【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
まず、各例における評価法を示す。
1.グリセロリン脂質含有粉末の評価法
1−1.平均粒子径の測定法
レーザー回折式粒度分布測定器(SALD−2100:(株)島津製作所製)を用いて乾式法により体積基準平均粒子径を測定した。
1−2.流動性の測定法
粉末の流動性を評価する方法として、粉末の安息角を測定した。安息角が小さいほど流動性は良好である。安息角の測定方法は、「第十五改正、日本薬局方解説書」で規定される方法に従った。
1−3.べたつき性の評価法
グリセロリン脂質含有粉末10gを乳鉢に量り取り、乳棒を10回転させすり潰した。その粉末をモニター10名に手で触ってもらい、以下の基準でべたつき性の強さを評価した。
○:べたつきを感じない。
△:ややべたつきを感じる。
×:べたべたしている。
1−4.固結性の評価法
吸湿後の固結した粉末の割合を固結性とし、次に測定方法を記載する。グリセロリン脂質含有粉末10gをシャーレに量り取り、湿度75%、40℃の恒温恒湿槽に1時間開放系で吸湿させた。吸湿させた粉末の質量を測定した後、粉末を20メッシュの篩を用いて100回振動させて、固結し篩上に残った部分の質量を測定した。下記に固結性(%)の計算式を記載した。固結していなければ、容易に篩を通過するため、固結性(%)は低くなる。
「固結性(%)=篩上のグリセロリン脂質含有粉末質量(g)/篩前のグリセロリン脂質粉末質量(g)×100」
1−5.グリセロリン脂質含量の測定法
グリセロリン脂質含有粉末のグリセロリン脂質含量は、高速液体クロマトグラフィーで測定した。高速液体クロマトグラフィー条件は以下に記載する。
機種;高速液体クロマトグラフィー((株)日立製作所 モデルD7000)
カラム;シリカゲルカラム(直経4.6mm×長さ250mm)
移動相;アセトニトリル:メタノール:リン酸=775:35:9(容量比)の混合溶媒
検出;紫外線波長202nm
【0025】
2.錠剤の評価法
グリセロリン脂質含有粉末を、打錠障害を起こさない限界まで配合した時のグリセロリン脂質含量と錠剤の外観を評価した。錠剤は、回転式ロータリー打錠機((株)エステックの「PICCOLA」)を使用して、8.0mm、R6.0の臼・杵で、質量270mg、打錠圧5〜8kNで打錠した。
2−1.グリセロリン脂質含量の測定法
錠剤を粉砕し、得られた粉末について上記1−5に記載の測定法で、グリセロリン脂質含量を測定した。
2−2.外観
錠剤の外観について、下記基準で評価した。
○:斑模様が認められない。
△:一部に斑模様が認められる。
×:全体的に斑模様が認められる。
【0026】
本発明の実施例および比較例で用いた3種のグリセロリン脂質の詳細は次の通りである。
・ウルトラレックP …エー・ディー・エム・ジャパン(株)製の市販品「ウルトラレックP」(商品名)
・酵素転移PS792 …特開昭63−36792号公報に記載の方法を用いて、PCのホスファチジル基転移反応を行い得られた、PS含量60%のグリセロリン脂質
・PS70PN …ビーエイチエヌ(株)(販社)の市販品「LIPAMINE−PS70PN」(商品名)
表1に、各々のグリセロリン脂質の成分含量を示す。
また、その他の材料の詳細は次の通りである。
・セルロース …不溶性食物繊維、旭化成ケミカルズ(株)製「セオラスST−100」(商品名)
・還元イソマルツロース …糖質、三井製糖(株)製「粉末パラチニットPNP」(商品名)
・微粒二酸化ケイ素 …固結防止剤、富士シリシア(株)製「サイロページ#720」(商品名)
【0027】
【表1】
【0028】
(粉末の製造)
実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−5においては、次の方法にて粉末の製造を行った。所定量のグリセロリン脂質に不溶性食物繊維、糖質および水を添加して混合した後、連続真空乾燥法にて乾燥した。得られた乾燥物を、パワーミル((株)ダルトン製:型式P−55)を用いて粉砕し、グリセロリン脂質含有粉末を得た。また、固結防止剤は、粉砕により得られたグリセロリン脂質含有粉末に添加して混合した。
表2および表3に、各実施例および比較例における配合成分の種類と量とともに、得られたグリセロリン脂質含有粉末の平均粒子径、流動性、べたつき性、固結性およびグリセロリン脂質含量の評価結果を示す。
なお、各実施例、比較例について、得られたグリセロリン脂質含有粉末にP1〜P6、Q1〜Q5の名称を付した。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
(錠剤の調整)
実施例2−1〜2−6および比較例2−1〜2−5においては、実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−5で製造したグリセロリン脂質含有粉末P1〜P6、Q1〜Q5を用いて、次の方法にて、錠剤の製造を行った。所定量のグリセロリン脂質含有粉末と、賦形剤、滑沢剤を混合した後、回転式ロータリー打錠機((株)エステック製「PICCOLA」)を用いて打錠した。打錠条件は8.0mm、R6.0の臼・杵で、質量270mg/粒、タレット回転数15rpm、打錠圧5〜8kNで行った。
表4および表5に、各実施例および比較例における配合成分の種類と量とともに、錠剤中のグリセロリン脂質含量および錠剤の外観についての評価結果を示す。表4および表5中では、用いたグリセロリン脂質含有粉末の種類は、表2および表3に記載した名称を用いて示した。なお、その他の材料の詳細は次の通りである。
・マルトデキストリン …賦形剤、松谷化学(株)製「パインデックス#2」(商品名)
・ステアリン酸カルシウム …滑沢剤、太平化学産業(株)製「ステアリン酸カルシウム(植物性)」(商品名)
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
表2および表3のグリセロリン脂質含有粉末の評価結果について、実施例1−1〜1−6においては、べたつきが抑制されており、安息角が35〜40°と小さく流動性の良好なグリセロリン脂質含有粉末が得られた。また、実施例1−1〜1−4において、固結性は21〜29%、さらに微粒二酸化ケイ素を添加した実施例1−5〜1−6は5%以下であり、固結性の改善ができていることが明らかである。
これに対し、比較例1−1〜1−5においては、本発明に用いる不溶性食物繊維(B1)もしくは糖質(B2)を含有していないため、べたつきを改善できず、安息角も50°以上であり、実用に叶うグリセロリン脂質含有粉末が得られないことが明らかになった。さらに、比較例1−1〜1−2の固結性は63〜68%、微粒二酸化ケイ素を添加した比較例1−3〜1−5でも49〜53%であり、かなり固結していた。
【0035】
表4及び表5の錠剤の評価結果について、本発明のグリセロリン脂質含有粉末を用いて打錠した実施例2−1〜2−6においては、錠剤中にグリセロリン脂質として最大21.0〜22.5質量%を配合することができた。また、実施例の錠剤表面は、グリセロリン脂質が均一に分散し綺麗な状態であった。良好な外観を有する錠剤の一例として、実施例2−3の錠剤を
図1に示す。
これに対し、不溶性食物繊維または糖質を含まないグリセロリン脂質含有粉末を用いた比較例2−1〜2−5においては、べたつき、流動性が悪いためにグリセロリン脂質を高濃度で配合すると打錠障害が生じた。そのため、錠剤中へグリセロリン脂質を最大10.5%までしか配合することができなかった。また、比較例1−1〜1−5の粉末は粉体分散性が悪いため、錠剤表面にグリセロリン脂質が偏在し、外観が著しく損なわれている。グリセロリン脂質が偏在した錠剤の一例として、比較例2−2の錠剤を
図1に示す。