(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484901
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】詰替え容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20190311BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20190311BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D33/38
B65D75/58BRG
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-539786(P2014-539786)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2013076827
(87)【国際公開番号】WO2014054694
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年9月23日
【審判番号】不服2018-1352(P2018-1352/J1)
【審判請求日】2018年1月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-221167(P2012-221167)
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
(72)【発明者】
【氏名】今井 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋子
【合議体】
【審判長】
渡邊 豊英
【審判官】
佐々木 正章
【審判官】
西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−255946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00 33/38 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とシーラント層とを有する1枚の積層体と、注出ノズルシール部とを備え、
前記シーラント層が内側になるように、前記積層体が折り曲げられて、折り曲げ部、表面積層体、および裏面積層体が形成され、
前記表面積層体と前記裏面積層体との周縁がシールされ、
前記折り曲げ部は、前記表面積層体、前記裏面積層体、および前記注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出す注出ノズルを形成し、
前記注出ノズルの先端は、注出ノズル先端シール部によってシールされており、開封予定線に沿って前記注出ノズル先端シール部を切り離して注出口を形成可能であり、
前記注出口の断面は、下部に前記注出ノズルシール部が位置し、上部に位置する前記折り曲げ部が膨らんだ形状であり、
前記開封予定線および前記開封予定線の周辺部分に、前記開封予定線に平行な複数のハーフカット線を形成する易カット加工が施され、
前記複数のハーフカット線の少なくとも一部は、前記折り曲げ部の稜線であって前記注出口の前記断面における膨らんだ形状部分において途切れている、詰替え容器。
【請求項2】
前記複数のハーフカット線の半数以上が、前記折り曲げ部の稜線において途切れている、請求項1に記載の詰替え容器。
【請求項3】
基材とシーラント層とを有する1枚の積層体と、注出ノズルシール部とを備え、
前記シーラント層が内側になるように、前記積層体が折り曲げられて、折り曲げ部、表面積層体、および裏面積層体が形成され、
前記表面積層体と前記裏面積層体との周縁がシールされ、
前記折り曲げ部は、前記表面積層体、前記裏面積層体、および前記注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出す注出ノズルを形成し、
前記注出ノズルの先端は、注出ノズル先端シール部によってシールされ、開封予定線に沿って前記注出ノズル先端シール部が切り離されて注出口を形成し、
前記注出口の断面は、下部に前記注出ノズルシール部が位置し、上部に位置する前記折り曲げ部が膨らんだ形状であり、
前記開封予定線上に、前記開封予定線に平行な1本のハーフカット線を形成する易カット加工が施され、
前記ハーフカット線は、前記折り曲げ部の稜線であって前記注出口の前記断面における膨らんだ形状部分において途切れている、詰替え容器。
【請求項4】
前記ハーフカット線が、前記折り曲げ部の稜線からの距離が1.0mm以上4.0mm以下の範囲において途切れている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【請求項5】
さらに前記シーラント層が外側になるように折り曲げて形成された底テープと、
前記底テープを前記表面積層体と前記裏面積層体との間に有し、かつ周縁がシールされたシール部と、を備えるスタンディングパウチ形状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【請求項6】
前記折り曲げ部の一部を切り開いて形成された、内容物を充填する充填用開口部をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の詰替え容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、または柔軟剤等のトイレタリー用品、および、食用油、またはインスタントコーヒー等の食品等を収納する詰替え容器に関する。
本願は、2012年10月3日に出願された特願2012−221167号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤、または柔軟仕上げ剤等のトイレタリー用品、および、食用油、またはインスタントコーヒー等の食品は、使い易い形状の専用容器に収納されている。専用容器は、内容物の特徴および使用に特化した構造を有し、従って高価である。そのため、内容物がなくなった場合に、専用容器を繰り返し使用することができるように、詰替え容器入りの内容物が製品として販売されている。
【0003】
例えば液体洗剤の容器は、洗剤を使用する時にその都度適切な量を計量して取り出す必要がある。そのため、軽量カップに注ぎ易いように、注出口にノズルを備えた剛性のあるプラスチック容器が、繰り返し使用容器として用いられている。この繰り返し使用容器に対して、内容物を補充するための詰替え容器としては、軟包装フィルムからなる柔軟な容器に、注出口を形成した容器、または、口栓を取り付けた容器が一般的に使用されている。
【0004】
繰り返し使用する剛性の容器は、注出し易いように設計されているため、繰り返し使用する容器に詰替え容器から内容物を補充する詰替え操作に必ずしも適してはいなかった。
【0005】
一方、詰替え容器も、安価に製造することに重点が置かれるため、必ずしも詰替え操作に適してはいなかった。
【0006】
繰り返し使用する容器に設けられたノズルを利用して、詰替え容器の開封を行うことができ、さらに詰替え中に、詰替え容器が自立するために、詰替え容器を手で保持しなくてもよい詰替え容器が提案されている。このような手放し詰替え容器は、繰り返し使用する容器の開口部に着脱可能かつ脱落不能に連結される結合部材と、詰替え容器本体を密封する容器密封部材とを備える(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された詰替え容器は、繰り返し使用する容器と詰替え容器を結合するために、口栓部に、結合部材および容器密封部材の2つの部材を用いているため、容器のコストが高くなる。また、詰替え容器を、繰り返し使用する容器の開口部にねじ込んで使用する構造であるため、2つの部材は確実に結合できる。しかしその反面、操作が面倒であるばかりでなく、口栓を有するためコストがかかるという欠点があった。
【0008】
コストを考慮すると、
図8に示したような表裏2枚の包装フィルムの周縁がシールされた包装袋が有利である。このような詰替え用包装袋は、容器の口径に見合った任意の幅の注出口を設けることができる。しかし、表裏2枚のフィルムの端縁部をシールして注出口部を形成した場合、内容物を注出する際、開口部がシールされた両端に引っ張られる。そのため、表裏のフィルムが疑似密着状態となり、注出口が閉塞したり、注出口が折れ曲がり易く、詰替え操作中に注出口が繰り返し使用する容器から外れてしまう。
【0009】
注出口が閉塞したり、折れ曲がったりする課題を解決するために、注出口部にフィルムとは別部材のパーツを挿入したり(特許文献2参照)、注出口部付近のフィルムを膨らませて立体形状とすることで、開口面積を確保する包装袋が多く提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
しかしこれらの包装袋は、別部材を取り付ける工程、フィルムに深いエンボス加工を施す工程等が必要となる。さらに、充填時に包装袋の供給部において包装袋を整然と積み上げて揃えることができない。また、表裏2枚のフィルムがシールされた注出口において、両端にシール部が存在するため、シール部の分だけ開口幅が狭くなり、十分な開口面積を確保することができない。十分な開口面積が確保できないと、詰替え時の注出に要する時間は長くなる。
【0011】
上記課題を解決するために、包装袋を構成するフィルムを折り曲げて、注出口の片側を形成し、注出口のシール部を片側だけ形成した包装袋が提案されている(特許文献4、5参照)。
【0012】
特許文献4、5に示されたような、注出口の片側が折り曲げられたフィルムを有する包装袋の場合、注出口の閉塞、および、注出口部の開口面積が小さいという課題は解消される。しかし、特許文献5に示された軟質包装袋の注出口に見られるように、注出時の操作の容易さを考慮して注出口を斜めに設定した場合、開封操作性が不安定になる。
【0013】
図9Aは、特許文献5に開示された軟質包装袋を示した図であり、
図9Bは、注出口部分の拡大図である。このような軟質包装袋は、注出口部分に、切れ目線aと、V字状の切欠きbと、切れ目線aを覆うように設けられた網点状の傷加工cと、を備えている。しかし、V字状の切欠きbの位置がずれた場合には、包装袋の裂け目が切れ目線aから外れ、本来の切れ目線aの位置で開封できない。
【0014】
特許文献6においては、
図10に示されたように、注出口を形成するための開封予定線を、折り曲げ部に対して傾斜するように形成する。開封予定線上には、開封予定線に平行な複数の傷線を形成する易カット加工を施す。さらに、開封用切目線の先端部を、開封予定線と平行な方向に向かって折り曲げることにより、注出口の開封操作が容易かつ確実にできる詰替え容器が提案されている。
【0015】
しかしながら、折り曲げ部に設けた複数の傷線部分がこすれたり、衝撃を受ける等により、上記詰替え容器が傷付いたり孔が開いたりして液漏れの原因となることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】日本国特開2004−99082号公報
【特許文献2】日本国特開平5−132069号公報
【特許文献3】日本国特許第4110940号
【特許文献4】日本国特開平11−236053号公報
【特許文献5】日本国特許第4910528号公報
【特許文献6】日本国特開2011−255947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような点を考慮してなされたものであり、口栓等の別部材を使用することなく、大面積の注出口を形成できる詰替え容器を提供する。さらには、注出口の開封操作が容易かつ確実にでき、物流過程および取り扱い時等におけるこすれまたは傷付き等に起因する液漏れ等を防ぐことができる詰替え容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第一態様は、詰替え容器であって、基材とシーラント層とを有する1枚の積層体と、注出ノズルシール部とを備え、シーラント層が内側になるように、積層体が折り曲げられて、折り曲げ部、表面積層体、裏面積層体が形成され、表面積層体と裏面積層体との周縁がシールされ、折り曲げ部は、表面積層体、裏面積層体、および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出す注出ノズルを形成し、注出ノズルの先端は、注出ノズル先端シール部によってシールされ
ており、開封予定線に沿って注出ノズル先端シール部
を切り離
して注出口を形成
可能であり、注出口の断面は、下部に前記注出ノズルシール部が位置し、上部に位置する前記折り曲げ部が膨らんだ形状であり、開封予定線および開封予定線の周辺部分に、開封予定線に平行な複数のハーフカット線を形成する易カット加工が施され、複数のハーフカット線
の少なくとも一部は、折り曲げ部の稜線であって注出口の断面における膨らんだ形状部分において途切れている。
【0019】
第一態様に係る詰替え容器によれば、折り曲げ部において、ハーフカット線の途切れ部分を設けたため、折り曲げ部がこすれたり、破れたりして液漏れが生じることを防ぐことができる。
【0020】
本発明の第
二態様は、第
一態様に係る詰替え容器において、複数のハーフカット線の半数以上が、折り曲げ部の稜線において途切れている
。
本発明の第
三態様は、詰替え容器であって、基材とシーラント層とを有する1枚の積層体と、注出ノズルシール部とを備え、シーラント層が内側になるように、積層体が折り曲げられて、折り曲げ部、表面積層体、および裏面積層体が形成され、表面積層体と裏面積層体との周縁がシールされ、折り曲げ部は、表面積層体、裏面積層体、および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出す注出ノズルを形成し、注出ノズルの先端は、注出ノズル先端シール部によってシールされ、開封予定線に沿って注出ノズル先端シール部が切り離されて注出口を形成し、注出口の断面は
、下部に前記注出ノズルシール部が位置し、上部
に位置する前記折り曲げ部が膨らんだ形状であり、開封予定線上に、開封予定線に平行な1本のハーフカット線を形成する易カット加工が施され、ハーフカット線は、折り曲げ部の稜線であって注出口の断面における膨らんだ形状部分において途切れている。
【0021】
本発明の第
四態様は、第一から第
三態様に係る詰替え容器において、ハーフカット線が、折り曲げ部の稜線からの距離が1.0mm以上4.0mm以下の範囲において途切れている。
本発明の第
五態様は、第一から第
四態様に係る詰替え容器において、さらにシーラント層が外側になるように折り曲げて形成された底テープと、底テープを表面積層体と裏面積層体との間に有し、かつ周縁がシールされたシール部と、を備えるスタンディングパウチ形状である。
【0022】
本発明の第
六態様は、第一から第
五態様に係る詰替え容器において、折り曲げ部の一部
を切り開いて形成された、内容物を充填する充填用開口部をさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明の態様によれば、詰替え容器は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層が内側になるように折り曲げて、折り曲げ部と、本体の表面積層体と裏面積層体とを形成し、周縁をシールして形成される。従って、プラスチックボトル、または、プラスチック製の口栓を使用した容器等と異なり、軟包装用積層体のみを使用して詰替え容器を製造することができるため、安価に製造することができる。
【0024】
上記本発明の態様によれば、1枚の積層体を、シーラント層が内側になるように折り曲げて、折り曲げ部を形成し、折り曲げ部は、表面積層体、裏面積層体、および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出す注出ノズルを形成する。従って、大面積の注出口を確保することが可能となり、その結果、円滑かつ迅速な詰替え操作が可能となる。また、注出口も容易かつ確実に形成できる。
【0025】
開封予定線上またはその近傍には、開封予定線に平行な1本または複数のハーフカット線からなる易カット加工が施される。1本のハーフカット線または複数のハーフカット線の半数以上は、折り曲げ部の稜線からの距離が1.0mm以上4.0mm以下の範囲において途切れている。従って、折り曲げ部において、ハーフカット線が途切れているか、またはハーフカット線の密度が減る。このため、折り曲げ部において積層体がこすれたり破れたりして液漏れが生じることを防ぐことができる。また、開封つまみを引き上げると、積層体の裂け目が自然に開封予定線に沿って進み、所定の位置に注出口を容易に形成できる。
【0026】
上記本発明の態様によれば、複数のハーフカット線について、折り曲げ部近傍において途切れている線と途切れていない線とが、交互に配列されている場合には、ハーフカット線の密度が均一に減るため、液漏れを防止し、かつ注出口の易カットを容易に形成することができる。
【0027】
上記本発明の態様によれば、詰替え容器は、基材とシーラント層とを少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層が外側になるように折り曲げて底テープを形成し、本体の表面積層体と裏面積層体との間に挿入して周縁をシールする構成を有するスタンディングパウチ形状である。これにより、自立性を有する大容量の詰替え容器を形成することが可能となる。
【0028】
上記本発明の態様によれば、折り曲げ部の一部を切り開き、内容物を充填するための充填用開口部を形成する。この場合には、他のシール部分を充填用開口部として使用することができない形状の容器であっても、安定した充填操作を行うことが可能となる。
【0029】
上記本発明の態様によれば、ノズルキャップを有する、繰り返し使用する容器のノズルを注出ノズルに挿入する場合、水平に保持した注出ノズルに繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように容器を傾けることにより、詰替え操作を迅速に行うこと可能となる。すなわち、詰替え容器において、1枚の積層体を折り曲げで形成された折り曲げ部によって、注出口が自然に開くため、所望の容器のノズルが挿入し易い。また、ノズルに合わせて注出口の寸法を設計することにより、ノズルに合った注出口を形成できる。このため、水平に保持した注出ノズルに、繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように傾けることにより、詰替え操作を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る詰替え容器を示す模式図である。
【
図2】
図1のX−X’断面における、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示す断面模式図である。
【
図3】
図1の注出ノズル部分の詳細を示す拡大図である。
【
図4】
図3の折り曲げ部を開いた状態を示す模式図である。
【
図5】注出ノズル部分の他の実施形態を示す拡大図である。
【
図6】
図5の折り曲げ部を開いた状態を示す模式図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る詰替え容器を示す模式図である。
【
図8】従来の詰替え容器の一例を示す模式図である。
【
図9A】特許文献5に記載された軟質包装袋を示す模式図である。
【
図9B】
図9Aの軟質包装袋における抽出口の詳細を示す拡大図である。
【
図10】特許文献6に記載された詰替え容器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る詰替え容器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る詰替え容器を示す模式図である。
図2は、
図1のX−X’断面における、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示す断面模式図である。
図3は、
図1の注出ノズル部分の詳細を示す拡大図であり、
図4は、
図3の折り曲げ部を開いた状態を示す模式図である。
【0032】
詰替え容器1は、
図2に示すように、基材11とシーラント層12とを少なくとも有する積層体を備える。
図1に示すように、この1枚の積層体を、シーラント層12が内側になるように折り曲げて、折り曲げ部6、本体の表面積層体2、および裏面積層体3を形成し、表面積層体2と裏面積層体3との周縁がシールされている詰替え容器である。
【0033】
折り曲げ部6は、表面積層体2、裏面積層体3、および注出ノズルシール部24と共に、内容物を注ぎ出す注出ノズル32を形成する。注出ノズル32の先端は、注出ノズル先端シール部25によってシールされる。開封予定線36に沿って注出ノズル先端シール部25が切り離されると、注出口31が形成される。
【0034】
開封予定線36は、開封用切目線35から出発し、表面積層体2、折り曲げ部6、および裏面積層体3を経由して開封用切目線に戻る1本の仮想的な線である。
【0035】
本実施形態では、注出ノズル先端シール部25の下部には、注出ノズルシール部24に設けられた開封用切目線35によって分離形成された開封つまみ34が形成されている。開封つまみ34を持って開封予定線36に沿って注出ノズル先端シール部25を切り離すことにより、注出口31(詳細は図示せず)が形成される。
【0036】
開封予定線36は、折り曲げ部6に対して傾斜するように形成され、開封予定線上およびその周辺部分には、開封予定線36に平行な複数のハーフカット線を形成する易カット加工33が施されている。開封用切目線35の先端部35aは、開封予定線36と平行な方向に向かって折れ曲がっている。また、ハーフカット線は、折り曲げ部6において途切れている。
【0037】
本発明の一実施形態に係る詰替え容器1には、開封予定線36およびその周辺部分に、開封予定線36に平行な複数のハーフカット線を形成する易カット加工33が施されている。ハーフカット線の半数以上は、折り曲げ部6の稜線からの距離dが、1.0mm以上4.0mm以下の範囲において途切れている。
【0038】
ここでは、表面積層体2から裏面積層体3に至る5本のハーフカット線が形成され、そのうち3本は、折り曲げ部6の稜線(
図4の一点鎖線)からの距離dの間、途切れている。他の2本は、折り曲げ部の稜線において繋がっている。
【0039】
また、途切れているハーフカット線と途切れていないハーフカット線とが交互に配列されている。これにより、折り曲げ部6におけるハーフカット線の密度が半分以下になる。その結果、詰替え容器1の最上部である折り曲げ部6が、詰替え容器1の輸送途中の原因、またはその取り扱いの原因により、こすれたり、破れたりして、液漏れが生じることを防ぐことができる。
【0040】
折り曲げ部6の稜線からハーフカット線の途切れ位置までの距離dについては、短すぎるとこすれまたは破れに対する耐性が低下し、長すぎると開封が困難である。従って、距離dは、実験的に1.0mm以上4.0mm以下が適切である。
【0041】
図5は、注出ノズル部分の他の実施形態を示す拡大図である。
図6は、
図5の折り曲げ部を開いた状態を示す模式図である。
【0042】
図5および
図6に示した実施形態において、開封予定線36上に1本のハーフカット線が設けられており、ハーフカット線は、折り曲げ部6の稜線において途切れている。このように、本発明の他の実施形態に係る詰替え容器1には、開封予定線36に平行な1本以上のハーフカット線を形成する易カット加工33が施されている。ハーフカット線の半数以上(この場合は1本)は、折り曲げ部6の稜線からの距離dが、1.0mm以上4.0mm以下の範囲において途切れている。
【0043】
ここで、詰替え容器1の折り曲げ部6についてさらに説明する。折り曲げ部6は、1枚の積層体をシーラント層12が内側になるように天部を折り曲げて形成される。折り曲げ部6は、折り曲げ部の下部に設けた注出ノズルシール部24、表面積層体2、および裏面積層体3と共に、注出口31に至る内容物の流出路を形成する。折り曲げ部6における積層体の弾性の働きにより、流出路の断面は、常に上部が膨らんだ形状となる。このため、注出口31の断面積を広く保つことが可能となり、一度に大量の内容物を排出することが可能となる。
【0044】
また、
図1〜4に示した実施形態では、注出ノズルシール部24に設けられた開封用切目線35によって分離形成された開封つまみ34を持って、開封予定線36に沿って注出ノズル先端シール部25を切り離すことにより、注出口31が形成される。開封予定線36は、折り曲げ部6に対して傾斜するように形成され、開封予定線上およびその周辺部分には、開封予定線36と平行な複数のハーフカット線を形成する易カット加工33が施されている。開封用切目線35の先端部35aは、開封予定線36と平行な方向に向かって折れ曲がっている。従って、開封を円滑に行うことが可能である。
【0045】
図1に示した実施形態において、表面積層体2と裏面積層体3とは、サイドシール部22とボトムシール部23とにおいてシールされて袋形状を形成する。実際の容器では、内容物を充填する充填用開口部が必要であるが、
図1では図示していない。
図1に示された実施形態において、ボトムシール部23またはサイドシール部22に充填用開口部を設けることができる。また、
図7に示したように、折り曲げ部6の一部を切り開いて、充填用開口部41を形成することもできる。
また、充填用開口部41を設ける場合には、充填用開口部41に充填ノズルを差込んで内容物を充填する。このとき、充填用開口部41が拡げられるため、充填用開口部41の注出ノズル側の端部が引っ張られて、伸びてしまう場合がある。このような伸びを防止するために、注出ノズル側の端部にポイントシールを設けることが好ましい。
【0046】
図1に示した実施形態において、折り曲げ部6が詰替え容器1の上部に水平に形成されているが、詰替え容器の側面に垂直に形成されてもよい。
【0047】
なお、開封予定線36は、開封位置を示す仮想的な線であるが、開封位置を明らかに示すために、実際に印刷表示等を行ってもよい。また、易カット加工33は、表面積層体2および裏面積層体3の外側の面に設けたハーフカット線である。
【0048】
ハーフカット線は、刃物によって形成する方法と、レーザー加工によって形成する方法が一般に用いられているが、レーザー加工による方法であればより均一で安定した切れ目を形成できる。レーザーの種類としては、炭酸ガスレーザーが好ましい。開封予定線36について、折り曲げ部の稜線に対して垂直ではなく、
図1のように斜斜するように形成することにより、注出時の操作性が向上する。
【0049】
本実施形態の詰替え容器に使用する積層体としては、通常軟包装袋に使用される積層体を用いることができる。基材11としては、1層または数層の層を有する紙、金属箔、または合成樹脂フィルムが適切である。一例として、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、およびポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、およびポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、セロハン、および三酢酸セルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、およびウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムおよび紙、または、金属箔等が、単体または複合体として使用される。基材11には、必要に応じて印刷層、接着剤層等が含まれる。
【0050】
上記紙としては、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、または模造紙等を用いることができる。積層体に紙を用いた場合には、深いエンボス加工により紙に割れが生じることがある。そのため、本実施形態に係る詰替え容器に紙を用いる場合には、凸エンボスおよび凹エンボスとして、筋状のエンボスを形成することにより、紙を用いた積層体を安定して使用することができる。また、環境配慮の点からも、紙を用いることは好ましい。
【0051】
シーラント層12としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用される。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、およびエチレン・αオレフィン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、およびプロピレン・αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が使用される。また、これらの樹脂を複合した多層フィルムを使用してもよい。
【0052】
積層体の具体的な積層の構成例としては、PET/印刷層/接着剤層/延伸ポリアミド樹脂フィルム(以下ONYと略す)/接着剤層/LLDPEの順で積層したフィルム、ONY/接着剤層/LLDPE、ONY/接着剤層/ONY/接着剤層/LLDPE、紙/LDPE/アルミニウム箔/LDPE、および紙/LDPE等が挙げられる。
【0053】
図7は、詰替え容器1の他の実施形態を示す模式図である。
本実施形態の詰替え容器1では、基材とシーラント層とを少なくとも有する1枚の積層体をシーラント層が外側になるように折り曲げて底テープ4が形成され、表面積層体2と裏面積層体3との間に挿入され、周縁がシールされて、スタンディングパウチ形状が形成される。このような形状の場合、内容物を充填する充填用開口部をサイドシール部に設けることができないため、折り曲げ部6の一部を切り開いて、充填用開口部41を形成する。このように、容器の天部に充填用の開口部が存在すると、内容物の充填操作が容易になる。
【0054】
スタンディングパウチ形状の容器は、底テープ4が広がるため、大容量の容器である。従って、詰替え容器における注出時間をさらに短縮できる。
【0055】
折り曲げ部6は、1枚の積層体をシーラント層が内側になるように天部を折り曲げて形成される。折り曲げ部6は、表面積層体2、裏面積層体3、および注出ノズルシール部24と共に、注出口31に至る内容物の流出路を形成する。これにより、特に内容物が液体の場合には、内容物を注出する際に、内容物が直線状の流出路を円滑に流れるため、迅速に注出することができる。上記構成は、本実施形態の容器が大容量の構成を有しているため、本実施形態においてより好ましい。
【0056】
図7に示した詰替え容器1を製造するには、容器の高さに相当する幅のほぼ2倍の幅にスリットした積層体をシーラント層面が内側になるように天部を折り曲げて対向させ、表面積層体2と裏面積層体3とを形成する。表面積層体2と裏面積層体3とを連続的に供給し、これらの間にシーラント層面が外側になるように二つ折りにした底テープ4を連続的に供給する。さらに、必要なシールを行った後に、打ち抜いて容器とする。
【0057】
このように、本実施形態に係る詰替え容器は、特別なプラスチック製の口栓等を使用せずに、大面積の注出口を確保することが可能である。また、注出口の大きさは、繰り返し使用容器における口栓の所望の形状に合わせて自由に設計することができるため、詰替え操作を迅速に行うことが可能な専用詰替え容器として有用である。
以下、実施例に基づいて、本実施形態に係る詰替え容器についてさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0058】
<表面積層体および裏面積層体の構成>
表面積層体および裏面積層体として、以下の構成を有する積層体を使用した。
PET(東レ社製P60、12μm)/印刷層/接着剤層(東洋モートン社製TM272、3g/m
2(dry))/ONY(ユニチカ社製ONMB、15μm)/接着剤層(同上)/LLDPE(東セロ社製TUX−FCS、150μm)
<底テープの構成>
底テープとして、以下の構成を有する積層体を使用した。
ONY(ユニチカ社製ONM、25μm)/LLDPE(同上、120μm)
【0059】
上記の積層体を用いて、
図7に示した形状のスタンディングパウチを作製した。パウチサイズは、幅130mm、高さ260mm、底折り込み長さ35mmとした。開口部の幅は、約18mmである。
また、折り曲げ部の一部をカットし、充填用開口部とした。さらに、注出ノズル先端部の注出口を形成する開封予定線上に、
図3および
図4に示したようなレーザー加工による複数のハーフカット線を形成する易カット加工を施した。距離dは、2mmとした。注出ノズルシール部には開封用切込線を形成し、開封用切込線の先端は、開封予定線に平行となるように折り曲げられた。
上記得られた詰替え容器の開封特性を調べたところ、100%の確率で開封予定線に沿って開封することが可能であり、注出口が安定して形成されることが分かった。また、充填後の包装体10個について、段ボール箱詰めにして輸送試験を行ったが、こすれまたは破れ等による液漏れは生じなかった。
【符号の説明】
【0060】
1 詰替え容器
2 表面積層体
3 裏面積層体
4 底テープ
6 折り曲げ部
11 基材
12 シーラント層
21 トップシール部
22 サイドシール部
23 ボトムシール部
24 注出ノズルシール部
25 注出ノズル先端シール部
31 注出口
32 注出ノズル
33 易カット加工
34 開封つまみ
35 開封用切目線
35a 開封用切目線先端部
36 開封予定線
41 内容物充填用開口部
a 切れ目線
b V字切欠き
c 網点状の傷加工
d 折り曲げ部の稜線からハーフカット線までの距離