特許第6484964号(P6484964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6484964-多面体壁を有する金属缶 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6484964
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】多面体壁を有する金属缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/22 20060101AFI20190311BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   B65D8/22 B
   B65D8/04 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-176574(P2014-176574)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50018(P2016-50018A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【弁理士】
【氏名又は名称】森廣 亮太
(72)【発明者】
【氏名】眞仁田 清澄
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第3872994(US,A)
【文献】 米国特許第02139143(US,A)
【文献】 特開平03−180228(JP,A)
【文献】 特開2002−200900(JP,A)
【文献】 特開2014−111463(JP,A)
【文献】 特開2011−131916(JP,A)
【文献】 特開平4−87939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 8/04
B65D 8/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部の少なくとも缶軸方向の一部に周状の多面体壁を有し、
前記多面体壁は凸状の境界稜線で区分された多数の単位パネルを有すると共に、前記多数の単位パネルは、缶軸方向に並んだ所定数の前記単位パネルのパネル列が全周的に密に配列された構成で、隣り合うパネル列の各単位パネルの缶軸方向の位相が単位パネルの缶軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合うパネル列の一方のパネル列を構成する各単位パネルの間に他方のパネル列の各単位パネルが密に入り込んだ構成で、
前記単位パネルは菱形状で、水平方向の対角線に沿って設けられた凹状の谷線と、前記谷線を境界として上下に設けられた上方三角形部分及び下方三角形部分とを有し、前記谷線を境界として前記上方三角形部分と前記下方三角形部分が折れ曲がるように、缶軸方向の対角線に対して凹状に窪んでいる金属缶において、
前記胴部が胴部ブランクを接合する缶軸方向に延びる接合部を有する構成で、前記接合部の位置を単位パネルを構成する前記境界稜線及び前記谷線が交差する頂部の位置に対し周方向にずらしたことを特徴とする多面体壁を有する金属缶。
【請求項2】
前記接合部は溶接部である請求項1に記載の多面体壁を有する金属缶。
【請求項3】
前記接合部は、前記境界稜線の中点上に位置にすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多面体壁を有する金属缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部に強度の高い多面体壁を有する金属缶に関し、特に、溶接缶のように胴部に接合部があっても、接合部に損傷を与えにくい多面体壁を有する金属缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の金属缶としては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。
すなわち、胴部に凸状の境界稜線で区分された多数の単位パネルで構成される周状の多面体壁が設けられている。この多面体壁は、缶軸方向に並んだ所定数の単位 パネルのパ
ネル列が全周的に密に配列された構成で、隣り合うパネル列の各単位パネルの缶軸方向の位相が単位パネルの軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合うパネル列の一方のパネル列を構成する各単位パネルの間に他方のパネル列の各単位パネルが密に入り込んだ構成となっている。
このように胴部を多面体壁とすることにより強度増大を図り、強度を損なうことなく薄肉軽量化を図っていた。
一方、このような多数の単位パネルで構成される立体的な形状パターンには装飾的効果があり、特に、多数の単位パネルが光を反射してきらきらと輝き独特の美観を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−26286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、胴部に形成される多面体壁は、単位パネルを窪ませ、境界稜線を外側に折り曲げた構成で、軸方向に凹凸を有しており、胴部に接合部が無い2ピース缶には適しているが、3ピース缶に適用すると、接合部が屈曲するために、接合部に不良が生じ、漏れが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、3ピース缶のように胴部に接合部があっても、多面体壁加工時に、接合部に損傷を与えにくい構造の多面体壁を有する金属缶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
胴部の少なくとも缶軸方向の一部に周状の多面体壁を有し、多面体壁は凸状の境界稜線で区分された多数の単位パネルを有すると共に、多数の単位パネルは、缶軸方向に並んだ所定数の単位パネルのパネル列が全周的に密に配列された構成で、隣り合うパネル列の各単位パネルの缶軸方向の位相が単位パネルの缶軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合
うパネル列の一方のパネル列を構成する各単位パネルの間に他方のパネル列の各単位パネルが密に入り込んだ構成で、
単位パネルは菱形状で、水平方向の対角線に沿って設けられた凹状の谷線と、谷線を境界として上下に設けられた上方三角形部分及び下方三角形部分とを有し、谷線を境界として上方三角形部分と下方三角形部分が折れ曲がるように、缶軸方向の対角線に対して凹状に窪んでいる金属缶において、
胴部が胴部ブランクを接合する缶軸方向に延びる接合部を有する構成で、接合部の位置を単位パネルを構成する境界稜線及び谷線が交差する頂部の位置に対し周方向にずらしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は次のように構成することができる。
1) 接合部を溶接部とする。
2) 多面体壁は、缶軸方向に並んだ所定数の単位パネルのパネル列が全周的に密に配列された構成で、隣り合うパネル列の各単位パネルの缶軸方向の位相が単位パネルの軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合うパネル列の一方のパネル列を構成する各単位パネル
の間に他方のパネル列の各単位パネルが密に入り込んだ構成で、接合部は、隣り合うパネル列の頂部と頂部の間に配置する。
3) 接合部は、境界稜線の中点上に位置にさせる。
【0008】
また、請求項に記載した発明ではないが、上記目的を達成するための別の解決手段として、
胴部の少なくとも缶軸方向の一部に周状の多面体壁を有し、該多面体壁は凸状の境界稜線で区分された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有する金属缶において、
前記胴部が胴部ブランクを接合する缶軸方向に延びる接合部を有する構成で、
前記接合部の位置に、缶軸方向に単位パネルのパネル列を設けない未加工領域を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
接合部の位置を凹凸や屈曲の大きい頂部から外したので、接合部に不良が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る金属缶を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
図2】(a)は実施の形態1において、多面体壁を加工する加工機を示す概略斜視図、(b)は胴部ブランクを示す図、(c)は加工状態の部分拡大断面図である。
図3】実施の形態2に係る金属缶を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は未加工部頂部位置における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0012】
(実施の形態1)
以下に、実施の形態1について説明する。
図1に示すように、金属缶1は、3ピース缶で、筒形状の胴部2と、胴部2の上下開口部に巻締固定される缶蓋3、3とから構成され、胴部2の少なくとも一部に周状の多面体壁4が設けられている。金属缶1は内容物を充填密封する前に下開口部に缶蓋3が予め巻締固定され、充填密封後に上開口部に缶蓋3が巻締固定される。
この多面体壁4は、凸状の境界稜線51で区分された多数の単位パネル5で構成されるもので、より詳細には、缶軸方向(高さ方向)に並んだ所定数の単位パネル5のパネル列50が全周的に密に配列された構成となっている。
単位パネル5は菱形形状で、隣り合うパネル列50の各単位パネル5の缶軸方向の位相が単位パネル5の軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合うパネル列50の一方のパネル列50を構成する各単位パネル5の間に他方のパネル列50の各単位パネル5が密に入り込んだ構成となっている。
単位パネル5は水平の対角線に沿って谷線52が設けられ、谷線52を境界として上方三角形部分53と下方三角形部分54が折れ曲がるように、缶軸方向の対角線方向に凹状に窪んでいる。
【0013】
胴部2は、缶軸方向に延びる接合部7を有する構成で、接合部7の位置が、単位パネル
5を構成する境界稜線51が交差する頂部55の位置に対し、周方向にずらした構成となっている。
この実施の形態では、接合部7は溶接部であるが、溶接に限定されず、半田等の接着剤
を用いて接合する構成となっていてもよい。
接合部7は、隣り合うパネル列50の頂部55と頂部55の間に配置される。特に、境界稜線51の中点上に位置する。
【0014】
ここで、多面体壁4の加工方法の一例について図2を用いて説明する。
図2(a)は、多面体壁4を加工する加工機20を示す概略斜視図で、内型11についても説明するために胴部ブランク10の一部を部分断面にして図示してある。
多面体壁4の加工は、内型11と外型12とを有する加工機20によって行われ、缶蓋3を取り付ける前の状態の円筒状の胴部ブランク10に対して施される。
図2(c)に示すように、胴部ブランク10の内周面が内型11に接触し、胴部ブランク10外周面が外型12に接触するように、胴部ブランク10が内型11と外型12の間に挟まれた状態で、加工機20にセットされる。
そして、内型11と外型12が胴部ブランク10を挟んだ状態で回転することにより、胴部ブランク10が周方向に回転され、内型11と外型12とにより型押しが行われることで、胴部ブランク10の周面に単位パネル5が形成され、多面体壁4が加工される。
【0015】
加工機20においては、内型11に、単位パネル5を構成する境界稜線51を形成するための突起11aが設けられ、外型12に、単位パネル5を構成する谷線52を形成するための突起12aが設けられている。また、内型11には、外型12の突起12aに対向する窪み11bが設けられており、外型12には、内型11の突起11aに対向する窪み12bが設けられている。
缶軸方向に沿った縦断面を取ると、図2(c)に示すように、この境界稜線51が交差する頂部55を通る縦断面形状の凹凸差が最も大きく、この位置に接合部7を配置すると、過大な応力が加わり、接合部7に微細な剥離等が生じ、漏れが発生するおそれがある。
【0016】
本発明では、この最も凹凸差の激しい頂部55を避けることにより、加工時に接合部7に加わる応力を低減して信頼性向上を図ったものである。
特に図示していないが、胴部ブランク10をセットする際に、内型11と外型12の各突起11a、12aと胴部ブランク10の接合部7の位置が一致しないよう、公知の位置合わせ方法で適宜位置決めがなされる。
【0017】
参考例
次に、図3を参照して、参考例について説明する。
この参考例では、接合部7の位置に、パネル列50を設けない未加工領域8を設けたものである。
以下の説明では、実施の形態1と異なる部分について説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
未加工領域8は、図3(a)に示すように、少なくとも単位パネル50に窪みを付けない部分であり、この参考例では、接合部7に沿って配置される単位パネルについて窪みを付けない未加工領域8としたもので、未加工領域8が連続的に形成されている。
図3(a)のように金属缶1に未加工領域8を一列設け、両隣のパネル列50の境界稜線51により頂部55’を有する場合は、頂部55’に角丸めや面取りなどの角隅処理を施し、未加工領域8と凹凸がより少なくなるよう、図3(b)のように内型突起11aに角隅処理を施すと好ましい。
【0018】
図3(b)に示すように、未加工領域8においては、凹凸はほとんどなくなるので、接合部7の不良をより一層低減できる。
なお、この接合部7の位置も、境界稜線51の中点に配置してもよい。
さらに、接合部7を、複数列設けた未加工領域8の列上に配置してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 金属缶
2 胴部
3 缶蓋
4 多面体壁
5 単位パネル
50 パネル列
51 境界稜線、52 谷線
53 上方三角形部分、54 下方三角形部分
55、55’ 頂部
7 接合部
8 未加工領域
10 胴部ブランク
20 加工機
11 内型、11a 突起、11b 窪み
12 外型、12a 突起、12b 窪み
図1
図2
図3