特許第6485826号(P6485826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485826
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】傾斜センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/00 20060101AFI20190311BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   G01C9/00 Z
   G01C15/00 101
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-537704(P2017-537704)
(86)(22)【出願日】2016年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2016073577
(87)【国際公開番号】WO2017038420
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2017年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-173114(P2015-173114)
(32)【優先日】2015年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】大海 学
(72)【発明者】
【氏名】篠原 陽子
(72)【発明者】
【氏名】須田 正之
(72)【発明者】
【氏名】野邉 彩子
(72)【発明者】
【氏名】海法 克享
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−221851(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0153171(US,A1)
【文献】 特開2010−261798(JP,A)
【文献】 特開2006−292443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/00−9/36
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物に対して相対的に移動可能に配置され、流体の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する傾斜情報検出部と
を備え
前記傾斜情報検出部は、
前記圧力センサが所定の移動経路を移動されて前記圧力センサから出力される周期的な出力信号と、前記移動情報に基づく参照信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する
傾斜センサ。
【請求項2】
前記検出対象物に対して、前記圧力センサを前記所定の移動経路で移動させる移動機構を備え、
前記傾斜情報検出部は、前記移動機構によって前記所定の移動経路を移動された前記圧力センサの移動情報と、前記圧力センサの出力とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する
請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記圧力センサが配置される回転体を備え、前記回転体を回転させることよって前記圧力センサを円状に移動させる
請求項2に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
前記移動機構は、
前記圧力センサが配置される回転体を備え、前記回転体を回転させることよって前記圧力センサを円弧状に移動させる
請求項2に記載の傾斜センサ。
【請求項5】
前記移動機構は、
前記圧力センサが配置され、直線状に移動可能な直線移動体を備え、前記直線移動体を直線状に移動させることによって前記圧力センサを直線移動させる
請求項2に記載の傾斜センサ。
【請求項6】
前記移動情報に基づいて、所定の方向の傾斜に対応する前記参照信号を生成する参照信号生成部を備え、
前記傾斜情報検出部は、
前記参照信号生成部が生成した前記参照信号と、前記圧力センサから出力される周期的な出力信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、前記検出対象物の前記所定の方向の傾斜情報を検出する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の傾斜センサ。
【請求項7】
複数の前記圧力センサを備え、
前記傾斜情報検出部は、
前記複数の圧力センサの出力と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の傾斜センサ。
【請求項8】
2つの前記圧力センサが、所定の移動によって互いに逆位相の周期的な出力信号を出力するように配置され、
前記傾斜情報検出部は、
前記互いに逆位相の2つの前記出力信号と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する
請求項に記載の傾斜センサ。
【請求項9】
2つの前記圧力センサが、所定の移動によって互いに90度位相がずれた周期的な出力信号を出力するように配置され、
前記傾斜情報検出部は、
前記互いに90度位相がずれた2つの前記出力信号と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する
請求項又は請求項に記載の傾斜センサ。
【請求項10】
前記傾斜情報検出部は、
前記圧力センサの移動距離と、前記移動距離に対する前記圧力センサの出力値の変化とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の傾斜センサ。
【請求項11】
前記圧力センサの移動情報を検出する移動情報検出部を備える
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の傾斜センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜センサに関する。
本願は、2015年9月2日に、日本に出願された特願2015−173114号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
検出対象物の角度や水平度などの傾斜情報を検出する傾斜センサが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3を参照)。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、回転運動する物体に取り付けられた少なくとも2つの加速度センサの出力に基づいて、物体の傾斜角度を検出する。
また、例えば、特許文献3に記載の技術では、検出対象物の少なくとも3箇所に配置された圧力センサの出力に基づいて、検出対象物の水平度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−28489号公報
【特許文献2】特許第5424224号公報
【特許文献3】特開2010−261798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、加速度センサを使用しているため、例えば、傾斜動作以外の動きによる加速度の影響を受けて、検出精度が低下する可能性があった。
また、特許文献3に記載の技術では、例えば、少なくとも3箇所に圧力センサを配置する必要があり、圧力センサ間のバラツキにより、検出精度が低下する可能性があった。
このように、上述した従来の傾斜センサでは、十分な検出精度が得られない可能性があり、傾斜情報の検出精度を向上させることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、傾斜情報の検出精度を向上させることができる傾斜センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、検出対象物に対して相対的に移動可能に配置され、流体の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサの出力と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する傾斜情報検出部とを備え、前記傾斜情報検出部は、前記圧力センサが所定の移動経路を移動されて前記圧力センサから出力される周期的な出力信号と、前記移動情報に基づく参照信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出する傾斜センサである。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記検出対象物に対して、前記圧力センサを前記所定の移動経路で移動させる移動機構を備え、前記傾斜情報検出部は、前記移動機構によって前記所定の移動経路を移動された前記圧力センサの移動情報と、前記圧力センサの出力とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出してもよい。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記移動機構は、前記圧力センサが配置される回転体を備え、前記回転体を回転させることよって前記圧力センサを円状に移動させてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記移動機構は、前記圧力センサが配置される回転体を備え、前記回転体を回転させることよって前記圧力センサを円弧状に移動させてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記移動機構は、前記圧力センサが配置され、直線状に移動可能な直線移動体を備え、前記直線移動体を直線状に移動させることによって前記圧力センサを直線移動させてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記傾斜情報検出部は、前記所定の移動経路を移動されて前記圧力センサから出力される周期的な出力信号と、前記移動情報に基づく参照信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出してもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記移動情報に基づいて、所定の方向の傾斜に対応する前記参照信号を生成する参照信号生成部を備え、前記傾斜情報検出部は、前記参照信号生成部が生成した前記参照信号と、前記圧力センサから出力される周期的な出力信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、前記検出対象物の前記所定の方向の傾斜情報を検出してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、複数の前記圧力センサを備え、前記傾斜情報検出部は、前記複数の圧力センサの出力と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出してもよい。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、2つの前記圧力センサが、所定の移動によって互いに逆位相の周期的な出力信号を出力するように配置され、前記傾斜情報検出部は、前記互いに逆位相の2つの前記出力信号と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出してもよい。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、2つの前記圧力センサが、所定の移動によって互いに90度位相がずれた周期的な出力信号を出力するように配置され、前記傾斜情報検出部は、前記互いに90度位相がずれた2つの前記出力信号と、前記圧力センサの移動情報とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記傾斜情報検出部は、前記圧力センサの移動距離と、前記移動距離に対する前記圧力センサの出力値の変化とに基づいて、前記検出対象物の傾斜情報を検出してもよい。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記の傾斜センサにおいて、前記圧力センサの移動情報を検出する移動情報検出部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図2A】第1の実施形態における圧力センサの水平時における出力信号の一例を説明する第1の図である。
図2B】第1の実施形態における圧力センサの水平時における出力信号の一例を説明する第2の図である。
図3A】第1の実施形態における圧力センサの傾斜時における出力信号の一例を説明する第1の図である。
図3B】第1の実施形態における圧力センサの傾斜時における出力信号の一例を説明する第2の図である。
図4】第1の実施形態における同期検波部の動作の一例を示す第1の図である。
図5】第1の実施形態における同期検波部の動作の一例を示す第2の図である。
図6】第2の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態における差分生成部の動作の一例を示す図である。
図8】第3の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図9】第4の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図10】第5の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図11】第6の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図12】第7の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
図13】第8の実施形態による傾斜センサの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態による傾斜センサについて、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による傾斜センサ1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、傾斜センサ1は、圧力センサ10と、移動機構20と、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、スリップリング35と、傾斜情報検出部40とを備えている。
本実施形態では、検出対象物の傾斜情報(例えば、傾斜角)を検出する傾斜センサ1の一例について説明する。
【0021】
圧力センサ10は、例えば、空気、液体などの流体の圧力を検出する。圧力センサ10は、検出対象物に対して相対的に移動可能に配置されている。圧力センサ10は、例えば、後述する移動機構20の回転板21の回転運動により円状に移動可能に、回転板21に配置されている。また、圧力センサ10は、例えば、圧力による物理的な変形により抵抗値が変化する差圧センサ(相対センサ)と、当該差圧センサを抵抗の一部とするホイートストンブリッジ回路と、出力アンプとを備えており、圧力による差圧センサの抵抗変化に基づいて、圧力(例えば、気圧)を検出する。
【0022】
移動機構20は、検出対象物に対して相対的に、圧力センサ10を所定の移動経路で移動させる。移動機構20は、例えば、圧力センサ10を所定の移動経路として、円状に移動させる。すなわち、移動機構20は、圧力センサ10を同一平面上に移動させる。なお、図1において、XYZ直交座標系を設定し、圧力センサ10が移動する平面をXY平面とし、XY平面の直交方向をZ軸方向とする。また、図1において、X軸方向は、紙面の左右方向とし、Y軸方向は、紙面の上下方向をとする。
また、移動機構20は、回転板21と、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。移動機構20は、回転板21を回転させることよって圧力センサ10を円状に移動させる。
【0023】
回転板21(回転体の一例)は、圧力センサ10及び後述する磁石31が配置され、モータ23によって、Z軸方向の回転軸C1(中心軸)を中心に所定の回転速度で回転される。
モータ制御部22は、例えば、モータドライバを含み、モータ23を制御する。モータ制御部22は、回転板21を所定の回転速度で回転させて、圧力センサ10を円状に移動させる。
モータ23は、回転軸C1を介して回転板21と接続され、回転板21を回転させる。
また、モータ23は、検出対象物に固定されているものとする。
【0024】
磁石31は、回転板21の円周付近に配置されており、圧力センサ10(又は回転板21)の回転位置の検出に利用される。
回転検出部32(移動情報検出部の一例)は、圧力センサ10の移動情報を検出する。
なお、圧力センサ10の移動情報とは、例えば、圧力センサ10の移動位置(回転位置)、移動量、速度、方向、及び位相などの情報であり、ここでは、一例として、圧力センサ10の回転位置を示す情報(回転位置情報)として説明する。回転検出部32は、例えば、ホール素子などの磁気検出素子であり、回転板21に配置された磁石31が接近することにより、回転板21の基準位置を検出し、検出信号を出力する。
【0025】
同期クロック信号生成部33(参照信号生成部の一例)は、回転検出部32が検出した移動情報に基づいて、所定の方向の傾斜に対応する同期クロック信号(参照信号)を生成する。すなわち、同期クロック信号生成部33は、回転板21の基準位置に応じて回転検出部32から出力された検出信号に基づいて、例えば、X軸方向の傾斜を同期検波する同期クロック信号を生成する。具体的に、同期クロック信号生成部33は、回転検出部32から出力された検出信号をトリガとして、回転板21の回転周期と同一周期のクロック信号を生成する。そして、同期クロック信号生成部33は、X軸方向の傾斜を同期検波するように、生成したクロック信号を遅延させて、同期クロック信号として傾斜情報検出部40に出力する。
【0026】
電源部34は、傾斜センサ1を動作させるための電源電圧を生成し、生成した電源電圧を各部に供給する。また、電源部34は、スリップリング35を介して、回転板21上の圧力センサ10に電源電圧(電源電力)を供給する。
スリップリング35は、回転している回転板21上の圧力センサ10に、電源部34が生成した電源電圧(電源電力)を供給するとともに、圧力センサ10から出力された出力信号を傾斜情報検出部40に伝送する信号伝送手段である。スリップリング35を用いることにより、傾斜センサ1は、回転している回転板21上に配置されている圧力センサ10の出力信号を適切に傾斜情報検出部40に伝送することが可能になる。
【0027】
傾斜情報検出部40は、圧力センサ10の出力と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する信号処理部である。すなわち、傾斜情報検出部40は、移動機構20によって所定の移動経路を移動された圧力センサ10の移動情報と、圧力センサ10の出力とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。ここで、傾斜情報には、例えば、傾斜角、水平度、傾斜の有無を示す情報などが含まれる。本実施形態では、一例として、傾斜情報検出部40が、検出対象物の傾斜角を検出する例について説明する。
また、傾斜情報検出部40は、例えば、圧力センサ10の移動距離と、移動距離に対する圧力センサ10の出力値の変化とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。ここで、図2A図2B図3A、及び図3Bを参照して、傾斜情報検出部40による傾斜角の検出原理について説明する。
【0028】
<傾斜角の検出原理>
図2A及び図2Bは、本実施形態における圧力センサ10の水平時における出力信号の一例を説明する図である。
図2Aにおいて、傾斜センサ1は、検出対象物2に取り付けされており、検出対象物2が水平である場合(検出対象物2の水平時)の状態を示している。また、図2Bは、検出対象物2の水平時における圧力センサ10の出力信号を示している。
なお、図2Bにおいて、グラフの縦軸は、圧力センサ10の出力信号の電圧を示し、グラフの横軸は、時間を示している。また、波形W1は、圧力センサ10の出力信号の波形を示している。
図2Aに示すように、検出対象物2が水平状態である場合、回転板21とともに、円状に移動する圧力センサ10は、水平に移動するため、図2Bの波形W1に示すように、一定の電圧を出力する。
【0029】
また、図3A及び図3Bは、本実施形態における圧力センサ10の傾斜時における出力信号の一例を説明する図である。
図3Aにおいて、傾斜センサ1は、検出対象物2に取り付けされており、検出対象物2がX軸方向に傾斜角θだけ傾斜している場合(検出対象物2の傾斜時)の状態を示している。また、図3Bは、検出対象物2の傾斜時における圧力センサ10の出力信号を示している。
なお、図3Bにおいて、縦軸は、圧力センサ10の出力信号の電圧を示し、横軸は、時間を示している。また、波形W2は、圧力センサ10の出力信号の波形を示している。
【0030】
図3Aに示すように、検出対象物2がX軸方向に傾斜角θだけ傾斜している場合、回転板21とともに、円状に移動する圧力センサ10は、Z軸方向に変位するため、図3Bの波形W2に示すように、周期的な出力信号を出力する。この場合、圧力センサ10は、Z軸方向の変位(高さの変化)による気圧の変化を検出し、波形W2のような正弦波状の出力信号を出力する。なお、出力信号(波形W2)のピーク間の変化量を変化量ΔVoとすると、例えば、傾斜角θが大きい程、変化量ΔVoが大きくなり、傾斜角θが小さい程、変化量ΔVoが小さくなる。また、傾斜角θは、下記の式(1)により算出することができる。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、変数Rsは、図3Aに示すように、圧力センサ10の回転半径を示している。また、(変化量ΔVoに対応する高さの変化)は、圧力センサ10の出力信号の変化量ΔVoをZ軸方向の高さの変化に変換したものである。傾斜情報検出部40は、例えば、演算により変化量ΔVoから(変化量ΔVoに対応する高さの変化)を変換してもよいし、変化量ΔVoと高さの変化とを対応付けた変換テーブルに基づいて、(変化量ΔVoに対応する高さの変化)を生成してもよい。
また、傾斜情報検出部40は、上述した式(1)を利用して、傾斜角θを傾斜情報として生成する。
【0033】
図1の説明に戻り、傾斜情報検出部40は、同期クロック信号生成部33が生成した同期クロック信号と、圧力センサ10から出力される周期的な出力信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、検出対象物の所定の方向の傾斜情報を検出する。また、傾斜情報検出部40は、同期検波部41と、傾斜角生成部42とを備えている。
【0034】
同期検波部41は、上述した圧力センサ10の周期的な出力信号と、同期クロック信号生成部33が生成した同期クロック信号とに基づいて同期検波を実行する。同期検波部41は、例えば、ロックインアンプ回路とローパスフィルタ(LPF)とを含み、圧力センサ10の出力信号の振幅に比例した直流信号を生成する。なお、同期検波部41の動作の詳細については、図4及び図5を参照して後述する。
【0035】
傾斜角生成部42は、上述した式(1)を利用して、傾斜角θを傾斜情報として生成する。傾斜角生成部42は、例えば、圧力センサ10の出力信号の振幅に比例した直流信号に基づいて、圧力センサ10の高さの変化量を生成し、生成した高さの変化量と、上述した式(1)に基づいて、検出対象物の傾斜角θを生成する。また、傾斜角生成部42は、生成した傾斜角θを示す情報を、傾斜情報として出力する。
【0036】
次に、本実施形態による傾斜センサ1の動作について、図面を参照して説明する。
検出対象物に取り付けられた傾斜センサ1は、傾斜情報(例えば、傾斜角θ)を検出する場合に、まず、移動機構20のモータ制御部22が、モータ23を所定の回転速度で回転するように駆動させる。モータ23は、回転軸C1を介して、回転板21を回転させる。回転板21が回転すると、回転板21に配置されている圧力センサ10及び磁石31が、所定の回転速度で円状に移動する。
【0037】
回転検出部32は、回転板21に配置された磁石31が接近することにより、回転板21の基準位置を検出し、検出信号を出力する。そして、同期クロック信号生成部33は、回転検出部32から出力された検出信号をトリガとして、例えば、X軸方向の傾斜を同期検波するように、同期クロック信号を生成し、生成した同期クロック信号を傾斜情報検出部40に出力する。
【0038】
また、圧力センサ10は、検出対象物が傾斜している場合に、回転板21が回転することにより、図3Bの波形W2に示すような、正弦波状の出力信号を、スリップリング35を介して、傾斜情報検出部40に出力する。
傾斜情報検出部40の同期検波部41は、同期クロック信号生成部33が生成した同期クロック信号により、圧力センサ10の出力信号を同期検波して、例えば、X軸方向の傾斜による圧力センサ10の出力信号の振幅に比例する直流信号を出力する。
【0039】
図4は、本実施形態における同期検波部41の動作の一例を示す第1の図である。
図4に示す例は、検出対象物がX軸方向に傾斜している場合の一例を示している。この図において、各グラフの縦軸は、各出力信号の電圧を示し、各グラフの横軸は、時間を示している。また、波形W3〜波形W6は、順に、圧力センサ10の出力信号、同期クロック信号、同期検波後の出力信号、及びLPFの出力信号の各波形を示している。
【0040】
図4に示す例では、検出対象物がX軸方向に傾斜している場合の例であるため、圧力センサ10の出力信号の波形W3と、同期クロック信号の波形W4とは、位相が一致している。そのため、同期検波部41は、同期検波の実行結果として、波形W5に示すような出力信号を生成する。同期検波部41は、同期検波として、例えば、時刻T1から時刻T2までの期間、及び時刻T3から時刻T4までの期間において、同期クロック信号がH状態(High状態:ハイ状態)であるため、圧力センサ10の出力信号に“+1”を乗算して同期検波の実行結果として生成する。また、同期検波部41は、例えば、時刻T2から時刻T3までの期間において、同期クロック信号が0V(Low状態:ロウ状態)であるため、圧力センサ10の出力信号に“−1”を乗算して同期検波の実行結果として生成する。これにより、同期検波部41は、同期検波の実行結果として波形W5に示すような同期検波後の出力信号を生成する。
【0041】
また、同期検波部41は、波形W5に示すような同期検波後の出力信号をローパスフィルタ(LPF)により、所定の周波数以上の成分を除去することで、波形W6に示すような、圧力センサ10の出力信号の振幅に比例した直流電圧の信号を生成する。ここで、波形W6の直流信号の電圧V1は、上述した図3Bに示す変化量ΔVoの所定の係数α倍の値となる。
【0042】
また、図5は、本実施形態における同期検波部41の動作の一例を示す第2の図である。
図5に示す例は、検出対象物がY軸方向に傾斜している場合(X軸方向は傾斜していない場合)の一例を示している。この図において、各グラフの縦軸は、各出力信号の電圧を示し、各グラフの横軸は、時間を示している。また、波形W7〜波形W10は、順に、圧力センサ10の出力信号、同期クロック信号、同期検波後の出力信号、及びLPFの出力信号の各波形を示している。
【0043】
図5に示す例では、検出対象物がY軸方向に傾斜している場合(X軸方向は傾斜していない場合)の例であるため、圧力センサ10の出力信号の波形W7と、同期クロック信号の波形W8とは、位相が90度(1/4周期)ずれている。そのため、同期検波部41は、同期検波の実行結果として、波形W9に示すような出力信号を生成する。同期検波部41は、同期検波として、例えば、時刻T5から時刻T6までの期間、及び時刻T7から時刻T8までの期間において、同期クロック信号がH状態(High状態:ハイ状態)であるため、圧力センサ10の出力信号に“+1”を乗算して同期検波の実行結果として生成する。また、同期検波部41は、例えば、時刻T6から時刻T7までの期間において、同期クロック信号が0V(Low状態:ロウ状態)であるため、圧力センサ10の出力信号に“−1”を乗算して同期検波の実行結果として生成する。これにより、同期検波部41は、同期検波の実行結果として波形W9に示すような同期検波後の出力信号を生成する。
【0044】
また、同期検波部41は、波形W9に示すような同期検波後の出力信号をローパスフィルタ(LPF)により、所定の周波数以上の成分を除去することで、波形W10に示すような、直流電圧の信号を生成する。ここで、Y軸方向の傾斜であるため、波形W10の直流信号の電圧は、0Vとなる。
【0045】
次に、傾斜角生成部42は、同期検波部41が生成した直流信号に基づいて、上述した式(1)を利用して、傾斜角θを傾斜情報として生成する。傾斜角生成部42は、例えば、直流信号の電圧値に基づいて、圧力センサ10の高さの変化量を生成し、生成した高さの変化量と、上述した式(1)に基づいて、検出対象物の傾斜角θを生成する。
例えば、上述した図4に示す例では、傾斜角生成部42は、波形W6の電圧V1に基づいて、X軸方向の傾斜角θを生成する。また、上述した図5に示す例では、傾斜角生成部42は、X軸方向は傾斜していない場合であり、波形W10の電圧が0Vであるため、X軸方向の傾斜角θを0度として生成する。
このように、本実施形態による傾斜情報検出部40は、同期検波を利用することにより、所定の方向(ここでは、X軸方向)の傾斜角θを適切に検出することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態による傾斜センサ1は、圧力センサ10と、傾斜情報検出部40とを備えている。圧力センサ10は、検出対象物に対して相対的に移動可能に配置され、流体(例えば、気体、液体など)の圧力を検出する。傾斜情報検出部40は、圧力センサ10の出力と、圧力センサ10の移動情報(例えば、回転位置情報)とに基づいて、検出対象物の傾斜情報(例えば、傾斜角θを示す情報)を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1は、圧力センサ10を用いて傾斜情報を検出するため、加速度の影響を受けることがない。例えば、本実施形態による傾斜センサ1は、水平方向の加速度の影響を受けることがない。また、本実施形態による傾斜センサ1は、圧力センサ10を移動させて傾斜情報を検出し、少なくとも1つの圧力センサ10により傾斜情報を検出できるため、例えば、複数の圧力センサ10間のバラツキにより、検出精度が低下することがない。よって、本実施形態による傾斜センサ1は、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0047】
ところで、傾斜情報の検出に、加速度センサを使用した場合、加速度の変化を距離の変化に変換するためには、2回積分する必要がある。また、加速度センサの出力に基づいて遠心力から角速度を検出する場合、又はジャイロセンサ(角速度センサ)により角速度を検出する場合には、角速度から角度を算出するために、1回積分する必要がある。このように、加速度センサ又はジャイロセンサを使用した場合には、積分が必要となり、積分により誤差が蓄積され、傾斜情報の検出精度が低下する傾向にある。
これに対して、本実施形態による傾斜センサ1では、圧力センサ10を使用しているため、上述したような積分により誤差の蓄積がなく、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。また、本実施形態による傾斜センサ1は、上述した式(1)を利用して、簡易な演算処理により、傾斜角θを検出することができる。
また、本実施形態による傾斜センサ1は、加速度の影響を受けることがないため、加速度センサを使用した場合に比べて、信頼性の高い傾斜情報を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、傾斜情報検出部40は、圧力センサ10の移動距離と、移動距離に対する圧力センサ10の出力値の変化とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1は、例えば、上述した式(1)を利用した簡易な手法により、検出対象物の傾斜情報を検出することができる。
【0049】
また、本実施形態による傾斜センサ1は、検出対象物に対して、圧力センサ10を所定の移動経路で移動させる移動機構20を備えている。そして、傾斜情報検出部40は、移動機構20によって所定の移動経路(例えば、円状の移動経路)を移動された圧力センサ10の移動情報と、圧力センサ10の出力とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。
これにより、圧力センサ10が、所定の移動経路を移動するため、本実施形態による傾斜センサ1は、位置情報(例えば、回転位置情報)を検出することで、容易に圧力センサ10の移動距離を算出することが可能になる。よって、本実施形態による傾斜センサ1は、移動情報の算出を簡略化することができる。
【0050】
また、本実施形態では、移動機構20は、圧力センサ10が配置される回転板21(回転体)を備え、回転板21を回転させることよって圧力センサ10を円状に移動させる。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1は、正弦波状の周期的な出力信号を圧力センサ10から容易に得ることができるため、例えば、同期検波などの簡易な検出手法を利用することができる。また、本実施形態による傾斜センサ1は、圧力センサ10の回転半径Rsから圧力センサ10の移動距離を容易に算出することできる。よって、本実施形態による傾斜センサ1は、検出対象物の傾斜情報の検出処理を簡略化することができる。
【0051】
また、本実施形態では、傾斜情報検出部40は、所定の移動経路を移動されて圧力センサ10から出力される周期的な出力信号(正弦波状の出力信号)と、移動情報に基づく同期クロック信号(参照信号)とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1は、同期検波を利用するため、検出対象物の傾斜情報の検出処理を簡略化することができる。
【0052】
また、本実施形態による傾斜センサ1は、移動情報に基づいて、所定の方向の傾斜に対応する同期クロック信号(参照信号)を生成する同期クロック信号生成部33(参照信号生成部)を備えている。そして、傾斜情報検出部40は、同期クロック信号生成部33が生成した同期クロック信号と、圧力センサ10から出力される周期的な出力信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、検出対象物の所定の方向の傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1は、検出対象物における所定の方向の傾斜情報を検出することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態による傾斜センサ1は、圧力センサ10の移動情報を検出する回転検出部32(移動情報検出部)を備えている。例えば、回転検出部32は、回転板21上の磁石31の位置を検出するホール素子である。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1は、移動情報(例えば、回転位置情報)正確に検出することができる。
【0054】
また、本実施形態では、圧力センサ10は、差圧センサである。差圧センサは、絶対圧センサに比べて微小な気圧変化を検出可能である。そのため、本実施形態による傾斜センサ1は、絶対圧センサを使用する場合に比べて、短い移動距離における気圧変化を検出することができる。よって、圧力センサ10の移動距離を短くすることができるので、本実施形態による傾斜センサ1は、絶対圧センサを使用する場合に比べて、小型化すること可能になる。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態による傾斜センサ1aについて、図面を参照して説明する。
図6は、第2の実施形態による傾斜センサ1aの一例を示すブロック図である。
図6に示すように、傾斜センサ1aは、圧力センサ(11、12)と、移動機構20と、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、スリップリング35と、傾斜情報検出部40aとを備えている。
なお、図6において、図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、傾斜センサ1aが複数(例えば、2つ)の圧力センサ(11、12)を備える点と、傾斜情報検出部40aが、2つの圧力センサ(11、12)の出力信号に基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する点が、第1の実施形態と異なり、以下、これらの点について説明する。
【0057】
圧力センサ(11、12)は、上述した圧力センサ10と同一の構成であり、本実施形態において、傾斜センサ1aが備える任意の圧力センサを示す場合、又は特に区別しない場合には、圧力センサ10として説明する。
圧力センサ11及び圧力センサ12は、回転板21の回転運動により円状に移動可能に、回転板21に配置されている。また、圧力センサ11と、圧力センサ12とは、円状の移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置されている。例えば、圧力センサ11と、圧力センサ12とは、回転板21の同心円上に配置され、回転板21の中心角が互いに180度ずれた位置に配置されている。
【0058】
傾斜情報検出部40aは、複数(例えば、2つ)の圧力センサ10の出力と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。すなわち、傾斜情報検出部40aは、互いに逆位相の2つの出力信号と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。傾斜情報検出部40aは、同期検波部41と、傾斜角生成部42と、差分生成部43とを備えている。
【0059】
差分生成部43は、圧力センサ11の出力信号と、圧力センサ12の出力信号とを差分した出力信号(以下、差分出力信号という)を生成する。なお、差分生成部43の動作の詳細については、図7を参照して後述する。
なお、本実施形態では、同期検波部41は、差分生成部43が生成した差分出力信号を用いる点を除いて、第1の実施形態と同様である。また、傾斜角生成部42は、差分出力信号の振幅が、圧力センサ10の振幅の2倍になっている点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0060】
次に、図7を参照して、差分生成部43の動作について説明する。
図7は、本実施形態における差分生成部43の動作の一例を示す図である。
図7において、各グラフの縦軸は、各出力信号の電圧を示し、各グラフの横軸は、時間を示している。また、波形W11〜波形W12は、順に、圧力センサ11の出力信号、圧力センサ12の出力信号、及び差分出力信号の各波形を示している。
【0061】
差分生成部43は、互いに逆位相の出力信号である、圧力センサ11の出力信号(波形W11)と圧力センサ12の出力信号(波形W12)とを差分し、波形W13に示すような差分出力信号を生成する。
図7に示す例では、時刻T11、時刻T12、時刻T13、及び時刻T14において、ノイズが発生し、圧力センサ11の出力信号及び圧力センサ12の出力信号にノイズが重畳されている。このような場合であっても、圧力センサ11の出力信号(波形W11)と圧力センサ12の出力信号(波形W12)とを差分することで、ノイズがキャンセルされる。そのため、差分生成部43は、波形W13に示すように、ノイズの除去された差分出力信号を出力する。
【0062】
なお、差分出力信号のピーク間の電圧差V2は、圧力センサ10の出力信号におけるピーク間の電圧差(上述した変化量ΔVo)の2倍になる。そのため、本実施形態による傾斜センサ1aは、S/N比(エス/エヌ比:Signal−Noise ratio)を向上させることができる。
また、本実施形態における同期検波部41及び傾斜角生成部42の動作は、第1の実施形態と同様であるが、上述したように、差分出力信号の振幅が2倍になっているため、同期検波の実行結果において、所定の係数α倍の値が2倍となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態による傾斜センサ1aは、複数の圧力センサ10を備えている。そして、傾斜情報検出部40aは、複数の圧力センサ10の出力と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。さらに、2つの圧力センサ10が、移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置され、傾斜情報検出部40aは、互いに逆位相の2つの出力信号と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1aは、例えば、互いに逆位相の2つの出力信号の差分を取ることにより、圧力センサ10の出力信号に含まれるノイズ成分を低減することができる。
また、本実施形態による傾斜センサ1aは、互いに逆位相の2つの出力信号の差分を取ることにより、上述したように、S/N比を向上させることができる。また、本実施形態による傾斜センサ1aは、互いに逆位相の2つの出力信号の差分を取ることにより、傾斜情報の検出感度を向上させることができる。
【0064】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態による傾斜センサ1bについて、図面を参照して説明する。
図8は、第3の実施形態による傾斜センサ1bの一例を示すブロック図である。
図8に示すように、傾斜センサ1bは、圧力センサ(11、12、13、14)と、移動機構20と、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33aと、電源部34と、スリップリング35と、傾斜情報検出部40bとを備えている。
なお、図8において、図1及び図6に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、傾斜センサ1bが4つの圧力センサ(11、12、13、14)を備える点と、傾斜情報検出部40bが、2系統の差分出力信号に基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する点が、第2の実施形態と異なり、以下、これらの点について説明する。
【0066】
圧力センサ(11、12、13、14)は、上述した圧力センサ10と同一の構成であり、本実施形態において、傾斜センサ1bが備える任意の圧力センサを示す場合、又は特に区別しない場合には、圧力センサ10として説明する。
圧力センサ11、圧力センサ12、圧力センサ13、及び圧力センサ14は、回転板21の回転運動により円状に移動可能に、回転板21に配置されている。また、圧力センサ11と、圧力センサ12とは、円状の移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置されている。また、圧力センサ13と、圧力センサ14とは、円状の移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置されている。ここで、圧力センサ11と、圧力センサ12との組を第1の組とし、圧力センサ13と、圧力センサ14との組を第2の組とする。
【0067】
第1の組の圧力センサ10と、第2の組の圧力センサ10とは、互い位相が90度ずれた出力信号を出力するように配置されている。すなわち、第1の組の圧力センサ10と、第2の組の圧力センサ10とは、回転板21の中心角が互いに90度ずれた位置に配置されている。例えば、圧力センサ11と圧力センサ13との2つの圧力センサ10は、移動によって互いに90度位相がずれた周期的な出力信号を出力するように配置されている。
また、圧力センサ12と圧力センサ14との2つの圧力センサ10は、移動によって互いに90度位相がずれた周期的な出力信号を出力するように配置されている。
【0068】
同期クロック信号生成部33aは、上述した第1の組と第2の組との2系統の差分出力信号に対応するために、所定の方向(例えば、X軸方向)の傾斜に対応するための、90度位相をずらした2種類の同期クロック信号を生成する。
【0069】
傾斜情報検出部40bは、上述した互いに90度位相がずれた2つ(2系統)の出力信号と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。また、傾斜情報検出部40bは、同期検波部41aと、傾斜角生成部42aと、差分生成部43aとを備えている。
差分生成部43aは、上述した第1の組の出力信号と、第2の組の出力信号とのそれぞれについて差分を行い、位相が90度ずれた2系統の差分出力信号を生成する。
【0070】
同期検波部41aは、2系統の差分出力信号のそれぞれについて、対応する同期クロック信号により同期検波を実行する。
傾斜角生成部42aは、上述した2系統の同期検波の結果に基づいて、検出対象物の傾斜角θを生成する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、2つの圧力センサ10が、移動によって互いに90度位相がずれた周期的な出力信号を出力するように配置される。そして、傾斜情報検出部40bは、互いに90度位相がずれた2つ(2系統)の出力信号と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1bは、互いに90度位相のずれた2系統の出力信号に基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出するため、検出のための情報量(サンプル数)が2倍になる。そのため、本実施形態による傾斜センサ1bは、回転板21の回転数が、第1及び第2の実施形態と同一の場合には、検出精度をさらに向上させることができる。また、本実施形態による傾斜センサ1bは、第1及び第2の実施形態と同一の検出精度とした場合には、回転板21の回転数を低減させることができる。この場合、本実施形態による傾斜センサ1bは、検出精度を確保しつつ、検出のための消費電力を低減することができる。また、本実施形態による傾斜センサ1bは、回転板21の回転数を低減することにより、モータ23等の移動機構20の動作に起因するノイズを低減することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、2つの圧力センサ10が、移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置され、傾斜情報検出部40bは、互いに逆位相の2つの出力信号と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。そのため、本実施形態による傾斜センサ1bは、第2の実施形態と同様に、圧力センサ10の出力信号に含まれるノイズ成分を低減することができるとともに、S/N比を向上させることができる。
【0073】
また、上述した本実施形態による傾斜センサ1bでは、互いに90度位相のずれた2系統の出力信号に対して、1つの同期クロック信号により同期検波を実行するようにしてもよい。この場合、本実施形態による傾斜センサ1bは、直交座標系の2方向(例えば、X軸方向とY軸方向との2方向)の傾斜角を検出することができる。例えば、傾斜センサ1bは、圧力センサ11の出力信号に基づいて、X軸方向の傾斜角を検出し、圧力センサ13の出力信号に基づいて、Y軸方向の傾斜角を検出することができる。すなわち、この場合には、本実施形態による傾斜センサ1bは、2次元平面上の任意の方向の傾斜情報を検出することができる。
【0074】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態による傾斜センサ1cについて、図面を参照して説明する。
図9は、第4の実施形態による傾斜センサ1cの一例を示すブロック図である。
図9に示すように、傾斜センサ1cは、圧力センサ10と、移動機構20aと、磁石31と、スイング検出部32aと、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、フレキシブル基板35aと、傾斜情報検出部40とを備えている。
なお、図9において、図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
本実施形態では、圧力センサ10の移動を、円状の移動の代わりに、円弧状に往復移動させるスイング移動にした場合の一例について説明する。
移動機構20aは、圧力センサ10が配置されるスイング板21a(回転体)を備え、スイング板21aを回転させることよって圧力センサ10を円弧状に移動させる。すなわち、移動機構20aは、圧力センサ10を円弧状に往復移動させるスイング移動を可能にする。また、移動機構20aは、例えば、スイング板21aと、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。
【0076】
スイング板21a(回転体の一例)は、圧力センサ10及び磁石31が配置され、モータ23によって、Z軸方向の回転軸C1(中心軸)を中心に異なる方向に交互に回転される。スイング板21aが異なる方向に交互に回転することで、圧力センサ10及び磁石31が、スイング移動される。
モータ制御部22は、スイング板21aを所定の回転速度で交互に異なる方向に回転させて、圧力センサ10を上述したスイング移動させるように制御する。
【0077】
スイング検出部32a(移動情報検出部の一例)は、圧力センサ10の移動情報を検出する。スイング検出部32aは、例えば、ホール素子などの磁気検出素子であり、スイング板21aに配置された磁石31が接近することにより、スイング板21aの基準位置を検出し、検出信号を同期クロック信号生成部33に出力する。
フレキシブル基板35aは、スイング板21a上の圧力センサ10に、電源部34が生成した電源電圧(電源電力)を供給するとともに、圧力センサ10から出力された出力信号を傾斜情報検出部40に伝送する信号伝送手段である。
【0078】
次に、本実施形態による傾斜センサ1cの動作について説明する。
本実施形態による傾斜センサ1cでは、圧力センサ10が、移動機構20aによって、スイング移動されることにより、圧力センサ10は、検出対象物の傾斜に応じて、周期的な出力信号を出力する。また、同期クロック信号生成部33は、スイング検出部32aによって検出されたスイング位置を示す情報に基づいて、所定の方向(例えば、X軸方向)の傾斜を検出するための同期クロック信号を生成する。傾斜情報検出部40は、圧力センサ10がフレキシブル基板35aを介して出力した周期的な出力信号と、同期クロック信号とに基づいて、同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、傾斜情報(例えば、傾斜角θ)を検出する。
なお、傾斜情報検出部40の動作の詳細は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態では、移動機構20aは、圧力センサ10が配置されるスイング板21a(回転体)を備え、スイング板21aを回転させることよって圧力センサ10を円弧状に移動させる。例えば、移動機構20aは、円弧状に往復移動させるスイング移動させる。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1cは、第1の実施形態と同様に、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。また、本実施形態による傾斜センサ1cは、円弧状に往復移動させるスイング移動により、圧力センサ10が周期的な出力信号を出力するため、同期検波を利用して、検出対象物の傾斜情報の検出処理を簡略化することができる。
【0080】
また、本実施形態では、スリップリング35の代わりにフレキシブル基板35aを介して、圧力センサ10に電源電圧(電源電力)を供給するとともに、圧力センサ10の出力信号を傾斜情報検出部40に伝送する。そのため、本実施形態による傾斜センサ1cは、スリップリング35を使用する場合に比べて、ノイズの影響を低減することできる。また、フレキシブル基板35aは、スリップリング35に比べて、接触不良を生じる可能性が低いため、本実施形態による傾斜センサ1cは、傾斜情報の検出における信頼性を向上させることができる。
【0081】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態による傾斜センサ1dについて、図面を参照して説明する。
本実施形態では、上述した第4の実施形態において、第2の実施形態を組み合わせて実施した場合の一例について説明する。
【0082】
図10は、第5の実施形態による傾斜センサ1dの一例を示すブロック図である。
図10に示すように、傾斜センサ1dは、圧力センサ10と、移動機構20aと、磁石31と、スイング検出部32aと、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、フレキシブル基板35aと、傾斜情報検出部40aとを備えている。
なお、図10において、図9及び図6に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
本実施形態では、圧力センサ11及び圧力センサ12は、スイング板21aの回転により円弧状に移動可能に、スイング板21aに配置されている。また、圧力センサ11と、圧力センサ12とは、円弧状の移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置されている。
なお、本実施形態による傾斜センサ1dの動作は、圧力センサ11及び圧力センサ12がスイング移動する点を除いて、基本的に、第2の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0084】
以上説明したように、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、2つの圧力センサ10が、スイング移動によって互いに逆位相の出力信号を出力するように配置され、傾斜情報検出部40aは、互いに逆位相の2つの出力信号と、圧力センサ10の移動情報とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1dは、第4の実施形態と同様の効果を奏するとともに、第2の実施形態と同様に、圧力センサ10の出力信号に含まれるノイズ成分を低減することができ、S/N比を向上させることができる。
【0085】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態による傾斜センサ1eについて、図面を参照して説明する。
図11は、第6の実施形態による傾斜センサ1eの一例を示すブロック図である。
図11に示すように、傾斜センサ1eは、圧力センサ10と、移動機構20bと、磁石31と、位置検出部32bと、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、フレキシブル基板35aと、傾斜情報検出部40とを備えている。
なお、図11において、図1及び図9に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
本実施形態では、圧力センサ10の移動を、円状の移動の代わりに、直線状に往復移動させる直線移動にした場合の一例について説明する。
移動機構20bは、圧力センサ10が配置され、直線状に移動可能な移動板25(直線移動体)を備え、移動板25を直線状に移動させることによって圧力センサ10を直線移動させる。すなわち、移動機構20bは、圧力センサ10を直線状に往復移動させる直線移動を可能にする。また、移動機構20bは、例えば、リニアトラッキング機構50と、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。
【0087】
リニアトラッキング機構50は、回転板21と、クランクシャフト24と、移動板25と、レール26とを備え、回転板21の回転運動を、移動板25の直線移動(例えば、X軸方向の直線移動)に変換する。
クランクシャフト24は、回転板21の回転運動を、移動板25に伝達し、直線移動(例えば、X軸方向(水平時)の直線移動)に変換する。
移動板25(直線移動体の一例)は、圧力センサ10及び磁石31が配置され、モータ23によって、回転板21が回転されることによって、クランクシャフト24を介して、水平時にレール26上をX軸方向に直線状に移動する。
【0088】
モータ制御部22は、回転板21を所定の回転速度で回転させて、圧力センサ10を上述した直線移動させるように制御する。
位置検出部32b(移動情報検出部の一例)は、圧力センサ10の移動情報を検出する。位置検出部32bは、例えば、ホール素子などの磁気検出素子であり、移動板25に配置された磁石31が接近することにより、移動板25の基準位置を検出し、検出信号を同期クロック信号生成部33に出力する。
【0089】
次に、本実施形態による傾斜センサ1eの動作について説明する。
本実施形態による傾斜センサ1eでは、圧力センサ10が、移動機構20bによって、直線移動されることにより、圧力センサ10は、検出対象物の傾斜に応じて、周期的な出力信号を出力する。また、同期クロック信号生成部33は、位置検出部32bによって検出された移動板25の位置を示す情報に基づいて、所定の方向(例えば、X軸方向)の傾斜を検出するための同期クロック信号を生成する。傾斜情報検出部40は、圧力センサ10がフレキシブル基板35aを介して出力した周期的な出力信号と、同期クロック信号とに基づいて、同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、傾斜情報(例えば、傾斜角θ)を検出する。
なお、傾斜情報検出部40の動作の詳細は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態では、移動機構20bは、圧力センサ10が配置され、直線状に移動可能な移動板25(直線移動体)を備え、移動板25を直線状に移動させることによって圧力センサ10を直線移動させる。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1eは、第1の実施形態と同様に、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。また、本実施形態による傾斜センサ1eは、直線移動により、圧力センサ10が周期的な出力信号を出力するため、同期検波を利用して、検出対象物の傾斜情報の検出処理を簡略化することができる。
【0091】
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態による傾斜センサ1fについて、図面を参照して説明する。
図12は、第7の実施形態による傾斜センサ1fの一例を示すブロック図である。
図12に示すように、傾斜センサ1fは、圧力センサ10と、移動機構20bと、磁石31と、位置検出部(32b−1、32b−2)と電源部34と、フレキシブル基板35aと、傾斜情報検出部40cとを備えている。
なお、図12において、図11に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
本実施形態では、圧力センサ10の周期的な出力信号に基づく同期検波の代わりに、直線移動した2箇所における圧力センサ10の出力に基づいて傾斜情報を検出する場合の一例について説明する。
位置検出部(32b−1、32b−2)は、位置検出部32bと同一の構成であり、移動板25に配置された磁石31が接近することにより、移動板25の移動位置を検出し、検出信号を傾斜情報検出部40cに出力する。本実施形態において、位置検出部(32b−1、32b−2)は、傾斜センサ1fが備える任意の位置検出部を示す場合、又は特に区別しない場合には、位置検出部32bとして説明する。
位置検出部32b−1は、例えば、圧力センサ10が第1の位置に移動したことを検出し、第1の位置において検出信号を傾斜情報検出部40cに出力する。また、位置検出部32b−2は、例えば、圧力センサ10が第2の位置に移動したことを検出し、第2の位置において検出信号を傾斜情報検出部40cに出力する。なお、第1の位置と第2の位置とは、レール26と平行に移動する圧力センサ10の移動距離ΔDだけ離れているものとする。
【0093】
傾斜情報検出部40cは、圧力センサ10の移動距離と、移動距離に対する圧力センサ10の出力値の変化とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。傾斜情報検出部40cは、例えば、上述した第1の位置と第2の位置との移動距離ΔDと、移動距離ΔDに対する圧力センサ10の出力値の変化とに基づいて、検出対象物のX軸方向の傾斜角を検出する。また、傾斜情報検出部40cは、傾斜角生成部42bを備えている。
【0094】
傾斜角生成部42bは、位置検出部32b−1により検出信号が出力された第1の位置における圧力センサ10の出力値(電圧V1)を取得する。また、傾斜角生成部42bは、位置検出部32b−2により検出信号が出力された第2の位置における圧力センサ10の出力値(電圧V2)を取得する。傾斜角生成部42bは、第1の位置の出力値と、第2の位置の出力値との変化量ΔVo(=V2−V1)を算出する。そして、傾斜角生成部42bは、上述した式(1)を利用して、移動距離ΔDと、変化量ΔVoとに基づいて、傾斜角θを算出する。なお、本実施形態では、式(1)において、移動距離(2×Rs)の代わりに、上述した移動距離ΔDを使用する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態では、傾斜情報検出部40cは、圧力センサ10の移動距離(例えば、移動距離ΔD)と、移動距離に対する圧力センサ10の出力値の変化(例えば、変化量ΔVo)とに基づいて、検出対象物の傾斜情報(例えば、傾斜角θ)を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1fは、上述した同期検波を使用する場合に比べて、簡易な構成により、傾斜情報を検出することができる。
【0096】
[第8の実施形態]
次に、第8の実施形態による傾斜センサ1gについて、図面を参照して説明する。
図13は、第8の実施形態による傾斜センサ1gの一例を示すブロック図である。
図13に示すように、傾斜センサ1gは、圧力センサ10と、移動板25と、レール26と、磁石31と、位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)と電源部34と、フレキシブル基板35aと、傾斜情報検出部40dとを備えている。
なお、図13において、図12に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
本実施形態では、直線移動した2箇所における圧力センサ10の出力に基づいて傾斜情報を検出する場合の別の一例について説明する。本実施形態では、移動機構20bを備えずに、モータ23等を有さない移動板25及びレール26を備え、外力や加速度などにより、圧力センサ10を直線移動させる点が、第7の実施形態と異なる。
【0098】
本実施形態において、移動板25は、圧力センサ10及び磁石31を備え、レール26(リニアトラッキング)上を自由に直線移動できるように構成されている。移動板25は、例えば、検出対象物に加えられた外力(例えば、測定軸方向(X軸方向)の加速度成分)や人力などにより、レール26上を移動する。
【0099】
位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)は、位置検出部32bと同一の構成であり、移動板25に配置された磁石31が接近することにより、移動板25の移動位置を検出し、検出信号を傾斜情報検出部40dに出力する。本実施形態において、位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)は、傾斜センサ1gが備える任意の位置検出部を示す場合、又は特に区別しない場合には、位置検出部32bとして説明する。
なお、位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)の位置関係は、予め定められているものとする。例えば、位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)は、所定の位置間隔で配置され、位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)の出力により、圧力センサ10の移動距離が検出可能である。
【0100】
傾斜情報検出部40dは、圧力センサ10の移動距離と、移動距離に対する圧力センサ10の出力値の変化とに基づいて、検出対象物の傾斜情報を検出する。傾斜情報検出部40dは、例えば、上述した複数の位置検出部32bのうちの2つの出力により得られる移動距離ΔDと、移動距離ΔDに対する圧力センサ10の出力値の変化とに基づいて、検出対象物のX軸方向の傾斜角を検出する。また、傾斜情報検出部40dは、傾斜角生成部42cを備えている。
【0101】
傾斜角生成部42cは、位置検出部(32b−1、32b−2、・・・、32b−N)のうちの2つにより検出信号が出力された第1の位置における圧力センサ10の出力値(電圧V1)と、第2の位置における圧力センサ10の出力値(電圧V2)を取得する。傾斜角生成部42cは、第1の位置の出力値と、第2の位置の出力値との変化量ΔVo(=V2−V1)を算出する。そして、傾斜角生成部42cは、上述した式(1)を利用して、移動距離ΔDと、変化量ΔVoとに基づいて、傾斜角θを算出する。なお、本実施形態では、式(1)において、移動距離(2×Rs)の代わりに、上述した移動距離ΔDを使用する。
【0102】
なお、傾斜角生成部42cは、所定の期間内に、磁石31を検出した検出信号が、3個以上の位置検出部32bから出力された場合に、例えば、3個以上の位置検出部32bのうちの最も距離が離れている2つを選択し、当該2つの位置検出部32bの距離を移動距離ΔDとしてもよい。この場合、傾斜角生成部42cは、例えば、最も距離が離れて磁石31を検出した2つ位置検出部32bの位置における変化量ΔVoと、当該2つの位置検出部32bの距離(移動距離ΔD)とに基づいて、傾斜角θを算出する。
【0103】
以上説明したように、本実施形態による傾斜センサ1gは、第7の実施形態のような移動機構20bを備えずに、移動板25及びレール26を備え、外力や加速度などにより、圧力センサ10を直線移動させる。そして、傾斜情報検出部40dは、圧力センサ10の移動距離(例えば、移動距離ΔD)と、移動距離に対する圧力センサ10の出力値の変化(例えば、変化量ΔVo)とに基づいて、検出対象物の傾斜情報(例えば、傾斜角θ)を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜センサ1gは、上述した同期検波を使用する場合に比べて、簡易な構成により、傾斜情報を検出することができる。
【0104】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記各実施形態では、圧力センサ10を移動させて周期的な出力信号を出力させ、傾斜情報検出部40(40a、40b)が、当該周期的な出力信号に基づいて傾斜情報を検出する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、傾斜情報検出部40(40a、40b)は、傾斜情報検出部40c(40d)のように、移動前及び移動後の2箇所、又は、移動経路中の2箇所における2つの圧力センサ10の出力値と、当該2箇所の距離情報とに基づいて、上述した式(1)を利用して、傾斜角θを検出してもよい。
【0105】
また、上記の各実施形態において、移動機構20(20a、20b)は、モータ23を備え、能動的に圧力センサ10を移動させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、傾斜センサ1(1a〜1f)は、第7の実施形態のように移動機構20(20a、20b)を備えずに、風車、水車、又は人力などによって、受動的に圧力センサ10を移動されるようにしてもよい。
また、圧力センサ10の移動経路は、上述した移動経路に限定されるものではなく、他の移動経路で移動させるようにしてもよい。
【0106】
また、上記の各実施形態において、傾斜情報検出部40(40a、40b)は、同期検波を利用して、圧力センサ10の出力信号の変化量を検出する例を説明したが、これに限定されるものではない。傾斜情報検出部40(40a、40b)は、例えば、整流回路やピークホールド回路を利用してもよいし、移動前後の差分により、圧力センサ10の出力信号の変化量を検出するようにしてもよい。
【0107】
また、上記の第1〜第3の実施形態において、圧力センサ10から出力された出力信号を傾斜情報検出部40に伝送する信号伝送手段として、スリップリング35を用いる例を説明したが、スリップリング35の代わりに、例えば、ロータリコネクタ、無線通信、フォトカプラなどによる光伝送などの他の手段を用いるようにしてもよい。また、圧力センサ10に電源電圧(電源電力)を供給する手段としては、スリップリング35の代わりに、ロータリコネクタ、ワイヤレス給電、回転板21に電池を備えるなどの手段を用いてもよい。
また、上記の第4〜第6の実施形態においても、フレキシブル基板35aの代わりに、上述した電源電圧(電源電力)を供給する手段、及び信号伝送手段を用いるようにしてもよい。
【0108】
また、上記の各実施形態において、移動情報検出部(回転検出部32、スイング検出部32a、位置検出部32b)として、ホール素子を用いる例を説明したが、ホール素子の代わりに、例えば、マイクロスイッチ、エンコーダ、光センサなどを用いてもよい。また、回転板21、スイング板21a、又は移動板25が、ホール素子などの移動情報検出部を備え、回転板21、スイング板21a、又は移動板25の移動経路上に磁石31を配置するようにしてもよい。
【0109】
また、上記の各実施形態において、圧力センサ10は、差圧センサである例を説明したが、例えば、絶対圧センサなどの他の方式の圧力センサを用いてもよい。
また、上記の各実施形態において、傾斜情報の一例として、検出対象物の傾斜角θを検出する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、水平度、傾斜の有無を示す情報などの他の情報であってもよい。また、傾斜情報検出部40(40a、40b)は、同期検波の結果を示す情報を、傾斜情報として出力し、傾斜センサ1(1a〜1e)の外部で、傾斜角生成部42(42a)の処理を実行するようにしてもよい。すなわち、傾斜センサ1(1a〜1e)は、傾斜角生成部42(42a)を備えずに、傾斜センサ1(1a〜1e)の外部において、当該傾斜角生成部42(42a)が処理を実行するようにしてもよい。
【0110】
なお、上述の傾斜情報検出部40(40a、40b、40c、40d)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した傾斜情報の検出処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0111】
また、上述した傾斜情報検出部40(40a、40b、40c、40d)が備える機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
また、上述した傾斜情報検出部40(40a、40b、40c、40d)が備える機能の一部又は全部を、コンパレータなどのディスクリート部品(例えば、単機能部品、単体素子など)を用いた簡易な回路として実現してもよい。
【符号の説明】
【0112】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 傾斜センサ
2 検出対象物
10、11、12、13、14 圧力センサ
20、20a、20b 移動機構
21 回転板
21a スイング板
22 モータ制御部
23 モータ
24 クランクシャフト
25 移動板
26 レール
31 磁石
32 回転検出部
32a スイング検出部
32b、32b−1、32b−2、32b−N 位置検出部
33、33a 同期クロック信号生成部
34 電源部
35 スリップリング
35a フレキシブル基板
40、40a、40b、40c、40d 傾斜情報検出部
41、41a 同期検波部
42、42a、42b、42c 傾斜角生成部
43、43a 差分生成部
50 リニアトラッキング機構
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13