(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者の検討によれば、現在のコンプトンカメラの課題の一つは、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応できないことである。言い換えれば、現在のコンプトンカメラは、コンプトンカメラに対する様々な要求に柔軟に対応することが難しい。例えば、放射される電磁放射線のエネルギー及びフラックスは、様々に相違し得るが、現在のコンプトンカメラは、エネルギー及びフラックスの相違に柔軟に対応するように構成を自在に変えることは困難である。放射線源に関する柔軟性が高い放射線測定装置が提供されれば、ユーザとしては、同一の放射線測定装置で様々な測定を実施することができ、利便性が向上する。放射線測定装置の製造者にとっても、放射線源の相違に合わせて様々な放射線測定装置を製造する必要がなくなるという利点がある。
【0008】
より具体的な例を挙げれば、コンプトンカメラに対する要求としては、例えば、下記が挙げられる:
(a)多様な核ガンマ線を識別するための高いエネルギー分解能(例えば、ΔE/Eが3%程度)
(b)放射線源が集積する位置や距離を特定するためのガンマ線到来方向の高い分解能(例えば、角度分解能10度以下)。
(c)現場で管理が必要となる低濃度放射性物質の集積を短時間で可視化する感度
(d)多様な形態の放射線源の集積に対応するような広い視野
(e)医療用途において人体などに近接して設置可能なコンパクトさ
(f)医療用途において人体内のサブmmから1mmの大きさの放射線源の集積を識別する角度分解能
(g)極めて高い放射線フラックス(高濃度放射性物質)に対してもパイルアップを起こすことなく計測可能な測定性能
このような要求に合わせて柔軟に対応可能な構成のコンプトンカメラが提供すれば、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0009】
したがって、本発明の目的の1つは、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応できる放射線測定装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の説明と添付図面から理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、発明を実施するための形態で使用される参照符号を添付しながら課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。
【0012】
本発明の一の観点では、放射線測定装置(10)が、複数の検出器モジュール(1)と、演算装置(2)とを具備する。複数の検出器モジュール(1)のそれぞれは、複数の検出器と、複数の検出器に対応して設けられ、対応する検出器から得られるアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってアナログ信号に対応するデジタル測定データを生成する複数のアナログ信号処理部(16、17)と、複数のアナログ信号処理部(16、17)から受け取ったデジタル測定データから生成したデジタル通信データを演算装置(2)に送信するデジタル処理部(18)とを含む。複数の検出器のそれぞれは、電磁放射線を散乱する散乱体として機能する散乱体検出器(14)、又は、電磁放射線を吸収する吸収体として機能する吸収体検出器(15)のいずれかである。当該放射線測定装置(10)に含まれる検出器のうちの少なくとも一は、散乱体検出器(14)であり、当該放射線測定装置(10)に含まれる検出器のうちの少なくとも一は、吸収体検出器(15)である。演算装置(2)は、複数の検出器モジュール(1)から受け取ったデジタル通信データに基づいて、放射線源の空間分布を示す線源分布画像を生成する。このような構成の放射線測定装置(10)では、放射線源の性質に応じて複数の検出器モジュール(1)を配置することにより、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応できる。
【0013】
一実施形態では、演算装置(2)は、複数の検出器モジュール(1)のうちの第1検出器モジュール(1)の散乱体検出器(14)でコンプトン散乱が発生し、コンプトン散乱によって散乱された光子が複数の検出器モジュール(1)のうちの第1検出器モジュール(1)と異なる第2検出器モジュール(1)の吸収体検出器(15)において吸収される光電吸収が発生するイベントの発生を複数の検出器モジュール(1)から受け取ったデジタル通信データに基づいて検出した場合、イベントに対応するコンプトンコーンの再構成を行い、コンプトンコーンに基づいて線源分布画像を生成するように構成される。
【0014】
一実施形態では、演算装置(2)は、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれに同期データ又は同期信号を供給し、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれは、同期データ又は同期信号に同期して生成された測定時刻データを含むようにデジタル通信データを生成する。この場合、演算装置(2)は、測定時刻データに基づいて、第1検出器モジュール(1)の散乱体検出器(14)でコンプトン散乱が発生し、第2検出器モジュール(1)の吸収体検出器(15)においてコンプトン散乱で散乱された光子が吸収される光電吸収が発生するイベントの発生を検出する。このような構成によれば、異なる検出器モジュール(1)でコンプトン散乱と光電吸収が発生しても、それらが同一の光子に関係していることを確実に検知することができる。
【0015】
一実施形態では、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれのデジタル処理部(18)は、複数の検出器のうちの散乱体検出器(14)においてコンプトン散乱が発生した散乱位置及びコンプトン散乱において反跳電子に与えられたエネルギーである第1エネルギーをデジタル測定データに基づいて特定し、散乱位置及び第1エネルギーを記述したデータを含むようにデジタル通信データを生成するように構成される。
【0016】
他の実施形態では、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれのデジタル処理部(18)は、複数の検出器のうちの吸収体検出器(15)において光電吸収が発生した吸収位置及び光電吸収において吸収されたエネルギーである第2エネルギーをデジタル測定データに基づいて特定し、吸収位置及び第2エネルギーを記述したデータを含むようにデジタル通信データを生成するように構成される。
【0017】
また、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれに含まれる複数の検出器の少なくとも一が、散乱体検出器(14)であり、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれに含まれる複数の検出器の少なくとも一が、吸収体検出器(15)である場合、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれのデジタル処理部(18)は、複数の検出器のうちの散乱体検出器(14)においてコンプトン散乱が発生した散乱発生位置及びコンプトン散乱において反跳電子に与えられたエネルギーである第1エネルギーをデジタル測定データに基づいて特定し、複数の検出器のうちの吸収体検出器(15)への光電吸収が発生した吸収位置及び光電吸収において吸収されたエネルギーである第2エネルギーをデジタル測定データに基づいて特定し、且つ、散乱発生位置、第1エネルギー、吸収位置及び第2エネルギーを記述したデータを含むようにデジタル通信データを生成するように構成される。
【0018】
これらの構成によれば、演算装置(2)に送られるデジタル通信データのデータ量を低減することができる。
【0019】
一実施形態では、複数の検出器モジュール(1)に含まれる散乱体検出器(14)の数が同一であり、複数の検出器モジュール(1)に含まれる吸収体検出器(15)の数が同一である。好ましくは、複数の検出器モジュール(1)が、同一の構成を有している。このような構成によれば、各検出器モジュール(1)のコストを低減することができる。
【0020】
一実施形態では、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれのデジタル処理部(18)は、無線通信によって演算装置(2)にデジタル通信データを送信する。このような構成によれば、複数の検出器モジュール(1)の配置の自由度を向上させることができる。
【0021】
複数の検出器モジュール(1)のそれぞれは、複数の検出器と、複数のアナログ信号処理部(16、17)と、デジタル処理部(18)とを収容する筐体を具備していてもよい。この場合、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれの筐体は、他の検出器モジュール(1)の筐体と連結する連結機構を有していることが好ましい。このような構成によれば、複数の検出器モジュール(1)の相対的な位置関係を確実に固定することができる。
【0022】
本発明の他の観点では、それぞれが複数の検出器を備えた複数の検出器モジュール(1)と演算装置(2)とを備える放射線測定装置(10)であって、複数の検出器のそれぞれが、電磁放射線をコンプトン散乱によって散乱する散乱体として機能する散乱体検出器(14)、又は、電磁放射線を吸収する吸収体として機能する吸収体検出器(15)のいずれかであり、放射線測定装置(10)に含まれる検出器のうちの少なくとも一は、散乱体検出器(14)であり、放射線測定装置(10)に含まれる検出器のうちの少なくとも一は、吸収体検出器(15)である放射線測定装置(10)を用いる放射線測定方法が提供される。当該放射線測定方法は、複数の検出器モジュール(1)を配置するステップと、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれが、複数の検出器から得られるアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってアナログ信号に対応するデジタル測定データを生成するステップと、複数の検出器モジュール(1)のそれぞれが、デジタル測定データからデジタル通信データを生成し、デジタル通信データを演算装置(2)に送信するステップと、演算装置(2)が、デジタル通信データに基づいて放射線源の空間分布を示す線源分布画像を生成するステップとを具備する。このような放射線測定方法では、放射線源の性質に応じて複数の検出器モジュール(1)を配置することにより、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応できる放射線測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、まず、本発明の技術的意義の理解を容易にするために、一般的なコンプトンカメラの課題について説明する。
【0026】
図2は、コンプトンカメラの検出部100の典型的な構成を概略的に示す図である。
図2に図示されているように、コンプトンカメラの検出部100には、典型的には、電磁放射線の入射側に散乱体検出器101が設けられ、後方に吸収体検出器102が設けられる。一般的には、散乱体検出器101におけるコンプトン散乱の発生確率を増加させるために複数の散乱体検出器101が設けられ、また、光電吸収による吸収確率を増加させるために複数の吸収体検出器102が設けられる。
【0027】
しかしながら、このような構成のコンプトンカメラの検出部100は、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応することが困難である。例えば、高エネルギーの電磁放射線を測定する場合には、
図3に図示されているように、層方向に並べられる散乱体検出器101、吸収体検出器102の数が増加されることが望ましい。これは、高エネルギーの電磁放射線は、コンプトン散乱の発生確率及び光電吸収による吸収確率が低く、また、コンプトン散乱における散乱角が小さいためである。
【0028】
その一方で、低エネルギーの電磁放射線を測定する場合には、
図4に図示されているように、層方向に並べられる散乱体検出器101、吸収体検出器102の数が減少されると共に、吸収体検出器102が散乱体検出器101の後方のみならず、側方にも設けられることが望ましい。これは、低エネルギーの電磁放射線は、コンプトン散乱の発生確率及び光電吸収による吸収確率が高く、コンプトン散乱における散乱角が大きいからである。散乱体検出器101の側方に設けられた吸収体検出器102は、大きな散乱角で散乱した電磁放射線の光子を捕捉するために有用である。
【0029】
更に、高フラックスの電磁放射線を測定する場合には、
図5に図示されているように、層方向に並べられる散乱体検出器101、吸収体検出器102の数が減少されることが望ましい。一方、低フラックスの電磁放射線を測定する場合には、
図6に図示されているように、高感度で電磁放射線を測定する場合には、層方向に並べられる散乱体検出器101、吸収体検出器102の数が増加されることが望ましい。
【0030】
このように、コンプトンカメラの検出部100の望ましい構成は、放射線源の性質に応じて異なっている。これは、逆に言えば、ある特定の構成の検出部100で様々な性質の放射線源から放出される電磁放射線の測定を適正に行うことは困難であることを意味している。以下に述べられる本発明の実施形態では、このような問題に対処し、放射線源の性質の相違に柔軟に対応可能な放射線測定装置が提示される。
【0031】
図7、
図8は、本発明の一実施形態における放射線測定装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態では、放射線測定装置10は、複数の検出器モジュール1と、演算装置2と、表示装置3とを備えている。複数の検出器モジュール1と演算装置2とは、通信可能に接続されている。一実施形態では、
図7に図示されているように、複数の検出器モジュール1と演算装置2とは、有線回線、より具体的には、有線ネットワーク4(例えば、有線LAN(local area network))を介して接続されてもよい。また、
図8に図示されているように、複数の検出器モジュール1と演算装置2とは、無線通信(例えば、無線LAN)によって接続されてもよい。複数の検出器モジュール1と演算装置2とが無線通信によって接続されることは、検出器モジュール1と演算装置2との間を配線で接続する必要をなくし、検出器モジュール1の配置の自由度を向上できる点で有用である。
【0032】
各検出器モジュール1には、電離放射線を検出するための複数の検出器が搭載されている。後述されるように、各検出器モジュール1は、それに搭載された複数の検出器から出力されるアナログ信号に基づいて生成したデジタル通信データを演算装置2に送信するように構成されている。演算装置2は、各検出器モジュール1から受け取ったデジタル通信データに基づいて放射線源の空間的分布を示す画像である線源分布画像を生成し、該線源分布画像を表示装置3に表示する。
【0033】
図9は、各検出器モジュール1の構成を概略的に示すブロック図である。各検出器モジュール1は、筐体11と、受光部12と、制御部13とを備えている。受光部12と制御部13とは、筐体11の内部に収容されている。
【0034】
受光部12は、電離放射線を検出する複数の検出器を備えている。本実施形態では、各検出器モジュール1に含まれる複数の検出器のうちの少なくとも一が、散乱体検出器14であり、少なくとも一が吸収体検出器15である。散乱体検出器14は、散乱体となる検出器であり、コンプトン散乱を起こしやすくなるように、原子番号が小さい材料(例えば、シリコン)で形成される。散乱体検出器14は、電磁放射線が入射したときにコンプトン散乱が発生した位置X1、及び、該コンプトン散乱によって反跳電子が得たエネルギーE
1(即ち、該コンプトン散乱により電磁放射線が散乱体検出器14において失ったエネルギー)の検出が可能であるように構成される。一方、吸収体検出器15は、吸収体となる検出器であり、光電吸収を起こしやすくなるように原子番号が大きい材料(例えば、CdTe及びCdZnTe)で形成される。吸収体検出器15は、電磁放射線がコンプトン散乱後に光電吸収によって吸収体検出器15に吸収された位置X2、及び、吸収体検出器15に吸収された電磁放射線のエネルギーE
2の検出が可能であるように構成される。
【0035】
図9の構成では、各検出器モジュール1の受光部12は、4つの散乱体検出器14と、1つの吸収体検出器15を備えている。ただし、受光部12に含まれる散乱体検出器14、吸収体検出器15の数は、適宜に変更可能である。ただし、放射線測定装置10の全体としては、少なくとも一つの散乱体検出器14と、少なくとも一つの吸収体検出器15が含まれる。
【0036】
散乱体検出器14としては、様々な構成の検出器が使用され得る。
図10A、
図10Bは、ピクセル型検出器として構成されている場合の散乱体検出器14の構成の一例を図示している。ここで、
図10Aは、散乱体検出器14の構成を示す平面図であり、
図10Bは、
図10AのA−A断面における散乱体検出器14の構成を示す断面図である。
図10A、
図10Bの構成では、散乱体検出器14が、半導体層21と、半導体層21の第1主面に行列に配置された複数の画素電極22と、半導体層21の第2主面(第1主面に対向する主面)のほぼ全体を被覆するように設けられた共通電極23とを具備している。半導体層21の各画素電極22と共通電極23とで挟まれた部分が、電磁放射線を検出する一つのセルを形成している。電磁放射線の測定においては、各セルに生成した電荷の量に対応するアナログ信号が散乱体検出器14から出力される。散乱体検出器14の半導体層21は、コンプトン散乱を起こしやすい(即ち、原子番号が小さい)半導体材料、例えば、シリコンで形成される。画素電極22及び共通電極23は、半導体層21がシリコンで形成される場合、例えば、アルミニウムで形成される。
【0037】
図11A〜
図11Cは、ストリップ型検出器として構成された散乱体検出器14の構成の一例を概念的に示す図である。ここで、
図11Aは、散乱体検出器14の構成を示す上面図であり、
図11Bは、散乱体検出器14の構成を示す下面図であり、
図11Cは、B−B断面における散乱体検出器14の構成を示す断面図である。
図11A〜
図11Cに図示されている散乱体検出器14の構成では、画素電極22と共通電極23の代わりに、半導体層21の第1主面に形成された複数の第1ストリップ電極24と、半導体層21の第2主面に形成された複数の第2ストリップ電極25とが用いられる。
図11Aに図示されているように、第1ストリップ電極24は、第1方向(
図11Aでは、Y軸方向)に延伸するように配置されており、第2ストリップ電極25は、第1方向に垂直な第2方向(
図11Bでは、X軸方向)に延伸するように配置されている。半導体層21の、一の第1ストリップ電極24と、該第1ストリップ電極24と交差する一の第2ストリップ電極25とで挟まれた部分が、電磁放射線を検出する一つのセルを形成している。第1ストリップ電極24をセルの選択に用いる場合、第1ストリップ電極24で選択されたセルのそれぞれに生成した電荷の量に対応するアナログ信号が第2ストリップ電極25から出力される。
【0038】
吸収体検出器15は、散乱体検出器14と同様に構成される。ただし、吸収体検出器15では、散乱体検出器14と異なる材料の半導体層21が使用される。より具体的には、吸収体検出器15の半導体層21は、光電吸収を起こしやすい(即ち、原子番号が大きい)半導体材料、例えば、CdTe又はCdZnTeで形成される。
【0039】
図9を再度に参照して、制御部13は、ASIC(application specific integrated circuit)16、17と、デジタル処理部18と、通信インタフェース19とを備えている。ASIC16は、散乱体検出器14の各セルからアナログ信号を読み出し、該アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成するアナログ信号処理部として動作する。各ASIC16は、典型的には、散乱体検出器14の各セルから読み出されたアナログ信号を積分する積分器として動作するプリアンプ16aと、該プリアンプ16aの出力に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成するAD変換器16bとを備えている。
【0040】
図9には、1つの散乱体検出器14に対して1つのASIC16が設けられている構成が図示されているが、実際の実装においては、各散乱体検出器14が複数の領域に分割され、各領域に対して一つのASIC16が設けられてもよい。この場合、該複数のASIC16が、アナログ信号処理部として動作し、各ASIC16は、対応する領域のセルから読み出したアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成する。
【0041】
ASIC17は、吸収体検出器15の各セルからアナログ信号を読み出し、該アナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成するアナログ信号処理部として動作する。ASIC17は、典型的には、吸収体検出器15の各セルから読み出されたアナログ信号を積分する積分器として動作するプリアンプ17aと、該プリアンプ17aの出力に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成するAD変換器17bとを備えている。
【0042】
図9には、1つの吸収体検出器15に対して1つのASIC17が設けられている構成が図示されているが、実際の実装においては、吸収体検出器15が複数の領域(例えば、4つの領域)に分割され、各領域に対して一つのASIC17が設けられてもよい。この場合、該複数のASIC17が、アナログ信号処理部として動作し、各ASIC17は、対応する領域のセルから読み出したアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成する。
【0043】
デジタル処理部18は、2つの機能を有している。第1に、デジタル処理部18は、所望のタイミングで散乱体検出器14、吸収体検出器15からアナログ信号を読み出してデジタル測定データを生成するようにASIC16、17を制御する。加えて、デジタル処理部18は、ASIC16、17から受け取ったデジタル測定データから、演算装置2に送信するデジタル通信データを生成する。
【0044】
一実施形態では、デジタル処理部18は、ASIC16、17から受け取ったデジタル測定データを、そのまま纏めてデジタル通信データを生成する。デジタル処理部18は、生成した該デジタル通信データを、通信インタフェース19によって演算装置2に送信する。この場合、演算装置2は、受け取ったデジタル通信データに含まれているデジタル測定データに基づいて、散乱体検出器14に入射した電磁放射線についてコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱によって反跳電子が得たエネルギーE
1、散乱後の電磁放射線が光電吸収によって吸収体検出器15に吸収された位置X2、及び、吸収体検出器15に吸収された電磁放射線のエネルギーE
2を特定する。
【0045】
他の実施形態では、デジタル処理部18は、ASIC16、17から受け取ったデジタル測定データから、コンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱によって反跳電子が得たエネルギーE
1、散乱後の電磁放射線が吸収体検出器15に吸収された位置X2、及び、吸収体検出器15に吸収された電磁放射線のエネルギーE
2を特定する演算を行うように構成されてもよい。この場合、デジタル処理部18は、位置X1、エネルギーE
1、位置X2、及び、エネルギーE
2を記述したデータを含むデジタル通信データを生成し、生成した該デジタル通信データを通信インタフェース19によって演算装置2に送信する。
【0046】
通信インタフェース19は、デジタル処理部18によって生成されたデジタル通信データを演算装置2に送信し、また、演算装置2から送られてくる制御データ(例えば、複数の検出器モジュール1の時間同期を確立するための同期データ)を、デジタル処理部18に転送する。通信インタフェース19と演算装置2の間の通信は、
図7に図示されているように、有線ネットワーク4によって行われてもよいし、また、
図8に図示されているように、無線通信によって行われてもよい。
【0047】
図12Aは、各検出器モジュール1の実装の例を示す斜視図であり、
図12B、
図12Cは、それぞれ、散乱体検出器14及び吸収体検出器15が実装された検出器ボードの構成を示す平面図である。
図12Aに図示されているように、本実施形態では、筐体11が、台座31を有しており、台座31の上に、検出器ボード32、33が順次に積層されている。検出器ボード32、33は、台座31から検出器ボード32、33の積層方向に延伸する支持部材34、35により、筐体11内の所望の位置に固定される。加えて、台座31には、上述のデジタル処理部18と通信インタフェース19とが搭載される(
図12Aには図示されない)。
【0048】
図12Bに図示されているように、各検出器ボード32は、散乱体検出器14と、該散乱体検出器14に接続されたASIC16とを搭載する基板36を備えている。本実施形態では、各散乱体検出器14が4つの領域に区分され、該4つの領域に対応して4つのASIC16が設けられる。即ち、各検出器ボード32には、1つの散乱体検出器14と、4つのASIC16とが設けられる。各ASIC16は、配線37を介して散乱体検出器14の対応する領域に接続されており、対応する領域のセルから読み出したアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成する。ASIC16は、更に、配線38を介してデジタル処理部18に接続される。
図12Aに図示された構成では、各検出器モジュール1の受光部12に含まれる散乱体検出器14の数が4であり、よって、検出器ボード32の数も4である。
【0049】
検出器ボード33は、散乱体検出器14の代わりに吸収体検出器15を搭載していることを除けば、検出器ボード32と同様の構成を有している。
図12Cに図示されているように、検出器ボード33は、吸収体検出器15と、該吸収体検出器15に接続されたASIC17とを搭載する基板39を備えている。本実施形態では、各吸収体検出器15が4つの領域に区分され、該4つの領域に対応して4つのASIC17が設けられる。即ち、各基板39には、1つの吸収体検出器15と、4つのASIC17とが設けられる。各ASIC17は、対応する領域のセルから読み出したアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成する。各ASIC17は、配線40を介して吸収体検出器15の対応するセルに接続されており、対応する領域のセルから読み出したアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換を行ってデジタル測定データを生成する。ASIC17は、更に、配線41を介してデジタル処理部18に接続される。
図12Aに図示された構成では、各検出器モジュール1の受光部12に含まれる吸収体検出器15の数が1であり、よって、検出器ボード33の数も1である。
【0050】
本実施形態では、上述された構成の検出器モジュール1を複数用いて電磁放射線の測定、より具体的には、放射線源の空間的分布を示す画像である線源分布画像が生成される。複数の検出器モジュール1を用いて電磁放射線の測定を行う場合の一つの問題は、複数の検出器モジュール1の間の時間的な同期の確立である。複数の検出器モジュール1が用いられる本実施形態の放射線測定装置10では、異なる検出器モジュール1で電磁放射線のコンプトン散乱と光電吸収が発生するという事態が生じ得る。この場合、当該コンプトン散乱と光電吸収が同一の光子について発生したイベントであるか否か(即ち、電磁放射線の同一の光子に対して行われたコンプトン散乱と光電吸収なのか)を判断する必要がある。このためには、複数の検出器モジュール1が時間的に同期して動作していることが必要である。以下に述べられるように、本実施形態では、複数の検出器モジュール1を時間的に同期して動作させることで、様々な要求に対応可能な(即ち、様々な用途に適用できる)放射線測定装置10が実現されている。
【0051】
詳細には、本実施形態では、各検出器モジュール1のデジタル処理部18と演算装置2とが、時間同期を確立可能であるように構成される。詳細には、
図9に図示されているように、デジタル処理部18は、現在時刻を示す現在時刻データを逐次に出力する時間同期回路18aを備えている。一方、演算装置2は同期データ(例えば、演算装置2のシステムクロック又はハードウェアクロックから得られる時刻データ)を有線通信又は無線通信によって各検出器モジュール1に配信する。時間同期回路18aは、通信インタフェース19を介して演算装置2から同期データを受け取り、該同期データに同期して現在時刻データを生成する。デジタル処理部18は、該現在時刻データに同期してASIC16、17を制御すると共に、時間同期回路18aから出力された現在時刻データに基づいて生成される測定時刻データをデジタル通信データに含めて演算装置2に送信する。ここで、測定時刻データとは、現在時刻データに同期して(即ち、同期データに同期して)生成されるデータであり、電磁放射線の測定が行われた時刻(即ち、当該デジタル通信データの生成に用いられたデジタル測定データの元になるアナログ信号がASIC16、17に入力された時刻)を示す。このような動作により、各検出器モジュール1の時間同期回路18aの同期が実現され、演算装置2は、デジタル通信データに含まれる測定時刻データを参照して、ある散乱体検出器14で発生したコンプトン散乱と、ある吸収体検出器15で発生した光電吸収が、同一イベントに属するか否かを判断することができる。
【0052】
なお、同期データを演算装置2から各検出器モジュール1に配信する代わりに、同期信号(例えば、クロック信号)を伝送する信号線が各検出器モジュール1と演算装置2との間に接続され、各検出器モジュール1の時間同期回路18aが該同期信号によって同期されてもよい。この場合、現在時刻データ及び測定時刻データは、該同期信号に同期して生成される。
【0053】
続いて、本実施形態の放射線測定装置10における電磁放射線の測定、より具体的には、線源分布画像の生成について説明する。以下の説明においては、各検出器モジュール1に含まれる散乱体検出器14及び吸収体検出器15の数が同一であるとして、より具体的には、検出器モジュール1が、いずれも、4つの散乱体検出器14と1つの吸収体検出器15を有しているとして説明する(なお、検出器モジュール1に含まれる散乱体検出器14、吸収体検出器15の変形例については後述する)。
【0054】
本実施形態における電磁放射線の測定に際しては、放射線源から放射される電磁放射線が複数の検出器モジュール1に入射するように複数の検出器モジュール1が配置される。検出器モジュール1の配置は、放射線源の性質及び測定の目的に合わせて決定される。
【0055】
図13〜
図17は、検出器モジュール1の配置の例を示す図である。
図13に図示されているように、高エネルギーの電磁放射線を放射する放射線源50Aについて測定を行う場合には、層方向に並ぶ散乱体検出器14及び吸収体検出器15の数が増大されるように複数の検出器モジュール1が配置される。より具体的には、複数の検出器モジュール1が、散乱体検出器14及び吸収体検出器15の層方向(
図13におけるZ軸方向)に並べて配置される。
図13に図示されている配置によれば、コンプトン散乱の発生確率及び光電吸収による吸収確率が低く、コンプトン散乱における散乱角が小さい高エネルギーの電磁放射線の検出感度を高くすることができる。
【0056】
また、
図14に図示されているように、空間的に広く分布しており、且つ、低エネルギーの電磁放射線を放射する放射線源50Bについて測定を行う場合には、複数の検出器モジュール1が、散乱体検出器14及び吸収体検出器15の層方向(
図14におけるZ軸方向)と垂直な方向に並べて配置される。低エネルギーの電磁放射線を測定する場合には、層方向に並ぶ散乱体検出器14及び吸収体検出器15の数は少なくてもよい。その一方で、複数の検出器モジュール1を、散乱体検出器14及び吸収体検出器15の層方向と垂直な方向に並べて配置することで、電磁放射線を測定する検出器の実効的な面積を増大させることができる。
図14では、検出器モジュール1がX軸方向に並んで配置されているように図示されているが、実際には、検出器モジュール1は、XY平面に平行な面内に行列に並んで配置されてもよい。
【0057】
更に、
図15に図示されているように、低エネルギーの電磁放射線を放射する放射線源50Cについての測定を高効率で行う場合には、特定の検出器モジュール1(
図15では、符号1Aで示されている)の周囲に、向きが異なる検出器モジュール1(
図15では、符号1Bで示されている)が並べて配置されてもよい。より厳密には、複数の検出器モジュール1は、ある特定の検出器モジュール1Aの少なくとも一の散乱体検出器14の半導体層21の表側主面(放射線源50Cに面する主面)が位置する平面が、その周囲にある検出器モジュール1Bの少なくとも一の吸収体検出器15の半導体層21の表側主面と交差するように配置される。低エネルギーの電磁放射線は、コンプトン散乱の散乱角θが大きくなるが、
図15に図示されているような配置によれば、検出器モジュール1Aの散乱体検出器14で散乱された電磁放射線を、その周囲に位置する検出器モジュール1Bの吸収体検出器15で効率よく検出することができる。
【0058】
また、
図16に図示されているように、放射線源50Dの分布が事前にある程度判明している場合には、放射線源50Dを取り囲むように複数の検出器モジュール1が配置されてもよい。
【0059】
更に、
図17に図示されているように、3次元的に分布する放射線源50Eについて3次元的な線源分布画像を得ようとする場合、複数の検出器モジュール1が分散して配置されてもよい。この場合、各検出器モジュール1において得られるデジタル測定データから、ステレオ視の原理により、3次元的な線源分布画像を得ることができる。
【0060】
上述された本実施形態の
図13〜
図17の説明においては、検出器モジュール1の構成が同一であるとされている。言い換えれば、検出器モジュール1に含まれる散乱体検出器14及び吸収体検出器15の数が、検出器モジュール1の間で同一であるとされている(即ち、全ての検出器モジュール1が、4つの散乱体検出器14と1つの吸収体検出器15とを備えているとされている)。
【0061】
しかしながら、検出器モジュール1に含まれる散乱体検出器14及び吸収体検出器15の数は、検出器モジュール1の間で相違していてもよい。また、
図18Aに図示されているように、複数の散乱体検出器14を有している一方で吸収体検出器15を含まない検出器モジュール1Eが、放射線測定装置10の複数の検出器モジュール1に含まれていてもよい。更に、
図18Bに図示されているように、複数の吸収体検出器15を有している一方で、散乱体検出器14を含まない検出器モジュール1Fが放射線測定装置10の複数の検出器モジュール1に含まれていてもよい。ただし、放射線測定装置10の全体としては、少なくとも一つの散乱体検出器14と、少なくとも一つの吸収体検出器15が含まれる。検出器モジュール1に含まれる散乱体検出器14及び吸収体検出器15の数が検出器モジュール1の間で相違していても、検出器モジュール1を適正に配置すれば、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応しながら電離放射線の測定を行うことができる。
【0062】
ただし、
図13〜
図17から理解されるように、本実施形態の放射線測定装置10では、検出器モジュール1の構成が同一であっても様々な放射線源の性質に合わせた測定を行うことができる。このような利点を生かしながら検出器モジュール1のコストを低減する観点では、検出器モジュール1の構成が同一であることが好ましい。
【0063】
その一方で、複数の散乱体検出器14を有している一方で吸収体検出器15を含まない検出器モジュール1E(
図18A参照)と、複数の吸収体検出器15を有している一方で、散乱体検出器14を含まない検出器モジュール1F(
図18B参照)を用いる場合には、検出器モジュール1Eと検出器モジュール1Fとの距離を適切に調節することで、視野角(FOV:field of view)や角度分解能を調節できるという利点がある。
【0064】
図19Aは、視野角を大きくするための検出器モジュール1(1E、1F)の配置の例を示す図である。視野角を大きくするためには、散乱体検出器14が設けられた検出器モジュール1Eと、吸収体検出器15が設けられた検出器モジュール1Fの間の距離が小さくなるように検出器モジュール1E、1Fが配置される。このような配置では、散乱角θが比較的大きい場合(例えば、
図19Aの散乱角θ
2、θ
3)についても電磁放射線を検出できるので、結果として、視野角が大きくなる。ただし、検出器モジュール1E、1Fの距離が小さい配置では、散乱角θの角度分解能は低下してしまう。
【0065】
一方、
図19Bは、散乱角θの角度分解能を高くための検出器モジュール1(1E、1F)の配置の例を示す図である。角度分解能を高くするためには、散乱体検出器14が設けられた検出器モジュール1Eと、吸収体検出器15が設けられた検出器モジュール1Fの間の距離が大きくなるように検出器モジュール1E、1Fが配置される。検出器モジュール1E、1Fの距離が大きい配置では、散乱角θが比較的大きい場合(例えば、
図19Aの散乱角θ
2、θ
3)には電磁放射線を検出できない。しかしながら、
図19Bの配置では、散乱角θを細かく特定できるので、散乱角θの角度分解能を向上させることができる。
【0066】
各検出器モジュール1が所望の位置に配置された後、電磁放射線の測定、即ち、放射線源の空間的分布を示す線源分布画像の生成が行われる。
図20は、本実施形態における線源分布画像の生成の手順を示すフローチャートである。
【0067】
まず、検出器モジュール1の配置を示すモジュール配置データが演算装置2に設定される(ステップS01)。例えば
図13〜
図17、
図19A、
図19Bに図示されているように、本実施形態の放射線測定装置10は、複数の検出器モジュール1の配置が様々に変更され得るが、線源分布画像を得るためには、各検出器モジュール1の位置(言い換えれば、散乱体検出器14及び吸収体検出器15それぞれの位置)が演算装置2に与えられる必要がある。ステップS01は、各検出器モジュール1の位置を演算装置2に認識させるために行われる。
【0068】
一実施形態では、モジュール配置データの設定は、測定モードを設定することで行ってもよい。詳細には、検出器モジュール1の配置に対応した複数の測定モードが用意され、更に、測定モードのそれぞれに対応する複数のモジュール配置データが用意される。演算装置2のユーザインタフェースを用いて測定モードがユーザにより選択されると、選択された測定モードに対応するモジュール配置データが選択され、実際に用いられるモジュール配置データとして演算装置2に設定される。ある特定の配置で検出器モジュール1が配置されたときに演算装置2のユーザインタフェースを介して該配置に対応する測定モードを選択することで、適正なモジュール配置データを演算装置2に設定することができる。
【0069】
また、検出器モジュール1の配置を示すモジュール配置データが演算装置2に入力されてもよい。例えば、ユーザが、演算装置2のユーザインタフェースを用いてモジュール配置データを演算装置2に入力してもよい。また、各検出器モジュール1がそれぞれの位置を検出する機能を有している場合には、各検出器モジュール1自身がそれぞれの位置を検出し、それぞれの位置を示す位置データを演算装置2に送信してもよい。この場合、該位置データの集合がモジュール配置データとして演算装置2に設定される。
【0070】
更に、電磁放射線のデジタル測定データの採取が行われる(ステップS02)。より具体的には、各検出器モジュール1のASIC16、17により、散乱体検出器14、吸収体検出器15からアナログ信号が逐次に読み出され、読み出されたアナログ信号に対応するデジタル測定データが生成される。ある散乱体検出器14のあるセルにおいてコンプトン散乱が発生した場合、コンプトン散乱が発生したセルにおいて電荷が発生し、発生した電荷の量に応じたアナログ信号が生成される。また、ある吸収体検出器15のあるセルにおいて光電吸収が発生した場合、光電吸収が発生したセルにおいて電荷が発生し、電荷の発生量に応じたアナログ信号が生成される。生成したアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換が行われてデジタル測定データが生成される。
【0071】
更に、コンプトンコーンの再構成に必要なデータが算出される(ステップS03)。一実施形態では、ASIC16、17によって生成されたデジタル測定データがデジタル通信データに組み込まれて演算装置2に送られる。演算装置2は、デジタル通信データに含まれるデジタル測定データを解析し、下記の演算を行う:
(1)散乱体検出器14においてある光子のコンプトン散乱が発生し、その後、該コンプトン散乱で散乱された光子が吸収体検出器15に光電吸収によって吸収されるイベントの発生の検出。
(2)各イベントにおける、当該散乱体検出器14においてコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、当該吸収体検出器15において光電吸収が発生した位置X2、及び、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2の算出。
(3)各イベントにおける、該コンプトン散乱における電磁放射線の散乱角θの算出。
電磁放射線の散乱角θの算出は、下記の式(2)、又は、下記式(2)と等価な式に基づいて行われる:
【数2】
ここで、m
eは、電子の静止質量であり、cは、光速である。ここで、放射線源から放出される電磁放射線の光子のエネルギーEinが既知である場合には、エネルギーE
1、E
2の算出においては、下記式(3)で表される関係を用いてもよい:
Ein=E
1+E
2 ・・・(3)
このようにして得られたコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、光電吸収が発生した位置X2、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2、及び、電磁放射線の散乱角θから、各イベントについてコンプトンコーンを再構成することができる。
【0072】
散乱体検出器14においてコンプトン散乱が発生し、該コンプトン散乱で散乱された光子が吸収体検出器15に光電吸収によって吸収されるイベントの発生の検出においては、あるコンプトン散乱とある光電吸収とが同一の光子について発生したイベントであるか否かの判断が必要である。ここで留意すべきことは、本実施形態の放射線測定装置10では、例えば
図13、
図15、
図19A、
図19Bに図示されているように、コンプトン散乱が発生した散乱体検出器14が属する検出器モジュール1(第1検出器モジュール)と、該コンプトン散乱で散乱された光子の光電吸収が発生した吸収体検出器15が属する検出器モジュール(第2検出器モジュール)とが異なる場合があり得る点である。異なる検出器モジュール1でコンプトン散乱と光電吸収が発生しても、当該コンプトン散乱と当該光電吸収とが同一イベントに属することを適正に判断することが望ましい。
【0073】
この問題に対処するために、一実施形態では、あるコンプトン散乱とある光電吸収とが同一の光子について発生したイベントであるか否かの判断が、デジタル通信データに含まれる測定時刻データに基づいて行われてもよい。コンプトン散乱の発生と光電吸収の発生は、実質的に(即ち、アナログ信号処理やデジタルデータ処理に必要な時間との比較においては)、ほぼ同時であると考えてよい。一実施形態では、コンプトン散乱の発生が検出されたデジタル測定データに付された測定時刻データと、光電吸収の発生が検出されたデジタル測定データに付された測定時刻データに示されている時刻が同一である(又は、測定時刻データに示されている時刻の差が、極めて短時間である所定時間より小さい)場合に、コンプトン散乱の発生が検出された散乱体検出器14が属する検出器モジュール1と、光電吸収の発生が検出された吸収体検出器15が属する検出器モジュール1とが異なる場合でも、演算装置2が、当該コンプトン散乱と当該光電吸収とが同一の光子について発生したイベントに属すると判断してもよい。
【0074】
あるコンプトン散乱とある光電吸収とが同一の光子について発生したイベントであるか否かの判断においては、デジタル通信データに含まれる測定時刻データに加え、モジュール配置データに示されている検出器モジュール1の配置が参照されてもよい。例えば、コンプトン散乱が発生した散乱体検出器14と光電吸収が発生した吸収体検出器15が異なる検出器モジュール1に含まれているとき、該異なる検出器モジュール1が近接して配置されており、且つ、コンプトン散乱の発生が検出されたデジタル測定データに付された測定時刻データと、光電吸収の発生が検出されたデジタル測定データに付された測定時刻データに示されている時刻が同一である(又は、測定時刻データに示されている時刻の差が、極めて短時間である所定時間より小さい)場合に、演算装置2は、当該コンプトン散乱と当該光電吸収とが同一の光子について発生したイベントであると判断してもよい。ただし、複数の検出器モジュール1が集まって配置される場合には、演算装置2は、モジュール配置データに無関係に、コンプトン散乱の発生が検出されたデジタル測定データに付された測定時刻データと、光電吸収の発生が検出されたデジタル測定データに付された測定時刻データに示されている時刻が同一である(又は、測定時刻データに示されている時刻の差が、極めて短時間である所定時間より小さい)場合に、当該コンプトン散乱と当該光電吸収とが同一の光子について発生したイベントに属すると判断してもよい。
【0075】
また、当該散乱体検出器14においてコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、当該吸収体検出器15において光電吸収が発生した位置X2、及び、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2の算出が、各検出器モジュール1のデジタル処理部18によって行われてもよい。この場合、コンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、光電吸収が発生した位置X2、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2、及び、測定時刻データを含むデジタル通信データがデジタル処理部18によって生成され、該デジタル通信データが、演算装置2に送信される。このような構成は、デジタル通信データの通信量の低減のために有効である。デジタル通信データの通信量の低減は、有線ネットワーク4を用いてデジタル通信データを演算装置2に送信する場合、無線LANを用いてデジタル通信データを演算装置2に送信する場合のいずれにおいても有用である。
【0076】
この場合、演算装置2は、デジタル通信データに含まれる測定時刻データに基づいて、散乱体検出器14においてコンプトン散乱が発生し、該コンプトン散乱で散乱された光子が吸収体検出器15に光電吸収によって吸収されるイベントの発生を検出し、更に、各イベントにおける、コンプトン散乱における電磁放射線の散乱角θの算出を行う。演算装置2に送信されたデジタル通信データから各イベントにおけるコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、光電吸収が発生した位置X2、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2を得ることができるから、各イベントについての電磁放射線の散乱角θの算出においては、これらの情報が用いられる。このようにして得られたコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、光電吸収が発生した位置X2、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2、及び、電磁放射線の散乱角θから、各イベントについてコンプトンコーンを再構成することができる。
【0077】
演算装置2は、更に、ステップS03において得られた情報(例えば、位置X1、X2、エネルギーE
1、E
2、散乱角θ)に基づいて、放射線源の空間的分布を示す線源分布画像を作成する(ステップS04)。詳細には、演算装置2は、各イベントにおけるコンプトン散乱が発生した位置X1、該コンプトン散乱で反跳電子が得たエネルギーE
1、光電吸収が発生した位置X2、光電吸収によって吸収された光子のエネルギーE
2、及び、電磁放射線の散乱角θから、各イベントについてコンプトンコーンを再構成する。更に、演算装置2は、再構成したコンプトンコーンの重ね合わせに対応する画像を、放射線源103の空間的分布を示す線源分布画像として生成する。生成された線源分布画像は、演算装置2のユーザインタフェースに対するユーザによる操作に応じて、表示装置3に表示される。
【0078】
図17に図示されているように、各検出器モジュール1が、ステレオ視の原理によって3次元的な線源分布画像を得るために分散して配置される場合には、演算装置2は、各検出器モジュール1において得られるデジタル測定データから各検出器モジュール1について個別にコンプトンコーンを再構成し、再構成されたコンプトンコーンとモジュール配置データとから、ステレオ視の原理によって3次元的な線源分布画像を生成してもよい。言い換えれば、演算装置2は、各検出器モジュール1について個別にコンプトンコーンを再構成されたコンプトンコーンとモジュール配置データとから、ステレオ視の原理によって放射線源の位置を特定してもよい。この場合、演算装置2は、特定した放射線源の位置に基づいて、放射線源の線源強度を算定してもよい。
【0079】
以上に説明されている本実施形態の放射線測定装置10の一つの利点は、放射線源の性質の相違や測定の目的に対して柔軟に対応しながら電離放射線の測定を行うことができる点である。本実施形態の放射線測定装置10は、複数の検出器モジュール1を含んでいる。該検出器モジュール1の配置を、例えば
図13〜
図17、
図19A、
図19Bに図示されているように放射線源の性質及び測定の目的に合わせて決定することで、本実施形態の放射線測定装置10は、放射線源の性質の相違に対して柔軟に対応しながら電離放射線の測定を行うことができる。
【0080】
ここで、本実施形態の放射線測定装置10においては、電磁放射線の測定の間、検出器モジュール1の間の相対的な位置関係が確実に保持されることが望ましい。電磁放射線の測定の間に検出器モジュール1の間の相対的な位置関係が変化すると、コンプトン散乱が発生した位置や光電吸収が発生した位置を正確に特定することができなくなるためである。
【0081】
検出器モジュール1の間の相対的な位置関係を確実に保持するためには、各検出器モジュール1の筐体11に、他の検出器モジュール1の筐体11と連結するための連結機構が設けられることが好ましい。
図21Aは、このような構成の検出器モジュール1を概念的に示す図である。
図21Aに図示されているように、各検出器モジュール1の筐体11には連結機構11aが設けられている。隣接する検出器モジュール1の筐体11は、それぞれに設けられた連結機構11aによって連結される。
図21Aでは、検出器モジュール1は、連結機構11aにより、散乱体検出器14と吸収体検出器15の層方向(
図20AのZ軸方向)に並んで連結されている。連結機構11aを用いることにより、検出器モジュール1の間の相対的な位置関係を確実に保持することができる。
【0082】
筐体11に設けられる連結機構11aは、隣接する検出器モジュール1を、散乱体検出器14と吸収体検出器15の層方向(
図21AのZ軸方向)と層方向と垂直な方向(
図21AのX軸方向)の両方に連結可能に構成されることが好ましい。
図21Bは、該連結機構11aにより、散乱体検出器14と吸収体検出器15の層方向と垂直な方向に並んで連結された検出器モジュール1を概念的に示す図である。
図21Bでは、検出器モジュール1がX軸方向に並んで配置されているように図示されているが、実際には、検出器モジュール1は、XY平面に平行な面内に行列に並んで連結されてもよい。
【0083】
以上には、本発明の実施形態が様々に記載されているが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。本発明が、様々な変更と共に実施され得ることは、当業者には自明的であろう。