(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図10を参照してマスク付基板、および、凹凸構造付基板の製造方法の一実施の形態を説明する。
[凹凸構造付基板の製造方法]
本実施形態における凹凸構造付基板の製造方法は、粒子膜を含むマスクである第1マスクを形成する第1マスク形成工程、および、レジスト膜からなる第2マスクを形成する第2マスク形成工程から構成される複合マスク工程と、エッチング工程とを含む。
【0015】
図1に示されるように、第1マスク形成工程は、基板11の上面Sに第1マスク21を形成し、マスク付基板の一例として、基板11と第1マスク21とを備える凹凸構造付基板形成用中間体30を形成する。第1マスク21は、単粒子膜Fと固着層23とから構成され、
図1は、基板11に固着層23が形成された状態を示す。また、
図2に示されるように、第1マスク形成工程と第2マスク形成工程とから構成される複合マスク形成工程は、基板11の上面Sに第1マスク21と第2マスク22とからなる複合マスク20を形成し、マスク付基板の一例として、基板11と複合マスク20とを備える凹凸構造付基板形成用中間体30を形成する。そして、エッチング工程は、各凹凸構造付基板形成用中間体30のエッチングを行うことによって、凹凸構造付基板を形成する。
【0016】
[第1マスク形成工程]
第1マスク形成工程は、基板11の上面Sに、平面的に配列された粒子Pからなる単粒子膜Fが形成される単粒子膜形成工程と、単粒子膜Fに含まれる粒子Pを上面Sに固定する固着層23が形成される固着層形成工程とを含む。
【0017】
<単粒子膜形成工程>
単粒子膜形成工程は、基板11の上面Sに単粒子膜Fを形成する。粒子Pを構成する材料として、例えば、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Ni、Wなどの金属、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、MgO
2、CaO
2などの金属酸化物や、Siが挙げられる。また、粒子Pを構成する材料として、SiN、TiNなどの窒化物、SiC、WCなどの炭化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子、その他の半導体材料、無機高分子などが挙げられる。また、粒子Pを構成する材料は、これらのなかの少なくとも2種類を併用することもできる。なお、上述した材料のなかでも、粒子Pを構成する材料は、上面Sに対するエッチング選択比の自由度が高い観点から、無機酸化物であることが好ましい。また、粒子Pを構成する材料は、無機酸化物のなかでもシリカがより好ましい。
【0018】
粒子Pの粒径は、10nm以上10μm以下であることが好ましい。単粒子膜Fは、下記5つの方法のなかのいずれか1つ、あるいは、2つ以上の組み合わせが用いられることによって形成される。
【0019】
・ラングミュア−ブロジェット法(LB法)
・ディップコーティング法
・スピンコーティング法
・スリット(ダイ)コーティング法
・粒子吸着法(電気的方法)
LB法では、水よりも比重が低い溶剤のなかに粒子Pが分散した分散液が用いられ、まず、水の液面に分散液が滴下される。次いで、分散液から溶剤が揮発することによって、粒子Pからなる単粒子膜Fが水面に形成される。そして、水面に形成された単粒子膜Fが、基板11の上面Sに移し取られることによって、基板11の上面Sに単粒子膜Fが形成される。
【0020】
ディップコーティング法では、溶剤のなかに粒子Pが分散した分散液が用いられ、まず、分散液中に基板11が浸漬される。次いで、基板11を分散液中から引き上げることによって、基板11の上面Sに粒子Pからなる単粒子膜Fと溶剤とが付着する。そして、基板11の上面Sの溶剤を乾燥させることによって、基板11の上面Sに単粒子膜Fが形成される。
【0021】
スピンコーティング法では、溶剤のなかに粒子Pが分散した分散液が用いられ、まず、スピンコーターに基板11が設置されて、スピンコーター上に分散液が滴下される。次いで、基板11を回転させることによって、基板11の上面Sに分散液が均一に塗布される。そして、分散液中の溶剤を乾燥させることによって、基板11の上面Sに単粒子膜Fが形成される。
【0022】
スリットコーティング法では、溶剤のなかに粒子Pが分散した分散液が用いられ、まず、スリットコーターに基板11が設置される。次いで、基板11の上面Sに分散液をスリットによって均一な濃度の薄膜として塗工することによって、基板11の上面Sに分散液が均一に塗布される。そして、分散液中の溶剤を乾燥させることによって、基板11の上面Sに単粒子膜Fが形成される。
【0023】
粒子吸着法では、まず、コロイド粒子の懸濁液のなかに基板11が浸漬される。次いで、基板11の上面Sと静電気的に結合した第1層目の粒子層のみが残されるように、第2層目以上の粒子Pが除去される。これによって、基板11の上面Sに単粒子膜Fが形成される。
【0024】
単粒子膜形成工程に用いられる成膜方法は、下記式(1)に示される充填度合いD(%)を15%以下とする方法がよい。なかでも、単層化の精度、膜形成に要する操作の簡便性、単粒子膜Fの面積の拡張性、単粒子膜Fが有する特性の再現性などの点から、LB法が好ましい。
【0025】
充填度合いD[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
式(1)において、Aは粒子Pの平均粒径であり、Bは互いに隣り合う粒子P間のピッチにおける最頻値であり、|B−A|はAとBとの差の絶対値である。
【0026】
充填度合いDは、単粒子膜Fにおいて、粒子Pが最密充填されている度合いを示す指標である。充填度合いDが小さいほど、粒子Pが最密充填されている度合いは高く、粒子Pの間隔が調整された状態であって、単粒子膜Fにおいて粒子Pの位置の精度が高い。単粒子膜Fにおける粒子Pの密度を高める点から、充填度合いDは、10%以下であることが好ましく、1.0%以上3.0%以下であることがより好ましい。
【0027】
粒子Pの平均粒径Aは、単粒子膜Fを構成する粒子Pの平均一次粒径である。粒子Pの平均一次粒径は、粒度分布のピークから求められる。粒度分布は、粒子動的光散乱法によって求められる粒度分布の近似から得られる。なお、充填度合いDを15%以下とするために、粒子Pにおける粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
粒子P間のピッチにおける最頻値は、互いに隣り合う2つの粒子Pにおける頂点と頂点との間の距離の最頻値である。なお、粒子Pが球形であって、粒子P間が隙間なく互いに接しているとき、互いに隣り合う粒子Pの頂点間の距離は、互いに隣り合う粒子Pの中心間の距離である。単粒子膜において充填度合いD(%)が小さいほど、粒子Pの配列は、二次元の六方充填構造に近い、または、複数の二次元の六方充填構造体が集合した多結晶構造体となる。
【0029】
固着層23を構成する材料は、実質的に、融点が100℃以上の物質であり、現像液に対する耐性、具体的には、アルカリ耐性を有することが好ましい。アルカリ耐性を有することの一例は、現像液の一例である水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液に、常温常圧下において、固着層23が15分間浸積されたとき、固着層23における体積の減少分が、浸積される前の固着層23と比べて5%以下、すなわち、溶解率が5%以下である性質をいう。こうした構成によれば、例えば、第2マスク22のパターニングに現像工程が含まれる場合などのように、凹凸構造付基板形成用中間体30がアルカリ液に浸積される工程にて、固着層23が除去されて粒子Pが基板11の上面Sから離脱してしまうことが抑えられる。
【0030】
第2マスク22をフォトリソグラフィまたはナノインプリントによってパターニングした後、第1マスク21および第2マスク22に高温のハードベーク処理を行っても、固着層23を構成する材料の融点が実質的に100℃以上であるため、粒子の配列にずれが生じたり、それに伴い第2マスクが変形したりすることを防ぐことができる。こうした観点から、固着層23を構成する材料の融点は、実質的に、150℃以上であることが好ましく、実質的に、200℃以上であることがより好ましい。
【0031】
また、第2マスク22の形成に際して第2マスクの形状等に欠陥が生じた場合には、欠陥が生じた第2マスク22の除去、すなわち、レジスト膜のリワークが行われ、再度、第2マスク22の形成が行われる場合がある。こうした場合を考慮すると、固着層23を構成する材料は、実質的に、融点が100℃以上の物質であり、かつ、レジスト剥離剤に対する耐性、例えば、アセトンに対する耐性、アミンもしくはアミンおよび水を含むアミン系の薬剤に対する耐性を有することが好ましい。具体的には、一般的なレジスト剥離液であるアセトンに、常温常圧下において、固着層23が1時間浸積されたとき、固着層23における体積の減少分が、浸積される前の固着層23の体積に対して5%以下、すなわち、溶解率が5%以下であることが好ましい。さらに、常温常圧下において、アセトンに固着層23を浸積し、かつ、35kHzの発振周波数で100Wの超音波が印加される超音波処理を30分間行ったとき、固着層23における体積の減少分が、浸積される前の固着層23の体積に対して5%以下、すなわち、溶解率が5%以下であることが好ましい。こうした構成によれば、レジスト膜のリワークが行われる場合であっても、リワークの際に固着層23が除去されて粒子Pが基板11の上面Sから離脱することが抑えられる。
【0032】
固着層23を構成する材料としては、無機系または有機系コート剤から選択して使用することができる。無機系コート剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系のアルコキシド加水分解物などを基体とする化合物群、および、シリコーン樹脂系の化合物群が挙げられる。有機系コート剤としては、ビニル系、ポリスチレン系、ポリプロピレン系、ポリアセタール系、アクリル系、酢酸セルロース系、ポリカーボネート系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリアミド系、ポリウレタン系、および、フッ素系が挙げられる。
【0033】
固着層23を構成する材料は、複合マスク20を用いるエッチング工程にて、固着層23の粒子Pに対する選択比が、1より大きい値であって、1.2以上7.0以下となることが好ましい。こうした選択比を有する構成であれば、単粒子膜Fのエッチングよりも固着層23のエッチングが優先的に進行し、単粒子膜Fのみが上面Sに残存する状態で、基板11のエッチングを行うことが可能となる。そして、上面Sのなかで粒子Pによって覆われる部位を突部とする凹凸構造を、基板11に形成することが可能となる。他方、固着層23の粒子Pに対する選択比は、1より小さい値であってもよく、0.1以上0.9以下であってもよい。こうした選択比を有する構成であれば、固着層23のエッチングよりも単粒子膜Fのエッチングが優先的に進行し、固着層23のみが上面Sに残存する状態で、基板11のエッチングを行うことが可能となる。すなわち、上面Sのなかで固着層23によって覆われる部位を突部とする凹凸構造を基板11に形成することが可能となる。
【0034】
固着層23の膜厚は、基板11の上面Sから固着層23の上端までの厚さであり、粒子Pの平均粒径Aの0.3倍以上2.0倍以下であることが好ましく、粒子Pの平均粒径Aの0.5倍を超え1.5倍以下であることが更に好ましい。また、粒子Pの平均粒径Aが1μm以上である場合には、固着層23の膜厚から粒子Pの平均粒径Aを引いた値が300nm以下であることが好ましい。
【0035】
固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.3倍以上であれば、単粒子膜Fの厚さ方向に単粒子膜Fを貫通する孔などの隙間が単粒子膜Fに形成されることが抑えられる。そして、レジスト材料を含む液状体を第1マスク21の上に塗布することによって第2マスク22が形成されるときに、レジスト材料を含む液状体が単粒子膜Fの隙間に充填されてしまうことを抑えることができる。第2マスク22のレジスト材料によって単粒子膜Fの隙間が充填されてしまうと、単粒子膜Fによるマスクとしての効果が低下し、第1マスク21に追従した凹凸の形成が十分に進行しない場合がある。
【0036】
固着層23と粒子Pの界面には接着力が発生する。この接着力は界面の面積が大きいほど増すため、固着層の厚さが増すほど粒子Pの保持力が高まる。加えて、固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.5倍を超えると、
図3に示すように、固着層23が各粒子Pを包み込むように、固着層23が粒子P間に充填される。この場合、粒子Pと固着層23との間に物理的アンカー効果が発生して粒子の保持力が増す。固着層23の上面のなかで粒子Pが突出する部分には開口部が形成されており、開口部における周回線の直径は、粒子Pが有する粒径よりも小さい。上述した物理的アンカー効果とは、固着層23の開口部における周回線の直径が粒子Pの粒径よりも小さく、それによって、粒子が固着層23の開口部を通過できなくなることによって得られるものである。このように、固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.5倍を超えると、界面接着力が高まることと、アンカー効果が発現することとによって、粒子Pは固着層23に安定的に保持される。
【0037】
固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの2.0倍以下であれば、第1マスク21と第2マスク22の間の固着層23が、基板11の上面Sに沿って進むエッチングガスに曝されて消失し、それによって、第2マスク22がエッチングの途中で剥離してしまうことを抑えることができる。
【0038】
固着層形成溶液の第1マスク21への供給方法としては、スピンコート法、スリット&スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法等の公知の塗布法を用いることができる。固着層23は、固着層形成溶液が塗布された後、その固着層形成溶液を乾燥して、加熱、および、固化することによって、粒子Pを固定するための力を増す。
【0039】
[第2マスク形成工程]
第2マスク形成工程では、基板11の上において、第1マスク21に第2マスク22が積層される。第2マスク22は、所定の形状にパターニングされたマスクである。第2マスク22は、レジスト材料を含む液状体が第1マスク21の上に塗布された後、塗布されたレジスト材料が所定の形状にパターニングされることによって形成される。
【0040】
レジスト材料としては、公知の感光性機能性高分子材料等、好適なパターニングが可能であるとともにエッチング工程におけるマスクとして適した材料が用いられればよい。レジスト材料を含む液状体は、例えば、ポリマー、感光剤、添加剤、および、溶剤を主成分とする混合物である。レジスト材料のパターニング方法としては、ナノインプリントもしくはフォトリソグラフィが用いられる。
【0041】
レジスト材料のパターニングによって、第2マスク22の下層である第1マスク21上に複数のマスク要素から構成される第2マスク22が形成される。第2マスク22を構成する各マスク要素は、第2マスク22においてマスクとして機能する構造体の最小単位であって、本実施形態では、第1マスク21から突き出た突出部24である。
【0042】
突出部24の形状は、特に限定されず、突出部24は、半球状、円錐状、および、角錐状のように、基端から先端に向かって細くなる錐体状を有していてもよいし、半球の頂部が切り取られた形状や、円錐台状や、角錐台状のように、先端部分が平坦に形成された錐台状を有していてもよい。あるいは、突出部24は、直方体状を有していてもよいし、基板11の上面Sと対向する方向から見て、突出部24は基板11の上面Sに沿って1つの方向に延びる線状に形成されていてもよい。また、複数の突出部24には、互いに異なる形状の突出部24が含まれてもよい。基板11の上面Sと対向する方向から見て、複数の突出部24は、規則的に配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。
【0043】
基板11の上面Sと対向する方向から見て、突出部24は、第1マスク21を構成する粒子Pよりも大きい。凹凸構造付基板が、例えば半導体発光素子等にて光拡散基板として用いられるとき、基板11の上面Sと対向する方向から見て、突出部24の有する外形の最大寸法は、粒子Pの平均粒径Aに対し、2倍以上、かつ、100倍以下であることが好ましい。また、凹凸構造付基板が、例えば反射防止基板として用いられるとき、基板11の上面Sと対向する方向から見て、突出部24の有する外形の最大寸法は、粒子Pの平均粒径Aに対し、2倍以上、かつ、100倍以下であることが好ましい。
【0044】
ここで、第2マスク22は、第1マスク21への液状体の塗布、および、塗布された液状体の硬化によって形成されるため、第1マスク21の表面が段差面である以上、こうした段差を埋める形状を第2マスク22の底面は有する。すなわち、第2マスク22の底面は、第1マスク21の表面の形状に追従した面形状を有する。
【0045】
以上のように、複合マスク形成工程では、第1マスク21と第2マスク22との積み重なりによって、複合マスク20が形成される。そして、複合マスク20が形成された基板11の上面Sには、第2マスク22の突出部24に覆われる部分と、互いに隣り合う突出部24の隙間において第1マスク21の粒子Pに覆われる部分と、突出部24および粒子Pのいずれにも覆われない部分とが区画される。
【0046】
[エッチング工程]
エッチング工程では、複合マスク20を用いて基板11の上面Sのエッチングが行われる。詳細には、第2マスク22をマスクとして上面Sがエッチングされ、かつ、第2マスク22の突出部24間に位置する第1マスク21をマスクとして上面Sがエッチングされる。さらに、突出部24の縮小に伴って、突出部24に覆われていた粒子Pをマスクとして、上面Sがエッチングされる。すなわち、複合マスク20が用いられるエッチング工程においては、第2マスク22を用いたエッチングと第1マスク21を用いたエッチングとが同時に行われる。
【0047】
エッチング工程では、エッチングガスの種類、エッチングガスの流速、エッチング時間を選択することによって、第1マスク21、第2マスク22、および、基板11のエッチングレートを制御し、所望する凹凸形状を得ることができる。
【0048】
(エッチング条件例1)
基板11の上面Sに凹凸構造を形成するエッチング条件の一例を示す。粒子Pのエッチング速度に対する上面Sのエッチング速度の割合は、粒子Pを構成する材料と基板11を構成する材料とによって決まる。所望する凹凸構造の形状は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスが所望する形状に応じて適切に選択されることによって得られる。例えば、基板11がサファイアであり、粒子Pがシリカである場合、Cl
2、BCl
3、SiCl
4、HBr、HI、HCl、Arからなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。
【0049】
図4、および、
図5に示すように、上記エッチング条件例で複合マスク20を用いたエッチングを行うと、突出部24間でマスクされていた基板11の上面Sに、大突部12と小突部13の複合構造体が形成される。なお、
図5の例では、互いに隣り合う複合構造体の間に小突部15が形成されているが、エッチング条件を変更すること、例えば、エッチング時間を長くすることによって、互いに隣り合う複合構造体の間に形成される小突部15を消失させることも可能である。
【0050】
エッチング条件例1を用いたエッチングを行う前に、下記エッチング条件例2を用いたエッチングを行ってもよい。
(エッチング条件例2)
エッチング条件例2は、互いに隣り合う大突部12の間に位置する平坦部14を拡大させること、および、平坦部14の平面性を高めることの少なくとも一方を実現するためのエッチング条件である。エッチング条件例2では、粒子Pのエッチング速度に対する上面Sのエッチング速度の割合が、エッチング条件例1よりも小さい25%以下であることが好ましい。粒子Pのエッチング速度に対する上面Sのエッチング速度の割合は、15%以下であることがより好ましく、特に10%以下であることが好ましい。
【0051】
なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択することによって得られる。例えば、基板11がサファイアであり、粒子Pがシリカである場合には、CF
4、SF
6、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、C
4F
8、CH
2F
2、NF
3からなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。また、基板11をエッチングすることの必要に応じて、Arなどの希ガスやO
2などの添加ガスをエッチングガスに加えることが好ましい。なお、エッチングガスは、これらに限定されること無く、第1マスク21を構成する粒子Pの材料や第2マスク22を構成するレジスト材料や基板11の材料に応じて適宜選択される。
【0052】
上記複合マスク20が積層された基板11をエッチング条件例2でエッチングすると、
図6に示すように、第2マスク22の突出部24間の第1マスク21を構成する粒子Pが縮小しながら、基板11の上面Sに小突部15が形成される。しかし、ここで形成される小突部15は
図4で示す例よりも小さく、このエッチング条件で更にエッチングを行うと、小突部15が消失し、
図7に示すように、第2マスク22の突出部24の間の平坦部14が拡張され、平坦部14における平面性が高まる。
【0053】
こうしたエッチングの進行度合いの差によって、平坦部14に囲まれる部位、すなわち、基板11の上面Sのなかで突出部24と対向していた部位には、平坦部14から突き出た大突部12が形成される。大突部12の形状は、第2マスク22における突出部24の形状とエッチングの条件に準じた形状である。また、大突部12の配置間隔や配置規則等の配列パターンは、第2マスク22における突出部24の配列パターンと同等である。また、大突部12の外表面には、エッチングが開始される前において、基板11の上面Sのなかで突出部24によって覆われていた粒子Pと対向していた部分に、小突部13が形成される。
【0054】
なお、
図8に示すように、突出部24の有する厚みが、突出部24の中央部と突出部24の端部とで同じである複合マスク20を用いて基板11をエッチングすると、
図9、および、
図10に示すように、平坦な頂部を有した大突部12と、大突部12の頂部から突出した小突部13とを有した凹凸構造が得られる。
図10が示すように、基板11の上面Sは、紙面の上下方向に延びる線状を有する大突部12、錐体状を有する小突部13、および、平坦に形成された平坦部14から構成された凹凸構造を有している。
【0055】
図10に示した大突部12が平面視ライン状に延びた形状は、ライン状に延びた直方体状の突出部24を有する第2マスク22を用いてエッチングすることにより得られる。平面視ライン状に延び、突出部24の中央部が突出部24の端部よりも厚い断面形状を有する第2マスク22を用いてエッチングすれば、断面形状が
図7に示した形状であり、平面視形状が
図10に示した形状である凹凸構造を形成できる。ライン状に長く延びた直方体状の突出部24を平面視円または多角形である柱状の突出部24を有する第2マスク22を用いてエッチングを行えば、円柱状または角柱状の大突部12を形成することができる。
【0056】
ちなみに、
図2に示したように、突出部24の中央部が突出部24の端部よりも厚い複合マスク20を用いて基板11をエッチングすると、エッチングによって形成される大突部も、
図5と
図7とに示したように、大突部12の中央部は大突部12の端部よりも厚い。なお、突出部24の中央部が突出部24の端部よりも厚い複合マスク20は、
図8に示した複合マスク20を加熱処理し、レジスト材料によって構成された突出部24を軟化させ、軟化したレジスト材料の表面張力によって突出部24を半球状に変形させることによって得られる。
【0057】
また、単粒子膜Fを構成する複数の粒子Pの一部、もしくは、全部が消滅する前に、基板11の上面Sのエッチングを停止してもよい。これによれば、エッチングの停止時期に応じて、錐台状のように上記とは異なる形状を有した小突部13を形成することができる。
【0058】
また、粒子Pが消滅した後であって、かつ、互いに隣り合う突出部24の隙間の中央に、粒子Pによって形成された段差が残っているときに、基板11の上面Sのエッチングを停止してもよい。この場合、基板11の上面Sにおいて互いに隣り合う突出部24の隙間の中央に位置していた領域にも、小突部15が形成される。すなわち、平坦部14から突き出た小突部15が形成される。
【0059】
なお、基板11、第1マスク21、および、第2マスク22がエッチングされるエッチング条件は、例えば、基板11とマスクとの選択比が好ましい値となるように設定される。また、複合マスク20を用いるエッチングによって大突部12が所望の大きさとなるように、第2マスク22における突出部24の高さ等が設定される。
【0060】
また、基板11の上面Sのエッチングに用いられるエッチングガスは、エッチング条件例に限定されること無く、第1マスク21を構成する粒子Pの材質や第2マスク22を構成するレジスト材料や基板11の材料に応じて適宜選択される。
【0061】
またあるいは、基板11、第1マスク21、および、第2マスク22がエッチングされる途中で、エッチングの進行に応じて、第1マスク21をマスクとしたエッチングに適したエッチング条件と、第2マスク22をマスクとしたエッチングに適したエッチング条件とが切り換えられてもよい。
【0062】
[作用]
上述した実施形態の作用について説明する。上述の凹凸構造付基板形成用中間体を用いた凹凸構造付基板の製造方法によれば、2種類のマスクの積層体である複合マスク20を用いて基板11がエッチングされることによって、凹凸構造が形成される。こうした製法によれば、一層の粒子膜をマスクとしたエッチングによって形成される凹凸構造にそれとは異なる凹凸を加えることが可能であるため、一層の粒子膜をマスクとしたエッチングによって凹凸構造を形成する方法と比較して、複雑な凹凸構造を形成することができる。特に、第2マスク22は、単粒子膜Fを含む第1マスク21と比較して、マスクの有するマスク要素の形状の設定に関する自由度が高いため、粒子膜のみをマスクとして用いる方法と比較して、多様な凹凸構造を形成することができる。
【0063】
また、第1マスク21が固着層23を含み、固着層23が、単粒子膜Fを構成する粒子P同士を固定するとともに、粒子Pと基板11の上面Sとを固定する。そのため、第1マスク21への第2マスク22の積層に際して、粒子Pが基板11の上面Sから離脱することが抑えられる。
【0064】
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)第2マスク22と、単粒子膜Fを含む第1マスク21とは、マスクの有するマスク要素の形状を互いに変更することが可能であるため、粒子膜のみをマスクとして用いる方法と比較して、多様な凹凸構造を形成することができる。
【0065】
(2)第1マスク21を用いたエッチングと第2マスク22を用いたエッチングとが同時に行われるため、これらのエッチングが別々に行われる方法と比較して、エッチング工程の回数が削減される。それゆえ、凹凸構造付基板の製造工程の工程数を少なくすることができる。
【0066】
(3)第1マスク21に第2マスク22が積層される際に、フォトレジスト材料の現像処理や洗浄等の処理が行われる場合であっても、粒子Pが基板11の上面Sから離脱することが固着層23によって抑えられる。
【0067】
(4)凹凸構造が大突部12と小突部13とを有しているため、発光構造体にて生じた光の進む方向が光の屈折や回折等によって変更される。その結果、発光構造体と基板11との界面での全反射が抑えられるため、光の取り出し効率を高めることができる。また、基板11を透過させて光を外部に取り出す構成を有する半導体発光素子においては、発光構造体が設けられている側とは反対側の面(光取り出し面)を上面Sとすることで、上面Sに沿って広がる平面に対しては臨界角以上の入射角を有する発光光であっても、凹凸構造の斜面に対しては臨界角未満とすることができる。そのため、基板11と空気の界面における光取り出し効率を大幅に改善することができる。
【0068】
(5)平坦部14から小突部15が突き出ている構成であれば、(4)の効果が高められる。平坦部14に小突部13が存在しない構成であれば、(4)の効果に加えて、上面S上に半導体発光素子の材料を結晶成長させるのに適した基板となる。
【0069】
上述した製造方法によって得られる凹凸構造の一例における詳細を以下に説明する。
図11は、
図5や
図7に示した凹凸構造における断面を拡大して示す。
図11に示されるように、複数の小突部13の各々は、大突部12から突き出ている。複数の小突部13の各々は、大突部12に接続する小突部13の基部から先端に向かって細くなる形状を有している。上面Sと対向する平面視において、大突部12は小突部13よりも大きく、詳細には、大突部12に外接する円の半径は、小突部13に外接する円の半径よりも大きい。
【0070】
互いに隣り合う大突部12の間の距離であって、平坦部14と平行な方向に沿った距離は、大突部12のピッチPLである。大突部12の外表面は、小突部13と接続する面である。小突部13と接続する大突部12の面の法線方向において、その小突部13と接続する大突部12の面と、その小突部13の表面との間の距離の最大値は、その小突部13の高さHSである。複数の小突部13の各々において高さHSを有する部位は、その小突部13の頂点であり、互いに隣り合う小突部13の頂点間の距離であって、平坦部14と平行な方向に沿った距離は、小突部13のピッチPSである。
【0071】
大突部12のピッチPLの最頻値は、300nm以上5.0μm以下であることが好ましく、小突部13のピッチPSの最頻値は、100nm以上1.0μm以下であることが好ましい。突部12,13のピッチPL,PSが上記の範囲であれば、上面Sでの光の全反射が抑えられる程度に、上面Sには、それに必要な配置および密度で突部12,13が形成される。
【0072】
図12は、
図5や
図7や
図9に示した凹凸構造における平面構造の一部を拡大して示す。粒子Pが複数の六方充填構造を形成した単粒子膜を第1マスク21として用いて基板11をエッチングした場合、
図12に示すように、複数の小突部13は、六方充填構造TGを構成する。複数の六方充填構造TGから小突部団TLが構成される。複数の小突部団TLは、六方充填構造TGの並ぶ方向、1つの小突部団TLの占める面積、1つの小突部団TLの形状の少なくとも1つが互いに異なる2以上の小突部団TLを含む。すなわち、平面視にて、複数の小突部団TLの少なくとも1つは、他の小突部団TLに対して、六方充填構造TGの並ぶ方向、小突部団TLの大きさ、および、形状の少なくとも1つが不規則である。
【0073】
1つの大突部12の外表面には、1以上の小突部団TLが位置する。例えば、
図12に示される例では、複数の小突部団TLが仮想線A2によって各小突部団TLに区画され、1つの大突部12の外表面には、1つずつ小突部団TLが位置する。仮想線A2によって区画される2つの小突部団TLは、六方充填構造TGの並ぶ方向が互いに異なっている。小突部13の配列パターンは、第1マスク21における粒子Pの配列パターンと同等である。
【0074】
図13〜16を参照して、凹凸構造付基板が有する凹凸形状と固着層23の膜厚との関係を示す一例を説明する。
図13は、上記実施形態における固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.2倍であるマスク付基板によって得られる凹凸構造を示す断面図である。
図14は、上記実施形態における固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.5倍であるマスク付基板によって得られる凹凸構造を示す断面図である。
図15は、上記実施形態におけるマスク付基板から固着層23が割愛された参考例となるマスク付基板によって得られる凹凸構造を示す断面図である。
【0075】
固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.5倍であるマスク付基板によって得られる凹凸構造は、固着層23の膜厚が粒子Pの平均粒径Aの0.2倍であるマスク付基板よりも、小突部13における高さが急峻に変わる形状を有し、より強い光散乱特性や反射防止特性を得られる。一方、固着層23が割愛された参考例のマスク付基板によって得られる凹凸構造は、大突部12上に小突部13が存在するか否かが不明瞭である。こうした凹凸構造の差が生じる要因は以下のように考えられる。
【0076】
すなわち、第1マスク21の上に第2マスク22が形成される際に、第2マスク22の形成材料である液状のフォトレジスト材料が第1マスク21に塗布されるために、第1マスク21を構成する粒子Pの隙間にフォトレジスト材料が浸透し、粒子Pの隙間を埋めてしまう。その結果、上面Sのなかで第1マスク21によって被覆された部分と、第1マスク21によって被覆されていない部分との間で、エッチングレートの差が小さくなるためである。これに対して、上述した各例によるように、フォトレジスト材料よりもエッチングレートが極めて大きい固着層23が粒子Pの隙間を埋めることによって、アスペクト比の大きい小突部13を形成することができる。
【0077】
上述した形態は、以下のように変更することも可能である。
・基板11の上面Sと対向する方向から見て、第2マスク22を構成する突出部24は、第1マスク21を構成する粒子Pよりも小さくてもよい。そして、こうした第1マスク21および第2マスク22が用いられることによって、凹凸構造付基板において、基板11の上面Sと対向する方向から見て、突出部24の形状や配列パターンに準じて形成される突部である第2突部の大きさは、粒子Pの大きさや配列パターンに準じて形成される突部である第1突部の大きさよりも小さくなる。
【0078】
ただし、第2マスク22は、液状体の硬化によって形成されるため、突出部24の大きさが粒子Pよりも大きい方が、その形状の精度を確保することが容易である。そのため、第1マスク21のマスク要素が有する凸部と第2マスク22のマスク要素が有する凸部のうち、相対的に小さい凸部が粒子Pであり、相対的に大きい凸部が突出部24である方が、突出部24が粒子Pよりも小さい構成と比較して、各マスクにおけるマスク要素の形状精度を確保することが容易である。
【0079】
また、凹凸構造付基板においては、規則的に配置された突部の大きさが、不規則に配置された六方充填構造TGから構成される突部の大きさよりも大きい方が、小さな突部の配置の規則性が大きな突部の配置の規則性よりも高い場合と比較して、凹凸構造付基板の上面Sにおける全体的な規則性を凹凸構造付基板において得られやすい。
【0080】
・第2マスク22は、第2マスク22の下層を覆うマスク要素を有していればよく、マスク要素である突出部24の形状や配列パターンは、上記実施形態や変形例で挙げた形状や配列パターンに限定されない。突出部24が規則的に配置される場合、複数の突出部24は、三角格子の格子点上や正方格子の格子点上に位置してもよい。また、第2マスク22は、全体として1つの突出部24を有していてもよく、例えば、第2マスク22は、上記実施形態で例示した形状の凹凸が反転された形状を有し、凹部を取り囲む凸部が1つに繋がった構成を有していてもよい。この場合、マスクとして機能する凹凸の繰り返しの最少単位がマスク要素である。また、第2マスク22は、下層から突出する突出部24を有する構成であれば、突出部24の間にて第2マスク22の下層は露出されていなくてもよく、第2マスク22は下層の全面を覆っていてもよい。
【0081】
また、第2マスク22を構成するマスク要素は、突出部24に加えて、互いに隣接する突出部24を繋ぐ突部を有していてもよい。こうした第2マスク22が用いられることによって、
図16に示されるように、平坦部14から突き出て、かつ、互いに隣り合う大突部12の間を連結する複数のブリッジ部18を備える凹凸構造付基板が形成される。ブリッジ部18は突条形状を有し、ブリッジ部18の高さは大突部12の高さよりも低い。なお、ブリッジ部18の有する形状は、直線形状に限らず、曲線形状であってもよいし、折線形状であってもよく、ブリッジ部18の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。ブリッジ部18の有する形状や配列パターンは、第2マスク22において突出部24を繋ぐ突部の形状や配列パターンによって調整可能である。
【0082】
凹凸構造付基板が半導体発光素子に用いられる場合、ブリッジ部18が形成されることによって、発光構造体にて生じた光がブリッジ部18の位置でも反射等によって進む方向を変えるため、光の取り出し効率がより高められる。また、ブリッジ部18が形成されることによって、基板11の上面Sの凹凸構造がより複雑になるため、結晶欠陥の抑制効果が高められる。
【0083】
・第2マスク22の形成材料は、エッチング工程にてマスクとして機能する材料であれば特に限定されない。第2マスク22は、液体やゾル状物質等の液状体の硬化によって形成されるマスクであればよい。ただし、第2マスク22がレジストマスクである構成では、第2マスク22の形成に微細加工に適した露光技術を用いることが可能であって、第2マスク22を用いたエッチングにも汎用的な技術が利用可能である。したがって、第2マスク22の形成やエッチングが容易である。
【0084】
・単粒子膜Fを構成する粒子Pの粒径は一定でなくてもよく、単粒子膜Fは、互いに異なる粒径の粒子Pを含んでいてもよい。また、第1マスク21にて、粒子Pから構成される粒子膜は、粒子Pが単層に配置された膜でなくてもよく、粒子膜は、粒子Pの積み重ねられた領域を有していてもよい。要は、第1マスク21は、複数の粒子Pから構成される粒子膜と固着層とを含むマスクであればよい。
【0085】
・第1マスク21は、二層以上の単粒子膜Fを含んでいてもよい。例えば、第1マスク21は、第1単粒子膜と、第1単粒子膜に積層されて、第1単粒子膜を構成する粒子Pとは粒径の異なる粒子Pからなる第2単粒子膜とを含む。この場合、上記実施形態で用いられる複合マスク20は、エッチングの際のマスクとして機能する膜として、第1単粒子膜と第2単粒子膜とレジスト膜との3層の膜を有する。
【0086】
上記第1マスク21が複合マスク20を構成する場合、固着層は、積層された単粒子膜の全体に対して一層形成されてもよいし、単粒子膜ごとに形成されてもよい。例えば、上述の例では、第1マスク21は、第1単粒子膜と、第1単粒子膜に積層された第2単粒子膜と、第2単粒子膜の上から第1単粒子膜と第2単粒子膜とを覆う一層の固着層とから構成されてもよい。あるいは、第1マスク21は、第1単粒子膜と、第1単粒子膜を覆う第1固着層と、第1固着層の上に形成された第2単粒子膜と、第2単粒子膜を覆う第2固着層と、から構成されてもよい。
【0087】
第1マスク21が、第1単粒子膜と第2単粒子膜との二層の単粒子膜Fを含むとき、第1単粒子膜と第2単粒子膜のうちで、基板11の上面Sから遠い方の単粒子膜Fである第2単粒子膜を構成する粒子Pの平均粒径Aは、基板11の上面Sに近い方の単粒子膜Fである第1単粒子膜を構成する粒子Pの平均粒径Aよりも大きいことが好ましい。こうした構成によれば、第2単粒子膜を構成する粒子Pの平均粒径Aが第1単粒子膜を構成する粒子Pの平均粒径Aよりも小さい場合と比較して、第1単粒子膜に第2単粒子膜を積層した際に、第2単粒子膜を構成する粒子Pが均一に配置され易い。したがって、凹凸構造を構成する凹凸の配置に偏りが生じることが抑えられ、形状精度が高く、かつ、各々の周期が異なる複数の凹凸のパターンが重ね合わされた凹凸構造付基板を得ることができる。
【0088】
・第1マスク21および第2マスク22に加えて、基板11の上には、第3マスクが形成され、第3マスクを用いたエッチングがさらに行われてもよい。第3マスクは、複数の粒子Pから構成される粒子膜を含むマスクであってもよいし、レジストマスクのように、液状体の硬化によって形成されるマスクであってもよい。なお、マスク付基板において基板11の上に位置するマスクは、複合マスクに限らず、第1マスクのみであってもよい。すなわち、マスク付基板は、複数の粒子Pから構成される単粒子膜Fを含み、複数の粒子Pが、固着層23によって基板11に固着され、その固着層23が、実質的に融点が100℃以上の物質で構成される構成であればよい。
【0089】
・第1マスク21や第2マスク22が形成される前の基板11の上面Sは、非平面でもよい。上記非平面は、第1マスク21、あるいは、第2マスク22をマスクとして形成された凹凸構造と同様の方法によって形成することができる。あるいは、上記非平面は、切削加工、レーザー加工、キャスト加工、サンドブラスト、ショットピーニング等の各種公知の方法を用いて形成することもできる。
【0090】
・凹凸構造付基板の用途は、無機半導体発光素子に限られない。例えば、基板11は、有機半導体デバイスや各種の反射防止材に用いられてもよいし、細胞培養用の基板、凹凸が親液性や撥液性を発現する構造として機能する濡れ性制御基板として用いられてもよい。この場合、基板11の用途に応じた材料が選択されればよく、また、平坦部14は、1つの結晶面に沿って広がる平面でなくとも、平坦な面であればよい。
【0091】
・上記実施形態、および、上記各変形例の各々では、固着層23の粒子Pに対する固着層23の選択比が1よりも大きいエッチング条件で上面Sをエッチングすることによって得られる形状例を図示した。これに対して、
図17は、上記実施形態において粒子Pに対する固着層23の選択比が1より小さい条件で上面Sをエッチングすることによって得られる形状例、すなわち、第1マスク21のマスク要素を固着層23とする例を示す。
図17に示すように、凹凸構造においては、大突部12の表面のうちで粒子Pが位置していた部分に凹部が形成され、反対に、大突部12の表面のうちで粒子Pが位置していなかった部分に凸部が形成されてもよい。こうした凹凸構造であっても、基板11の上面Sに光散乱特性や反射防止特性が付与される。