特許第6484920号(P6484920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484920
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   F04D19/04 E
   F04D19/04 H
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-42493(P2014-42493)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-127525(P2015-127525A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-243875(P2013-243875)
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 雅嗣
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−157257(JP,A)
【文献】 特開2005−180265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ円筒部と、
前記ロータ円筒部の外周側に配設されるステータと、
前記ステータが固定されているベースと、を備え、
前記ロータ円筒部の外周面または前記ステータの内周面にはねじ溝が形成されており、
前記ステータの外周側には、前記ステータの材質よりも比強度が高い材質より成る円筒状の高強度部材が設けられ、
前記高強度部材の外周面と前記ベースの内周面との間には、隙間が設けられ、
前記高強度部材の端が前記ステータに固定され、前記高強度部材の端が前記ステータまたは前記ベースに固定されている、真空ポンプ。
【請求項2】
ロータ円筒部と、
前記ロータ円筒部の外周側に配設されるステータと、
前記ステータが固定されているベースと、を備え、
前記ロータ円筒部の外周面または前記ステータの内周面にはねじ溝が設けられており、
前記ステータの外周側には、前記ステータの材質よりも比強度が高い材質より成る円筒状の高強度部材が設けられ、
前記高強度部材の外周面と前記ベースの内周面との間には、隙間が設けられ、
前記高強度部材を前記ステータに固定するための環状の固定板をさらに備え、
前記ステータの取り付けフランジには、第1環状溝が設けられ、
前記固定板には、第2環状溝が設けられ、
前記高強度部材の両端は、前記第1環状溝と前記第2環状溝のそれぞれに嵌合し、
前記高強度部材の外周面は、前記第1環状溝の外周面に当接し、かつ、前記第2環状溝
の外周面に当接する真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記固定板は、螺子部材によって前記ステータに固定されている真空ポンプ。
【請求項4】
ロータ円筒部と、
前記ロータ円筒部の外周側に配設されるステータと、
前記ステータが固定されているベースと、を備え、
前記ロータ円筒部の外周面または前記ステータの内周面にはねじ溝が設けられており、
前記ステータの外周側には、前記ステータの材質よりも比強度が高い材質より成る円筒状の高強度部材が設けられ、
前記高強度部材の外周面と前記ベースの内周面との間には、隙間が設けられ、
前記ステータの取り付けフランジには、第3環状溝が設けられ、
前記ベースの底面には、第4環状溝が設けられ、
前記高強度部材の両端は、前記第3環状溝と前記第4環状溝のそれぞれに嵌合し、
前記高強度部材の外周面は、前記第3環状溝の外周面に当接し、かつ、前記第4環状溝
の外周面に当接する真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ステータと前記高強度部材との間に隙間が設けられている真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記高強度部材は繊維強化部材を含み、前記繊維強化部材の繊維は螺旋状に巻回される真空ポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載の真空ポンプにおいて、
前記高強度部材は、繊維強化部材より成り、
前記繊維強化部材の繊維は、径方向から見て繊維が互いに交差して所定の強度を保持するように螺旋状に巻回される真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプに代表される真空ポンプは、ドライエッチング装置やCVD装置などの真空チャンバに取り付けられる。ターボ分子ポンプ内では、ロータ翼とロータ円筒部が形成されたロータが毎分数万回転という高速回転で回転し、ロータ翼とステータ翼とが協働し、ロータ円筒部とネジステータが協働して、その真空チャンバ内の気体を排気することで、高真空状態を作り出す。
【0003】
特許文献1には、ロータ翼とステータ翼とが協働して排気した気体分子を、回転するロータ円筒部とベースに固定されたネジステータとが協働して圧縮しながら排気する発明が記載されている。
【0004】
ターボ分子ポンプの使用中、ロータが何らかの原因で破損することがある。これは、ロータ破壊と呼ばれる。ロータ破壊によってロータ円筒部が破壊し破片が生じると、その破片は飛散し、ロータ円筒部と対向するネジステータに衝突する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003―172289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、ロータ円筒部の破片の衝撃によって、ネジステータが外周方向に変形し、ターボ分子ポンプのケーシングのベースの内周面に衝突することで、ロータ破壊による衝撃がベースの内周面に伝達してしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の好ましい実施形態による真空ポンプは、ロータ円筒部と、ロータ円筒部の外周側に配設されるステータと、ステータが固定されているベースと、を備え、ロータ円筒部の外周面またはステータの内周面にはねじ溝が設けられており、ステータの外周側には、ステータの材質よりも比強度が高い材質より成る円筒状の高強度部材が設けられ、高強度部材の外周面とベースの内周面の間には、隙間が設けられ、高強度部材の端がステータに固定され、高強度部材の端がステータまたはベースに固定されている。
(2)本発明の他の好ましい実施形態による真空ポンプは、ロータ円筒部と、ロータ円筒部の外周側に配設されるステータと、ステータが固定されているベースと、を備え、ロータ円筒部の外周面またはステータの内周面にはねじ溝が設けられており、ステータの外周側には、ステータの材質よりも比強度が高い材質より成る円筒状の高強度部材が設けられ、高強度部材の外周面とベースの内周面との間には、隙間が設けられ、高強度部材をステータに固定するための環状の固定板をさらに備え、ステータの取り付けフランジには、第1環状溝が設けられ、固定板には、第2環状溝が設けられ、高強度部材の両端は、第1環状溝と第2環状溝のそれぞれに嵌合し、高強度部材の外周面は、第1環状溝の外周面に当接し、かつ、第2環状溝の外周面に当接する。
(3)さらに好ましい実施形態では、固定板は、螺子部材によってステータに固定されている。
(4)本発明のさらに他の好ましい実施形態による真空ポンプは、ロータ円筒部と、ロータ円筒部の外周側に配設されるステータと、ステータが固定されているベースと、を備え、ロータ円筒部の外周面またはステータの内周面にはねじ溝が設けられており、ステータの外周側には、ステータの材質よりも比強度が高い材質より成る円筒状の高強度部材が設けられ、高強度部材の外周面と前記ベースの内周面との間には、隙間が設けられ、ステータの取り付けフランジには、第3環状溝が設けられ、ベースの底面には、第4環状溝が設けられ、高強度部材の両端は、第3環状溝と第4環状溝のそれぞれに嵌合し、高強度部材の外周面は、第3環状溝の外周面に当接し、かつ、第4環状溝の外周面に当接する。
(5)さらに好ましい実施形態では、ステータと高強度部材との間に隙間が設けられている。
(6)さらに好ましい実施形態では、高強度部材は繊維強化部材を含み、繊維強化部材の繊維は螺旋状に巻回される。
(7)さらに好ましい実施形態では、高強度部材は、繊維強化部材より成り、繊維強化部材の繊維は、径方向から見て繊維が互いに交差して所定の強度を保持するように螺旋状に巻回される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の真空ポンプによれば、ロータ破壊時の衝撃を吸収し、急停止トルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のターボ分子ポンプの概略構成を示す断面図。
図2】第1実施形態のターボ分子ポンプにおけるネジステータ周辺を示す図。
図3】第2実施形態のターボ分子ポンプにおけるネジステータ周辺を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の真空ポンプを説明するにあたり、ターボ分子ポンプを例に説明する。なお、本発明はモレキュラドラッグポンプなどの真空ポンプにも適用できる。
―第1実施形態―
図1は、ターボ分子ポンプ100の概略構成を示す断面図である。ターボ分子ポンプ100のケーシング52内にはロータ組立体10が回転自在に設けられている。ロータ組立体10は、ロータ4と、シャフト5と、ロータディスク6から構成されている。ターボ分子ポンプ100は磁気軸受式のポンプであり、ロータ組立体10は、上部ラジアル電磁石62、下部ラジアル電磁石64、スラスト電磁石66によって非接触支持される。
【0011】
ロータ4には、複数段のロータ翼20とロータ円筒部8とが設けられている。複数段のロータ翼20の間には、軸方向に対して複数段のステータ翼44が設けられ、ロータ円筒部8の外周側にはネジステータ11が設けられている。ネジステータ11の内周面には、ねじ溝が設けられている。一方、ロータ円筒部8の外周面には、ねじ溝が設けられていない。
【0012】
各ステータ翼44は、スペーサ58を介してベース50上に配設されている。ケーシング52をベース50に固定すると、積層されたスペーサ58がベース50とケーシング52との間に挟持され、各ステータ翼44が位置決めされる。
【0013】
ネジステータ11はアルミ合金などで形成される。ネジステータ11は、ネジステータ11の取り付けフランジ11aを介してボルト30でベース50に設けられた凹部50aに取り付けられる。ネジステータ11の外周側には、アルミ合金よりも比強度が大きい繊維強化部材であるCFRPで作製された円筒状の部材12(以下、高強度部材12と呼ぶ。)が配設されている。高強度部材12は、取り付けフランジ11aに形成された環状溝11bと嵌合し、さらに固定板13に形成された環状溝13aとも嵌合する。その上で、固定板13をネジステータ11にボルト14で固定することで、高強度部材12をネジステータ11に固定する。なお、ネジステータ11周辺の詳細については、図2を用いて後述する。
【0014】
ベース50には排気口56が設けられ、この排気口56にバックポンプが接続される。ロータ組立体10が上部ラジアル電磁石62、下部ラジアル電磁石64、スラスト電磁石66によって磁気浮上されつつモータ40により高速回転駆動されることにより、吸気口31側の気体分子は排気口56側へと排気される。
【0015】
図2は、第1実施形態のターボ分子ポンプ100におけるネジステータ11の周辺を示す図である。ネジステータ11は、取り付けフランジ11aに環状溝11bが設けられている。上述のように、ネジステータ11の外周側には、ネジステータ11と同様に円筒状に形成された高強度部材12が設けられている。
【0016】
高強度部材12の開口の一端は、環状溝11bに嵌合され支持されている。高強度部材12の開口の他端は、固定板13に設けられた環状溝13aに嵌合され支持されている。固定板13は、特に限定されないが、例えば、円筒状に形成されており、ボルト14によりネジステータ11に固定される。これによって、高強度部材12は、ネジステータ11の環状溝11bと固定板13の環状溝13aに挟持されて固定される。固定板13とベース50の内周面50bとの間には、隙間s1が空いている。なお、当然ながら、上述のような配置であるため、高強度部材12外周面とベース50の内周面との間にも隙間s0が空いている。さらに隙間s0は、隙間s1よりも大きい。このように、ネジステータ11の外周側に高強度部材12が設けられることで、ロータ破壊が起きてネジステータ11がロータ円筒部8から外周方向の力を受けた時に、ネジステータ11が外周方向に変形することを抑制することができる。その結果、ネジステータ11が受けたロータ破壊による衝撃がベース50の内周面50bに伝達する量を低減することができる。
【0017】
ネジステータ11の環状溝11bの外周面と高強度部材12の外周面は当接している。同様に、固定板13の環状溝13aの外周面と高強度部材12の外周面は当接している。このようにすることで、高強度部材12の開口の両端および開口近くの外周面が、ネジステータ11の環状溝11bおよび固定板13の環状溝13aにより支持され固定されている。これによって、ロータ破壊が起きてネジステータ11がロータ円筒部8から外周方向の力を受けた時に、ネジステータ11の開口の両端が外周方向に変形することを主に抑制することができる。
【0018】
一方、ネジステータ11の環状溝11bの内周面と高強度部材12の内周面は接触しておらず、隙間s2が空いている。同様に、固定板13の環状溝13aの内周面と高強度部材12の内周面は接触しておらず、隙間s3が空いている。これによって、ネジステータ11の中央部11dが変形することを許容して、ロータ破壊のエネルギーをその変形によって消費することができる。さらに、ネジステータ11の外周面には、凹部11eが設けられており、ネジステータ11と高強度部材12の間の隙間s4をさらに広げている。これによって、ネジステータ11の中央部11dがさらに変形しやすくなり、上述のロータ破壊のエネルギーが消費しやすくなる。なお、ネジステータ11の中央部11dの変形によって固定板13がベース50の内周面50bに接触しないように、ネジステータ11と高強度部材12の間の隙間s4は設定されている。
【0019】
高強度部材12はCFRPなどの繊維強化部材によって作製される。ロータ破壊が起きた際、高強度部材12には、主に外周方向の力が加わる。本実施形態における高強度部材12を構成する繊維強化部材の繊維は少なくとも螺旋状には巻回され所定の強度を保持しており、当該力を受け止められるようにしている。なお、螺旋の巻回方向には右巻きと左巻きがあるが、右巻きに巻回するものと左巻きに巻回するものの両方が含まれるのが好ましい。右巻きと左巻きを両方含むと、径方向から見て繊維が互いに交差するようになり、一方の繊維が他方の繊維を支持するので、当該力に対する強度が向上する。
【0020】
以上、第1実施形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1)高強度部材12の開口の一端は、環状溝11bに嵌合され支持されている。高強度部材12の開口の他端は、固定板13に設けられた環状溝13aに嵌合され支持されている。固定板13は、ボルト14でネジステータ11に固定されている。固定板13とベース50の内周面50bの間には隙間s1が空いている。
このように、ネジステータ11の外周側に高強度部材12が設けられることで、ロータ破壊が起きてロータ円筒部8から外周方向の力をネジステータ11が受けた時にネジステータ11外周方向に変形することを抑制することができ、その結果、ロータ円筒部8からネジステータ11が受けたロータ破壊による衝撃がベース50の内周面50bに伝達する量を低減できる。その結果、ロータ破壊時の急停止トルクを低減することができる。
【0021】
(2)ネジステータ11の環状溝11bの外周面と高強度部材12の外周面は当接している。同様に、固定板13の環状溝13aの外周面と高強度部材12の外周面は当接している。このように当接することで、高強度部材12の開口の両端および開口近くの外周面が、ネジステータ11の環状溝11bおよび固定板13の環状溝13aにより支持され固定されている。これによって、ロータ破壊が起きてロータ円筒部8から外周方向の力をネジステータ11が受けた時にネジステータ11の開口の両端が外周方向に変形することを主に抑制することができる。
【0022】
(3)一方、ネジステータ11の環状溝11bの内周面と高強度部材12の内周面は接触しておらず、隙間s2が空いている。同様に、固定板13の環状溝13aの内周面と高強度部材12の内周面は接触しておらず、隙間s3が空いている。これによって、ネジステータ11の中央部11dが変形することを許容して、上述のロータ破壊のエネルギーをその変形によって消費することができる。さらに、ネジステータ11の外周面には、凹部11eが設けられており、ネジステータ11と高強度部材12の間の隙間s4をさらに広げている。これによって、ネジステータ11の中央部11dがさらに変形しやすくなり、ロータ破壊のエネルギーが消費しやすくなる。なお、ネジステータ11の中央部11dの変形で、固定板13がベース50の内周面に接触しないように上述の隙間s4は設定されている。
【0023】
(4)固定板13は、螺子部材であるボルト14によって、ネジステータ11に締結されている。
これにより、補修などの際の分解が容易になる。
【0024】
(5)高強度部材12は、繊維強化部材であるCFRPで作製されている。CFRPなどの繊維強化部材は、ネジステータ11の材質であるアルミ合金よりも軽いため、ターボ分子ポンプ100を軽量化することができる。また、CFRPの繊維方向は、螺旋状の繊維方向を含ませるなどして、所定の強度を保持し、外周側の力を受け止められるように設計されている。なお、螺旋の巻回方向には右巻きと左巻きがあるが、右巻きに巻回するものと左巻きに巻回するものの両方が含まれるのが好ましい。右巻きと左巻きを両方含むと、径方向から見て繊維が互いに交差するようになり、一方の繊維が他方の繊維を支持するので、当該力に対する強度が向上する。
【0025】
―第2実施形態―
図3は、第2実施形態のターボ分子ポンプ100におけるネジステータ11の周辺を示す図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0026】
第2実施形態のターボ分子ポンプ100は、高強度部材12を固定するための固定板を有しない。本実施形態では、ベース50の底面50cに環状溝50dが形成されている。ベース50の底面50cは、ベース50の内周面50bよりも剛性が高いため、ロータ破壊の衝撃にも耐えうる。高強度部材12は、ベース50の底面50cに形成された環状溝50dと嵌合し、さらに、ネジステータ11の取り付けフランジ11aに形成された環状溝11bと嵌合する。その上で、高強度部材12は、ネジステータ11とベース50の底面50cに挟持されることで固定される。高強度部材12とベース50の内周面50bとの間には、隙間s5が設けられている。
【0027】
ネジステータ11の環状溝11bの外周面と高強度部材12の外周面は当接している。同様に、ベース50の環状溝50dの外周面と高強度部材12の外周面は当接している。さらに、ネジステータ11の環状溝11bの内周面と高強度部材12の内周面には隙間s2が設けられている。同様に、ベース50の環状溝50dの内周面と高強度部材12の内周面には隙間s6が設けられている。さらに、ネジステータ11の外周面には、凹部11eが設けられており、ネジステータ11と高強度部材12の間の隙間s4をさらに広げている。
【0028】
以上より、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第2実施形態の高強度部材12は、一部に貫通孔や切り欠きなどが形成されており、ターボ分子ポンプ100の内部排気系と排気口56をつないでいる。
【0029】
以上に示した第1実施形態、第2実施形態においては、ネジステータ11と高強度部材12の間に隙間s4を設けたが、隙間s4を設けないようにしてもよい。すなわち、ネジステータ11と高強度部材12を接触させるようにしてもよい。このようにすることで、ネジステータ11が変形しにくくなるが、隙間s4を設けなくなった分、高強度部材12の外周面とベース50の内周面の間の隙間が大きくなるため、その分だけ、ロータ破壊による衝撃をベース50の内周面50bに伝達しないようにすることができる。
【0030】
以上に示した第1実施形態、第2実施形態においては、繊維強化部材としてCFRPを用いたが、GFRPなど、その他の繊維強化部材でも同様の効果を奏する。
【0031】
以上に示した第1実施形態、第2実施形態においては、高強度部材は繊維強化部材であるCFRPで作製されるとしたが、チタンなどで作製されるようにしてもよい。
【0032】
本発明の真空ポンプにおいては、ステータの内周面、および、ロータ円筒部の外周面のいずれか一方に、ねじ溝を設ければよい。よって、以上に示した第1実施形態、第2実施形態においては、ねじ溝が内周面に設けられたステータ、すなわち、ネジステータを用いたが、ステータの内周面にねじ溝を設ける代わりに、ロータ円筒部の外周面にねじ溝を設けることもできる。
【0033】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
4:ロータ、 5:シャフト、 6:ロータディスク、 8:ロータ円筒部、
10:ロータ組立体、 11:ネジステータ、 11a:取り付けフランジ、
11b:環状溝、 11d:中央部、 11e:凹部、 12:高強度部材、
13:固定板、 13a:環状溝、 14:ボルト、 20:ロータ翼、
30:ボルト、 31:吸気口、 40:モータ、 44:ステータ翼、
50:ベース、 50a:凹部、 50b:内周面、 50c:底面、
50d:環状溝、 52:ケーシング、 56:排気口、 58:スペーサ、
62:上部ラジアル電磁石、 64:下部ラジアル電磁石、 66:スラスト電磁石、
s0〜s6:隙間、 100:ターボ分子ポンプ
図1
図2
図3