(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484851
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】偏光光照射装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
G02F1/1337
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-259461(P2014-259461)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-118719(P2016-118719A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和重
(72)【発明者】
【氏名】新井 敏成
【審査官】
磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−225313(JP,A)
【文献】
特開2014−174352(JP,A)
【文献】
特開2013−228516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された照射領域に偏光光を照射する光源ユニットと、前記照射領域を通過するように、基板を一軸方向に沿って移動させるステージとを備え、
前記ステージは、前記照射領域の一軸方向一方側で基板の方向を一定に保持して前記照射領域の一軸方向他方側で基板の保持を開放する複数の基板保持部と、前記基板保持部が保持する基板を、一定高さで摺動自在に支持する基板支持手段とを備え、
前記基板保持部は、前記基板支持手段に対して移動して、一つの基板保持部が一つの基板の保持を開放する前に、他の基板保持部が他の基板を保持することを特徴とする偏光光照射装置。
【請求項2】
前記基板保持部は、前記照射領域の一軸方向一方側に設けた基板搬入位置で基板を保持し、前記照射領域の一軸方向他方側に設けた基板搬出位置で基板の保持を開放することを特徴とする請求項1記載の偏光光照射装置。
【請求項3】
前記基板保持部は、一軸方向に沿った複数の軸上をそれぞれ独立して移動する複数の保持体を備え、一つの保持体が保持する基板が前記照射領域を通過し終わる前に、他の保持体が他の基板を保持することを特徴とする請求項1又は2記載の偏光光照射装置。
【請求項4】
前記保持体は、前記照射領域の一軸方向他方側で基板の保持を開放した後、移動する基板に干渉しない位置に退避して前記照射領域の一軸方向一方側に戻ることを特徴とする請求項3記載の偏光光照射装置。
【請求項5】
前記基板保持部は、保持する基板の方向を回転調整する回転調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光光照射装置。
【請求項6】
前記照射領域の一軸方向一方側に、基板の方向を回転調整する回転調整手段を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどの基板に配向膜を形成する処理技術として、基板に感光性樹脂の膜を形成し、その膜に偏光光を照射する光配向処理が知られている。この光配向処理には、基板上の膜に対して偏光光を均一に照射することが必要になるが、基板の大面積化に対応するために、基板の幅方向全体に偏光光を照射できる一方向に長い光源ユニットを用い、基板を光源ユニットの長手方向に交差する方向に移動させながら基板全体を走査露光する偏光光照射装置が使用されている。この偏光光照射装置は、基板を載置して一軸方向に移動するステージと、ステージを移動させるステージ移動機構を備えている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5105567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような偏光光照射装置において、一つのステージで処理を行うと、光源ユニットのステージ移動方向両側で基板の搬入と搬出を交互に行う必要があり、基板のハンドリングが煩雑になる問題がある。また、ステージへの基板の搬入・搬出時間が偏光光の照射時間に対して追加されることになるので、効率的な処理を行うことができない問題がある。
【0005】
これに対して、光源ユニットの偏光光照射領域に一方側から連続的に基板を供給できれば、効率的な処理が可能になるが、配向膜などを形成するための偏光光照射装置では、基板の方向(基板に形成されたパターンの方向)と照射する偏光光の偏光軸との関係を一定に維持した状態で、基板が偏光光照射領域を通過する必要があり、そのような要求を高い精度で満たす基板の移送手段が求められている。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、基板に偏光光を照射して、光配向処理などを行う偏光光照射装置において、偏光光照射領域に一方向から連続的に基板を供給することで、基板の搬入、偏光光照射、基板の搬出をワンウェイで行い、処理効率の向上を図ること、その際、基板の方向を精度良く保って高い処理精度を確保すること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明による偏光光照射装置は、以下の構成を具備するものである。
設定された照射領域に偏光光を照射する光源ユニットと、前記照射領域を通過するように、基板を一軸方向に沿って移動させるステージとを備え、前記ステージは、前記照射領域の一軸方向一方側で基板の方向を一定に保持して前記照射領域の一軸方向他方側で基板の保持を開放する複数の基板保持部
と、前記基板保持部が保持する基板を、一定高さで摺動自在に支持する基板支持手段とを備え、前記基板保持部は、
前記基板支持手段に対して移動して、一つの基板保持部が一つの基板の保持を開放する前に、他の基板保持部が他の基板を保持することを特徴とする偏光光照射装置。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する本発明は、光配向処理などを行う偏光光照射装置において、偏光光照射領域に一方向から連続的に基板を供給することで、基板の搬入、偏光光照射、基板の搬出をワンウェイで行い、処理効率の向上を図ることができ、その際、基板の方向を精度良く保って高い処理精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る偏光光照射装置を示した説明図((a)が平面視の説明図であり、(b)が側面視の説明図)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る偏光光照射装置を示した説明図(動作説明図、(a)〜(g)は動作過程を示す)である。
【
図3】本発明の実施形態に係る偏光光照射装置を示した説明図(動作説明図、(a)〜(g)は動作過程を示す)である。
【
図5】本発明の実施形態に用いられる光源ユニットの説明図((a)平面視の説明図であり、(b)が側面視の説明図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1において、偏光光照射装置1は、光源ユニット2とステージ3を備える。光源ユニット2は、設定された照射領域2Sに偏光光を照射するもので、後述するように光源及び偏光子を備えている。
【0011】
ステージ3は、偏光光を照射する基板Wを、照射領域2Sを通過するように、一軸方向(X軸方向)に沿って移動させる。以下、図においては、基板の移動方向をX軸方向、水平面上でX軸方向と直交する方向をY軸方向、X−Y軸に直交する上下方向をZ軸方向とする。基板Wは、配向膜が形成される液晶パネルの基板であり、基板Wには感光性の配向材料(高分子材料)が成膜されている。
【0012】
ステージ3は、照射領域2Sの一軸方向(X軸方向)一方側で基板Wの方向を一定に保持して、照射領域2Sの一軸方向(X軸方向)他方側で基板Wの保持を開放する複数の基板保持部30を備えている。基板保持部30は、適宜の形態を有する保持部移動手段31によって、一軸方向(X軸方向)に沿って移動し、基板Wを保持した状態を維持しながら、照射領域2SのX軸方向一方側から他方側に向けて移動する。
図1に示した保持部移動手段31の一例は、エンドレスの移動体に基板保持部30を装着して、連続して基板保持部30を往復移動させるものである。
【0013】
ステージ3は、必要に応じて、基板支持手段4を備える。基板支持手段4は、偏光光が照射される間、基板Wの高さを一定に支持するものであり、基板Wが摺動自在なガイド体、ローラーコンベヤ、エア浮上器などによって構成することができる。また、ステージ3は、照射領域2Sの少なくとも一軸方向(X軸方向)一方側に、基板Wの方向を回転調整する回転調整手段を設けている(図示省略)。回転調整手段は、照射する偏光光の偏光軸方向に対して基板Wの方向を設定された方向に合わせるための回転調整を行うものであり、基板保持部30が回転調整手段を備える構成にすることもできる。
【0014】
偏光光照射装置1は、ステージ3における照射領域2Sの一軸方向(X軸方向)一方側に基板搬入位置P1を設け、照射領域2Sの一軸方向(X軸方向)他方側に基板搬出位置P2を設けている。基板搬入位置P1に基板Wが搬入されると、基板Wの方向を設定された方向に合わせ、基板保持部30は、基板Wの方向が移動中常に一定になるように、基板搬入位置P1で基板Wを保持する。基板Wは、基板保持部30で保持された状態を保って移動し、照射領域2Sを通過することで基板Wに偏光光が照射される。基板Wが照射領域2Sの一軸方向(X軸方向)他方側に移動され、基板搬出位置P2に到達すると、基板保持部30は基板Wの保持を開放する。
【0015】
基板保持部30は複数設けられており、一つの基板保持部30が一つの基板W(W1)の保持を開放する前に、他の基板保持部30が他の基板W(W2)を保持する。これによって、基板Wは照射領域2Sに一方向から連続的に供給され、基板Wの搬入,基板Wへの偏光光の照射,基板Wの搬出をワンウェイで行うことができる。
【0016】
図2は、偏光光照射装置1の他の形態例及びその動作例を示している。前述した説明と同一部位には同一符号を付して重複説明を省略する。この形態例では、偏光光照射装置1は、基板保持部30として、保持体30A,30Bを備えており、保持部移動手段31として、走査軸31A,31Bを備えている。走査軸31A,31Bは、保持体30A,30Bを一軸方向に沿って独立して往復移動させる駆動軸である。ここでは、走査軸31A,31Bを2軸設け、それぞれの軸上で保持体30A,30Bが独立して移動する例を示しているが、走査軸を3軸以上にして、それぞれの軸上で保持体が独立移動するものであってもよい。なお、ステージ3の中心には固定軸32が延設されている。
【0017】
この形態例では、保持体30A,30Bが、基板Wの方向を回転調整する機能と基板Wの方向を一定に保持する機能を備えている。
図2(a)において、基板搬入位置P1に基板W1が搬入されると、保持体30Aが基板W1を保持して基板W1の方向を設定された方向に回転調整する。その後、保持体30Aは、基板W1が光源ユニット2の照射領域を通過するように、走査軸31Aによって照射領域のX軸方向一方側から他方側に向けて移動する(
図2(b)参照)。
【0018】
そして、一つの保持体30Aが保持する基板W1が光源ユニット2の照射領域を通過し終わる前に、他の保持体30Bが他の基板W2を保持する(
図2(c)参照)。保持体30Bは、保持体30Aと同様に、基板W2を保持して基板W2の方向を設定された方向に回転調整し、その後、基板W2が光源ユニット2の照射領域を通過するように、走査軸31Bによって照射領域のX軸方向一方側から他方側に向けて移動する(
図2(d)参照)。
【0019】
偏光光照射が終了した基板W1を保持した保持体30Aが基板搬出位置P2に到達すると、保持体30Aは、基板W1の方向を搬出し易い方向に戻し、基板W1の保持を開放する。基板W1は別途設けられる基板搬出手段(図示省略)によって基板搬出位置P2から搬出される。その搬出工程中に、保持体30Bは保持した基板W2を移動させて、基板W2に対する偏光光の照射処理が行われている(
図2(e)参照)。
【0020】
保持体30Aは基板W1の保持を開放すると、走査軸31Aの逆駆動によって照射領域の逆側(基板搬入位置側)に戻される。その間、保持体30Bが保持した基板W2に対する偏光光照射処理は引き続き行われている。その際、戻される保持体30Aは、移動中の基板W2に干渉しない位置に退避している(
図2(f))。基板搬入位置P1に新たな基板W3が搬入されると、基板搬入位置P1まで戻った保持体30Aが基板W3を保持し、その後、前述した動作が繰り返される(
図2(g)参照)。
【0021】
図3は、偏光光照射装置1の他の形態例及びその動作例を示している。前述した説明と同一部位には同一符号を付して重複説明を省略する。また、前述した保持体30A,30Bを図示省略しているが、走査軸31A,31Bには保持体30A,30Bが備えられている。
【0022】
この形態例では、偏光光照射装置1は、保持体30A,30Bとは別に、回転調整体32A,32Bを備えている。回転調整体32A,32Bは、基板搬入位置P1と基板搬出位置P2にそれぞれ設けられ、ステージ3の中心にX軸方向に沿って延設される固定軸32に取り付けられている。この形態例では、基板搬入位置P1と基板搬出位置P2に固定された回転調整体32A,32Bによって、搬入された基板W或いは搬出される基板Wの方向が回転調整される。回転調整体32Aは、基板搬入位置P1に入った基板Wを保持して、回転調整を行い、その後基板Wが保持体30A又は30Bに保持された後に開放する。回転調整体32Bは、基板搬出位置P2に入った基板Wを保持して、保持体30A又は30Bが開放した後、回転調整を行う。この回転調整体32A,32Bによると、基板Wの中心を保持した回転調整が可能になる。基板Wの回転調整以外の動作は、
図2(a)〜(g)における説明で、
図3(a)〜(g)の動作を説明することができる。
【0023】
図4は、
図2及び
図3における基板保持部(保持体30A,30B)の構成例を示している(前述した説明と同一部位には同一符号を付して重複説明を省略する。)。走査軸31A,31BによってX軸方向に沿って移動する保持体30A,30Bは、Z軸方向に上下動する昇降手段を備えている。図示の保持体30Aは、上昇して基板Wを保持した状態を示しており、図示の保持体30Bは、基板Wの保持を開放して、基板Wに干渉しない位置に下降した状態を示している。基板Wを保持して基板搬出位置に向けて移動する際には、図示の保持体30Aの状態になり、基板Wの保持を開放した後、基板搬入位置に戻る際には、図示の保持体30Bの状態になる。
【0024】
図5は、本発明の実施形態に係る偏光光照射装置1における光源ユニット2の構成例を示している。光源ユニット2は、Y軸方向に沿って延設されるが、Y軸方向に沿って長尺な光源を用いることができると共に、図示のように、X軸方向に長さを有する短尺の光源20を用いて、この光源20を備えるユニットを複数個Y軸方向に並べて構成することもできる。この場合、各ユニットには、偏光子21(必要に応じて、フィルタ22)が配備され、偏光子21の偏光軸が同方向になるように適宜の調整がなされる。偏光子21としては、例えば、透明基板上に直線状の電気導体からなる微細な格子を設けたワイヤーグリッド偏光子などを用いることができる。ここでの電気導体としては、例えば、クロム、アルミニウム、酸化チタンなどを採用することができる。
【0025】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る偏光光照射装置1は、偏光光の照射領域に一方向から連続的に基板Wを供給することで、基板Wの搬入、偏光光の照射、基板の搬出をワンウェイで行い、処理効率の向上を図ることができる。その際、基板Wは基板保持部30によって保持されるので、基板Wの方向を精度良く保って高い処理精度を確保することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:偏光光照射装置,2:光源ユニット,2S:照射領域,
3:ステージ,30:基板保持部,30A,30B:保持体,
31:保持部移動手段,31A,31B:走査軸,
32:固定軸,32A,32B:回転調整体,
4:基板支持手段,
P1:基板搬入位置,P2:基板搬出位置,
W,W1,W2,W3:基板