特許第6485841号(P6485841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485841
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】盛土構造及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20190311BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20190311BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   E02D17/20 103G
   E02D17/20 102Z
   E02D17/18 Z
   E02D29/02 308
   E02D29/02 311
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-41233(P2017-41233)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-145673(P2018-145673A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109196
【氏名又は名称】ダウ化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598157834
【氏名又は名称】安野 健夫
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】安野 健夫
(72)【発明者】
【氏名】山中 尚樹
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−109159(JP,A)
【文献】 特開平10−237873(JP,A)
【文献】 特開2005−097949(JP,A)
【文献】 米国特許第04960349(US,A)
【文献】 米国特許第06315499(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 17/18
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が傾斜した盛土の前記前面に沿って、柱体状の植生ポットが水平方向に複数個及び垂直方向に複数段配置された盛土構造であって、
前記植生ポットは、筒状のネット枠と、該ネット枠内に充填された土壌と、からなり、
水平方向に配置された複数個の前記植生ポットの底面から背面並びに上面に沿って連続する一連一体の補強ネットを有し、
垂直方向に隣接する2段において、上段の前記植生ポットの底面に配置された前記補強ネットと、下段の前記植生ポットの上面に配置された前記補強ネットと、が互いに重なっており、
前記植生ポットの上面は、内部の土壌が露出した領域を有することを特徴とする盛土構造。
【請求項2】
前記ネット枠は、前記補強ネットに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造。
【請求項3】
前面が傾斜した盛土の前記前面に沿って、柱体状の植生ポットが水平方向に複数個及び垂直方向に複数段配置された盛土構造であって、
前記植生ポットは、背面に配置された補強ネットと該補強ネットに連結されたネット枠とで構成された筒状体と、該筒状体内に充填された土壌と、からなり、
前記補強ネットは、水平方向に配置された複数個の前記植生ポットの背面を構成すると同時に、前記背面から底面及び上面に沿って延設された連続する一連一体のネットであり、
水平方向に配置された複数個の前記植生ポットの前記ネット枠は、連続する一本の帯状ネットからなり、
垂直方向に隣接する2段において、上段の前記植生ポットの底面に配置された前記補強ネットと、下段の前記植生ポットの上面に配置された前記補強ネットと、が互いに重なっており、
前記植生ポットの上面は、内部の土壌が露出した領域を有することを特徴とする盛土構造。
【請求項4】
垂直方向に隣接する2段において、上段の前記植生ポットの底面に配置した前記補強ネットと、下段の前記植生ポットの上面に配置した前記補強ネットとが、互いに連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の盛土構造。
【請求項5】
前記補強ネットは、前記盛土の前記前面に連結されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の盛土構造。
【請求項6】
水平方向に隣接する2個の前記植生ポットを構成する前記ネット枠同士が、前記前面より離れた位置で互いに連結されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の盛土構造。
【請求項7】
前記盛土が発泡プラスチックブロックの盛土材からなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の盛土構造。
【請求項8】
請求項1に記載の盛土構造の構築方法であって、
水平方向に複数個配置される前記植生ポットの底面及び背面となる位置に沿って、前記補強ネットを敷設する工程と、
垂直方向に筒状のネット枠を前記補強ネットの前面に配置する工程と、
前記ネット枠内に土壌を充填して植生ポットを形成する工程と、
前記植生ポットの背面から突出する前記補強ネットを、前記植生ポットの上面に重ねる工程と、
を下段から上段に向かって複数回繰り返すことを特徴とする盛土構造の構築方法。
【請求項9】
請求項3に記載の盛土構造の構築方法であって、
水平方向に複数個配置される前記植生ポットの底面及び背面となる位置に沿って、前記補強ネットを敷設する工程と、
前記帯状ネットを、水平方向において所定の間隔を介して前記補強ネットに連結して、前記盛土の前面に沿って複数の前記ネット枠を形成する工程と、
前記ネット枠内に土壌を充填して植生ポットを形成する工程と、
前記植生ポットの背面から突出する前記補強ネットを、前記植生ポットの上面に重ねる工程と、
を下段から上段に向かって複数回繰り返すことを特徴とする盛土構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前面が傾斜した盛土の該前面を緑化する盛土構造とその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宅地や道路の造成に伴って構築した盛土の前面を緑化する方法としては、例えば特許文献1に、筒状のネット枠中に土壌を充填してなる植生ポットを、水平方向に複数個及び垂直方向に複数段、前記盛土の前面に配置してなる盛土構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−109159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような、盛土の前面に沿って複数の植生ポットを積み上げた盛土構造においては、係る前面に沿って上方より植生ポット内を通過する土圧力がかかる。そのため、地震などで強い衝撃を受けた際に、積み上げた植生ポットが崩れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、盛土の前面に植生ポットを積み上げた盛土構造において、該植生ポットが崩れにくい構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一は、前面が傾斜した盛土の前記前面に沿って、柱体状の植生ポットが水平方向に複数個及び垂直方向に複数段配置された盛土構造であって、
前記植生ポットは、筒状のネット枠と、該ネット枠内に充填された土壌と、からなり、
水平方向に配置された複数個の前記植生ポットの底面から背面並びに上面に沿って連続する一連一体の補強ネットを有し、
垂直方向に隣接する2段において、上段の前記植生ポットの底面に配置された前記補強ネットと、下段の前記植生ポットの上面に配置された前記補強ネットと、が互いに重なっており、
前記植生ポットの上面は、内部の土壌が露出した領域を有することを特徴とする。
【0007】
上記本発明の第一の盛土構造においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
前記ネット枠は、前記補強ネットに連結されている。
【0008】
本発明の第二は、前面が傾斜した盛土の前記前面に沿って、柱体状の植生ポットが水平方向に複数個及び垂直方向に複数段配置された盛土構造であって、
前記植生ポットは、背面に配置された補強ネットと該補強ネットに連結されたネット枠とで構成された筒状体と、該筒状体内に充填された土壌と、からなり、
前記補強ネットは、水平方向に配置された複数個の前記植生ポットの背面を構成すると同時に、前記背面から底面及び上面に沿って延設された連続する一連一体のネットであり、
水平方向に配置された複数個の前記植生ポットの前記ネット枠は、連続する一本の帯状ネットからなり、
垂直方向に隣接する2段において、上段の前記植生ポットの底面に配置された前記補強ネットと、下段の前記植生ポットの上面に配置された前記補強ネットと、が互いに重なっており、
前記植生ポットの上面は、内部の土壌が露出した領域を有することを特徴とする。
【0009】
上記本発明の第一、第二の盛土構造においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
垂直方向に隣接する2段において、上段の前記植生ポットの底面に配置した前記補強ネットと、下段の前記植生ポットの上面に配置した前記補強ネットとが、互いに連結されている。
前記補強ネットは、前記盛土の前記前面に連結されている。
水平方向に隣接する2個の前記植生ポットを構成する前記ネット枠同士が、前記前面より離れた位置で互いに連結されている。
前記盛土が発泡プラスチックブロックの盛土材からなる。
【0010】
本発明の第三は、上記第一の盛土構造の構築方法であって、
水平方向に複数個配置される前記植生ポットの底面及び背面となる位置に沿って、前記補強ネットを敷設する工程と、
垂直方向に筒状のネット枠を前記補強ネットの前面に配置する工程と、
前記ネット枠内に土壌を充填して植生ポットを形成する工程と、
前記植生ポットの背面から突出する前記補強ネットを、前記植生ポットの上面に重ねる工程と、
を下段から上段に向かって複数回繰り返すことを特徴とする。
【0011】
本発明の第四は、上記第二の盛土構造の構築方法であって、
水平方向に複数個配置される前記植生ポットの底面及び背面となる位置に沿って、前記補強ネットを敷設する工程と、
前記帯状ネットを、水平方向において所定の間隔を介して前記補強ネットに連結して、前記盛土の前面に沿って複数の前記ネット枠を形成する工程と、
前記ネット枠内に土壌を充填して植生ポットを形成する工程と、
前記植生ポットの背面から突出する前記補強ネットを、前記植生ポットの上面に重ねる工程と、
を下段から上段に向かって複数回繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、植生ポットの上面及び底面が補強ネットによって部分的に覆われているため、植生ポットにかかる土圧力が該補強ネットによって遮断され、個々の植生ポットにかかる土圧力が緩和される。また、補強ネットは背面から上面並びに底面に連続し、さらに、水平方向に配置した複数個の植生ポットにおいて一連一体で連続しているため、係る複数個の植生ポットが一体化して崩れにくい。よって、本発明によれば、地震などで強い衝撃を受けても植生ポットが崩れにくい盛土構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の盛土構造の一実施形態の構成を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図2】本発明の盛土構造の他の実施形態の構成を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図3図1の盛土構造の構築方法を示す図であって、1段目の補強ネットを盛土に取り付けた状態を示す斜視図である。
図4図1の盛土構造の構築方法を示す図であって、1段目の補強ネットに複数個のネット枠を取り付けた状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
図5図1の盛土構造の構築方法を示す図であって、1段目の植生ポットを形成した状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
図6図1の盛土構造の構築方法を示す図であって、2段目の補強ネットを盛土に取り付けた状態を示す斜視図である。
図7】本発明に係る、ネット枠同士の連結方法を示す図である。
図8】本発明の盛土構造の他の実施形態の構築方法を示す図であって、1段目の補強ネットに複数個のネット枠を取り付けた状態を示す斜視図である。
図9】本発明の盛土構造の他の実施形態の構築方法を示す図であって、図8に示される1段目の補強ネットに帯状ネットを取り付けて複数個のネット枠を形成した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前面が傾斜した盛土の該前面に、柱体状の植生ポットを水平方向及び垂直方向にそれぞれ複数配置してなる盛土構造とその構築方法である。
【0015】
本発明において、「盛土」とは土壌或いは盛土材であり、盛土材としては発泡プラスチックブロックが好ましく用いられる。また、「前面が傾斜した盛土」とは、盛土の前面が上方に向かうに連れて後方に傾斜した傾斜面である形態と、前面が上方に向かうに連れて順次後方に後退し、階段状に形成された形態と、を含む。
【0016】
また、本発明の第1の形態では、盛土の前面に補強ネットを取り付け、予め筒状に形成したネット枠を該補強ネットの前面に配置し、該ネット枠内に土壌を充填して植生ポットを形成し、第2の形態では、盛土の前面に補強ネットを取り付け、該補強ネットに帯状ネットを取り付けて筒状体を形成し、該筒状体内に土壌を充填して植生ポットを形成する。先ず、第1の形態について説明する。
【0017】
図1図2は本発明の第1の形態の盛土構造の実施形態であり、図1は盛土の前面が傾斜面である場合、図2は盛土の前面が階段状である場合を示す。また、図1(a)、図2(a)は斜視図であり、図1(b)、図2(b)は側面図である。図中、10は盛土、10aは盛土10の前面、20は植生ポットであり、21は筒状のネット枠、22は土壌である。
【0018】
本実施形態は、図1図2に示すように、盛土10の前面10aに配置された植生ポット20が、筒状のネット枠21内に土壌22を充填してなる。植生ポット20は水平方向に複数個配置されて1段を構成し、さらに、係る段が垂直方向に複数段配置される。尚、図1図2においては、1段毎に植生ポット20の位置を水平方向に半個分ずらせて配置している。このように、1段毎に植生ポット20の位置が水平方向にずれていることにより、植生ポット20の上面の露出領域を広くすることができる。尚、本発明は係る配置に限定されるものではなく、盛土10の前面10aの傾斜した分だけ前後にずれて、下段の植生ポット20の上に上段の植生ポット20を配置して良い。
【0019】
本発明においては、各段に、補強ネット30が配置されていることに特徴を有する。図1図2に示すように、補強ネット30は、各段において、複数個の植生ポット20の底面から背面(盛土10の前面10a側)並びに上面に沿って連続する一連一体である。よって、図1(b)、図2(b)に示すように、垂直方向に隣接する2段において、上段の植生ポット20の底面に位置する補強ネット30と、下段の植生ポット20の上面に位置する補強ネット30とが重なる。このように、植生ポット20の上面及び底面に配置された補強ネット30によって、植生ポット20に係る土圧力が遮断される。また、補強ネット30は、水平方向に複数個配置された植生ポット20に沿って連続して配置されているため、係る複数個の植生ポット20を該補強ネット30が支持し、一体化する。よって、本発明においては、地震等の強い衝撃を受けた際にも、積み上げた植生ポット20が崩れにくい。
【0020】
補強ネット30は、植生ポット20の重みによって固定され、ずれにくいが、積み上げた植生ポット20の崩れを防止する上で、(1)ネット枠21を補強ネット30に連結しておく、(2)垂直方向に隣接する2段において、上段の植生ポット20の底面に配置された補強ネット30と、下段の植生ポット20の上面に配置された補強ネット30とを互いに連結しておく、(3)補強ネット30を盛土10の前面10aに連結しておく、(4)水平方向で隣接する2個の植生ポット20のネット枠21同士を互いに連結しておく、のいずれか、或いは2以上の手段を講じておくことが望ましい。
【0021】
本発明において、植生ポット20の上面は内部の土壌が露出した領域を有している。本発明においては、図1(a),図2(a)に示すように、下段から上段に向かって、植生ポット20の位置が後退するため、植生ポット20の上面には、より上段の植生ポット20が重ならない領域が存在する。本発明においては、係る領域を植物の生育領域として確保するため、係る領域が補強ネット30で全て覆われてしまわないように、植生ポット20の上面及び底面に配置する補強ネット30の幅を調整する。尚、垂直方向に隣接する2段において、上段の植生ポット20の底面に配置する補強ネット30と、下段の植生ポット20の上面に配置する補強ネット30とは、互いに重なる領域が有れば、それぞれの端部が一致する必要はなく、多少前後にずれていても構わない。
【0022】
次に、図1に示した盛土構造の構築方法について、図3図7を用いて説明する。尚、図4図5においてそれぞれ、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
【0023】
先ず、図3に示すように、盛土10の前面10aに補強ネット30を配置し、好ましくは、補強ネット30を前面10aに連結する。補強ネット30は、植生ポット20の背面に重なる領域を前面10aに重ね、植生ポット20の底面に沿うように、下端側を折り曲げて前面10aより突出させておく。
【0024】
次いで、垂直方向に筒状のネット枠21を用意し、図4(a)に示すように、水平方向に複数個を補強ネット30の前面に配置する。この時、ネット枠21を補強ネット30に連結すること、及び、隣接する2個のネット枠21同士を連結することが好ましい。具体的には、図4(b)に示すように、1個のネット枠21については水平方向において互いに離れた二箇所(連結部31)で補強ネット30に取り付け、さらに複数個のネット枠21については、互いに隙間無く補強ネット30に取り付ける。また、水平方向に隣接するネット枠21同士を、前面10aから前方に離れた位置(連結部32)で互いに連結する。
【0025】
本例において、補強ネット30と盛土10の前面10aとの連結は、例えば、アンカー筋やバンドを用いた方法がとられる。また、ネット枠21同士の連結には、図7に示すように、隣接するネット枠21,21を互いに絡め合って、重なって形成された間隙に連結ピン41を差し込むことで容易に連結することができる。同様に、補強ネット30とネット枠21との連結も連結ピン41で連結することができる。尚、本例においては、ネット枠21を補強ネット30に連結した例を挙げたが、アンカー筋などを用いて、補強ネット30を挟んでネット枠21を盛土10の前面10aに連結しても良い。
【0026】
次いで、図5(a),(b)に示すように、ネット枠21内に土壌22を充填して柱体状の植生ポット20を形成し、該植生ポット20の上面に、該植生ポット20の背面側に突出した補強ネット30の上端側を重ねる。本例では、図4(b)に示したように、各ネット枠21を二箇所の連結部31,31で補強ネット30に連結し、さらに、隣接する2個のネット枠21同士を盛土10の前面10aから離れた連結部32で連結しているため、植生ポット20の上面形状が、後方が方形で、前方が半円形となり、水平方向において隣接する2個の植生ポット20の間に隙間がなく、強度に富む盛土構造を構成することができる。
【0027】
尚、盛土10の前面10aが水平方向において湾曲或いは屈曲する箇所においては、前面10aの形状に沿ってネット枠21を変形して配置すれば良い。
【0028】
2段目以降は、図6に示すように、下段の植生ポット20の上面を部分的に覆う補強ネット30に、上段の補強ネット30の下端側が重なるように、上段の補強ネット30を盛土10の前面10aに配置し、図4図5の工程を行う。尚、この時に、上段の補強ネット30と下段の補強ネット30とを互いに連結することが好ましい。このように、図3図5の工程で、複数個の植生ポット20を1段配置することができ、係る工程を下段から上段に向かって順次繰り返すことで、複数個の植生ポット20を複数段積み上げて図1の盛土構造が得られる。
【0029】
次に、本発明の第2の形態の盛土構造について説明する。
【0030】
第1の形態では、上記したように、筒状のネット枠21内に土壌22を充填して柱体状の植生ポット20が形成されていたため、背面においては、ネット枠21と補強ネット30とが重なる。これに対して第2の形態では、植生ポット20の背面を補強ネット30で構成したこと以外、第1の形態と同様である。よって、外観は、図1図2とほぼ同様である。以下、第2の形態の盛土構造について、その構築工程を図8図9に示して説明する。
【0031】
図8に示すように、補強ネット30を盛土10の前面10aに配置し、好ましくは、補強ネット30を盛土10の前面10aに連結する。補強ネット30は、植生ポットの背面となる領域を前面10aに重ね、植生ポットの底面に沿うように、下端側を折り曲げて前面10aより突出させておく。
【0032】
次に、長尺の帯状ネット23を、図8に示すように蛇腹状に折り畳み、図9に示すように所定の間隔を介して補強ネット30に連結する。これにより、1本の帯状ネット23で複数の植生ポットのネット枠24が形成され、該ネット枠24と補強ネット30とで筒状体が形成される。よって、該筒状体の中に土壌を充填すれば、水平方向に複数個の植生ポットが盛土10と隙間無く一体化した構造が得られる。尚、係る筒状体においても、上記第1の形態において、図4(b)に示すようにネット枠21同士を連結部32で連結したのと同様にして、隣接するネット枠24同士を盛土10の前面10aから離れた位置で連結することで、水平方向に隣接する2個の植生ポットの間に隙間がなくなり、強度に富む盛土構造が得られるため、好ましい。次いで、植生ポットの背面から突出する補強ネット30の上端側を、該植生ポットの上面に重ねる。係る工程を下段から上段に向かって順次繰り返すことで、植生ポットを複数段積み上げて本発明の盛土構造を得ることができる。尚、本形態においても、補強ネット30を盛土10の前面10aに連結すること、及び、2段目以降、上段の補強ネット30を配置する際に、下段の補強ネット30に連結することが好ましい。
【0033】
本実施形態では、帯状ネット23で複数個のネット枠24を順次形成するため、盛土10の前面10aの形状に合わせてネット枠24の大きさや、ネット枠24を補強ネット30に連結する位置の間隔を調整することができる。その結果、盛土構造全体で脆弱な部位が発生するのを防止することができる。また、本形態では、第1の形態の如く、予め筒状のネット枠21を形成する必要が無く、作業全体が簡素化される。
【0034】
上記第1の形態及び第2の形態の構築方法においては、盛土10の前面10aが傾斜面である場合を例に説明したが、盛土10の前面10aが階段状である形態では、植生ポットの高さと段差とが等しくなるように調整する以外、構築工程は同様である。
【0035】
盛土10の前面10aの傾斜の程度としては、前面10aが傾斜面である形態では水平面と傾斜面とがなす角度が、前面10aが階段状である形態では階段の傾斜角が45°〜74°であることが好ましい。また、植生ポット20の高さは盛土10の前面10aの傾斜の程度にもよるが、20cm〜35cmが好ましい。
【0036】
本発明において、ネット枠21、補強ネット30、帯状ネット23としては、特に限定されず、土壌を充填して本発明の盛土構造を構築することができる網状部材であれば用いることができる。好ましくは、高密度ポリエチレン(HDPE)からなるシートに複数の孔を穿ち、その後、シートを引き延ばして網状に形成したものが挙げられる。網状部材の間隙が大きすぎると土壌が流出しやすく、また、小さすぎると水はけが悪くなるため、例えば正方形の場合で一辺が2.5cm〜6.0cm程度となるように構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
10:盛土、10a:盛土の前面、20:植生ポット、21,24:ネット枠、23:帯状ネット、22:土壌、30:補強ネット、31,32:連結部、41:連結ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9