(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端に被吸着物を吸着保持する吸着面を備えたセラミックス製黒色ノズルにおいて、該セラミックス製黒色ノズルが部分安定化された平均結晶粒子径0.5〜2.0μmのジルコニア中に、導電性付与材としてTiOx(1.50≦X≦1.95)で示される平均結晶粒子径0.03〜0.15μmの低次酸化チタンを5〜30wt%含有すると共に、該ノズルの先端と後端との間の電気抵抗値が103〜1010Ωであって、かつJIS Z 8729に基づく分光測色計で求められるL*値が50以下であることを特徴とするセラミックス製黒色ノズル。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板の実装分野では、基板の高集積化と高精度化に伴い、微細なチップ部品を高速且つ高精度に実装できる電子部品装着機の開発が進んでいる。この電子部品装着機は、外気を吸引する真空吸引ヘッドの先端部にチップ部品を吸着保持するノズルが取り付けられており、ヘッド部はフィーダー部と回路基板との間を往復移動する。この時、ノズルによって真空吸着されたチップ部品は、ヘッド部がフィーダー部と回路基板との間を移動する途中において画像解析によりチップ部品の吸着状態や部品装着の位置を判定した後に回路基板に装着されるもので、この画像解析は、ノズルの前方からチップ部品および吸着面の方向に光を照射し、反射光量の差からチップ部品の形状や電極位置などを解析することによって行われている。
【0003】
図2は、この電子部品装着機を用いたチップ部品の回路基板への実装工程の一例を示す概略図である。
【0004】
図2に示す電子部品装着機10は、そのヘッド部先端に装着された部品吸着用のノズル1と、チップ部品11を並べたフィーダー部のトレイ12と、ノズル1に吸着されたチップ部品11に向けて光を照射するライト13と、チップ部品11からの反射光を受光するためのCCDカメラ14と、CCDカメラ14で受光した反射光を画像処理するための画像解析装置15とで構成されている。ここで部品吸着用のノズル1は、
図1に例示するように真空吸引することによって電子部品を吸着して保持するための吸着面2を先端に有し、後端から該吸着面にまで連通する吸引孔3をノズル軸心部に有すると共に、ノズル後端から先端に向けて円筒部4、円筒部4の先端側に逆円錐形の円錐部5からなる部位で構成され、該吸引孔3の先端部から後端部の方向に外気の吸引が行われることにより吸着面2にチップ部品11を吸着・保持するものである。
【0005】
そして、この電子部品装着機10は、ノズル1がトレイ12まで移動し、トレイ12上に並べられたチップ部品11を吸着すると、ライト13がノズル1に吸着されたチップ部品11へ向けて光を照射し、この光がチップ部品11の本体等に当たって反射する反射光をCCDカメラ14で受光し、CCDカメラ14で受光した画像を基に画像解析装置15によってチップ部品11のずれや位置を測定して、そのデータを基に回路基板(図示せず)の所定の位置にチップ部品11を吸着したノズル1を移動させて、回路基板上にチップ部品11を実装する仕組みとなっている。
【0006】
ところで、近年、回路基板の高集積化と高精度化に伴いチップ部品の微小化が進んでいるが、この実装現場ではチップ部品が小さく軽量化しているため、静電気によりチップ部品が吹き飛ばされたり、チップ部品が吸着を解除されても離反しないでそのまま持ち帰えったり、また画像解析で誤作動するといったトラブルが多発している。その対策として、ノズルを静電除去するために半導電性とし、且つノズルからの反射光を極力除くために、ノズルの黒色度を高めたり、ノズル吸着面の表面粗さを特定して輝度(反射率)を抑える等の方法が講じられている。
【0007】
例えば、半導電性のセラミックス製黒色ノズルとして、ジルコニアやアルミナに酸化鉄や酸化クロム等の導電性付与材を添加したもの(特許文献1)、またノズル先端の吸着面の表面粗さを特定して輝度(反射率)を抑えたもの(特許文献2〜5)、などが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0017】
本発明のセラミックス製黒色ノズルは、部分安定化された平均結晶粒子径0.5〜2.0μmのジルコニアに、導電性付与材としてTiO
2(二酸化チタン)を5〜30wt%加え、これにバインダーや成形助剤等を加えて混練し、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥して粉末又は顆粒状の原料を作製した後、これを射出成形してノズル形状となし、脱媒、還元焼成することで、成形体中の
TiO2を低次化し、平均結晶粒子径
0.03〜0.15μmのTiOx(1.50≦X≦1.95)を生成せしめた、ノズル先端と後端との間の電気抵抗値が10
3〜10
10Ωであって、かつJIS Z 8729に基づく分光測色計で求められるL*
値が50以下のセラミックス製黒色ノズルである。
【0018】
本発明において、ジルコニアの部分安定化剤としては、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化セリウム(CeO
2)等の一種が好ましく、中でも酸化イットリウムが好ましい。酸化イットリウムの添加量は1〜5モル%が好ましく、1モル%未満では単斜晶ジルコニア量が増加して焼結体内部にクラックが多発して機械的強度が低下する一方、酸化イットリウムの添加量が5モル%を超えると正方晶ジルコニア量が低下してこの場合も優れた機械的強度が得られない。
【0019】
また、本発明のセラミックス製黒色ノズルの主成分である部分安定化ジルコニアの結晶状態は、X線回折から求められる全ジルコニア量に対する単斜晶以外のジルコニア量が80%以上のものが好ましく、単斜晶以外のジルコニア量が80%未満の場合は、ジルコニア特有の応力誘起相変態機能が期待できず、優れた曲げ強度や破壊靱性が得られない。
【0020】
ここで、部分安定化ジルコニアの応力誘起相変態とは、ジルコニアの結晶状態のうちの正方晶ジルコニアが外部応力によって応力誘起変態を受けて単斜晶ジルコニアに相変態する性質を言うもので、この正方晶から単斜晶に相変態する時に生じる体積膨張によってジルコニアの周囲に微小なマイクロクラックが発生し、外部応力の進行が阻止されるため、ジルコニア焼結体の曲げ強度や破壊靭性が高くなるのである。
【0021】
また、本発明で使用するジルコニアは、平均結晶粒子径が0.5〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmのものである。平均結晶粒子径が0.5μm未満では、前記した応力誘起相変態機能が十分発揮されないことから優れた強度や破壊靱性が得られず、また後述する低次酸化チタン粒子との表面凹凸相互作用による優れた部品吸着力や低光沢度が得られないのに対し、平均結晶粒子径が2.0μmより大きいと、耐摩耗性や耐衝撃性、曲げ強度等の機械的特性が低下する。
【0022】
尚、本発明において、ジルコニアと低次酸化チタンの平均結晶粒子径の測定は、焼結体を鏡面仕上げした後、熱エッチングを施し、走査電子顕微鏡にて観察し、インターセプト法により10点平均から求める。算出式としては、D=1.5×L/n〔D:平均結晶粒径(μm)、L:測定長さ(μm)、n:長さL当たりの結晶数〕を用いた。
【0023】
本発明のセラミックス製黒色ノズルは、上記部分安定化ジルコニアに、導電性付与材として二酸化チタンを低次化したTiOx(1.50≦X≦1.95)で示される低次酸化チタンを5〜30wt%含有させたものである。本発明で使用する二酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型のいずれの結晶型でもよく、これらは安価で磁性がなく、安全性や分散性に優れることから着色顔料として多用されているもので、その平均粒子径は焼成後の低次酸化チタンの平均結晶粒子径が
0.03〜0.15μmになるよう適宜調整されたものが使用可能である。
【0024】
この二酸化チタンは、常温では白色で絶縁体であるが、高温で還元焼成すると酸素欠損が起こって色味が灰色、青黒色を経て真黒色に着色すると共に、電気伝導性が高くなるという性質がある。
【0025】
焼成時の還元ガスとしては、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム等の1種、あるいはこれらの混合ガスが好適で、中でも窒素やアルゴン等の不活性ガスと、2〜10vol%程度の水素との混合ガス中で還元するのが、二酸化チタンの低次化が効率よく進む点で好ましい。また、炭素や炭化水素等の還元剤を共存する還元ガス中で焼成してもよい。焼成条件は1200〜1500℃で1〜5時間とするのが好ましく、焼成温度1200℃未満では酸化チタンの還元効率が悪く、黒色化や導電性への構造変化が進みにくくなるほか、主成分であるジルコニアの焼結が不十分となって強度不足となる。一方、焼成温度が1500℃を超えるとジルコニアの粒成長が大きくなり、この場合も強度低下を余儀なくされる。
【0026】
本発明のセラミックス製黒色ノズルにおいて、部分安定化ジルコニア中に含有される低次酸化チタンは、TiOxで表されるX値が1.50〜1.95のものである。即ち、低次酸化チタンは、黒色度ではX値0.2〜1.95のものが、また導電性の点ではX値1.75のものが最大となることが一般的に知られているが、本発明ではこのX値を1.50〜1.95とするもので、X値が1.50未満の場合は、その結晶がNaCl型構造に変化しやすく、体積収縮を起こして強度低下の原因となる。一方、X値が1.95を超えると黒色度や導電性が不足して目的とする黒色半導電性のノズルが得られない。
【0027】
尚、本発明において、低次酸化チタン中の酸素量、すなわちTiOxのX値は、通常、低次酸化チタンは500〜600℃の温度で酸化されて二酸化チタンになり、黒色から白色に変化することから、還元焼成後のセラミックス製黒色ノズルを、大気中で、昇温速度20℃/分とし、常温〜1000℃で熱分析(TG−DTA)し、その間の重量増加分を酸化に伴う酸素の増加量としてX値を算出した。
【0028】
本発明のセラミックス製黒色ノズルはまた、前記部分安定化ジルコニアの平均結晶粒子径を0.5〜2.0μmとするのに対し、低次酸化チタンは、その原料混練や成形、焼成工程での二次凝集や粒子成長等を考慮して、
0.03〜0.15μmの平均結晶粒子径とする必要がある。低次酸化チタンの平均結晶粒子径が
0.15μmより大きいと、部分安定化ジルコニアの結晶粒子との粒径差が小さく、表面平滑性が高くなって、吸着したチップ部品の離反性が悪化し部品の持ち帰り頻度が高くなるという不都合が生じるほか、入射光の乱反射が起こりにくくなるため、ノズル表面の光沢度が高くなってチップ部品装着時の画像解析で誤動作しやすくなる。一方、低次酸化チタンの平均結晶粒子径が0.03μm未満では、部分安定化ジルコニアの結晶粒子との粒径差が大きくなって、真空吸引の際に空気が漏れて吸着力が低下し、チップ部品の位置ずれや落下が多発して装着精度が悪化するという問題が生じる。
【0029】
また、本発明の低次酸化チタンは、例えばTi
2O
3、Ti
3O
5、Ti
4O
7、
Ti5O9等の低次酸化チタンを含むものであって、酸化チタン全体をこれら低次酸化チタンで構成したもの、あるいは低次酸化チタンと二酸化チタンが混在したもの、粒子内部と、粒子表面又はその近傍で酸素欠損度が異なるよう低次化したもの、などが使用可能であるが、それらの成分組成を一般式TiOxで表した時、X値が1.50〜1.95であることが重要である。
【0030】
本発明において、部分安定化ジルコニアに対する前記低次酸化チタンの含有量は、5〜30wt%、好ましくは8〜25wt%であり、低次酸化チタンの含有量が5wt%未満では黒色度と導電性が不十分となる一方、低次酸化チタンの含有量が30wt%を超えるとノズルの曲げ強度や破壊靭性、耐摩耗性等が悪化する。
【0031】
本発明のセラミックス製黒色ノズルは、前記低次酸化チタンを特定量含有させることで、ノズルの先端と後端との間の電気抵抗値を10
3〜10
10Ω、好ましくは10
4〜10
8Ωとし、かつJIS Z 8729に基づく分光測色計で求められるL*値を50以下、好ましくは45以下としたものである。
【0032】
ノズルの先端と後端との間の電気抵抗値が10
3〜10
10Ωであると、ノズルに静電気が帯電しても、この静電気は導通するノズル保持部品や電子部品装着機等を通して適度な速度で除電できるため、ノズルの帯電によるチップ部品の吹き飛びや、放電破壊等のトラブルが防止できる。即ち、ノズルの先端と後端との間の電気抵抗値が10
3Ω未満になると、導電性が高すぎて静電気を一気に除去してしまうため、チップ部品や周囲の部品を静電破壊する恐れがあるのに対し、電気抵抗値が10
10Ωを超えると、ノズルに発生した静電気が帯電するため、塵埃等が付着して電子部品が汚染したり、ノズルがチップ部品に近づくと静電気の反発力によってチップ部品が吹き飛ぶという問題が生じるようになる。
【0033】
また、本発明のセラミックス製黒色ノズルは、その黒色度の指標として、JIS Z 8729に基づく分光測色計で測定したL*値が50以下のものである。
【0034】
電子部品装着機において黒色系ノズルを用いる理由は、ノズルで吸着したチップ部品にライトを照射してCCDカメラで撮影する際、ノズルが黒色系であると背景が暗い状態となってチップ部品の輪郭が明瞭になることから、ノズルに吸着されたチップ部品の形状が正確に認識でき、回路基板にチップ部品を実装する際の位置精度が高くなるという利点があるためである。従って、本発明において、セラミックス製黒色ノズルのL*値が50を超えると、ノズルの明度が高くなって反射光によるノズルとチップ部品の区別が付きにくくなり、認識エラーや誤動作の原因となる。またこの問題は、チップが微小化されたり、装着速度の高速化に伴い顕著となる傾向がある。
【0035】
本発明のセラミックス製黒色ノズルは、前述の如く、部分安定化ジルコニアと低次酸化チタンの結晶粒子径を特定し、ノズル表面に微細な凹凸を形成することで、適度なチップ部品の吸着力や表面光沢性を保持せしめたものであるが、部品の実装工程では実装回数が何十万回、何百万回と増えるに従い、ノズル吸着面が摩耗したり、吸着面にチップ部品の樹脂成分が付着して部品吸着力の低下を招くほか、表面光沢度が高くなって実装効率が低下するなど、これらのトラブル頻度を少なくすべく、必要に応じて予めノズルの少なくとも吸着面を周知の方法で研磨したり、ブラスト処理、DLC処理、ケイ酸皮膜コーティング等の前処理を施してもよいことは言うまでもない。
【0036】
尚、本発明のセラミックス製黒色ノズルは、前記部分安定化ジルコニアと低次酸化チタン以外に、ノズル性能を損なわない範囲でアルミナや窒化チタン、炭化ケイ素などの周知の添加剤を共存させたり、HIP処理を施しても良い。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を理解しやすくするために実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
酸化イットリウムを3モル%含有する平均結晶粒子径1.0μmの部分安定化ジルコニアに、平均粒子径0.07μmの二酸化チタンを種々の割合で加え、これにアクリル系やエチレン酢酸ビニル系のバインダーとワックス類などを加えて混練乾燥することによりコンパウンド原料を作製した。そしてこのコンパウンド原料を金型温度40℃、押出温度150℃の条件で射出成形し、
図1に示すノズル形状の成形品を得た。この成形品を、大気中450〜900℃の条件で脱媒した後、アルゴンを主成分とする不活性ガス中で温度1100℃〜1600℃で1時間焼成して、低次酸化チタンの含有量とX値が異なる種々ノズルサンプルを作製した。
【0039】
得られたノズルサンプルについて、曲げ強度、導電性、黒色度、装着不良率、静電破壊率、吹き飛び率などを評価し、総合評価と共に表1にまとめた。
【0040】
尚、本実施例において、TiOxのX値、曲げ強度、導電性、黒色度、装着不良率、静電破壊率、吹き飛び率、総合評価はそれぞれ次の方法で評価した。
【0041】
低次酸化チタンTiOxのX値は、前述のように還元焼成後のノズルを、大気中で、昇温速度20℃/分とし、常温〜1000℃で熱分析(TG−DTA)し、その間の重量増加分を酸化に伴う酸素の増加量としてX値を算出した。
【0042】
曲げ強度は、それぞれ各試料と同一の組成と製造条件で作製した焼結体を、3mm×4mm×40mmの寸法になるよう研削して試験片とし、JISR1601(2008)に準ずる4点曲げ強度の方法で測定した。
【0043】
導電性は、ノズル先端の吸着面と後端面にそれぞれ電極を接触させ、これら電極間に表面抵抗測定器を接続して電圧を加え、ノズル先端と後端との間の抵抗値を測定した。
【0044】
黒色度は、JIS Z 8729に基づく分光測色計でノズル表面のL*値を測定し、その数値をもって黒色度の良否判定とした。尚、このL*値は色の明度を表すもので、数値が低いほど黒色度が高くなる。
【0045】
装着不良率は、各ノズルサンプルを電子部品装着機に取り付けて、寸法0.6mm×0.3mm(0603タイプ)のチップ部品を実装テストに供した。1万個の装着を行った時点での吸着不良による位置ずれや部品の落下、画像解析不良による位置誤認などの個数をカウントし、これらの総不良個数を1万個で除した装着不良率が0.05%未満であったものを(○)、0.05〜0.5%であったものを(△)、0.5%より高かったものを(×)とした。
【0046】
また静電破壊率は、上記と同様の方法で10万個のチップ部品を基板上に実装し、導通試験機による評価で静電破壊した個数をカウントした。その結果、静電破壊していたチップ部品が3個未満のものを(○)、3〜10個のものを(△)、10個より多く静電破壊したものを(×)とした。
【0047】
吹き飛び率は、上記同様10万個のチップ部品を基板上に実装した時、チップ部品の吹き飛び個数が3個未満のものを(○)、3〜10個のものを(△)、10個より多く静電破壊したものを(×)とした。
【0048】
総合評価は、曲げ強度、装着不良率、静電破壊率、吹き飛び率等を総合的に判断して電子部品装着機の部品吸着用ノズルとして極めて好適なものを(○)、好適なものを(△)、不適なものを(×)とした。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から、低次酸化チタンTiOxの含有量とそのX値が本発明の範囲にあり、且つ導電性と黒色度(L*値)が特定の条件を満たす本発明のセラミックス製黒色ノズルは、機械的強度に優れると共に、装着精度が高く、部品の静電破壊率や吹き飛び率が極めて低いといった特徴を有するなど、電子部品装着機の部品吸着用ノズルとして好適であることが分かる。
【0051】
(実施例10〜16、比較例5〜8)
部分安定化ジルコニアの平均結晶粒子径を0.3〜2.5μmとし、低次酸化チタンの平均結晶粒子径を0.02〜0.35μmの範囲で変えた以外は実施例5と同様の方法でノズルサンプルを作製した。これらノズルサンプル中の低次酸化チタンのX値は1.85〜1.90、導電性はそれぞれ10
5Ω、黒色度(L*値)はそれぞれ30〜35であった。
【0052】
得られたノズルサンプルについて、曲げ強度、装着不良率、持ち帰り率などを評価し、総合評価と共に表2にまとめた。
【0053】
表2において、持ち帰り率は、前記装着不良率の評価と同様の方法で実装テストを行い、1万個の装着を行った時点でのチップ部品の持ち帰り個数をカウントし、その個数を1万個で除した持ち帰り率が0.05%未満であったものを(○)、0.05〜0.5%であったものを(△)、0.5%より高かったものを(×)とした。
【0054】
尚、表2中の曲げ強度、装着不良率、総合評価は、前記表1と同様の方法で評価した。
【0055】
【表2】
【0056】
上記表2の結果から、部分安定化ジルコニアと低次酸化チタンの平均結晶粒子径が本発明の範囲にあるものは、機械的強度、装着精度、持ち帰り率共に良好で、電子部品装着機の部品吸着用ノズルとして好適であることが分かる。