特許第6485142号(P6485142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タダノの特許一覧

<>
  • 特許6485142-作業車の自動水平支持装置 図000002
  • 特許6485142-作業車の自動水平支持装置 図000003
  • 特許6485142-作業車の自動水平支持装置 図000004
  • 特許6485142-作業車の自動水平支持装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485142
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】作業車の自動水平支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/12 20060101AFI20190311BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20190311BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   B60S9/12
   B66F9/24 F
   B66F9/075 L
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-54120(P2015-54120)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-172520(P2016-172520A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】西野 康彦
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−151491(JP,A)
【文献】 特開2000−026099(JP,A)
【文献】 特開2008−247281(JP,A)
【文献】 特開2006−096441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 9/12
B66F 9/075
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、左右一対の前輪と、左右一対の後輪と、左右一対の前ジャッキと、左右一対の後ジャッキと、上記前輪が地面から浮上したことを検出する前輪浮上検出器と、上記後輪が地面から浮上したことを検出する後輪浮上検出器と、前後水平方向に対する上記車体の傾斜角を検出する車体傾斜角検出器と、上記前ジャッキ及び上記後ジャッキの各伸長操作を制御して上記車体を自動で水平に浮上支持する制御を行うジャッキ制御装置とをそれぞれ備えた作業車の自動水平支持装置であって、
上記ジャッキ制御装置は、上記車体を略水平姿勢あるいは前下がり姿勢で停車させた状態から、上記前ジャッキを伸長させ、上記前輪浮上検出器が前輪の浮上状態を検出し且つ上記車体傾斜角検出器が上記後ジャッキのジャッキアップで左右の後輪が車体支持状態から浮上状態に移行する際に上記車体が傾動する車体傾斜角相当角だけ水平姿勢から前上がり傾斜姿勢になったことを検出したときに上記前ジャッキの伸長を停止させる制御を行う前ジャッキ制御手段と、上記後ジャッキを伸長させ、上記後輪浮上検出器が後輪の浮上状態を検出したときに上記後ジャッキの伸長を停止させる制御を行う後ジャッキ制御手段とを備えている、
ことを特徴とする作業車の自動水平支持装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記ジャッキ制御装置は、上記前ジャッキ制御手段と上記後ジャッキ制御手段に加えて、上記後ジャッキ制御手段の制御が完了した後、上記車体傾斜角検出器が上記車体の前後傾斜状態を検出しているときに該車体が下降傾斜している側のジャッキを伸長させ、上記車体傾斜角検出器が車体の水平姿勢を検出したときに当該ジャッキの伸長を停止させる制御を行う車体水平設置制御手段を備えている、
ことを特徴とする作業車の自動水平支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ジャッキを備えた作業車を自動で水平浮上状態に支持するための作業車の自動水平支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高所作業車やクレーン作業車等のジャッキを備えた作業車は、作業時の安定性能を高めるために前後・左右の4つのジャッキで車体を浮上支持した状態で作業を行うが、そのとき車体を水平に浮上支持することが安定性確保のために望まれている。
【0003】
そして、一般的には、車体を水平に浮上支持するのに、車体の浮上姿勢を目視しながら
各ジャッキを適度に伸長させて水平出しを行っているが、このように目視による水平出しでは、車体の水平精度が不正確になる。
【0004】
ところで、車体の水平浮上支持を自動で行う公知例として、実公昭62−999号公報(特許文献1)に開示されるものがある(考案の名称は、車体の自動水平設置装置)。この特許文献1の自動水平設置装置は、停車状態での車体の傾きを傾斜感知器で検出し、車体が傾斜していると、まず低い側のジャッキを高い側のジャッキより高速高圧で伸長させて車体を水平姿勢となし、その車体水平姿勢状態で、4つのジャッキを同時に等速等圧で伸長させることで、車体を水平姿勢に維持しながら全車輪が地面から浮上するまで車体を持ち上げるように作動するものである。尚、特許文献1の自動水平設置装置では、車体を水平姿勢に持ち上げる際に、前輪は先に浮上させているので後輪が地面から浮上したことを検出して、その後輪浮上検出信号により後ジャッキの伸長を停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭62−999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の自動水平設置装置では、車体を水平姿勢に維持した状態で該車体を4つのジャッキで同時に持ち上げるように作動するが、その車体持ち上げ中に各種要因(例えば各ジャッキに受ける荷重のバラツキ等)により各ジャッキの伸長速度に差が生じることがある。そして、このように、各ジャッキの伸長速度に差が生じると、車体におけるジャッキ伸長速度の遅い側(伸長量の短い側)が低くなるので、最終的に全ジャッキが伸長停止した時点では、該車体が傾斜姿勢のままで支持されることになる。従って、この場合は、車体の水平支持精度が悪くなるという問題があった。尚、このように、車体を水平支持精度が悪い状態で支持していると、作業時の安定性が悪くなる。
【0007】
そこで、本願発明は、4つのジャッキで車体を水平に浮上支持する際に、該車体を自動で高精度に水平支持させ得るようにした作業車の自動水平支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、ジャッキを備えた作業車を自動で水平浮上状態に支持するための作業車の自動水平支持装置を対象にしているが、以下の説明では、本願発明の「作業車の自動水平支持装置」を単に「自動水平支持装置」と表現することがある。
【0009】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の自動水平支持装置は、車体と、左右一対の前輪と、左右一対の後輪と、左右一対の前ジャッキと、左右一対の後ジャッキと、前輪が地面から浮上したことを検出する前輪浮上検出器と、後輪が地面から浮上したことを検出する後輪浮上検出器と、前後水平方向に対する車体の傾斜角を検出する車体傾斜角検出器と、前ジャッキ及び後ジャッキの各伸長操作を制御して車体を自動で水平に浮上支持する制御を行うジャッキ制御装置とをそれぞれ備えた作業車に適用されている。尚、以下の説明において、「前輪」、「後輪」、「前ジャッキ」、「後ジャッキ」の各表現は、いずれもそれぞれ左右一対を意味するものである。
【0010】
そして、本願請求項1の発明の自動水平支持装置における上記ジャッキ制御装置は、車体を略水平姿勢あるいは前下がり姿勢で停車させた状態から、前ジャッキを伸長させ、前輪浮上検出器が前輪の浮上状態を検出し且つ車体傾斜角検出器が後ジャッキのジャッキアップで後輪が車体支持状態から浮上状態に移行する際に車体が傾動する車体傾斜角相当角だけ水平姿勢から前上がり傾斜姿勢になったことを検出したときに前ジャッキの伸長を停止させる制御を行う前ジャッキ制御手段と、後ジャッキを伸長させ、後輪浮上検出器が後輪の浮上状態を検出したときに後ジャッキの伸長を停止させる制御を行う後ジャッキ制御手段とを備えたものである。
【0011】
尚、上記前ジャッキ制御手段の制御で、上記のように「車体傾斜角検出器が後ジャッキのジャッキアップで左右の後輪が車体支持状態から浮上状態に移行する際に車体が傾動する車体傾斜角相当角だけ水平姿勢から前上がり傾斜姿勢になったことを検出したとき」の車体の傾斜角度は、図1に示すように後輪が車体支持状態(実線図示状態)から浮上状態(鎖線図示状態)に移行したときに車体が傾動する傾動角θであって、該傾動角θは後の制御で後ジャッキをジャッキアップして後輪を浮上状態に設置する際に車体が傾動する傾動角(例えば3°〜4°)だけ前ジャッキのジャッキアップ時に前もって傾動させておく角度である。そして、この傾動角θは、車種によって予め特定されるものであって、この傾動角θを制御データの1つとして前ジャッキ制御手段に予め設定しておく。尚、以下の説明では、このように前ジャッキ制御手段に設定した上記傾動角θを「設定角度」と表現することがある。
【0012】
本願請求項1の発明の自動水平支持装置は、次のように機能する。即ち、車体を略水平姿勢か前下がり姿勢で停車させた状態から、ジャッキ制御装置を作動させると、まず前ジャッキ制御手段により、前ジャッキを伸長させて、前輪を地面から浮上させるとともに車体を上記設定角度だけ前上がり傾斜状態になるまで伸長させ、車体傾斜角検出器から設定角度だけ傾動した検出信号が出力されたときに前ジャッキの伸長を停止させる。続いて、後ジャッキ制御手段により、後ジャッキを伸長させて、後輪が地面から浮上するまで伸長させ、後輪浮上検出器から後輪が浮上した信号が出力されたときに後ジャッキの伸長を停止させる。ところで、後ジャッキをジャッキアップさせて後輪が車体支持状態から浮上状態に移行すると、後ジャッキ制御手段の制御前に車体が水平姿勢から上記設定角度(図1の傾動角θ)だけ前上がり傾斜させていたものが、該設定角度(図1の傾動角θ)だけ車体の後側が上動することにより、該車体を正確に水平浮上状態で支持することができる。
【0013】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、請求項1の自動水平支持装置において、上記ジャッキ制御装置は、上記前ジャッキ制御手段と上記後ジャッキ制御手段に加えて、次の車体水平設置制御手段を備えたものである。
【0014】
そして、このジャッキ制御装置の車体水平設置制御手段は、後ジャッキ制御手段の制御が完了した後、車体傾斜角検出器が車体の前後傾斜状態を検出しているときに車体が下降傾斜している側のジャッキを伸長させて車体傾斜角検出器が車体の水平姿勢を検出したときに当該ジャッキの伸長を停止させる制御を行うものである。
【0015】
ところで、例えば後輪接地場所に凹凸があったり又は車体荷重の増減で車軸懸架スプリングの撓み量が通常より変化した場合には、後輪が車体支持状態から浮上状態に移行したときの車体の傾動角(図1のθ)が当初の設定角度から変化するが、そのときには上記請求項1の制御完了時(後ジャッキ制御手段の制御完了時)において、車体が正確に水平姿勢で支持されているとは限らない。
【0016】
そこで、この請求項2の自動水平支持装置では、上記後ジャッキ制御手段の制御が完了後、車体傾斜角検出器が車体の前後傾斜状態を検出しているときには、上記車体水平設置制御手段による上記制御が実行されることで、車体を自動で正確な水平姿勢に補正支持できる。
【0017】
尚、後ジャッキ制御手段による制御の完了時に、車体傾斜角検出器が車体水平状態を検出しているときには、上記車体水平設置制御手段による制御は実行されない。
【発明の効果】
【0018】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の自動水平支持装置は、ジャッキ制御装置による自動水平支持制御時の最終段階において、後ジャッキ制御手段により後ジャッキを伸長させて後輪を浮上させたときに車体が正確に水平になるよう前ジャッキ・後ジャッキの伸長を制御するものである。
【0019】
従って、この請求項1の自動水平支持装置では、車体の自動水平支持制御時の最終段階において、車体を水平浮上させた状態でジャッキ伸長量に余裕がある状態でジャッキの伸長を停止させるので、車体を確実に高精度の水平状態で浮上支持できるという効果がある。尚、このように、車体を高精度の水平状態で浮上支持できると、作業時の安定性能が良好となる。
【0020】
又、この請求項1では、ジャッキ制御装置は、前ジャッキ制御手段と後ジャッキ制御手段との2つの制御手段のみで構成しているので、該ジャッキ制御装置の構成が比較的簡単となるという効果もある。
【0021】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の自動水平支持装置は、上記請求項1の後ジャッキ制御手段による制御後において、何らかの理由で車体が水平姿勢でないときには、車体水平設置制御手段により低い側のジャッキを伸長させて車体が正確に水平になった時点で(車体傾斜角検出器が車体を水平検出したときに)当該ジャッキを直ちに伸長停止させるように制御するものである。
【0022】
従って、この請求項2の自動水平支持装置では、後ジャッキ制御手段による車体浮上支持の後の最終段階において、車体水平設置制御手段により低い側のジャッキを伸長させて車体の水平出しを行えるので、後ジャッキ制御手段の制御完了後に何らかの理由で車体が水平姿勢になっていなくても、車体水平設置制御手段による傾斜補正制御で車体を確実に高精度の水平状態で浮上支持できるという効果がある。
【0023】
又、この請求項2の自動水平支持装置では、前輪と後輪が浮上して、前ジャッキ及び後ジャッキがそれぞれ全伸長していない(余剰伸長量がある)状態で車体水平設置制御が完了するので、作業中に水平姿勢を補正しなければいけないときにジャッキを伸長させて補正することができ、作業性が向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願実施例の自動水平支持装置を採用している作業車の側面図である。
図2】本願実施例の自動水平支持装置のブロック図である。
図3】(A)〜(C)は本願実施例の自動水平支持装置の制御進行図である。
図4】本願実施例の自動水平支持装置の制御順序を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図4を参照して本願実施例の自動水平支持装置を説明すると、図1には本願実施例の自動水平支持装置を装備している作業車を示している。
【0026】
そして、本願実施例の自動水平支持装置は、車体1を自動で水平浮上状態で支持するための制御を行うものである。
【0027】
本願実施例の自動水平支持装置を説明する前に、この自動水平支持装置を装備している作業車の構成を説明する。図1には、作業車の一例となる高所作業車が示されているが、この高所作業車は、車体1上に高所作業用の作業機10(旋回ポスト、伸縮ブーム、作業員搭乗用のバケット等を有している)を搭載したものである。尚、本願で使用する作業車としては、高所作業車のほかにクレーン作業車も適用することができる。
【0028】
図1の作業車には、車体1に、左右一対の前輪2Aと左右一対の後輪2Bと左右一対の前ジャッキ3Aと左右一対の後ジャッキ3Bとをそれぞれ備えている。尚、以下の説明でも、「前輪2A」、「後輪2B」、「前ジャッキ3A」、「後ジャッキ3B」の各表現は、いずれもそれぞれ左右一対を意味するものである。
【0029】
図1に示すように、前輪2A及び後輪2Bの各車軸21は、それぞれ懸架スプリング(リーフスプリング)22で弾性的に支持されていて、該前輪2A及び後輪2Bが車体1に対してそれぞれ個別に上下動し得るようになっている。即ち、各車輪(前輪2A、後輪2B)が接地しているときには、各懸架スプリング22,22が車体支持により撓ませられて、各車輪2A,2Bが車体1に対して上動位置(図1の実線図示位置)に位置する一方、前後の各ジャッキ3A,3Bで車体1をジャッキアップさせると、各懸架スプリング22,22への変形力が開放される(符号22′,22′の状態となる)ことで各車輪(前輪2A、後輪2B)が符号2A′2B′で示すように車体1に対して下動位置(図1の鎖線図示位置)に位置するようになる。
【0030】
ところで、前ジャッキ3Aと後ジャッキ3Bのいずれか一方(図1において例えば後ジャッキ3B)をジャッキアップすると、そのジャッキアップさせたジャッキ側の車輪(例えば後輪2B)が車体支持状態から浮上状態に移行する際に車体1が所定の傾動角θ(例えばθ=3°〜4°程度)だけ傾動するが、このように前後一方のジャッキのジャッキアップ時に車体1が傾動する傾動角θは、機種によって予め特定されている。即ち、前後の各懸架スプリング22,22の撓み量は、バネ係数と車体1及びその上の作業機10の合計重量によって決まるが、懸架スプリング22に作用する上記合計重量は予め機種ごとに略一定であり、この合計重量とアウトリガ間距離を基にして前輪2A又は後輪2Bが車体支持状態から浮上状態に移行する際の車体1の傾動角θを試験により予め求めている。
【0031】
そして、この実施例では、上記傾動角θ(特に後輪2Bが浮上したときの車体1の傾動角θ)を後述するジャッキ制御装置7における前ジャッキ制御手段71の制御に関連する前ジャッキ伸長データとして用いている。尚、後輪2Bが車体支持状態から浮上状態に移行する際の車体1の傾動角θは、図4のフローチャートのステップS2に記載の「設定角度」と同じものであって、以下の説明では、上記後輪2Bが車体支持状態から浮上状態に移行する際の車体1の傾動角θを上記設定角度ということがある。
【0032】
図1の作業車には、前輪2Aが地面から浮上したことを検出する前輪浮上検出器4と、後輪2Bが地面から浮上したことを検出する後輪浮上検出器5と、前後水平方向に対する車体1の傾斜角を検出する車体傾斜角検出器6とをそれぞれ備えている。
【0033】
上記前輪浮上検出器4と上記後輪浮上検出器5は、前輪2Aと後輪2Bをそれぞれ弾性的に支持する各懸架スプリング22,22の撓み量の変化によってON・OFFするものである。そして、車輪が地面から浮上して(符号2A′,2B′のように下動する)各懸架スプリング22,22が符号22′で示すように支持解除状態になったときに、当該懸架スプリングに対応する前輪浮上検出器4及び/又は後輪浮上検出器5からジャッキ制御装置7に対してON信号を発信するようになっている。
【0034】
上記車体傾斜角検出器6としては、この実施例では車体1の側面に取付けた重垂式のものを採用しており、自動水平支持装置が機能する状態では、車体1の現状の傾斜角を常時ジャッキ制御装置7に送信している。尚、この車体傾斜角検出器6は、車体1の傾斜角を検出し得るものであれば適宜のものを採用でき、例えばAML(転倒防止装置)に用いられるブーム角度検出器を利用してもよい。
【0035】
図2には、この実施例の自動水平支持装置のブロック図を示している。図2の自動水平支持装置は、その制御の中心となるジャッキ制御装置7として前ジャッキ制御手段71と後ジャッキ制御手段72と車体水平設置制御手段73とを備えている。
【0036】
上記前ジャッキ制御手段71は、図3(A)に示すように車体1を前下がり姿勢(ほぼ水平姿勢でも可)で停車させた状態から、図3(B)に示すように前ジャッキ3Aを伸長させて、前輪浮上検出器4が前輪浮上状態を検出し且つ車体傾斜角検出器6が水平姿勢から上記設定角度だけ車体が傾動したことを検出したとき(後ジャッキ3Bのジャッキアップで後輪2Bが車体支持状態から浮上状態に移行する際に車体1が傾動する車体傾斜角θを検出したとき)に前ジャッキ3Aの伸長を停止させる制御を行うものである。
【0037】
上記後ジャッキ制御手段72は、図3(B)の状態から図3(C)に示すように、後ジャッキ3Bを伸長させて、後輪浮上検出器5が後輪浮上状態を検出したときに後ジャッキ3Bの伸長を停止させる制御を行うものである。
【0038】
上記車体水平設置制御手段73は、後ジャッキ制御手段72の制御完了後に、車体傾斜角検出器6が車体1の前後傾斜状態を検出しているときに前後のジャッキ(3A,3B)における車体1が下降傾斜している側のジャッキ(3A又は3B)を伸長させ、車体傾斜角検出器6が車体水平状態を検出したときに当該ジャッキの伸長を停止させる制御を行うものである。
【0039】
尚、図3(A)〜(C)において、符号Gは前側下降傾斜した地面であり、符号Lは水平線である。
【0040】
上記前ジャッキ制御手段71には、図2に示すように、制御開始スイッチ8による制御開始信号と前輪浮上検出器4からの前輪浮上検出信号と車体傾斜角検出器6からの上記車体傾斜角信号(車体が水平状態から傾動角θだけ前上がり傾斜姿勢になったことの検出信号)とがそれぞれ入力される一方、該前ジャッキ制御手段71からは、所定の条件を満たしたときに前ジャッキ切換弁31に対して前ジャッキ3Aを伸長開始又は伸長停止させる信号が発信される。
【0041】
上記後ジャッキ制御手段72には、図2に示すように、前ジャッキ制御手段71からの制御終了信号と後輪浮上検出器5からの後輪浮上検出信号が入力される一方、該後ジャッキ制御手段72からは、所定の条件を満たしたときに後ジャッキ切換弁32に対して後ジャッキ3Bを伸長開始又は伸長停止させる信号が発信される。
【0042】
上記車体水平設置制御手段73には、図2に示すように、車体傾斜角検出器6からの車体傾斜角信号と後ジャッキ制御手段72からの制御完了信号とが入力される一方、該車体水平設置制御手段73からは、前ジャッキ切換弁31又は後ジャッキ切換弁32に対して前ジャッキ又は後ジャッキへの伸長開始又は伸長停止させる信号が発信される。
【0043】
この実施例の自動水平支持装置による制御方法を図4のフローチャートを併用して説明する。尚、図4のフローチャートにおいて、ステップS2の前輪が浮上したかどうかは前輪浮上検出器4で検出し、同ステップS2の車体が設定角度まで上動したかどうかは車体傾斜角検出器6で検出し、ステップS5の後輪が浮上したかどうかは後輪浮上検出器5で検出し、ステップS7の車体が水平になったかどうかは車体傾斜角検出器6で検出する。
【0044】
そして、この実施例の自動水平支持装置による制御を行うには、ジャッキアップすべき作業車を図3(A)のように車体1を前下がり姿勢(ほぼ水平姿勢でもよい)で停車させ、後輪2Bをパーキングブレーキで制動させておく。
【0045】
この状態で、制御開始スイッチ8(図2)をONすると、前ジャッキ制御手段71による制御が開始して、まず前ジャッキ切換弁31に対して伸長開始信号を出力して、前ジャッキ3Aを伸長させ(図4のステップS1)、図3(B)のように前輪2Aを地面Gから浮上させ且つ車体1を水平状態から上記設定角度だけ前上がり傾斜状態になるまで持ち上げる。すると、前輪浮上状態を前輪浮上検出器4で検出し且つ車体の上記前上がり傾斜状態を車体傾斜角検出器6が検出(図4のステップS2)した時点で、前ジャッキ制御手段71が前ジャッキ切換弁31に対して伸長停止信号を発信して前ジャッキ3Aの伸長を停止させる(図4のステップS3)。尚、この時点で前ジャッキ制御手段71の制御は完了し、車体1が図3(B)の状態となる。
【0046】
前ジャッキ制御手段71からの前ジャッキ伸長停止信号が発信されると、これを受けて該前ジャッキ制御手段71から後ジャッキ制御手段72に対して制御開始信号が発信される。すると、該後ジャッキ制御手段72が後ジャッキ切換弁32に対して伸長開始信号を出力して、後ジャッキ3Bを伸長させ(図4のステップS4)、図3(C)のように後輪2Bが浮上するまで持ち上げる。そして、後輪浮上検出器5が後輪2Bが地面Gから浮上したことを検出(図4のステップS5)した時点で、後ジャッキ制御手段72から後ジャッキ切換弁32に対して伸長停止信号を出力して後ジャッキ3Bの伸長を停止させる(図4のステップS6)。尚、この時点で後ジャッキ制御手段72による制御が完了し、本願請求項1のジャッキ制御装置に対応する全制御が完了する。
【0047】
そして、後ジャッキ制御手段72の制御が完了すると、図3(C)に示すように車体1が水平姿勢で浮上支持されており、その車体水平姿勢状態で作業機10による作業が行える。
【0048】
ところで、例えば後輪接地場所に凹凸があったり又は車体荷重の増減で車軸懸架スプリング22の撓み量が通常より変化した場合には、後輪2Bが車体支持状態から浮上状態に移行したときの車体の傾動角(図1のθ)が変化するが、そのときには後ジャッキ制御手段72の制御完了時において、車体1が正確に水平姿勢で支持されているとは限らない。即ち、図3(C)の状態で車体1が前上がり状態又は後上がり状態で傾斜していることが起こり得る。
【0049】
そこで、この実施例のジャッキ制御装置7には、本願請求項2に対応する制御として、上記後ジャッキ制御手段72の制御が完了後に、車体傾斜角検出器6で車体1の前後水平度を検出して(図4のステップS7)、該車体傾斜角検出器6が車体1の前後傾斜状態を検出しているときには、車体水平設置制御手段73による制御が実行される。
【0050】
即ち、ステップS7において、車体1が前後傾斜状態にあると、該車体の傾斜方向を車体傾斜角検出器6で検出して次のよう制御する。まず、車体傾斜角検出器6が車体1の前上がりを検出しているときには(ステップS8)、車体水平設置制御手段73から後ジャッキ切換弁32に対して伸長開始信号を出力して後ジャッキ3Bを伸長させ(ステップS9)、車体傾斜角検出器6が車体1の水平状態を検出したときに伸長停止信号を出力して後ジャッキ3Bの伸長を停止させる(図4のステップS10)。他方、車体傾斜角検出器6が車体1の後上がりを検出しているときには(図4のステップS11)、車体水平設置制御手段73から前ジャッキ切換弁31に対して伸長開始信号を出力して前ジャッキ3Aを伸長させ(図4のステップS12)、車体傾斜角検出器6が車体1の水平状態を検出したときに伸長停止信号を出力して前ジャッキ3Aの伸長を停止させる(図4のステップS13)。
【0051】
このように、図4のステップS7において、車体傾斜角検出器6で車体1が傾斜していることを検出したときには、車体水平設置制御手段73により、ステップS8〜ステップS10又はステップS11〜ステップS13のように制御するで、車体1を自動で正確な水平姿勢に支持できる。
【0052】
尚、後ジャッキ制御手段72による制御の完了時において、ステップS7で車体傾斜角検出器5が車体1の水平状態を検出しているときには、上記車体水平設置制御手段73による制御は実行されずに、ジャッキ制御装置7による制御は完了する。
【0053】
このように、この実施例の自動水平支持装置では、車体1の自動水平支持制御時の最終段階、即ち図4のステップS6の段階又はステップS10やステップS13の段階において、車体1を水平支持した状態でジャッキ(3A,3B)の伸長を停止させるので、車体1を確実に高精度の水平状態で浮上支持できるという機能を有している。
【符号の説明】
【0054】
1は車体、2Aは前輪、2Bは後輪、3Aは前ジャッキ、3Bは後ジャッキ、4は前輪浮上検出器、5は後輪浮上検出器、6は車体傾斜角検出器、7はジャッキ制御装置、71は前ジャッキ制御手段、72は後ジャッキ制御手段、73は車体水平設置制御手段である。
図1
図2
図3
図4