(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485700
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】吸塵アダプター
(51)【国際特許分類】
B28D 7/02 20060101AFI20190311BHJP
B28D 1/14 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
B28D7/02
B28D1/14
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-151288(P2015-151288)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-19260(P2017-19260A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】392002343
【氏名又は名称】ユニカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】柳生 孝之
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−59112(JP,U)
【文献】
特開平10−329134(JP,A)
【文献】
特開2016−7852(JP,A)
【文献】
実開平5−31844(JP,U)
【文献】
米国特許第4911253(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 7/02
B28D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工端と吸塵孔を有する回転棒が装着され、内部に吸塵通路を持つ吸塵アダプターであって、吸塵通路を挟み対向して装着固定された1対のベアリングと、ベアリングよりも吸塵通路側に外気導入空間1を確保するように装着され、かつ回転棒の外周面との間に外気導入空間2を有する1対のディスクと、吸塵アダプター外部と外気導入空間1を繋ぐ外気流入部を有し、回転棒を電動工具などで回転して加工端で研削または切削した時に発生する被加工材の粉塵を、回転棒の吸塵孔から吸塵通路を経由して吸塵アダプターに接続された集塵機で排出する際、外気流入部、外気導入空間1、外気導入空間2を経由して導入される外気と共に集塵する吸塵アダプター
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主としてコンクリートやタイルなどの建材に穿孔する時、穿孔用のドリルと組み合わせて使用され、穿孔で発生する粉塵を集塵しながら穿孔することが出来る吸塵アダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやタイルなどに穿孔する時は騒音や粉塵が発生する。これらの騒音や粉塵を出来るだけ抑制しながら穿孔する必要がある場合、ダイヤドリルが使用されることがある。このドリルは例えば中空のパイプの先端に工業用ダイヤモンドを金属系のロー材で強固に固着したもので、毎分2000〜8000回転の高速で回転させてコンクリートやタイルなどの被加工材を研削しながら穿孔する。刃先となるダイヤモンド粒子が小さいことから研削時の騒音や振動は少ない。
【0003】
ダイヤドリルを使う場合、主として発熱によるドリル寿命の劣化を防ぐため、研削中、水を流す方法がある。すると、研削によって発生した粉塵は水と共に流出するため、大気中に粉塵となって飛散することはないが、被加工材の表面に付着して表面を汚染したり、被加工材に水が浸透することによって被加工材の内部の鉄筋が腐食したりするという弊害を起こすことがある。従って、水を使わずにダイヤドリルで穿孔する必要があることも多くなってきた。
【0004】
水を使わずにダイヤドリルで穿孔すると、ドリルの刃先で研削された被加工材の粉塵が発生する。この粉塵の多くは、ドリルの回転によって孔から噴き出して付近を汚染することになる。また、粉塵の一部は穿孔された孔の底や内側面に残り、この孔に接着剤を注入してアンカーボルトなどを接着固定しても、粉塵の影響でボルトと被加工材との固着強度が不足して、わずかな力でボルトが抜ける事故が起き易い。従って、穿孔が終わったら、周辺を清掃したり、穿孔された孔に空気を吹き入れ、中に残留する粉塵を排出したりする作業が必要になる。
【0005】
この、粉塵に関わる問題を解決するため、穿孔中に発生する粉塵や穿孔後に孔の内部に残る粉塵を、集塵機で排出しながら穿孔する方法がある。特開2010−64199を例に説明すると、電動工具に装着されて使用する電動工具用吸塵装置には穿孔軸方向に摺動可能に装備され、かつ集塵機に連列されたリングが付属していて、電動工具によって回転し穿孔しているドリル孔から噴き出してくる粉塵はリングから集塵機で排出される。
【0006】
しかし、この方法によれば、電動工具に装備される吸塵機構の重量が重く、ドリルの先端で発生し、被加工材の表面から噴き出してきた粉塵がリングから吸塵されて排出されるだけで、粉塵が大気中に散乱することは抑制できるものの、孔から噴出しなかった粉塵は加工完了後も孔の内部に残ることになる。孔が深くなるほどドリルによる粉塵排出性能は低下するので、孔に残留する粉塵量は多い。
【0007】
従って、穿孔された孔に接着剤などを注入してアンカーボルトを固着する必要がある時は、孔の底や内側面に残る粉塵をエアーなどで吹き飛ばして除去する必要がある上に、電動工具に装着される吸塵機構が重くて大きく、穿孔作業者の負担は大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上で述べたように、電動工具に装着されたドリルが回転穿孔しながら被加工材の表面に排出する粉塵を、ドリルの穿孔とともに軸方向に移動しながら常に被加工材の表面に位置するような摺動機構に装着された吸塵ヘッドで吸塵して排出する方法において、電動工具に付属される吸塵機構が重く、作業者の負担が大きい上に、吸塵機構が高価になりがちである。
【0009】
また、被加工材の表面に噴出する粉塵だけが集塵排出される方式のため、特に穿孔孔が深い場合は、ドリル回転で表面に噴出する粉塵量は低下し、穿孔後の孔の内部に残留する粉塵量が増えて、孔に接着剤を注入してアンカーボルトを適切な強度で装着固定する必要がある時は、残留している粉塵を除去する作業を注意深く行うことが必要で、作業効率は悪い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本願発明は、加工端と吸塵孔を有する回転棒が装着され、内部に吸塵通路を持つ吸塵アダプターであって、吸塵通路を挟み対向して装着固定された1対のベアリングと、ベアリングよりも吸塵通路側に外気導入空間1を確保するように装着され、かつ回転棒の外周面との間に外気導入空間2を有する1対のディスクと、吸塵アダプター外部と外気導入空間1を繋ぐ外気流入部を有し、回転棒を電動工具などで回転して加工端で研削または切削した時に発生する被加工材の粉塵を、回転棒の吸塵孔から吸塵通路を経由して吸塵アダプターに接続された集塵機で集塵する際、外気流入部、外気導入空間1、外気導入空間2を経由して導入される外気と共に集塵する吸塵アダプターである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明による吸塵アダプターは、従来の吸塵機構に比べて単純な構造になっているために軽量かつ廉価で、操作性が高く、加えて、加工端で発生する粉塵を回転棒の吸塵孔から直接吸塵して排出するので、粉塵排出効率が高く、従って穿孔中の孔から噴出する粉塵や、穿孔完了後に孔の内部に残る粉塵量は加工する孔が深い場合でも少なく、よって清掃作業を行う必要性も低い。
【0012】
特に加工端がダイヤモンド粒子で出来たドリルを使うことを想定し、高速回転に対応できる玉軸受などのベアリングを軸受けとして吸塵アダプター内部に組み込んでいるが、吸塵アダプターに設けられた外気流入部、外気導入空間1、外気導入空間2を経由して導入される空気の流れの効果で、加工端から吸塵アダプターを経由して集塵機で集塵される粉塵が吸塵アダプター内でベアリング方向に漏れ出る量が制約され、粉塵がベアリング内部に入りこんでベアリングを破損する危険が少なく、長期間、安定して使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本願発明の吸塵アダプターの一つの実施例を示す図
【
図3】本願発明の吸塵アダプターの本体部の拡大部分断面図
【
図4】本願発明の吸塵アダプターを集塵機と電動工具に装着した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明に係る吸塵アダプターは、電動工具など回転機能を有する穿孔工具と、粉塵回収用の集塵機と組み合わせて使用される。
穿孔を行う際は、まず、電動工具などの穿孔工具のチャックで吸塵アダプターに装着された回転棒を把持し、集塵機と吸塵アダプターをゴムホースまたはプラスチック製のフレキシブル・ホースなどで接続する。次に集塵機と電動工具を作動し、吸塵アダプターに装着されている回転棒を回転させ、回転棒先端のダイヤモンドなどの刃先が設けられた加工端を被加工材の表面に当接し穿孔を開始する。穿孔によって加工端で発生する被加工材の粉塵は、加工端から回転棒内部の吸塵孔に吸い込まれていくため、穿孔する孔の深さにかかわらず粉塵は効率よく集塵され、穿孔中に孔から噴出する粉塵や、穿孔後に孔の内部に残る粉塵は少ない。
【実施例】
【0015】
図1、
図2、
図3、
図4を用いて、本願発明に係る吸塵アダプターの実施例を説明する。
吸塵アダプター(1)には、
図1に示すように、片側に加工端(8)、その反対側には装着部(5)を持つ回転棒(4)が付属している。また、回転棒(4)には吸塵孔(14)、吸塵アダプター(1)には吸塵通路(3)、が設けられていて、回転棒が回転中でも空気が吸塵孔(14)から吸塵通路(3)に流れることができる構造に形成されて組み合わされている。
【0016】
回転棒(4)は装着部(5)から加工端(8)まで一体物として加工形成しても好いが、本実施例では分割可能とし、回転棒本体(6)と回転棒先端部(7)をネジ連結部(13)で接続した回転棒(4)とした。回転棒本体(6)は、吸塵アダプター(1)の内部に設けられた1対のベアリング(2)で高速回転が可能な状態に把持される。
【0017】
また1対のベアリング(2)の間には1対のディスク(12)が、回転棒本体(6)の外周との間に外気導入空間2(10)、ベアリング(2)との間に外気導入空間1(9)を持つように吸塵アダプター(1)の内部に装着されている。このディスク(12)は、穿孔軸の方向、つまりベアリング(2)の軸方向、に移動可能な寸法で製作されている。
更に、吸塵アダプター(1)には、外部の空気を外気導入空間1(9)に取り込むための外気流入部(11)を設けられている。
【0018】
次に、本願発明の吸塵アダプター(1)を用いた穿孔について説明する。
まず、吸塵アダプター(1)の装着部(5)を、
図4で示すように電動工具(15)のチャック(16)で把持する。一方、集塵機(19)と本願発明の吸塵アダプター(1)のホース接続部(17)を、ゴムパイプまたはプラスチック製フレキシブル・ホースなどのホース(18)で連結する。
【0019】
これらの準備が完了したら、集塵機(19)と電動工具を作動し、回転棒(4)を回転させる。この時、回転棒と吸塵アダプターはベアリングで連結されているため、回転棒の回転が吸塵アダプターに伝達されることはなく、従って吸塵アダプター(1)のホース接続部(17)に接続されたホース(18)が、捻じれたり、切れたり、外れたりすることはない。
【0020】
集塵機が作動すると、大気中の空気は回転棒(4)の加工端(8)から吸塵孔(14)を通過して吸塵アダプター(1)の吸塵通路(3)を経由し、ホース接続部(17)に接続されたホース(18)を伝って集塵機(19)に向かって流れ出す。すると吸塵アダプター(1)の内部が外気に対して負圧になり、吸塵アダプター(1)内部のディスク(12)は、互いに最も接近する位置で位置決めされ、ベアリング(2)とディスク(12)の間に外気導入空間1(9)が確保されると共に、外気中の大気は吸塵アダプター(1)に設けられた外気流入部(11)を通過して外気導入空間1(9)に流れ込み、更に外気導入空間2(10)を通過して吸塵アダプター(1)の吸塵通路(3)を経由し集塵機(19)に流れていく。
【0021】
この状態を確保したところで、作業者は電動工具を把持し、回転中の加工端(8)をコンクリートなどで出来た被加工材に当接してやる。すると、加工端(8)で研削または切削が開始され、粉塵が発生するが、この粉塵は穿孔が行われている間、連続的に回転棒(4)の内部の吸塵孔(14)、吸塵アダプター(1)の吸塵通路(3)を通過して集塵機(19)で集塵され続ける。
【0022】
この時、細かな粉塵が、吸塵アダプター内部の空気の流れ状態が悪い場所に付着して堆積することがあるが、外気導入空間2(10)から吸塵通路(3)に向かう空気の流れによってベアリング方向に流れ出ることが少なく、従って、粉塵でベアリングが回転不能になる事故が起きる確率は極めて低い。
【0023】
また、ディスク(12)は吸塵アダプター(1)の中で穿孔方向またはその逆の方向に移動可能な状態で装着されているため、穿孔完了後に集塵機(19)の作動が止まってディスク(12)を吸塵通路(3)の側に引き付けていた圧力が消滅すると、ディスク(12)は僅かな衝撃で穿孔方向またはその逆の方向に動き易く、その際、ディスク(12)に付着して残っている微量の粉塵はディスクから離脱し易い状態になる。すると、新たな穿孔が始まった時に発生する振動などにより離脱するが、外気導入部(11)から流入してくる空気の流れによって、離脱した粉塵も集塵機(19)に向かって流れていくため、粉塵が吸塵アダプター(1)の内部やディスク(12)に異常に大量に堆積することがなく、その上、ベアリング(2)が粉塵で故障する確率も大幅に減少する。
【0024】
本願発明の吸塵アダプター(1)では回転棒(4)が毎分数千回転する高速回転穿孔を想定し、ベアリング(2)として玉軸受を使用しているが、この吸塵アダプターを低速回転で穿孔するドリルに適用しても問題はない。また、
図1の実施例では、回転棒(4)は回転棒本体(6)と回転棒先端部(7)をネジ連結部(13)で連結する構成としている。分割タイプにしておくと、長時間の穿孔で加工端の刃先やダイヤ粒子の切削・研削性能が劣化した場合でも、回転棒先端部のみを新品に交換すれば好いし、必要があれば直径が異なる加工端をもつ回転棒先端部に取り替えて使用することも出来る。
【0025】
回転棒を分割タイプとせずに一体物で製作しても好い。この場合は剛性の高いドリルとなり振動などに強い。また、加工端にダイヤモンド粒子が固着されたドリルではなく、被加工材に応じて超硬合金チップの加工端をもつドリルを適用してもよい。この場合、穿孔回転数はダイヤドリルより低くなるが、実害は全く発生しない。
【符号の説明】
【0026】
1:吸塵アダプター
2:ベアリング
3:吸塵通路
4:回転棒
5:装着部
6:回転棒本体
7:回転棒先端部
8:加工端
9:外気導入空間1
10:外気導入空間2
11:外気流入部
12:ディスク
13:ネジ連結部
14:吸塵孔
15:電動工具
16:チャック
17:ホース接続部
18:ホース
19:集塵機