【0019】
本発明で使用されるスルフィド化合物は、スルフィド部の両末端に、芳香族縮合複素環がアルキレン基を介して結合した左右対称の構造(ビス体構造)を有している。
当該化合物としては、例えば、
ビス(ベンズイミダゾリル−2)メチルスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルトリスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルテトラスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルトリスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルテトラスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルトリスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
2,2’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ブチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ブチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド
等が挙げられる。なお、これらのスルフィド化合物は、1種または2種以上を組み合わせてもよい。
前記スルフィド化合物は、1,2−ジアミノベンゼン系化合物、2−アミノチオフェノール系化合物または2−アミノフェノール系化合物のいずれかと、チオジカルボン酸系化合物を、4N希塩酸中で反応させることによって、容易に合成することができ、特許文献1にその製造方法が詳細に開示されている。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0026】
実施例1〜4および比較例1〜9
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤および硫黄を除く成分を密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物加硫ゴム試験片の物性を測定した。なおスルフィド化合物は、NPまたはFnのいずれかの混合工程で投入した。
【0027】
ムーニー粘度:上記未加硫のゴム組成物を用い、JIS K6300−1に準拠し、100℃における未加硫ゴムの粘度を測定した。結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
耐リバージョン性:JIS K6300−2に準拠し、ロータレスレオメーター試験機にて170℃で測定を行い、T−5を求めた。T−5の時間が伸びるほどリバージョンの進行が遅いと判断できる。結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど耐リバージョン性に優れることを示す。
【0028】
建設車両用空気入りタイヤの製造
上記で得られた未加硫のゴム組成物を使用して、幅30mm、厚さ3mmのゴムシートを押出成形した。得られたゴムシートをトレッド部に複数回巻き付けることによりグリーンタイヤを成形し、これを加硫して建設車両用空気入りタイヤを製造した。
製造された建設車両用空気入りタイヤを使用し、以下の方法で耐カット性の試験を行った。
耐カット性:得られた建設車両用空気入りタイヤを大型ダンプに装着して、オフロードを2000時間走行した後、タイヤ軸心を中心として周方向60°毎にセンター付近のブロックを6個抽出し、カットキズの数を数えた。結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほどカットキズの数が少なく、耐カット性が良好であることを示す。結果を併せて表1に示す。
【0029】
また建設車両用空気入りタイヤは、重荷重積載で劣悪な路面を長時間稼動するため、発熱を抑制してタイヤの故障を防ぐことが求められる。そこで、各ゴム組成物について、下記のように発熱性についても測定した。
発熱性:上記で製造した建設車両用空気入りタイヤを使用して、一定時間走行後のトレッド内部温度(オーバーヘッドカバー上5mm)を測定し、指数化した。 結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほど低発熱性であることを示す。結果を併せて表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
*1:NR(RSS#3)
*2:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 1502、非油展品)
*3:カーボンブラック−1(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN220、N
2SA=111m
2/g)
*4:カーボンブラック−2(東海カーボン(株)製シーストF、窒素吸着比表面積(N
2SA)=40m
2/g)
*5:シリカ(EVONIK社製ULTRASIL VN3GR、N
2SA=160m
2/g)
*6:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*7:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*9:老化防止剤(FLEXSYS社製SANTOFLEX 6PPD)
*10:熱可塑性樹脂(荒川化学工業(株)製中国ロジンWW)
*11:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P)
*12:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%))
*13:スルフィド化合物2EBZ(四国化成工業(株)製2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド)
*14:スルフィド化合物4EBZ(四国化成工業(株)製2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド)
【0032】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜4で調製されたゴム組成物は、特定の窒素吸着比表面積(N
2SA)を有するカーボンブラック、シリカ、熱可塑性樹脂および特定のスルフィド化合物を特定量で配合したので、加工性を実用上十分に維持しながら、良好な耐カット性および耐リバージョン性を得ることができた。また発熱性も良好である。
これに対し、比較例2は、比較例1の処方においてカーボンブラックを大粒径のものに変更した例であり、耐カット性が悪化した。
比較例3は、比較例1の処方においてカーボンブラックを増量した例であり、加工性が悪化した。また発熱性も悪化した。
比較例4は、比較例1の処方において熱可塑性樹脂を配合した例であり、発熱性が悪化した。
比較例5は、スルフィド化合物の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、加工性が悪化した。
比較例6は、カーボンブラックのN
2SAが本発明で規定する下限未満であるので、耐カット性が悪化した。
比較例7は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、耐カット性が悪化した。
比較例8は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、ムーニー粘度が悪化した。
比較例9は、熱可塑性樹脂の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。