(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝部は、回転軸方向から見て、前記バックヨークにはみ出さないとともに、前記ステータコアの回転軸方向の一方端面側から他方端面側に渡って貫通するように、前記第2ティースの前記バックヨークに接続される根元側の部分に設けられている、請求項5に記載の回転電機。
前記溝部は、回転軸方向から見て、前記バックヨークにはみ出すとともに、前記ステータコアの回転軸方向の一方端面側から他方端面側に渡って貫通しないように、前記第2ティースの前記バックヨークに接続される根元側の部分に設けられている、請求項7に記載の回転電機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2010−115057号公報の回転電機では、各相のコイルに電流が供給された際(通電時)のトルクリプルの発生を低減することが可能である一方、同相間ティースの内径側の先端部の形状と、異相間ティースの内径側の先端部の形状(磁石に対する吸引力)が互いに異なることに起因して、同相間ティースと異相間ティースとでティースの磁束通過経路の磁気抵抗が同一となる非通電時において、コギングトルク(特に電気角の6次成分)が発生するという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、通電時のトルクリプルを低減しながら、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することが可能な回転電機およびステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における回転電機は、永久磁石が設けられるロータコアと、ロータコアと半径方向に対向するように配置され、複数のティースと、隣接するティース間に位置する複数のスロットとを含むステータコアと、ステータコアのスロットに配置される複数のコイルと、を備え、複数のティースは、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに同相のコイルが配置される第1ティースと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに異相のコイルが配置される第2ティースと、を含み、
ティースのスロット側の側面に回転軸方向に沿って溝部が設けられており、溝部は、第1ティースには設けられずに、第2ティースに設けられており、第2ティースの、
溝部が設けられる部分の半径位置における周方向の幅は、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さい。なお、「同じ半径位置」とは、ロータコアの回転軸(回転中心)からの距離が等しいことを意味する。
【0009】
この発明の第1の局面による回転電機では、上記のように、複数のティースは、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに同相のコイルが配置される第1ティースと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに異相のコイルが配置される第2ティースと、を含み、第2ティースの、ロータコアに対向する対向部以外の磁路を構成する部分の少なくとも一部の周方向の幅は、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さい。これにより、第2ティースの磁路を構成する部分の一部の周方向の幅が第1ティースの周方向の幅よりも小さい分、ロータコアの永久磁石から第2ティースを経由する経路の磁気抵抗が大きくなる。その結果、ロータコアの永久磁石から第2ティースを経由する経路の磁気抵抗と、ロータコアから第1ティースを経由する経路の磁気抵抗とを、略同じにすることができる。これにより、通電時のトルクリプルを低減することができる。また、幅の小さくなる部分を、ティースの内径側の対向部以外の部分に設けることによって、比較的永久磁石に近くて永久磁石からの磁束密度の大きい第2ティースの内径側の先端部(対向部)を面取りする場合と異なり、比較的永久磁石に遠くて永久磁石からの磁束密度の小さい部分に幅の小さくなる部分が配置されるので、溝部が設けられる影響(第1ティースと第2ティースとの形状の差異に起因する影響)が小さい。これにより、比較的永久磁石の磁束密度の大きい第2ティースの内径側の先端部を面取りする場合と異なり、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。その結果、通電時のトルクリプルを低減しながら、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。
【0010】
この発明の第2の局面における回転電機は、永久磁石が設けられるロータコアと、ロータコアと半径方向に対向するように配置され、複数のティースと、隣接するティース間に位置する複数のスロットとを含むステータコアと、ステータコアのスロットに配置される複数のコイルと、を備え、複数のティースは、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに同相のコイルが配置される第1ティースと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに異相のコイルが配置される第2ティースと、を含み、第1ティースのロータコアに対向する対向部と、第2ティースのロータコアに対向する対向部とは、略同じ形状を有しており、
ティースのスロット側の側面に回転軸方向に沿って溝部が設けられており、溝部は、第1ティースには設けられずに、第2ティースに設けられており、第2ティースの、溝部が設けられる部分の半径位置における周方向の幅が、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さくされることにより、コイルへの通電時において、第1ティースの磁気抵抗と第2ティースの磁気抵抗とが略同じになるように構成されている。
【0011】
この発明の第2の局面による回転電機では、上記のように、第1ティースのロータコアに対向する対向部と、第2ティースのロータコアに対向する対向部とは、略同じ形状を有しており、コイルへの通電時において、第1ティースの磁気抵抗と第2ティースの磁気抵抗とが略同じになるように構成されている。これにより、通電時のトルクリプルを低減することができる。また、第1ティースのロータコアに対向する対向部と、第2ティースのロータコアに対向する対向部とは、略同じ形状を有していることによって、比較的永久磁石に近くて永久磁石からの磁束密度の大きい第2ティースの内径側の先端部(対向部)を面取りする場合と異なり、第1ティースと第2ティースとの形状の差異に起因する影響が小さい。これにより、比較的永久磁石の磁束密度の大きい第2ティースの内径側の先端部を面取りする場合と異なり、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。その結果、通電時のトルクリプルを低減しながら、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。
【0012】
この発明の第3の局面におけるステータは、永久磁石が設けられるロータコアと半径方向に対向するように配置され、複数のティースと、隣接するティース間に位置する複数のスロットとを含むステータコアと、ステータコアのスロットに配置される複数のコイルと、を備え、複数のティースは、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに同相のコイルが配置される第1ティースと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに異相のコイルが配置される第2ティースと、を含み、
ティースのスロット側の側面に回転軸方向に沿って溝部が設けられており、溝部は、第1ティースには設けられずに、第2ティースに設けられており、第2ティースの、
溝部が設けられる部分の半径位置における周方向の幅は、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さい。
【0013】
この発明の第3の局面によるステータでは、上記のように、複数のティースは、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに同相のコイルが配置される第1ティースと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロットに異相のコイルが配置される第2ティースと、を含み、第2ティースの、ロータコアに対向する対向部以外の磁路を構成する部分の少なくとも一部の周方向の幅は、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さい。これにより、第2ティースの磁路を構成する部分の一部の周方向の幅が第1ティースの周方向の幅よりも小さい分、ロータコアの永久磁石から第2ティースを経由する経路の磁気抵抗が大きくなる。その結果、ロータコアの永久磁石から第2ティースを経由する経路の磁気抵抗と、ロータコアから第1ティースを経由する経路の磁気抵抗とを、略同じにすることができる。これにより、通電時のトルクリプルを低減することができる。また、幅の小さくなる部分を、ティースの内径側の対向部以外の部分に設けることによって、比較的永久磁石に近くて永久磁石からの磁束密度の大きい第2ティースの内径側の先端部(対向部)を面取りする場合と異なり、比較的永久磁石に遠くて永久磁石からの磁束密度の小さい部分に幅の小さくなる部分が配置されるので、溝部が設けられる影響(第1ティースと第2ティースとの形状の差異に起因する影響)が小さい。これにより、比較的永久磁石の磁束密度の大きい第2ティースの内径側の先端部を面取りする場合と異なり、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。その結果、通電時のトルクリプルを低減しながら、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することが可能なステータを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、通電時のトルクリプルを低減しながら、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
(回転電機の構造)
図1〜
図4を参照して、第1実施形態による回転電機100の構造について説明する。
【0018】
図1に示すように、回転電機100は、ロータコア10(ロータ1)と、ステータコア20(ステータ2)とを有する。
【0019】
ロータコア10には、永久磁石11が設けられている。永久磁石11は、一対の永久磁石11aおよび11bにより、1つの磁極が形成されている。永久磁石11aおよび11bは、回転軸方向から見て、半径方向に沿った線分A1に対して略対称に配置されている。また、永久磁石11は、外径側(
図2のB1方向側)がN極であり内径側(
図2のB2方向側)がS極の永久磁石111と、外径側がS極であり内径側がN極の永久磁石112とを含む。また、永久磁石111と永久磁石112とは、周方向に沿って、交互に配置されている。なお、「回転軸方向から見て」とは、図示しないロータが回転する回転軸C(
図1参照)方向から見ることを意味する。
【0020】
また、永久磁石11aおよび11bの周方向の両側には、回転軸方向に沿って、ロータコア10の一方端面から他方端面に渡って貫通する貫通孔12が設けられている。
【0021】
また、永久磁石11は、ロータコア10に複数(第1実施形態では、16個)設けられている。すなわち、極数は、16である。
【0022】
また、ステータコア20は、ロータコア10と半径方向に対向するように配置されている。また、ステータコア20は、複数(第1実施形態では、96個)のティース21と、隣接するティース21間に位置する複数(第1実施形態では、96個)のスロット22とを含む。
【0023】
また、複数のスロット22には、コイル30が配置されている。コイル30は、平角導線31(
図2参照)が巻回することにより形成された同芯巻コイルからなる。そして、コイル30は、周方向に隣り合うように配置されるスロット22に巻回されるように構成されている。また、
図2に示すように、コイル30は、3相のコイル30a(U相)、コイル30b(V相)、コイル30c(W相)を含む。
【0024】
また、
図2に示すように、複数のティース21は、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に同相のコイル30が配置される第1ティース21aと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に異相のコイル30が配置される第2ティース21bとを含む。なお、「周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に同相のコイル30が配置される」とは、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に、同じ相のコイル30が配置される場合(U相のコイル30a同士、V相のコイル30b同士、または、W相のコイル30c同士が配置される場合)を意味する。また、「周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に異相のコイル30が配置される」とは、周方向の一方側に隣接するスロット22に、U相、V相またはW相のいずれかのコイル30が配置された場合において、他方側に隣接するスロット22には一方側に隣接するスロット22に配置された相以外の相のコイル30が配置されることを意味する。たとえば、第1ティース21aの周方向の一方側(R1方向側)と他方側(R2方向側)とに隣接するスロット22aおよび22bには、U相のコイル30aが配置されている。また、第2ティース21bの周方向の一方側(R1方向側)のスロット22bには、U相のコイル30aが配置されているとともに、第2ティース21bの周方向の他方側(R2方向側)のスロット22cには、V相のコイル30bが配置されている。
【0025】
また、
図3に示すように、平角導線31(
図2参照)が巻回することにより形成されたコイル30が配置されるスロット22は、内径側から外径側に向かって、周方向の幅W1が略一定である。そして、スロット22の周方向の幅W1が内径側から外径側に向かって略一定であるので、スロット22に隣接するティース21は、内径側から外径側に向かって、周方向の幅W2が徐々に大きくなる。
【0026】
ここで、第1実施形態では、
図2に示すように、第2ティース21bの、ロータコア10に対向する先端部21d以外の磁路を構成する部分の少なくとも一部の周方向の幅W3は、同じ半径位置における、第1ティース21aの周方向の幅W11よりも小さい。具体的には、第2ティース21bの、後述する溝部23が設けられている部分の周方向の幅W3が、同じ半径位置における、第1ティース21aの周方向の幅W11よりも小さい。また、第2ティース21bの、溝部23が設けられている部分以外の部分の周方向の幅は、同じ半径位置における、第1ティース21aの周方向の幅と略同じである。なお、先端部21dは、特許請求の範囲の「(第2ティースの)対向部」の一例である。
【0027】
また、第1実施形態では、ティース21のスロット22側(周方向側)の側面21cで、かつ、ティース21の内径側の先端部21d以外の部分には、少なくとも一部に回転軸方向に沿って溝部23が設けられている。溝部23は、第1ティース21aには設けられずに、第2ティース21bに設けられている。なお、第1ティース21aおよび第2ティース21bは、それぞれ、複数設けられている。そして、溝部23は、複数の第1ティース21aの全てに設けられずに、複数の第2ティース21bの全てに設けられている。
【0028】
また、第1実施形態では、溝部23は、第2ティース21bの外径側の部分に設けられている。具体的には、ステータコア20は、ステータコア20の外径側に配置されるバックヨーク24を含んでいる。また、ティース21は、バックヨーク24から内径側に向かって延びるように設けられている。なお、バックヨーク24は、
図3のステータコア20に記された点線よりも外径側の部分である。そして、溝部23は、回転軸方向から見て、バックヨーク24にはみ出さないように、第2ティース21bのバックヨーク24に接続される根元側の部分21eに設けられている。また、溝部23は、スロット22に連通している。そして、回転軸方向から見て、溝部23は、スロット22の半径方向外側の端部22d近傍から、周方向に延びるように設けられている。
【0029】
また、第1実施形態では、溝部23は、回転軸方向から見て、第2ティース21bの周方向の一方側(R1方向側)と他方側(R2方向側)との両方に設けられている。すなわち、溝部23aが周方向の一方側(R1方向側)に設けられ、溝部23bが周方向の他方側(R2方向側)に設けられている。なお、溝部23aおよび溝部23bは、回転軸方向から見て、半径方向に沿った線分A2(
図2参照)に対して、略対称な形状を有する。
【0030】
また、第1実施形態では、回転軸方向から見て、第2ティース21bの溝部23が設けられている部分において、第2ティース21bの溝部23が設けられる部分の周方向の幅W3は、第2ティース21bの内径側の先端部21dの周方向の幅W4以上(W3≧W4)である。具体的には、溝部23aのR2方向側の端部231aから、溝部23bのR1方向側の端部231bの周方向の幅W3(溝部23aと23bとの間の最も小さい幅)が、第2ティース21bの内径側の先端部21dの周方向の幅W4以上である。
【0031】
また、第1実施形態では、溝部23は、回転軸方向から見て、内径側から外径側に向かって、周方向の幅W5が大きくなる(徐々に大きくなる)ように形成されている。すなわち、溝部23は、内径側の端部において、幅W5が最も小さく、外径側の端部において、幅W5が最も大きくなる。また、溝部23は、回転軸方向から見て、略三角形形状を有する。
【0032】
また、第1実施形態では、溝部23は、回転軸方向から見て、バックヨーク24にはみ出さないとともに、
図4に示すように、ステータコア20の回転軸方向の一方端面20a側から他方端面20b側に渡って貫通するように、第2ティース21bのバックヨーク24に接続される根元側の部分21eに設けられている。また、溝部23は、回転軸方向に沿って、略一定の幅W6を有する。
【0033】
また、第1実施形態では、
図2に示すように、第1ティース21aのロータコア10に対向する先端部21fと、第2ティース21bのロータコア10に対向する先端部21dとは、略同じ形状を有している。そして、コイル30への通電時において、第1ティース21aの磁気抵抗と第2ティース21bの磁気抵抗とが略同じになるように構成されている。具体的には、第2ティース21bの、ロータコア10に対向する先端部21d以外の磁路を構成する部分の少なくとも一部の周方向の幅W3が、同じ半径位置における、第1ティース21aの周方向の幅W11よりも小さくされることにより、コイル30への通電時において、第1ティース21aの磁気抵抗と第2ティース21bの磁気抵抗とが略同じになるように構成されている。詳細には、第2ティース21bの、溝部23が設けられる部分の半径位置における周方向の幅W3が、同じ半径位置における、第1ティース21aの周方向の幅W11よりも小さくされることにより、コイル30への通電時において、第1ティース21aの磁気抵抗と第2ティース21bの磁気抵抗とが略同じになるように構成されている。なお、先端部21fは、特許請求の範囲の「(第1ティースの)対向部」の一例である。
【0034】
(シミュレーション)
次に、第1実施形態の溝部23による非通電時のコギングトルクの低減を確認するために行ったシミュレーションについて、比較例による回転電機300と比較しながら説明する。
【0035】
図5に示すように、比較例による回転電機300では、隣接するスロット322に異相のコイル330が配置される第2ティース321bの内径側の先端部321dが面取りされている。一方、隣接するスロット322に同相のコイル330が配置される第1ティース321aの内径側の先端部321eは面取りされずに、角形状を有する。
【0036】
(非通電時のコギングトルク)
図6では、横軸は、時間(電気角)を表し、縦軸は、第1ティース21a(第1ティース321a)に発生するトルクと、第2ティース21b(第2ティース321b)に発生するトルクとの差を表している。
図6に示すように、比較例による回転電機300では、トルクの差が、時間の経過(電気角)に伴って、正または負に振動していることが確認された。すなわち、比較例による回転電機300では、非通電時のコギングトルクが確認された。一方、第1実施形態による回転電機100では、時間の経過(電気角)に関わらず、トルクの差が略ゼロになることが確認された。すなわち、第1実施形態による回転電機100では、非通電時のコギングトルクが低減されることが確認された。
【0037】
また、
図7は、第1ティース21a(第1ティース321a)に発生するトルクの実効値と、第2ティース21b(第2ティース321b)に発生するトルクの実効値との差を表している。
図7に示すように、比較例による回転電機300では、実効値の差が7.7%になる一方、第1実施形態による回転電機100では、0.1%になることが確認された。すなわち、実効値で見た場合でも、第1実施形態による回転電機100では、非通電時のコギングトルクが低減されることが確認された。
【0038】
また、
図8は、コギングトルクを形成する高調波成分のうちの6次の高調波成分を表している。
図8に示すように、比較例による回転電機300では、6次の高調波成分が比較的大きい一方、第1実施形態による回転電機100では、6次の高調波成分が比較例による回転電機300に比べて大きく低減されていることが確認された。
【0039】
このように、溝部23によりコギングトルクが低減される理由は、以下のように考えられる。一般的に、回転電機では、第1ティースおよび第2ティースの形状の差異に起因して、非通電時のコギングトルクが発生すると考えられる。また、
図9に示すように、永久磁石11から発生する磁束(F)は、ティース21の内径側の先端部21dを通過するとともに、ティース21の外径側の部分も通過する。ここで、永久磁石11から発生する磁束のうち、ティース21の内径側の先端部21dを通過する磁束は、ティース21の外径側の部分を通過する磁束よりも磁束密度が大きい。このため、比較例による回転電機300のように、比較的磁束密度の大きい第2ティース321bの内径側の先端部321dを面取りした場合、第2ティース321bを通過する磁束による非通電時のトルクと、第1ティース321aを通過する磁束による非通電時のトルクとの差が、磁束密度が大きい分、大きくなる。一方、第1実施形態による回転電機100では、溝部23が第2ティース21bの根元側の部分21e(外径側)に設けられている。そして、第2ティース21bの根元側の部分21eでは、内径側の先端部21dに比べて、比較的磁束密度が小さい。すなわち、第2ティース21bを通過する磁束による非通電時のトルクと、第1ティース21aを通過する磁束による非通電時のトルクとの差が、磁束密度が小さい分、小さくなる。その結果、比較例による回転電機300よりも、第1実施形態による回転電機100の方が非通電時のコギングトルクが小さくなったと考えられる。
【0040】
(通電時のトルクリプル)
第1実施形態による回転電機100、および、比較例による回転電機300において、通電時のトルクリプルについても、シミュレーションを行った。その結果、第1実施形態による回転電機100と、比較例による回転電機300とでは、第2ティースの先端部が面取りされていないとともに、溝部が設けられていない(すなわち、第1ティースの形状と同じ)場合に比べて、トルクリプルが共に低減されていることが確認された。
【0041】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
第1実施形態では、上記のように、複数のティース21は、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に同相のコイル30が配置される第1ティース21aと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に異相のコイル30が配置される第2ティース21bと、を含み、第2ティース21bの、ロータコア10に対向する先端部21d以外の磁路を構成する部分の少なくとも一部の周方向の幅W3は、同じ半径位置における、第1ティース21aの周方向の幅W11よりも小さい。これにより、第2ティース21bの磁路を構成する部分の一部の周方向の幅W3が第1ティース21aの周方向の幅W11よりも小さい分、ロータコア10の永久磁石11から第2ティース21bを経由する経路の磁気抵抗が大きくなる。その結果、ロータコア10の永久磁石11から第2ティース21bを経由する経路の磁気抵抗と、ロータコア10から第1ティース21aを経由する経路の磁気抵抗とを、略同じにすることができる。これにより、通電時のトルクリプルを低減することができる。また、幅の小さくなる部分(溝部23)を、ティース21の内径側の先端部21d以外の部分に設けることによって、比較的永久磁石11に近くて永久磁石11からの磁束密度の大きい第2ティース21bの内径側の先端部21dを面取りする場合と異なり、比較的永久磁石11に遠くて永久磁石11からの磁束密度の小さい部分に幅の小さくなる部分(溝部23)が配置されるので、溝部23が設けられる影響(第1ティース21aと第2ティース21bとの形状の差異に起因する影響)が小さい。これにより、比較的永久磁石11の磁束密度の大きい第2ティース21bの内径側の先端部21dを面取りする場合と異なり、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。その結果、通電時のトルクリプルを低減しながら、非通電時のコギングトルク(電気角の6次成分によるコギングトルク)を低減することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、ティース21のスロット22側の側面21cで、かつ、ティース21の内径側の先端部21d以外の部分には、少なくとも一部に回転軸方向に沿って溝部23が設けられている。そして、溝部23は、第1ティース21aには設けられずに、第2ティース21bに設けられている。これにより、溝部23が設けられる分、ロータコア10の永久磁石11から第2ティース21bを経由する経路の磁気抵抗が大きくなるので、ロータコア10の永久磁石11から第2ティース21bを経由する経路の磁気抵抗と、ロータコア10から第1ティース21aを経由する経路の磁気抵抗とを、容易に、略同じにすることができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、溝部23を、第2ティース21bの外径側の部分に設ける。これにより、溝部23と永久磁石11との間の距離が比較的大きくなるので、溝部23が設けられる影響(第1ティース21aと第2ティース21bとの形状の差異に起因する影響)をより小さくすることができる。その結果、非通電時のコギングトルクをより低減することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、回転軸方向から見て、第2ティース21bの溝部23が設けられている部分において、第2ティース21bの溝部23が設けられる部分の周方向の幅W3は、第2ティース21bの内径側の先端部21dの周方向の幅W4以上である。これにより、第2ティース21bの溝部23が設けられる部分の周方向の幅W3が、第2ティース21bの内径側の先端部21dの周方向の幅W4未満になる場合と異なり、永久磁石11からの磁束の経路幅を十分に確保することができるので(磁気飽和しにくくなるので)、回転電機100のトルクが低下するのを防止することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、溝部23(23a、23b)を、回転軸方向から見て、第2ティース21bの周方向の一方側と他方側との両方に設ける。これにより、溝部23aおよび23bの間(第2ティース21bの周方向の中央部近傍)を磁束が通過することができるので、溝部23が磁束の経路(磁路)の妨げになるのを防止することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、溝部23を、回転軸方向から見て、バックヨーク24にはみ出さないように、第2ティース21bのバックヨーク24に接続される根元側の部分21eに設ける。これにより、溝部23がバックヨーク24にはみ出す場合と異なり、溝部23がバックヨーク24を通過する磁束の妨げになるのを防止することができる。その結果、回転電機100のトルクが低下するのを防止することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、溝部23を、回転軸方向から見て、バックヨーク24にはみ出さないとともに、ステータコア20の回転軸方向の一方端面20a側から他方端面20b側に渡って貫通するように、第2ティース21bのバックヨーク24に接続される根元側の部分21eに設ける。これにより、ステータコア20の回転軸方向の一方端面20a側から他方端面20b側に渡って、ロータコア10から第2ティース21bを経由する経路の磁気抵抗を大きくすることができる。その結果、通電時のトルクリプルを効果的に低減することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、溝部23を、回転軸方向から見て、内径側から外径側に向かって、周方向の幅W5が大きくなるように形成する。これにより、比較的永久磁石11から遠くて永久磁石11からの磁束密度の小さい部分(より外径側の部分)に、溝部23のうちの周方向の幅W5が大きい部分が配置される。その結果、溝部23が設けられる影響(第1ティース21aと第2ティース21bとの形状の差異に起因する影響)をさらに小さくすることができるので、非通電時のコギングトルクをさらに低減することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、第1ティース21aのロータコア10に対向する先端部21fと、第2ティース21bのロータコア10に対向する先端部21dとは、略同じ形状を有しており、コイル30への通電時において、第1ティース21aの磁気抵抗と第2ティース21bの磁気抵抗とが略同じになるように構成されている。これにより、比較的永久磁石11に近くて永久磁石11からの磁束密度の大きい第2ティース21bの内径側の先端部21dを面取りする場合と異なり、第1ティース21aと第2ティース21bとの形状の差異に起因する影響を小さくすることができる。
【0051】
[第2実施形態]
(回転電機の構造)
図10および
図11を参照して、第2実施形態による回転電機110の構造について説明する。第2実施形態では、上記溝部23が、回転軸方向から見て、バックヨーク24にはみ出さないように設けられていた第1実施形態と異なり、溝部123が、回転軸方向から見て、バックヨーク124にはみ出すように設けられている。
【0052】
図11に示すように、ステータコア120は、ティース121と、スロット122とを含む。また、ティース121は、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット122に同相のコイル30が配置される第1ティース121aと、周方向の一方側と他方側とに隣接するスロット22に異相のコイル30が配置される第2ティース121bとを含む。また、第2ティース121bには、溝部123が設けられている。
【0053】
また、ステータコア120は、ステータコア120の外径側に配置されるバックヨーク124を含む。そして、ティース121は、バックヨーク124から内径側に向かって延びるように設けられている。ここで、第2実施形態では、溝部123は、回転軸方向から見て、バックヨーク124にはみ出すように、第2ティース121bのバックヨーク124に接続される根元側の部分121eに設けられている。具体的には、溝部123は、第2ティース121bの根元側の部分121eと、バックヨーク124とに跨るように設けられている。
【0054】
また、第2実施形態では、溝部123は、回転軸方向から見て、バックヨーク24にはみ出すとともに、
図11に示すように、ステータコア120の回転軸方向の一方端面120a側から他方端面120b側に渡って貫通しないように、第2ティース121bのバックヨーク124に接続される根元側の部分121eに設けられている。具体的には、溝部123は、ステータコア120の回転軸方向の一方端面120a側と、他方端面120b側とに分離して設けられており、ステータコア120の回転軸方向の中央部近傍には設けられていない。
【0055】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0056】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
第2実施形態では、上記のように、溝部123を、回転軸方向から見て、バックヨーク124にはみ出すように、第2ティース121bのバックヨーク124に接続される根元側の部分121eに設ける。これにより、溝部123がバックヨーク124にはみ出す分、溝部123が大きくなるので、通電時のトルクリプルおよび非通電時のコギングトルクを低減しながら、スロット122(溝部123)とコイル30との間にコイル30を固定するためのワニスを流し込みやすくすることができる。
【0058】
また、第2実施形態では、上記のように、溝部123を、回転軸方向から見て、バックヨーク124にはみ出すとともに、ステータコア120の回転軸方向の一方端面120a側から他方端面120b側に渡って貫通しないように、第2ティース121bのバックヨーク124に接続される根元側の部分121eに設ける。これにより、溝部123がステータコア120の回転軸方向の一方端面120a側から他方端面120b側に渡って貫通するように設けられる場合と異なり、スロット122(溝部123)とコイル30との間に流し込まれたワニスが、ステータコア120から滴下(落下)してしまうのを防止することができる。
【0059】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0060】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、第2ティースに溝部を設けることにより、第2ティースの周方向の幅が、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さくなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2ティースに溝部を設けること以外の方法(たとえば、第2ティースに穴部を設ける)により、第2ティースの周方向の幅が、同じ半径位置における、第1ティースの周方向の幅よりも小さくなるように構成してもよい。
【0061】
また、上記第1および第2実施形態では、溝部が、第2ティースの外径側の部分に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溝部を、第2ティースの先端部以外の内径側の部分に設けてもよい。
【0062】
また、上記第1および第2実施形態では、溝部が、第2ティースの外径側の根元側の部分に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図12に示す第1変形例による回転電機130のように、溝部133を、第2ティース131bの根元側の部分131eよりも内径側の部分に設けてもよい。
【0063】
また、上記第1および第2実施形態では、平角導線からなる同芯巻コイルによりコイルが形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、平角導線以外の丸線などによりコイルが形成されていてもよい。また、同芯巻以外の巻き方により、コイルが形成されていてもよい。
【0064】
また、上記第1および第2実施形態では、溝部が、回転軸方向から見て、第2ティースの周方向の一方側と他方側との両方に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図13に示す第2変形例による回転電機140のように、溝部143を、第2ティース141b周方向の一方側のみに設けてもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態では、溝部が、バックヨークにはみ出さないとともに、回転軸方向から見て、ステータコアの回転軸方向の一方端面側から他方端面側に渡って貫通するように設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溝部を、バックヨークにはみ出さないとともに、ステータコアの回転軸方向の一方端面側から他方端面側に渡って貫通しないように設けてもよい。
【0066】
また、上記第1および第2実施形態では、溝部が、回転軸方向から見て、内径側から外径側に向かって、周方向の幅が徐々に大きくなるように形成されている(略三角形形状に形成されている)例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溝部を、回転軸方向から見て、略三角形形状の以外の形状(略矩形形状、略半円形状)に形成してもよい。
【0067】
また、上記第1および第2実施形態では、回転軸方向から見て、第2ティースの溝部が設けられている部分において、第2ティースの溝部が設けられる部分の周方向の幅W3(
図3参照)は、第2ティースの内径側の先端部の周方向の幅W4以上である例を示したが、本発明はこれに限られない。
図14に示すように、溝部の周方向の幅W3が大きくなるほど(
図14の横軸の右方向)、トルクリプルおよび最大トルクは小さくなる。また、溝部の周方向の幅W3が大きくなるほど、トルクリプルと最大トルクとの差は大きくなる。そして、溝部の周方向の幅W3を、
図14に基づいて、所望のトルクリプルおよび最大トルクを得るように決めてもよい。