; および Harlow, et al.,: Antibodies: A Laboratory Manual, ページ 726 (Cold Spring Harbor Pub. (1988))(これらは、モノクローナル抗体の生成および調製について参考として援用される)を参照のこと。抗体フラグメントを生成するための方法は、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, (1988)に記載されるプロトコルに類似のプロトコルによって、生成され得る。
【0058】
上記抗体は、任意の公知の方法によって、上記リンカーに結合させられている。上記抗体は、いくつかの実施形態において、上記リンカー上の選択された官能基に直接結合させられ得る。あるいは、上記抗体は、他の実施形態においては、第2のリンカーもしくはスペーサーを介して、上記リンカーに間接的に連結され得る。
【0059】
(V.検出可能な分析物/バイオマーカーおよび疾患状態/使用)
一局面において、上記標的分析物は、タンパク質である。多数の考えられるタンパク質性標的分析物が存在し、それらは、本明細書中の本実施形態を使用して、検出され得る。「タンパク質」もしくは本明細書中の文法的等価物は、タンパク質、オリゴペプチドおよびペプチド、誘導体およびアナログ、例えば、天然に存在しないアミノ酸およびアミノ酸アナログ含むタンパク質、およびペプチド摸倣構造を意味する。上記側鎖は、(R)配置もしくは(S)配置のいずれかにおいて存在し得る。いくつかの実施形態において、上記アミノ酸は、(S)配置もしくはL配置にある。
【0060】
適切なタンパク質分析物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)免疫グロブリン(特に、IgE、IgGおよびIgM)、および特に治療上もしくは診断上関連する抗体。以下が挙げられるが、これらに限定されない:例えば、ヒトアルブミン、アポリポプロテイン(アポリポプロテインEが挙げられる)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、コルチゾール、α−フェトプロテイン、サイロキシン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、アンチトロンビンに対する抗体、医薬(抗てんかん薬(フェニトイン、プリミドン、カルバマゼピン(carbariezepin)、エトスクシミド、バルプロ酸、およびフェノバルビタール(phenobarbitol)が挙げられる)、心臓作用薬(ジゴキシン、リドカイン、プロカインアミド、およびジソピラミド)、気管支拡張薬(テオフィリン)、抗生物質(クロラムフェニコール、スルホンアミド)、抗鬱剤、免疫抑制剤、濫用薬物(アンフェタミン、メタンフェタミン、カンナビノイド、コカインおよびオピエート))に対する抗体、ならびに任意の数のウイルス(オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、RSウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、レオウイルス、トガウイルス(例えば、風疹ウイルス(m rubella virus))、パルボウイルス、ポックスウイルス(例えば、痘瘡ウイルス、ワクシニア・ウイルス)、エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、肝炎ウイルス(A、BおよびCを含む)、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス)、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(HIV、HTLV−Iおよび−IIが挙げられる)、パポバウイルス(例えば、パピローマウイルス)、ポリオーマウイルス、およびピコルナウイルスなどが挙げられる)、および細菌(広く種々の病原性および非病原性の目的の原核生物が挙げられ、Bacillus;Vibrio(例えば、V.cholerae);Escherichia(例えば、腸内毒素原性E.coli)、Shigella(例えば、S. dysenteriae);Salmonella(例えば、S.typhi)、Mycobacterium(例えば、M.tuberculosis、M.leprae);Clostridium(例えば、C.botulinum、C.tetani、C.difficile、C.perfringens);Cornyebacterium(例えば、C.diphtheriae);Streptococcus(S.pyogenes、S.pneumoniae)、Staphylococcus(例えば、S.aureus);Haemophilus(例えば、H.influenzae);Neisseria(例えば、N.meningitidis、N.gonorrhoeae);Yersinia(例えば、G.lamblia Y. pestis)、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa、P.putida);Chlamydia(例えば、C.trachomatis);Bordetella(例えば、B.pertussis);Treponema(例えば、T.palladium);などが挙げられる)に対する抗体;(2)酵素(および他のタンパク質)、以下が挙げられるが、これらに限定されない:心疾患のインジケーターもしくはその処置のインジケーターとして使用される酵素(クレアチンキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、トロポニンT、ミオグロビン、フィブリノゲン、コレステロール、トリグリセリド、トロンビン、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)が挙げられる);膵臓疾患インジケーター(アミラーゼ、リパーゼ、キモトリプシンおよびトリプシンが挙げられる);肝機能酵素およびタンパク質(コリンエステラーゼ、ビリルビン、およびアルカリホスファターゼが挙げられる);アルドラーゼ、前立腺酸性ホスファターゼ、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、ならびに細菌およびウイルスの酵素(例えば、HIVプロテアーゼ);(3)ホルモンおよびサイトカイン(そのうちの多くは、細胞レセプターのリガンドとして働く)、例えば、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL−1からIL−17が挙げられる)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF−1および−2が挙げられる)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF−αおよびTGF−βが挙げられる)、ヒト成長ホルモン、トランスフェリン、上皮増殖因子(EGF)、低密度リポプロテイン、高密度リポプロテイン、レプチン、VEGF、PDGF、毛様体神経栄養因子、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、カルシトニン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、コルチゾール(cotrisol)、エストラジオール、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロゲステロン、テストステロン;ならびに(4)他のタンパク質(α−フェトプロテイン、がん胎児性抗原CEAが挙げられる)。
【0061】
いくつかの実施形態において、タンパク質分析物は、疾患、障害もしくは状態のバイオマーカーである。例示的なバイオマーカーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:例えば、PSA、BRCA1、BRCA1、Her2/neu、AFP(α−フェトプロテイン)、B2M(β−2ミクログロブリン)、BTA(膀胱腫瘍抗原)、CA15−3(がん抗原15−3)、CA19−9(がん抗原19−9)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、CA72−4(がん抗原72−4)、CA−125(がん抗原125)、カルシトニン、CEA(がん胎児性抗原)、EGFR(Her−1)、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、モノクローナル免疫グロブリン、NSE(神経特異的エノラーゼ)、NMP22、サイログロブリン、モノクローナル免疫グロブリン、NSE(神経特異的エノラーゼ)、プロゲステロンレセプターPSA(前立腺特異的抗原)、総前立腺特異的膜抗原および遊離型前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、S−100、およびTA−90、またはこれらの一部もしくはバリエーションもしくはフラグメント。特定の場合において、上記バイオマーカーは、がんのバイオマーカーである。他の場合において、上記バイオマーカーは、細菌感染のバイオマーカーである。さらなる場合において、上記バイオマーカーは、StaphylococcusもしくはStreptococcus細菌感染のバイオマーカーである。
【0062】
(VI.サンプル)
本明細書に記載される検出システムおよび方法についてのサンプルは、分析物を含むと疑われる任意の材料であり得る。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、生きている生物から直接的にもしくは間接的に得られ得るタンパク質を含む生物学的材料の任意の供給源(細胞、組織もしくは体液が挙げられる)、およびその生物が残した堆積物(deposit)(ウイルス、マイコプラズマおよび化石が挙げられる)であり得る。代表的には、上記サンプルは、主に水性の媒体において得られるかもしくは分散している。上記サンプルの非限定的な例としては、以下が挙げられる:血液、尿、精液、乳汁、痰、粘液、口内スワブ、膣スワブ、直腸スワブ、吸引物、針生検、例えば、外科手術もしくは剖検によって得られる組織の切片、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸管および尿生殖路の外分泌物、涙液、唾液、腫瘍、器官、インビトロ細胞培養構成要素のサンプル(細胞培養培地中の細胞の増殖から生じる馴化培地、ウイルス感染したと思われる細胞、組換え細胞、および細胞成分が挙げられるが、これに限定されない)、ならびにタンパク質、ペプチドなどを含む組換えライブラリー。
【0063】
上記サンプルは、標的分析物を含むことが公知である陽性コントロールサンプルであり得る。陰性コントロールサンプルもまた、使用され得る。これは、上記分析物を含むとは予測されないが、上記分析物を含む(試薬のうちの1種以上の汚染を介して)か、もしくは偽陽性を生じ得る別の成分を含むと疑われ、所定のアッセイにおいて使用される試薬の標的分析物による汚染がないことを確認するために、ならびにアッセイ条件の所定の設定が偽陽性(上記サンプル中の標的分析物の非存在下ですら陽性シグナル)を生じるか否かを決定するために、試験される。
【0064】
上記サンプルは、希釈、溶解、懸濁、抽出され得、あるいは存在する任意の標的分析物を可溶化および/もしくは精製するように、または増幅スキームにおいて使用される試薬にもしくは検出試薬に接近できるように別の方法で処理され得る。上記サンプルが細胞を含む場合、上記細胞は、上記細胞内のポリヌクレオチドを放出するように溶解もしくは透過処理され得る。1工程の透過処理緩衝液が、細胞を溶解するために使用され得、このことは、さらなる工程が溶解後に直接行われることを可能にする(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)。
【0065】
(VII.使用のためのデバイス、3電極システム、スキャン法)
電子移動は、一般に、電子的に開始され、少なくとも第1の電位の印加が、上記電極およびレドックスレポーターを含む上記システムに適用される。上記印加された電位における正確な制御およびバリエーションが、ポテンシオスタットおよび3電極システム(1つは参照、1つはサンプル(もしくは作用)および1つはカウンター電極)もしくは2電極システム(1つはサンプル、および1つはカウンター電極)のいずれかを介して行われ得る。いくつかの実施形態において、3電極システムを有するポテンシオスタットが、Ag/AgCl参照電極および白金ワイヤ補助電極とともに使用される。電気的シグナルは、サイクリックボルタンメトリーもしくは微分パルスボルタンメトリーのいずれかによって測定され得る。特定の場合において、電気的シグナルは、約50m/v、約80m/v、約100m/v、約120m/v、もしくは約150m/vのスキャン速度において、サイクリックボルタンメトリーによって測定される。他の場合において、電気的シグナルは、微分パルスボルタンメトリーによって、約1〜5mVもしくは約2〜10mVの電位ステップ、約25〜50mVもしくは約40〜75mVのパルス振幅、パルス約25〜50msもしくは約40〜75ms、および約10〜100msもしくは約25〜150msもしくは約50〜200msのパルス周期で測定される。
【0066】
他の場合において、電気化学的電位を検出する他の手段(電位差測定式、アンペロメトリー、パルスボルタンメトリー、サイクリックボルタンメトリー、ブロードバンド周波数応答、インピーダンス、もしくは他の電気化学的方法が挙げられるが、これらに限定されない)は、本明細書に記載されるシステムおよび方法の電気化学的に改変された電極からの出力シグナルを変換するために使用され得る。
【0067】
(VIII.キット)
上記記載されるシステムのための、および上記記載される方法を行うための構成要素を含むキットもまた、提供される。いくつかの実施形態において、キットは、以下の構成要素(電極、上記電極の表面にリンカーを形成するための試薬、1種以上の抗体およびレドックスレポーターが挙げられる)のうちの1種以上を含む。上記キットの構成要素は、収納箱によって保持され得る。記載される方法を行うために上記キットを使用するための指示書は、上記収納箱とともに提供され得、任意の固定媒体において提供され得る。上記指示書は、上記収納箱の中に位置してもよいし、上記収納箱の外に位置してもよく、上記収納箱を形成する任意の表面の内部もしくは外部に印刷され得、このことは、上記指示書を読みやすくする。キットは、1種以上の異なる標的分析物の検出のために多重形態にあり得る。
【実施例】
【0068】
(実施例1:電極およびリンカーの調製)
チップを、アセトン中、5分間にわたる超音波処理によって清浄にし、イソプロピルアルコールおよびDI水で30sにわたってすすぎ、空気流で乾燥させた。電着を室温で行い;製作した電極の5μm開口部を、作用電極として使用し、露出したボンドパッドを使用して接触させる。金(Au)センサーを、HAuClの20mM 溶液および0.5M HClを含む堆積溶液を使用して作製する。上記Auセンサーを、約0〜250mVにおいて約100〜300sにわたってDC電位アンペロメトリーを使用して形成する。あるいは、Au構造はまた、例えば、約15〜40nAにおいて約25〜60sにわたって、クロノポテンシオメトリーを使用して形成し得る。
【0069】
(実施例2:リンカーへの抗体の連結)
1〜50mMの4−アミノチオフェノールもしくはメルカプトプロピオン酸を含む水性溶液を、10〜20時間にわたって室温においてAUセンサーに適用する。次いで、上記センサーを、DI水で2〜3回、2〜4分間にわたって洗浄する。上記処理したセンサーを、室温において、水中の1.5〜3.0% グルタルアルデヒドで1時間にわたって反応させ、続いて、DI水で2〜3回、2〜4分間にわたって洗浄した。次いで、上記官能化したセンサーを、5〜25μg/ml 抗体を含むPBSと室温において1〜2時間反応させる。上記センサーを、PBSで2〜3回、3〜6分間にわたって洗浄する。未反応のアルデヒド基を、1% (W/V) ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで、1〜2時間にわたって室温でブロックする。次いで、上記センサーを、3〜4回、PBSで4〜7分間にわたって洗浄する。
【0070】
(実施例3:がんバイオマーカー、CA−125の検出)
臨床サンプル中のタンパク質レベルの高感度かつ簡単な測定のためのプラットフォームの開発は、疾患診断におけるタンパク質バイオマーカーのより広い使用を促進する重要なゴールである。有用な情報を提供するために、検出スキームは、高レベルの特異性、低い検出限界、ならびに血液および血清のような生物学的液体中での堅調な性能を示さねばならない。がんおよび他の疾患に関して、複数のタンパク質の特性の発生を考慮すると、多重化はまた、価値ある特徴である。内部コントロールおよび外部コントロール、ならびに標準物質を含めることはまた、多重化を必要とする。
【0071】
CA−125は、卵巣がんの検出のためのマーカーとして使用されてきた上皮抗原である。いくつかのアッセイが、CA−125を検出するために開発されたが、大部分は、その検出手順が感度を欠いていることおよび複雑さにのいずれかに起因して、理想的ではない。市販のCA−125イムノアッセイは、15U/mlという検出限界を有し、これは、疾患の存在と相関するレベルのCA−125(35U/ml)を検出するには十分であるが、有意に低いレベルの関連を正確に研究されることを可能にしない。
【0072】
本明細書で開示されるタンパク質検出システムは、卵巣がんにおいて一般に存在するCA−125がんバイオマーカーを、微小電極センサーオンチップ設計(on−a−chip design)を介して、電気化学的に検出するために適合させた。上記センサーチップは、異なるサイズの電極センサーの比較、ならびび0.1U/mlに至るまで示された検出限界を決定することを可能にする。その読み取りを、非共有結合レドックスレポーター基の導入を包含する単一の工程において行った。上記報告された検出システムは、ヒト血清中のCA−125の分析において、特異的であることを示した。上記システムの多重化は、上記バイオマーカーの分析が、豊富な血清タンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA)(内部較正のため)とともに並行して行われることを可能にした。
【0073】
材料。 CA−125抗原およびABドナーからのヒト血清、抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体、HAuCl溶液、フェリシアン化カリウム(K[Fe(CN)])、フェロシアン化カリウム三水和物(K[Fe(CN)3HO)、50%(w/w) グルタルアルデヒド、およびシスタミンを、Sigma−Aldrichから購入した。抗CA−125抗体を、KalGene Pharmaceuticals Inc., Canadaから得た。ACSグレードのアセトンおよびイソプロピルアルコール(IPA)を、EMD(USA)から得た;6N 塩酸を、VWR(USA)から得た。リン酸緩衝化食塩水(PBS,pH7.4,1×)を、Invitrogenから得た。ヒト全血を、Bioreclaimation(Westbury,NY)から得た。
【0074】
チップおよび電極製作: チップを、Canadian Photonics Fabrication Centerにおいて製作した。簡潔には、3インチのシリコンウェハを、熱成長させた二酸化ケイ素の厚い層を使用して不動態化した。350nmの金層を、電子ビーム補助金蒸着を使用して、上記チップ上に堆積させた。上記金フィルムを、標準のフォトリソグラフィーおよびリフトオフプロセスを使用してパターン形成した。絶縁二酸化ケイ素の500nm層を、化学蒸着を使用して堆積させ;5μm開口部を、標準のフォトリソグラフィーを使用して、上記電極上に刻み込み、2mm×2mm ボンドパッドを、標準のフォトリソグラフィーを使用して露出させた。図1aは、例示的なセンサーチップ(左)および代表的な層(右)の写真を示す。
【0075】
チップを、アセトン中で、5分間にわたって超音波処理することによって清浄にし、イソプロピルアルコールおよびDI水で30s間にわたってすすぎ、空気流で乾燥させた。電着を室温において行った;上記製作した電極センサーの5μm開口部を、作用電極として使用し、上記露出したボンドパッドを使用して接触させた。3個の異なる金電極センサーを、HAuClの20mM溶液および0.5M HClを含む堆積溶液を使用して、国際出願番号PCT/CA2009/001212(WO 2010/025547として公開)に記載される手順に類似のプロセスを使用して、作製した。100ミクロンおよび30ミクロンの金。
【0076】
電極構造を、それぞれ、0mVにおいて200sにわたって、および150mVにおいて200sにわたってDC電位アンペロメトリーを使用して形成した;そして8ミクロン金電極構造を、30nAにおいて50sにわたってクロノポテンシオメトリーを使用して形成した。図2a、図2cおよび図2eは、それぞれ、100ミクロン、30ミクロンおよび8ミクロンの金電極構造のSEM画像を示す。
【0077】
センサーの表面積の決定。 Auセンサーの表面積を、50mM HSO中でサイクリックボルタモグラムから得たAu酸化物還元ピーク面積を積分することによって計算した。順方向スキャンにおいて、化学吸着酸素の単層を形成し、次いで、逆方向スキャンにおいて還元する。顕微鏡の単位面積あたりの還元電荷は、500μC/幾何cmとして実験的に決定した。上記表面積を、還元ピーク(Ag/AgClに対して約0.812V)を積分して、還元電荷を得、これを、500μC/幾何cmで除算することによって計算した。
【0078】
電極の抗体改変: 10mM シスタミンを含む水性溶液を、上記電極の表面に均一なリンカーを形成するために、16時間にわたって室温において金電極センサーに適用した。次いで、上記電極を、DI水で2回、2分間にわたって洗浄した。上記リンカーを、室温において水中の2.5% グルタルアルデヒドと1時間にわたって反応させ、続いて、DI水で2回、2分間にわたって洗浄した。次いで、上記官能化電極を、10μg/ml 抗CA−125抗体もしくは抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体を含むPBSと、室温において1時間にわたって反応させた。上記電極を、PBSで2回、5分間にわたって洗浄した。未反応のアルデヒド基を、1% (W/V) ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSでブロックした。次いで、上記電極を、3回、PBSで5分間にわたって洗浄した。PBS中の異なる濃度のCA−125もしくは血清を含む溶液を、上記抗体改変電極に、40分間にわたって37℃において適用した。上記電極を、電気化学的読み取りの前に、PBSで洗浄した。
【0079】
電気化学的分析および走査型電子顕微鏡(SEM): 電気化学的実験を、Ag/AgCl参照電極および白金ワイヤ補助電極を特徴とする3電極システムを備えるBioanalytical Systems Epsilonポテンシオスタットを使用して行った。電気化学的シグナルを、2.5mM K[Fe(CN)]、2.5mM K[Fe(CN)]、および0.1M KClを含む10mM リン酸緩衝溶液(pH7)中で測定した。サイクリックボルタンメトリー(CV)を、100mV/sのスキャン速度で得、微分パルスボルタンメトリー(DPV)シグナルを、5mVの電位ステップ、パルス振幅50mV、50msでのパルス、およびパルス周期100msで得た。上記抗体への標的タンパク質の結合に対応するシグナル変化を、以下のとおりに計算した: ΔI%={(平均I)−(平均I)}/平均I×100(ここで平均I=ゼロ標的濃度での平均電流、平均I=任意の標的濃度における平均電流)。上記SEM画像を、Hitachi S−3400 SEMを使用して得た。
【0080】
3種の異なる構造を、異なる電気化学的方法および条件を使用して、チップ上に製作した。100ミクロン(図2a)、30ミクロン(図2c)、および8ミクロン(図2e)のセンサーを、上記電着条件を変化させることによって作製した。上記センサーの表面積を、硫酸中でスキャンし、上記表面から形成され剥がれた酸化物の量を測定することによって測定し、約4×10−6cm(8ミクロンセンサー)、3×10−5cm(30ミクロンセンサー)、および1×10−4cm(100ミクロンセンサー)という面積を得た。緩衝溶液中で測定した容量性電流(図2g)は、これら値と一致していた。上記タンパク質検出のためのセンサーを試験する前に、サイクリックボルタモグラムを、フェロシアニドおよびフェリシアニドを含む溶液中の各構造について得た(図2b、図2d、および図2f)。上記100ミクロンセンサーは、拡散限界電流を示し、上記8ミクロンおよび30ミクロンのセンサーは、微小電極に関して予期されたものと一致したプラトー電流を示した。
【0081】
上記3種の異なるサイズにしたセンサー上に形成されるイムノセンサーの検出限界は、CA−125と40分間にわたってインキュベーションする前後に、[Fe(CN)6]3−/4−溶液の微分パルスボルタモグラム(DPV)を測定することによって評価した。最も大きなセンサー(図3a)を用いたところ、濃度10U/mlが、測定できるシグナル変化に必要とされた。中間の30ミクロンセンサーを用いたところ、検出限界は、1U/mlに近づいた(図3b)。最も小さな8ミクロンセンサーを用いたところ、0.1U/mlのCA−125が検出可能であった(図3c)。0.1U/mlのCA−125抗原は、約500fMのCA−125もしくは100pg/mlに匹敵する。
【0082】
上記例示的な検出システムを生物学的液体で評価するために、ヒト血清中のCA−125サンプルの検出を行った。血清は、大量のタンパク質および他の分子を含む非常に複雑な生物学的液体である。ヒト血清アルブミン(HSA)を、ヒト血清中のHSAの一定かつ高濃度に起因して、内部標準として選択した。多重センサーチップ上に、CA−125およびHSAのイムノセンサーを、抗CA−125抗体および抗HSA抗体の層をそれぞれ形成することによって開発した(図1a)。異なる濃度のCA−125を添加したヒト血清を、上記多重化イムノセンサーに適用し、DPVを、フェロシアニドおよびフェリシアニドの混合溶液中で記録した。図5aは、異なる濃度のCA−125を添加したヒト血清について得られたΔI%(0U/ml CA−125を有する血清に関して)値を示す。抗CA−125抗体で改変したセンサーについてのΔI%は、CA−125の濃度が増えるとともに増大したのに対して、HSAのΔI%は、抗HSA抗体で改変したイムノセンサーに関して本質的に一定であった。血清タンパク質と並行したCA−125の検出は、上記がんバイオマーカーの絶対測定値を提供する有用な手段である。
【0083】
この感知システムの性能をまた、未処理の全血において調査した。血液サンプルに、CA−125を添加し、その分析を、血清および緩衝液研究と同じ様式において行った。興味深いことに、同じ検出限界が得られ、図5bにおいて示されるように、バックグラウンドレベルを超えて、0.1U/mlが明らかに分離された。未処理の血液サンプルで達成されたこのレベルの感度は、この単純で、簡単な電気化学的タンパク質検出アッセイがまた、顕著に堅調であることを示す。
【0084】
以下の表は、種々の電極サイズに関するCA−125のおよその検出限界を示す:
【0085】
【表1】
【0086】
【数1】
【0087】
【数2】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書で示され、記載されてきたが、このような実施形態が例示のためにのみ提供されることは、当業者に明らかである。多くのバリエーション、変更、および置換は、本発明から逸脱することなく、いまや当業者に想起される。本明細書に記載される発明の実施形態の種々の代替が、本発明を実施するにあたって使用され得ることは、理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これら特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの等価物は、特許請求の範囲によって網羅されると解釈される。
図1
図2
図3
図4
図5