特許第6484782号(P6484782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484782
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/62 20060101AFI20190311BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20190311BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20190311BHJP
   C01B 33/159 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C02F1/62
   C02F1/42 G
   C02F1/28 B
   C01B33/159
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-56173(P2014-56173)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178064(P2015-178064A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237112
【氏名又は名称】富士シリシア化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 光輝
(72)【発明者】
【氏名】三輪 明文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一吉
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜季実
(72)【発明者】
【氏名】過足 義美
(72)【発明者】
【氏名】熊田 裕介
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−125536(JP,A)
【文献】 特表2007−506535(JP,A)
【文献】 特開2013−052346(JP,A)
【文献】 特開2007−021292(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第03823957(DE,A)
【文献】 特開昭51−129425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/62
C01B 33/159
C02F 1/28
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属及びリン酸を含有する廃水中から前記重金属を除去するための処理剤であって、シリカゲルの表面にアルカリ土類金属イオンをイオン交換で導入、又はシリカゲルの表面にアルカリ土類金属ケイ酸化合物を形成させることによって構成されたアルカリ土類金属−シリカゲル複合体を主成分とする前記処理剤を、前記廃水と接触させる第一工程と、
前記第一工程において前記廃水と接触させた前記処理剤を、前記廃水から分離する第二工程と、
前記第二工程において前記処理剤を分離させた前記廃水から、リン酸化合物を回収する第三工程と
を含む廃水の処理方法。
【請求項2】
前記第一工程では、前記廃水のpHが7−9.5に調節される
請求項1に記載の廃水の処理方法。
【請求項3】
前記第一工程では、前記廃水1L当たり200−5000mgの前記処理剤が使用される
請求項2又は請求項3に記載の廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸を含有する廃水(以下、リン酸含有廃水と称する。)中から重金属を除去するための処理剤と、そのような処理剤を利用したリン酸含有廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リン酸含有廃水の処理方法としては、リン酸含有廃水中に塩化カルシウム溶液を添加して、リン酸カルシウムの沈殿を生成させて除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−1154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような処理方法によって廃水中から分離・除去される固形分中には、多量のリン酸カルシウムが含まれている。したがって、そのような固形分をリン資源として再資源化することができれば、リン資源の有効利用を図ることができる上に、産業廃棄物として処分される固形分の減量を図ることができる。
【0005】
しかし、上述のようなリン酸含有廃水中には、リン酸以外にも重金属が含まれている場合があり、そのような場合には、重金属を適切に除去しないと、リンの再資源化を妨げる要因になる、という問題がある。
【0006】
より詳しくは、廃水中にリン酸と重金属イオンが共存している場合、リン酸カルシウムを沈殿させる工程では、重金属も共沈されることになる。そのため、廃水中に含まれる重金属イオンがごく低濃度であっても、沈殿物として回収されるリン酸カルシウム中には、濃縮されて高濃度になった重金属が含まれることになる。このような状態になってしまうと、固形分中から重金属だけを取り除くことができるような有効な方法はないため、リンの再資源化は非常に難しくなり、再資源化ができなければ産業廃棄物の増加を招くことになる。
【0007】
一方、廃水中から重金属を除去する方法としては、例えば鉛を含む廃水処理の場合であれば、一般に、廃水のpH調整により鉛を不溶性の水酸化鉛に変換して除去する中和沈殿法が利用されている。しかし、廃水中の鉛濃度がごく低濃度(例えば100ppb以下程度)である場合には、分離対象となる沈殿の生成量が過度に少なくなるため、そのような微量の沈殿物を有効に分離する方法がなく、微量の重金属を高度に除去することは困難である。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、リン酸含有廃水中に含まれる微量の重金属を高度に除去することで、リンの再資源化を実現可能とするリン酸含有廃水の処理剤と、そのような処理剤を利用したリン酸含有廃水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明のリン酸含有廃水の処理剤は、シリカゲルの表面にアルカリ土類金属イオンをイオン交換で導入、又はシリカゲルの表面にアルカリ土類金属ケイ酸化合物を形成させることによって構成されたアルカリ土類金属−シリカゲル複合体を主成分とする。
【0010】
本発明のリン酸含有廃水の処理剤において、前記アルカリ土類金属−シリカゲル複合体は、平均粒子径1μm−10mmの粒子状とされていることが好ましい。
また、本発明のリン酸含有廃水の処理剤において、前記アルカリ土類金属−シリカゲル複合体は、0.5−20重量%のアルカリ土類金属を含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明のリン酸含有廃水の処理剤において、前記アルカリ土類金属は、カルシウム又はマグネシウムであることが好ましい。
本発明のリン酸含有廃水の処理方法は、シリカゲルの表面にアルカリ土類金属イオンをイオン交換で導入、又はシリカゲルの表面にアルカリ土類金属ケイ酸化合物を形成させることによって構成されたアルカリ土類金属−シリカゲル複合体を主成分とするリン酸含有廃水の処理剤を、前記リン酸含有廃水と接触させる第一工程と、前記第一工程において前記リン酸含有廃水と接触させた前記処理剤を、前記リン酸含有廃水から分離する第二工程と、前記第二工程において前記処理剤を分離させた前記リン酸含有廃水から、リン酸化合物を回収する第三工程とを含む処理方法である。
【0012】
本発明のリン酸含有廃水の処理方法において、前記第一工程では、前記リン酸含有廃水のpHが7−9.5に調節されることが好ましい。
また、本発明のリン酸含有廃水の処理方法において、前記第一工程では、前記リン酸含有廃水1L当たり200−5000mgの前記処理剤が使用されることが好ましい。
【0013】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
本発明のリン酸含有廃水の処理剤において、主成分とされるアルカリ土類金属−シリカゲル複合体は、シリカゲルを基材として、その基材表面にアルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類金属ケイ酸化合物を導入したものである。
【0014】
基材となるシリカゲルとしては、比表面積100−800m2/g、粒子径1μm−10mmの物性を有するものが利用できる。また、基材表面に導入されるアルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどを使用することができる。これらの中でも、最終的に回収したいリン酸塩中へ混入する可能性などを考慮すると、カルシウム又はマグネシウムが特に好ましい。
【0015】
これらのアルカリ土類金属を基材表面に導入する方法は特に限定されないが、一例を挙げれば、例えば、シリカゲルをアルカリ土類金属塩溶液に浸漬、加熱処理を施し、脱液・乾燥する、といった手順を採用すればよい。
【0016】
アルカリ土類金属分の担持量(アルカリ土類金属−シリカゲル複合体中における含有量)は、アルカリ土類金属塩溶液の濃度に依存して増減するが、実用上は、0.5−20重量%程度のアルカリ土類金属分が担持されていると好ましい。アルカリ土類金属分の担持量が0.5重量%より少ない場合、重金属を除去するために必要となるアルカリ土類金属−シリカゲル複合体の添加量が増大する。一方、アルカリ土類金属分の担持量が20重量%を超えると、シリカゲルと複合化されないアルカリ土類金属成分が発生する。そのため、そのようなアルカリ土類金属成分の微粉が重金属除去後の処理液中に含まれていると、固形分と液体とをろ過によって分離する際に分離性が低下する。
【0017】
また、アルカリ土類金属−シリカゲル複合体の形状については、平均粒子径1μm−10mmの粒子状とされていることが好ましい。アルカリ土類金属−シリカゲル複合体の粒
子径が1μmを下回ると、ろ過のとき分離性が悪くなる傾向がある。一方、アルカリ土類金属−シリカゲル複合体の粒子径が10mmを上回ると、重金属の除去速度が遅くなる。
【0018】
このような処理剤は、例えば、処理剤をリン酸含有廃水の中に投入して撹拌するか、このような処理剤を充填した充填層にリン酸含有廃水を通液することで、処理剤とリン酸含有廃水を十分に接触させる。処理剤とリン酸含有廃水を接触させる工程においては、好ましくはリン酸含有廃水のpHを7−9.5に調節しておくとよい。pHが7を下回ると、アルカリ土類金属−シリカゲル複合体からアルカリ土類金属成分が溶出しやすくなり、複合体粒子表面での重金属除去特性が低下しやすくなる。また、pHが9.5を上回ると、アルカリ土類金属−シリカゲル複合体に含まれるシリカゲルの溶解性が増大しやすくなる。
【0019】
また、処理剤をリン酸含有廃水の中に投入して撹拌する場合は、例えば、廃水1L当たり200−5000mg程度の処理剤を添加し、0.5時間以上撹拌するとよい。
処理剤とリン酸含有廃水を接触させる工程においては、下記(A)−(C)のような複数の重金属除去プロセスが同時に進行する。
(A)基材表面に担持されているアルカリ土類金属塩イオンと廃水中の重金属イオンがイオン交換する。
(B)基材表面にリン酸イオンが吸着されてリン酸塩化合物が基材表面に形成され、これに重金属イオンが吸着される。
(C)重金属イオンとイオン交換若しくは一部溶離することで生成したアルカリ土類金属イオンが廃水中のリン酸イオンと反応し、リン酸塩化合物が形成、これに重金属イオンが吸着される。
【0020】
そのため、廃水中へ添加される処理剤の添加量が少量であっても、上記のような複数の重金属除去プロセスが同時進行することで、微量の重金属に対しても高度な重金属除去が達成され、かつ短時間での重金属除去を実現することができる。
【0021】
以上のような接触工程の後は、静置による沈降分離・遠心分離・ろ過等による固液分離工程を経て、液中より処理剤を除去する。そして、処理剤を除去した後の処理済みリン酸含有廃水からリン酸化合物を回収する。なお、リン酸化合物の回収方法は、例えば、以下のような操作で行えばよい。(1)脱鉛処理後のリン酸廃液に塩化カルシウムを添加。(2)析出物をろ過し、リン酸カルシウムとして回収。以上のような回収工程で回収されるリン酸化合物は、重金属をほとんど含まないものとなる。したがって、飼料・肥料用途への利用、食品添加物原料用途、リン化合物原料など幅広くリン資源としてリサイクルすることが可能となり、リン資源の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】処理剤の使用量と重金属(鉛)及びリンの濃度との関係を示すグラフ。
図2】処理剤の違いによる重金属(鉛)濃度の違いを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
(1)リン酸含有廃水の処理剤の製造例
水酸化カルシウム12.5gを水250mLに分散させた溶液を調製後、シリカゲル粒子(富士シリシア化学株式会社製、品名:BW−200、粒度幅45−106μm)100gを投入し、スラリーを得た。
【0024】
このスラリーを85−90℃で4時間加熱撹拌後、脱液・乾燥することで、カルシウム表面処理シリカゲル粒子(本発明のリン酸含有廃水の処理剤に相当。以下、単に処理剤と
称する。)を得た。処理剤のカルシウム担持量は、カルシウム成分を硝酸で抽出し、ICP発光分光分析装置を用いて抽出液中のカルシウム濃度を定量分析により求めたところ、2.6重量%であった。このカルシウム担持量は、仕込み時における水酸化カルシウム添加量に応じて任意に調製することができ、例えば0.5−20重量%に調製可能である。また、水酸化カルシウムに代えて、例えば水酸化マグネシウムを用いれば、マグネシウム表面処理シリカゲル粒子を得ることが可能である。この場合、マグネシウムの担持量についても、任意に調製でき、例えば0.5−20重量%に調製可能である。
【0025】
(2)リン酸含有廃水の処理例(その1)
鉛含有リン酸模擬廃水(鉛濃度60ppb、リン酸濃度300ppm)1Lを水酸化ナトリウム溶液でpH9に調整し、試験溶液とした。この試験溶液100mLに上記(1)項の手順で製造した処理剤(平均粒径50μm、Ca担持率2.6重量%)を100−1000ppm添加し、スターラーで30分撹拌後、30分ほど静置した後、上澄みを5Cろ紙にてろ過した。
【0026】
ろ液中に含まれる鉛濃度及びリン濃度はICP発光分光分析装置を用いて定量分析した。その結果、図1に示すように、処理剤添加量を600ppm以上とすることで、残留鉛濃度を3ppm以下とすることができた。一方、リン濃度については、処理剤添加前後でほとんど変化していないことから、処理剤添加により模擬廃水中から鉛が選択的に除去されたことを確認した。
【0027】
処理剤600ppm添加後の試験溶液に塩化カルシウムを添加し、30分間撹拌・ろ過することにより、リン酸カルシウムを回収した。回収物の一部を硝酸で溶解し、溶液中の鉛濃度をICP発光分光分析装置で定量分析したところ、回収物中の鉛含有量は、0.52−0.70ppmと1ppm(1μg/g)以下を示し、リン酸カルシウムの食品添加物の成分規格20μg/g以下を十分満たすことを確認した。
【0028】
比較のため、上記試験溶液100mLにケイ酸カルシウム(和光純薬工業製)・炭酸カルシウム(和光純薬工業製)を200ppm添加し、スターラーで30分撹拌後、30分ほど静置した後、上澄みを5Cろ紙にてろ過した。ろ液中に含まれる鉛濃度はICP発光分光分析装置を用いて定量分析した。
【0029】
試験溶液の原水、上記(1)項の手順で製造した処理剤を添加した例(実施例)、ケイ酸カルシウムを添加した例、炭酸カルシウムを添加した例それぞれについて、鉛濃度を測定した結果を図2に示す。処理廃水中の残留鉛濃度より、ケイ酸カルシウム・炭酸カルシウムともほとんど除去能がなく、上記(1)項の手順で製造した処理剤のみが鉛除去能を有していることがわかった。
【0030】
(3)リン酸含有廃水の処理例(その2)
ヒ素含有リン酸模擬廃水(ヒ素濃度50ppb、リン酸濃度300ppm)を試験溶液とした。この試験溶液100mLに上記(1)項の手順で製造した処理剤(平均粒径50μm、Ca担持率2.6重量%)を1000ppm添加し、スターラーで1時間撹拌後、30分ほど静置した後、上澄みを5Cろ紙にてろ過した。
【0031】
ろ液中に含まれるヒ素濃度はICP発光分光分析装置を用いて定量分析したところ、処理後のヒ素濃度は、20ppb以下となり、ヒ素除去能を確認した。処理後の廃水から回収したリン酸カルシウム中のヒ素濃度を測定したところ、食品添加物の成分規格20μg/g以下を満たすことを確認した。
【0032】
(4)リン酸含有廃水の処理例(その3)
カドミウム・水銀のいずれかを含む鉛含有リン酸模擬廃水(鉛濃度44ppb、カドミウム濃度51ppb、水銀濃度18ppb、リン酸濃度300ppm)を試験溶液とした。この試験溶液100mLに上記(1)項の手順で製造した処理剤(平均粒径50μm、Ca担持率2.6%)を1000ppm添加し、スターラーで1時間撹拌後、30分ほど静置した後、上澄みを5Cろ紙にてろ過した。ろ液中に含まれるカドミウム・水銀濃度はICP発光分光分析装置を用いて定量分析した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
上記試験結果から、鉛はそれぞれ12ppb(カドミウム混合溶液)、9ppb(水銀混合溶液)を示し、初期濃度に比べて鉛が除去されていることを確認した。その他の重金属については、カドミウム 0.3ppb以下、水銀 11.4ppbとなり、カドミウムはほぼ全量、水銀は40%程除去されることを確認した。処理後の廃水から回収したリン酸カルシウム中の鉛含有率を測定したところ、1.4μg/g以下(カドミウム混合溶液)、1.2μg/g以下(水銀混合溶液)を示した。処理前の廃水から回収したリン酸カルシウム中の鉛含有率 39μg/gに比べて大幅に低下し、食品添加物の成分規格20μg/g以下を満たすことを確認した。その他の重金属については、カドミウム含有率が34μg/g(処理前)から0.2μg/g以下(処理後)、水銀含有率が5.8μg/g(処理前)から3.7μg/g(処理後)と低下することを確認した。
【0035】
(5)リン酸含有廃水の処理例(その4)
鉛含有リン酸模擬廃水(鉛濃度60ppb、リン酸濃度300ppm)1Lを水酸化ナトリウム溶液でpH9に調整し、試験溶液とした。この試験溶液100mLにケイ酸マグネシウムおよび上記(1)項の手順で製造した処理剤(平均粒径50μm、Mg担持率2.6重量%)を1000ppm添加し、スターラーで1時間攪拌後、30分ほど静置した後、上澄みを5C濾紙にてろ過した。
【0036】
ろ液中に含まれる鉛濃度はICP発光分光分析装置を用いて定量分析したところ、処理後の鉛濃度は、20ppb以下となり、鉛除去能を確認した。処理後の模擬廃水から回収したリン酸カルシウム中の鉛濃度を測定したところ、それぞれケイ酸マグネシウムを用いた方はほとんど検出されず、マグネシウム処理シリカは6.0μg/gを示し、食品添加物の成分規格20μg/g以下を満たすことを確認した。
【0037】
(6)その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0038】
例えば、上記(1)項の製造例では、基剤となるシリカゲルに対して、水酸化カルシウムを担持させる例を示したが、水酸化カルシウムの代わりに他のカルシウム化合物を利用
してもよい。他のカルシウム化合物の例としては、例えば、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0039】
また、これらのカルシウム化合物の代わりに、カルシウム化合物以外のアルカリ土類金属化合物を利用しても良い。アルカリ土類金属化合物の例としては、例えば、マグネシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物などを考えることができる。
【0040】
マグネシウム化合物の例としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
ストロンチウム化合物の例としては、例えば、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウムなどを挙げることができる。
【0041】
バリウム化合物の例としては、例えば、酸化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
図1
図2