特許第6485305号(P6485305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485305
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】可変オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20190311BHJP
   F04C 14/00 20060101ALI20190311BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   F04C15/00 A
   F04C14/00 C
   F04C2/10 341A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-186541(P2015-186541)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-61865(P2017-61865A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】磯田 淳夫
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/013625(WO,A1)
【文献】 特開2014−129807(JP,A)
【文献】 特開2015−140670(JP,A)
【文献】 特開昭57−91391(JP,A)
【文献】 特開平1−147178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/00
F04C 2/10
F04C 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングと、
前記ポンプハウジングに対向して配置されるカバーと、
前記ポンプハウジングと前記カバーとの間の収容空間に収容された状態で回転駆動されるオイルポンプロータと、
前記収容空間に収容され、外周側から前記オイルポンプロータを回転自在に保持した状態で、駆動力により変位することによって前記オイルポンプロータからのオイルの吐出量を調整する調整用部材と、
前記調整用部材に設けられた溝部と、前記ポンプハウジングに設けられ、前記溝部に係合するピンとを含み、前記溝部と前記ピンとを互いに係合させることによって前記ポンプハウジングに対する前記調整用部材の相対的な変位をガイドするガイド部と、
前記ポンプハウジングおよび前記カバーの少なくとも一方に設けられ、前記ピンに対して相対的に変位する前記調整用部材の溝部の移動軌跡を取り囲むことによって、前記溝部の内部を前記収容空間に対してシールするシール構造と、を備える、可変オイルポンプ。
【請求項2】
前記シール構造は、前記ポンプハウジングの内面のうちの前記溝部の移動軌跡に対応する領域部分に周状に設けられている、請求項1に記載の可変オイルポンプ。
【請求項3】
前記シール構造は、前記ポンプハウジング側の前記領域部分に加えて、前記カバーの内面のうちの前記溝部の移動軌跡に対応する領域部分にも周状に設けられている、請求項2に記載の可変オイルポンプ。
【請求項4】
前記ポンプハウジング側の前記シール構造と、前記カバー側の前記シール構造とは、平面視において、互いに同一形状を有して重なるように構成されている、請求項3に記載の可変オイルポンプ。
【請求項5】
前記シール構造は、前記ポンプハウジングおよび前記カバーの少なくとも一方の平坦面状の内面と、前記調整用部材における前記溝部の外縁部とが互いに面接触することにより、前記溝部の内部を前記収容空間に対してシールするように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の可変オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプハウジングおよびカバーと、オイルの吐出量を調整する調整用部材とを備えた可変オイルポンプが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、容量可変機構を備えたオイルポンプ(可変オイルポンプ)を制御する油圧制御装置が開示されている。この特許文献1に記載の油圧制御装置により容量制御されるオイルポンプは、凹状のハウジングと、ハウジングに蓋をするカバーと、ハウジングにカバーを被せて形成される内部の収容空間に収容されたドリブンロータ(オイルポンプロータ)と、収容空間内でドリブンロータを外周側から回転自在に保持する調整リング(調整用部材)とを備える。そして、油圧により調整リングを変位させることにより、ドライブロータの回転中心に対するドリブンロータの回転中心を移動させてオイルポンプ1回転あたりの吐出量が増減可能に構成されている。なお、ハウジングの底部から突出するガイドピンが調整リングに形成されたガイド孔(溝部)に係合しており、ガイドピンに係合するガイド孔の移動軌跡に沿って調整リングの回動軌跡が規定されるように構成されている。また、オイルポンプ内のオイルがガイド孔内にも満たされることによって、ガイドピンに対して調整リングのガイド孔が滑らかに摺動(揺動)するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−159761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたオイルポンプ(可変オイルポンプ)では、オイルポンプの動作中に調整リングのガイド孔(溝部)にオイルに含まれる異物が流入した場合、この異物が障害となって、ガイドピンに対するガイド孔(調整用部材)の滑らかな可動性が阻害されるという問題点がある。すなわち、ガイドピンとガイド孔との隙間に異物が挟まった場合にはガイド孔(調整リング)がロックしたり、異物自体がガイド孔の内側面を傷つけたりするなどして、容量可変時の調整リングの正常な回動動作(揺動)が損なわれる虞がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ポンプハウジング内に流入した異物に起因して調整用部材の滑らかな動作(変位)が阻害されるのを抑制することが可能な可変オイルポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における可変オイルポンプは、ポンプハウジングと、ポンプハウジングに対向して配置されるカバーと、ポンプハウジングとカバーとの間の収容空間に収容された状態で回転駆動されるオイルポンプロータと、収容空間に収容され、外周側からオイルポンプロータを回転自在に保持した状態で、駆動力により変位することによってオイルポンプロータからのオイルの吐出量を調整する調整用部材と、調整用部材に設けられた溝部と、ポンプハウジングに設けられ、溝部に係合するピンとを含み、溝部とピンとを互いに係合させることによってポンプハウジングに対する調整用部材の相対的な変位をガイドするガイド部と、ポンプハウジングおよびカバーの少なくとも一方に設けられ、ピンに対して相対的に変位する調整用部材の溝部の移動軌跡を取り囲むことによって、溝部の内部を収容空間に対してシールするシール構造と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面による可変オイルポンプでは、上記のように、ポンプハウジングおよびカバーの少なくとも一方に設けられ、ピンに対して相対的に変位する調整用部材の溝部の移動軌跡を取り囲むことによって、溝部の内部をポンプハウジングとカバーとの間の収容空間に対してシールするシール構造を備える。これにより、可変オイルポンプの動作中にオイルに含まれる異物が可変オイルポンプ内(ポンプハウジングとカバーとの間の収容空間内)に流入した場合であっても、ピンを保持するガイド部における溝部の内部を収容空間に対してシールすることができるので、異物がガイド部内(溝部内)に侵入するのを回避することができる。その結果、ガイド部内(溝部内)への異物の噛み込みが回避されるので、ポンプハウジング内に流入した異物に起因して調整用部材の滑らかな動作(変位)が阻害されるのを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による可変オイルポンプにおいて、好ましくは、シール構造は、ポンプハウジングの内面のうちの溝部の移動軌跡に対応する領域部分に周状に設けられている。
【0010】
このように構成すれば、調整用部材の溝部の移動軌跡に沿ってガイド部における溝部の内部を収容空間に対して連続的にシールすることができるので、可変オイルポンプの動作中に、ポンプハウジングとカバーとの間の収容空間に混入(流入)した異物が、ガイド部内(変位中の調整用部材における溝部内)に侵入するのを確実に回避することができる。
【0011】
上記シール構造がポンプハウジングの内面のうちの溝部の移動軌跡に対応する領域部分に周状に設けられる構成において、好ましくは、シール構造は、ポンプハウジング側の領域部分に加えて、カバーの内面のうちの溝部の移動軌跡に対応する領域部分にも周状に設けられている。
【0012】
このように構成すれば、ポンプハウジング側のみならずカバー側の内面とガイド部(溝部)との連続的なシールをさらに行うことができる。したがって、溝部と収容空間とのシール性(密閉性)をポンプハウジング側とカバー側との両方でさらに高めることができるので、収容空間内に混入(流入)した異物がガイド部内(溝部内)に侵入するのをより確実に回避することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、ポンプハウジング側のシール構造と、カバー側のシール構造とは、平面視において、互いに同一形状を有して重なるように構成されている。
【0014】
このように構成すれば、調整用部材がどのように変位(回動)されても、ガイド部(溝部)とポンプハウジングとのシール性(密閉性)およびガイド部(溝部)とカバーとのシール性(密閉性)を共に保つことができる。また、これとともに、各々のシール面により挟み込まれた状態で変位(回動)する調整用部材を、収容空間内に安定的に保持することができる。
【0015】
上記一の局面による可変オイルポンプにおいて、好ましくは、シール構造は、ポンプハウジングおよびカバーの少なくとも一方の平坦面状の内面と、調整用部材における溝部の外縁部とが互いに面接触することにより、溝部の内部を収容空間に対してシールするように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、調整用部材における溝部の外縁部が調整用部材の変位(回動)とともに移動しても、ポンプハウジングおよびカバーの少なくとも一方の平坦面状の内面に対して調整用部材における溝部の外縁部が単に線接触する場合と異なり、平坦面状の内面と溝部の外縁部とが面接触するシール構造によって、より広いシール面積を利用して、溝部の内部空間を収容空間から確実に隔絶させることができる。したがって、可変オイルポンプの動作中に、ポンプハウジングとカバーとの間の収容空間内の異物が、ガイド部内(溝部内)に侵入するのを容易に回避することができる。
【0017】
なお、上記一の局面による可変オイルポンプにおいて、以下のような構成も考えられる。
【0018】
(付記項)
すなわち、上記ポンプハウジングおよびカバーの少なくとも一方の平坦面状の内面と、調整用部材における溝部の外縁部とが互いに面接触するシール構造を有する可変オイルポンプにおいて、平坦面状の内面は、調整用部材における溝部の外縁部よりも外側の領域まで延びた状態で溝部の移動軌跡を取り囲んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による可変オイルポンプが搭載されたエンジンを示した図である。
図2】本発明の一実施形態による可変オイルポンプの構造を示した分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による可変オイルポンプの内部構造を示した平面図である。
図4図3における160−160線に沿った断面図である。
図5】本発明の一実施形態による可変オイルポンプのカバーを内側から見た平面図である。
図6】本発明の一実施形態による可変オイルポンプの調整リングの移動軌跡を示した図である。
図7】本発明の一実施形態による可変オイルポンプの制御状態(初期位置)を示した図である。
図8】本発明の一実施形態による可変オイルポンプの容量制御状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態]
まず、図1図7を参照して、本発明の一実施形態による可変オイルポンプ100の構成について説明する。
【0022】
(可変オイルポンプの全体構成)
本発明の一実施形態による可変オイルポンプ100は、図1に示すように、エンジン90を備えた自動車(図示せず)に搭載されている。可変オイルポンプ100は、オイルパン91内のオイル(エンジンオイル)1を汲み上げて複数のピストン92、クランク軸93およびバルブ機構94などの可動部(摺動部)に供給(圧送)する機能を有する。
【0023】
また、可変オイルポンプ100は、図2に示すように、ハウジング10と、ハウジング10内に回転可能に設けられたポンプロータ(オイルポンプロータ)20と、ポンプロータ20を外周側から回転可能に保持する調整リング30(調整用部材の一例)と、調整リング30を初期位置側に付勢するコイルばね60(図3参照)と、ハウジング10にX2側から矢印X1方向に被せられるカバー19(図1参照)とを備える。また、ポンプロータ20は、外歯車のインナロータ21および内歯車のアウタロータ22を含む。
【0024】
ここで、図3に示すように、インナロータ21の回転中心は、アウタロータ22の回転中心に対して一定量だけ偏心している。インナロータ21が矢印R1方向(時計回り方向)に回転されると、インナロータ21は同じ方向に若干の遅れをもって回転される。回転の際、インナロータ21とアウタロータ22との距離の短いところでは、インナロータ21の外歯21aとアウタロータ22の内歯22aとが噛み合う。これに対して、距離の遠い方ではインナロータ21の外歯21aが1枚だけ少ないために、アウタロータ22との間にしだいに容積室Vが形成される。また、容積室Vが矢印R1方向への回転移動とともに拡大したり縮小したりすることによって、ポンプロータ20にポンプ機能が生み出される。
【0025】
なお、インナロータ21の外歯21aは、一般的なトロコイドポンプにおけるインナロータの外歯と比較して、歯幅が細められかつ歯丈が半径方向外側に引き延ばされた歯形を有している。また、アウタロータ22の内歯22aは、外歯21aの歯形に合わせて噛み合い可能に形成されている。これにより、ポンプロータ20に形成される容積室Vの容積がより多く確保されるように構成されている。
【0026】
また、図1に示すように、可変オイルポンプ100は、クランクケース95内部のクランク軸93に対して斜め下方(Z2側)に配置されている。ここで、エンジン90は、クランクケース95を含むエンジンブロック90aのX2側の側端面に縦長状のチェーンカバー(タイミングチェーンカバー)96が締結されており、チェーンカバー96の下端部の領域(Z2側)がクランクケース95におけるオイルパン91の側端面に締結されている。そして、クランク軸93は、チェーンカバー96の貫通孔に嵌め込まれたオイルシール(図示せず)を介してX2側の端部が外部(X2側)に露出しており、この部分にクランクプーリ97が取り付けられている。
【0027】
これにより、可変オイルポンプ100は、チェーンカバー96の内側に配置されるとともに、クランク軸93と入力軸55側のスプロケット98とにタイミングチェーン99が掛けられている。クランク軸93の駆動力がオイルポンプ駆動用のタイミングチェーン99およびスプロケット98を介して入力軸55に伝達され、インナロータ21に圧入された入力軸55によりポンプロータ20が回転される。
【0028】
(可変オイルポンプの詳細な構成)
ハウジング10は、図2に示すように、アルミニウム合金からなる凹状(深皿状)の鋳物であって、ハウジング10の外縁部を取り囲む周状の壁部11と、壁部11を繋ぐ底部12とを有する。また、壁部11と底部12とによって凹状となった収容凹部12cに、ポンプロータ20、調整リング30およびコイルばね60(図3参照)が所定の位置関係を有して収容された状態で、カバー19(図1参照)が取り付けられるように構成されている。また、ハウジング10には、オイル1(図1参照)を吸い込む吸込ポート13と、オイル1(図1参照)を吐出する吐出ポート14とが設けられている。
【0029】
吸込ポート13は、底部12に開口する開口部13aからハウジング10内部の油路13bを介してオイルストレーナ2に繋がる配管3(図6参照)に接続される一方、下流側の部分13cは、吸入範囲に対応して底部12を窪ませて浅溝状に形成されている。また、吐出ポート14は、吐出範囲に対応して底部12を窪ませて浅溝状に形成されるとともに、ハウジング10の内部の油路14aを介して吐出油路4(図6参照)に接続されている。
【0030】
また、ハウジング10は、底部12からX軸方向に突出する2本のピン15および16を有する。ピン15および16は、円形形状に形成された外側面15aおよび16aを有する。また、ピン15および16は、後述する調整リング30のガイド孔38および39にそれぞれ係合するように構成されている。なお、カバー19(図1参照)は、図2におけるX2側から矢印X1方向に向かってハウジング10における壁部11の接合面11b(X2側の端面)に締結部材(図示せず)を用いて締結される。
【0031】
また、可変オイルポンプ100は、ポンプロータ20の1回転毎に吐出されるオイル1の吐出量(ポンプ容量)を変更するための容量可変機構を備えている。この容量可変機構は、ハウジング10の収容凹部12c内に形成される油圧室Uの油圧(制御油圧)によって調整リング30を変位(回動)させる機構である。調整リング30を変位(回動)によって、インナロータ21およびアウタロータ22の吸込ポート13および吐出ポート14に対する相対的な位置が変化し、ポンプ容量が変更されるように構成されている。以下、調整リング30を含む容量可変機構について詳細に説明する。
【0032】
(容量可変機構の構成)
調整リング30は、図2に示すように、本体部31と、張出部32および33と、操作部34と、突起部35とを含む。なお、張出部32および33、操作部34および突起部35は、本体部31に一体的に形成されている。そして、本体部31の内周面31aに外周面20aが滑らかに接触(摺動)するようにポンプロータ20が配置されている。
【0033】
本体部31は、円環状に形成されており、外周側からポンプロータ20(アウタロータ22)を回転自在に保持する役割を有する。張出部32および33は、本体部31の外側面31bが外方向(回転半径外方向)に張り出すように形成されている。また、張出部32には厚み方向(X軸方向)に貫通するとともに、緩やかなカーブを描く長孔状のガイド孔38(溝部の一例)が形成されている。また、張出部33には厚み方向に貫通するとともに、緩やかなカーブを描く長孔状のガイド孔39(溝部の一例)が形成されている。
【0034】
操作部34は、外側面31bから突出するように形成され、本体部31を回動させる際に外力(油圧室Uの油圧またはコイルばね60の付勢力)が付与される部分である。また、操作部34には、先端が凹状に窪まされたベーン保持部34aにベーン41が板ばね61を介して保持されている。また、突起部35は、外側面31bから突出するように形成され、先端が凹状に窪まされたベーン保持部35aにベーン42が板ばね61を介して保持されている。なお、ベーン41および42は、調整リング30の厚み(X軸方向の寸法)と同程度の長さを有しており、耐摩耗性に優れた樹脂材料などによって構成されている。
【0035】
コイルばね60は、図3に示すように、調整リング30がハウジング10に収容された状態で、壁部11の内側面11aと操作部34との対向領域に嵌め込まれている。また、操作部34は、コイルばね60の伸長力によって矢印A1方向に付勢されている。すなわち、操作部34に作用するコイルばね60の押圧力によって、調整リング30は、入力軸55のまわりを図1の時計回りに回動(変位)するように付勢されている。これにより、操作部34に油圧が作用しない状態では、コイルばね60が最も伸びた状態で調整リング30が変位(回動)を開始する初期位置に保持されるように構成されている。
【0036】
また、調整リング30がハウジング10に収容された状態では、壁部11の内側面11aと、ベーン41および42と、ベーン41からベーン42までの間の調整リング30の外側面31b(操作部34の外側面の部分も含む)とによって囲まれた領域に油圧室Uが形成されるように構成されている。
【0037】
また、調整リング30がハウジング10に収容された状態では、ピン15がガイド孔38に摺動可能に挿入されて係合するとともに、ピン16がガイド孔39に摺動可能に挿入されて係合するように構成されている。また、ピン15とガイド孔38との係合およびピン16とガイド孔39との係合によって、ハウジング10に対する調整リング30の相対的な変位(回動)をガイド(案内)するガイド部51および52が構成されている。換言すると、ガイド部51および52によって、調整リング30の回動する方向は、ガイド孔38および39の延びる方向(ガイド孔38および39の断面の長手方向)に規制されるように構成されている。
【0038】
ここで、本実施形態では、ガイド部51および52には、それぞれ、シール構造81および82が設けられている。具体的には、図4に示すように、たとえば、ガイド部52においては、ガイド孔39の内部を収容空間Sに対してシールする一対のシール構造82a(X2側)およびシール構造82b(X1側)が設けられている。また、断面構造は図示していないが、ガイド部51(図3参照)においても同様に、ガイド孔38の内部を収容空間Sに対してシールするシール構造81a(X2側)およびシール構造81b(X1側)が設けられている。なお、シール構造81aおよび81bとシール構造82aおよび82bとは、形成された位置が異なるだけであって、互いに同様の構成および機能を有している。したがって、図4に示したシール構造82aおよび82bを代表して説明を続ける。
【0039】
(シール構造の説明)
図2に示すように、ハウジング10における収容凹部12cのうち、ピン15が設けられた部分の周囲およびピン16が設けられた部分の周囲には、それぞれ、長円形状に形成された平坦面(ハッチングした領域)からなるシール面12dおよび12e(領域部分および平坦面状の内面の一例)が形成されている。また、図5に示すように、カバー19は、アルミニウム合金からなる凹状の鋳物であって、カバー19の外縁部を取り囲む接合面19bを有する周状の壁部19aと、壁部19aを繋ぐ内底部19cとを有する。そして、内底部19cのうちピン15および16(図2参照)の先端部が差し込まれる凹部19gの周囲には、それぞれ、長円形状に形成された平坦面(ハッチングした領域)からなるシール面19dおよび19e(領域部分および平坦面状の内面の一例)が形成されている。
【0040】
また、図3および図4に示すように、調整リング30におけるガイド孔38(39)の外縁部38b(39b)には、外縁部38b(39b)に沿って所定の幅を有して円環状に形成された平坦面からなりX2側に位置するシール面38c(39c)(溝部の外縁部の一例)、および、同じく平坦面からなりX1側に位置するシール面38d(39d)(溝部の外縁部の一例)が、それぞれ、形成されている。そして、図4に示すように、ハウジング10に調整リング30が組み込まれてカバー19が締結された状態で、カバー19のシール面19eは、調整リング30のシール面39c(X2側)に対して約25μm以上約75μm以下の隙間(X軸方向)を有して対向配置されるとともに、ハウジング10のシール面12eは、調整リング30のシール面39d(X1側)に対して約25μm以上約75μm以下の隙間(X軸方向)を有して対向配置されている。
【0041】
なお、図4では、図3における160−160線でのガイド部52の断面構造を示しているが、図3における150−150線でのガイド部51の断面構造についても、図4に示した断面構造とほぼ同様である。すなわち、カバー19のシール面19d(図5参照)は、調整リング30のX2側のシール面38c(図2参照)に対して約25μm以上約75μm以下の隙間(X軸方向)を有して対向配置されるとともに、ハウジング10のシール面12d(図2参照)は、調整リング30のX1側のシール面38d(図2参照)に対して約25μm以上約75μm以下の隙間(X軸方向)を有して対向配置されている。
【0042】
また、ガイド部51におけるシール面12d(図3参照)および19d(図5参照)は、X軸方向に見た平面視において、互いに同一形状を有して重なるように配置されている。同様に、ガイド部52(図4参照)におけるシール面12eおよび19eも、X軸方向に見た平面視において、互いに同一形状を有して重なるように配置されている。
【0043】
また、図6に示すように、シール面12dおよび19dの形成領域は、回動する調整リング30のガイド孔38(シール面38cおよび38d)の移動軌跡P1(太い二点鎖線で示す領域内)を完全に覆う平面形状を有して形成されている。同様に、シール面12eおよび19eの形成領域は、回動する調整リング30のガイド孔39(シール面39cおよび39d)の移動軌跡P2(太い二点鎖線で示す領域内)を完全に覆う平面形状を有して形成されている。また、カバー19の平坦面状のシール面19d(19e)およびハウジング10の平坦面状のシール面12d(12e)は、調整リング30におけるガイド孔38(39)の外縁部38b(39b)よりも外側の領域まで延びた状態でガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)を取り囲んでいる。
【0044】
なお、図6では、図示の都合上、シール面12dおよび12e(19dおよび19e)が移動軌跡P1およびP2上からその外側まで広がって円環状(長円形状)であるかのように記載しているが、シール面12dおよび12e(19dおよび19e)自体は、実際には、図2および図5に示すように、移動軌跡P1およびP2(図6参照)の外側からピン15および16近傍まで一様に延びた平坦面である。したがって、図6に示すように、調整リング30が移動軌跡P1(P2)の範囲内でどの場所に位置していても、調整リング30側のシール面38cおよび38d(39cおよび39d)とシール面19dおよび12d(19eおよび12d)とによって、ガイド孔38(39)のシール状態は保たれるように構成されている。
【0045】
したがって、本実施形態では、図4に示すように、X2側に設けられたシール構造82aは、カバー19側のシール面19eと、ガイド孔39のシール面39cとによってガイド孔39まわりに周状に形成されるとともに、X1側に設けられたシール構造82bは、ハウジング10側のシール面12eと、ガイド孔39のシール面39dとによってガイド孔39まわりに周状に形成されている。また、図3に示すように、X2側(紙面手前側)に設けられたシール構造81aは、カバー19側のシール面19dとガイド孔38のシール面38cとによってガイド孔38まわりに周状に形成されるとともに、X1側(紙面奥側)に設けられたシール構造82aは、ハウジング10側のシール面12dとガイド孔38のシール面38dとによってガイド孔38まわりに周状に形成されている。
【0046】
これにより、図4に示すように、シール構造82aにおいてカバー19側のシール面19eとガイド孔39のシール面39cとが、移動軌跡P2(図6参照)上で互いに面接触するとともに、シール構造82bにおいてハウジング10側のシール面12eとガイド孔39のシール面39dとが、移動軌跡P2(図6参照)上で互いに面接触している。したがって、調整リング30の変位(回動)の有無に関係なく、ガイド孔39の内部が収容空間Sに対してシールされている。同様に、シール構造81a(図3参照)においてカバー19側のシール面19dとガイド孔38のシール面38cとが、移動軌跡P1(図6参照)上で互いに面接触するとともに、シール構造81b(図3参照)においてハウジング10側のシール面12dとガイド孔38のシール面38dとが、移動軌跡P1(図6参照)上で互いに面接触している。したがって、調整リング30の矢印A1(A2)方向への変位(回動)の有無に関係なく、ガイド孔38の内部が収容空間Sに対してシールされている。
【0047】
なお、図3に示すように、ガイド孔38(39)にはオイル1が満たされている。また、この状態で、ピン15(16)に対してガイド孔38(39)が矢印A1方向または矢印A2方向に回動される。したがって、図4に示すように、ピン16(15)に対してガイド孔39(38)が移動するのに伴って、内部に充填されているオイル1が一方側の空間から他方側の空間へと移動する(呼吸する)ことが可能な溝状の油路55(X1側とX2側との2箇所)が、カバー19のシール面19e(19d)の内縁部に形成されている。
【0048】
したがって、可変オイルポンプ100の動作中にオイル1(図1参照)に含まれる異物が可変オイルポンプ100内(ハウジング10とカバー19との間の収容空間S内)に流入した場合であっても、ピン15(16)を保持するガイド部51(52)におけるガイド孔38(39)の内部が、シール構造81aおよび81b(シール構造82aおよび82b)によって収容空間Sに対して隔絶された状態となって、オイル1に含まれる異物がガイド部51(52)内に極力侵入しないように構成されている。
【0049】
また、図7に示すように、エンジン90には可変オイルポンプ100が有する容量可変機構を機能させるための油圧制御装置5が吐出油路4に設けられている。具体的には、可変オイルポンプ100と油圧制御装置5とは、吐出油路4から分岐する油路6aにより接続されている。また、油圧制御装置5と、ハウジング10内の油圧室Uとが、油路6bを介して接続されている。そして、可変オイルポンプ100の駆動中に、エンジン90に搭載されたECU(図示せず)からの制御信号に基づいて油圧制御装置5が動作されることによって、吐出油路4からオイルフィルタ7(図1参照)を経てエンジン90(オイルギャラリ)に向けて送出されるオイル1の一部が、油路6aを介して油圧制御装置5に引き込まれた後、油路6bを介して油圧室Uに供給されるように構成されている。
【0050】
次に、図7および図8を参照して、可変オイルポンプ100によるオイル1の吐出量の容量可変制御について説明する。
【0051】
(容量可変制御の説明)
まず、図7に示すように、エンジン90の始動とともに回転される入力軸55によりポンプロータ20が矢印R1方向に駆動される。この際、油圧制御装置5は作動しておらず、調整リング30は、コイルばね60の付勢力によって矢印A1方向に最も回動された初期位置に保持される。また、初期位置においては、インナロータ21の外歯21aとアウタロータ22の内歯22aとの間でオイル1の減圧を行う負圧作用領域に吸込ポート13が対向するとともに、インナロータ21の外歯21aとアウタロータ22の内歯22aとの間でオイル1の圧縮を行う正圧作用領域に吐出ポート14が対向するようになる。したがって、オイルパン91内のオイル1が吸込ポート13からポンプロータ20に吸い込まれるとともに吐出ポート14から油路14aを介して吐出油路4に吐出される。
【0052】
次に、図8に示すように、エンジン90の回転数や負荷に応じてECU(図示せず)からの制御信号に基づいて油圧制御装置5が動作される。すなわち、吸込ポート13からのオイル1が油路6aを介して油圧制御装置5に引き込まれた後、油路6bを介して油圧室Uに供給されるようになる。そして、油圧室Uに供給されたオイル1の油圧が調整リング30の操作部34に作用することによって、調整リング30がコイルばね60の付勢力に抗して初期位置(図7参照)から矢印A2方向へと回動され始める。
【0053】
なお、調整リング30の矢印A2方向への回動とともに、ポンプロータ20におけるアウタロータ22は、内歯22aがインナロータ21の外歯21aに噛み合ったままインナロータ21の回転中心に対して所定の偏心量を保ったまま矢印A2方向へ公転される。これにより、正圧作用領域と負圧作用領域とがインナロータ21の回転中心まわりで移動されるので、負圧作用領域から吸込ポート13に作用する負圧が低下するとともに、正圧作用領域から吐出ポート14に作用する正圧も低下する。この結果、ポンプロータ20からのオイル1の吐出量(エンジン90への供給量)が減少される。
【0054】
また、ECUにより油圧制御装置5が詳細に動作制御されることによって、油圧室Uに供給されるオイル1の油圧(操作部34を矢印A2方向へ付勢する付勢力)が調整される。これにより、操作部34に対する油圧室Uの油圧とコイルばね60の付勢力(操作部34を矢印A1方向へ付勢する付勢力)とのバランス関係に応じて、調整リング30の回動位置が詳細に調整される。また、調整リング30の回動位置が調整されることによって、可変オイルポンプ100によるオイル1の吐出量が詳細に制御される。本実施形態における可変オイルポンプ100は、上記のように構成されている。
【0055】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、ハウジング10およびカバー19に設けられ、ピン15(16)に対して相対的に変位する調整リング30のガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)を取り囲むことによって、ガイド孔38(39)の内部を収容空間Sに対してシールするシール構造81および82を備える。これにより、可変オイルポンプ100の動作中にオイル1に含まれる異物が可変オイルポンプ100内(ハウジング10とカバー19との間の収容空間S内)に流入した場合であっても、ピン15(16)を保持するガイド部51(52)におけるガイド孔38(39)の内部を収容空間Sに対してシールすることができるので、異物がガイド部51(52)内(ガイド孔38(39)内)に侵入するのを回避することができる。その結果、ガイド部51(52)内(ガイド孔38(39)内)への異物の噛み込みが回避されるので、可変オイルポンプ100に流入した異物に起因して調整リング30の滑らかな動作変位が阻害されるのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ハウジング10の収容凹部12cのうちのガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)に対応するシール面12dおよび12eの部分に、シール構造81(82)を周状に設ける。これにより、調整リング30のガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)に沿ってガイド部51(52)におけるガイド孔38(39)の内部を収容空間Sに対して連続的にシールすることができるので、可変オイルポンプ100の動作中に、ハウジング10とカバー19との間の収容空間Sに混入(流入)した異物が、ガイド部51(52)内(変位中の調整用リング30におけるガイド孔38(39)内)に侵入するのを確実に回避することができる。
【0058】
また、本実施形態では、ハウジング10側のシール面12d(12e)に加えて、カバー19の内底部19cのうちのガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)に対応するシール面19dおよび19eにもシール構造81(82)を周状に設ける。これにより、ハウジング10側のみならずカバー19側のシール面19d(19e)とガイド部51(52)(ガイド孔38(39))との連続的なシールをさらに行うことができる。したがって、ガイド孔38(39)と収容空間Sとのシール性(密閉性)をハウジング10側とカバー19側との両方で高めることができるので、収容空間Sに混入(流入)した異物がガイド部51(52)内(ガイド孔38(39)内)に侵入するのをより確実に回避することができる。
【0059】
また、本実施形態では、カバー19側のシール構造81a(82a)と、ハウジング10側のシール構造81b(82b)とを、平面視において互いに同一形状を有して重なるように構成する。これにより、調整リング30がどのように変位(回動)されても、ガイド部51(52)(ガイド孔38(39))とハウジング10とのシール性(密閉性)およびガイド部51(52)(ガイド孔38(39))とカバー19とのシール性(密閉性)を共に保つことができる。また、これとともに、各々のシール面12d(12e)およびシール面19d(19e)により挟み込まれた状態で変位(回動)する調整リング30を、収容空間S内に安定的に保持することができる。
【0060】
また、本実施形態では、カバー19の平坦面状のシール面19d(19e)と、調整リング30におけるガイド孔38(39)のシール面38c(39c)とが互いに面接触することにより、ガイド孔38(39)の内部を収容空間Sに対してシールするようにシール構造81a(82a)を構成する。また、ハウジング10の平坦面状のシール面12d(12e)と、調整リング30におけるガイド孔38(39)のシール面38d(39d)とが互いに面接触することにより、ガイド孔38(39)の内部を収容空間Sに対してシールするようにシール構造81b(82b)を構成する。これにより、調整リング30におけるガイド孔38(39)の外縁部38b(39b)が調整リング30の変位(回動)とともに矢印A1(A2)方向に移動しても、シール面19d(19e)およびシール面12d(12e)に対して調整リング30におけるガイド孔38(39)の外縁部38b(39b)が単に線接触する場合と異なり、シール面19d(19e)とシール面38c(39c)とが面接触するシール構造81a(82a)およびシール面12d(12e)とシール面38d(39d)とが面接触するシール構造81b(82b)によって、より広いシール面積を利用して、ガイド孔38(39)の内部空間を収容空間Sから確実に隔絶させることができる。したがって、可変オイルポンプ100の動作中に、ハウジング10とカバー19との間の収容空間S内の異物が、ガイド部51(52)内(ガイド孔38(39)内)に侵入するのを容易に回避することができる。
【0061】
また、本実施形態では、カバー19の平坦面状のシール面19d(19e)およびハウジング10の平坦面状のシール面12d(12e)を、調整リング30におけるガイド孔38(39)の外縁部38b(39b)よりも外側の領域まで延びた状態でガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)を取り囲むようにシール構造81(82)を構成する。これにより、ガイド孔38(39)のシール面38c(39c)をカバー19のシール面19d(19e)に対して確実に面接触させることができるとともに、ガイド孔38(39)のシール面38d(39d)をハウジング10のシール面12d(12e)に対して確実に面接触させることができる
【0062】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0063】
たとえば、上記実施形態では、カバー19と調整リング30との間にシール構造81a(82a)を設け、ハウジング10と調整リング30との間にシール構造81b(82b)を設けたが、本発明はこれに限られない。すなわち、ハウジング10およびカバー19のいずれか一方にのみ、シール構造81または82を設けてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、カバー19のシール面19d(19e)とガイド孔38(39)のシール面38c(39c)とを面接触させるとともに、ハウジング10のシール面12d(12e)とガイド孔38(39)のシール面38d(39d)とを面接触させたが、本発明はこれに限られない。たとえば、シール面19d(19e)とシール面38c(39c)との対向領域にガイド孔38(39)の移動軌跡P1(P2)に沿って延びる環状の溝部を形成して、この環状の溝部にOリングなどのシール部材を嵌め込んでシール構造81および82を構成してもよい。また、シール部材を嵌め込む構成は、シール面12d(12e)とシール面38d(39d)との対向領域についても適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、エンジン90にオイル1を供給する可変オイルポンプ100に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関の回転数に応じてギアの変速比を自動的に切り替えるオートマチックトランスミッション(AT)にATフルードを供給するオイルポンプに本発明を適用してもよい。また、上記AT(多段変速機)とは異なり連続的に無段階で変速比を変更可能な無段変速機(CVT)内の摺動部に潤滑油を供給するオイルポンプや、ステアリング(操舵装置)を駆動するパワーステアリング装置にパワーステアリングオイルを供給するオイルポンプに本発明を適用してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、エンジン90を備えた自動車に可変オイルポンプ100を搭載したが、本発明はこれに限られない。車両(自動車)以外の設備機器に搭載された内燃機関用の可変オイルポンプに対して本発明を適用してもよい。また、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどが適用可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、一般的なトロコイドポンプにおけるインナロータの外歯やアウタロータの内歯と比較して、歯幅が細められかつ歯丈が半径方向外側に引き延ばされた歯形を有するポンプロータ20を適用したが本発明はこれに限られない。すなわち、外歯21aおよび内歯22aの歯形がトロコイド曲線あるいはサイクロイド曲線によって形成された内接歯車型のポンプロータを有する可変オイルポンプに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 オイル
10 ハウジング(ポンプハウジング)
12c 収容凹部(平坦面状の内面)
12d、12e、19d、19e シール面(領域部分、平坦面状の内面)
15、16 ピン
19 カバー
19c 内底部(平坦面状の内面)
20 ポンプロータ(オイルポンプロータ)
30 調整リング(調整用部材)
38、39 ガイド孔(溝部)
38b、39b 外縁部
38c、38d、39c、39d シール面(溝部の外縁部)
51、52 ガイド部
60 コイルばね
81、81a、81b、82、82a、82b シール構造
100 可変オイルポンプ
S 収容空間
P1、P2 移動軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8