【文献】
CHEVAILLIER, Jean-Philippe et al.,Forward Scattering Signature of a Spherical Particle Crossing a Laser Beam out of the Beam Waist,Part. Part. Syst. Charact,1988年,Volume5, Issue1,pp. 9-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持面と前記光検出器との間に配置され、前記最大発散角よりも小さい角度への散乱光と、前記粒子で散乱されない光ビームの発散光とを遮光する遮光部を、さらに備え、
前記光検出器が前記遮光部の外側を通過した散乱光を検出する請求項3〜5のいずれか1項に記載の測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0039】
近年、回折限界を超えた分解能を持つ超解像のレーザ蛍光顕微鏡が発展している。回折限界を超える原理として、蛍光分子の非線形応答を利用したSTED(STimulated Emission Depletion)、SAX(Saturated eXcitation)、SIM(Structured Illumination Microscopy)、PALM(Photo-Activation Localization Microscopy)等があるが、いずれも回折限界まで集光された焦点が利用される。また、集光レンズの瞳における入射光の波面の位相や振幅を制御して、集光スポットの形状を制御するPSFエンジニアリングやadaptive opitcs(波面補償光学)も精力的に研究されている。PSFエンジニアリングは、特に、積極的に集光スポットを改善する試みで、より高い空間周波数をもたらすために利用されている。波面補償光学は、実際の測定環境により劣化するPSFを回復することを目的としている。
【0040】
いずれも、入射光の波面の位相と振幅の計測がなされる。一方で、実際の集光スポットの光強度については、数値計算による評価にとどまっている。これらのように集光場の光強度分布の制御が研究対象となる一方で、その直接測定方法が、今後重要となることが予想される。
【0041】
集光スポット近傍の光強度分布がレーザ顕微鏡の空間分解能の指標となる。それと同時に、単位面積あたりの光強度である、光強度密度もレーザ顕微鏡では重要指標となる。レーザ顕微鏡下では、レーザ光はサブミクロンの大きさにまで集光され、非常に光強度密度の高い状態となる。特に散乱断面積の小さいラマン分光を使用したレーザラマン顕微鏡などでは、高強度レーザが使用される。このために、常に試料へのレーザ損傷に気をつかう分析・測定法である。
【0042】
対物レンズから試料に照射されるレーザ光強度は簡便に測定できる。しかしながら、焦点の大きさや光強度分布の直接的な測定方法が無い。このために、これまで、光強度密度は、推定するにとどまっていた。本実施形態に係る測定装置を用い、光強度分布を直接測定可能になることで、正確な試料の損小閾値の知見がもたらされ、測定の簡便化が期待できる。光と物質の相互作用を積極的に利用している他の測定法・分析法、例えばLIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy)や、レーザ加工、高分子の光重合などのレーザ技術において、本実施の形態にかかる測定方法が一助となることが期待される。
【0043】
実施の形態1
本実施の形態にかかる測定装置は、光ビームの焦点内又は焦点近傍に配置され、光を散乱して散乱光を発生する粒子と、前記粒子の前方に散乱した前方散乱光で、かつ、焦点を形成する最大集光角に対応する最大発散角より大きい角度への散乱光の強度を検出する光検出器と、前記焦点に対する前記粒子の相対位置を変化させる駆動部と、を備えたものである。そのため、本実施の形態にかかる測定装置、及び測定方法は、レンズによって集光された光ビームの集光スポット内、及びその近傍における光強度の空間分布を測定する。例えば、測定装置は、レーザ顕微鏡の対物レンズの集光スポット内、及びその近傍における光強度の空間分布を測定する。
【0044】
(測定原理)
まず、本実施の形態にかかる測定装置、及び測定方法で利用される測定原理について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる測定装置、及び測定方法で利用される測定原理を説明するための図である。
図1に示すように、対物レンズ51は照明光L1を集光することで、対物レンズ51の焦点に集光スポットS1が形成されている。
【0045】
集光スポットS1には、金ナノ粒子11が配置されている。回折限界によって集光スポットS1は有限の大きさを有している。金ナノ粒子11は、集光スポットS1よりも十分に小さくなっている。さらに、金ナノ粒子11は、照明光L1の波長よりも十分に小さい。金ナノ粒子11のサイズは、例えば40nmである。
【0046】
Mie理論により、光の波長よりも十分に小さい粒子が、光の電場中に存在する場合、粒子は双極子近似が適用される。散乱される散乱光の振幅(電場)は、粒子が存在する光の電場(E)に比例する。光の強度Iは電場の二乗(E
2)に比例する。
【0047】
よって、金ナノ粒子11で散乱した散乱光を検出することで、金ナノ粒子11における照明光L1の光強度を測定することができる。また、金ナノ粒子11を移動することで、光強度の空間分布を測定することができる。散乱光を検出する場合、蛍光と異なり、蛍光退色等の現象は発生しない。また、どのような光でも金ナノ粒子11で散乱されるため、照明光L1の波長などに制限がない。散乱光の強弱は、なお、光の波長と粒子サイズ、粒子と場の誘電率に依存する。
【0048】
ここで、
図2に示すように、顕微鏡の対物レンズの作動距離をWDとする。高倍率、高NAの対物レンズ51であるほど、WDは短くなる。100倍対物レンズ、NA0.9でWDは0.1〜1mmとなる。なお、開口数NAは以下の式(2)で表される。
開口数NA=n×sinθ ・・・(2)
n:焦点が存在する媒質の屈折率(空気の場合は、n=1)
θ:集光角(光軸と最外側の集光光線の角度)
標準的な高倍率対物レンズ100×、N=0.9でθ=64.2°となる。
【0049】
金ナノ粒子11によって散乱される散乱光は、誘起された双極子の軸を回転対称軸として、散乱される方角αに依存する光強度となる。具体的には、金ナノ粒子11による散乱光の強度は、以下の式(3)で表される。
C*sin
2(α) ・・・(3)
なお、Cは比例定数である。金ナノ粒子11での散乱は、
図3に示すように後方散乱と、前方散乱とに分けられる。すなわち、後方散乱光は、金ナノ粒子11から対物レンズ51側に向かう散乱光となる。後方散乱光は、対物レンズ51に近づく方向(
図3中の上方向)に伝播する。前方散乱光は、金ナノ粒子11から対物レンズ51と反対側に向かう散乱光となる。すなわち、前方散乱光は、対物レンズ51から離れる方向(
図3中の下側)に伝播していく。
【0050】
対物レンズ51を介さずに散乱光を検出することができれば、測定対象物と、測定装置の分離が可能となる。しかしながら、上記のように、高倍率、高NAの対物レンズ51のWDは、1mm以下となる。そのため、集光スポットと対物レンズ51との間に、光検出器などを配置することが実質的に不可能である。そこで、本実施の形態にかかる測定装置では、金ナノ粒子11の前方に配置された光検出器21で前方散乱光を検出する。
【0051】
前方散乱光を検出することで、対物レンズ51を介さずに、散乱光の光強度を測定することができる。しかしながら、金ナノ粒子11で散乱されない照明光L1も光検出器21で検出されてしまう。散乱光は、レーリ散乱光であるため照明光L1と同じ波長となる。したがって、散乱光と照明光L1とをダイクロイックミラーや波長フィルタ等で分離することができない。
【0052】
(測定装置の測定光学系)
そこで、本実施の形態では、光検出器21と金ナノ粒子11との間に照明光L1を遮光する遮光部を配置している。
図4に、本実施の形態にかかる測定装置の測定光学系101を示す。測定光学系101は、金ナノ粒子11と、保持部材12と、遮光部13と、光検出器21と、を備えている。
【0053】
金ナノ粒子11の前方散乱光を検出するため、保持部材12、遮光部13、光検出器21は、対物レンズ51の前方側(
図4の下側)に配置されている。具体的には、保持部材12は、対物レンズ51と対向するように、対物レンズ51の下側に配置されている。遮光部13は、保持部材12の下側に配置されている。光検出器21は、遮光部13の下側に配置されている。なお、本実施の形態における上下方向は、図面内での方向であり、実際の配置方向に対して相対的なものとなる。すなわち、本実施の形態では、照明光L1が下方に伝播して、対物レンズ51に入射する構成を説明している。また、
図4では、照明光L1のうち、金ナノ粒子11で散乱されずに、発散しながら進む光を発散光L3として示している。発散光L3は、焦点から離れる方向(
図4中の下方向)に拡がりながら進む。
【0054】
対物レンズ51は、照明光L1を集光する。照明光L1は、例えばレーザ光源からの単色の光ビームである。金ナノ粒子11は、上記のように対物レンズ51で集光された照明光L1の集光スポット内に配置される。金ナノ粒子11は、保持部材12の上に載置されている。保持部材12は、金ナノ粒子11を保持している。なお、金ナノ粒子11に代わりに銀ナノ粒子等の他の金属粒子を用いてもよい。金ナノ粒子11等の金属粒子を用いることで、散乱断面積を大きくすることができ、検出される散乱光強度を高くすることができる。保持部材12に保持される粒子は、入射した光を散乱する微粒子であればよい。金ナノ粒子11は、照明光L1の波長、及び集光スポットよりも小さいサイズを有している。
【0055】
保持部材12は、光透過性を有する光透過部材であり、例えば、ガラスや樹脂により形成されている。保持部材12は、保持面12aと、凸面12bとを備えている。保持面12aが対物レンズ51に向けて配置される。凸面12bは、保持面12aと対向して配置されている。保持面12aは平坦な上面であり、凸面12bは下向きに突出するように湾曲した下面である。凸面12bは、球面となっている。また、凸面12bは、放物面等の非球面としてもよい。具体的には、保持部材12は、半球ガラス又は、半放物面ガラスとすることができる。さらに、凸面12bの曲率中心は、対物レンズ51の光軸OXと保持面12aの交点の近傍となっている。
【0056】
保持面12aの上には、金ナノ粒子11が配置されている。照明光L1は、金ナノ粒子11によって散乱される。上記のように散乱光L2は、全方位に散乱されている。ここで、前方に向かう散乱光を散乱光L2とする。散乱光L2は、発散しながら進む。散乱光L2は、保持部材12を透過する。すなわち、散乱光L2は保持面12aを通過して、保持部材12の内部を伝搬する。そして、散乱光L2は、凸面12bを介して、保持部材12の外側にでる。散乱光L2は、凸面12bを通過して、保持部材12の下側の空間を伝搬していく。同様に散乱されなかった発散光L3も凸面12bを介して、保持部材12の外側に出る。
【0057】
保持部材12の下側には、遮光部13が配置されている。したがって、保持部材12は、遮光部13と対物レンズ51との間に配置されている。遮光部13は、対物レンズ51の光軸OX上に配置されている。遮光部13は、例えば、円形の遮光板である。遮光部13は、樹脂または金属板などによって形成されている。遮光部13を黒色とすることで、迷光が検出されるのを防ぐことができる。凸面12bから出射した散乱光L2は、遮光部13に入射する。
【0058】
よって、遮光部13に入射した散乱光L2が遮光される。また、金ナノ粒子11で散乱されなかった発散光L3も保持部材12を通過して、遮光部13に入射する。よって、遮光部13は発散光L3を遮光する。なお、遮光部13は、保持部材12からの発散光L3の通過を制限できる大きさとなっている。これにより、発散光L3が光検出器21で検出されるのを防ぐことができる。
【0059】
遮光部13の下には、光検出器21が配置されている。すなわち、遮光部13が保持部材12の凸面12bから光検出器21までの間に配置されている。光検出器21は、遮光部13よりも大きくなっている。すなわち、光軸OXと直交する平面視において、光検出器21は、遮光部13からはみ出すように配置されている。したがって、光検出器21は、遮光部13の外側を通過した散乱光L2を検出する。
【0060】
ここで、発散光L3の最大発散角と照明光(集光光)L1の最大集光角について、
図5を用いて説明する。
図5は、焦点近傍における発散光と集光光を示す図である。
図5では、対物レンズ51によって焦点に向けて集光された光を集光光L4として示している。すなわち、照明光L1のうち、焦点を通過前の光が集光光L4となり、焦点を通過後の光が発散光L3となる、また、
図5では、説明のため保持部材12を省略している。
【0061】
図5では、対物レンズ51で集光されて、焦点に向かう集光光L4の最大集光角をθ4としている。また、焦点から発散しながら進む発散光L3の最大発散角をθ3としている。なお、発散光L3は、上記の通り、照明光L1のうち、金ナノ粒子11で散乱されずに進む光である。ここで、最大発散角θ3は、最大集光角θ4に対応する。
図5のように、最大発散角θ3は最大集光角θ4と等しくなる。なお、保持部材12の屈折率は、空気の屈折率よりも大きいため、発散光L3は、保持面12aで屈折される。したがって、最大発散光θ3の発散光L3は、保持面12aで屈折すると、最大集光角θ4よりも小さい発散角で伝播する。
【0062】
上記のように散乱光L2は、全方位に散乱される。したがって、散乱光L2は、発散光L3よりも広い角度で伝搬している。遮光部13は、発散光L3を全て遮光することができる大きさとなっている。より具体的には、遮光部13は、発散光L3を遮光できる最小限のサイズとなっている。遮光部13の大きさは、対物レンズ51のNAと、粒子からの距離(保持面12aからの距離)と、保持部材12の屈折率などによって決定される。このようにすることで、遮光部13が発散光L3を全て遮光することができるため、光検出器21が散乱光L2のみを検出することができる。すなわち、遮光部13は、最大発散角よりも小さい角度で前方に散乱された散乱光L2と、金ナノ粒子11で散乱されない光ビームの発散光L3とを遮光する。光検出器21は、対物レンズ51の最大発散角よりも大きな角度で前方に散乱された散乱光L2を検出する。
【0063】
このように、光検出器21は、金ナノ粒子11からの散乱光L2を検出する。そして、光検出器21は、散乱光強度に応じた検出信号を出力する。上記のように金ナノ粒子11による散乱光強度は、金ナノ粒子11の位置における照明光L1の強度に応じて変化する。具体的には、散乱光強度は、照明光強度に比例する。したがって、光検出器21で検出された散乱光強度が、金ナノ粒子11の位置における照明光L1の強度を示すことになる。金ナノ粒子11は、集光スポットよりも小さい。よって、集光スポット内の金ナノ粒子11の位置における照明光強度を測定することができる。
【0064】
金ナノ粒子11を移動することで、集光スポット内における金ナノ粒子11に位置が変わる。すなわち、金ナノ粒子11が集光スポットを走査するように、金ナノ粒子11を保持する保持部材12を移動させる。具体的には、保持部材12、遮光部13、光検出器21を一体的に移動する。こうすることで、集光スポットに対して、金ナノ粒子11、保持部材12、遮光部13、光検出器21を相対的に移動することができる。なお、金ナノ粒子11とともに、遮光部13、又は光検出器21を、移動させない構成とすることもできる。例えば、金ナノ粒子11とともに、保持部材12のみを移動させてもよい。あるいは、金ナノ粒子11とともに、保持部材12及び遮光部13を移動させてもよい。さらに、金ナノ粒子11とともに、保持部材12及び光検出器21を移動させてもよい。
【0065】
金ナノ粒子11の位置を移動することで、照明光L1の強度の空間分布を測定することができる。例えば、光軸OXと直交する平面内において金ナノ粒子11を移動することで、集光スポットにおける照明光強度の2次元分布を測定することができる。さらに、金ナノ粒子11の位置を光軸OXに沿って移動することで、集光スポットにおける照明光強度の3次元分布を測定することができる。このように、測定光学系101を用いることで、集光スポットにおける照明光強度の空間分布を正確に測定することができる。レーザ光の焦点の大きさを正確に測定することができる。また、レーザ光のパワー密度を正確に測定することも可能である。
【0066】
さらに、保持部材12、遮光部13、及び光検出器21のみを対物レンズ51の直下に配置する構成としている。このため、測定光学系101を簡素な構成とすることができる。よって、測定装置を小型化することができる。
【0067】
次に、保持部材12の下面を凸面12bとする理由について、
図6、
図7を用いて説明する。
図6は、平行平板の保持部材112を用いた構成を示す図である。
図7は、平行平板の保持部材112内における光の屈折を示す図である。
【0068】
図6に示すように、保持部材112は、対向する2面(上面、及び下面)が平行な平面となっている。保持部材112の上に金ナノ粒子111が配置されている。そして、保持部材112の下に、遮光部113が配置されている。遮光部113の下に光検出器121が配置されている。
【0069】
保持部材12、及び保持部材112は、例えば、ガラスや樹脂などの透明材料に形成されている。これらの透明材料は、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有している。よって、保持部材112と空気との界面で光が屈折する。空気の屈折率をn
1とし、保持部材112を構成する透明材料(例えば、ガラス)の屈折率をn
2とする。スネルの法則により、
図7の屈折角θ
1、θ
2は、以下の式(4)で表される。
n
2/n
1=sinθ
1/sinθ
2 ・・・(4)
【0070】
また、照明光L1のスポットサイズdは、上記した式(1)、(2)の通り、d=0.61λ/NA=0.61λ/(n
1×sinθ
1)となる。なお、λは照明光L1の波長である。
【0071】
保持部材112の下面は平面である。NA=n
1×sinθ
1以上の光は、スネルの法則による全反射状態となるため、保持部材112の下面から出てくることができない。そこで、本実施の形態では、保持部材12の下面を凸面12bとすることで、NAが1以上の光を検出することができる。例えば、保持部材12の下面を球面としている。集光スポットが曲率中心の近傍に形成されている場合、凸面12bに対して散乱光L2が入射する入射角を90°に近くすることができる。よって、保持部材12内を伝搬するほぼ全ての散乱光L2が保持部材12の凸面12bから出射することができる。これにより、光検出器21で検出される散乱光L2の強度を高くすることできるため、より正確に測定することができる。
【0072】
保持部材12の保持面12aの表面上に配置された金ナノ粒子11による散乱光は、保持面12aに入射する際に屈折される。スネルの法則で、集光ビームの発散角および散乱光の散乱角が小さくなる(制限が緩和される)。一方、反対側の凸面12bを球面とすることで、金ナノ粒子11から光検出器21へ伝搬する発散光L3と散乱光L2は、保持部材12と空気との界面の法線方向に沿って入射する。このため、発散光L3と散乱光L2は角度を変えず(小さな発散角のまま)に、伝搬する。
【0073】
保持部材12の屈折率が大きいほど、発散光L3と散乱光L2の発散角が小さくなり、遮光部13、及び光検出器21の大きさを小さくすることができる。さらに、光検出器21が、より多くの散乱光を受光することができる。遮光部13、及び光検出器21のサイズなど、物理的な制約を緩和することができる。よって、より大きなNAの集光角に対応することができる。保持部材12の屈折率が大きいほど効果的である。また、発散光L3と散乱光L2の発散角がより小さくなるように、凸面12bを非球面・放物面してもよい。
【0074】
さらに、光検出器21は、散乱光L2を受光することができればよいため、光検出器21としてCCDやCMOSなどの2次元アレイ検出器を用いる必要がない。光検出器21はフォトダイオード等のポイントセンサとすることができる。これにより、測定光学系101を簡素な構成とすることができる。これにより、測定装置を小型化することができる。例えば、測定装置の高さ(厚さ)は、25mm〜50mm程度とすることができる。さらに、光軸と直交する平面内における横幅を150mm以下のサイズとすることができる。
【0075】
さらに、蛍光ビーズ等の蛍光物質を用いていないため、蛍光退色の影響がない。よって、繰り返し測定しても、正確に測定することができる。さらに、蛍光物質を励起していないため、原理的な波長の制限はない。さらに、高NAの対物レンズによる集光スポットの測定に好適であり、油浸対物レンズの性能を評価することも可能となる。
【0076】
変形例1.
測定光学系101の変形例1を
図8に示す。
図8に示す変形例1では、遮光部13の位置が
図4の構成と異なっている。具体的には、遮光部13が保持部材12の内部に設けられている。すなわち、保持部材12の保持面12aと凸面12bとの間に、遮光部13が配置されている。遮光部13の配置以外は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。また、
図8では対物レンズ51を省略している。遮光部13は、焦点を形成する最大集光角に対応する最大発散角よりも小さい角度への散乱光L2と、金ナノ粒子11で散乱されない光ビームの発散光L3とを遮光する。
【0077】
このように、遮光部13は、保持面12aよりも前方側に配置されていればよい。保持部材12の内部、又は表面を黒色に着色することで、遮光部13を形成することができる。本実施の形態では、保持部材12と一体的に遮光部13を形成することができる。よって、保持部材12とは別に遮光部13を設ける必要があるため、部品点数を少なくすることができる。また、保持部材12と光検出器21との距離を短くすることができるため、光検出器21を小型化することができる。よって、測定光学系101をより小型化することができる。例えば、保持部材12の凸面12b、又は光検出器21の表面に、光を通さない物質をコーティングすることで、遮光部13を形成してもよい。具体的には、金属、誘電体等の薄膜を蒸着したり、スパッタリングしたりすることで、遮光部13を形成することができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0078】
一方、
図4に示す構成では、保持部材12と別の部材で遮光部13が形成されている。よって、遮光部13の交換が容易になるため、遮光部13のサイズ調整等を容易に行うことができる。すなわち、大きさの異なる遮光板を複数用意しておくことで、遮光部13のサイズ調整や位置調整を容易に行うことができる。
【0079】
実施の形態2.
本実施の形態にかかる測定装置の測定光学系102を
図9に示す。測定光学系102では、測定光学系101に加えて、集光レンズ15を備えている。本実施の形態2では、保持部材12と光検出器21との間に1枚の集光レンズ15がリレーレンズとして配置されている。
【0080】
集光レンズ15は、遮光部13と光検出器21との間に配置されている。集光レンズ15は、遮光部13の外側を通過した散乱光L2を光検出器21に集光する。このようにすることで、実施の形態1とその変形例に比べて、光検出器21の受光サイズを小さくすることができる。具体的には、光検出器21を遮光部13よりも小さいサイズとすることができる。
【0081】
変形例2.
図9では、遮光部13が保持部材12と集光レンズ15との間に配置されていたが、遮光部13を配置する位置は特に限定されるものではない。すなわち、遮光部13は保持面12aと光検出器21との間に配置されていればよい。
図10は、遮光部13の配置例を示す図である。遮光部13は、焦点を形成する最大集光角に対応する最大発散角よりも小さい角度への散乱光L2と、金ナノ粒子11で散乱されない光ビームの発散光L3とを遮光する。
【0082】
保持面12aと光検出器21は、共役面(粒子の像を投影する位置)に位置することが好ましい。この場合、散乱光L2は、光検出器21において、集光されて最小サイズとなる。このため、光検出器21のサイズを小さくできる。共役面である場合、保持面12aに位置する金ナノ粒子11は、光検出器21のサイズの像の中にあれば、散乱光L2が検出される。遮光部13のサイズは、発散光L3の最大発散角の光線を遮断できるサイズより大きくする。さらに、遮光部13のサイズはXY走査範囲より大きなマージンを取る。
【0083】
図10に示す遮光部13a〜13dのいずれか1つの構成を採用することができる。遮光部13aは、保持部材12の内部に配置されている。遮光部13bは、凸面12bと集光レンズ15との間に配置されている。遮光部13cは、集光レンズ15の内部に配置されている。遮光部13dは、集光レンズ15と光検出器21との間に配置されている。遮光部13a〜13dに示すいずれかの位置で照明光L1を遮光すればよい。そして、遮光部13の外側を通過した散乱光L2を光検出器21が検出する。
【0084】
なお、保持部材12の凸面12b、集光レンズ15の表面、又は光検出器21の表面に、光を通さない物質をコーティングすることで、遮光部13を形成してもよい。具体的には、金属、誘電体等の薄膜を蒸着したり、スパッタリングしたりすることで、遮光部13を形成することができる。
【0085】
実施の形態3.
本実施の形態にかかる測定装置の測定光学系103を
図11に示す。測定光学系103は、測定光学系102に加えて、コリメートレンズ14を備えている。本実施の形態3では、保持部材12と光検出器21との間に集光レンズ15、及びコリメートレンズ14がリレーレンズとして配置されている。
【0086】
コリメートレンズ14は、集光レンズ15と保持部材12との間に配置されている。コリメートレンズ14は、遮光部13の外側を通過した散乱光L2を平行光束とする。そして、集光レンズ15は、コリメートレンズ14からの散乱光L2を光検出器21に集光する。このように、コリメートレンズ14、及び集光レンズ15によって、散乱光L2が光検出器21に集光される。このようにすることで、実施の形態1とその変形例に比べて、光検出器21の受光サイズを小さくすることができる。
【0087】
変形例3.
なお、
図11では、遮光部13が保持部材12とコリメートレンズ14との間に配置されていたが、遮光部13を配置する位置は特に限定されるものではない。すなわち、遮光部13は保持面12aと光検出器21との間に配置されていればよい。
図12は、遮光部13の配置例を示す図である。遮光部13は、焦点を形成する最大集光角に対応する最大発散角よりも小さい角度への散乱光L2と、金ナノ粒子11で散乱されない光ビームの発散光L3とを遮光する。
【0088】
図12に示す遮光部13e〜13jのいずれか1つの配置を採用することができる。遮光部13eは、保持部材12の内部に配置されている。遮光部13fは、凸面12bとコリメートレンズ14との間に配置されている。遮光部13gは、コリメートレンズ14の内部に配置されている。遮光部13hは、コリメートレンズ14と集光レンズ15との間に配置されている。遮光部13iは、集光レンズ15の内部に配置されている。遮光部13jは、集光レンズ15と光検出器21との間に配置されている。遮光部13e〜13jに示すいずれかの位置で照明光L1を遮光すればよい。そして、遮光部13の外側を通過した散乱光L2を光検出器21が検出する。
【0089】
なお、保持部材12の凸面12b、コリメートレンズ14の表面、集光レンズ15の表面、又は光検出器21の表面に、光を通さない物質をコーティングすることで、遮光部13を形成してもよい。具体的には、金属、誘電体等の薄膜を蒸着したり、スパッタリングしたりすることで、遮光部13を形成することができる。
【0090】
なお、実施の形態1〜3とその変形例において、保持部材12の保持面12aと対向する面は、凸面12bに限られるものではない。例えば、保持面12aと対向する面が平面であってもよい。具体的には、
図6に示す構成の保持部材112を用いることも可能である。すなわち、保持部材112の上面が、金ナノ粒子111を保持する保持面となる。そして、保持面と対向する下面が保持面と平行な平面となっている。この場合も遮光部13の位置は、特に限定されるものではない。また、保持部材112と光検出器121との間に、実施の形態2又は3で示した集光レンズ15やコリメートレンズ14を配置してもよい。
【0091】
実施例
実施例にかかる測定装置100の構成について、
図13、
図14を用いて説明する。
図13は、測定装置100の外観、及び制御構成を示す図である。
図13は測定装置100の外観を斜視的に示している。
図14は、測定装置100の本体部の内部構成を示す断面図である。なお、
図14では測定光学系103を用いた例が示されている。すなわち、保持部材12と光検出器21との間にコリメートレンズ14、及び集光レンズ15が配置されている。
【0092】
測定装置100は、本体部40とコントローラ41とパソコン42とを備えている。本体部40は、上記の測定光学系103を備えている。そのため、本体部40は、測定光学系103を収容する筐体10を有している。本体部40のサイズは、例えば、100mm×100mm×27mmとなっている。
【0093】
図14に示すように、筐体10は直方体状の箱である。筐体10の内部に測定光学系103が配置される。筐体10の上面には、保持部材12の保持面12aが露出している、そして、保持部材12の保持面12aには金ナノ粒子11が配置されている。保持部材12は、例えば、屈折率が2.0の高屈折率半球ガラスである。
【0094】
例えば、複数の金ナノ粒子11が保持面12aの上に散布されている。なお、集光スポット内に1つの金ナノ粒子11が配置されるように、複数の金ナノ粒子11が保持面12a上に散布されている。なお、集光スポットのサイズが1μm程度である。
【0095】
図14に示すように、第1鏡筒32は保持部材12、及びコリメートレンズ14を保持している。すなわち、保持部材12とコリメートレンズ14とが第1鏡筒32内に固定されている。
【0096】
第2鏡筒33は、第1鏡筒32、及び集光レンズ15を保持している。第1鏡筒32は、第2鏡筒33の内部に配置されている。第1鏡筒32は、第2鏡筒33に対して脱着可能に取り付けられている。集光レンズ15は、第2鏡筒33内に固定されている。第1鏡筒32と第2鏡筒33との間には、遮光部13が設けられている。第1鏡筒32を取り外すことで、遮光部13を交換することができる。
【0097】
第2鏡筒33の下側には、光検出器21が配置されている。光検出器21は、チップサイズが3.6mm×3.6mmのフォトダイオードである。
【0098】
さらに、第2鏡筒33は、駆動部31を介して、筐体10に取り付けられている。駆動部31は、XYZ方向の3次元ピエゾスキャナである。駆動部31は、筐体10に対して、第2鏡筒33を移動する。なお、Z方向は、高さ方向、すなわと、対物レンズの光軸と平行な方向である。XY平面は、Z方向に垂直な平面である。XY方向は互いに直交する方向である。駆動部31は、例えば、1nmピッチで第2鏡筒33を移動させることができる。
【0099】
駆動部31が駆動すると、第2鏡筒33に取り付けられている保持部材12、遮光部13、コリメートレンズ14、集光レンズ15、及び光検出器21が移動する。よって、保持部材12に保持されている金ナノ粒子11が、集光スポットを走査する。駆動部31により走査しながら、検出器21が散乱光L2の強度を測定する。これにより、集光スポットにおける照明光L1の光強度の空間分布を測定することができる。
【0100】
図13に示すように、筐体10には、コントローラ41が接続されている。コントローラ41は、駆動部31に電源を供給して、駆動部31のXYZ制御を行う。さらに、光検出器21からの検出信号(電圧)は、コントローラ41に出力される。コントローラは、光強度に応じた検出信号の電圧値をA/D変換して、パソコン42に出力する。
【0101】
パソコン42は、検出信号を記憶する記憶部や、光強度の空間分布を表示するための表示部を備えた処理装置である。駆動部31が第2鏡筒33をXYZ方向の各方向にそれぞれ移動する。第2鏡筒33のXYZ位置と、検出信号の検出値を対応付けることにより、光強度の3次元分布を測定することができる。
【0102】
コリメートレンズ14、及び集光レンズ15には、NA0.67の非球面レンズ(空気中(n=1)で設計)が使用されている。n×sinθ=0.67であるため、θ=42.1度の集光角が最大となる。ただし、保持部材12がn=2.0の高屈折率半球レンズである。このため、θ=42.1度の集光角は、測定対象の対物レンズ51の実質、n×sin(42.1°)=2×0.67=1.43のNAに相当する。よって、高NAの対物レンズ51の集光スポットの光強度分布を測定することができる。
【0103】
図15に、遮光部13の一例の構成を示す。
図15は遮光部13の構成を示す平面図である。遮光部13は、円形板である。遮光部13は、外枠35と連結部36を介して連結されている。外枠35は、遮光部13の外側に配置された円環である。外枠35が第1鏡筒32と第2鏡筒33との間に保持されている。遮光部13と外枠35とは、連結部36を介して連結されている。ここでは、4つの連結部36が放射状に設けられている。
【0104】
したがって、径方向において、遮光部13と外枠35の間には空間37が形成される。すなわち、遮光部13の外側であって、外枠35の内側の空間37を通過した散乱光L2が光検出器21で検出される。外枠35と、遮光部13と、連結部36とは樹脂により一体的に形成されている。また、遮光部13は、低反射率であることが好ましい。外枠35と、遮光部13と、連結部36を黒色に塗装している。こうすることで、迷光が検出されるのを防ぐことができる。
【0105】
ここで、測定対象の対物レンズ51を変える場合、遮光部13のサイズを変えればよい。すなわち、対物レンズ51のNAに応じて、遮光部13の最適サイズが異なる。よって、対物レンズ51のNAに応じたサイズの遮光部13を有する遮光部13を用意する。
【0106】
また、NAが高い対物レンズ51に対応するサイズの遮光部13であっても、NAが小さい対物レンズ51の集光スポットを測定することができるが、検出光量が小さくなる。すなわち、遮光部13のサイズが大きいほど、遮光される散乱光L2が多くなる。このため、照明光L1を遮光できる範囲でできるだけ小さいサイズの遮光部13を用いればよい。
【0107】
次に、測定装置100の測定対象となる顕微鏡200の構成について、
図16を用いて説明する。
図16は、測定装置100の本体部40を搭載した顕微鏡200を示す図である。顕微鏡200は、対物レンズ51の直下に配置された試料台60を備えている。実際の観察時には、試料台60の上に試料が載せられる。試料台60に測定装置100の本体部40が載置されている。また、複数の対物レンズ51がリボルバ68に取り付けられている。異なるNAの対物レンズ51を測定する場合、上記のように、遮光部13を交換する。
【0108】
顕微鏡200は、光源61、ミラー62、ミラー63、ビームエキスパンダ64、ミラー65、ミラー66、偏光ビームスプリッタ(PBS)67、リボルバ68、対物レンズ51、試料台80、ハーフミラー70、結像レンズ71、カメラ72、LED光源81、レンズ82、レンズ83を備えている。
【0109】
光源61は、レーザ光源であり、波長532nmの照明光L1を発生する。光源61から出射した照明光L1は、例えば1mmのビーム径である。照明光L1は、ミラー62、63で反射されて、ビームエキスパンダ64に入射する。ビームエキスパンダ64は、ビーム径を拡大する。ここでは、ビーム径が5mmに拡大される。
【0110】
ビームエキスパンダ64からの照明光L1は、ミラー65、66で反射されてPBS67に入射する。PBS67は、偏光状態に応じて、光を透過又は反射する。PBS67で反射された照明光L1は、対物レンズ51に入射する。
【0111】
対物レンズ51で集光された照明光L1は、上記の通り、本体部40に設けられた金ナノ粒子11に入射する(
図13等を合わせて参照)。そして、
図14等で示された光検出器21が金ナノ粒子11からの散乱光L2を検出する。さらに、照明光L1が照射されている間、駆動部31が測定光学系103を移動する。このようにすることで、対物レンズ51の集光スポット(焦点)における照明光L1の光強度分布を測定することができる。
【0112】
なお、顕微鏡200には、試料を撮像するための光学系として、ハーフミラー70、結像レンズ71、カメラ72が設けられている。LED照明光学系用のLED光源81、レンズ82、レンズ83が設けられている。これらについては、説明を省略する。
【0113】
ここで、試料台80における試料の高さクリアランスは、通常、35mm〜50mm程度である。また、本体部40の厚さは、27mmであるため、試料台80の上に設置することが可能である。よって、照明光L1の光強度分布を簡便に測定することができる。そして、測定終了後は、試料台80の上から、本体部40を取り除くだけでよい。よって、光源61による照明で、試料を観察することができる。よって、顕微鏡200による試料の観察と、測定装置100による照明光L1の測定とを容易に切り替えることができる。
【0114】
さらに、リボルバ68に複数の対物レンズ51が搭載されている場合、上記のように、対物レンズ51のNAに応じて、遮光部13を交換すればよい。よって、対物レンズ51毎の測定を容易に行うことができる。
【0115】
図17、
図18に本実施例に係る測定装置の測定結果を示す。
図17は、X方向、及びY方向における照明光強度のプロファイルと、XY平面における空間分布を示す図である。
図18は、Z方向における照明光強度のプロファイルと、XZ平面における空間分布を示す図である。また、
図17、
図18では、非特許文献3に記載された手法で得られたシミュレーション結果を比較例として示している。
【0116】
レーザ波長は532nmとして、対物レンズ51は、NA0.9、100×のNikon社製 TU Plan Fluor EPIを用いている。X方向プロファイルでは、実施例の集光スポットが比較例の集光スポットよりも小さくなることが分かる。Y方向プロファイルでは、実施例の集光スポットが比較例の集光スポットよりも大きくなることが分かる。Z方向プロファイルでは、実施例の集光スポットが比較例の集光スポットよりも大きくなることが分かる。
【0117】
実施の形態4.
実施の形態4にかかる測定装置の構成について、
図19を用いて、説明する。
図19では、
図9の構成において、集光レンズ15がコリメートレンズ14に置き換わっている。換言すると、
図11の構成から、集光レンズ15が取り除かれた構成となっている。そして、光検出器21の受光サイズが遮光部13よりも大きくなっている。なお、実施の形態1〜3と共通の内容については適宜説明を省略する。
【0118】
保持部材12とコリメートレンズ14との間に遮光部13が配置されている。遮光部13と光検出器21との間に、コリメートレンズ14が配置されている。金ナノ粒子11からの散乱光L2は、遮光部13の外側を通過して、コリメートレンズ14に入射する。コリメートレンズ14は、散乱光L2を屈折して、平行光束とする。そして、コリメートレンズ14で屈折された散乱光L2は、光検出器21で検出される。この構成によっても、上記の効果を得ることができる。
【0119】
図19では、保持部材12とコリメートレンズ14との間に遮光部13が配置されているが、遮光部13の配置は特に限定されるものではない。例えば、
図10,
図12のように、遮光部13の配置を適宜、変更することが可能である。さらに、光検出器21の受光面上に、遮光部13を形成することも可能である。
【0121】
次に、実施の形態4の変形例4にかかる測定装置の構成について、
図20を用いて説明する。
図20は、測定装置の構成を模式的に示す図である。
図20では、対物レンズ(不図示)によって照明光L1を金ナノ粒子111に集光する構成を示している。
【0122】
図20に示す金ナノ粒子11、遮光部13が、それぞれ、実施の形態1〜3の金ナノ粒子11、遮光部13に対応している。なお、実施の形態1〜3と共通する内容については説明を適宜省略する。光検出器21は、複数の受光素子211を有する2次元アレイ検出器となっている。
【0123】
保持部材112は、金ナノ粒子11を保持する保持面112aと、保持面112aと対向する対向面112cを有している。保持部材112は、
図6で示した保持部材112と同様に、透明な平行平板となっている。したがって、保持面112aと対向面112cとが平行な平面となっている。保持部材112としては、ガラスなどの高屈折率を有する透明材料が用いられている。そして、光検出器21の受光面上に直接、保持部材112が載置されている。保持部材112の対向面112cと、光検出器21とが接している。よって、
図20では、光検出器21と保持部材112との間には、空気層が介在していない構成となっている。
【0124】
複数の受光素子211での検出光量を合計することで、上記と同様の測定を行うことができる。なお、
図20において、遮光部13が設けられているが、この遮光部13は省略することが可能である。金ナノ粒子11で散乱されずに光検出器21に入射する照明光L1が入射する受光素子211の検出結果を用いなければよい。すなわち、照明光L1が入射する受光素子211以外の受光素子211を用いればよい。
【0125】
ただし、照明光L1がレーザ光である場合、散乱光L2に比べて、照明光L1の強度が極めて高くなる。よって、照明光L1が受光素子211に直接入射した場合、CCDの画素から飽和した電荷が、隣の画素に流れ込む現象(スミア)が生じる恐れがある。スミアの影響を避けるために、遮光部13を設けることが好ましい。
【0126】
遮光部13は、金ナノ粒子11と光検出器21との間にあればよい。遮光部13は、保持部材112の光検出器21側の面、あるいは、光検出器21の保持部材112側の面に遮光部13が形成されていてもよい。遮光部13は、保持部材112又は光検出器21の直接形成されていてもよく、保持部材112と光検出器21との間に配置された遮光板であってもよい。また、遮光部13は、保持部材112中にあり、光検出器21の受光面に隣接しても良いが、金ナノ粒子11からある一定以上の距離が必要である。その距離とは、金ナノ粒子11の周りに存在する光の近接場領域であり、レーザ波長の数倍程度の距離である。
【0127】
実施の形態5.
本実施の形態では、実施の形態1〜4における測定装置の光学系において、好ましい角度設定について説明する。
図21に、金ナノ粒子11を原点とする極座標系を示す。なお、XY面は、保持部材12の保持面12aとなっている。
【0128】
原点における光の電場を(Ex,Ey,Ez)とすると、その光強度Iは、以下の式(5)となる。
【数1】
【0129】
また、誘起された双極子の軸は、局所的な電場のベクトルに比例する(式(6))。
【数2】
【0130】
その散乱光のベクトルを、極座標表示で示すと、式(7)となり、距離R離れた場所での散乱光の強度I
sは、式(8)となる。
【数3】
【数4】
【0131】
なお、constは比例定数である。式(8)は、式(3)と同じ表現である。ここで、散乱角αは、以下の式(9)の関係式により求められる。
【数5】
【0132】
ここで、例えば、
図4等に示す実施の形態1〜4の光検出器21が検出する検出値I
LFRはIsを
図21に示す極座標において散乱光の方向(θ、φ)で積分した値となる((式10))。
【数6】
【0133】
dΩは、球面表面の要素である。θ
1は、遮光部13のサイズによって決まる値である。
図19に示すように、θ
1は、金ナノ粒子11で散乱した散乱光L2において、対物レンズ51の光軸OXを基準として、遮光部13が遮光することができる散乱光の最大散乱角度(以下、散乱光L2の最大遮光角度とする)となる。
図19において、最大遮光角度θ
1は、遮光部13の外縁に入射する散乱光と、光軸OXとのなす角度である。
【0134】
θ
2は、コリメートレンズ14のサイズによって決まる値である。
図19に示すように、θ
2は、金ナノ粒子11で散乱した散乱光L2において、対物レンズ51の光軸OXを基準として、光検出器21が検出することができる散乱光L2の最大散乱角度(以下、散乱光L2の最大検出角度とする)となる。
図19において、最大検出角度θ
2は、コリメートレンズ14の実質的な外縁に入射する散乱光と、光軸OXとのなす角度である。なお、最大検出角度θ
2は、
図4では、光検出器21のサイズによって決まる値であり、
図9、
図10では、集光レンズ15のサイズによって決まる値であり、
図11、
図12では、コリメートレンズ14によって決まる値である。また、光軸OXと垂直な平面における光検出器21、遮光部13、コリメートレンズ14、集光レンズ15の形状を円形としている。なお、光検出器21等が円形でない場合は、追加の遮光板により円形に制限してもよい。
【0135】
式(10)から、式(11)が得られる
【数7】
【0136】
Ez
2は未知の値であるため、式(11)において、
3{(cosθ
1−cos
3θ
1)−(cosθ
2−cos
3θ
2)}Ez
2が求めたい値である光強度I(式(5)、(6)参照)のアーティファクトとなっている。
【0137】
F(θ)=cosθ−cos
3θとすると、アーティファクトの項は,式(12)の形を取る。
3{F(θ
1)−F(θ
2)}Ez
2 ・・・(12)
【0138】
F(θ)のカーブを
図22に示す。F(θ
1)−F(θ
2)の値が小さくなるようにθ
1、θ
2を設定することが好ましく、F(θ
1)−F(θ
2)=0とすることがより好ましい。ただし、S/Nの高い測定を行うためには、θ
2−θ
1を大きくして、光検出器21が検出する散乱光量を多くすることが好ましい。
【0139】
図22に示すF(θ)の曲線はcos
−1(1/√3)で最大値を取るため、F(θ
1)−F(θ
2)=0を取り得る条件は、以下の式(13)となる。
θ
1<cos
−1(1/√3)<θ
2 ・・・(13)
【0140】
上記のように、金ナノ粒子11での散乱光において、遮光部13が遮光することができる散乱光L2の光軸OXに対する最大散乱角度をθ
1とし、光検出器21が検出することができる散乱光L2の光軸OXに対する最大散乱角度をθ
2としている。式(13)の関係を満たすように、光学系を設定することが好ましい。これにより、正確に光強度の空間分布を測定することができる。
【0141】
具体的には、遮光部13、コリメートレンズ14、集光レンズ15、又は光検出器21等のサイズを設定することで、式(13)を満たすことができる。さらに、F(θ
1)=F(θ
2)とすることで、アーティファクトの項を0とすることができる。よって、F(θ
1)=F(θ
2)を満たすように、遮光部13、コリメートレンズ14、集光レンズ15、又は光検出器21等のサイズを設定することが好ましい。
【0142】
実施の形態6.
本実施の形態では、測定装置の金ナノ粒子11を利用して、光の電場を求めるものである。すなわち、光検出器の検出結果に基づいて、式(5)に示す光の電場成分Ex,Ey,Ezを求めることができる。以下、実施の形態6にかかる測定方法の原理について説明する。
【0143】
光検出器21は、光(一般化すると電磁波)のエネルギーや強度を測定するセンサであり、光電効果型と、熱効果型に大別される。そのセンサを利用し、CCDカメラ、CMOSセンサなどのように、2次元に受光部を配置し、その強度やエネルギーの分布を得るデバイスなどもある。また単一の受光部であってもその受光部を、直接的/間接的に、被測定物との相対位置を変化させることで、位置情報と光(電磁波)の強度やエネルギーの分布を測定することができる。カメラや、レーザ顕微鏡、ビームプロファイラなど、様々な光強度・エネルギーの分布測定器がある。一方で、光(電磁波)は、空間を伝搬する波であり、その電場はベクトル量を持つ。
【0144】
電場を式(6)とすると、上記の光検出器、及び分布測定器は、全て、式(5)に示す光強度Iというスカラー量を測定するものである。従って、電場のベクトル量、すなわち、各電場成分Ex、Ey、Ez、もしくは、その空間分布を測定する測定器は存在しない。
【0145】
ただし、一方向(z方向)に進行する光は、進行方向に電場成分を持たず(Ez=0)に、進行方向に垂直な方向に振動している横波である。一方向(z方向に)に進行する光の電場成分Ex、Eyは、偏光子と光検出器の組み合わせで、その偏光面(ExとEyの比)として、測定できる。本技術の測定対象となる電場は、2つ以上の方向(角度)の進行波が重なり合う場所において、干渉によって生じる定在波による電場(Ex、Ey、Ez)である。
【0146】
本実施の形態では、そのような、2つ以上の方向(角度)の進行波が重なり合う場所において、干渉によって生じる定在波による電場(Ex、Ey、Ez)のベクトル成分を測定する。
【0147】
例えば、レーザ顕微鏡や、レーザ加工機における、レーザの集光場での電場のベクトル成分を測定することが可能になる。レーザの集光場では、レーザで集光される各光線が干渉しあう結果として、集光スポット近傍に電場および光強度の分布を生じている。集光場での電場のベクトル成分を測定することで、空間分解能の向上や、加工効率の向上に資することができる。
【0148】
図21に示すXYZ直交座標系において、電場を測定したい場所を原点とする。原点における光の電場を(Ex、Ey、Ez)とすると、誘起された双極子の軸は、局所的な電場のベクトルに比例する(上記の式(6))。
【0149】
また、その光強度Iは、式(14)となる。
【数8】
【0150】
散乱光のベクトルを極座標表示で示すと、上記の式(7)となり、距離R離れた場所での散乱光の強度I
sは、上記の式(8)となる。ここで、散乱角αは、上記の式(9)により求められる。
【0151】
ここで、ある大きさを持った光検出器21により、ある角度における光強度Iを測定する。ある角度とは、極角θと方位角φで表現される(式(15))。
【数9】
【0152】
ある角度における光強度Iは、以下の式(16)となる。
【数10】
【0153】
dΩは、球面表面の要素である。式(6)〜式(9)、式(15)を参照して、式(16)から式(17)を導き出すことができる。
【数11】
【0154】
ここで、電場の絶対値|E|
2ではなく、その分布や、Ex、Ey、Ezの比を求めたいとする。const=1とすると、測定条件のφ
1、φ
2、θ
1、θ
2と、4つの未知数Ex、Ey、Ez、|E|
2との関係式となる(ただし、上記の式(14)に示されるように、|E|
2=Ex
2+Ey
2+Ez
2である。なお、明細書本文中において|E|
2のベクトル記号は省略する。)
【0155】
4つの異なる測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2で光強度Iの測定を行うことで、式(17)で表現される4つの未知数の連立方程式を得ることができる。そして、連立方程式の解を得ることができれば、4つの未知数Ex、Ey、Ez,|E|
2を求めることができる。
【0156】
特に、φ
1=0,φ
2=2πとすると、未知数Ex、Eyを排除した式(18)が得られる。
【数12】
【0157】
(cosθ
1−cos
3θ
1)−(cosθ
2−cos
3θ
2)=0の条件下(つまり,式(13)を満たす関係)であれば、1つの測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2で|E|
2を求めることができる。|E|
2を求めた後、もう一つ異なる測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2で測定を行うことで、Ez
2を求めることもできる。さらに、φ
1=0,φ
2=πとすると、未知数Exを排除した式(19)が得られる。
【数13】
【0158】
φ
1=―π/2,φ
2=π/2とすると、未知数Eyを排除した式(20)が得られる。
【数14】
【0159】
よって、φ
1=0,φ
2=πの測定条件下で測定を行うことで、Eyを求めることができ、φ
1=―π/2,φ
2=π/2の測定条件下で測定を行うことで、Exを求めることができる。光の波長よりも十分に小さい金ナノ粒子11が、光の電場中に存在する場合、式(16)で示される散乱強度の散乱光が発生する。複数の測定条件で光強度を測定することで、光の電場成分に関する情報を算出することができる。
【0160】
具体的には、散乱角度の立体的な角度条件を変えることで、異なる測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2での測定が可能となる。つまり、光検出器21で検出される散乱光L2の金ナノ粒子11での散乱角度を所定の角度範囲となるように制限することで、特定の測定条件での測定が可能となる。角度範囲に関する測定条件を変えて、光検出器21が光強度の測定を行う。複数の測定条件下での測定結果に基づいて、光の電場成分が算出される。測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2を変える方法について、以下に説明する。
【0161】
(第1の方法)
測定条件を変える第1の方法としては、光検出器21の位置を変えて複数回測定する方法がある。例えば、
図23のように、光検出器21a〜21dの位置でそれぞれ散乱光L2を検出する。
図23では、検出器21のサイズを小さいものとする。2以上の方向の進行波が重なり合う位置(
図23の斜線部)に金ナノ粒子11を配置する。
図23では、進行波が入射しない位置に、光検出器21が配置されている。単一の光検出器21を移動することで、測定条件を変えた測定を行うことができる。あるいは、複数の光検出器を異なる位置に配置してもよい。
【0162】
そして、光検出器21の位置を変えた測定結果がパソコン42(
図13参照)に入力される。パソコン42は、メモリやプロセッサなどを備えており、式(16)〜(20)等に基づいて、光検出器21の検出光量から電場を算出する。例えば、金ナノ粒子11と光検出器21との位置関係に応じて、光検出器21が検出可能な立体角の角度範囲が決まる。光検出器21の位置に基づく測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2をメモリが記憶する。プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、電場成分を算出する。測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2、及び検出した光強度Iが記憶されているため、式(16)〜式(20)から、電場成分を算出することができる。
【0163】
(第2の方法)
測定条件を変える第2の方法としては、複数の受光素子を有する光検出器21を用いる方法がある。例えば、
図24のように、複数の受光素子211〜213を有する光検出器21が用いられる。
図24では、CCD(Charge-Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなど、画素が2次元アレイ状に配列された2次元アレイ検出器が光検出器21として用いられている。受光素子211〜213のそれぞれが画素となる。
【0164】
例えば、金ナノ粒子11と光検出器21の受光素子211〜213との位置関係に応じて、各受光素子が検出可能な立体角の角度範囲が決まる。第1の測定条件での測定は、受光素子211で実施され、第2の測定条件での測定は、受光素子212で実施され、第3の測定条件での測定は受光素子213で実施される。すなわち、複数の受光素子211〜213の配置により、測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2が決まる。このように、光検出器21の受光素子211〜213の配置に応じて、測定条件が設定される。異なる画素である受光素子211〜213がそれぞれ散乱光を測定することで、複数の測定条件下での測定が行われる。
【0165】
異なる受光素子での検出光量を別の測定条件での光強度Iとして取り扱うことができる。それぞれの画素が、特定の角度成分の光強度を測定することができる。この方法では、1回の測定で、複数の測定条件での測定を完了することができる。また、2つの受光素子を用いて、1つの測定条件下での測定を行ってもよい。例えば、2以上の受光素子での検出光量を合計して、1つの測定条件での測定結果として用いてもよい。
【0166】
具体的には、
図4、
図6,
図8、又は
図19等の構成において、光検出器21を2次元アレイ検出器とすればよい。そして、それぞれの画素での検出光量がパソコン42(
図13参照)に入力される。パソコン42は、メモリやプロセッサなどを備えており、式(16)〜(20)等を用いて、検出光量から電場を算出する。例えば、金ナノ粒子11に対する光検出器21の受光素子211の位置に基づく測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2が設定されている。プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、電場を算出することができる。
【0167】
また、
図4等に示す構成において、光検出器21を2次元アレイ検出器とした場合、遮光部13がない構成とすることも可能である。照明光L1が入射する受光素子以外の受光素子を用いればよい。ただし、照明光L1がレーザ光である場合、散乱光L2に比べて、照明光L1の強度が極めて高くなる。よって、照明光L1が受光素子に直接入射した場合、CCDの画素から飽和した電荷が、隣の画素に流れ込む現象(スミア)が生じる恐れがある。この影響を避けるために、遮光部13があったほうが好ましい。
【0168】
(第3の方法)
測定条件を変える第3の方法としては、光検出器21の前段に配置された遮光部13の形状、サイズ、位置などを変える方法がある。例えば、
図25のように、光検出器21の前側に複数の遮光部131〜134を配置する。遮光部131〜134は、光検出器21の一部を覆うように配置された遮光板である。そして、遮光部131〜134は、光検出器21の異なる部分を遮光するように配置されている。
【0169】
そして、遮光部131〜134のうちの1つを取り除いた状態で測定を行う。例えば、第1の測定条件では、遮光部131が光検出器21の前から取り除かれた状態で測定を行う。すなわち、第1の測定条件では、遮光部132〜134が光検出器21を覆った状態で測定が行われる。第2の測定条件では、遮光部132が光検出器21の前から取り除かれた状態で測定を行う。すなわち、第2の測定条件では、遮光部131、133、134が光検出器21を覆った状態で測定が行われる。このように、遮光部131〜134を順番に光検出器21の前から取り除いていくことで、測定条件を変えることができる。
【0170】
もちろん、単一の遮光部の位置や形状を変えることで、測定条件を変えることも可能である。さらに、形状の異なる複数の遮光部13を用意して、遮光部13を切り替えて配置してもよい。例えば、
図4、
図6、
図9〜
図12、
図19の構成において、異なる形状や、異なる大きさの遮光部を用意すればよい。あるいは、2枚以上の遮光板を組み合わせて、遮光部とすることもできる。なお、第3の方法では、単一の受光素子を有する光検出器21を用いることができる。
【0171】
図26は、遮光部の具体的な例を示す。
図26は、4つのタイプ(TYPE A〜TYPE D)の遮光部13を示す平面図である。
図4等の対物レンズ51によって照明光L1が1点に集光する測定装置において、
図26に示す遮光部13を配置する。
【0172】
図26に示す遮光部13は、
図15に対応する構成を有する遮光板である。
図26において、黒い部分が遮光領域38となり、白い部分が透過領域39となる。散乱光L2は、透過領域39を透過する。TYPE Aの遮光部13とTYPE Bの遮光部13は、輪帯状の透過領域39を有しており、透過領域39の大きさが異なっている。ラジアル方向(径方向)がθを規定し、方位方向(周方向)がφを規定する。輪帯状の透過領域39の内径がθ
1を規定し、外径がθ
2を規定する。
【0173】
TYPE Bの遮光部13は、TYPE Aの遮光部13よりも透過領域39が小さくなっている。よって、TYPE AとTYPE Bの遮光部13は、θ
1、θ
2とが異なっている。具体的には、TYPE Aの遮光部13のθ
1は、TYPE Bの遮光部13のθ
1よりも小さくなっている。TYPE Aの遮光部13のθ
2は、TYPE Bの遮光部13のθ
2よりも大きくなっている。なお、遮光部13でなく、光検出器21、コリメートレンズ14、集光レンズ15の外形がθ
2を規定してもよい。
【0174】
TYPE Cの遮光部13はφ
1=0,φ
2=πとするためのものである。TYPE Dの遮光部13はφ
1=―π/2,φ
2=π/2とするためのものである。よって、TYPE C及びTYPE Dの遮光部13は、半円の輪帯状となっている。TYPE Cの遮光部13を90°回転させると、TYPE Dの遮光部13と一致する。
【0175】
TYPE AとTYPE Bの遮光部13の一つと、TYPE CとTYPE Dの遮光部13の一つと、を組み合わせて使用する。例えば、TYPE Bの遮光部13とTYPE Cの遮光部13とが重ね合わせられて、
図4の遮光部13の位置に配置される。これにより、立体的な角度による測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2を規定することができる。なお、TYPE CとTYPE Dの遮光部13の両方を用いないようにすることで、φ
1=0,φ
2=2πの測定条件で測定を行うことができる。
【0176】
もちろん、
図4に限らず、
図6、
図9〜
図12、
図19の構成において、
図26に示す遮光部13を用いることができる。また、第1〜第3の方法を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0177】
また、実施の形態6では、金ナノ粒子11の後方に散乱した後方散乱光を検出することも可能である。すなわち、金ナノ粒子11からの後方散乱光を検出することで、電場成分を算出することができる。
図27は、後方散乱光を検出するための測定装置を模式的に示す図である。
【0178】
平行光束である照明光L1はハーフミラー301に入射する。ハーフミラー301は、入射した光の一部を透過して、残りを反射する。照明光L1のほぼ半分はハーフミラー301を透過して、対物レンズ301に入射する。対物レンズ302は、照明光L1を金ナノ粒子11に集光する。よって、複数の方向から進行波が金ナノ粒子11で重なり合う。なお、
図27において、金ナノ粒子11を保持する保持部材は省略されている。
【0179】
金ナノ粒子11で後方に散乱された後方散乱光の一部は、対物レンズ302に入射する。対物レンズ302に入射した散乱光L2は平行光束となって、ハーフミラー301に入射する。散乱光L2のほぼ半分がハーフミラー301で反射されて、光検出器21に入射する。光検出器21は、単一の受光素子からなる検出器である。光検出器21とハーフミラー301との間に遮光部13が配置されている。
図26に示したように、遮光部13の形状を変えることで、異なる測定条件下での測定を行うことができる。そして、複数の測定条件下での測定に基づいて、集光スポットでの電場成分を求めることができる。すなわち、
図27では、第3の方法により、複数の測定条件下での測定を行うことができる。
【0180】
図28は後方散乱光を検出する別の構成を示している。
図28では、光検出器21として2次元アレイ検出器が用いられている。ハーフミラー301、対物レンズ302については、
図27と同様である。また、
図28では、遮光部13が設けられていない構成となっている。
【0181】
図28では、光検出器21として2次元アレイ検出器が用いられている。そして、第2の方法により複数の測定条件下での測定を行っている。すなわち、受光素子の位置に応じた測定条件φ
1、φ
2、θ
1、θ
2が予めパソコン42のメモリに記憶されている。そして、パソコン42が複数の測定条件下での測定結果に基づいて、光の電場成分を算出する。
【0182】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【0183】
この出願は、2016年9月12日に出願された日本出願特願2016−177276を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。