(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィーダから被焼却物を供給し、複数の固定火格子と複数の移動火格子を備えた乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段で、前記被焼却物を順次搬送しつつ、それぞれ乾燥、燃焼、及び後燃焼を行い、前記後燃焼段に接続された排出シュートから前記後燃焼後の前記被焼却物を排出するストーカ炉において、
前記フィーダの上方から前記乾燥段または前記燃焼段の上方まで延在するフロントアーチと、
前記排出シュートの上方から前記後燃焼段または前記燃焼段の上方まで延在するリアアーチと、
前記フロントアーチと前記リアアーチに接続され、前記被焼却物の燃焼により発生する排ガスを導出する四角筒状の炉壁と、を有し、
前記乾燥段、前記燃焼段、及び前記後燃焼段の各々の主面が、前記燃焼段の上方に生成される主燃焼部に向くよう、前記乾燥段は、前記搬送方向下流側が下向きとなるように傾斜して配置され、前記燃焼段は、前記乾燥段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置され、
前記後燃焼段は、前記燃焼段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されることを特徴とするストーカ炉。
前記後燃焼段の前記搬送方向下流側の端部は、鉛直方向において、前記燃焼段の前記搬送方向下流側の端部と同位置、または、前記燃焼段の前記端部よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のストーカ炉。
前記固定火格子及び前記移動火格子は、前記乾燥段、前記燃焼段、及び前記後燃焼段の据付面に対して前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のストーカ炉。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記ストーカ炉では、様々な性状(素材、形状、含水率)の被焼却物が投入されるが、滑りやすい素材又は球形などの転がりやすい形状の被焼却物や、含水率の高い(水分量の多い)被焼却物については、いずれのストーカ炉でも、その他の被焼却物と同様の焼却が困難であった。
【0007】
即ち、特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に記載されているストーカ炉では、乾燥段が下向きに傾斜、かつ、燃焼段が下向きに傾斜または水平に配置されているため、滑りやすい素材又は転がりやすい形状の被焼却物が、その他の被焼却物に比べ、後燃焼段まで早く搬送されるため、十分に焼却されずに燃え残ったまま排出されるという課題があった。
【0008】
また、特許文献5に記載されているストーカ炉では、乾燥段、燃焼段、後燃焼段の全てが上向きに傾斜しているため、滑りやすい素材又は転がりやすい形状の被焼却物や含水率の高い被焼却物が、フィーダと乾燥段の間に配置される段差(落差壁)の底に溜まって燃焼段まで搬送され難くなるため、投入量を制限したり、投入を一時的に停止したりする必要が生じる場合があるという課題があった。
【0009】
また、例えば、被焼却物中の水分の乾燥効率や、被焼却物の燃焼効率は、被焼却物の燃焼により発生する火炎の輻射熱の被焼却物に対する当たり方に依存するが、上記特許文献に記載されているストーカ炉では、輻射熱の当たり方について考慮されておらず、ストーカ全体として燃焼・灰化が非効率なものとなっていた。
【0010】
この発明は、被焼却物の性状によらず被焼却物を連続投入でき、かつ、ストーカ全体として燃焼・灰化を効率的に行い、被焼却物の燃え残りを無くすることができるストーカ炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ストーカ炉は、フィーダから被焼却物を供給し、複数の固定火格子と複数の移動火格子を備えた乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段で、前記被焼却物を順次搬送しつつ、それぞれ乾燥、燃焼、及び後燃焼を行い、前記後燃焼段に接続された排出シュートから前記後燃焼後の前記被焼却物を排出するストーカ炉において、前記フィーダの上方から前記乾燥段または前記燃焼段の上方まで延在するフロントアーチと、前記排出シュートの上方から前記後燃焼段または前記燃焼段の上方まで延在するリアアーチと、前記フロントアーチと前記リアアーチに接続され、前記被焼却物の燃焼により発生する排ガスを導出する四角筒状の炉壁と、を有し、前記乾燥段、前記燃焼段、及び前記後燃焼段の各々の主面が、前記燃焼段の上方に生成される主燃焼部に向くよう、前記乾燥段は、前記搬送方向下流側が下向きとなるように傾斜して配置され、前記燃焼段は、前記乾燥段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置され、前記後燃焼段は、前記燃焼段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されることを特徴とする。
また、本発明によれば、ストーカ炉は、フィーダから被焼却物を供給し、複数の固定火格子と複数の移動火格子を備えた乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段で、前記被焼却物を順次搬送しつつ、それぞれ乾燥、燃焼、及び後燃焼を行い、前記後燃焼段に接続された排出シュートから前記後燃焼後の前記被焼却物を排出するストーカ炉において、前記フィーダの上方から前記乾燥段または前記燃焼段の上方まで延在するフロントアーチと、前記排出シュートの上方から前記後燃焼段または前記燃焼段の上方まで延在するリアアーチと、前記フロントアーチと前記リアアーチに接続され、前記被焼却物の燃焼により発生する排ガスを導出する炉壁と、を有し、前記乾燥段、前記燃焼段、及び前記後燃焼段の各々の主面が、前記燃焼段の上方に生成される主燃焼部に向くよう、前記乾燥段は、前記搬送方向下流側が下向きとなるように傾斜して配置され、前記燃焼段は、前記乾燥段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置され、前記後燃焼段は、前記燃焼段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、乾燥段、燃焼段、後燃焼段のいずれもが、各々の主面が主燃焼部に向くように傾斜しているので、主燃焼部の輻射熱を効果的に受けることができる。
このため、乾燥段では、乾燥効率を向上させ、燃焼段では燃焼効率を向上させることができる。後燃焼段においても、効果的に灰化することができる。
すなわち、本発明のストーカ炉では、被焼却物の性状によらず被焼却物を連続投入でき、かつ、ストーカ全体として燃焼・灰化を効率的に行い、被焼却物の燃え残りを無くすることができる。
【0013】
上記ストーカ炉において、前記四角筒状の炉壁の中心線は、前記燃焼段上にあってよい。
【0014】
このような構成によれば、主燃焼部の位置を燃焼段上とし、乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段に効率よく輻射熱を当てることができる。
【0015】
上記ストーカ炉において、前記後燃焼段の前記搬送方向下流側の端部は、鉛直方向において、前記燃焼段の前記搬送方向下流側の端部と同位置、または、前記燃焼段の前記端部よりも上方に配置されてよい。
【0016】
このような構成によれば、仮に乾燥段を被焼却物が転がり落ちる等した場合においても、被焼却物が十分に燃焼されないまま後燃焼段から排出されることを防止することができる。
【0017】
上記ストーカ炉において、前記固定火格子及び前記移動火格子は、前記乾燥段、前記燃焼段、及び前記後燃焼段の据付面に対して前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されてよい。
【0018】
このような構成によれば、移動火格子を、固定火格子上の被焼却物を撹拌しながら搬送方向下流側に送るように動作させることができる。
【0019】
上記ストーカ炉において、前記燃焼段と前記後燃焼段は、段差なく連続的に接続されてよい。
【0020】
このような構成によれば、被焼却物をより連続的に焼却することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被焼却物の性状によらず被焼却物を連続投入でき、かつ、被焼却物の燃え残りを無くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態のストーカ炉について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態のストーカ炉は、ごみ等の被焼却物燃焼用ストーカ炉であり、
図1に示すように、被焼却物Bを一時的に貯留するホッパ2と、被焼却物Bを燃焼させる焼却炉3と、焼却炉3に被焼却物Bを供給するフィーダ4と、焼却炉3の底部側に設けられたストーカ5(乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の火格子15、16を含む)と、ストーカ5の下方に設けられた風箱6と、を備えている。
【0024】
フィーダ4は、ホッパ2を介して連続的にフィードテーブル7上に供給された被焼却物Bを焼却炉3内に押し出す。フィーダ4は、フィーダ駆動装置8によってフィードテーブル7上を所定のストロークで往復運動する。
風箱6は、送風機(図示せず)からの一次空気をストーカ5の各部に供給する。
焼却炉3は、ストーカ5の上方に設けられ、一次燃焼室と二次燃焼室からなる燃焼室9を有している。焼却炉3は、燃焼室9に二次空気を供給する二次空気供給ノズル10を有している。
【0025】
ストーカ5は、火格子15、16を階段状に並べた燃焼装置である。被焼却物Bは、ストーカ5上で燃焼する。
以下、被焼却物Bが搬送される方向を搬送方向Dと呼ぶ。被焼却物Bは、ストーカ5上を搬送方向Dに搬送される。
図1、
図2、及び
図3において、右側が搬送方向下流側D1である。また、火格子15、16が取り付けられる面を据付面と呼び、乾燥段11、燃焼段12、又は後燃焼段13の上流側の端部(11b、12b、13b)を中心として、水平面と据付面とによって形成される搬送方向D側の角度をストーカ傾斜角(据付角度)と呼ぶ。据付面の搬送方向下流側が水平面より上向きの場合は、ストーカ傾斜角は正の値とし、据付面の搬送方向下流側が水平面より下向きの場合は、ストーカ傾斜角は負の値として、ここでは説明する。
【0026】
ストーカ5は、被焼却物Bの搬送方向上流側から順に、被焼却物Bを乾燥させる乾燥段11と、被焼却物Bを焼却する燃焼段12と、未燃分を完全に焼却(後燃焼)する後燃焼段13と、を有している。ストーカ5では、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13で、被焼却物Bを順次搬送しつつ、それぞれ乾燥、燃焼、及び後燃焼を行う。
【0027】
各々の段11、12、13は、複数の固定火格子15と、複数の移動火格子16と、を有している。
固定火格子15と移動火格子16とは、搬送方向Dで交互に配置されている。移動火格子16は、被焼却物Bの搬送方向Dに往復運動する。移動火格子16の往復運動によってストーカ5上の被焼却物Bが搬送されるとともに攪拌される。即ち、被焼却物Bの下層部が動かされ、被焼却物Bの上層部と入れ替えられる。
【0028】
乾燥段11は、フィーダ4によって押し出されて焼却炉3内に落下した被焼却物Bを受け、被焼却物Bの水分を蒸発させるとともに一部熱分解する。燃焼段12は、下方の風箱6から供給される一次空気によって、乾燥段11で乾燥した被焼却物Bに着火させ、揮発分および固定炭素分を燃焼させる。後燃焼段13は、燃焼段12で燃焼されずに通過してきた固定炭素分等の未燃分を完全に灰になるまで燃焼させる。
後燃焼段13の出口には、排出シュート17が設けられている。灰は、排出シュート17を通じて焼却炉3から排出される。
【0029】
ストーカ炉1は、フィーダ4の上方から少なくとも乾燥段11の上方まで延在するフロントアーチ31と、排出シュート17の上方から少なくとも後燃焼段13の上方まで延在するリアアーチ32と、を有している。すなわち、フロントアーチ31の搬送方向下流側D1の端部31bは、乾燥段11または燃焼段12の上方に位置している。また、リアアーチ32の搬送方向上流側の端部32aは、燃焼段12または後燃焼段13の上方に位置している。
フロントアーチ31及びリアアーチ32は、焼却炉3の炉壁33に接続されている。炉壁33は、四角筒状をなし、被焼却物Bの燃焼により発生する排ガスを導出する。炉壁33は、搬送方向Dを向く前壁34及び後壁35と、搬送方向Dに沿う一対の側壁36と、を有している。前壁34と後壁35との間隔、及び一対の側壁36同士の間隔は、例えば、3m〜4mである。なお、前壁34は後壁35より搬送方向Dの上流側に配置される。
【0030】
四角筒状の炉壁33の中心線Cは、燃焼段12上にある。即ち、前壁34、後壁35及び側壁36に沿い、炉壁33の中心を通過する中心線Cは、燃焼段12と交差する。
二次空気供給ノズル10は、前壁34及び後壁35に配置されている。二次空気供給ノズル10は、前壁34及び後壁35から炉壁33の中心に向かって二次空気を噴射するように指向されている。
なお、本実施形態では二次空気供給ノズル10を前壁34及び後壁35に配置したが、フロントアーチ31及びリアアーチ32に配置してもよい。
【0031】
フロントアーチ31及びリアアーチ32は、ストーカ5の天井(上壁)をなす部位である。フロントアーチ31の搬送方向上流側の端部31aは、フィーダ4の上方に位置している。フロントアーチ31の搬送方向上流側の端部31aとフィーダ4との鉛直方向の間隔は、約1mである。
フロントアーチ31は、搬送方向下流側D1の端部31bが搬送方向上流側の端部31aよりも高くなるように傾斜している。即ち、フロントアーチ31は、ストーカ5内の空間が搬送方向下流側D1に向かうに従って広くなるように傾斜している。
【0032】
リアアーチ32の搬送方向下流側D1の端部32bと後燃焼段13の搬送方向下流側D1の端部との鉛直方向の間隔は、約1mである。
リアアーチ32の搬送方向下流側D1の端部32bは、排出シュート17の上方に位置している。リアアーチ32は、搬送方向下流側D1の端部32bが搬送方向上流側の端部32aよりも低くなるように傾斜している。即ち、リアアーチ32は、ストーカ5内の空間が搬送方向下流側D1に向かうに従って狭くなるように傾斜している。
【0033】
乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の各々は、移動火格子16を駆動する駆動機構18を有している。即ち、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13は、複数の移動火格子16を駆動する駆動機構18をそれぞれ別個に有している。
【0034】
駆動機構18は、ストーカ5に設けられている梁19に取り付けられている。駆動機構18は、梁19に取り付けられている油圧シリンダ20と、油圧シリンダ20によって動作するアーム21と、アーム21の先端に接続されているビーム22と、を有している。ビーム22と移動火格子16とは、ブラケット23を介して接続されている。
【0035】
本実施形態の駆動機構18によれば、油圧シリンダ20のロッドの伸縮によって、アーム21が動作する。アーム21の動作に伴い、乾燥段11の据付面11a、燃焼段12の据付面12a、後燃焼段13の据付面13aに沿って移動するように構成されているビーム22が移動し、ビーム22に接続されている移動火格子16が駆動する。
【0036】
本実施形態の駆動機構18は、油圧シリンダ20を用いているがこれに限ることはなく、例えば、油圧モータ、電動シリンダ、電導リニアモータ等を採用することができる。また、駆動機構18の形態は、上記した形態に限らず、移動火格子16を往復運動させることができれば、どのような形態のものでもよい。例えば、アーム21を配置せずに、ビーム22と油圧シリンダ20を直結して駆動してもよい。
【0037】
本実施形態のストーカ炉1は、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13における移動火格子16の駆動の速度を、互いに同じ速度または乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の少なくとも一部で異なる速度とすることができる。
例えば、燃焼段12で十分に燃焼させることが求められる被焼却物Bが投入された場合に、燃焼段12の移動火格子16の駆動の速度を遅くして、燃焼段12上の被焼却物Bの搬送速度を遅くし、十分に燃焼させることができる。
【0038】
図2及び
図3に示すように、固定火格子15及び移動火格子16は、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の各々の据付面11a、12a、13aに対して搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されている。
【0039】
乾燥段11の移動火格子16の一部は、突起付火格子16Pである(他は、後述のノーマル火格子である)。
図2に示すように、乾燥段11の搬送方向の長さのうち、搬送方向下流側から50%乃至80%の範囲R1の移動火格子16が突起付火格子16Pとなっている。突起付火格子16Pを使用することで、撹拌力を向上することができる。
図3に示すように突起付火格子16Pは、板状の火格子本体25と、火格子本体25の先端に設けられた三角形状の突起26とを有している。突起26は、火格子本体25の上面から上方に突出している。突起26の形状は、これに限ることはなく、例えば、台形状や、丸形状とすることもできる。
ここで、
図3の固定火格子15は、先端の上面に突起のない火格子であり、この形状をノーマル火格子という。
【0040】
なお、本実施形態では、移動火格子16のみを突起付火格子16Pとしたが、これに限ることはなく、移動火格子16及び固定火格子15の両方を突起付火格子としてもよい。
また、突起付火格子16Pを設ける範囲も上述した範囲に限ることはなく、例えば、乾燥段11の全ての火格子を突起付火格子16Pとしてもよい。
さらに、被焼却物Bの性状や種類によっては、乾燥段におけるすべての火格子(固定火格子及び移動火格子)をノーマル火格子としてもよい。
【0041】
乾燥段11と同様に、燃焼段12の移動火格子16のうち、一部は、突起付火格子16Pである。具体的には、燃焼段12の搬送方向の長さのうち、搬送方向下流側から50%乃至80%の範囲R2の移動火格子16が突起付火格子16Pとなっている。燃焼段12のその他の移動火格子16は、ノーマル火格子である。乾燥段と同様に、被焼却物Bの性状や種類によって、移動火格子16及び固定火格子15の両方を突起付火格子としてもよいし、すべての火格子(固定火格子及び移動火格子)をノーマル火格子としてもよい。
後燃焼段13の火格子は、
図2では移動火格子16及び固定火格子15はいずれも全てノーマル火格子として示しているが、乾燥段11及び燃焼段12と同様に、突起付火格子を採用してもよい。
【0042】
次に、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13のストーカ傾斜角(据付角度)について説明する。
乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13は、その主面が主燃焼部Mに向くように傾斜している。ここで、主燃焼部Mは、被焼却物Bの燃焼により、四角筒状の炉壁33の下端近傍(言い換えれば、フロントアーチ31の端部31b及びリアアーチ32の端部32aの近傍)であって、炉壁33の中心線C近傍且つ被焼却物Bの上方に発生する部位である。主燃焼部Mの火炎からの輻射熱Hは、主燃焼部Mを中心に放射状に発せられる。
【0043】
図2に示すように、本実施形態のストーカ5の乾燥段11は下向きに配置されている。すなわち、乾燥段11の据付面11aは、搬送方向下流側D1が低くなるように傾斜している。具体的には、乾燥段11の上流側の端部11bを中心とした水平面と据付面11aの搬送方向側の角度である乾燥段11のストーカ傾斜角θ1は、−15°(マイナス15度)から−25°(マイナス25度)の間の角度である。
これにより、乾燥段11の主面(据付面11a)は、主燃焼部Mに向き、輻射熱Hを効率よく受ける。
【0044】
本実施形態のストーカ5の燃焼段12は上向きに配置されている。すなわち、燃焼段12の据付面12aは、搬送方向下流側D1が高くなるように傾斜している。具体的には、燃焼段12の上流側の端部12bを中心とした水平面と据付面12aの搬送方向側の角度である燃焼段12のストーカ傾斜角θ2は、+5°(プラス5度)から+15°(プラス15度)の間の角度、望ましくは+8°(プラス
8度)から+12°(プラス1
2度)の間の角度である。
これにより、燃焼段12の主面(据付面12a)は、主燃焼部Mに向き、輻射熱Hを効率よく受ける。
【0045】
本実施形態のストーカ5の後燃焼段13は上向きに配置されている。すなわち後燃焼段13の据付面13aは、搬送方向下流側D1が高くなるように傾斜している。
後燃焼段13の上流側の端部13bを中心とした水平面と据付面13aの搬送方向側の角度である後燃焼段13のストーカ傾斜角θ3は、燃焼段12のストーカ傾斜角θ2と同じである。具体的には、後燃焼段13の上流側の端部13bを中心とした水平面と据付面13aの搬送方向側の角度である後燃焼段13のストーカ傾斜角θ3は、+5°(プラス5度)から+15°(プラス15度)の間の角度、望ましくは+8°(プラス8度)から+12°(プラス12度)の間の角度である。
これにより、後燃焼段13の主面(据付面13a)は、主燃焼部Mに向き、輻射熱Hを効率よく受ける。
なお、後燃焼段13のストーカ傾斜角θ3は、θ2≠θ3としてもよく、また、θ2=θ3でもよい。
【0046】
乾燥段11と燃焼段12との間には、段差(落差壁)27が形成されている。乾燥段11の搬送方向下流側の端部11cは、燃焼段12の搬送方向上流側の端部12bよりも鉛直方向に高くなるように形成されている。
燃焼段12と後燃焼段13との間には段差(落差壁)がない。即ち、燃焼段12と後燃焼段13とは、連続的に接続されている。換言すれば、燃焼段12と後燃焼段13とは、燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと後燃焼段13の搬送方向上流側の端部13bとが同じ高さになるように形成されている。
これにより、後燃焼段13の端部13cが燃焼段12の端部12cよりも上方に配置される。
【0047】
次に、乾燥段11のストーカ傾斜角を−15°(マイナス15度)から−25°(マイナス25度)の間の角度とする理由について説明する。
乾燥段11の機能は、被焼却物Bの上方にある主燃焼部Mからの輻射熱H及び火格子下からの一次空気の顕熱により効率良く被焼却物B中の水分を乾燥させることである。
ここで、主燃焼部Mの火炎からの輻射熱Hの方が、一次空気の顕熱に比べて乾燥への寄与度が高く、被焼却物Bの上層部の乾燥が進行しやすい。
このため、火格子による撹拌動作によって、被焼却物Bの下層部を上方へ動かし、上層部と入れ替えることで乾燥速度を向上させている。
しかし、撹拌動作を行っても、乾燥段11において、水分蒸発が十分に進むだけの長さの確保は必要となる。長さが長くなればなるほど装置が大型化しコストもかかるので、ストーカ長を可能な限り短くすることが求められる。
【0048】
ストーカ傾斜角の絶対値が被焼却物Bの安息角よりも大きいと、自重で崩れ、被焼却物Bの層が形成されないため、ストーカ5として成り立たない。一方、ストーカ傾斜角の絶対値を被焼却物Bの安息角より小さくしていくと、ストーカとして成り立つが、被焼却物Bの重力による移動(自重による移動)が減ってゆく。さらに、据付面が上向き、すなわちストーカ傾斜角が正の値(プラスの値)で傾斜している場合、重力は被焼却物Bを搬送方向から押し戻す方向に働く。
ストーカ5による被焼却物Bの搬送量が投入された被焼却物Bの量を下回ると、搬送限界となり処理不能となる。
【0049】
最適なストーカ傾斜角は、投入される被焼却物Bの量と被焼却物Bの含水率により異なる。ここでは、投入される被焼却物Bの量が多くかつ含水率が高い(水分量が多い)場合を、投入被焼却物負荷が大きい場合として説明を進める。逆に、投入される被焼却物Bの量が少なくかつ含水率が低い場合は、投入被焼却物負荷が小さい場合となる。
【0050】
図4は、横軸を乾燥段11のストーカ傾斜角、縦軸を乾燥段11の必要ストーカ長とし、投入被焼却物負荷が最も大きい場合(1)から順に、投入被焼却物負荷が最も小さい場合(4)まで、乾燥段11のストーカ傾斜角と乾燥段11の必要ストーカ長との関係をプロットした例を示すものである。
ここで、必要ストーカ長とは、投入される被焼却物Bの水分の95%が乾燥する距離である。横軸の「安息角」は、被焼却物Bの安息角を示すものである。
【0051】
図4のグラフに示すように、ストーカ傾斜角−30°が被焼却物Bの層を形成する限界である。この層形成限界のストーカ傾斜角に対して、ストーカ傾斜角が緩くなるに従って、必要ストーカ長は減少するが、ストーカ傾斜角が正の値に転じると、必要ストーカ長は、徐々に長くなる。これは、ストーカ傾斜角が正の値になると、据付面が上向きになり、搬送速度が遅くなる結果、被焼却物Bの層が厚くなり、下層部の被焼却物Bの乾燥が進行しにくくなるからである。
投入される被焼却物Bの負荷が最も大きい場合(1)から投入される被焼却物Bの負荷が最も小さい場合(4)までの4つのケースから、被焼却物Bがいかなる性状、量であっても適正に処理でき、かつ、ストーカ長を最も短くできる最適な乾燥段11のストーカ傾斜角は、(1)の曲線の最下点近傍のストーカ長に対応する−15°(マイナス15度)から−25°(マイナス25度)の間の角度が適正範囲であることが分かる。そして、最適値は−20°(マイナス20度)となる。
【0052】
次に、乾燥段11のストーカ傾斜角を上述のように適正範囲のものとした場合において、燃焼段12のストーカ傾斜角を+8°(プラス8度)乃至+12°(プラス12度)の間の角度にすることが適している理由について説明する。
燃焼段12の機能は、主燃焼部Mの火炎からの輻射熱H、自己燃焼熱により被焼却物Bの層の温度を維持し、揮発分の熱分解による可燃ガスの発生促進、熱分解後に残った固定炭素の燃焼を行うものである。
【0053】
ここで、揮発性可燃ガスの揮発に要する時間に比べて固定炭素の燃焼に要する時間の方が長いため、燃焼段12の必要ストーカ長は、固定炭素の燃焼に必要な時間によって決まる。
【0054】
図5は、乾燥段11のストーカ傾斜角を上述のように適正範囲のものとした場合において、横軸を燃焼段のストーカ傾斜角、縦軸を燃焼段の必要ストーカ長とし、投入被焼却物負荷が最も大きい場合(1)から順に、投入被焼却物負荷が最も小さい場合(4)まで、燃焼段のストーカ傾斜角と燃焼段の必要ストーカ長との関係をプロットしたものである。ここで、燃焼段の必要ストーカ長とは、可燃分の95%が揮発または燃焼する距離である。
【0055】
図5に示すように、ストーカ傾斜角−30°が被焼却物Bの層を形成する限界である。この層形成限界のストーカ傾斜角に対して、角度が緩くなるに従って、必要ストーカ長は減少する。搬送限界を考慮すると、ストーカ傾斜角の適正範囲は、
図5に示す一点鎖線で囲む範囲とすることができる。
【0056】
乾燥段11において投入被焼却物負荷が大きい場合であっても、乾燥段11はストーカ傾斜角が適正範囲であるため、ごみの含水率低減及び体積減少が促進される。このため、例えば乾燥段11で負荷が(1)に相当するものであっても燃焼段12では負荷は(3)、(4)に相当するものに変化するので、燃焼段12では、より大きなストーカ傾斜角を採用できるようになる。すなわち、燃焼段を上向きとすることができることで固定炭素の燃焼に必要な滞留時間の確保ができ、さらにストーカ長さを短くできる。
【0057】
図6は、横軸を燃焼段12のストーカ傾斜角、縦軸を乾燥段11と燃焼段12の両方で必要なストーカ長とし、投入される被焼却物Bの負荷が最も大きい場合(1)から順に、投入される被焼却物Bの負荷が最も小さい場合(4)まで、燃焼段12のストーカ傾斜角と乾燥段11と燃焼段12の両方で必要なストーカ長との関係をプロットしたものである。ここで、乾燥段11のストーカ傾斜角は最適値の−20°(マイナス20度)としている。
【0058】
図6に示すように、搬送限界を考慮すると、燃焼段12のストーカ傾斜角の適正範囲は、おおよそ+5°(プラス5度)から+15°(プラス15度)の間の角度、より詳細には+8°(プラス8度)乃至+12°(プラス12度)の間の角度であることが分かる。また、乾燥段11のストーカ傾斜角が最適値の−20°(マイナス20度)の場合、燃焼段12のストーカ傾斜角の最適値は+10°(
プラス10度)である。
【0059】
上記実施形態によれば、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の主面が主燃焼部Mに向いているため、主燃焼部Mの輻射熱Hを効果的に受けることができる。このため、乾燥段11では、乾燥効率を向上させ、燃焼段12では燃焼効率を向上させることができる。後燃焼段13においても、効果的に被焼却物Bを灰化することができる。
【0060】
また、乾燥段11が下向きに傾斜していることによって、どのような性状の被焼却物Bであっても燃焼段12まで滞りなく搬送することができ、かつ、燃焼段12及び後燃焼段13は上向きに傾斜していることによって、燃焼段12の下流に被焼却物Bが容易に滑り落ちたり、転がり落ちたりすることなく、十分に燃焼されて搬送される。
【0061】
即ち、滑りやすい素材又は転がりやすい形状の被焼却物Bの場合、乾燥段11を転がるなどして燃焼段12まで早期に搬送されるので、乾燥段11では十分に乾燥できない可能性がある。しかしながら、燃焼段12と後燃焼段13とが上向きに傾斜していため、乾燥段11を転がり落ちた被焼却物Bが燃焼段12と後燃焼段13をさらに転がり落ちることはなく、燃焼段12で必ず十分に乾燥、焼却がなされる。含水率が高い被焼却物Bは、乾燥段11に滞留することなく、乾燥されつつ燃焼段12へ搬送されるので、やはり同様に、燃焼段12で必ず十分に焼却される。
これにより、被焼却物Bの性状によらず被焼却物Bを連続投入でき、かつ、被焼却物Bの燃え残りを無くすることができる。
【0062】
また、仮に乾燥段11を転がり落ちた被焼却物Bの勢いが強く、燃焼段12をその勢いで通過したとしても、後燃焼段13の搬送方向下流側の端部13Cは燃焼段12の搬送方向下流側の端部12Cより鉛直方向で上方に位置するため、少なくとも後燃焼段13で停止し、後燃焼段13から排出されることはない。そして、後燃焼段13と燃焼段12が段差なく連続的に接続されていることにより、万一、後燃焼段13まで十分に燃焼されない被焼却物Bが転がる等して進んだとしても、自重により燃焼段12まで戻され、燃焼を行うことができる。すなわち、不完全に燃焼された被焼却物Bの排出を極力低減することができる。
【0063】
また、四角筒状の炉壁33の中心線Cが燃焼段12上にあることによって、主燃焼部Mの位置を燃焼段12上とし、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13に効率よく輻射熱Hを当てることができる。
【0064】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態のストーカ炉について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態のストーカ5の燃焼段12と後燃焼段13との間には段差(落差壁)28が形成されている。
【0065】
燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと後燃焼段13の搬送方向下流側の端部13cとは、鉛直方向で同位置か、または、後燃焼段13の端部13cが燃焼段12の端部12cよりも上方に配置されている。本実施形態のストーカ炉1は、燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと後燃焼段13の搬送方向下流側の端部13cを、鉛直方向で同一の位置とした例である。
【0066】
これにより、仮に乾燥段11を被焼却物Bが転がり落ちる等した場合においても、被焼却物Bが十分に燃焼されないまま後燃焼段13から排出されることを防止することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、火格子15、16の先端が搬送方向下流側D1を向くように配置されているが、これに限ることはなく、例えば、乾燥段11の火格子15、16の先端が搬送方向上流側を向くように配置されてもよい。
【解決手段】フィーダ4と、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13と、排出シュート17と、を備えるストーカ炉1において、フィーダ4の上方から乾燥段11または燃焼段12の上方まで延在するフロントアーチ31と、排出シュート17の上方から後燃焼段13または燃焼段12の上方まで延在するリアアーチ32と、被焼却物Bの燃焼により発生する排ガスを導出する四角筒状の炉壁33と、を有し、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の各々の主面が、燃焼段12の上方に生成される主燃焼部Mに向くよう、乾燥段11は、搬送方向下流側が下向きとなるように傾斜して配置され、燃焼段12は、搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置され、後燃焼段13は、搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置されるストーカ炉。