(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は本発明の実施の一形態である装着型支援ロボット装置1を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図2は装着型支援ロボット装置1の装着状態を示す側面図であり、
図3は装着型支援ロボット装置1の装着状態を示す背面図であり、
図4は装着型支援ロボット装置1の一部の斜視図である。これらの図面を参照して、装着型支援ロボット装置1は、装着者10に装着されて保持される保持装置2と、保持装置に設けられ装着者10の体幹11と左右の各大腿12との間に支援力モーメント
(以下、「支持力モーメント」と記す場合がある。)をそれぞれ与えるアシスト駆動機構3とを有する。
図1〜3は、装着者10が、体幹11とともに左右の大腿12を含む両下肢を揃えて直立した姿勢を示す。左右とは、前述のとおり、装着者10における方向を言い、したがって、
図1における右、左である。装着型支援ロボット装置1は、それを装着した装着者10の正中矢状面13に関して左右にほぼ面対称に構成され、本件明細書、図面中、左右の構成要素の参照符は、左右を個別的に示すために数字に添え字L、Rをそれぞれ付し、総括的に、または連結した構成を示すために、および左または右を記載して数字だけで示す。
【0054】
保持装置2は、装着者10の胸郭、鎖骨、肩甲骨付近の体幹上部14に装着されて保持される体幹上部保持具20と、腹、腰の骨盤、股関節付近の体幹下部15に装着されて保持される腰カフと呼ぶことができる体幹下部保持具30と、大腿12に装着されて保持される大腿保持具40とを含む。
【0055】
アシスト駆動機構3は、体幹下部15の左右両側方にそれぞれ配置されて左右方向の軸線61まわりに駆動トルクを発生する一対の駆動源60と、体幹上部14の左右両側方で上下に延びてそれぞれ配置される一対の上アーム70と、上アーム70の上端部と体幹上部保持具20とを左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第1受動回転軸91と、体幹下部15から大腿12にわたって左右両側方で上下に延びてそれぞれ配置される一対の下アーム80と、各下アーム80の下端部と大腿保持具40とを左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第2受動回転軸92と、体幹下部保持具30に上アーム70の長手方向途中位置を取り付ける取り付け手段94とを有する。
【0056】
体幹上部保持具20は、装着者10の鎖骨、肩甲骨付近に逆U字状に配置される左右一対の肩ベルト21と、胸郭を囲んで腋窩から斜め下方に背に延びる胸カフと呼ぶことができる胸ベルト22と、左右一対のほぼ上下に延びる背ベルト23とを有する。肩ベルト21の胸における一端部は、胸ベルト22に、左右の間隔をあけて固定される。肩ベルト21は、背において装着者10に接触するために交差保持部材24によってX字状に交差されて保持され、その各他端部は、固定位置25で胸ベルト22の背における各端部と、背ベルト23の各上端部とに固定される。肩ベルト21は、装着者10が着脱し易いように、背において交差せずに平行に設けられてもよい。
【0057】
胸ベルト22は、胸郭の上部を囲み、胸骨体、みずおち付近で、連結具26によって左右に参照符22L、22Rで示されるように分離、連結して着脱自在である。胸ベルト22は、力学的には平板状の当て板でもよい。装着者10に違和感を抱かせないため、および親和性を高めるため、装着者10に或る程度の弾発力で接触して、柔らかく支援力モーメントを伝えるが、ばね定数が小さ過ぎると変形しすぎて支援力モーメントを伝えられないか、伝わるのに時間がかかり過ぎる。前記親和性を高めるとは、胸ベルト22の装着時、装着者10に違和感を与えないようにすることであり、胸ベルト22の剛性が高すぎて、堅く感じることがないようにすることである。
【0058】
また胸ベルト22と装着者10との接触面積を増やすと、装着者10への支援力モーメントによる単位面積あたりの圧力が小さくなるが、装着者10の前表面を覆う面積が増えるので、汗をかいたりし易くなる。胸ベルト22は、これらの機能と快適性とを両立するように構成される。
【0059】
体幹上部保持具20は、装着し易いように、胸ベルト22L、22Rが連結具26によって左右対称に分割される。一方の胸ベルト22Lは、胸郭の上部の周囲を約1/4〜3/8を覆う範囲で、胸郭の側部の第1受動回転軸91の取り付け位置から前部の1/4〜1/2程度までと、側部の第1受動回転軸91の取り付け位置から後部の1/4とを覆い、円筒の一部を成し、他方の胸ベルト22Rも同様に構成される。各胸ベルト22L、22Rが胸郭の前部の約1/4〜3/8を覆うことによって、特に大きな支援力モーメントを要する重い荷物の持ち上げアシスト時の単位面積当たりの面圧力を下げることができ、押圧感が強くなりすぎるのを防ぎつつ、覆う面積が多すぎることによる体幹上部保持具20の装着しにくくなるのを防ぐ。アシストを支援ともいうことがある。胸ベルト22は、たとえば、上下の幅30〜60mmであり、厚さ5mmの合成樹脂製である。胸ベルト22には、メッシュ状のカバーで覆われた弾発性のある緩衝のためのクッション材が胸に臨んで設けられる。このメッシュ状のカバーは、発汗時の通気性を確保する。
【0060】
胸ベルト22は、支援力モーメントを柔らかく伝達するために、或る程度の剛性と柔軟性がある合成樹脂製とし、この樹脂材にメッシュ付のクッション材を付加した材料によって、装着性と支援力モーメントの伝達性を高めて低価格化にすることができる。胸部は、大腿12より柔らかいので、胸部のカフである胸ベルト22は、大腿12のカフである保持片43(
図10)の硬さでは、硬すぎ、したがって、前記或る程度の剛性と柔軟性とは、たとえば、幅30〜60mm程度で、厚さ0.5〜2mm程度のアルミニウム板と同程度の剛性と柔軟性である。胸ベルト22は、この剛性と柔軟性があり、アルミニウム板単独より軽量で同程度の強度を有する複合樹脂材として、アルミニウムと合成樹脂との複合材料、または炭素繊維と合成樹脂との複合材料であってもよい。
【0061】
鞣された革は、伸縮性が小さく、堅牢であるが、支援力モーメントの伝達性からは、まだ柔軟性がありすぎるので、変形しやすい。その結果、装着しにくくなり、また支援力モーメントの伝達性に遅れが生じる。この問題を解決するために、本発明の胸ベルト22では、在来の皮革ソフトネス計測される値よりはもう少し剛性を高めた前述の合成樹脂材を用いる。
【0062】
左右の肩ベルト21は、装着者10の肩に本件支援ロボット装置1の重量が作用しないようにするために、指が一本程度入る隙間がある程度がよく、したがって肩ベルト21は、腰ベルト33、腹ベルト34が、骨盤の上から下方へずれたとき、落下することを防ぐ働きを果たす。肩ベルト21は、省略されてもよい。
【0063】
本発明の実施の他の形態では、通気性を確保して、装着者10が腕を通す個所を判りやすくするために、また着脱しやすいようにするために、後述の
図77〜
図79に示すようなメッシュ付の袖なしの前開きベストを、体幹上部保持具20の内面もしくは外面に取り付けるようにして用いる。すなわち、メッシュ状ベストには、肩ベルト21、胸ベルト22、背ベルト23が、たとえば縫合などされて取り付けられる。ベストは、前開きとするために、前中心線に関して左右の前身頃(
図77の参照符703L、703R)を着脱可能な連結具705、706で装着者の前面で連結するように、構成される。上フレーム70とともに、メッシュ状ベストを併用することによって、暑い夏場の使用が快適になる。
【0064】
ベストは、チョッキ、ジレーとも呼ばれ、袖がなく、本発明の実施の各形態では、(1)胸、腹、背を覆う短い胴着であってもよく、(2)胸を覆い、腹部の少なくとも一部もしくは背部の少なくとも一部を覆い、または(3)胸を覆い、腹部の中腹部などの少なくとも一部および背部の腰寄りの部分などの少なくとも一部を覆う構成を有する。
【0065】
図5は体幹下部保持具30の水平断面図であり、
図6は体幹下部保持具30の分解斜視図である。体幹下部保持具30は、体幹下部15を背の後部31から左右の側腹部付近の側部32までたとえば約1/2周にわたって囲む腰ベルト33と、腰ベルト33の両端部に連なって固定される腹ベルト34とを有し、全体が環状に形成される。腹ベルト34は、臍部(さいぶ)付近で、連結具35によって左右に参照符34L、34Rで示されるように分離、連結して着脱自在である。
【0066】
体幹下部保持具30には、腰ベルト33の体幹下部15に臨んで保護具36が着脱自在に取り付けられる。保護具36は、弾発性のある緩衝のためのクッション材37をメッシュ状のカバー38で覆って構成され、腰ベルト33に沿って体幹下部15の周方向に延び、その腰ベルト33よりも上下に拡がった寸法形状を有する。クッション材37は、芯材を覆って補強されてもよい。保護具36は、腰ベルト33と腹ベルト34とが体幹下部15に相互のずれが生じないように締め付けられて保持された状態で、腰における快適な装着感を達成する。腰ベルト33と装着者10の腰との間に保護具36が存在することによって、腰ベルト33と腰とが直接接触することがなくなり、装着したときの違和感を軽減することができる。腰ベルト33、腹ベルト34はいずれも、支援力モーメント自体を伝達しないので、大きな剛性は必要ないが、腰ベルト33には、後述の制御ボックス53、電池ボックス54が取り付けられるので、これらを支える程度の剛性を有する。
【0067】
保護具36は、装着者10の腰と広い範囲で密着し、腰ベルト33を腰部に確実に固定することができる。カバー38は開口率の大きいメッシュ状であるので、通気性を向上し、暑さ対策が施され、発汗時も快適である。体幹下部保持具30は、骨盤付近に配置され、したがって、その骨盤の腸骨翼における左右方向の横に出っ張った腸骨稜の上部付近に乗るように配置されるので、骨盤付近に確実に引っかかり、体幹下部15から下方にずれることはなく、体幹下部15に確実に装着される。そのため、肩ベルト21が、装着者10の鎖骨、肩甲骨付近を圧迫せず、装着時の作業が快適となる。
【0068】
図7は本発明の実施の他の形態における取り付け手段94aとその付近を示す一部の水平断面図であり、
図8は取り付け手段94aとその付近を簡略化して示す側面図であり、
図9は腰ベルト33aと保護具36aとを示す簡略化した水平断面図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には、同一の数字に添え字aを付して示す。注目すべきは、取り付け手段94aは、第2上アーム片72を挿通するボルト56が、腰ベルト33aの側部32aに、いわば横形で螺着される。取り付け手段94aは、上下の各アーム70、80などと同様に金属などの剛性材料から成る。保護具36aは、腰ベルト33aの装着者10に臨んで水平面内でU字状に形成された板であり、支持片57によって固定され、たとえば合成樹脂などの弾発性を有する材料から成り、装着者10の装着時の親和性が良好である。腰ベルト33aの後部31aは、左右に分離され、長さ調整機構58の長孔によって左右方向に調整できる。
【0069】
図10は、長さ調整機構58の一部を装着者10の後方から見た分解斜視図である。腰ベルト33aの左右に分離された一方の後部31aには、左右方向に間隔をあけて一対のねじ孔59が形成される。連結補助部材27には、左右方向に延びる各長孔28がねじ孔59にそれぞれ対応して形成される。固定用ボルト29は、長孔28を挿通して、ねじ孔59に螺着され、一方の後部31aと連結補助部材27とを左右方向に調整自在に固定する。腰ベルト33aの左右に分離された他方の後部31aも、一方の後部31aと左右対称に構成されて、連結補助部材27と左右方向に調整自在に固定用ボルトによって固定される。
【0070】
図11は、大腿保持具40を示す分解斜視図である。左右の各大腿保持具40は、大腿12を全周にわたって囲む大腿カフと呼ぶことができるベルト本体41と、ベルト本体41の外周部に大腿12の外側である腓側から前へ、周方向の一部にわたって延びて固定片42によってベルト本体41に固定される保持片43とを有する。
【0071】
ベルト本体41には、大腿12に臨んで、メッシュ状のカバーで覆われた弾発性のある緩衝のためのクッション材44が大腿12に臨んで設けられる。このメッシュ状のカバーは、発汗時の通気性を確保する。ベルト本体41は、前大腿部の内側である脛側で、連結具45によって左右に分離、連結して着脱自在である。大腿12の第2受動回転軸92は、大腿12の前後方向中央付近の外側に設置され、大腿保持具40は、大腿12のできるだけ低い位置で、曲げた膝に接触しない位置に選ばれる。
【0072】
ベルト本体41および保持片43は、胸ベルト22より柔軟性は少なくて剛性が高くて支援力モーメントを瞬時に伝えられる剛性と、或る程度の柔軟性がある合成樹脂材によって、あるいはまた、この樹脂材にメッシュ付のクッション材を付加した材料によって、さらにまた前記アルミニウム板にメッシュ付のクッション材を付加した材料を、大腿12の約1/4〜1/2程度の前方部分に用いることによって、装着性と親和性とを高め低価格化することができる。ベルト本体41および保持片43の前記剛性と柔軟性とは、幅30〜60mm程度で、厚さ2〜5mm程度のアルミニウム板と同程度の剛性と柔軟性である。これによってベルト本体41および保持片43の剛性を強くして、重い荷物を持ち上げるとき大腿12の前部に、強い支援力モーメントをしっかりと伝えることができる。大腿12の後部には、歩行時の遊脚を振り上げる支援力モーメントが与えられるが、この歩行時の支援力モーメントは前記重い荷物を持ち上げるときに比べて小さいので、それほどの剛性は必要ない。
【0073】
ベルト本体41は、環状でなくてもよく、大腿12の前後2枚の板でもよいが、装着者10との接触面積を或る程度大きくとるために、大腿12の外形状に近似した弯曲した板に形成してもよい。
【0074】
保持片43は、大腿12の周囲を約1/4〜1/2周にわたる範囲を覆い、たとえば、上下の幅30〜60mmであり、厚さ5mmの合成樹脂製である。1/4〜1/2周にすることによって、下アーム80から大腿12へ支援力モーメントを伝わりやすくする。
【0075】
この実施の形態において、保持片43は、大腿12の外側部の第2受動回転軸92が取り付けられる位置付近から大腿12の前部の半分〜前部の全てを覆い、円筒の一部分を成す。保持片43は、大腿12の前部を広い範囲にわたって覆うので、特に大きな支援力モーメントを要する重い荷物の持ち上げアシスト時の単位面積当たりの面圧力を下げることができ、押圧感が強くなりすぎるのを防ぎつつ、覆う面積が多すぎることによる大腿保持具40の装着しにくくなるのを防ぐ。保持片43の材料硬さ程度について、支援力モーメントを伝えるのには、力を伝えるための腰上方や腰下方や大腿部の上下のアーム70、80と同程度に、充分硬い樹脂材とする。装着者10と接触する大腿12の個所であるカフの保持片43では、その内側には大腿12に臨んで親和性や汗対策に、メッシュ状のカバーを備えるクッション材44が取り付けられる。
【0076】
連結具26,35、45は、接続、離脱のための操作が容易な構成を有し、たとえばプラスチックバックル、ワンタッチコネクタなどとして商業的に入手可能である。
【0077】
図12は、アシスト駆動機構3の一部を示す断面図である。駆動源60は、軸線61まわりに回転する駆動軸62と、駆動軸62にその軸線61まわりにトルクを発生する駆動源本体63とを有する。駆動源本体63は、たとえば交流サーボモータなどによって実現される電動モータ64と、電動モータ64の出力軸65から駆動軸62へ回転速度を減速する減速機66とを有する。電動モータ64は、そのハウジングであるモータ本体68を有し、モータ本体68には、出力軸65に電磁力によってトルクを与える回転子などと、出力軸65、したがって駆動軸62の軸線61まわりの角度を検出する角度センサ67とが収納される。
【0078】
減速機66では、出力軸65、駆動軸62の各回転速度をN65、N62とするとき、減速比N62/N65を1〜1/100程度に、好ましくは1/50〜1/100に選ぶ。これによって、摩擦が少なく伝達効率が良いので、装着者10側からの大きな力を必要とせずに、駆動源60を軽く回転させることができる。こうして、電動モータ64が回転して減速機66を介して駆動軸62からトルクが出力されるのとは逆に、駆動軸62側から、減速機66および電動モータ64を回転させることができる、いわゆるバックドライバブルな駆動系を実現できる。装着者10側から駆動源60を動かすことができ、駆動電源がなくなっても装着者10は装着型支援ロボット装置1を自分の力で動かすことができる安全な装置が実現される。減速機66は、たとえば波動歯車減速機、遊星減速機またはサイクロ減速機等であってもよい。
【0079】
従来技術では、出力端にクラッチを用いたり、制御を行なうことによって、摩擦が大きい減速機でもバックドライバブルになるが、駆動電源がなくなるとバックドライバビリティを維持できないという問題がある。他の従来技術では、出力端に柔らかい回転ばねを付加することによって、バックドライバブルになるが、常時柔らかいままであり、瞬時に支援力モーメント、したがってアシスト力が必要なとき、支援力モーメントによる力をすぐに伝えられないという問題がある。本発明は、これらの従来技術の問題を解決する。
【0080】
上アーム70は、上下の第1および第2の上アーム片71、72が、前後方向の軸線まわりに角変位自在である第3受動回転軸73を介して、連結されて構成される。第1上アーム片71の上端部は、第1受動回転軸91を介して体幹上部保持具20に連結される。第2上アーム片72の下端部は、駆動軸62に固定される。
【0081】
上アーム70の長手方向途中位置である第2上アーム片72は、取り付け手段94によって、体幹下部保持具30における腰ベルト33の側部32に、少なくとも前後方向に相対的に変位しないように、連結、固定して取り付けられる。取り付け手段94は、上下方向に細長い取り付け孔93が形成されたベルト取り付け金具95と、第2上アーム片72とベルト取付け金具95との間に介在される上下方向の軸線を有する受動回転軸96と、取り付け孔93に挿通される水平面内でU字状ベルトから成る取り付け片97とを有する。取り付け片97の両遊端部は、ベルト取付け金具95の近傍で腰ベルト33の側部32に、接着、縫合などされて固定される。したがって、上下に延びる第2上アーム片72と腰ベルト33の前後方向に延びる側部32との各長手方向は、駆動軸62の軸線61に平行である仮想軸線61aまわりに90度ずれた配置で、第2上アーム片72と腰ベルト33の側部32とが取り付けられる。
【0082】
上アーム70は、駆動源60の回転による駆動トルクを、体幹上部保持具20に効率よく伝える働きをする。下アーム80は、駆動源60の回転による駆動トルクを、大腿保持具40に効率よく伝える働きをする。腰ベルト33、腹ベルト34は、駆動源60の回転による駆動トルクを、体幹上部保持具20と大腿保持具40とに効率よく伝えるために副次的な働きをし、駆動源60が変位するのを防ぎ、駆動軸62の軸線61が左右方向に傾いたり、前後方向に傾いたりするのを防ぐ。腰ベルト33、腹ベルト34はまた、駆動軸62の軸線61を、装着者10の股関節中心を通る前記一直線にできるだけ一致させて、ずれないようにする働きをする。こうすることによって、体幹上部保持具20と大腿保持具40との各位置が上下に変位することを防ぐことができる。装着者は、腰を椎間関節によって曲げずに、体幹11を直立した姿勢で、歩行、持ち上げ、持ち下げ、中腰の各動作を行なう。腰ベルト33を腰骨の上に載せて固定し、すなわち、腰ベルト33が骨盤の腸骨翼における左右方向の横に出っ張る腸骨稜の上部付近に確実に引っかかる状態で、駆動軸62の軸線61が、装着者10の股関節中心を通る前記一直線に一致するように、下アーム80の長さが選ばれる。したがって、体幹下部保持具30は、体幹下部から下方にずれることはなく、体幹下部に確実に装着される。
【0083】
体幹11が直立した姿勢における体幹上部保持具20と体幹11との相対的な位置は、装着者10が腰を曲げた姿勢になると、ずれることになり、また体幹11の椎間関節による曲げ中心位置と股関節中心の前記一直線の位置とがずれる。このずれは、駆動源60が回転すると、駆動軸62の軸線61の位置が体幹11に対して上下に動くので、腰ベルト33を含む体幹下部保持具30が、駆動源60の体幹11との相対的な位置を元に戻す。したがって、支援力モーメントが体幹11に効率よく与えられる装着状態に、自動的に戻る。
【0084】
上アーム70の長さは、装着者10の寸法で決まり、力学的にはできるだけ長く選ばれる。第1受動回転軸91は、腋窩の下方付近で、腋窩接触しない、できるだけ高い位置に選ばれる。胸ベルト22は、胸骨体またはそれよりは上方で鎖骨より下方の範囲で胸郭を圧迫せずに、支援力モーメントを伝えやすい、あまり脂肪や筋肉がついていない部位に位置するように、肩ベルト21、背ベルト23などの寸法形状が選ばれる。
【0085】
図13は、第3受動回転軸73を装着者10の外側方から見た断面図である。第1上アーム片71の下端部と第2上アーム片72の上端部は、フォーク状の突片75、76が相互に嵌め込まれ、無給油ブッシュ76を介してヒンジピン77のまわりに角変位自在に支承される。ヒンジピン77は、装着者10の前後方向の軸線を有し、その軸線方向に抜け止め用頭部87と止め輪88とによって、さらにヒンジピン77の側部に係止する止めねじ89によって、抜け止めされる。したがって、上アーム70は、第3受動回転軸73によって、前後方向の軸線まわりに角変位自在となり、体幹11を、腰椎を含む椎骨などによる椎間関節の働きによって、左右方向に傾けて曲げることができ、装着者10の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。第4受動回転軸83は、第3受動回転軸73と類似の構成を有する。
【0086】
下アーム80は、上下の第1および第2の下アーム片81、82が、前後方向の軸線まわりに角変位自在である第4受動回転軸83を介して、連結されて構成される。第1下アーム片81の下端部は、第2受動回転軸92を介して大腿保持具40に連結される。第1下アーム片81の上端部は、駆動源本体63のモータ本体68に固定される。第4受動回転軸83は、
図9の第3受動回転軸73と類似の構成を有する。したがって、下アーム80は、第4受動回転軸83によって、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、股関節の働きによって、下肢を外転して開脚を円滑に行なうことができ、装着者の開脚の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
【0087】
再び
図11を参照して、第2受動回転軸92は、第2下アーム片82の下端部に形成された軸受孔98に、保持片43に外方に立設された左右方向の軸線を有するピン99が挿通して構成される。ピン99は、第2下アーム片82のための抜け止め用頭部を有する。第1受動回転軸91も、第2受動回転軸92と類似の構成を有する。
【0088】
第1〜第4受動回転軸91,92;73、83によって、体幹11を前後、左右に傾けたとき、左右に開脚したときなどにおいて、大腿保持具40の位置が元の位置からずれず、装着者10の動きを束縛しなくて身体から離れもしないので、駆動源60と大腿保持具40間の長さ調整機構が不要となり、軽量化と低コスト化できる。すなわち、体幹11を前後に傾けたとき体幹上部保持具20は、胸ベルト22の取り付け位置に配置した第1受動回転軸91によって、また体幹11を左右に傾けたときは、駆動源60の上方に配置した第3受動回転軸73によって、体幹11の動作を妨げられない。左右に開脚したときは、駆動源60の下方に配置した第4受動回転軸83によって、また大腿12を前後に振り上げたときは、大腿保持具40の取り付け位置に配置した第2受動回転軸92によって、体幹11の動作を妨げられない。
【0089】
図6を参照して、腰ベルト33の後部31には、縦断面がほぼL字状の取り付け部材50が設けられる。取り付け部材50は、後部31に固定される縦取り付け片51と、取り付け片51に連なって後方になるにつれて下方に傾斜したもう1つの斜め取り付け片52とを有する。縦取り付け片51には、駆動源60のための駆動制御手段100を収納する制御ボックス53が固定される。斜め取り付け片52には、駆動源60と駆動制御手段100などとに電力を供給する電池ボックス54が固定される。斜め取り付け片52は、前述のように傾斜しており、下方に大きく突出しないので、装着者10が椅子などに着座するときの支障にならない。
【0090】
図14は、装着者10の後方から見た制御ボックス53の簡略化した縦断面図である。制御ボックス53には、駆動制御手段100のいわゆるマイコンボードである配線基板101が固定され、この配線基板101には、マイクロコンピュータによって実現される駆動制御のための処理回路113と、処理回路113に接続される加速度・角速度センサ103などとが搭載されて固定される。加速度・角速度センサ103は、装着者10の体幹11の腰の3次元の加速度、すなわち上下方向の加速度α1および前後方向の加速度α2、さらに左右方向の加速度α3をそれぞれ検出する。加速度・角速度センサ103は、加速度を検出するために、ばねで支持された可動体の移動距離を静電容量、ピエゾ効果などの電気信号の変化によって検出する構成を有してもよく、ジャイロも含む。加速度・角速度センサ103はまた、装着者10の体幹11における大腿腰の上下方向の軸線まわりの角速度ω1、前後方向の軸線まわりの角速度ω2、左右方向の軸線まわりの角速度ω3を検出する。
【0091】
加速度・角速度センサ10としては、センサ素子の一方の電極である可動部と他方の電極である固定部との間の静電容量の変化を検出するセンサであってもよく、センサ素子の質量を有する可動部と固定部とをつなぐばね部に取り付けたピエゾ抵抗素子によって、ばね部の歪みの変化を検出するセンサなどであってもよい。
【0092】
本発明の実施の他の形態では、取り付け手段94は、上アーム70の長手方向途中位置を取り付ける代りに、体幹下部保持具30に、駆動軸62、モータ本体68などの駆動源本体63、または下アーム80の長手方向途中位置である第1もしくは第2の下アーム片81、82のいずれか1つを、少なくとも前後方向に相対的に変位しないように、取り付けるようにしてもよい。
【0093】
本発明の実施の他の形態では、上アーム70および下アーム80を、曲がらない剛性とし、上アーム70の下端部または下アーム80の上端部の一方を、駆動軸62または駆動源本体63の一方に、駆動軸62の軸線に垂直なヒンジピンから成る受動回転軸によって連結し、上アーム70の下端部または下アーム80の上端部の他方を、駆動軸62または駆動源本体63の他方に、駆動軸62の軸線に垂直なもう1つのヒンジピンから成る受動回転軸によって連結してもよい。これらのヒンジピンは、前後方向の軸線を有する。これによって、上アーム70および下アーム80の長手方向途中位置における前後方向の軸線まわりの受動回転軸73,83を省略してもよい。実施のさらに他の形態では、上アーム70および下アーム80を、体幹11および大腿12に沿う平板状として、左右方向の軸線まわりには曲がらない剛性で支援力モーメントを伝え、前後方向の軸線まわりには可撓性を有する構成とし、前後方向の軸線まわりの受動回転軸73,83を省略してもよい。
【0094】
本発明の実施のさらに他の形態では、第1および第2受動回転軸91、92は、球面軸受によって実現されてもよい。この実施の形態において、上アーム70および下アーム80の長手方向途中位置には、第3および第4受動回転軸73、83が設けられる。
【0095】
図15は、装着者10の左手16Lに装着される手袋装置190Lの一部の断面図である。手袋装置190の手袋の外面には、物体センサ191、192が設けられる。物体センサ191、192は、たとえば持ち上げ、持ち下げなどする対象である物体に接触したことを検出し、タッチスイッチと呼ばれる構成であってもよく、たとえば物体が接触することによる静電容量の変化を検出し、押された圧力による磁力片のばね力に抗する変位を検出し、または或る程度の荷重とストロークで接点がON/OFFして検出動作する構成などであってもよい。本発明の実施の他の形態では、物体センサ191、192は、たとえば歪センサなどのように、装着者10が持ち上げ、持ち下げなどする物体の重量を表わす電気信号を出力する構成によって実現されてもよい。
【0096】
図16は、物体センサ191、192が設けられる左手16Lの手背から見た骨格を示す平面図である。物体センサ191は、母指の末節骨195付近の内側である手掌に配置される。もう1つの物体センサ192は、母指のつけ根である中手指節関節196付近の手掌に配置される。本発明の実施の他の形態では、物体センサ193は、手袋装置190に、示指の末節骨197付近の手掌に配置される。本発明の実施のさらに他の形態では、物体センサ194は、手袋装置190に、示指の基節骨198付近の手掌に配置される。これらの物体センサ191〜194は、物体の取扱いに応じて、片手の手袋装置190だけに設けられてもよいが、左右両手の各手袋に設けられてもよい。
【0097】
これらの物体センサ191〜194は、手袋装置190の内側に取り付けられてもよく、手袋装置190に設けられる代りに、粘着テープなどで装着者10の手に貼り付けられてもよく、または指サックなどの帽状体に設けられてもよい。
【0098】
駆動源60の駆動軸62によって出力される駆動トルク、および角度センサ67が検出する角度θについては、
図32に関連して後述する。
図1および
図2において、装着者10が直立している状態では、駆動軸62の軸線61と第1受動回転軸91とを通る上アーム70の長手方向、および駆動軸62の軸線61と第2受動回転軸92とを通る下アーム80の長手方向はいずれも、鉛直である。下アーム80の長手方向は、鉛直線と角度θを成す。前へ歩行するために、装着者10が遊脚の大腿12を振り上げて屈曲する方向を正とし、足が着地している支持脚の大腿12を伸長する方向を負とする。駆動軸62の軸線61を、装着者10の骨盤の左右の股関節における寛骨臼に嵌まり込んでいる大腿骨の骨頭の臼状関節としての中心17(
図1)を通る左右方向の一直線上にほぼ一致して配置することによって、その一直線まわりに出力される駆動源60の駆動トルク、すなわち装着者10のための支援力モーメントは、装着者10へ高い駆動伝達効率で与えられ、歩行支援、持ち上げ支援、持ち下げブレーキ支援、中腰支援などの各支援動作を、円滑に達成する。
【0099】
左右一対の駆動源60は、股関節に関する前記一直線上に軸線を有する駆動軸62を有し、したがって、駆動軸62の軸線は、持ち上げ、持ち下げブレーキ、中腰などの作業での腰関節、すなわち椎間関節の位置から、ずれている。しかし、駆動軸62の軸線は、作用点(着力点)である装着者10の胸ベルト22と大腿保持具40とから充分な距離だけ離れているので、駆動軸62からの駆動トルクを体幹11に支援力モーメントとして、支障なく充分に伝えることができる。
【0100】
また後述のように、腰ベルトと腹ベルトとの対を成す各体幹下部保護具30a,30bが上下に間隔をあけて複数(たとえば2)設けられ、体幹11と駆動源60との位置ずれを確実に防ぐ。
【0101】
図17は、装着者10の歩行支援動作を説明するためのスケルトン図である。駆動源60は、上アーム70と下アーム80との間に駆動トルクTを出力する。これによって、装着者10の股関節の中心17の左右の外側に配置された駆動源60の軸線61のまわりに、歩行支援時には、遊脚側の駆動源60Lからの駆動トルクTが大腿12Lの大腿保持具40Lに伝わり、大腿12Lを振り上げる方向に振り上げ力モーメントT1が作用する。遊脚側の駆動源60Lは、体幹上部保持具20から体幹の姿勢を維持して振り上げた遊脚の大腿12Lを支えるための反力モーメントT3を伝えている。
【0102】
図18は、装着者10が歩行支援されている状態を示す遊脚側から見た側面図である。駆動源60Lは、大腿12Lに振り上げ力モーメントT1を与える。
【0103】
歩行支援のために、
図15に示されるように、支持脚側の駆動源60Rからの駆動トルクTは、大腿12Rの大腿保持具40Rに伝わり、大腿12Rを支持する方向に支持力モーメントT2が作用する。支持脚側の駆動源60Rは、体幹上部保持具20から体幹の姿勢を維持して足が着地している支持脚の大腿12Rを支えるための反力モーメントT4を伝えている。
【0104】
図19は、装着者10の持ち上げ支援動作を説明するためのスケルトン図である。装着者10が物体を手16で掴んで持ち上げようとするとき、駆動源60L、60Rからの駆動トルクT5、T6が大腿12L、12Rの大腿保持具40L、40Rに伝わり、大腿12L、12Rを支持する方向に持ち上げ力モーメントT7、T8が作用する。駆動源60L、60Rは、体幹上部保持具20から体幹の姿勢を維持して大腿12L、12Rを支えるための反力モーメントT9、T10を与えている。このような左右両脚に与えられるモーメントは、持ち上げ支援のための持ち上げ力モーメントT7、T8だけでなく、持ち下げブレーキ支援のための持ち下げブレーキ力モーメントなども同じである。
【0105】
図20は、装着者10の中腰支援動作を説明するためのスケルトン図である。中腰状態では、体幹11が直立し、大腿12が鉛直から前方に角変位している。処理回路113は、左右の角度センサ67によってそれぞれ検出される、体幹11と左右の各大腿12との相対的な角度θが減少している状態が続くことで、予め定める時間、たとえば3秒以上、予め定める角度、たとえば10°以上曲げていることで、中腰状態を検出する。
【0106】
中腰支援のための中腰支援力モーメントおよび立ち上がり支援のための立ち上がり支援力モーメントも、
図18の持ち上げ力モーメントT7、T8と同じである。
【0107】
図21は、体幹11を左右に傾けた状態を示す簡略化した正面図である。上アーム70の長手方向の途中位置に介在される第3受動回転軸73は、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、体幹11を椎間関節の働きによって左右方向78、79に傾けて曲げることができる。したがって、装着者の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
【0108】
図22は、下肢を外転して開脚した状態を示す簡略化した正面図である。下アーム80の長手方向の途中位置に介在される第4受動回転軸83は、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、股関節の働きによって、下肢を外転して方向84に開脚を円滑に行なうことができ、またその逆の内転方向に運動できる。したがって、装着者10の開脚の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
【0109】
図23は、体幹11を回旋した状態を示す簡略化したスケルトン図である。体幹11を、その直立した長軸まわりに回旋方向85に捩る運動をしたとき、体幹11とともに、駆動源60が設けられた体幹下部保持具30が、回旋方向85a、85bに角変位し、このとき下肢の大腿12も回旋方向85cに角変位する。駆動源60は体幹11の左右に配置され、駆動源60には、体幹11の長軸まわりに角変位しない剛性の上下のアーム70、80が設けられ、上下のアーム70、80は、体幹上部保持具20および大腿保持具40に連結されるので、装着者10が回旋しても、体幹11は、体幹上部保持具20と、体幹下部保持具30と、大腿保持具40などと相対的に変位せず、位置ずれが生じない。したがって、支援ロボット装置1は、装着者10の動きを束縛せず、身体から離れもしないので、体幹11と駆動源60との相対的な位置の変化を防ぐための追加的な構成は不要であり、構成の簡略化を図ることができる。体幹上部保持具20において、回旋する体幹11との位置ずれを防ぐ役目は、特にその胸ベルト22であり、副次的に肩ベルト21、背ベルト23である。
【0110】
図24は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置201を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図25は装着型支援ロボット装置201の装着状態を示す側面図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には、同一の、および200番台の同一の参照符を付し、説明を省略する。注目すべきは、この実施の形態では、体幹下部保護具230は、駆動源60の位置で、体幹下部15の骨盤の寛骨を背において囲む下腰ベルト233と、下腰ベルト233の両端部に連なる下腹ベルト234とを有し、全体が環状に形成される。下腹ベルト234は、臍部下方で、連結具235によって左右に分離、連結して着脱自在である。下腰ベルト233には、取り付け手段294(
図8)によって、第2上アーム片272に連結、固定されて取り付けられる。下腰ベルト233は、装着者10の殿部に引っ掛かり、下方にずれることはない。こうして、駆動源60は、体幹11と位置ずれを生じることが、さらに無くなる。下腰ベルト233と下腹ベルト234とを設ける上述の構成において、本発明の実施の他の形態では、腰ベルト33と腹ベルト34とを省略してもよい。その他の構成と動作は、前述の実施の形態と同一である。
【0111】
図26は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置301を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図27は装着型支援ロボット装置301の装着状態を示す側面図である。この実施の形態は、前述の
図24、
図25の実施の形態に類似し、対応する部分には、同一の、および300番台の同一の参照符を付し、説明を省略する。注目すべきは、この実施の形態では、前後方向の軸線まわりに角変位自在である第5受動回転軸374が、第2上アーム片72における駆動源60寄りの位置に介在される。これによって、体幹11を、椎間関節の働きによって、左右方向に傾けて曲げることができ、装着者10の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。
【0112】
図28は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置401を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図29は装着型支援ロボット装置401の装着状態を示す側面図であり、
図30は駆動源60付近の拡大側面図である。この実施の形態は、前述の
図1〜25の実施の形態に類似し、対応する部分には、同一の、および400番台の同一の参照符を付し、説明を省略する。
図30Aは駆動源60付近の正面から見た拡大正面図であり、
図30Bは駆動源60付近の背後から見た拡大背面図であり、
図30Cは駆動源60付近の拡大平面図である。注目すべきは、この実施の形態のアシスト駆動機構403では、上アーム470は、第1上アーム片471と第2上アーム片472とが、駆動源60寄りの位置で、前後方向の軸線まわりに角変位自在な第6受動回転軸473によって連結される。駆動源60の駆動軸62には、第2上アーム片472の下端部が固定されるとともに、支持アーム455の下端部が固定される。支持アーム455の上端部は、取り付け手段494bによって、腰ベルト433の側部432bに連結、固定され、したがって、上アーム470は、腰ベルト433に取り付けられる。取り付け手段494bは、縦形であり、前述の
図7における取り付け手段94aに類似した構成を有する。腰ベルト433は、取り付け手段94a、腰ベルト433は、上下の各アーム70、80などと同様に金属などの剛性材料から成り、水平面内でU字状に形成され、前述の腹ベルト34が固定される。下腰ベルト233には、腰を外囲する長さを調整する調整機構458が、前述の実施の形態と同様に設けられる。
【0113】
図30Dは、本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置401aを装着者10に装着した状態を示す、駆動源60付近の拡大側面図である。
図30Dは
図28〜
図30Cの実施の形態に類似する。支持アーム455の上端部は、取り付け手段494bによって、腰ベルト430bの側部432bに連結、固定され、腰ベルト430bの後部431bに制御ボックス53が取付けられる。腰ベルト430bには、
図30の腹ベルト34は設けられない。
【0114】
図31は、支援ロボット装置1の電気的構成を示す電気回路図である。支援ロボット装置1に含まれる制御機器は、制御ボックス53と、左右の類似の構成を有するモータドライバユニット120L、120Rと、ハンディ端末装置150と、電池ボックス54と、左右の類似の構成を有する手袋装置190L,190Rとを含んで構成される。
【0115】
ハンディ端末装置150は、携帯型であり、装着者10の左右両手によって保持されて操作される。ハンディ端末装置150は、たとえばスマートフォンによって実現される送受信可能な通信装置である。ハンディ端末装置150は、装着者の左手または右手の一方のみに設けられてもよい。
【0116】
制御ボックス53は、第1無線通信部111と、第2無線通信部112と、処理回路113と、電源制御部114とを含んで構成される。第1無線通信部111は、無線による通信によって、手袋装置190と通信可能に構成され、これらのハンディ端末装置150、手袋装置190と処理回路113との情報の中継を行なっている。第2無線通信部112は、無線による通信によって、ハンディ端末装置150と通信可能に構成され、ハンディ端末装置150と処理回路113との情報の送受信中継を行なう。処理回路113は、有線による通信によって、各モータドライバユニット120と通信するように構成される。電源制御部114は、電池ボックス54を制御する。電源制御部114は、マイクロコンピュータによって実現される。
【0117】
左右の各モータドライバユニット120は、装着者10の左側および右側にそれぞれ装着されるパワーアシスト用電動モータ64を制御する右モータドライバ122を含んで構成される。各モータドライバ121は、有線による通信によって、処理回路113と通信し、処理回路113からアシストに必要な出力トルク指令などの指令を受けるとともに、モータ64の角度センサ67からの駆動軸62の回転角度を表す位置情報などの情報を処理回路113へ送っている。加速度・角速度センサ103の出力は、処理回路113に与えられる。処理回路113には、送受信に関連する情報をストアするメモリ117と、計数のためのカウンタ118と、計時のためのタイマ119などとが接続される。
【0118】
手袋装置190は、無線通信部186、電池187および物体センサ191、192を含んで構成される。電池187は、充電可能な蓄電池であり、無線通信部186および物体センサ191、192に電力を供給する。無線通信部186は、物体センサ191、192の状態、すなわち、物体センサ191、192によって検出された検出結果を、第1無線通信部111を介して処理回路113に送る。本発明の実施の他の形態では、手袋装置190は、物体センサ191、192に代えて、物体センサ193または194が設けられる。物体センサ191〜194は、装着者10が装着する手袋の指の掌側の部分に作用する荷重の有無、さらにはその荷重の値を検出する。
【0119】
ハンディ端末装置150は、本件支援ロボット装置1の動作に必要なパラメータを設定するために使用される。電池ボックス54は、電池46を含んで構成される。電池ボックス54は、電池46からの電力を制御ボックス53および各モータドライバユニット120に供給する。
【0120】
処理回路113は、第1無線通信部111から与えられる各物体センサ191〜194、加速度・角速度センサ103などの情報と、各モータドライバ121の角度センサ67から与えられる電動モータ64の位置情報とに基づいて、アシストに必要な駆動トルクを計算し、各モータドライバ121へ出力トルク指令を送る。
【0121】
本実施の形態では、
図30に示すように、制御ボックス53に、手袋装置190と通信を行なう第1無線通信部111と、ハンディ端末装置150と通信を行なう第2無線通信部112とを備えることによって、通信速度が向上され、並列処理を行なうことができる。
【0122】
図32は、駆動源60の駆動軸62によって出力される駆動トルクを説明するための図である。角度センサ67は、角度θを検出する。角度センサ67は、体幹11と左右の各大腿12との相対的な角度を検出する。角度センサ67は、駆動源60の内部に設けられ、駆動源60の電動モータ64の出力軸65に対応する駆動軸62の角度を検出する。角度センサ67は、相対角度の計測用である。装着者10が支援ロボット装置1を装着して直立し、体幹11と下肢である大腿12を鉛直にした直立状態で、電源を入れることによって、角度センサ67の原点位置、すなわち角度θが零に決められる。この直立した位置で角度θを零に設定し、それから大腿12を鉛直にしたままで、体幹11が前方に傾いた前かがみの姿勢になると、駆動軸62の軸線61まわりの鉛直の直上方向から前かがみの角度θを検出する。また体幹11を鉛直にしたままで、歩行時に遊脚の大腿12を振り上げると、駆動軸62の軸線61まわりの鉛直の直下方向に対する角度θを検出する。
【0123】
本発明の実施の一形態では、駆動源60の駆動トルクT、したがって支援力モーメントは、各支援動作に共通な予め定める値であってもよく、各支援動作毎に予め定める値であってもよい。これらの予め定める値であるパラメータは、ハンディ端末装置150を使用して設定することができる。
【0124】
本発明の実施の他の形態では、下肢の質量をm[kg]、駆動軸62の軸線61から第2受動回転軸92までの下アーム80の長さをL[m]、重力加速度をgとすると、質量mの下肢を動作させるのに必要な駆動トルクT[N・m]は、次の計算式(数1)、
T = L・m・g・sin θ …(1)
によって計算することができる。
【0125】
Lおよびmは、比例定数であり、装着者10によって決まる固定値である。処理回路113は、これらの値をパラメータとして予め設定しておくことによって、駆動トルクT、したがって支援力モーメントを算出する。パラメータは、ハンディ端末装置150を使用して設定することができ、メモリ118にストアされる。
【0126】
このように、装着型支援ロボット装置1は、装着者10を様々な作業姿勢で動かすために必要な駆動トルクTを、角度センサ67によって検出される角度θから力学的に解析することによって、算出するので、筋肉を動かそうとしたときに筋肉に流れる微弱な表面筋電位信号を用いることなく、表面筋電位センサを装着する煩わしさをなくすことができる。
【0127】
また、支援ロボット装置1は、予め設定された動作パターンの再生方式ではなく、駆動トルクTを力学的に算出するので、装着者10の動作の切り替わり時に、不連続になることがない。
【0128】
ここで、ハンディ端末装置150を使用して設定されるパラメータを下記の表1に示す。パラメータNo「01」〜「07」は、遊脚側の歩行制御パラメータであり、パラメータNo「11」〜「13」は、支持脚側の歩行制御パラメータである。遊脚は、地に着いていない方の脚であり、支持脚は、地に着いている方の脚である。歩行制御パラメータは、歩行動作をアシストするためのパラメータである。
【0129】
パラメータNo「21」〜「25」は、上体制御パラメータである。上体制御パラメータは、上体の動作をアシストするためのパラメータである。パラメータNo「31」〜「35」は、中腰制御パラメータである。中腰制御パラメータは、中腰の動作をアシストするためのパラメータである。パラメータNo「41」〜「45」は、ティーチングパラメータである。ハンディ端末装置150は、これらのパラメータを記憶する記憶領域を有している。s、secは、秒を示す。表1の初期値とは、初期の設定値であり、その後ユーザが、ハンデイ端末装置150によって、変更し設定しなおすことができる。値の範囲(単位%)とは、モータ64が出せる最大の支援力モーメント、すなわちアシスト力を100%とした割合である。
【0131】
ハンディ端末装置150を使用して設定されるパラメータに関して、本発明の実施の他の形態では、そのハンディ端末装置150を使用して設定されるパラメータを下記の表2に示す。パラメータNo「01」は、遊脚側の歩行制御パラメータであり、パラメータNo「02」は、支持脚側の歩行制御パラメータである。遊脚は、地に着いていない方の脚であり、支持脚は、地に着いている方の脚である。歩行制御パラメータは、歩行動作をアシストするためのパラメータである。
【0132】
パラメータNo「03」、「04」は、上体制御パラメータである。上体制御パラメータは、上体の動作をアシストするための持ち上げアシスト制御と持ち下げアシスト制御のパラメータである。パラメータNo「05」は、中腰制御パラメータである。中腰制御パラメータは、中腰の動作をアシストするためのパラメータである。ハンディ端末装置150は、これらのパラメータを記憶する記憶領域を有している。初期の設定値がプログラムで設定されており、その後ユーザが、ハンデイ端末装置150によって、変更し設定しなおすことができる。
【0134】
図33は、支援ロボット装置1の処理回路113によって実行されるアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。アシストスーツ制御処理は、電源起動シーケンス処理、パラメータ書換えシーケンス処理、姿勢情報入力シーケンス処理および股関節制御シーケンス処理の4つの処理で構成されている。処理回路113は、処理回路113の電源が投入されてパワーアシスト用電動モータ64以外の構成要素への電力の供給が開始され、動作可能状態になると、ステップA11に移る。
【0135】
ステップA11では、処理回路113は、電源起動シーケンス処理を実行する。処理回路113は、ハンディ端末装置150から送信されるアシストに必要なパラメータの受信完了を待っている。処理回路113は、アシストに必要なパラメータの受信完了後、装着者10が直立している直立状態での左右の各角度センサ67による各大腿12の回転角度θの初期化を行い、パワーアシスト用電動モータ64用の電源をオンする。
【0136】
アシストに必要なパラメータが既に受信されている実施の形態では、ハンディ端末装置150からの送信を待たずに、予め定める一定時間(たとえば3秒)経過後、受信済みのパラメータを使って装着者が直立している直立状態での各大腿12の回転角度の初期化を行い、パワーアシスト用電動モータ64用の電源をオンする。このことにより、ハンディ端末装置150が無くても電源起動を可能としている。
【0137】
ステップA12では、処理回路113は、パラメータ書換えシーケンス処理を実行する。アシストに必要なパラメータは、装着者の持っているハンディ端末装置150から適宜送られてくる。アシストスーツ制御処理は、このパラメータの更新を常時実行できるようにするために、パラメータ書換えシーケンス処理をメインループ内で行なっている。メインループは、ステップA12〜A14によって形成される処理手順のループである。
【0138】
ステップA13では、処理回路113は、姿勢情報入力シーケンス処理を実行する。姿勢情報入力シーケンス処理は、装着者10の姿勢に関するデータを取得する処理である。
【0139】
ステップA14では、処理回路113は、股関節制御シーケンスなどのアシスト制御処理を実行して、ステップA12に戻る。アシスト制御処理は、ステップA13で取得されたデータに基づいて、歩行動作、上体動作および中腰動作の各動作に対するパワーアシスト用電動モータ64による駆動に必要なアシストトルクを計算して出力する処理である。
【0140】
処理回路113は、メインループを20m秒間隔で実行しており、支援ロボット装置1は、装着者へのスムーズなアシストを実現している。処理回路113は、アシストを開始する前、数秒間で装着者の動作を判断し、判断後アシストトルクを出力する。支援ロボット装置1は、健常者のアシストを目的としており、動作の開始時に数秒間アシストがなくても、実用上支障はない。
【0141】
図34は、処理回路113による姿勢情報入力シーケンス処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図32に示したステップA13が実行されると、ステップC11に移る。
【0142】
ステップC11では、処理回路113は、加速度・角速度センサ103からの出力を受信して、読込む。
【0143】
ステップC12では、処理回路113は、モータエンコーダである各角度センサ67の検出角度θ、および加速度・角速度センサ103の出力を読込む。処理回路113は、パワーアシスト用電動モータ64に含まれる角度センサ67から、パワーアシスト用電動モータ64の出力軸65に対応する駆動軸62の回転角度、つまり股関節角度を、各モータドライバ121を介して読込む。ステップC13では、処理回路113は、股関節角速度、つまりパワーアシスト用電動モータ64による駆動軸62の回転角度の角速度ωを計算して、姿勢情報入力シーケンス処理を終了する。
【0144】
図35は、処理回路113によるアシスト制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図33に示したアシスト制御のステップA14が実行されると、ステップD11,D13,D15ステップD11に移る。
図35のとおり、処理回路113は、歩行・持ち上げ・持ち下げ・中腰の各動作を判断して、歩行・持ち上げ・持ち下げ・中腰の各アシスト制御のいずれかを実行する。ステップD11、D12は、歩行動作に対する処理である。ステップD13、D14は、上体動作の持ち上げ、持ち下げに対する処理である。ステップD15、D16は、中腰動作に対する処理である。歩行動作に対する処理、上体動作に対する処理および中腰動作に対する処理は、並列に処理される。
【0145】
ステップD11では、処理回路113は、歩行判断を行なう。処理回路113は、角度センサ67による検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に応答して、歩行動作を行なっているか否かを判断する。ステップD12では、処理回路113は、歩行アシスト制御を行なう。処理回路113は、歩行動作を行なっているとき、時々刻々変化する角度θおよび加速度・角速度センサ103に基づいて、歩行動作をアシストするための遊脚のアシストトルクおよび支持脚のアシストトルクを計算する。
【0146】
ステップD13では、処理回路113は、上体判断を行なう。処理回路113は、角度センサ67の検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に応答して、上体動作を行なっているか否かを判断する。上体動作は、持ち上げ、持ち下げのために、上体を曲げ、次に上体を起こす動作である。ステップD14では、処理回路113は、上体制御を行なう。処理回路113は、上体動作を行なっているとき、上体動作をアシストする持ち上げアシスト制御、持ち下げアシスト制御のためのアシストトルクを計算する。処理回路113は、たとえば、両脚に必要な角度θに比例したアシストトルクを算出する。
【0147】
ステップD15では、処理回路113は、中腰判断を行なう。処理回路113は、角度センサ67の検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に応答して、中腰アシスト動作を行なっているか否かを判断する。中腰アシスト動作は、中腰姿勢での動作である。ステップD16では、処理回路113は、中腰アシスト制御を行なう。処理回路113は、中腰アシスト動作を行なっているとき、中腰動作をアシストするためのアシストトルクを計算する。処理回路113は、両脚に必要な、たとえば、両脚に必要な角度θに比例したアシストトルクを算出する。ステップD11〜D16は、算出演算動作をするステップである。
【0148】
ステップD17では、処理回路113は、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御に関して、ステップD11、D13、D15の各判断に従って重複することなく各アシスト制御出力を調整し、予め設定された優先順位に従って判定を行い、駆動ステップD18で、処理回路113は、前記優先順位に従って、算出したアシストトルクを出力するように、各モータドライバ121を制御して、パワーアシスト用電動モータ64を駆動させて、アシスト制御シーケンス処理を終了する。
【0149】
本実施形態の処理回路113では、上体アシスト制御である持ち上げアシスト制御、持ち下げアシスト制御の優先度が最も高く、中腰アシスト制御の優先度がそれに続き、歩行アシスト制御の優先度が最も低くなるように予め設定されている。この優先順位は、特に農作業をアシストするために定められたものであり、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御の優先順位は、必要に応じて、適宜設定変更することができる。
【0150】
このように、本実施形態では、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御に関して優先順位を予め設定しておくことによって、処理回路113において装着者10の動作を推定して、歩行アシスト制御、上体アシスト制御および中腰アシスト制御が混ざらないように明確に切り分ける。
【0151】
処理回路113による
図34のステップD11における歩行判断処理の処理手順は、
図39〜
図47に関連して後述する。
【0152】
図36は、処理回路113による歩行アシスト制御処理の処理手順を示すフローチャートである。歩行制御処理では、装着者の姿勢情報の内、時々刻々変化する角度センサ67による検出角度θおよび加速度・角速度センサ103の出力に基づいて、歩行時に必要とされる遊脚側トルクと支持脚側トルクを計算する。処理回路113は、
図34に示したステップD12が実行されると、ステップF11に移る。
【0153】
ステップF11では、処理回路113は、歩行アシスト開始を検出する。処理回路113は、遊脚側の脚が歩行判断ポイントに位置付いたことを検出する。ステップF12では、処理回路113は、遊脚側のアシストトルクを計算する。ステップF13では、処理回路113は、支持脚側のアシストトルクを計算する。ステップF14では、処理回路113は、歩行が繰り返されているかの度合いである歩行割合による補正を行なうことで、歩行アシストトルクを算出する。後述の
図40(2)のグラフは、の
図40(1)のグラフに示される歩行開始時の左右の角度θと、予め定める歩行度合(すなわち歩行割合)を掛けて算出された支援力モーメントの出力結果を示す。
【0154】
図37は、処理回路113による遊脚側のアシストトルクの計算処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図36に示したステップF12が実行されると、ステップF21に移る。
【0155】
ステップF21では、処理回路113は、遊脚であるか否かを判断し、遊脚であると判断された場合には、ステップF22に進み、股関節角度θを読み込む。遊脚でないと判断された場合には、当該計算処理を終了する。遊脚であると判断された場合には、遊脚アシスト制御が順次実行される。
本発明の実施の他の形態では、遊脚であると判断された場合には、遊脚であると判断された場合には、歩行シーケンスが、「振上開始」→「振上中」→「振下開始」→「振下中」と順次実行され、振り下げ完了で終了する。
【0156】
ステップF22では、角度センサ67から検出した股関節角度θを読み込む。ステップF23では、加速時間経過まで予め定められたトルクを維持する。ステップF24では、加速時間経過では、遊脚の角度θが予め定める角度(たとえば20°)になるまでの間、予め定める一定速度で遊脚のアシストトルクを減少する。
【0157】
図38は、処理回路113による支持脚側のアシストトルクの計算処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図36に示したステップF13が実行されると、ステップF31に移る。
【0158】
ステップF31では、処理回路113は、支持脚であるか否かを判断し、支持脚であると判断された場合には、ステップF32に進み、支持脚でないと判断された場合には、当該計算処理を終了する。支持脚であると判断された場合には、直立姿勢を保つためのトルクを出力する。
【0159】
ステップF32で、処理回路113は、角度センサ67による股関節角度θを読み込み、ステップF33で、処理回路113は、加速時間経過まで予め定めるトルクを維持する。ステップF34で、加速時間経過後は、支持脚の角度θが予め定める角度(たとえば零)になるまで、または他脚である遊脚が着地するまでの間、支持脚の角度に比例して、支持脚のアシストトルクを零まで減少させる。
【0160】
図39は、支援ロボット装置1による歩行支援が継続されているときにおける動作を説明するためのタイムチャートである。
図39(1)は装着者10が歩行する動作を示し、
図39(2)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形のライン126、127を示し、
図39(3)は加速度・角速度センサ103によって検出される装着者10の上下方向の加速度α1の波形を示し、
図39(4)は左右の駆動源60L、60Rによって大腿12L、12Rにそれぞれ与えられる左右の支援力モーメント128、129である振り下げ支持力モーメントに添え字aを付して、および振り上げ力モーメントに添え字bを付して、それらの波形を示す。
図39に示される第1歩〜第3歩の各歩行期間W1〜W3において、対となる期間W1、W2の全体に期間を100%とすると、各期間W1、W2は50%ずつである。期間W3以降、期間W1、W2と同様な動作が繰り返される。
【0161】
先ず、期間W1の時刻t10で、右足が着地して支持脚となる。歩行時に着地するときの下肢、したがって大腿の角度θは、0°付近ではなく、20〜30°付近である。左右のいずれか一方の足が着地したとき、加速度・角速度センサ103の上下方向の加速度α1の出力は、
図39(3)のとおり、最大値となり、このことは処理回路113によって検出される。右足の角度センサ67Rの検出角度θRは、
図39(2)のライン127に示され、着地時刻t10では、最大値に近似する大きい値、たとえば25°であり、これに対して、左足の角度センサ67Lの検出角度θLは、
図39(2)のライン126に示され、着地時刻t10では、最小値に近似する小さい値、たとえば0°である。したがって、処理回路113は、着地時刻t10で、これらの角度θR、θLの大小を比較して、大きいほうの角度θR(θL<θR)が得られた足が着地した支持脚であり、または小さいほうの角度θLが得られた足が遊脚であると判断する。
【0162】
着地時刻t10から時刻t13までの支持期間Waだけ、支持脚に振り下げて支持する方向124の振り下げ支持力モーメント129a(
図39(4))が、駆動源60Rによって与えられる。支持力モーメント129aは、予め定める時間Wcだけ予め定める一定値(たとえば60〜10Nm)を維持し、その後、支持力モーメントを弱めていくのに応じて時間経過に伴って減少するように、または角度センサ67Rで検出した角度θRに比例して減少するように、駆動源60Rによって与えられる。右足の角度センサ67Rの検出角度θRは、
図39(2)のライン127に示され、時刻t10で、であり、時刻t10から時間経過に伴なって減少してゆき、予め定める振り下げ支援終了設定角度θ0(たとえば0°)になった時刻t13で、振り下げ支援を終了する。すなわち支持脚のアシストは、予め定める時間Wcは、予め定める振り下げアシスト力、すなわち振り下げ力モーメント(前述のように、たとえば60Nm)を出力する。この時間を過ぎたら、角度センサ67Rで検出した支持脚の角度θRが予め定める角度、たとえば0°までで、遅くても他の足が着地するまでは、角度センサ67Rで検出した角度θRに比例して、支持アシスト力、すなわち支持力モーメント129aを出力する。こうして。右足が着地したとき、右の股関節角度は、25°程度で着地して、その後、減少する。そのとき、既に着地している左の股関節角度が、真下の付近の最小値となっている。その後すぐに、遊脚である左足を振り上げるので、左の股関節角度が上昇してゆく。
【0163】
この期間W1において、遊脚である左足には、着地時刻t10から時刻t11までの振り上げ期間Wbにおいて、振り上げ力モーメントの加速度を、振り上げる力を出して振り上げを加速している時間である予め定める時間Wd(Wd<Wb)だけ、振り上げる方向125の振り上げ力モーメント128b(
図39(4))が、予め定める一定値(たとえば80〜20Nmの範囲内の値)で、駆動源60Lによって与えられる。期間W1における遊脚である左足の角度センサ67Lの検出角度θLは、
図39(2)のライン126に示され、時刻t10で最小値、たとえば0°であり、時刻t10から時間経過に伴なって増加してゆき、この時間Wd経過後の時刻t11では、予め定める振り上げ支援終了設定角度θ20(たとえば20°)となり、振り上げ支援を終了する。その後、遊脚の角度θLは、時刻t12で最大値になる。すなわち遊脚のアシストは、予め定める時間Wd、予め定める振り上げアシスト力128bを出力する。この時間Wdを過ぎたら、角度センサ67Lで検出した遊脚の角度θLが予め定める角度、前述のように、たとえば20°までは、予め定める速度で減算して、振り上げアシスト力128bを出力する。こうして、右足が着地すると、左足は振り上げて、遊脚となり、股関節角度が増加して屈曲し、大きくなる。右足は支持脚となり、後方へ蹴り、股関節角度は減少し小さくなって伸展する。屈曲と伸展は、
図31における直下方向の0°を境目に表示し、時計まわりのプラス側を屈曲といい、反時計まわりのマイナス側が伸展という。
【0164】
次に、期間W2では、時刻t20以降、処理回路113による駆動源60の左右の制御動作が、期間W1とは逆に行なわれる。左足が着地して支持脚となり、この着地時刻t20から時刻t23までの支持期間Waだけ、支持脚に振り下げて支持する方向124の支持力モーメント128aが、駆動源60Lによって与えられる。左足の角度センサ67Lの検出角度θLは、
図39(2)のライン126のとおり、時刻t20で、たとえば25°であり、時刻t20から時間経過に伴なって減少してゆき、予め定める振り下げ支援終了設定角度θ0になった時刻t23で、振り下げ支援を終了する。
【0165】
この期間W2において、遊脚である右足には、着地時刻t20から時刻t21までの振り上げ期間Wbだけ、振り上げる方向125の振り上げ力モーメント129bが、駆動源60Rによって与えられる。期間W2における遊脚である右足の角度センサ67Rの検出角度θRは、
図39(2)のライン127のとおり、時刻t20で最小値であり、時刻t20から時間経過に伴なって増加してゆき、時刻t21では、予め定める振り上げ支援終了設定角度θ20となり、振り上げ支援を終了する。遊脚の角度θRは、時刻t22で最大値になる。
【0166】
歩行支援は、右足が着地する時刻t30から始まる期間W3以降、期間W1、W2と同様な動作が繰り返されて継続される。
【0167】
本発明の実施の他の形態では、期間W1において、振り下げ支持力モーメント129aを出力する支持期間Waは、予め定める時間であってもよく、この時間Waを過ぎたら、角度センサ67で検出した支持脚の角度θが予め定める角度、たとえば0°までで、遅くても他の足、すなわち遊脚が着地する時刻t20までは、角度センサ67で検出した角度θに比例して、支持力モーメント129aを出力する。
【0168】
本発明の実施の他の形態では、処理回路113は、支持脚と遊脚との判断を、着地時刻t10における角度θR、θLを予め定めるレベルでレベル弁別することによって、実現してもよい。振り下げ支援の終了は、期間W1の遊脚が着地する時刻t20に定めてもよい。
【0169】
処理回路113は、電動モータ64に取り付けた左右の各角度センサ67の振り角度θR、θLが真下方向付近の最小値、たとえば零となったとき、その角度θRまたはθLに対応する足が着地したと判断してもよい。角度センサ67で検出した着地した支持脚には、支持する方向にアシストする。
【0170】
左右いずれかの着地した支持脚は、角度センサ67によって上述のように検出してもよいが、実施の他の形態では、処理回路113は、加速度・角速度センサ103で検出した3次元の加速度α1、α2、α3によって支持脚を検出してもよい。
【0171】
図40は、支援ロボット装置1による歩行支援が開始されるときの処理回路113の動作を説明するためのタイムチャートである。
図40(1)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形126、127を示し、
図40(2)は左右の駆動源60L、60Rによって大腿12L、12Rにそれぞれ与えられる左右の支援力モーメント128、129である振り下げ支持力モーメントに添え字aを付して、および振り上げ力モーメントに添え字bを付して、それらの波形を示す。期間W11〜W31は
図39の期間W1〜W3にそれぞれ対応し、時刻t101〜t301は
図39の時刻t10〜t30にそれぞれ対応し、添え字aは支持力モーメントを示し、添え字bは振り上げ力モーメントを示す。
【0172】
処理回路113は、各期間W11〜W31の時刻t101〜t301で加速度・角速度センサ103の上下方向の加速度α1の出力が最大値となることによって、足が着地したことを検出する。さらに左右の各角度センサ67で検出した角度θL、θRが、
図40(1)のライン126、127のとおり、左右逆方向に、予め定める第1の回数(たとえば2回)だけ、振れていることを検出することによって、歩行開始が開始されたことを検出する。その後、予め定める第2の回数(たとえば3回)だけ、歩行が繰り返されているかの度合(すなわち、繰り返された回数)に従って、上昇させ、この度合に応じて左右の支援力モーメント128、129を
図40(2)のとおり、増加させることによって、毎回の歩行開始のタイミングに遅れることなく、左右股関節付近に配置した駆動源60によって、歩行支援する。すなわち、処理回路113は、カウンタを有し、このカウンタによって、歩行アシストについて、左右の角度センサ67で検出した角度θが、左右逆方向に2〜3回振れていることを計数、検出して、歩行開始を検出し、その後の2〜3回の間で歩行アシスト力を増加させる。こうして、処理回路113は、歩行アシストについては、先ず、左右の角度センサ67で検出した角度θL、θRが、左右逆方向に2〜3回振れていることで歩行開始を検出し、その後、2〜3回の間で歩行アシスト力を増加させる。
【0173】
図41は、支援ロボット装置1による歩行支援が終了されるときにおける動作を説明するためのタイムチャートである。
図41(1)は装着者10が歩行する動作を示し、
図41(2)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形126、127を示し、
図41(3)は加速度・角速度センサ103によって検出される装着者10の上下方向の加速度α1の波形を示す。
図41(1)〜(3)は、
図39(1)〜(3)にそれぞれ対応する。
図41に示される歩行支援が終了される第1歩〜第3歩の各歩行期間W41〜W61において、対となる期間W41、W51の全体に期間を100%とすると、各期間W41、W51は50%ずつである。期間W41では、右足の着地の時刻t401の後、左足の着地まで左右の角度θL、θRがライン126,127のとおり、得られている。次の期間W51では、左足の着地の時刻t501の後、右足が着地することによって、両足が着地が時刻t601までの間に、時刻t502以降、左右の角度θL、θRの角度差Δθ1が予め定める値Δθ10未満である時間W502が、予め定める時間W70以上(W41<W70≦W502)であることが、処理回路113によって検出されると、歩行が繰り返されていないと判断する。
【0174】
図42は、支援ロボット装置1による歩行支援が終了されるときの処理回路113の動作を説明するためのタイムチャートである。
図42(1)は左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRの各波形126、127を示し、
図42(2)は左右の駆動源60L、60Rによって大腿12L、12Rにそれぞれ与えられる左右の支援力モーメント128、129である振り下げ支持力モーメントに添え字aを付して、および振り上げ力モーメントに添え字bを付して、それらの波形を示す。時刻t701で左右の角度センサ67L、67Rによる検出角度θL、θRが減少してゆき、それに応じて、処理回路113は、たとえば振り下げ支持力モーメント129a1のように減少する。時刻t801以降では、検出角度θL、θRが最小値のままになり、支援力モーメントを零とする。こうして、処理回路113は、左右の角度センサ67L、67Rで検出した振れ角度θL、θRが小さくて歩行が終了したことを検出すると、歩行アシストを直ちに終了する。持ち上げアシスト用手袋装置190の物体センサ191〜194が押されたままで物体を検出しており、持ち上げ終了角度に達していない状態で、持ち上げアシストが継続されている場合は、歩行を検出しても、物体センサ191〜194がOFFになるまで、物体を持ち上げて運搬歩行している状態で、持ち上げアシストを選択している判断して、歩行支援の動作には入らない。
【0175】
図43は、処理回路113の歩行支援の判断動作を説明するためのフローチャートである。歩行判断については、ステップs0からステップs1に移り、持ち上げアシストが継続されているとき、ステップs2で歩行の角度θL、θRを検出し、ステップs4で予め定める最小値θL01、θR01以上であって(θL01≦θL、θR01≦θR)、ステップs5で角度θL、θRが交互に逆方向であって、すなわち、左右が逆位相になって繰り返されるとき、ステップs3、s6、s7でステップs4、ステップs5を予め定める回数(たとえばrは複数の3回)繰り返して、歩行が繰り返されていると判断しても、ステップs8で、手袋スイッチがOFFになるまで、すなわち手袋装置190の物体センサ191〜194が物体を検出しているならば、運搬歩行で持ち上げアシストを選択していると判断して、歩行支援の動作には入らず、そうでなければステップs9で歩行支援の動作を行なう。さらにまた、歩行時の角度センサ67の波形が、前述のように、左右の大腿12で逆位相になって繰り返され、たとえば、足を振り上げた角度θが最大になったことを、前回値と比較して増加から減少に転じたことで歩行を判定する。このようにして最大になったことの回数をカウンタで積算し、予め定める回数である2〜3回繰り返されたことをカウンタの積算値で判断して、歩行が繰り返されていると判断する。その後、後述の
図45に示されるように、カウンタの積算値の増加に従って、歩行のアシスト力を増加させることができる。
【0176】
ステップs10で左右の角度センサ67で検出した振れ角度θL、θRが小さいなら(θL<θL01、θR<θR01)、ステップs14で左右角度が小さいことを表わすフラグをONとし、左右角度が小さい時間を計時するタイマをカウントアップし、その時間が予め定める時間W11aより長いと、ステップs16で歩行終了であり、歩行アシストを終了する。すなわち、左右の角度センサ67で検出した振れ角度θの差Δθ1(
図41(2))が小さくて歩行が終了したことを検出すると、歩行支援を直ちに終了する。
ステップs10で左右の角度センサ67で検出した振れ角度θL、θRが大きいなら(θL01≦θL、θR01≦θR)、ステップs11でステップs14で左右角度が小さいことを表わすフラグをOFFとし、ステップs12で左右角度が小さい時間を計時するタイマを零にリセットして、ステップs9へ戻る。
【0177】
図44〜
図47は、処理回路113による歩行支援の動作を説明するためのフローチャートである。
図44のステップs20からステップs21に移り、加速度・角速度センサ103によって検出される上下方向の加速度α1が最大になったことが判断されると、ステップs22へ進む。足が着地すると、上下方向の加速度α1は、その着地の衝撃で最大となる。これから着地しようとする遊脚の角度は、最大に振られてから振り戻されて、たとえば20°程度になっている。既に着地している支持脚は、振り下げられていて角度θが真下方向付近の0付近であり、最小値になっている。たとえば左足の角度θLがほぼ零であれば、ステップs23で左足が着地すれば、その左足が支持脚となり、右足が振り上げられて遊脚になる。ステップs24で右足が着地すれば、右足の角度θRがほぼ零であれば、ステップs25で右足が着地によって支持脚となる。
【0178】
ステップs22、s24で、角度θL、θRがいずれも大きい値であれば、ステップs26では、装着者10は歩行していなくて、両足が浮いており、走っていると判断し、安全のために歩行支援動作を停止する。
【0179】
図44のステップs23、s25の着地検出後、
図45のステップs27以降に移り、ステップs2、s29で角度θL、θRの最大値が交互に検出されれば、ステップs27で零にリセットされていたカウンタの計数値qについて、ステップs30で1歩ずつ計数し、ステップs31で左右の支援力モーメントTLq、TRqを増加分ΔTずつ漸増してゆく。このような動作をステップs32で予め定める回数(たとえばqは複数の3回)だけ繰り返す。
【0180】
図45のステップs23から、
図46のステップs33以降に移り、支持脚に支持力モーメントを与える。ステップs33で、着地を
図39の時刻t10またはt20で検出後、支持脚の経過時間W71と遊脚の経過時間W81との計時を開始する。ステップs34で支持脚に、予め定める一定値の支持力モーメント(
図39(4)のライン129a,128a)を与える。ステップs35では、支持脚の経過時間W71が支持力モーメントを出して支持している時間である予め定める時間Wc経過したかが判断され、そうであれば、予め定める時間Wc経過後、次のステップs36で支持力モーメントを支持脚の角度θに比例した値で、ステップs37で支持脚の角度θが0°になるまで、またはステップs38で遊脚が着地するまで、出力する。
【0181】
図46のステップs37またはステップs38から、
図47のステップs39に移り、遊脚に、予め定める一定値の振り上げ力モーメント(
図39(4)のライン128b、129b)を与える。ステップs40では、遊脚の経過時間W81が予め定める時間Wd経過したかが判断され、そうであれば、予め定める時間Wd経過後、次のステップs41で振り上げ力モーメントを予め定める一定速度で減少させる。ステップs42で遊脚の角度θが予め定める角度(たとえば20°)になるまで、振り上げ力モーメントを出力する。
【0182】
図48は、処理回路113による持ち上げ動作のための上体判断処理の処理手順を示すフローチャートである。上体判断処理では、装着者10の姿勢情報を使って、股関節を曲げ、次に上体を起こそうとしているかどうかを判断している。処理回路113は、
図34に示したステップD13が実行されると、ステップG11に移る。
【0183】
ステップG11で、処理回路113は、股関節の検出角度θを演算して、股関節角速度ωを読込む。ステップG12で、処理回路113は、持ち上げアシスト動作開始ポイントを検出する。ステップG11で計算した股関節角速度ωがパラメータNo「41」の「屈曲側」を越えた位置を検出し、その位置を上体曲げ動作開始ポイントとする。ステップG13で、処理回路113は、持ち上げ動作開始のための開始スイッチとして働く物体センサ191〜194の出力による検出を待ち、その開始スイッチのONが検出されると、上体制御出力を開始し、予め定める持ち上げ終了角度に減少して到達した段階で、持ち上げアシストの上体制御を終了する(ステップG14〜G16)。
【0184】
持ち上げのタイミングは、加速度、および角速度の検出信号によって、作成する。持ち上げのタイミングは、後述の
図50に示される加速度、および角加速度の検出信号によって、作成する。
【0185】
図49は、処理回路113による上体制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図35に示したステップD14が実行されると、ステップH11に移る。ステップH11では、処理回路113は、両脚に必要な、角度センサ67による股関節角度θに比例したアシストトルクを算出する。ステップH12では、その算出したアシストトルクを維持する。角度θが0になるとき、すなわち真上に起き上がったとき、大きな持ち上げアシストが作用すると、装着者10はバランスを崩しやすく、この状態を避けなければならない。そこで、前述のとおり、本発明に従えば、股関節角度θに比例したアシストトルクを算出するが、実施の他の形態では、1次関数でもよく、2次関数でもよい。
【0186】
図50は、処理回路113による持ち上げ支援動作を説明するためのフローチャートである。装着者10が持ち上げようとする物体を掴むことによって、ステップu3において持ち上げアシスト用手袋装置190の物体センサ191〜194が押されたままで、持ち上げ終了角度に達していない状態で、持ち上げアシストが継続されている場合は、ステップu1において歩行を検出しても、物体センサ191〜194がOFFになるまで、物体を持ち上げて運搬歩行している状態で、持ち上げアシストを選択しているとして、ステップu4の歩行のアシストには入らない。持ち上げ判断については、左右の角度センサ67でそれぞれ検出した角度θL、θRが、左右ほぼ同じであっても(θL=θR)、そうでなくて開脚して持ち上げるときであっても、ステップu2のように、腰が曲げられる方向に振れていて(前かがみの姿勢、θL02≦θL、θR02≦θR、ここで、θL02、θR02は、予め定める値である)、歩行アシストされてなくて、ステップu3で手袋スイッチSWがONである物体センサ191〜194が押されたことによって、ステップu4において、持ち上げアシストを開始する。ステップu5、ステップu6において、角度θL、θRが予め定める持ち上げ終了角度θL02、θR02未満になるか(θL<θL02、θR<θR02)、物体センサ191〜194がOFFで、ステップu8で持ち上げアシストを終了する。ステップu7において、検出角度θL、θRが、予め定める持ち上げ終了角度θL02、θR02以上であれば(θL02≦θL、θR02≦θR)、物体センサ191〜194がONの持ち上げ開始のトリガを保持してラッチする。
【0187】
すなわち、持ち上げアシストについては、左右の角度センサ67で検出した角度θL、θRが、腰が曲げられる方向に振れていて、歩行アシストしていない場合で、手袋装置190の物体センサ191〜194が押されたことによって、持ち上げアシストを開始する。なお持ち上げアシストでは、予め定める持ち上げ力モーメントを出力する。予め定める持ち上げ終了角度になるか、物体センサ191〜194がOFFになると、持ち上げアシストを終了する。検出角度θL、θRが、たとえば零では、まっすぐ直立した角度であり、持ち上げるときには勢いがつくので、角度θL、θRが、0°では手前で切れる感じになる。したがって、持ち上げ終了角度θL02、θR02は、0°よりは少しのけぞった予め定める値、たとえば―20°を設定値とする。角度θは
図31の右回りに正とし、―20°とは、180°を超える値となったときであり、真上を超えてのけぞる角度である。
【0188】
前述の本発明の実施の形態では、
図50のステップu3における手袋スイッチがON、すなわち手袋装置190の物体センサ191〜194が物体を検出しているON信号で、持ち上げ開始を検出し、ステップu7における物体を検出しないOFF信号で持ち上げ終了を検出する。
【0189】
これに対して、実施の他の形態では、手袋装置190の物体センサ191〜194を用いないで、持ち上げアシスト制御を実現し、できるだけシンプルなシステムにして、手袋装置190を使うのが煩わしいとか、物体センサ191〜194が故障するなどの問題を解決する。手袋装置190を使用しない実施の第1の形態では、処理回路113は、
図50のステップu3に代えて、
図60のフローチャートを実行する。ステップu75から次のステップu76において、歩行の着地を検出した同じ加速度・角速度センサ103の出力に応答し、上下方向の加速度α1が予め定める第1の閾値(たとえば1.15G)を超えたら、また、予め定める第2の閾値(たとえば0.85G)以下になったら、持ち上げ時の上下方向の動き開始とする。ステップu77では、歩行時の着地においても、加速度・角速度センサ103からは、上下方向の加速度α1が得られるので、歩行していない状態を検出した後、持ち上げアシストのための検出と判断する。また、物にぶつかったりしたときにも上下方向の加速度α1が得られるので、前後方向の加速度α2や左右方向の加速度α3が検出されていない第3の閾値(たとえば0.15G)以下の条件下の範囲(たとえば−0.15G〜0.15G)内で、持ち上げアシストのための検出とする。
【0190】
手袋装置190を使用しない実施の形態では、ステップu76、u77に、さらにAND条件で、ステップu78において、加速度・角速度センサ103によって検出した左右方向の軸線まわりの角速度ω3が、予め定める第1の角速度閾値(たとえば300°/s)を超えたら、また第2の角速度閾値(たとえば−300°/s)以下になったら、すなわち負の絶対値が大きくなったら、持ち上げ時の腰の回転の動きが生じたものと検出する。このように、持ち上げる場合の
図31における時計回り以外に、反時計回りの逆モーションになることもあるので、反時計回りである負の絶対値が大きいときも検出して、負である第2の角速度閾値による構成をも実現する。
【0191】
ステップu79では、歩行時にも角速度ωが得られるので、歩行していない状態での検出とする。また、物にぶつかったりしたときにも角速度ωが得られるので、上下軸線まわりの角速度ω2や前後軸線まわりの角速度ω3が、予め定める第3の角速度閾値(たとえば300°/s)を超えないで、また予め定める第4の角速度閾値(たとえば−300°/s)以下にならない条件下での検出とする。
【0192】
ステップu76〜u79に、さらにAND条件で、ステップu80では、さらにAND条件で、左右の角度センサ67で検出した角度が予め定める閾値である体幹11が前かがみになっている角度(たとえば10度〜90度)の範囲内であれば、ステップu82で、手袋装置190の物体センサ191〜194が物体を検出しているON信号と等価である持ち上げ開始のトリガ信号を出力し、
図50のステップu4へ移る。前述のステップu76〜u80の判断が否定であれば、ステップu81で、前記ON信号のトリガ信号をOFFとし、ステップu76へ戻る。
【0193】
図50のステップu7aでは、手袋装置190の物体センサ191〜194がOFF信号が出力され、手袋装置190がない実施の形態では、このOFF信号と等価である持ち上げ終了のトリガ信号は、左右の電動モータ64の角度θが、予め定める持ち上げ終了角度(たとえば、−20°)を超えたとき、得られ、持ち上げ終了とする。
【0194】
本発明の実施のさらに他の形態では、持ち上げのタイミングを、加速度の検出信号に代えて、電動モータ64の電流(トルク)を電流検出器で検出し、その検出信号によって、作成する構成であってもよい。特に電動モータ64の定格容量が小さく、出力トルクが小さい構成では、負荷電流の変動が大きく、検出が確実となり、有利である。
【0195】
図51は、処理回路113による持ち下げブレーキ動作のための上体判断処理の処理手順を示すフローチャートである。上体判断処理では、装着者10の姿勢情報を使って、股関節を曲げ、次に上体を前へ倒そうとしているかどうかを判断している。処理回路113は、
図34に示したステップD13が実行されると、ステップG11aに移る。
【0196】
ステップG11aで、処理回路113は、股関節の検出角度θを演算して、股関節角速度ωを読込む。ステップG12aで、処理回路113は、持ち下げアシスト動作開始ポイントを検出する。ステップG13aで、処理回路113は、予め定める値以上に、持ち下げ速度が出ていることを検出する。ステップG14aで、持ち下げ時間終了か、持ち上げアシスト開始か、歩行アシスト開始かを判断する。ステップG14aで持ち下げ時間終了であれば、ステップG15aで、ブレーキ力を零として、持ち下げアシストの上体制御を終了する。ステップG14aで持ち下げ時間終了でなければ、ステップG16aで、持ち下げアシストのために、予め定めるブレーキ力を出す。
【0197】
図52は、処理回路113による持ち下げブレーキ支援制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図34に示したステップD14が実行されると、ステップu20に移る。持ち下げブレーキアシストについては、ステップu22において左右の角度センサ67で検出した角度が、腰が曲げられる方向に振れていて、ステップu21において歩行アシストしていなくて、ステップu23において手袋装置190の物体センサ191〜194が押されていなくて、ステップu24、ステップu25において左右の角度センサ67で検出した角度より算出した角速度ωL、ωRが持ち下げ方向に予め定める角速度ωL01、ωR01より出ていることよって(ωL01≦ωL、ωR01≦ωR)、持ち下げブレーキアシストを開始する。
【0198】
当初は予め定めるブレーキ力を出して、計時した時間W1が予め定める持ち下げ時間W01後には(W01≦W1)、ブレーキ力を0として終了する。ステップu28、u29における持ち上げアシストや歩行アシストが開始されると、持ち下げブレーキアシストは、すぐに終了する。
【0199】
実施の他の形態では、手袋装置190を使用せず、加速度・角速度センサ103の出力によって、装着者の体幹の加速度、角速度を検出し、処理回路113は、加速度・角速度センサ103からの出力に応答し、検出された加速度または角速度が、物体の持ち下げブレーキ支援の開始に対応する値であるとき、左右の駆動源60によって、体幹11と各大腿12との相対的な角度が減少して持ち下げる方向に作用しているモーメントを制限するように、持ち下げブレーキ力モーメントを与える。したがって、手袋装置190、物体センサ191〜194を使用せず、装着者の体幹11の加速度、角速度を検出して、装着者10の体幹11のたとえば上下方向の加速度α1を検出し、または体幹11のたとえば左右方向の軸線まわりの角速度ω3を検出し、または体幹11のたとえば左右方向の軸線まわりの速度を検出する。加速度α1、角速度ω3または角度の値の範囲によって、持ち下げ時のたとえば上下方向の動きの開始を判断することができ、またさらに、それらの終了を判断することができる。体幹11の角度を角度センサで検出して、持ち下げブレーキ力モーメントを与えるように構成することもできる。このように、持ち下げブレーキ支援でも、手袋装置190を用いなくても、持ち下げ速度が予め設定された速度が出ていることで持ち下げブレーキ支援ができる。
【0200】
手袋装置190を使用せずに持ち下げブレーキ力モーメントを与える、この実施の形態では、処理回路113は、
図52のステップu23において、前述の
図60のフローチャートの動作を、前述と同様に実行する。
図52のステップu29aでは、
図50のステップu7aと同様な前述の動作が実行される。
【0201】
図53は、処理回路113による中腰判断処理の処理手順を示すフローチャートである。中腰判断処理では、装着者10の姿勢情報を使って中腰姿勢を判断する。処理回路113は、
図34に示したステップD15が実行されると、ステップK11に移る。
【0202】
ステップK11で、処理回路113は、股関節の検出角度θを演算して、股関節角速度ωを読込む。ステップK12で、処理回路113は、予め定める中腰角度になり、予め定める経過時間を過ぎたことを検出する。ステップK13で、中腰角度が終了か、歩行アシストが開始か、持ち上げアシストが開始か、持ち下げブレーキアシストが開始かを判断する。ステップK13で、中腰角度が終了、歩行アシストが開始、持ち上げアシストが開始、持ち下げブレーキアシストが開始のいずれでもなければ、中腰アシスト制御を維持する。ステップK13で、中腰角度が終了、歩行アシストが開始、持ち上げアシストが開始、持ち下げブレーキアシストが開始のいずれかであれば、中腰アシスト制御を終了する。
【0203】
図54は、処理回路113による中腰制御処理の処理手順を示すフローチャートである。処理回路113は、
図34に示したステップD16が実行されると、ステップL11に移る。ステップL11では、中腰保持角度を、それまでの角度センサ67で検出した角度の平均値を算出する。
【0204】
処理回路113によるステップL11では、中腰開始後、中腰保持トルクは、中腰保持角度より深くなった角度に比例した予め定めるばね力で、出力される。このばね力のばね定数は、予め定める経過時間内で、中腰角度の変化幅が予め定める角度変化幅より大きい場合は、ばね定数は予め定める値から比例して小さくして零とし、中腰アシストを効かないようにできる。
【0205】
図55は、処理回路113の中腰支援動作を示すフローチャートである。処理回路113は、ステップu40からステップu41〜u43において、持ち上げ支援、持ち下げブレーキ支援、歩行支援がなされていない場合、ステップu44において、下肢、したがって大腿12を直立した状態で、左右の各角度センサ67で検出した角度θ40iがいずれも、腰が曲げられる方向に振れていて(θ40i≦0)、かつ予め定める中腰角度θ40以上になり(θ40≦θ40i)、ステップu45において、予め定める経過時間W40(たとえば3秒間)を過ぎて継続されると、ステップu46において、予め定める中腰支援を開始する。こうして、中腰アシスト動作については、左右の角度センサ67で検出した角度が、腰が曲げられる方向に振れていて、持ち上げアシストや持ち下げブレーキアシストや歩行アシストがなされていない場合で、予め定める中腰角度になり、予め定める経過時間を過ぎると、予め定める中腰アシストを開始する。
【0206】
図56は
図55のステップu46において実行される処理回路113の中腰支援動作を示すフローチャートであり、
図57は予め定める経過時間W42(たとえば3秒間)内における装着者10の各検出角度に対応する姿勢を示すスケルトン図であり、その期間W42においてθmaxは最大値を、θminは最小値をそれぞれ示し、
図58は平均値θaveを示す一部のスケルトン図である。中腰支援動作中、ステップu61において、中腰保持角度を、経過時間W42内で、それまでの角度センサ67で計測された角度θ42jの平均値θaveとする。iは、時間W42内のサンプリング角度検出回数であり、1〜pの自然数である。
【0207】
たとえば、この中腰保持角度は、予め定める時間W42である3秒以上で予め定める角度θ42jである10°以上曲げていたとすると、その時間W42の平均の中腰角度θaveとする。中腰支援動作は、ステップu62において、角度変化幅Δ42jを演算する。
Δθ42j = θ42j ― θave …(4)
【0208】
ステップu63において、検出角度θ42jがその平均角度θave以下の角度(θave≦θ40j)になったとき、ステップu64では、予め定めるばね定数k43を設定して、ステップd25において、中腰支援力モーメントT42jが、次のとおり、演算される。
T42j = k43・Δθ42j …(5)
【0209】
ステップu63において、検出角度θ42jがその平均角度θaveより深い角度(θave≦θ40j)になったとき、ステップu66に移り、角度変化幅Δ42jが予め定める角度変化幅Δ43以上(Δ43≦Δ42j)であることが判断される。ステップu67で、角度変化幅Δ42jが予め定める角度変化幅Δ43以上である状態が予め定める経過時間W43だけ継続すると、ステップu68では、中腰支援力モーメントのためのばね定数k44jが演算される。
【0210】
図59は、処理回路113による中腰支援動作におけるばね定数k44jの特性を示すグラフである。このばね力のばね定数k44jは、予め定める経過時間W43内で、中腰角度θ42jの変化幅Δ42jが予め定める角度変化幅Δ43以上であるとき(Δθ42j ≦ Δ43)、その差Δ423(=Δ42j―Δ43)に依存して、
図59のように、予め定める値k43から1次関数116(
図59)で小さくして零とし、中腰支援動作を効かないようにする。
k44j = k43(1−Δθ42j/Δ43) …(6)
中腰支援力モーメントT42jは、次のとおり、演算される。
T42j = k44j・Δθ42j …(7)
【0211】
こうして、中腰支援力モーメントT42jは、式(7)のとおり、変化幅Δθ42jに比例して起き上がる力を発生する。この比例する力の定数をばね定数k44jとし、たとえば、変化幅Δθ42jが90°のときにフルにアシストするとして、中腰支援力モーメントT42jによって、10kgの物体を持ち上げる力を発生するように構成する。
【0212】
このばね定数k44jは、予め定める3秒間での中腰角度の変化幅Δθ42j、すなわち、
図57における(θmax−θmin)とするとき、この値Δθ42jが小さくて姿勢変化が小さいと、ばね定数k44jが大きくなり、硬く感じる支援にする。またこの値k44jが大きくて姿勢変化が大きいと、柔らかい支援にする。
【0213】
前述のステップu64、u65のとおり、検出角度θ42jがその平均角度θave以下の角度では、ばね定数k44jは、
図59のように、ライン116aで示される一定値である。
【0214】
図55を参照して、ステップu47において、左右の各角度センサ67で検出した角度θ40iがいずれも、予め定める中腰角度θ40未満になり、予め定める中腰終了角度になるか、ステップu48〜ステップu50において、歩行アシストが開始されるか、持ち上げアシストが開始されるか、持ち下げブレーキアシストが開始されると、中腰アシストを終了する。予め定める各値は、ハンディ端末装置150のキー入力によって設定される。
【0215】
図61は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置501を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図62は装着型支援ロボット装置501の装着状態を示す側面図である。
図63は装着型支援ロボット装置501の駆動源60付近を示す正面図であり、
図64は装着型支援ロボット装置501の駆動源60付近を示す側面図であり、
図65は装着型支援ロボット装置501の駆動源60付近を示す平面図である。
図61〜65に示される装着型支援ロボット装置501は、前述の
図1、
図2などの実施の形態に類似するが、特に、上アーム70aのように、前後方向の軸線まわりの角変位自在である受動回転軸73(
図1、
図2)をなくして剛性とした構成とする。下アーム80にある前後方向の軸まわりの受動回転軸83によって、上肢を左右方向に側屈することができるので、前後方向の軸線まわりの角変位自在である受動回転軸73(
図1、
図2)を省略して、
図61、
図62に示される装着型支援ロボット装置501の上アーム70aのように、剛性とした構成であってもよい。
【0216】
上アーム70aは、直線形状でなく、装着者10の体型に沿うように、装着者10側に凸に弯曲した形状でもよい。
【0217】
体幹下部保持具30の側部32である腰後方フレームは、アルミニウムなどの金属製の板形状でもよいが、合成樹脂製のパイプ構造などで実現されてもよい。パイプ構造とすることによって、軽量化と強度の向上を図ることができる。
【0218】
図66は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置551を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図67は装着型支援ロボット装置551の装着状態を示す側面図である。
図66、
図67に示される装着型支援ロボット装置551は、前述の
図30Dの実施の形態に類似し、さらに、前述の
図61〜
図65の実施の形態と同様に構成される。上アーム470には、前述の受動回転軸73が省略される。
【0219】
図68は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置601を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図69は装着型支援ロボット装置601の装着状態を示す側面図であり、
図70は装着型支援ロボット装置601の装着状態を示す背面図である。この実施の形態は、前述の
図61、
図62およびその他の実施の各形態に類似するが、注目すべきは、上アーム70に代えて、斜線を施して示す面状フレーム602が使用される。面状フレーム602は、体幹上部を少なくとも部分的に覆い、たとえば体幹上部の左右の腋窩(わきのした)の下方の側部から背部にわたって覆う曲面状に形成された部材である。面状フレーム602には、第1受動回転軸91が設けられ、体幹下部保持具230に連結される構成は、
図61、
図62およびその他の実施の形態と同様である。面状フレーム602は、
図70に示されるとおり、肩ベルト21、胸ベルト22に連結され、前述の背ベルト23、保護具36の働きを果たし、腰ベルト33に連結され、また駆動源60に連結されることは、前述の上アーム70に関連する構成と同様である。面状フレーム602は、たとえば、繊維強化プラスチックなどの合成樹脂製であってもよく、剛性である。
【0220】
図71は、本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置631を装着者10に装着した状態を示す背面図である。この実施の形態は、前述の
図68〜
図70の実施の形態に類似するが、注目すべきは、斜線を施して示す面状フレーム633は、装着者の体幹11の腹部に対応した背部までを、
図70の実施の形態に比べて、広く覆う。これによって、駆動源60の力モーメントを体幹11と大腿12との間に、確実に伝達でき、支援される装着者10の動作をさらに円滑にできる。
【0221】
図72は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置651を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図73は装着型支援ロボット装置651の装着状態を示す側面図である。
図74は装着型支援ロボット装置651の面状フレーム653の左側部を示す正面図であり、
図75は装着型支援ロボット装置651の面状フレーム653の左側面図であり、
図76は装着型支援ロボット装置651の面状フレーム653の平面図である。
図74、
図76は、左右対称に構成される面状フレーム653のほぼ左半分を示す。
図72〜76に示される装着型支援ロボット装置651は、前述の
図30、
図30D,
図66、
図67の実施の形態に類似し、さらに、前述の
図68〜71の実施の形態と同様に構成される。面状フレーム653は、上フレーム654と下フレーム655とが背後でたとえば背板と呼ぶことができる連結部材656によって連結される。上フレーム654と下フレーム655とは、装着者の側部に配置された上アーム70bによって連結されてもよいが、上アーム70bは省略されてもよい。上フレーム654は、肩ベルト21(
図74)に連結され、また前述の上アーム70と同様に、第1受動回転軸91によって胸ベルト22(
図75)に連結される。下フレーム655は、駆動源60の駆動軸または駆動源本体のいずれか一方に連結され、いずれか他方は下腹ベルト234(
図75)に連結される。支持アーム455は、下フレーム655に固定されてもよいが、省略されてもよい。連結部材656は、前述の
図10に関連して説明した調整機構58と同様に構成されてもよい。
図72〜76のその他の構成は、前述の実施の形態に類似する。
【0222】
図77は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置701を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図78は装着型支援ロボット装置701の装着状態を示す側面図であり、
図79は装着型支援ロボット装置701の装着状態を示す背面図である。この実施の形態は、前述の
図61、
図62などの実施の形態に類似するが、注目すべきは、通気性を確保して、装着者10が腕を通す個所を判りやすくするために、また着脱しやすいようにするために、メッシュ(網)付きの袖なしの前開きベスト703を、斜線を施して示すように、体幹上部保持具20の内面もしくは外面に取り付けて、上フレーム70、面状フレーム633などとともに、メッシュ状ベストを併用して、用いる。すなわち、メッシュ状ベスト703には、肩ベルト21、胸ベルト22、背ベルト23、およびこれらのベルト21、22、23を背後で連結する背連結ベルト704が、たとえば縫合などされて取り付けられる。
【0223】
ベスト703は、前開きとするために、前中心線に関して左右の前身頃(
図71の703L、703R)を着脱可能な連結具705、706(ファスナ、ジッパ、メカニカルファスナ、面ファスナ(たとえば、マジックテープ(商標)、ベルクロ(商標))など)で装着者の前方で連結するように、構成される。
【0224】
ベスト703には、内ポケットを両脇および背中に取り付け、その中に保冷材や冷却材または空調のための通気用ファンもしくはカイロを入れることができるようにする。
【0225】
図80は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置751を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図81は装着型支援ロボット装置751の装着状態を示す側面図である。この実施の形態は、前述の
図1、
図2などの実施の形態に類似する。好ましくは、保持片43aは、帯状ベルトの部分から
図80、
図81に斜線を施して示すように上方に延びて大腿12の外側方で立ち上がって拡がったほぼ筒状の形状を有し、大腿12の周囲を約1/4〜3/4周にわたる範囲を覆い、たとえば、上下の幅30〜100mmであり、厚さ5mmの合成樹脂製である。保持片43aが大腿12を1/4〜3/4周にすることによって、下アーム80から大腿12へ支援力モーメントを伝わりやすくする。
【0226】
図82は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置801を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図83は装着型支援ロボット装置801の装着状態を示す側面図である。この実施の形態は、前述の
図1、
図2の実施の形態に類似する。注目すべきは、
図1、
図2の連結具26,35、45として、接続、離脱のための操作が容易な構成を有する前述のプラスチックバックル、ワンタッチコネクタの代りに、
図82、
図82に参照符826、835、845で斜線を施して示すファスナや面ファスナ(たとえば前述のマジックテープ(商標)やベルクロ(商標)など)として商業的に入手可能な構成によって、実現される。
【0227】
図84は本発明の実施の他の形態である装着型支援ロボット装置851を装着者10に装着した状態を示す正面図であり、
図85は装着型支援ロボット装置851の装着状態を示す側面図である。この実施の形態は、前述の
図1、
図2などの実施の形態に類似する。注目すべきは、加速度・角速度センサ103aは、前述の
図14のように装着者10の体幹11の腰部に設けられてもよいが、
図84、
図85の実施の形態では、加速度・角速度センサ103aは、装着者10の正面位置で胸ベルト22Lまたは22Rに設けられる。加速度・角速度センサ103aは、胸部の3次元の加速度、すなわち上下方向の加速度α1および前後方向の加速度α2、さらに左右方向の加速度α3をそれぞれ検出する。物体の持ち上げ時には、装着者10における加速度・角速度センサ103aが設けられる胸部の動作は、
図14の実施の形態における腰部の動作に比べて、大きいので、検出し易くなり、加速度・角速度を高精度で検出できる。加速度・角速度センサ103aからの検出信号は、胸ベルト22、上アーム70、腰ベルト33に沿って設けられた可撓性ライン853を介して、制御ボックス53内の処理回路113に与えられる。
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)(a)装着者の体幹上部に装着されて保持される体幹上部保持具と、
(b)装着者の体幹下部に装着されて保持される体幹下部保持具と、
(c)装着者の大腿に装着されて保持される大腿保持具と、
(d)体幹下部の左右両側方にそれぞれ配置される駆動源であって、
股関節付近で、左右方向の軸線まわりに回転する駆動軸と、
駆動軸にその軸線まわりにトルクを発生する駆動源本体とを有する駆動源と、
(e)体幹上部の左右両側方で、上下に延びてそれぞれ配置される一対の上アームであって、各上アームの下端部と、駆動軸または駆動源本体のいずれか一方とが、左右方向の軸線まわりの相対的な回転を阻止されて取付けられる上アームと、
(f)上アームの上端部と、体幹上部保持具とを、左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第1受動回転軸と、
(g)体幹下部から大腿にわたって左右両側方で、上下に延びてそれぞれ配置される一対の下アームであって、各下アームの上端部と、駆動軸または駆動源本体のいずれか他方とが、左右方向の軸線まわりの相対的な回転を阻止されて取付けられる下アームと、
(h)各下アームの下端部と、大腿保持具とを、左右方向の軸線まわりに角変位自在にそれぞれ連結する第2受動回転軸と、
(i)体幹下部保持具に、上アームの長手方向途中位置、駆動軸、駆動源本体または下アームの長手方向途中位置のいずれか1つを、取り付ける取り付け手段とを含むことを特徴とする装着型支援ロボット装置。
本発明によれば、体幹上部保持具と体幹下部保持具と大腿保持具とが装着者に装着され、体幹上部保持具と左右方向の軸線まわりに角変位自在に第1受動回転軸を介して連結された上端部を有する上アームの下端部と、大腿保持具と左右方向の軸線まわりに角変位自在に第2受動回転軸を介して連結された下端部を有する下アームの上端部との間に、体幹下部の左右両側方にそれぞれ配置される駆動源によって、左右において支援力モーメントを与え、体幹下部保持具に、上アームの長手方向途中位置、駆動軸、駆動源本体、または下アームの長手方向途中位置のいずれか1つを、取り付け手段によって取り付けるので、各駆動源によって出力される左右方向の軸線まわりの支援力モーメントを、体幹と左右の各大腿との間に及ぼすことができる。
体幹は、腰椎を含む椎骨などによる椎間関節によって前後に弯曲しやすいが、体幹の上下の各位置で、前述のとおり、上アームが体幹上部保持具と体幹下部保持具とに関連して取り付けられるので、駆動源が上アームと下アームとを相対的に角変位駆動して出力する支援力モーメントが、大腿に対して体幹に確実に与えられる。したがって、装着者は、この支援によって容易に作業できる。
(2)体幹下部保持具は、装着者の骨盤付近に配置され、
体幹下部保持具に上アームの長手方向途中位置が、取り付け手段によって取り付けられ、
前記駆動軸の軸線は、装着者の左右の股関節の臼状関節としての中心を通る左右方向の直線の付近にあることを特徴とする。
本発明によれば、体幹下部保持具は、骨盤付近に配置され、したがって、その骨盤の腸骨翼における左右方向の横に出っ張る腸骨稜の上部付近に配置されるので、骨盤付近に確実に引っかかり、体幹下部から下方にずれることはなく、体幹下部に確実に装着される。上アームの長手方向途中位置は、この体幹下部保持具に取り付けられるので、上アームの下端部が取付けられる駆動軸または駆動源本体を、装着者の股関節付近に配置することが確実になる。その結果、駆動源の駆動軸の軸線が、左右の股関節の臼状関節としての中心、したがって、寛骨臼に嵌まり込む半球状の大腿骨頭の中心を通る左右方向の一直線上に、またはその付近にある状態を、安定して保つことが確実に可能になる。こうして、前記一直線まわりの支援力モーメントを、上アームと下アームとの間に、したがって、体幹と左右の各大腿との間に、及ぼして、歩行支援、持ち上げ支援、持ち下げブレーキ支援、中腰支援などを、円滑に達成することができる。
(3)上アームは、第1受動回転軸と駆動軸の軸線との間で、前後方向の軸線まわりに角変位自在であることを特徴とする。
本発明によれば、上アームは、その長手方向の上端部における第1受動回転軸と、長手方向の下端部における駆動軸の軸線との間で、たとえば受動回転軸73、83によって、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、体幹を、腰椎を含む椎骨などによる椎間関節の働きによって、左右方向に傾けて曲げることができる。したがって、装着者の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。上アーム70の受動回転軸73は、省略できる。
図61、図62などの上アーム70は、長尺の、たとえば棒状や板状アームでもよいが、本発明の実施の他の形態では、それ以外に、図65〜図67、図68、および図69、図70に示すような面状フレーム633、653によって実現されてもよい。上アーム70の代りに、面状フレーム633、653を、強度があり軽い素材で実現して、用いてもよい。
さらに上アームは、棒状や板状アームの装着者とは反対側の外方に、面状フレームを配置した構成であってもよい。上アームは、体幹を左右方向に曲げることができる可撓性または弾発性を有する合成樹脂または金属などの材料から成ってもよい。さらに面状フレームには通気用の多くの小さな穴を開けておき、内側(すなわち装着者側)にメッシュ素材を貼り付けて通気性を良くしておく。
このように、上アーム70とともに、面状フレーム633、653を、合体して併用する合体タイプでは、上アーム70を大きな強度を有する金属、たとえばアルミニウム製とすることによって、面状フレーム633、653を低強度材料製にすることができ、本件装着型支援ロボット装置の実現が容易である。
面状フレームに開ける通気用の穴径については、強度を損なわない範囲内でできるだけ大きいパンチング穴径としてたとえば3〜20mm程度の直径を有する円形にすることが望ましい。
内側に貼り付けるメッシュ素材とは、網目に編まれた素材のことである。網目に編まれた素材については、布地や樹脂および金属などが用いられる。網目については、たとえば、100メッシュは、網1インチ当りの網目の数が100であることを表す。なお同じ100メッシュでも、開口率や線径により異なる。金網の場合は、JIS(日本工業規格)規格に規定されているが、布地などでは、同じ100メッシュでも開口率や線径が異なることがある。線径または開口率を選別する必要がある。たとえば、素材がポリエステルで交点止めでは、線径が35ミクロンで100メッシュであれば、メッシュ数は100メッシュと混んでいるのに、糸が細いので開口率が約74%と高くなり、空気を通し易く、かつ網目の開口面積は小さいので強度を保つことができるので、本用途に向いている。
(4)下アームは、駆動軸の軸線と第2受動回転軸との間で、前後方向の軸線まわりに角変位自在であることを特徴とする。
本発明によれば、下アームは、その長手方向の上端部における駆動軸の軸線と、下アームの下端部における第2受動回転軸との間で、前後方向の軸線まわりに角変位自在であるので、股関節の働きによって、下肢を外転して開脚を円滑に行なうことができる。したがって、装着者の開脚の姿勢に応じて円滑に支援力モーメントを作用することができる。下アームは、体幹を左右方向に曲げることができる可撓性または弾発性を有する合成樹脂または金属などの材料から成ってもよい。
(5)上アームおよび下アームの長手方向途中位置には、前後方向の軸線まわりに角変位自在な第3および第4受動回転軸がそれぞれ介在されることを特徴とする。
本発明によれば、複数の剛性アーム片を、前後方向の軸線まわりに角変位自在な受動回転軸を介して連結して上アームおよび下アームを、上アームおよび下アームを構成することができ、本発明の実現が容易である。
(6)上アームは、体幹上部の少なくとも左右両側方を周方向に覆う面状フレームから成ることを特徴とする。