特許第6485881号(P6485881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485881
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】ドライルーム用除湿システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20190311BHJP
   F24F 3/153 20060101ALI20190311BHJP
   F25B 6/04 20060101ALI20190311BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   B01D53/26 220
   F24F3/153
   F25B6/04 Z
   F25B1/00 101G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-17799(P2017-17799)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-122268(P2018-122268A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】503021102
【氏名又は名称】五和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 稔
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−326504(JP,A)
【文献】 特開2014−129958(JP,A)
【文献】 特開2008−286444(JP,A)
【文献】 特開昭61−212310(JP,A)
【文献】 特開2015−210005(JP,A)
【文献】 特開2011−125826(JP,A)
【文献】 特開2011−182967(JP,A)
【文献】 特開2000−346396(JP,A)
【文献】 特開2011−190989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26− 53/28
F24F 3/00− 3/16
F25B 1/00− 7/00
F24F 7/04− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ゾーンおよびパージゾーンおよび再生ゾーンを有する除湿ロータと、
前記除湿ロータの前記吸着ゾーンの出力側およびドライルームの給気口を接続する第1の通気管路と、
前記ドライルームの排気口および前記除湿ロータの前記吸着ゾーンの入力側を接続する第2の通気管路と、
前記第2の通気管路に配置された循環ファンと、
互いに冷媒管路によって接続された圧縮器および凝縮器および膨張弁および蒸発器からなり、前記除湿ロータの前記吸着ゾーンの入力側の空気を冷却するための冷凍サイクルと、を備え、
前記第2の通気管路が前記冷凍サイクルの前記蒸発器を通ってのびており、さらに、
前記第1の通気管路に設けられ、前記第1の通気管路を流れる空気と外気との間で熱交換を行うための熱交換器と、
前記第1の通気管路における前記熱交換器の下流側に設けられた再熱ヒータと、を備え、
前記冷凍サイクルにおける高圧側の冷媒管路にバイパス管路が設けられ、前記バイパス管路は前記再熱ヒータを通ってのび、前記バイパス管路には、流量制御弁と、前記凝縮器側から前記圧縮器側への冷媒の流れを防止する逆止弁とが配置されており、さらに、
一端が大気中に開口し、前記熱交換器を通ってのびて、他端が前記第2の通気管路における前記蒸発器の上流側に接続された外気取り入れ管路と、
前記第1の通気管路における前記熱交換器の上流側と前記除湿ロータの前記パージゾーンの入力側とを接続する分岐管路と、
前記除湿ロータの前記パージゾーンの出力側および前記除湿ロータの前記再生ゾーンの入力側を接続する再生用空気供給管路と、
前記再生用空気供給管路に設けられた再生ヒータと、
前記除湿ロータの前記再生ゾーンの出力側に接続された排気管路と、
前記ドライルーム内に配置された温度センサーと、を備え、
前記温度センサーの検出温度に基づいて、前記冷凍サイクルにおける前記バイパス管路の前記流量制御弁の開度が制御されるものであることを特徴とするドライルーム用除湿システム。
【請求項2】
前記冷凍サイクルの低圧側の冷媒管路に別のバイパス管路が設けられ、前記冷凍サイクルの前記膨張弁および前記蒸発器が前記低圧側の冷媒管路における前記別のバイパス管路に並列にのびる部分に配置される一方、前記別のバイパス管路には別の膨張弁および別の蒸発器が配置され、前記外気取り入れ管路が前記別の蒸発器を通ってのびていることを特徴とする請求項1に記載のドライルーム用除湿システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライルーム内を所定温度および所定湿度に維持するための除湿システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドライルーム用除湿システムとして、例えば特許文献1に記載されたようなものがある。
特許文献1に記載のドライルーム用除湿システムは、除湿対象空気を冷却する予冷手段と、予冷手段によって冷却した除湿対象空気を吸着剤による水分吸着により除湿する除湿手段と、除湿手段によって除湿された空気を加熱する再熱手段とを備えている。
【0003】
そして、再熱手段が、再生用高温気体の生成に使用した後の高温熱媒を熱源として除湿空気を加熱する第1再熱部と、吸着剤の再生に使用した後の再生用高温気体を熱源として除湿空気を加熱する第2再熱部と、外気の冷却に使用した後の予冷用熱媒を熱源として除湿空気を加熱する第3再熱部のうち、少なくとも2つの再熱部を備えており、それらの再熱部が上記記載順とは逆の順序で除湿空気を順次に加熱するように構成されている。
【0004】
この構成によれば、除湿空気の加熱のために生成した専用蒸気や専用温水、あるいは除湿空気の加熱のために発生させた専用電熱を用いて除湿空気を加熱する構成の除湿システムに比べ、それらの専用蒸気や専用温水の生成、あるいは、専用電熱の発生に要する再熱手段での浪費的なエネルギー消費を効果的に解消し、省エネ化が図れる。
【0005】
しかしその一方で、この構成では、再生用高温気体の生成に使用した後の高温熱媒や、吸着剤の再生に使用した後の再生用高温気体として、高温空気や蒸気(高温水蒸気)や燃焼ガス等が必要とされ、外気の冷却に使用した後の予冷用熱媒として、冷却水や冷却用ブラインあるいは冷凍回路の冷媒等が必要とされる。
【0006】
そして、これらの必要な手段が存在する環境がなければシステムの設置ができず、よって、この除湿システムは設置場所の制約を受ける。
また、この除湿システムは構造が複雑であり、システム内の空気の流量制御が容易ではないという欠点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−326504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、構造が簡単で、優れた省エネ効果を奏するドライルーム用除湿システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、吸着ゾーンおよびパージゾーンおよび再生ゾーンを有する除湿ロータと、前記除湿ロータの前記吸着ゾーンの出力側およびドライルームの給気口を接続する第1の通気管路と、前記ドライルームの排気口および前記除湿ロータの前記吸着ゾーンの入力側を接続する第2の通気管路と、前記第2の通気管路に配置された循環ファンと、互いに冷媒管路によって接続された圧縮器および凝縮器および膨張弁および蒸発器からなり、前記除湿ロータの前記吸着ゾーンの入力側の空気を冷却するための冷凍サイクルと、を備え、前記第2の通気管路が前記冷凍サイクルの前記蒸発器を通ってのびており、さらに、前記第1の通気管路に設けられ、前記第1の通気管路を流れる空気と外気との間で熱交換を行うための熱交換器と、前記第1の通気管路における前記熱交換器の下流側に設けられた再熱ヒータと、を備え、前記冷凍サイクルにおける高圧側の冷媒管路にバイパス管路が設けられ、前記バイパス管路は前記再熱ヒータを通ってのび、前記バイパス管路には、流量制御弁と、前記凝縮器側から前記圧縮器側への冷媒の流れを防止する逆止弁とが配置されており、さらに、一端が大気中に開口し、前記熱交換器を通ってのびて、他端が前記第2の通気管路における前記蒸発器の上流側に接続された外気取り入れ管路と、前記第1の通気管路における前記熱交換器の上流側と前記除湿ロータの前記パージゾーンの入力側とを接続する分岐管路と、前記除湿ロータの前記パージゾーンの出力側および前記除湿ロータの前記再生ゾーンの入力側を接続する再生用空気供給管路と、前記再生用空気供給管路に設けられた再生ヒータと、前記除湿ロータの前記再生ゾーンの出力側に接続された排気管路と、前記ドライルーム内に配置された温度センサーと、を備え、前記温度センサーの検出温度に基づいて、前記冷凍サイクルにおける前記バイパス管路の前記流量制御弁の開度が制御されるものであることを特徴とするドライルーム用除湿システムを構成したものである。
【0010】
上記構成において、好ましくは、前記冷凍サイクルの低圧側の冷媒管路に別のバイパス管路が設けられ、前記冷凍サイクルの前記膨張弁および前記蒸発器が前記低圧側の冷媒管路における前記別のバイパス管路に並列にのびる部分に配置される一方、前記別のバイパス管路には別の膨張弁および別の蒸発器が配置され、前記外気取り入れ管路が前記別の蒸発器を通ってのびている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、除湿ロータ(吸着ゾーン)の出力側の第1の通気管路に上流側から順に熱交換器と再熱ヒータを配置し、除湿ロータ(吸着ゾーン)の入力側の空気を冷却するための冷凍サイクルの高圧側の冷媒管路にバイパス管路を設け、バイパス管路が再熱ヒータを通ってのび、外気取り入れ管路が熱交換器を通ってのびるようにしている。
【0012】
そして、外気と除湿ロータ(吸着ゾーン)から第1の通気管路に排出された低温の乾き空気との間に十分な温度差がある場合は、熱交換器によって乾き空気を所定温度(ドライルーム内の設定温度)まで加熱する。
また、この熱交換器による加熱だけでは所定温度に達しない場合には、冷凍サイクルのバイパス管路を流れる高温冷媒により、再熱ヒータを介して乾き空気をさらに加熱する。
こうして、除湿ロータ(吸着ゾーン)から排出される低温の乾き空気を、外気と、冷凍サイクルの排熱によって加熱することで、エネルギーロスが極めて少ない除湿システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の1実施例によるドライルーム用除湿システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の実施例の変形例を示す図1に類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例によるドライルーム用除湿システムの構成を示すブロック図である。
図1を参照して、本発明によれば、吸着ゾーン1aおよびパージゾーン1bおよび再生ゾーン1cを有する除湿ロータ1と、除湿ロータ1の吸着ゾーン1aの出力側およびドライルーム2の給気口2aを接続する第1の通気管路3と、ドライルーム1の排気口1bおよび除湿ロータ1の吸着ゾーン1aの入力側を接続する第2の通気管路4と、第2の通気管路4に配置された循環ファン5が備えられる。
【0015】
また、互いに冷媒管路7によって接続された圧縮器8および凝縮器9および膨張弁10および蒸発器11からなり、除湿ロータ1の吸着ゾーン1aの入力側の空気を冷却するための冷凍サイクル6が備えられる。
この実施例では、凝縮器9は、排熱ファン9aを備えた空冷式凝縮器からなっており、凝縮器9と圧縮機9から、空冷式インバータ冷凍機22が構成されている。
なお、空冷式凝縮器の代わりに水冷式凝縮器を使用することもできる。
【0016】
第2の通気管路4が冷凍サイクル6の蒸発器11を通ってのびている。
第1の通気管路3には、第1の通気管路3を流れる空気と外気との間で熱交換を行うための熱交換器12が設けられ、第1の通気管路3における熱交換器12の下流側に、再熱ヒータ13が設けられる。
【0017】
そして、冷凍サイクル6における高圧側の冷媒管路にバイパス管路14が設けられ、バイパス管路14は再熱ヒータ13を通ってのびている。
バイパス管路14には、流量制御弁15と、凝縮器9側から圧縮器8側への冷媒の流れを防止する逆止弁16が配置されている。
こうして、バイパス管路14を流れる高温冷媒により、再熱ヒータ13を介して第1の通気管路3を流れる低温の乾き空気が加熱されるようになっている。
【0018】
また、ドライルーム2内に温度センサ23が配置されている。そして、バイパス管路14の流量制御弁15の開度が、制御部24により、温度センサ23の検出温度に従って制御されるようになっている。
【0019】
さらに、一端が大気中に開口し、熱交換器12を通ってのびて、他端が第2の通気管路4における蒸発器11の上流側に接続された外気取り入れ管路17が備えられ、第1の通気管路3における熱交換器12の上流側と除湿ロータ1のパージゾーン1bの入力側とが分岐管路18によって接続され、除湿ロータ1のパージゾーン1bの出力側と除湿ロータ1の再生ゾーン1cの入力側とが再生用空気供給管路19によって接続される。
再生用空気供給管路19には、再生ヒータ20が設けられ、除湿ロータ1の再生ゾーン1cの出力側に排気管路21が設けられる。
【0020】
ドライルーム2は、ルーム2内の環境を汚染する恐れのあるガスや微粒子を、本発明による除湿システムの系外に排気するための局所排気装置28を備えている。
【0021】
次に、本発明によるドライルーム用除湿システムの動作を説明する。
送風ファン5の作動によって、除湿ロータ1(吸着ゾーン1a)→第1の通気管路3→ドライルーム2(給気口2a)→ドライルーム2(排気口2b)→第2の通気管路4→除湿ロータ1(吸着ゾーン1a)なる空気循環が生じる。それと同時に、外気が外気取り込み管路15を通じて第2の通気管路4に流入する。
【0022】
また、冷凍サイクル6の作動によって冷媒が冷媒管路7内を循環し、この循環の間に、圧縮器8で圧縮された後、凝縮器9で凝縮され(液化し)、次いで、膨張弁10で減圧されて、蒸発器11で蒸発せしめられ(気化し)、その後、再び圧縮器8で圧縮される。
【0023】
こうして、上記空気循環において、ドライルーム2からの排気は、蒸発器11を通過する間に冷却された後、除湿ローラ1の吸着ゾーン1aに流入し、吸着ゾーン1aにおいて低温で除湿される。
吸着ゾーン1aから排出された低温の乾き空気は、その一部が分岐管路18に流入し、除湿ロータ1のパージゾーン1bを通過する。次いで、パージゾーン1bから再生空気供給管路19を通じ、再生ヒータ20を経て、除湿ロータ1の再生ゾーン1cに流入し、その後、再生ゾーン1cから排気管路21を通じて大気中に排出される。
【0024】
一方、吸着ゾーン1aから排出された低温の乾き空気の残りは、熱交換器12を通過する。そして、乾き空気が熱交換器12を通過する間、外気の温度が高くて外気と乾き空気との間に十分な温度差がある場合、乾き空気は熱交換器12によってドライルーム2内の設定温度まで加熱される。
そして、この熱交換器12による加熱だけでドライルーム2内の設定温度に達する場合は、冷凍サイクル6のバイパス管路14の流量制御弁15は閉じられて再熱ヒータ13による加熱は行われない。
【0025】
一方、熱交換器12による加熱だけでは乾き空気の温度がドライルーム内の設定温度に達しない場合には、冷凍サイクル6のバイパス管路14の流量制御弁15が開かれ、バイパス管路14に高温冷媒が導入され、第1の通気管路3を流れる乾き空気が再熱ヒータ13によってさらに加熱される。このとき、制御部24によって、流量制御弁15の開度、すなわちバイパス管路14を流れる高温冷媒の流量が、乾き空気がドライルーム2内の設定温度まで加熱されるように制御される。
【0026】
こうして、本発明によれば、除湿ロータから出力される乾き空気を、外気および冷凍サイクルの排熱によって加熱することで、極めてエネルギーロスの少ない除湿システムを実現することができる。
【0027】
図2は、図1の実施例の変形例を示す図1に類似の図である。
この変形例では、冷凍サイクル6の低圧側の冷媒管路に別のバイパス管路25が設けられる。
そして、冷凍サイクル6の膨張弁10および蒸発器11が低圧側の冷媒管路における別のバイパス管路25に並列にのびる部分に配置される一方、別のバイパス管路25には別の膨張弁27および別の蒸発器26が配置され、外気取り入れ管路17が別の蒸発器26を通ってのびている。
【0028】
この変形例では、外気を、別の蒸発器26によって予冷した後、第2の通気管路4に導入し、さらに、ドライルームからの排気と外気の混合空気を蒸発器11によって冷却するので、より低露点の空気を安定的にドライルーム2に供給することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 除湿ロータ
1a 吸着ゾーン
1b パージゾーン
1c 再生ゾーン
2 ドライルーム
2a 給気口
2b 排気口
3 第1の通気管路
4 第2の通気管路
5 循環ファン
6 冷凍サイクル
7 冷媒管路
8 圧縮器
9 凝縮器
9a 排熱ファン
10 膨張弁
11 蒸発器
12 熱交換器
13 再熱ヒータ
14 バイパス管路
15 流量制御弁
16 逆止弁
17 外気取り入れ管路
18 分岐管路
19 再生用空気供給管路
20 再生ヒータ
21 排気管路
22 空冷式インバータ冷凍機
23 温度センサ
24 制御部
25 別のバイパス管路
26 別の蒸発器
27 別の膨張弁
28 局所排気装置
図1
図2