(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485621
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】蒸散燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20190311BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20190311BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
F02M37/00 311J
F02M37/00 301H
F02M37/00 301R
B60K15/035 C
F02M25/08 H
F02M25/08 301L
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-195791(P2014-195791)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-65524(P2016-65524A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 教文
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−155322(JP,A)
【文献】
特開2012−184708(JP,A)
【文献】
特表2000−513679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08,37/00−37/22,
B60K 15/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料タンクと、
前記燃料タンク内の蒸散燃料を密閉する第1の密閉弁と、
前記燃料タンクの前記蒸散燃料を前記第1の密閉弁と異なる位置で密閉する第2の密閉弁と、
前記燃料タンクに給油が開始される前に、前記第1の密閉弁と第2の密閉弁とを開弁する開閉制御制手段と、を有し、
前記開閉制御手段は、給油中に前記燃料タンクの内圧が所定圧力まで低下すると、前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁の何れか一方を閉弁する
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸散燃料処理装置であって、
給油口を覆って設けられる給油口リッドの開閉状態を検知する検知手段を有し、
前記開閉制御手段は、前記検知手段によって前記給油口リッドが開状態から閉状態になったことが検出された際に、前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁の他方を閉弁する
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸散燃料処理装置であって、
前記開閉制御手段による制御により前記燃料タンクの内圧が所定圧力以下となると、給油口の開栓を許可する開栓許可手段、を有し、
前記開栓許可手段は、給油要求があり前記燃料タンクの内圧が所定圧力以下であると、前記給油口を覆って設けられる給油口リッドのロックを解除する
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の蒸散燃料処理装置であって、
前記開閉制御手段は、前記燃料タンクの内圧が所定閾値を超えると前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁のいずれか一方を開弁する
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の蒸散燃料処理装置であって、
前記燃料タンク内の前記蒸散燃料を吸着するキャニスタと、
前記燃料タンクの燃料の液面高さを検出するレベリングバルブと、
前記燃料タンクがロールした際に燃料経路を塞ぐ第1のロールオーバーバルブと、を有し、
前記第1の密閉弁はその一方側が前記キャニスタに接続され他方側が前記レベリングバルブに接続され、
前記第2の密閉弁はその一方側が前記キャニスタに接続され他方側が前記第1のロールオーバーバルブに接続される
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸散燃料処理装置であって、
前記第1の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第1の蒸散燃料通路と、
前記第2の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第2の蒸散燃料通路と、
前記第2の蒸散燃料通路は前記第1の密閉弁と前記キャニスタとの間で前記第1の蒸散燃料通路と合流し、
前記開閉制御手段は、前記燃料タンクの内圧が所定閾値を超えると前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁の何れか一方を開弁する
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の蒸散燃料処理装置であって、
前記燃料タンク内の蒸散燃料を吸着するキャニスタと、
前記第1の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第1の蒸散燃料通路と、
前記第2の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第2の蒸散燃料通路と、
前記第1の蒸散燃料通路および前記第2の蒸散燃料通路が接続されるとともに、前記キャニスタから前記車両に搭載される内燃機関の吸気通路に連通する第3の蒸散燃料通路と、
前記キャニスタを封鎖し前記第1の蒸散燃料通路および前記第2の蒸散燃料通路と前記第3の蒸散燃料通路とを前記キャニスタをバイパスして連通するバイパスバルブと、を有し、
前記開閉制御手段は、前記燃料タンクの内圧が所定閾値を超えると前記バイパスバルブを閉弁して前記キャニスタを封鎖する
ことを特徴とする蒸散燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内の蒸散燃料(蒸発燃料)をエンジンの吸気系に導入して燃焼させることで大気中への排出を抑制する
蒸散燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内に生じた蒸散燃料は大気汚染の原因となることから、エンジンを搭載した車両には、一般的に、蒸散燃料の大気中への排出を抑制するための蒸散燃料処理装置が搭載されている。蒸散燃料処理装置は、例えば、燃料タンクとエンジンの吸気系とをキャニスタを備えたパージ管路で接続し、燃料タンク内で発生した蒸散燃料をキャニスタ内の活性炭に一旦吸着させると共に、エンジンの吸気負圧に応じて活性炭で吸着した燃料をエンジンの吸気系に導入して新気と共に燃焼させるものである。
【0003】
また近年、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や、ハイブリッド自動車(HEV)等のように、エンジンと共に走行用のモータを備えた車両が実用化されている。このような走行用モータを備えた車両では、エンジンが停止している期間、つまりキャニスタからエンジンの吸気系に燃料を導入できない期間が比較的長く継続する場合がある。このため、燃料タンクとキャニスタとの間に密閉弁を設け、エンジンが停止している期間はこの密閉弁を閉状態とする、いわゆる密閉式の蒸散燃料処理装置が開発されている。
【0004】
このような蒸散燃料処理装置においては、密閉弁により燃料タンクが密閉されていると、例えば、外気温の上昇等により燃料タンク内の燃料が蒸発して、燃料タンクの内圧が上昇してしまうことがある。そして給油時に燃料タンクの内圧が上昇していると、給油口を開けた際に蒸散燃料が外部に排出されてしまう虞がある。このため、給油時には給油口の開放を一時的に禁止し、その間に密閉弁(封鎖弁)を開状態として燃料タンクの内圧を所定圧力まで低下させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4110932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料タンクの内圧を低下させることで給油時の蒸散燃料の排出は抑制することができるが、燃料タンクの内圧を所定圧力まで低下させる(圧抜き)には比較的長い時間を要する。したがって、給油を行う車両のユーザは、給油口を開放するまで比較的長い時間待たされることになり、利便性の面で問題が生じる虞がある。
【0007】
また燃料タンクの圧抜き時間は、燃料タンクの内圧と共に、燃料タンクの容量によって変化する。したがって、例えば、航続距離を長くするために比較的大容量の燃料タンクを搭載した車両の場合には、圧抜き時間はさらに長くなってしまう虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、給油時に燃料タンクの内圧を比較的短時間で低下させることができる蒸散燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両に搭載される燃料タンクと、前記燃料タンク内の蒸散燃料を密閉する第1の密閉弁と、前記燃料タンクの前記蒸散燃料を前記第1の密閉弁と異なる位置で密閉する第2の密閉弁と、前記燃料タンクに給油が開始される前に、前記第1の密閉弁と第2の密閉弁とを開弁する開閉制御制手段と、を有
し、前記開閉制御手段は、給油中に前記燃料タンクの内圧が所定圧力まで低下すると、前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁の何れか一方を閉弁することを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【0011】
本発明の第
2の態様は、第
1の態様の蒸散燃料処理装置であって、
給油口を覆って設けられる給油口リッドの開閉状態を検知する検知手段を有し、
前記開閉制御手段は、前記検知手段によって前記給油口リッドが開状態から閉状態になった
ことが検出された際に、前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁の他方を閉弁することを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【0012】
本発明の第
3の態様は、第
1又は2の態様の蒸散燃料処理装置であって、前記
開閉制御手段による制御により前記燃料タンクの内圧が所定圧力以下となると、給油口の開栓を許可する開栓許可手段、を有し、前記開栓許可手段は、給油要求があり前記燃料タンクの内圧が所定圧力以下であると、前記給油口を覆って設けられる給油口リッドのロックを解除することを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【0013】
本発明の第
4の態様は、第
1から3の何れか一つの態様の蒸散燃料処理装置であって、前記開閉制御手段は、前記燃料タンクの内圧が所定閾値を超えると前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁のいずれか一方を開弁することを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【0014】
本発明の第
5の態様は、第
1から4の何れか一つの態様の蒸散燃料処理装置であって、前記燃料タンク内の前記蒸散燃料を吸着するキャニスタと、前記燃料タンクの燃料の液面高さを検出するレベリングバルブと、前記燃料タンクがロールした際に燃料経路を塞ぐ第1のロールオーバーバルブと、を有し、前記第1の密閉弁はその一方側が前記キャニスタに接続され他方側が前記レベリングバルブに接続され、前記第2の密閉弁はその一方側が前記キャニスタに接続され他方側が前記第1のロールオーバーバルブに接続されることを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【0015】
本発明の第
6の態様は、第
5の態様の蒸散燃料処理装置であって、前記第1の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第1の蒸散燃料通路と、前記第2の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第2の蒸散燃料通路と、前記第2の蒸散燃料通路は前記第1の密閉弁と前記キャニスタとの間で前記第1の蒸散燃料通路と合流し、前記開閉制御手段は、前記燃料タンクの内圧が所定閾値を超えると前記第1の密閉弁または前記第2の密閉弁の何れか一方を開弁することを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【0016】
本発明の第
7の態様は、第
1から6の何れか一つの態様の蒸散燃料処理装置であって、前記燃料タンク内の蒸散燃料を吸着するキャニスタと、
前記第1の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第1の蒸散燃料通路と、前記第2の密閉弁と前記キャニスタとを接続する第2の蒸散燃料通路と、前記第1の蒸散燃料通路および前記第2の蒸散燃料通路が接続されるとともに、前記キャニスタから前記車両に搭載される内燃機関の吸気通路に連通する第3の蒸散燃料通路と
、前記キャニスタを封鎖し前記第1
の蒸散燃料通路および前記第2の蒸散燃料通路と前記第3の蒸散燃料通路とを前記キャニスタをバイパスして連通するバイパスバルブと、を有し、前記開閉制御手段は、前記燃料タンクの内圧が所定閾値を超えると前記バイパスバルブを閉弁して前記キャニスタを封鎖することを特徴とする蒸散燃料処理装置にある。
【発明の効果】
【0017】
かかる本発明の蒸散燃料処理装置によれば、給油時に、複数本の蒸散燃料通路を介して燃料タンクとキャニスタとを連通させるようにしたので、燃料タンクの内圧を比較的短時間で所定圧力まで低下させることができる。したがって、給油要求があった際、比較的短時間で給油口を開放できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蒸散燃料処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】給油要求があった際のタンク内圧と各弁の開閉状態と給油口リッドの開閉状態の推移を示すタイミングチャートである。
【
図3】給油中のタンク内圧と各弁の開閉状態との推移を示すタイミングチャートである。
【
図4】タンクパージにおけるタンク内圧と各弁の開閉状態との推移を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る蒸散燃料処理装置は、例えば、プラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載され、エンジンに供給する燃料が貯留される燃料タンク内に発生する蒸散燃料を大気中に排出されるのを抑制するための装置である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る蒸散燃料処理装置10は、活性炭が封入され燃料タンク100で発生した蒸散燃料を吸着するキャニスタ12を備える。キャニスタ12は、第1のベーパ配管(第1の蒸散燃料通路)14A及び第2のベーパ配管(第2の蒸散燃料通路)14Bによって燃料タンク100と接続されている。詳しくは、第1のベーパ配管14Aは、その一端が燃料タンク100内に設けられたレベリングバルブ106に接続され、他端がキャニスタ12に接続されている。また第1のベーパ配管14Aには、この第1のベーパ配管14Aを開閉する第1の密閉弁16が設けられている。
【0022】
第2のベーパ配管14Bは、その一端が第1のベーパ配管14Aとは異なる位置で燃料タンク100に接続されている。この第2のベーパ配管14Bの一端は、本実施形態では、燃料タンク100内でレベリングバルブ106よりも上方に設けられた第1のロールオーバーバルブ108に接続されている。第2のベーパ配管14Bの他端は、第1のベーパ配管14Aの第1の密閉弁16とキャニスタ12との間、本実施形態では第1のベーパ配管14Aの第1の密閉弁16と後述するバイパスバルブとの間で、第1のベーパ配管14Aに接続されている。また第2のベーパ配管14Bには、この第2のベーパ配管14Bを開閉する第2の密閉弁18が設けられている。
【0023】
このように本発明に係る蒸散燃料処理装置10は、燃料タンク100内の蒸散燃料を密閉する第1の密閉弁16と、燃料タンク100内の蒸散燃料を第1の密閉弁16と異なる位置で密閉する第2の密閉弁18と、を備えている。
【0024】
これら第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18は、例えば、電磁ソレノイドで駆動される。具体的には、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18は、いわゆる常時閉タイプの電磁弁で構成され、電磁ソレノイドに通電していない状態では閉弁し、電磁ソレノイドに通電すると開弁する。
【0025】
ここで、燃料タンク100内に設けられている上記レベリングバルブ106は、給油時に燃料タンク100内の燃料の液面を制御するものであり、第1のロールオーバーバルブ108よりも車体の下方に配置されている。また本実施形態では、このレベリングバルブ106には、2ウェイバルブ110を介して第2のロールオーバーバルブ112が接続されている。第2のロールオーバーバルブ112及び上述した第1のロールオーバーバルブ108は、フロート弁の作用により燃料タンク100から外部への燃料の流出を防止し、2ウェイバルブ110は、燃料タンク100が満タンに近い状態での給油における給油量を制限する。これら第1のロールオーバーバルブ108、第2のロールオーバーバルブ112及び2ウェイバルブ110は既存の構成であるため、ここでの詳細な説明は省略する。さらに燃料タンク100には、燃料配管114を介してエンジン102の燃料噴射弁(図示なし)に供給する燃料ポンプ116と、燃料タンク100の内圧を検出する圧力センサ118とが設けられている。
【0026】
なお本実施形態では、燃料タンク100内に、第1のロールオーバーバルブ108と第2のロールオーバーバルブ112とが設けられているが、第2のロールオーバーバルブ112が第1のロールオーバーバルブ108を兼ねるようにしてもよい。すなわち、第2のベーパ配管14Bの一端を第2のロールオーバーバルブ112に接続するようにしてもよい。ただし、この場合、第2のロールオーバーバルブ112の流量の調整が必要となることもある。
【0027】
またキャニスタ12は、パージ配管(第3の蒸散燃料通路)20を介してエンジン102の吸気通路104に接続されている。すなわち本実施形態では、燃料タンク100は、第1のベーパ配管(第1の蒸散燃料通路)14A及び第2のベーパ配管(第2の蒸散燃料通路)とパージ配管(第3の蒸散燃料通路)20とによってエンジン102の吸気通路104に接続されている。このパージ配管20には、例えば、エンジン102側の端部近傍に、パージ配管20を開閉するパージバルブ22が設けられている。またパージ配管20のキャニスタ12側の端部近傍、すなわちパージ配管20及び第1のベーパ配管14Aとキャニスタ12との接続部には、キャニスタ12とパージ配管20及び第1のベーパ配管14Aとの連通を遮断するバイパスバルブ24が設けられている。このようにキャニスタ12とパージ配管20及び第1のベーパ配管14Aとの連通がバイパスバルブ24によって遮断されると、燃料タンク100内の蒸散燃料が、キャニスタ12をバイパスし、第1のベーパ配管14A及び第2のベーパ配管14Bとパージ配管20とを介して吸気通路104に供給される。
【0028】
なおキャニスタ12にはベント配管26が接続され、このベント配管26を介してキャニスタ12が外気に連通している。またベント配管26の途中には、エアフィルタ28が設けられている。またパージバルブ22は、第1及び第2の密閉弁16,18と同様に、いわゆる常時閉タイプの電磁弁で構成されている。これに対しバイパスバルブ24は、いわゆる常時開タイプの電磁弁であり、電磁ソレノイドに通電していない状態では開弁し、電磁ソレノイドに通電すると閉弁する。
【0029】
ところで燃料タンク100には、燃料タンク100内に燃料を供給するためのフィラーパイプ120が接続されている。そして、このフィラーパイプ120の燃料タンク100とは反対側の端部に給油口122が設けられている。給油口122は、給油口キャップ124によって密封可能に構成されている。この給油口122は、凹部126内に形成されており、凹部126の開口は給油口リッド128によって開閉可能に構成されている。例えば、本実施形態では、給油口リッド128は、ロック機構(図示なし)により閉状態に保持され、車両の運転席に設けられた開放スイッチ130の操作によりロック機構が解除されて開状態となるように構成されている。また凹部126の開口付近には、給油口リッド128の開閉状態を検知するリッドセンサ(検知手段)132が設けられている。
【0030】
このように本実施形態に係る蒸散燃料処理装置10は、第1の密閉弁16により開閉可能に構成された第1のベーパ配管14Aと、第2の密閉弁18により開閉可能に構成された第2のベーパ配管14Bとを備えている。このため、詳しくは後述するが、ECU(電子制御ユニット)30が、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18等の動作を適宜制御することにより、給油の際、燃料タンク100の内圧を比較的短時間で所定圧力まで低下させることができる。したがって、給油要求があってから比較的短時間で給油口122を開放することができる。さらには、過剰な給油(過給油)も適切に抑制することができる。
【0031】
ECU30は、入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶を行う記憶装置、中央処理装置及びタイマやカウンタ類を備え、各種センサ類からの情報に基づいて、蒸散燃料処理装置10を含むエンジン102の総合的な制御を行っている。ECU30は、具体的には、蒸散燃料処理装置10の一部を構成する開栓許可手段31と、開閉制御手段32と、を備えている。
【0032】
開栓許可手段31は、ユーザによる給油要求があった際に、所定の許可条件が成立している場合に、給油口122の開栓、すなわち給油口キャップ124の開放を許可する。本実施形態では、給油要求として、ユーザが開放スイッチ130を操作すると、開栓許可手段31は、所定の許可条件が成立している場合に、給油口リッド128のロック機構を解除することで、給油口122の開栓を許可する。なお上記許可条件には、燃料タンク100の内圧が所定圧力(本実施形態では大気圧)以下であることが少なくとも含まれる。
【0033】
開閉制御手段32は、上述した圧力センサ118やリッドセンサ132等を含む各種センサ類からの検出情報に基づいて、パージバルブ22、バイパスバルブ24、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の開閉状態を適宜制御する。
【0034】
ここで、
図2のタイミングチャートを参照して、開閉制御手段32による給油時における上記パージバルブ22、バイパスバルブ24、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の開閉制御、特に第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の開閉制御の一例について説明する。
【0035】
図2に示すように、車両ユーザによる開放スイッチ130の操作があるまで、すなわちユーザによる「給油要求」があるまでは(T0−T1)、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18は何れも閉じられた状態となっている。
【0036】
時刻T1で開放スイッチ130が操作され、その際、燃料タンク100の内圧(タンク内圧)が所定圧力(本実施形態では大気圧)P1よりも大きいと、開栓許可手段31は、上記許可条件が成立していないと判断し、給油口122の開栓を許可せず、給油口リッド128を閉じたままの状態に保持する。同時に、開閉制御手段32は、閉弁している第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18を開弁させる。すなわち開閉制御手段32は、燃料タンク100に給油が開始される前に、第1の密閉弁16と第2の密閉弁18とを開弁させる。なおパージバルブ22及びバイパスバルブ24の開閉状態は変更されることなくそのまま保持される。いわゆる常時閉タイプの電磁弁であるパージバルブ22は閉弁した状態に保持され、いわゆる常時開タイプの電磁弁であるバイパスバルブ24は開弁した状態に保持される。
【0037】
このような各弁の開閉状態では、燃料タンク100とキャニスタ12とが、第1のベーパ配管14A及び第2のベーパ配管14Bによって連通することになる。そして燃料タンク100内の蒸散燃料を含む蒸散ガスは、これら第1のベーパ配管14A及び第2のベーパ配管14Bを介してキャニスタ12内に流入する。この蒸散ガスのキャニスタ12内への流入に伴い、燃料タンク100の内圧は徐々に低下する。時刻T2で燃料タンク100の内圧が所定圧力P1まで低下すると、開栓許可手段31によって給油口122の開栓が許可され、給油口リッド128が閉から開に切り替わる。すなわちロック機構が解除され給油口リッド128は手動で開放可能な状態となる。また同時に、開閉制御手段32は、時刻T1で開弁させた第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18のうち、第1の密閉弁16を残して第2の密閉弁18を閉弁させる。このとき、第2の密閉弁18の替わりに第1の密閉弁16を閉弁させてもよい。
【0038】
このように蒸散燃料処理装置10は、第1のベーパ配管14A及び第2のベーパ配管14Bを備え、本実施形態では、給油要求があった際に、これら第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18をそれぞれ開弁させるようにした。これにより、単位時間あたりに燃料タンク100からキャニスタ12に比較的大量の蒸散ガスを流入させることができる。したがって、燃料タンク100の内圧を比較的短時間で所定圧力P1まで低下させることができる。すなわち給油要求があってから比較的短時間で給油口リッド128を開放することができるため、給油時のユーザの待ち時間を短縮して利便性を向上することができる。
【0039】
さらに本実施形態では、給油口リッド128が開放された時点(時刻T2)で、第2の密閉弁18を閉弁させるようにしている。これにより、給油要求から比較的短時間で給油口リッド128を開放できると共に、後述するように過給油も適切に抑制することができる。
【0040】
ここで、
図3のタイミングチャートを参照して、給油中における上記各弁の開閉制御の一例について説明する。
【0041】
上述のように時刻T2で燃料タンク100の内圧が所定圧力P1まで低下した時点で、第1のロールオーバーバルブ108に接続されている第2の密閉弁18は閉じられており、レベリングバルブ106に接続されている第1の密閉弁16のみが開かれている。この状態で、
図3に示すように、給油を開始すると(時刻T3)、燃料タンク100内の圧力は所定圧力P1よりも若干上昇して安定する。その後、給油により燃料タンク100内の燃料が増加し、レベリングバルブ106が閉塞されると(時刻T4)、燃料タンク100内の蒸発ガスは、第2のロールオーバーバルブ112及び2ウェイバルブ110を介してレベリングバルブ106から第1のベーパ配管14Aに流出する。このとき、2ウェイバルブ110での圧損が大きいため、燃料タンク100の内圧は急激に上昇する。この燃料タンク100の内圧の上昇に伴って燃料タンク100内の燃料がフィラーパイプ120内をせり上がる。そして、フィラーパイプ120内をせり上がった燃料が、給油ガン(図示なし)の先端のセンサに触れることで、給油が自動的に停止する(時刻T5)。
【0042】
本実施形態では、給油中は第1の密閉弁16のみを開弁させ、第2の密閉弁18は閉弁させているため、過給油を適切に抑制することができる。すなわち適切なタイミングで給油を自動的に停止させることができる。例えば、給油中に第1の密閉弁16と第2の密閉弁18との両方を開いていると、時刻T4でレベリングバルブ106が閉鎖された後も、燃料タンク100の内圧が急激には上昇せずに給油の自動停止が遅れてしまう虞があるが、給油中は第2の密閉弁18を閉弁させることで、所望のタイミングで給油を自動停止させることができ、過給油を適切に抑制することができる。
【0043】
このように本発明に係る蒸散燃料処理装置10によれば、給油要求があった際には、燃料タンク100の内圧を比較的短時間で低下させることができ、且つ給油中には、過給油を適切に抑制することができるという作用効果を奏する。
【0044】
なお、給油が自動停止した後は、時刻T6でユーザによって給油口リッド128が閉じられると、すなわちリッドセンサ132によって給油口リッド128が閉じられたことが検知されると、それに応じて第1の密閉弁16が閉じられる。つまり密閉弁の全てが閉じられて、一連の給油時の開閉制御が終了する。
【0045】
このように給油口リッド128が閉じられたことを条件に、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の両方を閉弁させることで、給油が終了したことを適切に判断して、給油終了に合わせて両密閉弁を確実に閉弁させることができる。
【0046】
また本実施形態では、給油時に第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18を開弁させて、燃料タンク100の内圧を低下させるようにしたが、さらに、エンジン102が稼働している状態で、燃料タンク100の内圧が所定閾値を超えた場合にも、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の少なくとも何れか一方を開弁させて燃料タンク100の内圧を低下させる、いわゆるタンクパージを行っている。所定のタイミングでタンクパージを行うことで、燃料タンク100の破損を抑制することができる。
【0047】
図4は、タンクパージにおけるタンク内圧及び上記各弁の開閉状態の一例を示すタイミングチャートである。
【0048】
図4に示すように、エンジン102が稼働中であっても、燃料タンク100の内圧(タンク内圧)が所定閾値P3よりも低い状態では(T7−T8)、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18は何れも閉じられている。そして時刻T8で燃料タンク100の内圧が所定閾値(タンクパージ開始閾値)P2に達すると、開閉制御手段32は、バイパスバルブ24を閉弁させると共に、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の少なくとも一方を開弁させる。本実施形態では、燃料タンク100からエンジン102まで管路の長さが最短となる第1のベーパ配管14Aに設けられた第1の密閉弁16のみを開弁させている。さらにパージバルブ22を断続的に開弁させる。なおパージバルブ22の開閉は、空燃比に基づいてデューティ制御される。
【0049】
このようにタンクパージにおける各弁の開閉状態を制御することにより、燃料タンク100の内圧を低下させて、燃料タンク100の破損を抑制することができる。
【0050】
ここで、タンクパージを行う際に、第2の密閉弁18のみ、又は第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18の両方を開弁させることによっても、燃料タンク100の内圧を低下させることはできるが、本実施形態のように、エンジン102までの管路の長さが最短となる第1のベーパ配管14Aに設けられた第1の密閉弁16のみを開弁させるのが好ましい。これにより、燃料タンク100内の蒸発ガスを効率的に排出させることができる。特に、タンクパージを開始した直後は効果的である。このため、例えば、時刻T8で第1の密閉弁16のみを開弁させ、例えば、図中点線で示すように、所定時間経過後に(時刻T8)、第2の密閉弁18を開弁させるようにしてもよい。
【0051】
なお、その後は、燃料タンク100の内圧が所定閾値(タンクパージ終了閾値)P3まで低下した時点(時刻T9)で、バイパスバルブ24を開弁すると共に第1の密閉弁16を閉弁させ、さらにパージバルブ22のデューティ制御を中止して閉弁状態を保持し、一連のタンクパージにおける各弁(バルブ)の開閉制御を終了する。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0053】
例えば、本実施形態で燃料タンク100とキャニスタ12とが、第1のベーパ配管14Aと、第2のベーパ配管14Bとの二本のパージ配管で接続された構成を例示したが、3本以上のパージ配管で接続されていてもよい。このような構成としても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
また上述の実施形態では、給油要求があった際、タンク圧が所定圧力P1まで低下して給油口リッド128が開放された時点で、第2の密閉弁18を閉弁するようにしたが、第2の密閉弁18を閉弁するタイミングは、このタイミングに限定されるものではない。第2の密閉弁18は、給油中にタンク圧が上昇を開始するタイミング(
図3の時刻T4)よりも前のタイミングで閉弁すればよい。これにより、過給油を適切に抑制することができる。
【0055】
また上述の実施形態では、第1のベーパ配管14Aに第1の密閉弁16を設けると共に、第2のベーパ配管14Bに第2の密閉弁18を設けた構成を例示したが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。第1の密閉弁16は燃料タンク100の蒸散燃料を密閉するように設けられていればよく、第2の密閉弁18は、燃料タンク100内の蒸散燃料を第1の密閉弁16とは異なる位置で密閉するものであればよい。したがって、第1の密閉弁16及び第2の密閉弁18は、例えば、燃料タンク100自体に設けられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 蒸散燃料処理装置
12 キャニスタ
14A 第1のベーパ配管
14B 第2のベーパ配管
16 第1の密閉弁
18 第2の密閉弁
20 パージ配管
22 パージバルブ
24 バイパスバルブ
26 ベント配管
28 エアフィルタ
100 燃料タンク
102 エンジン
104 吸気通路
106 レベリングバルブ
108 第1のロールオーバーバルブ
110 ウェイバルブ
112 第2のロールオーバーバルブ
114 燃料配管
116 燃料ポンプ
118 圧力センサ
120 フィラーパイプ
122 給油口
124 給油口キャップ
126 凹部
128 給油口リッド
130 開放スイッチ
132 リッドセンサ