特許第6484832号(P6484832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484832
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】マイクロホン、マイクロホン用筐体
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20190311BHJP
   H04R 1/04 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   H04R1/02 106
   H04R1/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-43131(P2015-43131)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-163284(P2016-163284A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100177367
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 崇
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−055442(JP,A)
【文献】 特開2008−166909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/04
H04R 1/28
H04R 1/32
H04R 1/34
G10K 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を電気信号に変換するマイクロホンユニットと、
前記マイクロホンユニットを収容する筒状の筐体と、
前記筐体の側面に設けられている開口部と、
前記筐体の内面の前記開口部を取り囲むように設けられている段差部と、
前記筐体の内側から前記段差部に取り付けられている板状のシールド部材と、
前記筐体に収容されていて、電気回路を構成する基板面および側面の前記シールド部材との接触位置に接地パターンを備えている回路基板と、
を有する、
マイクロホン。
【請求項2】
前記シールド部材は、前記筐体と前記接地パターンと電気的に接続している、
請求項1記載のマイクロホン。
【請求項3】
前記回路基板は、幅方向の寸法が前記シールド部材の内径と同寸である、
請求項1または2記載のマイクロホン。
【請求項4】
前記マイクロホンユニットは、前記回路基板の一端に取り付けられている、
請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項5】
前記筐体は、横断面形状が円形である、
請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項6】
前記シールド部材は、前記接地パターンより硬い材料により形成されている、
請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項7】
前記回路基板は、前記接地パターンの近傍に弾性力発生部を備えている、
請求項1乃至6のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項8】
音声を電気信号に変換するマイクロホンユニットを収容する筒状の筐体と、
前記筐体の側面に設けられている開口部と、
前記筐体の内面の前記開口部を取り囲むように設けられている段差部と、
前記筐体の内面側から前記段差部に取り付けられている板状のシールド部材と、
前記筐体に収容されていて、電気回路を構成する基板面および側面の前記シールド部材との接触位置に接地パターンを備えている回路基板と、
を有する、
マイクロホン用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンとマイクロホン用筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14に示すように、マイクロホン100、例えば単一指向性コンデンサマイクロホンには、マイクロホンユニット110の振動板の後方に電子回路を構成する回路基板160が設けられ、小型化されたものがある。また、単一指向性コンデンサマイクロホンでは、単一指向性を実現するために、振動板の前後の2方向から音声を取り入れている。このため、筐体120の前方の前カバー130は、前部開口部131を有する。また、図15に示すように、単一指向性コンデンサマイクロホンのマイクロホンユニット110を収容する筐体120はその側面に後部開口部121を有する。
【0003】
筐体120の側面の後部開口部121付近には、インピーダンス変換器を実装した回路基板が載置される。したがって、マイクロホン100では、後部開口部121付近から高周波電流が入り込むとインピーダンス変換器が検波して、雑音が発生してしまう。雑音を抑えるため、後部開口部121には、短冊状に切り出された金属網やパンチングメタルなどのシールド部材150が設けられ、静電シールドを構成している。
【0004】
筐体120の後部開口部121の開口面積は、音声を効率よく取り入れるため大きく確保されることが求められている。また、後部開口部121の開口面積が大きくなると、外来電磁波が混入しやすくなるため、シールド部材が確実に取り付けられていることが求められている。
【0005】
図16に示すように、従来、シールド部材150は、円筒状に丸められ、筐体120の側面に沿うように筐体120の内部に入れられて接着剤などで固定されていた。しかし、シールド部材150は、筐体120の内側で固定される際に十分な応力が加えられないため、本来の固定位置からずれてしまうことがあった。この場合、シールド部材150は筐体120の内部で確実に後部開口部121を覆うことができず、高い静電シールド性能を得られなかった。また、高い静電シールド性能を得るためには、シールド部材150が短い導電経路で接地されることが求められる。
【0006】
なお、マイクロホンにおいて、後方音響端子における電磁シールドをするために、金属メッシュをユニットケースの内壁面に向けて押圧するコイルバネが設けられている技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、マイクロホンにおいて、シールド板に音波を通す複数の開口が形成されている技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献1または2に開示された技術では、シールド部材がずれたまま固定されてしまうおそれがあり、シールド部材の接地経路を短くすることはできないため、高い静電シールド性能を得ることが難しい。また、特許文献1に開示された技術では、金属メッシュを押圧するコイルバネが必要であるため、構成が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4939922号公報
【特許文献2】特許第5449932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、簡易な構成で高い静電シールド性能を得ることができるマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、音声を電気信号に変換するマイクロホンユニットと、マイクロホンユニットを収容する筒状の筐体と、筐体の側面に設けられている開口部と、筐体の内面の開口部を取り囲むように設けられている段差部と、筐体の内面側から段差部に取り付けられている板状のシールド部材と、筐体に収容されていて、電気回路を構成する基板面および側面のシールド部材との接触位置に接地パターンを備えている回路基板と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で高い静電シールド性能を得ることができるマイクロホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るマイクロホンの実施の形態を示す側断面図である。
図2図1のマイクロホンの筐体本体を示す側断面図である。
図3図1のマイクロホンの金属網を示す側断面図である。
図4】前カバーを組み付けた状態の筐体本体の先端部分を示す拡大側断面図である。
図5図1のマイクロホンの前カバーを示す側断面図である。
図6図1のマイクロホンのマイクロホンユニットと回路基板を示す拡大側面図である。
図7】筐体本体と回路基板との寸法を示す正断面図である。
図8図1のマイクロホンのマイクロホンユニットとマイクロホン用筐体との組み付け工程を示す模式図である。
図9図1のマイクロホンの先端部分を示す拡大側断面図である。
図10図1のマイクロホンの正断面図である。
図11】本発明に係るマイクロホンの別の実施の形態を示す先端部分の拡大側断面図である。
図12図11のマイクロホンのマイクロホンユニットと回路基板を示す拡大側面図である。
図13図11のマイクロホンの正断面図である。
図14】関連技術のマイクロホンを示す側断面図である。
図15】関連技術のマイクロホンの筐体本体を示す側断面図である。
図16】関連技術のイクロホンのマイクロホンユニットとマイクロホン用筐体との組み付け工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るマイクロホンとマイクロホン用筐体の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
●マイクロホン(1)●
図1に示すように、本実施の形態に係るマイクロホン1は、後部開口部21を有する円筒状の筐体本体2と、筐体本体2の開放端の一方を覆う前カバー3と、開放端の他方を覆うテールピース4と、後部開口部21を覆う金属網5とを有する。筐体本体2と前カバー3とテールピース4と金属網5は、本実施の形態に係るマイクロホン用筐体20を構成する。マイクロホン用筐体20は、内部にマイクロホンユニット10と回路基板6とを収容する。
【0016】
マイクロホン1では、筐体本体2の前カバー3が取り付けられている側(図1の紙面左側)を前方、その反対側のテールピース4が設けられている側(図1の紙面右側)を後方とする。
【0017】
図2を参照して、筐体本体2の構成を説明する。筐体本体2の形状は、例えば円筒状などの前後方向に長い筒状である。筐体本体2は、内部にマイクロホンユニット10や回路基板6などを収容するための空洞を有する。また、筐体本体2は、一端に前カバー3が取り付けられる開放端23を有し、他端にテールピース4が取り付けられる開放端24を有する。筐体本体2は、マイクロホンユニット10に対して外部からの静電シールドを行うため、金属などの導電性の材料で形成されている。筐体本体2には、テールピース4を固定するネジ7を挿入する孔25が設けられている。
【0018】
なお、筐体本体2を構成する導電性を有する部材は、金属に限定されず、プラスティックなどの樹脂であってもよい。筐体本体2が樹脂で構成される場合には、少なくとも筐体本体2の内壁が鍍金(メッキ)などにより導電性を有していればよい。筐体本体2の外壁も同様に鍍金され、外壁と内壁が導通している場合、静電シールドの効果が向上する。このような筐体本体2を用いることは、軽いマイクロホンの提供を可能にする。筐体本体2は、単一指向性マイクロホンに用いられるため、振動板の背面側に向けて音声を取り入れるスリット状の後部開口部21を備えている。後部開口部21は、前側の開放端24寄りの側面に複数設けられている。
【0019】
後部開口部21は、振動板の背面側に向けて均一に音声を取り入れるため、筐体本体2の側面に均等に設けられている。具体的には、各々の後部開口部21は互いに同じ形状で、等間隔に配置されている。マイクロホンユニット10が組み込まれたときに、後部開口部21の付近には、振動板と同時に動く空気の中心位置である後部音響端子がある。
【0020】
後部開口部21の内側には、段差部22が設けられる。段差部22は筐体本体2の内周に沿って設けられ、筐体本体2の内壁の他の部分より厚さが薄い部分である。段差部22の内径は、筐体本体2の内径よりも大きい。段差部22は、筐体本体2の内側に金属網5を取り付ける際に、筐体本体2の内側で金属網5を所定の位置に保持させる。
【0021】
図1に示すように、後部開口部21の内側には、段差部22の周方向の全体に亘って金属網5が取り付けられている。筐体本体2の後部開口部21が設けられている付近には、例えばFETからなるインピーダンス変換器を実装した回路基板6が配置される。マイクロホンユニット10から出力された音声信号は回路基板6、不図示の伝送線路(例えば、平衡二芯シールド線など)を介して外部機器に接続される。このとき、後部開口部21付近に回路基板6が配置されると、FETなどの部品が外部の電磁波を検波しやすくなり、音声信号に雑音が混入しやすい。このような音声信号の経路中における雑音の混入を避けるため、後部開口部21の内側には、シールド部材として例えば金属網5を設けて、音声信号の経路に対して静電シールドを施している。
【0022】
図3に示すように、金属網5は、上述のように音声信号の経路に対して静電シールドを施しつつ、後部開口部21からの音波の流通を確保するために、短冊状の金属部材に孔51が複数設けられている。金属網5は筐体本体2の内側に沿って取り付けられるために、短冊状の部材を円筒状に丸めて形成されている。図4に示すように、段差部22に係止させるため、円筒状に丸めたときの金属網5の寸法は段差部22の内径に対応した寸法になっている。また、段差部22に係止させて筐体本体2の内部での位置を保持させるために、金属網5の前後方向の寸法は段差部22の前後方向の寸法に合わせられている。
【0023】
図1に示すように、筐体本体2の前方側の開放端には、と筐体本体2内部のマイクロホンユニットを覆う前カバー3が載置される。前カバー3は、マイクロホンユニットに対して外部からの静電シールドを行うため、金属などの導電性の材料で形成されている。前カバー3は、振動板の前面側に向けて音声を取り入れる必要がある。そのため、図5に示すように、前カバー3には、スリット状の前部開口部31が複数設けられている。前部開口部31の前面側には、振動板と同時に動く空気の中心位置である前部音響端子がある。
【0024】
筐体本体2の後方側の開放端24には、テールピース4が設けられている。テールピース4は、筐体本体2に設けられている孔25に対応するネジ孔41を備え、ネジ7によりねじ止めされている。テールピース4は、筐体本体2に嵌合しやすいように、硬質プラスティックなどの弾性体により形成されている。テールピース4は、その中心付近にケーブルなどを配線させるため、筐体本体2側の一端から他端までを貫く中空の部材である。
【0025】
マイクロホンユニット10は、筐体本体2の内部に載置され、音声を電気信号である音声信号に変換して出力する。マイクロホンユニット10は、例えば、コンデンサマイクロホンユニットであり、音声を音声信号に変換して出力するために、振動板と固定極などを備えている。マイクロホンユニット10の後方側には、回路基板6が取り付けられている。
【0026】
回路基板6は、前後方向が長手方向になる略矩形の板状であり、筐体本体2に収容されている。回路基板6は、電気回路を構成する基板面61と、前方側の幅方向の端部の基板面61に設けられている接地パターン62とを備えている。接地パターン62は、回路基板6の厚さ方向の面の一部にもまたがって設けられている。接地パターン62が設けられている位置は、回路基板6が筐体本体2の内部に挿入されたときに、回路基板6と金属網5との接触位置に相当する。図6に示すように、マイクロホン1の組み立て時において、回路基板6の前方側には、マイクロホンユニット10が取り付けられる。
【0027】
図7に示すように、回路基板6の幅方向の寸法W1は、筐体本体2の内部に収容することができるように、筐体本体2に収容されている金属網5の内径D1と略同寸である。
【0028】
図8に示すように、マイクロホン1を組み立てる際には、筐体本体2の内部に、図4に示した金属網5を収容している状態で回路基板6を挿入する。このとき、回路基板の前端には、マイクロホンユニット10が取り付けられている。筐体本体2の内部への挿入後、回路基板6の後端はテールピース4により押し込まれる。
【0029】
図9図10に示すように、筐体本体2の内部に挿入された回路基板6の短手方向の寸法W1は金属網5の内径D1と同寸程度である。そのため、段差部22に係止されている金属網5は回路基板6によって筐体本体2の内壁に押し付けられる。金属網5は導電性の筐体本体2の内壁に密着することで金属網5と筐体本体2との接触度合いが増し、後部開口部21付近の電気的接続が高まる。したがって、後部開口部21付近に静電シールドが形成される。また、回路基板6の接地パターン62が金属網5と接触するため、金属網5の内面が接地パターン62と電気的に接続する。すなわち、筐体本体2と金属網5と接地パターン62が電気的に接続される。このため、マイクロホン1によれば、筐体の接地経路が短くなることで、静電シールドの効果を高めることができる。
【0030】
●マイクロホン(2)●
本発明に係るマイクロホンの別の実施の形態について、先に説明した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0031】
図11に示すように、本実施の形態に係るマイクロホン1Aは、接地パターン62Aが設けられている位置の近傍、具体的には回路基板6Aの中央寄りの位置に切欠63が設けられている点において、先に説明したマイクロホン1と異なる。図12に示すように、切欠63は、回路基板6Aを筐体本体2の内部に挿入したときに回路基板6Aの接地パターン62A付近を撓ませる。このとき、切欠63は筐体本体2の内壁を押し付ける方向に弾性力を発揮する弾性力発生部として機能するとともに、筐体本体2内において寸法を調整する緩衝材としての機能を有する。
【0032】
図13に示すように、切欠63により接地パターン62A付近の回路基板6Aの上記弾性力により、接地パターン62Aは確実に金属網5に接触する。このため、マイクロホン1Aによれば、金属網5と筐体本体2との電気的接続の接触度合いが増し、後部開口部21付近の静電シールドの効果が高まる。
【符号の説明】
【0033】
1 マイクロホン
2 筐体本体
3 前カバー
4 テールピース
5 金属網
6 回路基板
7 ネジ
10 マイクロホンユニット
20 マイクロホン用筐体
21 後部開口部
22 段差部
23 開放端
24 開放端
25 孔
31 前部開口部
51 孔
61 基板面
62 接地パターン
63 切欠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16