(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485325
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】インパネモジュールの搭載補助装置
(51)【国際特許分類】
B62D 65/14 20060101AFI20190311BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20190311BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20190311BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
B62D65/14 B
B60K37/00 C
B23P21/00 303A
B23P19/00 304A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-216570(P2015-216570)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-87796(P2017-87796A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 航
(72)【発明者】
【氏名】草薙 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】森 亮平
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−67354(JP,A)
【文献】
特開平4−372481(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第654395(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/14
B23P 19/00
B23P 21/00
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパネモジュールを保持する保持具と、当該保持具を支持する支持機構とを備え、前記保持具によって保持された前記インパネモジュールを、前記支持機構の動作によって車体ボディのフロントウィンドウ開口部から運転席前の所定位置に投入し、作業者によるインパネモジュールの搭載作業を補助するインパネモジュールの搭載補助装置であって、
前記支持機構は、前記保持具に保持された前記インパネモジュールが前記フロントウィンドウ開口部を通過した後に、前記保持具を上下方向に回動させることによって、前記インパネモジュールを運転席前の所定位置に移動させながら、車体ボディに取り付ける正規の姿勢に回動させることを特徴とするインパネモジュールの搭載補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記支持機構は、前記保持具に保持された前記インパネモジュールが前記フロントウィンドウ開口部を通過した後に、前記支持機構と前記保持具との連結部を下方から上方へ移動させながら、前記保持具に保持した前記インパネモジュールを上方から下方へ移動させることを特徴とするインパネモジュールの搭載補助装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記支持機構は、前記保持具に保持する前記インパネモジュールの前面が下方を向いた姿勢で、当該インパネモジュールが前記フロントウィンドウ開口部を通過するように、前記保持具を支持することを特徴とするインパネモジュールの搭載補助装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記支持機構には、本体部と、一端同士が前記本体部に上下方向で所定の軸間距離を有して軸支された上リンク棒及び下リンク棒と、前記本体部に装着され前記上リンク棒又は前記下リンク棒の前記一端と接続された駆動装置とを備え、前記上リンク棒の他端と前記下リンク棒の他端とが、前記一端同士の軸間距離より上下方向で短い軸間距離を有して前記保持具との連結部に回動可能に連結されていることを特徴とするインパネモジュールの搭載補助装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記保持具は、前記インパネモジュールの車両上方を経由して車両後方から前記インパネモジュールに延伸されたアーム部材によって前記インパネモジュールを保持することを特徴とするインパネモジュールの搭載補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両組立てラインにおいて、インパネモジュールを保持して車体ボディのフロントウィンドウ開口部から投入し、運転席前の所定位置に搭載するインパネモジュールの搭載作業を補助する搭載補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両組み立てラインでは、車体ボディを前向きに配置した状態でラインコンベア上に載置して移動させながら、各種内装部品を車体ボディのドア開口部から投入し、所定位置に搭載する作業が行われている。その場合、重量物であるインパネモジュールの搭載作業においては、作業者の負担を軽減すべく、搭載補助装置によってインパネモジュールを保持しながら車体ボディのフロントドア開口部から投入することが多い(特許文献1を参照)。
しかし、例えば、マイクロバスのように車体ボディ前後長の長い車両では、車体ボディを前向きの状態でラインコンベア上に載置して移動させると、コンベア長が非常に長くなり、ラインコンベアの折り返し部も多くなってラインコンベアが煩雑となるばかりか、工場スペース上の無駄も増加する。そのため、
図9に示すように、車体ボディ101を横向きに配置した状態でラインコンベア102上に載置して移動させる方式がとられる場合がある。この場合、車幅寸法に近い長さのインパネモジュール103を搭載補助装置104が保持して、車体ボディ101のフロントドア開口部から投入しようとすると、隣接する車体ボディ同士の隙間をインパネモジュールの長さ以上に大きくとる必要が生じ、結果として、ラインコンベアのコンベア長が長くなり、車体ボディを前向きの状態で移動させる場合と、同じような問題が生じることになる。
【0003】
この問題を解決する方法として、例えば、特許文献2には、
図10に示すように、搭載補助装置201のリフトフォーク202に載置されたインパネモジュール203を車体ボディ204のフロントウィンドウ204Wの直前方位置に横置き状態に保持し、車体ボディ内の作業者がリフトフォーク202上のインパネモジュール203を抱えて受け取り、これを車室内に搬入して運転席前の所定位置に組み付けるインパネモジュールの搭載方法及び搭載補助装置が記載されている。この場合、作業者は、マニュアル操作により、搭載補助装置201におけるエアシリンダ205のピストンロッド205Rを伸長させてリフトフォーク202を傾動させることによって、インパネモジュール203をリフトフォーク上で滑らせながら車体ボディ内から受け取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−67354号公報
【特許文献2】特開平4−372481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記インパネモジュール203の搭載補助装置201では、車体ボディ204のフロントウィンドウ204Wの直前方位置に横置き状態にリフトフォーク202によってインパネモジュール203を保持するだけであるので、保持されたインパネモジュール203を、車体ボディ内の作業者が抱えて受け取り、これを車室内に搬入しなければならない。また、作業者がインパネモジュール203を運転席前の所定位置に組み付けるときには、搭載補助装置201のリフトフォーク202がインパネモジュール203を保持していないので、作業者がインパネモジュール203の重量を支えながら、組み付ける必要がある。そのため、インパネモジュール203の搭載作業に対する作業者の負担は過大であり、インパネモジュール203の搭載作業を2人作業とせざるを得ないこともある。
また、搭載補助装置201によって保持されたインパネモジュール203を車体ボディ204へ搭載する姿勢でフロントウィンドウ開口部を通過させると、インパネモジュール203の上部又は下部がフロントウィンドウ開口部と干渉する場合がある。そのため、搭載補助装置201におけるインパネモジュール203の投入軌跡を工夫する必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、インパネモジュールを車体ボディのフロントウィンドウ開口部から運転席の所定位置まで簡単に投入でき、作業者に対する負担を軽減できるインパネモジュールの搭載補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るインパネモジュールの搭載補助装置は、次のような構成を有している。
(1)インパネモジュールを保持する保持具と、当該保持具を支持する支持機構とを備え、前記保持具によって保持された前記インパネモジュールを、前記支持機構の動作によって車体ボディのフロントウィンドウ開口部から運転席前の所定位置に投入し、作業者によるインパネモジュールの搭載作業を補助するインパネモジュールの搭載補助装置であって、
前記支持機構は、前記保持具に保持された前記インパネモジュールが前記フロントウィンドウ開口部を通過した後に、前記保持具を上下方向に回動させることによって、前記インパネモジュールを運転席前の所定位置に移動させながら、車体ボディに取り付ける正規の姿勢に回動させることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、支持機構は、保持具に保持されたインパネモジュールがフロントウィンドウ開口部を通過した後に、保持具を上下方向に回動させることによって、インパネモジュールを運転席前の所定位置に移動させながら、車体ボディに取り付ける正規の姿勢に回動させるので、インパネモジュールをフロントウィンドウ開口部との干渉を回避できる姿勢で車室内に投入し、その後、保持具がインパネモジュールを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢で保持した状態で、作業者はインパネモジュールを車体ボディに組み付けることができる。そのため、作業者は、インパネモジュールの重量を支えることなく、車体ボディに簡単に組み付けることができる。その結果、インパネモジュールの搭載作業に対する作業者の負担を大幅に低減することができる。
よって、本発明によれば、インパネモジュールを車体ボディのフロントウィンドウ開口部から運転席の所定位置まで簡単に投入でき、作業者に対する負担を軽減できるインパネモジュールの搭載補助装置を提供することができる。
【0009】
(2)(1)に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記支持機構は、前記保持具に保持された前記インパネモジュールが前記フロントウィンドウ開口部を通過した後に、前記支持機構と前記保持具との連結部を下方から上方へ移動させながら、前記保持具に保持した前記インパネモジュールを上方から下方へ移動させることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、支持機構は、保持具に保持されたインパネモジュールがフロントウィンドウ開口部を通過した後に、支持機構と保持具との連結部を下方から上方へ移動させながら、保持具に保持したインパネモジュールを上方から下方へ回動させるので、インパネモジュールを上下方向に回動させるときにおけるインパネモジュールの上下方向への移動距離を縮小させることができる。そのため、インパネモジュールが、車室内で移動するときにおいて、インパネモジュールと車体ボディとが干渉する恐れを、より一層低減させることができる。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記支持機構は、前記保持具に保持する前記インパネモジュールの前面が下方を向いた姿勢で、当該インパネモジュールが前記フロントウィンドウ開口部を通過するように、前記保持具を支持することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、支持機構は、保持具に保持するインパネモジュールの前面が下方を向いた姿勢で、当該インパネモジュールがフロントウィンドウ開口部を通過するように、保持具を支持するので、インパネモジュールの下方に取り付けられたダクト部や上方に取り付けられたメータ表示部等の上下方向突出部を略水平方向へ回動させた状態で、インパネモジュールをフロントウィンドウ開口部を通過させることができる。そのため、インパネモジュールがフロントウィンドウ開口部を通過するとき、ダクト部やメータ表示部等の上下方向突出部とフロントウィンドウ開口部とが干渉する恐れを、より一層低減させることができる。
【0013】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記支持機構には、本体部と、一端同士が前記本体部に上下方向で所定の軸間距離を有して軸支された上リンク棒及び下リンク棒と、前記本体部に装着され前記上リンク棒又は前記下リンク棒の前記一端と接続された駆動装置とを備え、前記上リンク棒の他端と前記下リンク棒の他端とが、前記一端同士の軸間距離より上下方向で短い軸間距離を有して前記保持具との連結部に回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、支持機構には、本体部と、一端同士が本体部に上下方向で所定の軸間距離を有して軸支された上リンク棒及び下リンク棒と、本体部に装着され上リンク棒又は下リンク棒の一端と接続された駆動装置とを備え、上リンク棒の他端と下リンク棒の他端とが、一端同士の軸間距離より上下方向で短い軸間距離を有して保持具との連結部に回動可能に連結されているので、上リンク棒又は下リンク棒の一端と接続された駆動装置を作動させることによって、上リンク棒及び下リンク棒の他端に連結された保持具の連結部を上下動させながら、保持具を上下方向に回動させることができる。そのため、保持具における上下動と上下方向への回動とを、1つの駆動装置によって簡単に作動させることができる。
【0015】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載されたインパネモジュールの搭載補助装置において、
前記保持具は、前記インパネモジュールの車両上方を経由して車両後方から前記インパネモジュールに延伸されたアーム部材によって前記インパネモジュールを保持することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、保持具は、インパネモジュールの車両上方を経由して車両後方からインパネモジュールに延伸されたアーム部材によってインパネモジュールを保持するので、インパネモジュールをフロントウィンドウ開口部を通過させた後に運転席前の所定位置に移動させるとき、アーム部材をインパネモジュールの車両後方に配置した状態で移動させることができる。そのため、インパネモジュールを運転席前の所定位置に移動させるとき、インパネモジュールに延伸されたアーム部材が、車体ボディと干渉する恐れを低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インパネモジュールを車体ボディのフロントウィンドウ開口部から運転席の所定位置まで簡単に投入でき、作業者に対する負担を軽減できるインパネモジュールの搭載補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る搭載補助装置によって保持するインパネモジュールの概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すインパネモジュールを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢で、車体ボディのフロントウィンドウ開口部を通過させるときの正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る搭載補助装置の部分斜視図である。
【
図4】
図3に示す搭載補助装置の側面視における動作説明図である。
【
図5】
図3に示す搭載補助装置によってラインサイドに保管されたインパネモジュールを保持する状態を表す側面図である。
【
図6】
図3に示す搭載補助装置によってインパネモジュールを投入する状態(フロントウィンドウ開口部を通過)を表す側面図である。
【
図7】
図3に示す搭載補助装置によってインパネモジュールを投入する状態(運転席前に移動中)を表す側面図である。
【
図8】
図3に示す搭載補助装置によってインパネモジュールを投入する状態(運転席前の所定位置で保持)を表す側面図である。
【
図9】車体ボディを横向きに配置した状態でラインコンベア上に載置して移動させる従来方式の側面図である。
【
図10】特許文献2に記載されたインパネモジュールの搭載補助装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る実施形態であるインパネモジュールの搭載補助装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態の搭載補助装置によって投入するインパネモジュールと車体ボディとを説明し、その後、搭載補助装置の構成及びその動作方法を説明する。次に、本実施形態に係る搭載補助装置を用いてインパネモジュールを車体ボディの所定位置に投入する手順を説明する。
【0020】
<インパネモジュール及び車体ボディの構成>
まず、インパネモジュール及び車体ボディの構成を、
図1、
図2を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る搭載補助装置によって保持するインパネモジュールの概略斜視図を示す。
図2に、
図1に示すインパネモジュールを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢で、車体ボディのフロントウィンドウ開口部を通過させるときの正面図を示す。なお、
図1(
図2)に示す矢印上下は車両高さ方向を示し、矢印左右は車両幅方向を示し、矢印前後は車両前後方向を示す。他の図面においても同じ。
【0021】
図1に示すように、本搭載補助装置によって保持するインパネモジュールMは、運転席に対向する上方位置に配置されたメータ表示部M1と、運転席に対向する下方位置に配置されたステアリング取付部M5と、助手席に対向する上方位置に配置されたエアバッグ装置M2と、助手席に対向する下方位置に配置されたエアコンユニットM3等とを含む各種部品を備えた車両内装部品である。また、メータ表示部M1、ステアリング取付部M5、エアバッグ装置M2、エアコンユニットM3等の各種部品は、車両幅方向に延設された補強部材M7にそれぞれ固定されている。補強部材M7の左右端には、車体ボディのサイメン部品に取り付ける取付ブラケットM4が固定されている。なお、エアコンユニットM3には、下方へ突出するダクト部M6が装着されている。また、メータ表示部M1は、本体部より上方へ突出して形成されている。インパネモジュールMには、車体ボディに組み付けるときの基準座M8及び基準孔M9が、適宜形成されている。なお、インパネモジュールMには、車体ボディBに搭載した後に、樹脂製のインパネカバー(図示しない)が装着される。
【0022】
図2に示すように、車体ボディBの車両前面BWには、矩形状に開口するフロントウィンドウ開口部BKが形成されている。フロントウィンドウ開口部BKにおける車両幅方向の開口寸法は、車体ボディの幅寸法と同等程度に広く形成されているので、インパネモジュールMを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢でフロントウィンドウ開口部BKを通過させることができる。
しかし、フロントウィンドウ開口部BKにおける車両高さ方向の開口寸法は、車両幅方向の開口寸法より狭く形成されているので、インパネモジュールMを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢でフロントウィンドウ開口部BKを通過させると、メータ表示部M1やダクト部M6等の上下方向へ突出した突出部が、フロントウィンドウ開口部BKと干渉する場合がある。
そのため、以下に説明する本実施形態に係る搭載補助装置は、メータ表示部M1やダクト部M6等の上下方向へ突出した突出部とフロントウィンドウ開口部BKとの干渉を、簡単に回避させる特徴を備えている。
【0023】
<搭載補助装置の構成及びその動作方法>
次に、本実施形態に係るインパネモジュールの搭載補助装置における構成及びその動作方法を、
図3、
図4を用いて説明する。
図3に、本発明の実施形態に係る搭載補助装置の部分斜視図を示す。
図4に、
図3に示す搭載補助装置の側面視における動作説明図を示す。
【0024】
図3、
図4に示すように、本搭載補助装置10は、インパネモジュールMを保持する保持具1と、当該保持具1を支持する支持機構2とを備えている。本搭載補助装置10は、保持具1によって保持されたインパネモジュールMを、支持機構2の動作によって車体ボディのフロントウィンドウ開口部から運転席前の所定位置に投入し、作業者によるインパネモジュールMの搭載作業を補助する動作を行うように構成されている。
【0025】
保持具1は、インパネモジュールMの車両上方を経由して車両後方からインパネモジュールMの受座151、161に延伸されたアーム部材15、16によってインパネモジュールMを保持するように、略コ字状断面に形成されている。具体的には、
図3に示すように、保持具1は、支持機構2と連結される連結部11と、連結部11から後方に延設された第1支持部材12と、第1支持部材12から下方へV字状に開脚延設された第2支持部材13と、第2支持部材13の下端同士を連結し左右方向へ延設された第3支持部材14と、第3支持部材14からインパネモジュールMの基準座M8、基準孔M9に向けて延設されたアーム部材15、16とを備えている。第3支持部材14の左右外方に位置するアーム部材15の先端部には、インパネモジュールMの受座151が形成され、当該受座151には、基準ピン152が立設されている。基準ピン152は、インパネモジュールMの重心g近傍で基準孔M9と係合している。第3支持部材14の左右内方に位置するアーム部材16の先端部には、インパネモジュールMの受座161が形成され、当該受座161には、インパネモジュールMの基準座M8が当接する。
【0026】
また、支持機構2には、逆U字状断面に形成された本体部21と、一端221、231同士が本体部21の両側壁に上下方向で所定の軸間距離を有して軸部材212、213によってそれぞれ軸支された上リンク棒22及び下リンク棒23と、本体部21の両側壁に装着され下リンク棒23の一端231と接続された駆動シリンダ(駆動装置)24とを備え、上リンク棒22の他端222と下リンク棒23の他端232とが一端同士の軸間距離より短い軸間距離を有して保持具1との連結部11に軸部材111、112によってそれぞれ回動可能に連結されている。上リンク棒22における一端側と他端側との軸間距離は、下リンク棒23における一端側と他端側との軸間距離より長くなるように形成されている。また、上リンク棒22と下リンク棒23との間では、一端側における軸間距離が他端側の軸間距離より長くなるように形成されている。したがって、上リンク棒22及び下リンク棒23は、互いにリンク長さの異なる不平行のリンク機構として構成され、それぞれ2個ずつ設けられている。駆動シリンダ24のシリンダロッド241は、軸部材242によって下リンク棒23の一端231に接続された梃部材233と連結されている。本体部21には、上リンク棒22の他端222が上方へ回動したとき、上リンク棒22の一端221付近に当接するストッパ部材214が位置調整可能に装着されている。なお、駆動シリンダ24は、上リンク棒22の一端221と接続されてもよい。
【0027】
本体部21の下端には、作業者が操作できる高さに略L字状に形成された操作アーム部材3が装着されている。本体部21の上端には、水平方向に回動可能に形成された回転盤4と、回転盤4の上端に連結されたバランサ装置5とを備えている。バランサ装置5は、回転盤4の上端に連結された軸受部53と、軸受部53に連結された平行リンク部51、52とを備え、インパネモジュールMを保持する保持具1及び支持機構2を重量バランスをとりながら平行に移動させることができる。
【0028】
図4に示すように、駆動シリンダ24のシリンダロッド241を伸長させると、梃部材233に接続された下リンク棒23が、軸部材213を中心に時計回りに回動する。このとき、下リンク棒23の他端232と軸部材112によって連結された保持具1の連結部11は、上方へ移動する。しかし、上リンク棒22及び下リンク棒23は、互いにリンク長さの異なる不平行のリンク機構として構成されているので、上リンク棒22の他端222は、下リンク棒23の他端232より後方へ移動する。そのため、上リンク棒22及び下リンク棒23の他端222、232に軸部材111、112によって連結された保持具1の連結部11は、上方へ移動しながら、保持具1の受座151を下方に回動させる。ここで、円軌跡G1は、下リンク棒23の他端232が下方に位置するとき、軸部材112を回動中心として、インパネモジュールMの重心gが回動する軌跡を表す。また、円軌跡G2は、下リンク棒23の他端232が上方に位置するとき、軸部材112を回動中心として、インパネモジュールMの重心gが回動する軌跡を表す。インパネモジュールMの回動中心となる軸部材112が上方へ移動することによって、インパネモジュールMが上下動する距離を縮小させることができる。このとき、ストッパ部材214の上下位置を調節することによって、保持具1の回動中心(軸部材112)の昇降量Hと、保持具1の回動角度θとを、簡単に調整することができる。ここでは、保持具1の回動角度θは、略90度が好ましい。なお、作業者は、操作アーム部材3を操作することによって、保持具1に保持させたインパネモジュールMを任意の位置へ簡単に搬送でき、操作アーム部材3から手を放しても、インパネモジュールMをその位置で静止させることができる。
【0029】
<インパネモジュールの投入手順>
次に、本実施形態に係る搭載補助装置を用いてインパネモジュールを車体ボディの所定位置に投入する手順を、
図5〜
図8を用いて説明する。
図5に、
図3に示す搭載補助装置によってラインサイドに保管されたインパネモジュールを保持する状態を表す側面図を示す。
図6に、
図3に示す搭載補助装置によってインパネモジュールを投入する状態(フロントウィンドウ開口部を通過)を表す側面図を示す。
図7に、
図3に示す搭載補助装置によってインパネモジュールを投入する状態(運転席前に移動中)を表す側面図を示す。
図8に、
図3に示す搭載補助装置によってインパネモジュールを投入する状態(運転席前の所定位置で保持)を表す側面図を示す。
【0030】
図5に示すように、車体ボディBを横向きに配置した状態でラインコンベア6上に載置して、紙面垂直方向に搬送させている。インパネモジュールMは、運転席前の所定位置に組み付けられる正規の姿勢でパレットPに収納された状態で、ラインサイド7に保管されている。搭載補助装置10における駆動シリンダ24のシリンダロッド241を伸長させることによって、保持具1のアーム部材15を水平状態に回動させて、パレットPに収納されたインパネモジュールMを下方から保持する。このとき、アーム部材15の受座151に立設された基準ピン152を、インパネモジュールMの基準孔M9に係合させる。
【0031】
次に、
図6に示すように、支持機構2は、保持具1に保持するインパネモジュールMの前面MAが下方を向いた姿勢で、当該インパネモジュールMがフロントウィンドウ開口部BKを通過するように、保持具1を支持する。具体的には、駆動シリンダ24のシリンダロッド241を短縮させて、保持具1のアーム部材15を起立状態にして、インパネモジュールMを略90度回動させる。基準ピン152は、インパネモジュールMの重心g近傍で基準孔M9と係合しているので、保持具1はインパネモジュールMを安定して保持できる。インパネモジュールMのメータ表示部M1とダクト部M6は、水平状に配置される。この状態で、保持具1の第3支持部材14を車体ボディBのフロントウィンドウ開口部BKのルーフ側フランジ先端から離間させた高さで、インパネモジュールMをフロントウィンドウ開口部BKから車室内に投入する。インパネモジュールMのダクト部M6は、水平状に配置された姿勢で、フロントウィンドウ開口部BKを通過するので、インパネモジュールMの上下方向の寸法を短縮でき、ダクト部M6をフロントウィンドウ開口部BKのフロントパネル側フランジ先端から離間させることができる。なお、このときは、支持機構2と保持具1との連結部11は、車体ボディBのフロントウィンドウ開口部BKの直前に止めることが、干渉を回避する上で好ましい。
【0032】
次に、
図7に示すように、支持機構2は、保持具1に保持されたインパネモジュールMがフロントウィンドウ開口部BKを通過した後に、駆動シリンダ24のシリンダロッド241を伸長させる。これによって、支持機構2と保持具1との連結部11を下方から上方へ移動させながら、フロントウィンドウ開口部BKを通過させる。それと同時に、保持具1に保持したインパネモジュールMを上方から下方へ回動させる。そのため、保持具1が上下方向に回動するときにおけるインパネモジュールMの上下方向への移動距離を縮小させることができる。その結果、インパネモジュールMが、車室内で移動するときにおいて、インパネモジュールMと車体ボディBとが干渉する恐れを低減させることができる。また、支持機構2と保持具1との連結部11は、下方から上方へ移動しながらフロントウィンドウ開口部BKを通過するので、当該連結部11がフロントウィンドウ開口部BKと干渉する恐れも低減できる。
【0033】
次に、
図8に示すように、更に保持具1を上下方向に回動させることによって、インパネモジュールMを運転席前の所定位置に移動させながら、車体ボディBに組み付ける正規の姿勢に回動させる。その後、保持具1がインパネモジュールMを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢で保持した状態で、作業者はインパネモジュールMを車体ボディBに組み付ける。これによって、作業者は、インパネモジュールMの重量を支えることなく、車体ボディBに簡単に組み付けることができる。
【0034】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るインパネモジュールの搭載補助装置10によれば、支持機構2は、保持具1に保持されたインパネモジュールMがフロントウィンドウ開口部BKを通過した後に、保持具1を上下方向に回動させることによって、インパネモジュールMを運転席前の所定位置に移動させながら、車体ボディBに組み付ける正規の姿勢に回動させるので、インパネモジュールMをフロントウィンドウ開口部BKとの干渉を回避できる姿勢で車室内に投入し、その後、保持具1がインパネモジュールMを運転席前の所定位置に組み付ける正規の姿勢で保持した状態で、作業者はインパネモジュールMを車体ボディBに組み付けることができる。そのため、作業者は、インパネモジュールMの重量を支えることなく、車体ボディBに簡単に組み付けることができる。その結果、インパネモジュールMの搭載作業に対する作業者の負担を大幅に低減することができる。
よって、本実施形態によれば、インパネモジュールMを車体ボディBのフロントウィンドウ開口部BKから運転席の所定位置まで簡単に投入でき、作業者に対する負担を軽減できるインパネモジュールMの搭載補助装置10を提供することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、支持機構2は、保持具1に保持されたインパネモジュールMがフロントウィンドウ開口部BKを通過した後に、支持機構2と保持具1との連結部11を下方から上方へ移動させながら、保持具1に保持したインパネモジュールMを上方から下方へ回動させるので、インパネモジュールMを上下方向に回動させるときにおけるインパネモジュールMの上下方向への移動距離を縮小させることができる。そのため、インパネモジュールMが、車室内で移動するときにおいて、インパネモジュールMと車体ボディBとが干渉する恐れを、より一層低減させることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、支持機構2は、保持具1に保持するインパネモジュールMの前面MAが下方を向いた姿勢で、当該インパネモジュールMがフロントウィンドウ開口部BKを通過するように、保持具1を支持するので、インパネモジュールMの下方に取り付けられたダクト部M6や上方に取り付けられたメータ表示部M1等の上下方向突出部を略水平方向へ回動させた状態で、インパネモジュールMをフロントウィンドウ開口部BKを通過させることができる。そのため、インパネモジュールMがフロントウィンドウ開口部BKを通過するとき、ダクト部M6やメータ表示部M1等の上下方向突出部とフロントウィンドウ開口部BKとが干渉する恐れを、より一層低減させることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、支持機構2には、本体部21と、一端221、231同士が本体部21に上下方向で所定の軸間距離を有して軸支された上リンク棒22及び下リンク棒23と、本体部21に装着され上リンク棒22又は下リンク棒23の一端221、231と接続された駆動装置24とを備え、上リンク棒22の他端222と下リンク棒23の他端232とが、一端221、231同士の軸間距離より上下方向で短い軸間距離を有して保持具1との連結部11に回動可能に連結されているので、上リンク棒22又は下リンク棒23の一端221、231と接続された駆動装置24を作動させることによって、上リンク棒22及び下リンク棒23の他端222、232に連結された保持具1の連結部11を上下動させながら、保持具1を上下方向に回動させることができる。そのため、保持具1における上下動と上下方向への回動とを、1つの駆動装置24によって簡単に作動させることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、保持具1は、インパネモジュールMの車両上方を経由して車両後方からインパネモジュールMに延伸されたアーム部材15、16によってインパネモジュールMを保持するので、インパネモジュールMをフロントウィンドウ開口部BKを通過させた後に運転席前の所定位置に移動させるとき、アーム部材15、16をインパネモジュールMの車両後方に配置した状態で移動させることができる。そのため、インパネモジュールMを運転席前の所定位置に移動させるとき、インパネモジュールMに延伸されたアーム部材15、16が、車体ボディBと干渉する恐れを低減させることができる。
【0039】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更することができる。例えば、本実施形態に係る搭載補助装置10では、支持機構2には、本体部21と、一端221、231同士が本体部21に上下方向で所定の軸間距離を有して軸支された上リンク棒22及び下リンク棒23と、本体部21に装着され上リンク棒22又は下リンク棒23の一端221、231と接続された駆動装置24とを備え、上リンク棒22の他端222と下リンク棒23の他端232とが、一端221、231同士の軸間距離より上下方向で短い軸間距離を有して保持具1との連結部11に回動可能に連結されている構成であるが、これに限る必要はない。
例えば、支持機構には、本体部と、一端が本体部に軸支された単一のリンク棒と、本体部に装着され単一のリンク棒の一端と接続された駆動装置とを備え、単一のリンク棒の他端が保持具との連結部に回動モータを介して連結されている構成でもよい。この場合、駆動装置と回動モータとが互いに連動して作動することによって、支持機構は、保持具に保持されたインパネモジュールがフロントウィンドウ開口部を通過した後に、支持機構と保持具との連結部を下方から上方へ移動させながら、保持具に保持したインパネモジュールを上方から下方へ回動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車両組立てラインにおいて、インパネモジュールを保持して車体ボディのフロントウィンドウ開口部から投入し、運転席前の所定位置に搭載するインパネモジュールの搭載作業を補助する搭載補助装置として利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 保持具
2 支持機構
4 回転盤
3 操作アーム部材
5 バランサ装置
6 ラインコンベア
7 ラインサイド
10 搭載補助装置
11 連結部
15、16 アーム部材
21 本体部
22 上リンク棒
23 下リンク棒
24 駆動シリンダ(駆動装置)
151 受座
161 受座
221 一端
231 一端
222 他端
232 他端
B 車体ボディ
BK フロントウィンドウ開口部
M インパネモジュール