(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂組成物からなり、ポリプロピレン樹脂組成物を二軸延伸することにより得ることができる。ポリプロピレン樹脂組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン樹脂を含む。ポリプロピレン樹脂組成物は、1種のポリプロピレン樹脂を含有してもよいし、2種以上のポリプロピレン樹脂を組み合わせて含有してもよい。
【0013】
ポリプロピレン樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)が、25万以上45万以下であるポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。このようなポリプロピレン樹脂組成物を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、キャスト原反シートの厚さの制御が容易となり、例えば小型かつ高容量型のコンデンサ用に適した、極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、キャスト原反シートおよび二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みのムラが発生し難くなるため好ましい。ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの均一性、力学特性、熱-機械特性等の観点から、30万以上であることがより好ましい。ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリプロピレン樹脂組成物の流動性および極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る際の延伸性の観点から、40万以下であることがより好ましい。
【0014】
ポリプロピレン樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として算出される分子量分布(Mw/Mn)が、6以上12以下であるポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、7以上であることがより好ましく、7.5以上であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、11以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。このようなポリプロピレン樹脂組成物を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、このようなポリプロピレン樹脂組成物は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐電圧性の観点からも好ましい。
【0015】
ポリプロピレン樹脂組成物は、Z平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比として算出される分子量分布(Mz/Mn)が、20以上70以下であるポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。分子量分布(Mz/Mn)は、22.5以上であることがより好ましく、25以上であることがさらに好ましい。分子量分布(Mz/Mn)は、60以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。このようなポリプロピレン樹脂組成物を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、このようなポリプロピレン樹脂組成物は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐電圧性の観点からも好ましい。
【0016】
ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、ポリオレフィン類の分子量分析が可能な市販の高温型GPC測定機、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、HLC−8121GPC-HT等を使用することができる。この場合、例えば、GPCカラムとして東ソー株式会社製、TSKgelGMHHR−H(20)HTを3本連結させたものが用いられ、カラム温度は140℃に設定され、溶離液としてトリクロロベンゼンが用いられ、流速1.0ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)を得る。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)として算出され、分子量分布(Mz/Mn)は、Z平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比、Z平均分子量(Mz)/数平均分子量(Mn)として算出される。また、こうして得られる重量平均分子量の対数値を、対数分子量(「Log(M)」)と称する。
【0017】
ポリプロピレン樹脂としては、例えばアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のポリプロピレンのホモポリマー、および、ポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーが挙げられる。耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンであることが好ましく、オレフィン重合用触媒の存在下でポリプロピレンを単独重合して得られるアイソタクチックポリプロピレンであることがより好ましい。
【0018】
ポリプロピレン樹脂組成物は、メソペンタッド分率([mmmm])が、94.0%以上98.0%未満であるポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。メソペンタッド分率は、95.0%以上97.0%以下であることがより好ましい。このようなポリプロピレン樹脂組成物を用いると、適度に高い立体規則性によって樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性および長期間に渡る耐電圧性が向上する一方、キャスト原反シートを成形する際の適度な固化(結晶化)速度によって所望の延伸性を得ることができる。
【0019】
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。具体的には、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500を利用して測定することができる。観測核は、
13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、溶媒には、o−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いることができる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。
【0020】
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH
3(mmmm)=21.7ppmとすることができる。メソペンタッド分率を、5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出する。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考としてよい。
【0021】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmおよびmrrm等)に由来する各シグナルの強度の積分値に基づいて百分率で計算される。mmmmおよびmrrm等に由来する各シグナルは、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等を参照して帰属することができる。
【0022】
ポリプロピレン樹脂の含量は、相溶性の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0023】
本発明において、ポリプロピレン樹脂組成物は、少なくとも1種の有機系造核剤を含む。有機系造核剤は、分散型造核剤と溶解型造核剤に分類することができる。分散型造核剤は、通常、ポリプロピレン樹脂と造核剤を溶融混練する温度下またはポリプロピレンフィルムを成形加工する温度下で、造核剤自体が固体であるか、または、造核剤がポリプロピレン樹脂中へ相容(混和)しない、有機系造核剤である。溶解型造核剤は、通常、ポリプロピレン樹脂と造核剤を溶融混練する温度下またはポリプロピレンフィルムを成形加工する温度下で造核剤がポリプロピレン樹脂中へ相溶または相容(混和)する有機系造核剤である。
【0024】
分散型造核剤としては、例えばリン酸エステル金属塩系造核剤およびカルボン酸金属塩系造核剤、ロジン金属塩系造核剤等が挙げられる。溶解型造核剤としては、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、アミド系造核剤等の溶解型造核剤が挙げられる。ポリプロピレン樹脂組成物は、造核剤として、上記の分散型造核剤または溶解型造核剤を単独でまたは2種以上組み合わせて含有してよく、または、分散型造核剤と溶解型造核剤とを組み合わせて含有してもよい。有機系造核剤は、ポリプロピレン樹脂との混和性の観点からは、溶解型造核剤であることが好ましく、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤およびアミド系造核剤からなる群から選択される少なくとも1種の融解型造核剤を含むことがより好ましい。また、有機系造核剤は、有機系造核剤の添加量を減らし、ブリードアウトを抑制する観点からは、分散型造核剤であることが好ましく、少なくとも1種のリン酸エステル金属塩系造核剤を含むことがより好ましい。
【0025】
リン酸エステル金属塩系造核剤としては、例えば式(1):
【化1】
で示されるリン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、式(2):
【化2】
で示されるアルミニウムヒドロキシビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウム等が挙げられる。これらのリン酸エステル金属塩系造核剤は、例えば株式会社ADEKAより、アデカスタブNA−11(式(1)で示されるリン酸エステル金属塩系造核剤)、NA−21(式(2)で示されるリン酸エステル金属塩系造核剤)、NA−71(リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウムを含むリン酸エステル金属塩系造核剤)、NA−27等として市販されている。有機系造核剤として、これらのリン酸エステル金属塩系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0026】
カルボン酸金属塩系造核剤としては、例えば芳香族カルボン酸金属塩系造核剤およびアルキル脂肪酸金属塩系造核剤等が挙げられる。
【0027】
芳香族カルボン酸金属塩系造核剤としては、例えば安息香酸金属塩系造核剤が挙げられる。具体的には、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、式(3):
【化3】
で示されるジ−p−tert−ブチル安息香酸ヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。これらの安息香酸金属塩系造核剤は、例えばアデカ・パルマロール(AdekaPalmarole)社より、MI.NA.08またはMI.NA.20として、クラリアントジャパン社よりSandostab4030として市販されている。有機系造核剤として、これらの安息香酸金属塩系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0028】
アルキル脂肪酸金属塩系造核剤としては、例えば、シクロアルキルカルボン酸金属塩系造核剤、ピメリン酸金属塩系造核剤等を挙げることができる。
【0029】
シクロアルキルカルボン酸金属塩系造核剤としては、具体的には、式(4):
【化4】
で示される化合物、式(5):
【化5】
で示される化合物等が挙げられる。これらのシクロアルキルカルボン酸金属塩系造核剤は、例えばミリケン・アンド・カンパニー社よりHyperform(登録商標)68L、Hyperform(登録商標)20Eとして市販されている。有機系造核剤として、これらのシクロアルキルカルボン酸金属塩系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0030】
ピメリン酸金属塩系造核剤としては、例えばピメリン酸ナトリウム、ピメリン酸カルシウム等が挙げられる。有機系造核剤として、これらのピメリン酸金属塩系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0031】
ロジン金属塩系造核剤としては、例えば、デヒドロアビエチン酸マグネシウム、デヒドロアビエチン酸カルシウム、デヒドロアビエチン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのロジン金属塩系造核剤は、例えば荒川化学工業社よりパインクリスタルKM−1500、パインクリスタルKM−1300、パインクリスタルKR−50M等として市販されている。有機系造核剤として、これらのロジン金属塩系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0032】
その他の分散型造核剤としては、例えば式(6):
【化6】
で示されるキナクリドンが挙げられる。
【0033】
有機系造核剤として分散型造核剤を使用する本発明の一態様において、分散型造核剤は、添加量を減らし、ブリードアウトを抑制する観点から、本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム中で、2μm以下の平均粒子径を有することが好ましい。上記の平均粒子径は、より好ましくは1μmであり、さらに好ましくは0.8μmである。ここで、造核剤の粒子径は電子顕微鏡等により測定してよく、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズの走査型電子顕微鏡S−3000Nを用いてJIS Z8827−1を参考に測定することができる。
【0034】
ソルビトール系造核剤としては、例えば一般式(7):
【化7】
[式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、Hまたはメチルを表わす]
で示される化合物、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。これらのソルビトール系造核剤は、例えばゲルオール(登録商標)D(新日本理化株式会社製)として市販されている1,3:2,4−ビス−O−(ベンジリデン)ソルビトール、ゲルオール(登録商標)MD(新日本理化株式会社製)として市販されている1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ゲルオール(登録商標)DXR(新日本理化株式会社製)、Millad3988(ミリケン・アンド・カンパニー社製)として市販されている1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。有機系造核剤として、これらのソルビトール系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0035】
ノニトール系造核剤としては、例えば式(8):
【化8】
で示される化合物等が挙げられる。このノニトール系造核剤は、例えばミリケン・アンド・カンパニー社より、NX-8000として市販されている。有機系造核剤として、ノニトール系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0036】
キシリトール系造核剤としては、例えばビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトール等が挙げられる。有機系造核剤として、これらのキシリトール系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0037】
アミド系造核剤としては、例えば式(9):
【化9】
で示される化合物、式(10):
【化10】
で示される化合物等が挙げられる。これらのアミド系造核剤は、例えば新日本理化株式会社より、リカクリア(登録商標)PC−1(N,N’,N”−トリス[2−メチルシクロヘキサン−1−イル]−プロパン−1,2,3−トリイルカルボキサミド)(式(9)で示されるアミド系造核剤)として、BASF社より、Irgaclear XT386(式(10)で示されるアミド系造核剤)として市販されている。有機系造核剤として、これらのアミド系造核剤を、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0038】
その他の溶解型造核剤としては、例えば式(11):
【化11】
で示されるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド等が挙げられる。この化合物は、例えば新日本理化株式会社より、エヌジェスター(登録商標)NU−100として市販されている。
【0039】
上記の有機系造核剤は、分散型造核剤と溶解型造核剤に分類する他に、ポリプロピレンのα晶を優先的に形成させるα晶核剤およびポリプロピレンのβ晶を優先的に形成させるβ晶核剤としても分類することができる。α晶核剤としては、上記に述べたリン酸エステル金属塩系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ロジン金属塩系造核剤、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、アミド系造核剤等が挙げられる。β晶核剤としては、上記に述べたキナクリドンおよびN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドが挙げられる。
【0040】
ポリプロピレン樹脂組成物は、穿孔の発生を抑制する観点から、少なくとも1種のα晶核剤を含有することが好ましい。
【0041】
有機系造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは10ppm以上、より好ましくは25ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0042】
有機系造核剤として分散型造核剤を使用する本発明の一態様において、分散型造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは25ppm以上、より好ましくは50ppm以上、さらに好ましくは100ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
【0043】
有機系造核剤として溶解型造核剤を使用する本発明の一態様において、溶解型造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは10ppm以上、より好ましくは25ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0044】
有機系造核剤としてα晶核剤を使用する本発明の一態様において、α晶核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、さらに好ましくは25ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0045】
有機系造核剤としてβ晶核剤を使用する本発明の一態様において、β晶核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、さらに好ましくは25ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0046】
有機系造核剤としてソルビトール系造核剤を使用する本発明の一態様において、ソルビトール系造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上、さらに好ましくは200ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0047】
有機系造核剤としてノニトール系造核剤を使用する本発明の一態様において、ノニトール系造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上、さらに好ましくは200ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0048】
有機系造核剤としてキシリトール系造核剤を使用する本発明の一態様において、キシリトール系造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上、さらに好ましくは200ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0049】
有機系造核剤としてアミド系造核剤を使用する本発明の一態様において、アミド系造核剤の含量は、造核効果の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは10ppm以上、より好ましくは25ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上である。ブリードアウトを抑制する観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0050】
本発明において、ポリプロピレン樹脂組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン樹脂および少なくとも1種の有機系造核剤の他に、ポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂(以下「他の樹脂」ともいう)を本発明の効果を損なわない範囲内で含むことができる。ここで、「他の樹脂」は特に限定されず、ポリプロピレン樹脂以外の樹脂であってコンデンサ用途に適したものとされる従来公知の樹脂を本発明においても適宜用いることができる。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−メチルペンテン)などのポリプロピレン以外の他のポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などの、α−オレフィン同士の共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体ランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体ランダム共重合体等が挙げられる。このような他の樹脂の配合量は、フィルムを構成する樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0051】
本発明において、ポリプロピレン樹脂組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン樹脂および少なくとも1種の有機系造核剤の他に、必要に応じて少なくとも1種の添加剤を含有してよい。添加剤とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤である限り特に制限されない。このような添加剤には、例えば酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等が含まれる。このような添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲内でポリプロピレン樹脂に添加してよい。
【0052】
「酸化防止剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出機内での熱劣化および酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、フィルムコンデンサとしての長期使用における劣化抑制およびコンデンサ性能の向上に寄与することである。押出機内での熱劣化および酸化劣化を抑制する酸化防止剤を「1次剤」ともいい、コンデンサ性能の向上に寄与する酸化防止剤を「2次剤」ともいう。これらの2つの目的のために、2種類の酸化防止剤を用いてもよいし、2つの目的のために1種類の酸化防止剤を使用してもよい。
【0053】
2種類の酸化防止剤を用いる場合、ポリプロピレン樹脂は、1次剤として、例えば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)を、ポリプロピレン樹脂を基準(100質量部)に対して、1000ppm〜4000ppm程度含むことができる。この目的の酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない(一般的には、残存量100ppmより少ない)。
【0054】
2次剤として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することができる。本発明において使用できるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられる。なかでも、高分子量であってポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、最も好ましい。
【0055】
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、押出機内で少なからず消費されることを考慮して、ポリプロピレン樹脂100質量部を基準に、好ましくは2000ppm以上7000ppm以下、より好ましくは3000ppm以上7000ppm以下の量で、ポリプロピレン樹脂組成物中に含まれる。
【0056】
ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含まない場合、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤をより多く使用することができる。この場合、押出機内におけるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量が増える点から、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂100質量部を基準に、3000ppm以上8000ppm以下の量で、ポリプロピレン樹脂組成物中に含まれることが好ましい。
【0057】
「塩素吸収剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸等を例示できる。
【0058】
「紫外線吸収剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール(BASF製Tinuvin328等)、ベンゾフェノン(Cytec製Cysorb UV−531等)、ハイドロキシベンゾエート(Ferro製UV−CHEK−AM−340等)等を例示できる。
【0059】
「滑剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。滑剤として、例えば、第一級アミド(ステアリン酸アミド等)、第二級アミド(N−ステアリルステアリン酸アミド等)、エチレンビスアミド(N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド等)等を例示できる。
【0060】
「可塑剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。可塑剤として、例えば、PPランダム共重合体等を例示できる。
【0061】
「難燃化剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。難燃化剤として、例えば、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、ボレート、アンチモン酸化物等を例示できる。
【0062】
「帯電防止剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。帯電防止剤として、例えば、グリセリンモノエステル(グリセリンモノステアレート等)、エトキシル化された第二級アミン等を例示できる。
【0063】
「着色剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。着色剤として、例えば、カドミウム、クロム含有無機化合物からアゾ、キナクリドン有機顔料の範囲まで例示できる。
【0064】
本発明では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの長期使用時における経時的に進行する劣化を抑制する目的で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)を1種類以上含有し、フィルム中の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部を基準に、1000ppm以上6000ppm以下であることが好ましく、1500ppm以上6000ppm以下であることが好ましい。
【0065】
ポリプロピレンと分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、最適な特定範囲の量を含有させたフィルムコンデンサは、高い耐電圧性能を維持したまま、非常に高温のライフ促進試験においても長期に渡って、静電容量を低下させず(劣化が進行せず)、長期耐用性が向上するので好ましい。
【0066】
本発明において、ポリプロピレン樹脂組成物に含まれるポリプロピレン樹脂は、従来公知の方法を用いて製造することができ、重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法およびスラリー重合法が挙げられる。重合は、1つの重合反応機を用いる一段重合であってよく、2以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、反応器中に水素またはコモノマーを分子量調整剤として添加して重合を行ってもよい。重合触媒としては、従来公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、重合触媒には助触媒成分やドナーが含まれていてもよい。ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布および立体規則性等は、重合触媒その他の重合条件を適宜調整することによって制御することができる。
【0067】
また、ポリプロピレン樹脂の分子量分布を調整する方法としては、例えば、重合条件を調節して分子量分布を調整することによる方法、分解剤を使用する方法、高分子量成分を選択的に分解処理する方法、異なる分子量の樹脂をブレンドする方法などが挙げられる。
【0068】
重合条件によって分子量分布を調整する場合には、後述の重合触媒を用いることが、分子量分布や分子量の構成を容易に調整できるため好ましい。多段重合反応によってポリプロピレン樹脂を得る場合には、例えば、次のような方法が例示できる。触媒の存在下、高分子量成分用の重合反応器と低分子量または中分子量成分用の反応器の複数の反応器によって重合反応を行う。複数の反応器は、例えば直列または並列に使用することができる。まず、反応器中へプロピレンおよび触媒を供給する。これらの成分とともに、要求されるポリマーの分子量に到達するために必要な量の分子量調整剤、例えば水素を混合して第1の重合反応を行う。反応温度は、例えばスラリー重合の場合、70〜100℃程度、滞留時間は20分〜100分程度である。第1の重合反応による生成物を、追加のプロピレン、触媒、分子量調整剤とともに逐次または連続的に次の反応器に送り、第1の重合反応より低分子量あるいは高分子量の生成物が得られるように調整して第2の重合反応を行う。第1および第2の重合反応による収量(生産量)を調整することによって、分子量分布を調整することができる。
【0069】
触媒としては、一般的なチーグラー・ナッタ触媒が好適に用いられる。また、用いる触媒は助触媒成分やドナーを含んでいてもよい。触媒や重合条件を適宜調整することにより、分子量分布をコントロールすることができる。
【0070】
過酸化分解によって、ポリプロピレン原料樹脂の分子量分布を調整する場合には、過酸化水素や有機化酸化物などの分解剤を用いて過酸化処理を行う方法を採用することが好ましい。ポリプロピレンのような崩壊型ポリマーに過酸化物を添加すると、ポリマーからの水素引抜き反応が起こり、生じたポリマーラジカルは一部再結合し架橋反応も起こすが、殆どのラジカルは二次分解(β開裂)を起こし、より分子量の小さな二つのポリマーに分かれることが知られている。したがって、高分子量成分からの分解が高い確率で進行し、その結果、低分子量成分が増大することにより、分子量分布の構成を調整することができる。低分子量成分を適度に含有する樹脂を過酸化分解により得る方法としては、例えば、次のような方法が例示できる。すなわち、重合反応により得られたポリプロピレン樹脂の粉末あるいはペレットと、有機過酸化物として、例えば、1,3−ビス−(ターシャリー−ブチルパーオキサイドイソプロピル)−ベンゼンなどを0.001質量%〜0.5質量%程度、目標とする分子量分布を考慮しながら調整添加して、溶融混練器機にて、180℃〜300℃程度の溶融混練する方法が挙げられる。
【0071】
樹脂のブレンドによって低分子量成分の含有量を調整する場合には、異なる分子量の樹脂を、少なくとも2種類以上の樹脂を、ドライあるいは溶融状態で混合することが好ましい。例えば、主成分としての樹脂100質量%に対して、平均分子量がより高い、または、より低い添加樹脂1〜40質量%程度を混合して2種のポリプロピレン樹脂混合系を得る方法は、低分子量成分量の調整が容易であるため、好ましく採用される。
【0072】
樹脂のブレンドによって低分子量成分の含有量を調整する場合、上記平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いてもよい。この場合、主成分としての樹脂と添加樹脂のMFRの差を1〜30g/10分程度とすることが好ましい。
【0073】
本発明におけるポリプロピレン原料樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100質量部)として、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、40ppm以下であることがさらに好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
【0074】
本発明におけるポリプロピレン樹脂に有機系造核剤を添加してポリプロピレン樹脂組成物を得て、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)ポリプロピレン樹脂と有機系造核剤とを混練してポリプロピレン樹脂組成物のペレットを製造し、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを溶融混練し、二軸延伸してフィルムを得る方法。
(2)ポリプロピレン樹脂と有機系造核剤とを予備混練してマスターバッチペレットを製造し、該マスターバッチペレットとポプロピレン樹脂ペレットを溶融混練し、二軸延伸してフィルムを得る方法。
(3)マスターバッチ化せず、ポリプロピレン樹脂を二軸延伸により成形する際に、ポリプロピレン樹脂と有機系造核剤とを溶融混練し、二軸延伸してフィルムを得る方法。
上記(1)もしくは(2)の方法を用いることが、延伸機近傍をクリーンな環境に保つことができるため好ましい。
【0075】
上記(1)〜(3)において、溶融混練を行う前に粉末状あるいはペレット状の樹脂と粉末状の有機系造核剤とをミキサー等によってドライブレンドしてもよいし、溶融混練時にポリプロピレン樹脂に有機系造核剤を添加してもよい。
使用できるミキサーには特に制限が無く、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサーなどを使用することができる。
【0076】
上記(1)および(2)において、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットまたはポリプロピレン樹脂と有機系造核剤とを含有するマスターバッチペレットを製造する際に、ポリプロピレン樹脂と有機系造核剤とを溶融混練する方法としては、例えば粉末状あるいはペレット状の樹脂と有機系造核剤とを混練機内で溶融混練し、溶融混練された樹脂を、既知の造粒機を用いて適当な大きさにペレタイズすることによって、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットまたはポリプロピレン樹脂と有機系造核剤とを含有するマスターバッチペレットを得る方法などが挙げられる。
【0077】
使用できる混練機に特に制限は無く、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、またはそれ以上の多軸スクリュータイプの何れを使用することもできる。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向または異方向回転のいずれの混練タイプも使用できる。
【0078】
溶融混練によりブレンドする場合には、良好な混練さえ得られる限り、混練温度に特に制限はないが、一般的には、200℃から300℃の範囲であり、230℃から270℃が好ましい。あまり高い温度で混練を行うと、樹脂の劣化を招く場合があるため好ましくない。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するために、混練機中へ窒素などの不活性ガスをパージしてもよい。
【0079】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記のようにして調製したポリプロピレン樹脂組成物を、通常の方法に従って二軸延伸することによって得ることができる。
【0080】
本発明では、まず、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための「延伸前のキャスト原反シート」を、公知の方法を使用して成形することが好ましい。
例えば、上記(1)の方法においては、得られたポリプロピレン樹脂組成物のペレットを押出機に供給して、加熱溶融する。上記(2)の方法においては、マスターバッチペレットとポリプロピレン樹脂ペレットを押出機に供給して、加熱溶融する。上記(3)の方法においては、有機系造核剤とドライ混合させたポリプロピレン樹脂ペレットおよび/または粉末を押出機に供給して加熱溶融するか、または、ポリプロピレン樹脂ペレットを押出機に供給して加熱溶融させ、有機系造核剤を添加し、加熱融解物を溶融混練する。
次いで、加熱溶融物をろ過フィルタに通した後、170℃〜320℃、好ましくは、200℃〜300℃に加熱溶融してTダイから溶融押し出し、通常80℃〜140℃、好ましくは90℃〜120℃、より好ましくは90℃〜105℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることによって、未延伸のキャスト原反シートを成形することができる。上記キャスト原反シートの厚さは、0.05mm〜2mmであることが好ましく、0.1mm〜1mmであることがより好ましい。
【0081】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンキャスト原反シートに延伸処理を行って製造することができる。延伸は、縦および横に二軸に配向させる二軸延伸が行われ、延伸方法としては同時または逐次の二軸延伸方法が挙げられるが、逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、例えば、まずキャスト原反シートを100〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3〜7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて160℃以上の温度で幅方向に3〜11倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して、巻き取る。巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁することができる。
【0082】
金属化ポリプロピレンフィルムの作製に用いる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、小型かつ大容量型のコンデンサ素子を得る点で1〜6μmであることが好ましい。厚さが1.5μm以上の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いることが好ましい。また、用いる二軸延伸ポリプロピレンフィルムは極薄化されていることが望ましく、その厚さは5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。フィルムの厚さは、例えば紙厚測定器、マイクロメータ(JIS−B7502)等を用いて、JIS−C2330に準拠して測定することができる。
【0083】
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された延伸フィルムとなる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面には、巻き適性を向上させつつ、コンデンサ特性をも良好とする適度な表面粗さを付与することが好ましい。
【0084】
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性の観点から、広角X線回折法により測定したα晶(040)面反射ピークの半価幅からScherrerの式を用いて算出して16.0nm以下の結晶子サイズを有することが好ましい。
【0085】
本発明において、ポリプロピレンフィルムの「結晶子サイズ」とは、広角X線回折法(XRD法)を用いて測定される、ポリプロピレンフィルムのα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、後述するScherrerの式を用いて算出される結晶子サイズをいう。
【0086】
ポリプロピレンフィルムの結晶子サイズは、より好ましくは15.5nm以下である。結晶子サイズが上記の範囲で小さいポリプロピレンフィルムを使用すると、漏れ電流が小さくなり、ジュール発熱による構造破壊の発生が抑制さるため、耐熱性、耐電圧性および長期間にわたる耐熱性および耐電圧性の観点から好ましい。ポリプロピレンフィルムの結晶子サイズは、ポリプロピレンフィルムの機械的強度および融点を維持する観点から、好ましくは10.0nm以上であり、より好ましくは10.5nm以上である。
【0087】
本発明のポリプロピレンフィルムの「結晶子サイズ」は、具体的には、以下のようにして求めることができる。まず、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたはその金属化フィルムの広角X線回折を行い、得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を求めた。次に、得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、下記(1)式に示すScherrerの式を用いて、結晶子サイズを求める。なお、本発明では、形状因子定数Kは、0.94を用いた。
【数1】
[ここで、Dは、結晶子サイズ(nm)、Kは定数(形状因子)、λは使用X線波長(nm)、βは求めた半価幅、θは回折ブラッグ角である。]
【0088】
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片方の表面において、その表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.01μm以上0.08μm以下であることが好ましく、かつ、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)で0.1μm以上0.8μm以下に微細粗面化されていることが好ましい。RaおよびRzが、上述の好ましい範囲にある場合、表面は、微細に粗化された表面になり得、コンデンサ加工の際には、素子巻き加工において巻きシワが発生し難く、好ましく巻上げることができる。さらに、フィルム同士の間も均一な接触が可能となるため、耐電圧性および長期間に渡る耐電圧性も向上し得る。
【0089】
ここで、「Ra」および「Rz」(旧JIS定義のRmax)とは、例えばJIS−B0601:2001等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式表面粗さ計(例えば、ダイヤモンド針等による触針式表面粗さ計)を用いて測定された値をいう。「Ra」および「Rz」は、より具体的には、例えば、東京精密社製、三次元表面粗さ計サーフコム1400D−3DF−12型を用い、JIS−B0601:2001に定められている方法に準拠して求めることができる。
【0090】
フィルム表面に微細な凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法など、公知の各種粗面化方法を採用することができ、その中でも、不純物の混入などの必要がないβ晶を用いた粗面化法が好ましい。β晶の生成割合は、一般的には、キャスト温度およびキャストスピードを変更することによって制御することができる。また、縦延伸工程のロール温度によってβ晶の融解/転移割合を制御することができ、これらのβ晶生成とその融解/転移の二つのパラメーターについて最適な製造条件を選択することによって微細な粗表面性を得ることができる。
【0091】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、金属蒸着加工工程などの後工程における接着特性を高める目的で、延伸および熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行うことができる。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、およびこれらの混合ガスを用いることが好ましい。
【0092】
金属化ポリプロピレンフィルムを作製する工程では、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの片面に金属蒸着膜を形成する。二軸延伸ポリプロピレンフィルムに金属蒸着膜を設ける方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられ、生産性や経済性などの点からは真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法によって金属蒸着膜を設ける場合には、るつぼ方式、ワイヤー方式など公知の方式から適宜選択して行われる。金属蒸着膜を構成する金属としては、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの単体金属、これらの金属から選択される複数種の金属からなる混合物または合金などを使用することができる。環境面、経済性、およびフィルムコンデンサ性能、とりわけ静電容量や絶縁抵抗の温度特性並びに周波数特性などの点からは、金属蒸着膜を構成する金属として、亜鉛およびアルミニウムから選択される単体金属、金属混合物または合金を採用することが好ましい。
【0093】
金属蒸着膜の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1〜100Ω/□が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は5Ω/□以上であることがより好ましく、10Ω/□以上であることがさらに好ましい。また、コンデンサ素子としての安全性の点から、膜抵抗は50Ω/□以下であることがより好ましく、20Ω/□以下であることがさらに好ましい。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば当業者に既知のニ端子法によって金属蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量をすることによって調節することができる。
【0094】
フィルムの片面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、金属化ポリプロピレンフィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常2〜8Ω/□であり、3〜6Ω/□であることが好ましい。
【0095】
形成する金属蒸着膜のマージンパターンには特に制限はないが、フィルムコンデンサの保安性等の点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとすることが好ましい。特殊マージンを含むパターンで金属蒸着膜を二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に形成すると、得られるフィルムコンデンサの保安性が向上し、フィルムコンデンサの破壊やショートを抑制できるため、好ましい。マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
【0096】
金属蒸着膜を設けた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムの長尺方向に沿って巻き付ける巻き付け加工を経て、金属化ポリプロピレンフィルムコンデンサに加工される。すなわち、本発明の方法は、上記のように作製された金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回した後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製する工程を含む。
【0097】
フィルムコンデンサ素子を作製する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、金属蒸着部とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように、さらには、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の金属化ポリプロピレンフィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の金属化ポリプロピレンフィルムを1〜2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW−N2型等を利用することができる。
【0098】
巻回後、通常、得られた巻回物に対して圧力をかけながら熱処理(以下、「熱プレス」と称することがある)が施される。熱プレスによってフィルムコンデンサ素子の巻締まりや結晶構造の変化が適度に起こると、機械的および熱的な安定が得られる。しかし、熱プレスによって過度な素子の巻締まりや結晶構造の変化が起こると、フィルムが熱負けして収縮し、熱シワや型付などの成形不良といった問題が生じる場合がある。このような点から、与える圧力は、ポリプロピレンフィルムの厚さ等によってその最適値は変わるが、10×10
4〜450×10
4Paが好ましく、より好ましくは30×10
4〜300×10
4Pa、さらに好ましくは40×10
4〜150×10
4Paである。また、熱処理の温度は100〜120℃とすることが好ましい。熱処理を施す時間は、機械的および熱的な安定を得る点で、5時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付などの成形不良を防止する点で、20時間以下とすることが好ましく、15時間以下とすることがより好ましい。
【0099】
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、フィルムコンデンサ素子を作製する。メタリコン電極には、通常、リード線が溶接される。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサ素子をケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。
【0100】
本発明の方法では、上述した方法によって作製された金属化ポリプロピレンフィルムコンデンサ素子に対して、さらに所定の熱処理が施される。すなわち、本発明の方法は、フィルムコンデンサ素子に対し、80〜115℃の温度で1時間以上の熱処理を施す工程(以下、「熱エージング」と称することがある)を含む。
【0101】
フィルムコンデンサ素子に対して熱処理を施す上記工程において、熱処理の温度は、80℃以上であって、90℃以上とすることが好ましく、一方、115℃以下であって、110℃以下とすることが好ましい。上記の温度で熱処理を施すことによって熱エージングの効果が得られるが、具体的には、金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサ素子を構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制され、しかも金属化ポリプロピレンフィルムの内部構造が変化して結晶化が進み、その結果、耐電圧性が向上するものと考えられる。熱処理の温度が所定温度より低い場合には、熱エージングによる上記効果が十分に得られない。一方、熱処理の温度が所定温度より高い場合には、ポリプロピレンフィルムに熱分解や酸化劣化等が生じることがある。
【0102】
フィルムコンデンサ素子に対して熱処理を施す方法としては、例えば、大気雰囲気下、真空雰囲気下、または不活性ガス雰囲気下で、恒温槽を用いる方法や高周波誘導加熱を用いる方法などを含む公知の方法から適宜選択してよいが、恒温槽を用いる方法を採用することが好ましい。
【0103】
本発明の方法によって得られるコンデンサ素子は、金属化ポリプロピレンフィルムに基づく小型かつ大容量型のフィルムコンデンサ素子であって、高温下での高い耐電圧性を有するものである。
【0104】
コンデンサ素子の耐用性を調べる試験方法としては、例えば「ステップアップ試験」、「ライフ(寿命)試験」などが挙げられ、これらはいずれも100℃以上の高温下における耐用性を評価する試験方法である。「ステップアップ試験」は、コンデンサ素子への一定時間(短時間)、一定電圧の電圧印加を、電圧値を少しずつ上げながら繰り返し行う試験方法であって、コンデンサ素子の耐用性を電圧限界(高電圧)の観点から評価する方法である。一方、「ライフ試験」は、コンデンサ素子への一定電圧の電圧印加を長時間に亘って行う試験方法であって、長期間の耐電圧性、すなわちコンデンサ素子の耐用性を静電容量の減少がなく暴走なども起こさない時間の観点から評価する方法である。
【0105】
本発明の方法によって得られるコンデンサ素子は、フィルム厚みにもよるが、例えば2.5μm厚の場合に、「ステップアップ試験」に従って評価される容量変化率ΔC=−5%時の電圧が1100Vを超えることが好ましく、1120V以上であることがより好ましく、1150V以上であることがさらに好ましく、1180V以上であることが特に好ましい。また、「ステップアップ試験」に従って評価される容量変化率ΔC=−95%時の電圧が1450Vを超えることが好ましく、1460V以上であることがより好ましく、1470V以上であることがさらに好ましく、1480V以上であることが特に好ましい。
【0106】
また、本発明の方法によって得られるコンデンサ素子は、「ライフ試験」に従って評価される電圧印加後の容量変化率ΔC(200時間後)が−10%以上であることが好ましく、−8%以上であることがより好ましく、−6%以上であることがさらに好ましく、−5%以上であることが特に好ましい。ハイブリッド自動車用高電圧タイプのコンデンサの定格電圧は400〜800V
DCが一般的であることから、例えば「ライフ試験」における印加電圧を600V
DCとして評価してよい。
具体的には、コンデンサ素子に対するライフ試験を以下の手順で行ってよい。
予めコンデンサ素子を、試験環境温度(例えば105℃)で予熱した後、試験前の初期の静電容量を日置電機株式会社製のLCRハイテスター3522−50にて測定する。次に、高圧電源を用いて、105℃の恒温槽中にて、コンデンサ素子に直流600Vの電圧を200時間印加し続ける。200時間経過後のコンデンサ素子の静電容量を上記テスターで測定し、電圧印加前後の容量変化率(ΔC)を算出する。200時間経過後のコンデンサ素子の容量変化率を、コンデンサ素子3個の平均値により評価する。
【実施例】
【0107】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、特に断らない限り、「部」および「%」という記載は、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0108】
[各特性値の評価方法]
実施例における各特性値の評価方法は以下の通りである。
【0109】
(1)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で測定を行った。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC HLC−8121GPC−HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結
カラム温度:140℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
なお、検量線の作製には東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、ポリスチレン換算により測定結果を得た。ただし、分子量はQ−ファクターを用いてポリプロピレンの分子量へ換算した。
【0110】
微分分布値は、次のような方法で得た。まず、RI検出計において検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、検量線を用いて重量平均分子量(Log(M))に対する分布曲線とした。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、通常、GPC測定装置に内蔵の解析ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0111】
(2)フィルムの厚み
フィルムの厚みは、シチズンセイミツ株式会社製の紙厚測定器MEI−11を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
【0112】
(3)結晶子サイズ
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶子サイズを、XRD(広角X線回折)装置を用いて、以下に従い測定した。
測定機:リガク社製のディストップX線回折装置「MiniFlex300」
X線発生出力:30KV、10mA
照射X線:モノクローメーター単色化CuKα線(波長0.15418nm)
検出器:シンチュレーションカウンター
ゴニオメーター走査:2θ/θ連動走査
得られたデータから、解析コンピューターを用い、装置標準付属の統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用い、α晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を算出した。
得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、下記(1)式のScherrerの式を用いて、結晶子サイズを求めた。なお、本発明では、形状因子定数Kは、0.94を用いた。
【数2】
[ここで、Dは、結晶子サイズ(nm)、Kは定数(形状因子)、λは使用X線波長(nm)、βは求めた半価幅、θは回折ブラッグ角である。]
【0113】
(4)絶縁破壊電圧
JIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて、交流電源を使用し、100℃で、絶縁破壊電圧値を12回測定した。絶縁破壊電圧値(V
AC)を、フィルムの厚み(μm)で割り、12回の測定結果中の上位2回および下位2回を除いた8回の平均値を、絶縁破壊電圧(V
AC/μm)とした。
【0114】
〔ポリプロピレン樹脂〕
実施例および比較例のポリプロピレンフィルムの製造に、下記の表1に示す重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)および分子量分布(Mz/Mn)を有するポリプロピレン樹脂を使用した。なお、これらの値は、原料樹脂ペレットの形態で、上記の測定方法に従い測定した値である。
ポリプロピレン樹脂PP−1:アイソタクチックポリプロピレン(プライムポリマー株式会社製)
ポリプロピレン樹脂PP−2:アイソタクチックポリプロピレン(大韓油化社製)
【表1】
【0115】
上記ポリプロピレン樹脂は、いずれも、酸化防止剤(1次剤)として、2、6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(一般名称:BHT)を2000ppm、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)として、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)を3000〜6500ppm含有する。
【0116】
〔有機系造核剤〕
実施例のポリプロピレンフィルムを製造するために使用した有機系造核剤を、次の表2に示す。
【表2】
【0117】
上記のポリプロピレン樹脂および有機系造核剤を用いて、表3に示す組成を有するポリプロピレン樹脂組成物を製造した。得られたポリプロピレン樹脂組成物を二軸延伸し、
実施例2、3および9、実施例(参考例)1、4〜8および10、ならびに比較例1〜2のポリプロピレンフィルムを製造した。製造の詳細を以下に示す。また、得られたポリプロピレンフィルムについて、結晶子サイズおよび絶縁破壊電圧を上記方法に従い評価した。得られた評価結果を表3に示す。
【表3】
【0118】
実施例1
(参考例)
有機系造核剤NA−S1とポリプロピレン樹脂PP−1(酸化防止剤としてイルガノックス1010を5000ppm添加)を予備混錬によってマスターバッチ化した。その後、造核剤の濃度が2500ppmとなるような比率にて、マスターバッチとポリプロピレン樹脂PP−1とを計量混合して押出機に供給し、樹脂温度が230℃となるように加熱溶融した後、Tダイから押し出し、表面温度を45℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させて、厚さ約1mmのキャスト原反シートを製造した。このキャスト原反シートを165℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、横方向に10倍に延伸して、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。なお、本実施例および以下の実施例および比較例においては、絶縁破壊電圧測定の精度を高める観点から、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用して評価を行った。なお、本実施例および以下の実施例に示すポリプロピレン樹脂組成物から、10μm以下の厚さを有する極薄のポリプロピレンフィルムを得ることも可能である。
【0119】
実施例2
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−D1を用い、造核剤の濃度が500ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0120】
実施例3
有機系造核剤として、NA−D1に代えてNA−D2を用い、造核剤の濃度が500ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0121】
実施例4
(参考例)
有機系造核剤NA−S1とポリプロピレン樹脂PP−1(酸化防止剤としてイルガノックス1010を5000ppm添加)を予備混錬によってマスターバッチ化した。その後、ポリプロピレン樹脂PP−1(酸化防止剤としてイルガノックス1010を5000ppm添加)とポリプロピレン樹脂PP−2(酸化防止剤としてイルガノックス1010を5000ppm添加)との比率がPP−1/PP−2=50/50(質量比)となり、造核剤の濃度が2500ppmとなるような比率にて、マスターバッチとポリプロピレン樹脂PP−1およびPP−2とを計量混合して押出機に供給し、樹脂温度が230℃となるように加熱溶融した後、Tダイから押し出し、表面温度を45℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させて、厚さ約1mmのキャスト原反シートを製造した。このキャスト原反シートを165℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、横方向に10倍に延伸して、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0122】
実施例5
(参考例)
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−S2を用い、造核剤の濃度が1000ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例4と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0123】
実施例6
(参考例)
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−S3を用い、造核剤の濃度が1000ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例4と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0124】
実施例7
(参考例)
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−S4を用い、造核剤の濃度が200ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0125】
実施例8
(参考例)
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−S5を用い、造核剤の濃度が200ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0126】
実施例9
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−D3を用い、造核剤の濃度が500ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0127】
実施例10
(参考例)
有機系造核剤として、NA−S1に代えてNA−D4を用い、造核剤の濃度が500ppmとなるような比率にて計量混合を行った以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0128】
比較例1
有機系造核剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0129】
比較例2
有機系造核剤を添加しなかった以外は実施例4と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0130】
表3に示されるように、
実施例2、3および9の本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、比較例1および2と比較して、高い絶縁破壊電圧を有しており、より優れた絶縁破壊特性を有することがわかる。優れた絶縁破壊特性を有する
実施例2、3および9の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして極めて好適である。