特許第6485916号(P6485916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485916
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】被覆シートの接合構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20190311BHJP
   E01H 11/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   E02D17/20 103B
   E01H11/00 A
   E02D17/20 102B
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-229230(P2015-229230)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-95981(P2017-95981A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】501232528
【氏名又は名称】株式会社複合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】矢口 直幸
(72)【発明者】
【氏名】田村 幸彦
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−231512(JP,A)
【文献】 特開2001−025721(JP,A)
【文献】 実公昭60−038763(JP,Y2)
【文献】 特開2007−070980(JP,A)
【文献】 特開2013−185370(JP,A)
【文献】 実公昭52−026162(JP,Y2)
【文献】 実公平04−053413(JP,Y2)
【文献】 特開2006−037533(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1354485(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00−17/20
E01H 11/00
A01M 21/00−21/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面を被覆する被覆シートを地表面上で接合する被覆シートの接合構造であって、
隣接する被覆シート間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シートの縁部の裏面に積層される裏面側積層部材と、
前記隣接する被覆シート間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シートの縁部の表面に積層される表面側積層部材と、
前記表面側積層部材と前記裏面側積層部材との間に前記隣接する被覆シートの縁部が挟み込まれるように、この表面側積層部材とこの裏面側積層部材とを締結する締結部材と、
前記裏面側積層部材及び前記表面側積層部材を前記地表面に着脱自在に固定する固定部材とを備え、
前記裏面側積層部材は、平板であり、
前記表面側積層部材は、前記平板に弾性力を作用させる板ばねであり、
前記締結部材は、
前記隣接する被覆シート間の隙間を通過するように、前記裏面側積層部材及び前記表面側積層部材の貫通孔を貫通する締結ボルトと、
前記締結ボルトに締結される締結ナットとを備え、
前記固定部材は、
前記隣接する被覆シート間の隙間を通過するように、前記裏面側積層部材及び前記表面側積層部材の貫通孔を貫通し、前記地表面に定着される固定ボルトと、
前記固定ボルトに締結される固定ナットと、
前記地表面の穴部と前記固定ボルトとの間に充填された状態でこの固定ボルトを定着させる定着剤層とを備え、
前記裏面側積層部材の貫通孔と前記表面側積層部材の貫通孔とは、前記隣接する被覆シート間の隙間に沿って間隔をあけて配置されていること、
特徴とする被覆シートの接合構造。
【請求項2】
請求項に記載の被覆シートの接合構造において、
前記固定ボルトは、この固定ボルトの内部に注入される定着剤をこの固定ボルトの外部に排出する排出口を備えること、
を特徴とする被覆シートの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地表面を被覆する被覆シートを地表面上で接合する被覆シートの接合構造及び地表面を被覆する被覆シートを地表面上に固定する被覆シートの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土法面への雨水の浸透による盛土体力の低下や浸食・表面崩壊を防止するために、法枠工、ブロック工、植生工、シートを用いた被覆工が用いられている。被覆工の中でも施工性に優れた高分子系遮水防草シートは、雑草の成長に対する評価が確立されていなかったが、公益財団法人鉄道総合技術研究所では、それらの評価方法を確立するとともに、施工性に優れ、長期間にわたり遮水防草効果を保持し、メンテナンスフリー化に加え、周辺環境との調和(景観)を考慮したのり面被覆シートを開発した。公益財団法人鉄道総合技術研究所では、遮水・防草性能を維持しながらより経済的な遮水防草シートの特許を取得している。
【0003】
従来の地表防護シートは、第1の遮水防草シートの表面に形成された寸法安定布と、この寸法安定布の表面に形成された第2の遮水防草シートと、この第2の遮水防草シートの表面に形成された人工芝基布などを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の地表防護シートは、第1の遮水防草シートと第2の遮水防草シートとの間に寸法安定布を強固に融着することによって、第1及び第2の遮水防草シートが力や熱を受けたときに生ずる伸縮を寸法安定布によって抑制している。
【0004】
従来の地表のり面防草保護シートは、表面層の表面に形成された改質アスファルト層と、この改質アスファルト層の表面に形成された基材層と、この基材層の表面に形成された改質アスファルト層と、この改質アスファルト層の表面に形成された無機質粒子の表面層とを備えている(例えば、特許文献2参照)。このような従来の地表面防草保護シートは、耐候・耐久性を有するアスファルト層によって長期間にわたり草がシートを貫通するのを防止している。
【0005】
従来の地表のり面保護シートは、設置表面保護層の表面に形成された雑草生育防止層と、この雑草生育防止層の表面に形成された中間遮水層と、この中間遮水層の表面に形成されたパイルタフト用基布層と、このパイルタフト用基布層の表面に形成されたパイル層とを備えている(例えば、特許文献3参照)。このような従来の地表のり面保護シートは、中間遮水層によって地中に水が浸入するのを防止するとともに、雑草生育防止層によって雑草の生育を防止している。
【0006】
次に、従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術1)を説明する。
従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術1)は、図25(A)に示すように整形後ののり面の表面に不織布を敷設する工程と、図25(B)に示す不織布の表面に人工芝を敷設する工程と、図25(C)に示す人工芝の表面にのり枠を設置する工程と、図25(D)に示すのり枠にアンカーピンを打設する工程と、図25(E)に示すのり肩にバラスト止めを設置する工程などを経て、図25(F)に示すように防水遮水シートの施工が完了する。図24(A)に示すように、従来の遮水防草シートの施工方法では、のり尻104cにおいて遮水防草シート105の下端部をのり枠106に打設されたアンカーピン110によって固定し、遮水防草シート105の下面に接着された接着防水シート105Cの下端部をのり面排水溝104dの内壁に接着している。図24(B)に示すように、従来の遮水防草シートの施工方法では、のり肩104bにおいて遮水防草シート105の上端部をのり枠106に打設されたアンカーピン110によって固定するとともに、バラスト止め104eの下面に遮水防草シート105の上端部を挟み込み、遮水防草シート105の不織布105Bを不織布止めピン110Bで固定し、遮水防草シート105の人工芝105Aを人工芝止めピン110Aで固定している。
【0007】
次に、従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術2)を説明する。
図26に示す従来の遮水防草シートの施工方法は、図26(A)に示すのり面の草刈りを実施する工程と、図26(B)に示すのり肩に遮水防草シートの固定用の溝を掘削する工程と、図26(C)に示す遮水防草シートの接続箇所に粘着テープを貼り付ける工程と、図26(D)に示すのり尻に遮水防草シートの固定用の溝を掘削する工程と、図26(E)に示すのり肩に遮水防草シートを固定する工程と、図26(F)(G)に示す遮水防草シート同士を粘着テープによって接続する工程と、図26(H)に示すのり肩の遮水防草シートを採石等によって埋め戻す工程と、図26(I)に示す遮水防草シートを抑えるためのアンカー削孔を実施する工程と、図26(J)に示す遮水防草シートを抑えるためにアンカーを打ち込む工程と、図26(K)(L)に示す遮水防草シートを抑える平鋼にアンカーナットを締め付ける工程と、図26(M)に示すのり尻に遮水防草シートを固定する工程と、図26(N)に示すのり尻の遮水防草シートを採石等によって埋め戻す工程などを経て、図26(O)に示すように防水遮水シートの施工が完了する。
【0008】
次に、従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術1,2)の施工手順を説明する。
先ず、切断工程において、遮水防草シートの製品ロール(幅2m程度×長さ20m〜30m程度)を現場で所定の長さに切断、又は事前に工場で切断して搬入する。次に、敷設・展開工程において、遮水防草シートをのり肩の所定位置に設置して、遮水防草シートをのり尻に向かって下方に展開する。次に、のり肩固定工程において、遮水防草シートをのり肩に固定する。例えば、図25に示す遮水防草シートの施工方法(従来技術1)では、図25(E)に示すL型側溝の下に遮水防草シートを敷設し固定する。図26に示す遮水防草シートの施工方法(従来技術2)では、図26(B)に示すように、のり肩を掘削して、図26(E)に示すように遮水防草シートの端部を掘削底面まで敷設して埋戻し固定する。次に、接続工程において、図26(C)(F)(G)に示すように、隣接する遮水防草シート同士を所定の重ね代(例えば15cmのオーバーラップ)で粘着テープを用いて接続する。次に、固定工程において、図25(C)(D)及び図26(K)に示すように、遮水防草シートが風などによる捲れや飛散及びズレを防止するため、溝形鋼(チャンネル)、等辺山形鋼(アングル)、平鋼(t6×w50)などの金具とアンカー材とを併用して遮水防草シートを固定する。アンカー材は、丸鋼(φ19mm×L1000mm)又は全ねじ棒鋼(φ16mm×L500mm)を使用している。次に、のり尻固定工程において、遮水防草シートをのり尻に固定する。例えば、図25に示す遮水防草シートの施工方法(従来技術1)では、図24(A)に示すように、のり面横断方向の遮水防草シートの弛みを取った状態で、遮水防草シートがU字側壁に固定される。図26に示す遮水防草シートの施工方法(従来技術2)では、図26(M)(N)に示すように、のり面横断方向の遮水防草シートの弛みを取った状態で、U字形に掘削した地盤に遮水防草シートの端部を埋め込み固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5258692号公報
【0010】
【特許文献2】特許第3800365号公報
【0011】
【特許文献3】特許第3251146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術2)では、図26(E)に示すように、ロール状の遮水防草シートをのり肩(のり面上部)の所定位置に設置して、図26(F)に示すようにのり尻(のり面下部)に向かって展開し、図26(G)に示すように隣接する遮水防草シートとの接合幅が所定の寸法となるように位置合わせを行った後に遮水防草シートを接合している。従来の遮水防草シートの施工方法では、接合に強力な粘着性を有する粘着テープが用いられている。しかし、従来の遮水防草シートの施工方法では、遮水防草シートの離形紙を剥がした後、遮水防草シートに皺が発生しないように接合する必要があり、接合作業に熟練度が要求されていた。また、従来の遮水防草シートの施工方法では、粘着テープを使用して接合しているため経年劣化により粘着力が低減し、接合した遮水防草シートが剥離する可能性があり、剥離箇所から雑草が成長する可能性があった。さらに、従来の遮水防草シートの施工方法では、隣接する遮水防草シートに跨るように、帯状に切断した遮水防草シートを重ねて貼り付けて接合する場合には、遮水防草シートが余分に必要になりコストが高くなってしまう問題点があった。
【0013】
従来の遮水防草シートの施工方法では、風などの外力により捲れや浮き上がり及びズレが発生するため固定が必要である。従来の遮水防草シートの施工方法では、反力を擁壁や側溝などのコンクリート構造物に取ったり、溝形鋼、等辺山形鋼、平鋼等の金具とアンカーと併用して面地盤に固定したりするなどの対策が実施されている。従来の遮水防草シートの施工方法では、φ16mm〜φ19mm程度の丸鋼又は全ねじ棒鋼のアンカーの先端を尖らせ、アンカーの頭部にナット締めができるようにねじ切りが施されている。従来の遮水防草シートの施工方法では、遮水防草シートの上からハンマーで直接地盤に打ち込むか、予めアンカー径よりも小さいドリルで削孔した後にアンカーを打設するアンカー施工方法がとられている。このため、従来の遮水防草シートの施工方法では、アンカー周面の土と摩擦抵抗がアンカー力となることから、所定のアンカー力を得るために比較的多くの本数が必要であった。また、従来の遮水防草シートの施工方法では、のり肩及びのり尻の地盤を掘削し、遮水防草シートを埋め込み後、土などにより埋戻し固定するのり肩、のり尻の処理方法が用いられていた。しかし、従来の遮水防草シートの施工方法では、地盤の掘削・埋戻しは大変な労力が必要となり、特にのり肩の掘削・埋戻し作業は人力施工になるため施工費の上昇につながっていた。
【0014】
この発明の課題は、隣接する被覆シート同士を簡単に接合することができるとともに、被覆シートを地表面上に簡単に固定することができる被覆シートの接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図3〜図図13図18図19及び図22に示すように、地表面(4a)を被覆する被覆シート(5)を地表面上で接合する被覆シートの接合構造であって、隣接する被覆シート間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シートの縁部(5a)の裏面に積層される裏面側積層部材(7)と、前記隣接する被覆シート間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シートの縁部の表面に積層される表面側積層部材(8)と、前記表面側積層部材と前記裏面側積層部材との間に前記隣接する被覆シートの縁部が挟み込まれるように、この表面側積層部材とこの裏面側積層部材とを締結する締結部材(9)と、前記裏面側積層部材及び前記表面側積層部材を前記地表面に着脱自在に固定する固定部材(10)とを備え、前記裏面側積層部材は、平板であり、前記表面側積層部材は、前記平板に弾性力を作用させる板ばねであり、前記締結部材は、前記隣接する被覆シート間の隙間を通過するように、前記裏面側積層部材及び前記表面側積層部材の貫通孔(7a,8a)を貫通する締結ボルト(9a)と、前記締結ボルトに締結される締結ナット(9b)とを備え、前記固定部材は、前記隣接する被覆シート間の隙間を通過するように、前記裏面側積層部材及び前記表面側積層部材の貫通孔(7a,8a)を貫通し、前記地表面に定着される固定ボルト(10a)と、前記固定ボルトに締結される固定ナット(10b)と、前記地表面の穴部(10d)と前記固定ボルトとの間に充填された状態でこの固定ボルトを定着させる定着剤層(10e)とを備え、前記裏面側積層部材の貫通孔(7a)と前記表面側積層部材の貫通孔(8a)とは、前記隣接する被覆シート間の隙間に沿って間隔をあけて配置されていること特徴としている被覆シートの接合構造(6)である。
【0016】
請求項2の発明は、請求項に記載の被覆シートの接合構造において、図18及び図19に示すように、前記固定ボルトは、この固定ボルトの内部に注入される定着剤(C)をこの固定ボルトの外部に排出する排出口(10h)を備えることを特徴とする被覆シートの接合構造である。
【発明の効果】
【0029】
この発明によると、隣接する被覆シート同士を簡単に接合することができるとともに、被覆シートを地表面上に簡単に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合構造とその固定構造の設置状態を模式的に示す正面図である。
図2】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合構造とその固定構造の設置状態を模式的に示す側面図である。
図3】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合構造を分解した状態を示す斜視図である。
図4】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合構造の平面図である。
図5図4のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
図6図4のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
図7】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの固定構造を分解した状態を示す斜視図である。
図8】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの固定構造の平面図である。
図9図8のIX-IX線で切断した状態を示す断面図である。
図10図8のX-X線で切断した状態を示す断面図である。
図11】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合方法を説明するための縦断面図であり、(A)〜(F)は各工程の縦断面図である。
図12】この発明の第1実施形態に係る被覆シートの固定方法を説明するための縦断面図であり、(A)〜(F)は各工程の縦断面図である。
図13】この発明の第2実施形態に係る被覆シートの接合構造の縦断面図である。
図14】この発明の第2実施形態に係る被覆シートの固定構造の縦断面図である。
図15】この発明の第3実施形態に係る被覆シートの接合構造の縦断面図である。
図16】この発明の第4実施形態に係る被覆シートの接合構造の縦断面図である。
図17】この発明の第4実施形態に係る被覆シートの固定構造の縦断面図である。
図18】この発明の第5実施形態に係る被覆シートの接合構造の縦断面図である。
図19】この発明の第5実施形態に係る被覆シートの接合方法を説明するための縦断面図である。
図20】この発明の第6実施形態に係る被覆シートの接合構造の縦断面図である。
図21】この発明の第6実施形態に係る被覆シートの接合方法を説明するための縦断面図である。
図22】この発明の第5実施形態に係る被覆シートの接合構造の縦断面図である。
図23】この発明の第5実施形態に係る被覆シートの固定構造の縦断面図である。
図24】従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術1)を示す縦断面図であり、(A)はのり尻の施工状況を示す縦断面図であり、(B)はのり肩の施工状況を示す縦断面図である。
図25】従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術1)を説明するための写真であり、(A)〜(F)は各工程を示す写真である。
図26】従来の遮水防草シートの施工方法(従来技術2)を説明するための写真であり、(A)〜(O)は各工程を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1及び図2に示す車両1は、軌道2に沿って走行する移動体である。車両1は、電車、気動車、機関車、客車又は貨車などの鉄道車両である。軌道2は、車両1が走行する通路(線路)である。軌道2は、例えば、砂利又は砕石などの粒状体によって構成された道床上に左右一対のレールと支持体とによって構成された軌きょうを敷設した有道床軌道である。路盤3は、軌道2を支持する基盤である。路盤3は、車両1が通過するときに発生する荷重を支持する構造物である。路盤3は、例えば、良質な自然土などを用いて締め固められた土路盤などである。
【0032】
盛土4は、良質な自然土又は岩石を主材料として地盤面よりも高く盛り上げた土構造物である。盛土4は、車両1が安定して走行可能なように軌道2及び路盤3を安全に支持している。盛土4は、この盛土4の土工によって作られた傾斜地形であるのり面(地盤面)4aと、のり面4aの最上端の部分であるのり肩4bと、のり面4aの最下端の部分であるのり尻(のり先)4cなどを備えている。
【0033】
被覆シート5は、のり面4aを被覆する部材である。被覆シート5は、例えば、雨水の地表面への浸透を防止する遮水機能と、植物の生育を防止する防草機能とを有するのり面被覆シートである。被覆シート5は、巻取り状態で現場に搬入された後に所定の長さ及び幅にシート状に切断、又は予め工場で所定の長さ及び幅に切断されて巻取り状態で現場に搬入される。被覆シート5は、図1に示すように、盛土4ののり面4aを被覆するようにこののり面4a上に複数並べた状態で敷設される。被覆シート5は、新設ののり面4aの場合にはこののり面4aの構築時などに敷設され、既存ののり面4aの場合にはこののり面4aの補修時などに敷設される。被覆シート5は、平面形状が略四角形状である。被覆シート5は、図4図10に示すように、この被覆シート5の長さ方向(上下方向)の端部と、この被覆シート5の幅方向(左右方向)の端部とを構成する縁部5aなどを備えている。
【0034】
(被覆シートの接合構造)
図1及び図3図6に示す接合構造6は、被覆シート5をのり面4a上で接合する構造である。接合構造6は、図3図6に示すように、隣接する被覆シート5同士の縁部5aを挟み込むことによって、隣接する被覆シート5同士を接合する接合治具として機能するとともに、これらの被覆シート5をのり面4aに固定する固定治具としても機能する。接合構造6は、図1に示すように、被覆シート5がのり面4aを被覆する被覆領域Aのうち被覆シート5が隣接する隣接領域A1内に設置されている。接合構造6は、図3図6に示す裏面側積層部材7と、表面側積層部材8と、図3図5に示す締結部材9と、図3図4及び図6に示す固定部材10などを備えている。
【0035】
図3図6に示す裏面側積層部材7は、隣接する被覆シート5間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シート5の縁部5aの裏面に積層される部材である。裏面側積層部材7は、図3図5及び図6に示すように、表面側積層部材8との間で隣接する被覆シート5の縁部5aを挟み込む。裏面側積層部材7は、図3及び図4に示すように、隣接する被覆シート5の縁部5aに沿って伸びる平板である。裏面側積層部材7は、平面形状及び断面形状が四角形状であり、平鋼のような金属製又はプラスチック板のような合成樹脂製の板状部材である。裏面側積層部材7は、被覆シート5の下側に敷くことによって、作業員が現場でカッターなどの切断器具を使用して被覆シート5を所定の形状に切断するときに、この被覆シート5を下敷きとして利用可能である。裏面側積層部材7は、図3図5及び図6に示すように、隣接する被覆シート5の縁部5aに跨るように、この被覆シート5の縁部5aに重ね合せて配置される。裏面側積層部材7は、のり面4aとの間に段差が形成されないように、のり面4aの表面形状に沿ってのり面4a上に設置される。裏面側積層部材7は、例えば、長さ700mm、幅150mm及び厚さ4.5mm程度の寸法に形成されている。裏面側積層部材7は、締結部材9の締結ボルト9aと固定部材10の固定ボルト10aとが貫通する貫通孔7aなどを備えている。裏面側積層部材7は、例えば、この裏面側積層部材7の両端部から50mm程度離れた位置に貫通孔7aが形成されており、この裏面側積層部材7の中心線に沿ってこの貫通孔7aが100mm間隔で1枚当たり合計7個程度形成されている。裏面側積層部材7は、図3に示すように、2種類の貫通孔7aが形成されており、締結ボルト9aが貫通する貫通孔(接合用貫通孔)7aについてはこの締結ボルト9aの外径よりも僅かに大きく内径16mm程度で形成されており、固定ボルト10aが貫通する貫通孔(固定用貫通孔)7aについては穴部10dの内径よりも僅かに大きく内径30〜40mm程度で形成されている。
【0036】
図3図6に示す表面側積層部材8は、隣接する被覆シート5間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シート5の縁部5aの表面に積層される部材である。表面側積層部材8は、図3及び図4に示すように、隣接する被覆シート5の縁部5aに沿って伸び、図5及び図6に示すように裏面側積層部材7に弾性力を作用させる板ばねである。表面側積層部材8は、図3図6に示すように、平面形状が四角形状であって断面形状が円弧状であり、金属製又は合成樹脂製の湾曲板である。表面側積層部材8は、締結部材9によって締結されることによって、裏面側積層部材7側に撓み弾性力(ばね力)を発生し、裏面側積層部材7との間で被覆シート5の縁部5aを挟み込む。表面側積層部材8は、図3図5及び図6に示すように、隣接する被覆シート5間の隙間を塞ぐように、隣接する被覆シート5の縁部5aに跨ってこの被覆シート5の縁部5aに重ね合せて配置されている。表面側積層部材8は、例えば、長さ700mm、幅120mm及び厚さ4.5mm程度の寸法に形成されている。表面側積層部材8は、図3図5及び図6に示すように、貫通孔8aと挟み込み部8bなどを備えている。貫通孔8aは、締結部材9の締結ボルト9a及び固定部材10の固定ボルト10aが貫通する締結用及びアンカー打設用の開口部である。貫通孔8aは、例えば、裏面側積層部材7側の貫通孔7aと対応する位置にこの貫通孔7aと同じ内径で2種類形成されている。挟み込み部8bは、隣接する被覆シート5の縁部5aを裏面側積層部材7との間で挟み込む部分である。挟み込み部8bは、表面側積層部材8の両縁部に形成されている。表面側積層部材8は、例えば、この表面側積層部材8の挟み込み部8bとこの表面側積層部材8の中心部との間に10mm程度の隙間があくように湾曲している。
【0037】
図3図5に示す締結部材9は、表面側積層部材8と裏面側積層部材7との間に隣接する被覆シート5の縁部5aが挟み込まれるように、この表面側積層部材8とこの裏面側積層部材7とを締結する部材である。締結部材9は、この締結部材9の締め付け量を調整することによって、表面側積層部材8と裏面側積層部材7との間で被覆シート5の縁部5aを挟み込むのに必要な加圧力を調整する。締結部材9は、図3図5に示す締結ボルト9aと、締結ナット9bと、図3及び図5に示す座金9cと、図3図5に示す座金9dなどを備えている。
【0038】
図3図5に示す締結ボルト9aは、隣接する被覆シート5間の隙間を通過するように、裏面側積層部材7及び表面側積層部材8を貫通する部材である。締結ボルト9aは、図5に示すように、裏面側積層部材7から突出しており、裏面側積層部材7から表面側積層部材8に向かって貫通するように、裏面側積層部材7の貫通孔7a及び表面側積層部材8の貫通孔8aに挿入されている。図3図5に示す締結ナット9bは、締結ボルト9aに締結される部材であり、締結ボルト9aに着脱自在に装着される。図3及び図5に示す座金9cは、締結ボルト9aの座面と裏面側積層部材7との間に挟み込まれる部材である。図3図5に示す座金9dは、締結ナット9bの座面と表面側積層部材8との間に挟み込まれる部材である。
【0039】
図3図4及び図6に示す固定部材10は、裏面側積層部材7及び表面側積層部材8をのり面4aに着脱自在に固定する部材である。固定部材10は、図6に示すように、隣接する被覆シート5が接合された状態でこの被覆シート5をのり面4aに固定する。固定部材10は、図3図4及び図6に示す固定ボルト10aと、固定ナット10bと、座金10cと、図3及び図6に示す穴部10dと、定着剤層10eなどを備えている。
【0040】
図3図4及び図6に示す固定ボルト10aは、隣接する被覆シート5間の隙間を通過するように、裏面側積層部材7及び表面側積層部材8を貫通し、のり面4aに定着される部材である。固定ボルト10aは、図3及び図6に示すように、裏面側積層部材7から突出しており、裏面側積層部材7から表面側積層部材8に向かって貫通するように、裏面側積層部材7の貫通孔7a及び表面側積層部材8の貫通孔8aに挿入されている。固定ボルト10aは、例えば、端部又は全長に雄ねじ部を有する丸鋼又は全ねじ棒鋼などのアンカーボルトである。図3図4及び図6に示す固定ナット10bは、固定ボルト10aに締結される部材である。固定ナット10bは、固定ボルト10aに着脱自在に装着されて固定ボルト10aと表面側積層部材8とを締結する。座金10cは、固定ナット10bの座面と表面側積層部材8との間に挟み込まれる部材である。穴部10dは、固定ボルト10aが挿入される部分である。穴部10dは、図6に示すように、固定ボルト10aをのり面4aに打設するためのアンカー打設用穴であり、のり面4aに所定の深さで形成されている。穴部10dは、図4及び図6に示すように、被覆シート5をのり面4a上に並べて敷設した状態でのり面4aに穴部10dを形成可能なように、隣接する被覆シート5間の隙間よりも内径が小さい。図3及び図6に示す定着剤層10eは、のり面4aの穴部10dと固定ボルト10aとの間に充填された状態でこの固定ボルト10aを定着させる部分である。定着剤層10eは、例えば、強度発現が早いモルタル又はセメントミルクのような定着剤Cを穴部10dと固定ボルト10aとの間に充填して形成される。
【0041】
(被覆シートの固定構造)
図1図2及び図7図10に示す固定構造11は、被覆シート5をのり面4a上に固定する構造である。固定構造11は、図1及び図3図6に示す接合構造6とは異なり、被覆シート5同士を接合する接合治具としての機能を備えておらず、図7図10に示すように被覆シート5の縁部5aを挟み込むことによって、被覆シート5をのり面4aに固定する固定治具としてのみ機能する。固定構造11は、図1及び図2に示すように、被覆シート5がのり面4aを被覆する被覆領域Aの周縁部に相当する周縁領域A2に配置されている。固定構造11は、図7図10に示す裏面側積層部材12と、表面側積層部材13と図7図9に示す締結部材14と、図7図8及び図10に示す固定部材15などを備えている。
【0042】
図7図10に示す裏面側積層部材12は、被覆シート5の縁部5aの裏面に積層される部材である。裏面側積層部材12は、図7図9及び図10に示すように、表面側積層部材13との間で隣接する被覆シート5の縁部5aを挟み込む。裏面側積層部材12は、図3図6に示す裏面側積層部材7と同一構造であり、図7及び図8に示すように被覆シート5の縁部5aに沿って伸びる平板である。裏面側積層部材12は、被覆シート5の縁部5aを挟み込むように、この被覆シート5の縁部5aに沿って配置されている。裏面側積層部材12は、図3図6に示す裏面側積層部材7と同一形状であり、図7図9及び図10に示すように締結部材14の締結ボルト14aと固定部材15の固定ボルト15aとが貫通する貫通孔12aなどを備えている。
【0043】
図7図10に示す表面側積層部材13は、被覆シート5の縁部5aの表面に積層される部材である。表面側積層部材13は、図3図6に示す表面側積層部材8と同一構造であり、図7及び図8に示すように、被覆シート5の縁部5aに沿って伸び、図9及び図10に示すように裏面側積層部材12に弾性力を作用させる板ばねである。表面側積層部材13は、図7図9及び図10に示すように被覆シート5の縁部5aを裏面側積層部材12とともに挟み込むように、この被覆シート5の縁部5aに沿って配置されている。表面側積層部材13は、図7図9及び図10に示すように、貫通孔13aと挟み込み部13bなどを備えている。貫通孔13aは、締結部材14の締結ボルト14aと固定部材15の固定ボルト15aとが貫通する開口部である。挟み込み部13bは、裏面側積層部材12との間で被覆シート5の縁部5aを挟み込む部分である。挟み込み部13bは、表面側積層部材13の裏面の両縁部に形成されている。表面側積層部材13は、図9及び図10に示すように、一方の挟み込み部13bが裏面側積層部材12との間で被覆シート5の縁部5aを挟み込み、他方の挟み込み部13bが裏面側積層部材12と直接接合する。
【0044】
図7図9に示す締結部材14は、表面側積層部材13と裏面側積層部材12との間に被覆シート5の縁部5aが挟み込まれるように、この表面側積層部材13とこの裏面側積層部材12とを締結する部材である。締結部材14は、図3図5に示す締結部材9と同一構造であり、図7図9に示す締結ボルト14aと、締結ナット14bと、図7図9及び図10に示す座金14cと、図7図10に示す座金14dなどを備えている。図7図9に示す締結ボルト14aは、被覆シート5の縁部5aの外側を通過するように、裏面側積層部材12及び表面側積層部材13を貫通する部材である。締結ボルト14aは、図7及び図9に示すように、裏面側積層部材12から突出しており、裏面側積層部材12から表面側積層部材13に向かって貫通するように、裏面側積層部材12の貫通孔12a及び表面側積層部材13の貫通孔13aに挿入されている。図9に示す座金14dは、裏面側積層部材12に対して表面側積層部材13が傾斜したときに、締結ナット14bの座面と表面側積層部材13とが密着するように、締結ナット14bと表面側積層部材13との間に挟み込まれる球面座金などである。
【0045】
図7図8及び図10に示す固定部材15は、裏面側積層部材12及び表面側積層部材13をのり面4aに着脱自在に固定する部材である。固定部材15は、図10に示すように、被覆シート5の縁部5aが挟み込まれた状態でこの被覆シート5をのり面4aに固定する。固定部材15は、図3図4及び図6に示す固定部材10と同一構造であり、図7図8及び図10に示す固定ボルト15aと、固定ナット15bと、座金15cと、図7及び図10に示す穴部15dと、定着剤層15eなどを備えている。固定ボルト15aは、図7図8及び図10に示すように、被覆シート5の縁部5aの外側を通過するように、裏面側積層部材12及び表面側積層部材13を貫通し、のり面4aに定着される部材である。固定ボルト15aは、裏面側積層部材12から突出しており、裏面側積層部材12から表面側積層部材13に向かって貫通するように、裏面側積層部材12の貫通孔12a及び表面側積層部材13の貫通孔13aに挿入されている。図10に示す座金15cは、裏面側積層部材12に対して表面側積層部材13が傾斜したときに、固定ナット15bの座面と表面側積層部材13とが密着するように、固定ナット15bと表面側積層部材13との間に挟み込まれる球面座金などである。
【0046】
(被覆シートの接合方法)
次に、この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合方法について説明する。
予め工場で出荷前に所定の長さ及び幅に切断された被覆シート5が巻き取られた状態で現場に搬入される。被覆シート5が任意の長さ及び幅で巻き取られた状態で工場から現場に搬入されたときには、被覆シート5を現場で一旦展開して作業員が所定の長さ及び幅に切断し、切断後の被覆シート5を巻き取られた状態に戻す。次に、図1及び図2に示す盛土4ののり肩4bからのり尻4cに向かって作業員が被覆シート5をのり面4aに沿って展開する。このとき、図11(A)に示すように、隣接する被覆シート5間に所定の隙間が形成されるように、図1に示す被覆領域A内に被覆シート5を作業員が順次展開し、隣接する被覆シート5間の隙間などを調整して被覆シート5をのり面4a上に作業員が敷設する。その結果、図1に示す被覆領域A内ののり面4a上に被覆シート5が並べて敷設されて、被覆領域A内ののり面4aが被覆シート5によって被覆される。
【0047】
次に、図11(B)に示すように、図1に示す被覆領域Aの隣接領域A1に裏面側積層部材7を作業員が並べて大略配置し、隣接する被覆シート5の縁部5aとのり面4aとの間に裏面側積層部材7を作業員が挿入する。その結果、隣接する被覆シート5の縁部5aを塞ぐように、これらの被覆シート5の裏面とのり面4aとの間に裏面側積層部材7が並べて設置される。
【0048】
次に、図11(C)に示すように、締結ボルト9aに座金9dを作業員が差し込み、裏面側積層部材7の裏面側から表面側に向かって締結ボルト9aを貫通孔7aに所定の間隔で作業員が挿入する。次に、のり面4aの凹凸に沿って被覆シート5が被覆されるように、被覆シート5の皺などを除去しながら被覆シート5を正規位置に作業員が調整し配置するとともに、被覆シート5の位置に合わせて裏面側積層部材7を正規位置に作業員が調整する。このとき、のり面4aの凹凸によって、隣接する被覆シート5間の隙間が一定ではなく、被覆シート5が斜めに敷設されているようなときには、隣接する被覆シート5間の隙間が一定になるように、裏面側積層部材7を下敷きにして被覆シート5に定規を当ててこの被覆シート5を作業員が切断する。次に、表面側積層部材8の裏面側から表面側に向かって、この表面側積層部材8の貫通孔8aに締結部材9の締結ボルト9aを作業員が挿入する。その結果、隣接する被覆シート5間の隙間を塞ぐように、隣接する被覆シート5の縁部5a上に表面側積層部材8が並べて設置される。次に、締結ボルト9aに座金9dを作業員が差し込み、締結ボルト9aに締結ナット9bを装着して所定のトルクに達するまで締結ナット9bを作業員が締め付ける。このとき、裏面側積層部材7側の貫通孔7aと表面側積層部材8側の貫通孔8aとに固定部材11の固定ボルト11aを挿入可能なように、これらの貫通孔7a,8aが同じ位置になるように裏面側積層部材7と表面側積層部材8とを作業員が位置決めする。その結果、隣接する被覆シート5が裏面側積層部材7と表面側積層部材8との間に挟み込まれた状態で、この隣接する被覆シート5が接合されるとともに、隣接する被覆シート5がのり面4a上で接合される。
【0049】
次に、図11(D)に示すように、表面側積層部材8の貫通孔8aから裏面側積層部材7の貫通孔7aに向かって削孔用ドリルを作業員が挿入して、のり面4aの地盤に削孔用ドリルを使用して所定の深さで作業員が削孔(掘削)し、のり面4aに穴部10dが形成される。このとき、穴部10dの内径が固定ボルト10aの外径よりも大きくなるように、のり面4aを作業員が削孔して穴部10dが形成される。表面側積層部材8の貫通孔8a及び裏面側積層部材7の貫通孔7aよりも内径の大きい穴部10dを形成する場合には、ドリル先端部から径方向に開く切刃を有する拡径用ドリルを使用して、削孔用ドリルによって形成された下穴の内径よりも大きい内径の穴部10dを作業員が形成する。次に、穴部10dを削孔するときに発生した掘削排土を作業員が処理し、穴部10dの穴壁を作業員が清掃する。
【0050】
次に、図11(E)に示すように、穴部10dに挿入する固定ボルト10aの体積分を考慮して、表面側積層部材8の貫通孔8aから裏面側積層部材7の貫通孔7aを通じて定着剤Cを作業員が穴部10dに注入する。次に、表面側積層部材8の貫通孔8aから裏面側積層部材7の貫通孔7aに向かって穴部10dに固定ボルト10aを所定の間隔で作業員が挿入し、定着剤Cが硬化して定着剤層10eが形成されるまで待つ。穴部10dに固定ボルト10aを挿入した場合に、定着剤Cが穴部10dの開口部に達せず定着剤Cが不足するときには、穴部10dに不足分の定着剤Cを作業員が注入し、定着剤Cが穴部10dから溢れ出るときには、余って溢れ出た定着剤Cを作業員が取り除く。
【0051】
次に、図11(F)に示すように、定着剤Cが硬化した後に、表面側積層部材8の貫通孔8aから突出している固定ボルト10aに座金10cを作業員が差し込み、固定ボルト10aに固定ナット10bを装着して所定のトルクに達するまで固定ナット10bを作業員が締め付ける。その結果、隣接する被覆シート5が裏面側積層部材7と表面側積層部材8との間に挟み込まれた状態で、この隣接する被覆シート5が接合されるとともに、隣接する被覆シート5がのり面4aに固定される。
【0052】
(被覆シートの固定方法)
次に、この発明の第1実施形態に係る被覆シートの固定方法について説明する。
図12(A)に示すように、図1に示す被覆領域Aの周縁領域A2に位置する被覆シート5の縁部5aの外側に、図12(B)に示すように裏面側積層部材12を作業員が並べて大略配置し、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cと被覆シート5の縁部5aとの間に裏面側積層部材12を作業員が挿入する。その結果、被覆シート5の縁部5aの外側に裏面側積層部材12が位置するように、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cと被覆シート5の裏面との間に裏面側積層部材12が並べて設置される。
【0053】
次に、図12(C)に示すように、締結部材14の締結ボルト14aに座金14dを作業員が差し込み、裏面側積層部材12の裏面側から表面側に向かって締結ボルト14aを貫通孔12aに所定の間隔で作業員が挿入する。次に、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cの凹凸に沿って被覆シート5が被覆されるように、被覆シート5の皺などを除去しながら被覆シート5の縁部5aを正規位置に作業員が調整し配置するとともに、被覆シート5の縁部5aの位置に合わせて裏面側積層部材12を正規位置に作業員が調整する。このとき、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cの凹凸によって、被覆シート5が斜めに敷設されているようなときには、裏面側積層部材12の中心線と被覆シート5の縁部5aとが平行になるように、裏面側積層部材12を下敷きにして被覆シート5に定規を当ててこの被覆シート5を作業員が切断する。次に、表面側積層部材13の裏面側から表面側に向かって、この表面側積層部材13の貫通孔13aに締結部材14の締結ボルト14aを作業員が挿入する。その結果、被覆シート5の縁部5aの外側に表面側積層部材13が位置するように、この被覆シート5の縁部5a上に表面側積層部材13が並べて設置される。次に、締結ボルト14aに座金14dを作業員が差し込み、締結ボルト14aに締結ナット14bを装着して所定のトルクに達するまで締結ナット14bを作業員が締め付ける。このとき、裏面側積層部材12側の貫通孔12aと表面側積層部材13側の貫通孔13aとに固定部材15の固定ボルト15aを挿入可能なように、これらの貫通孔12a,13aが同じ位置になるように裏面側積層部材12と表面側積層部材13とを作業員が位置決めする。その結果、被覆シート5の縁部5aが裏面側積層部材7と表面側積層部材8との間に挟み込まれた状態で、被覆シート5の縁部5aがのり面4a、のり肩4b及びのり尻4c上に位置決めされる。
【0054】
次に、図12(D)に示すように、表面側積層部材13の貫通孔13aから裏面側積層部材12の貫通孔12aに向かって削孔用ドリルを作業員が挿入して、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cの地盤に削孔用ドリルを使用して所定の深さで作業員が削孔(掘削)し、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cに穴部15dが形成される。このとき、穴部15dの内径が固定ボルト15aの外径よりも大きくなるように、のり面4a、のり肩4b及びのり尻4cを作業員が削孔して穴部15dが形成される。表面側積層部材13の貫通孔13a及び裏面側積層部材12の貫通孔12aよりも内径の大きい穴部15dを形成する場合には、拡径用ドリルを使用して穴部15dを作業員が形成する。次に、穴部15dを削孔するときに発生した掘削排土を作業員が処理し、穴部15dの穴壁を作業員が清掃する。
【0055】
次に、図12(E)に示すように、穴部15dに挿入する固定ボルト15aの体積分を考慮して、表面側積層部材13の貫通孔13aから裏面側積層部材12の貫通孔12aを通じて定着剤Cを作業員が穴部15dに注入する。次に、表面側積層部材13の貫通孔13aから裏面側積層部材12の貫通孔12aに向かって、穴部15dに固定ボルト15aを所定の間隔で作業員が挿入し、定着剤Cが硬化して定着剤層15eが形成されるまで待つ。穴部15dに固定ボルト15aを挿入した場合に、定着剤Cが穴部15dの開口部に達せず定着剤Cが不足するときには、穴部15dに不足分の定着剤Cを作業員が注入し、定着剤Cが穴部15dから溢れ出るときには、余って溢れ出た定着剤Cを作業員が取り除く。
【0056】
次に、図12(F)に示すように、定着剤Cが硬化した後に、表面側積層部材13の貫通孔13aから突出している固定ボルト15aに座金15cを作業員が差し込み、固定ボルト15aに固定ナット15bを装着して所定のトルクに達するまで固定ナット15bを作業員が締め付ける。その結果、被覆シート5の縁部5aが裏面側積層部材12と表面側積層部材13との間に挟み込まれた状態で、被覆シート5の縁部5aがのり面4a、のり肩4b及びのり尻4cに固定される。
【0057】
この発明の第1実施形態に係る被覆シートの接合構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態には、隣接する被覆シート5間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シート5の縁部5aの裏面に裏面側積層部材7が積層されており、隣接する被覆シート5間の隙間を塞ぐように、これらの隣接する被覆シート5の縁部5aの表面に表面側積層部材8が積層されている。また、この第1実施形態では、隣接する被覆シート5の縁部5aが表面側積層部材8と裏面側積層部材7との間に挟み込まれるように、この表面側積層部材8とこの裏面側積層部材7とを締結部材9が締結する。このため、従来の遮水防草シートのような粘着テープを使用せずに、簡単な接続構造によって被覆シート5を短時間に簡便に接合することができる。また、従来の遮水防草シートのようなのり枠や溝形鋼などの各種の押さえ金具を遮水防草シートの敷設後に設置する作業が不要になるため、施工時間が短縮化され安価に施工することができる。さらに、従来の遮水防草シートのような隣接する遮水防草シートに跨って帯状の遮水防草シートを貼り付けて接合する必要がなくなり、被覆シート5を無駄に消費することがなく材料費を大幅に低減することができる。
【0058】
(2) この第1実施形態では、裏面側積層部材7が平板であり、表面側積層部材8がこの平板に弾性力を作用させる板ばねである。このため、弾性を有する簡単な構造の板ばねによって、隣接する被覆シート5の縁部5aを簡便に接合することができる。また、隣接する被覆シート5の縁部5aを板ばねの弾性力によって平板との間に挟み込む構造であるため、のり面4aに凹凸があっても被覆シート5同士を簡単に接合することができる。さらに、裏面側積層部材7が平板であるため、この平板を下敷きとして利用し被覆シート5を簡単に切断し被覆シート5の形状を整えることができる。
【0059】
(3) この第1実施形態では、隣接する被覆シート5間の隙間を通過するように、裏面側積層部材7及び表面側積層部材8を締結ボルト9aが貫通し、この締結ボルト9aに締結ナット9bが締結される。このため、従来の遮水防草シートのようなアンカー材を遮水防草シートに貫通させて地盤に打設する作業が不要になり、貫通孔から植物が成長するのを防ぐことができる。
【0060】
(4) この第1実施形態では、裏面側積層部材7及び表面側積層部材8をのり面4aに固定部材10が着脱自在に固定する。このため、隣接する被覆シート5を接合した状態でこの被覆シート5をのり面4aに確実に固定することができる。また、被覆シート5が損傷したときには、固定部材10をのり面4aから取り外して、新品の被覆シート5と迅速に交換して取り付けることができる。
【0061】
(5) この第1実施形態では、隣接する被覆シート5間の隙間を通過するように、裏面側積層部材7及び表面側積層部材8を貫通し、のり面4aに固定ボルト10aが定着されており、この固定ボルト10aに固定ナット10bが締結される。このため、従来の遮水防草シートのようなアンカー材を遮水防草シートに貫通させて地盤に打設する作業が不要になり、貫通孔から植物が成長するのを防ぐことができる。
【0062】
(6) この第1実施形態では、のり面4aの穴部10dと固定ボルト10aとの間に充填された状態でこの固定ボルトを定着剤層10eが定着させる。このため、モルタルなどの定着剤Cを穴部10dに注入して、アンカー材として機能する固定ボルト10aを太くすることができ、固定ボルト10aの本数を減少させることができるため、施工の省力化や経済化を図ることができる。
【0063】
この発明の第1実施形態に係る被覆シートの固定構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、被覆シート5の縁部5aの裏面に裏面側積層部材12が積層され、被覆シート5の縁部5aの表面に表面側積層部材13が積層されている。また、この第1実施形態では、表面側積層部材13と裏面側積層部材12との間に被覆シート5の縁部5aが挟み込まれるように、この表面側積層部材13とこの裏面側積層部材12とを締結部材14が締結し、裏面側積層部材12及び表面側積層部材13をのり面4aに固定部材15が着脱自在に固定する。このため、従来の遮水防草シートのようなのり肩やのり尻における掘削や埋戻し作業を省略することができ、施工の省力化や経済化を図ることができる。
【0064】
(2) この第1実施形態では、裏面側積層部材12が平板であり、表面側積層部材13がこの平板に弾性力を作用させる板ばねである。このため、弾性を有する簡単な構造の板ばねによって、被覆シート5の縁部5aを簡便に固定することができる。また、裏面側積層部材12が平板であるため、この平板を下敷きとして利用し被覆シート5を簡単に切断し被覆シート5の形状を整えることができる。
【0065】
(3) この第1実施形態では、被覆シート5の縁部5aの外側を通過するように、裏面側積層部材12及び表面側積層部材13を締結ボルト14aが貫通し、この締結ボルト14aに締結ナット14bが締結される。このため、従来の遮水防草シートのようなアンカー材を遮水防草シートに貫通させて地盤に打設する作業が不要になり、貫通孔から植物が成長するのを防ぐことができる。
【0066】
(4) この第1実施形態では、被覆シート5の縁部5aの外側を通過して裏面側積層部材12と表面側積層部材13とを貫通し、のり面4aに固定ボルト15aが定着されており、この固定ボルト15aに固定ナット15bが締結される。このため、従来の遮水防草シートのようなアンカー材を遮水防草シートに貫通させて地盤に打設する作業が不要になり、貫通孔から植物が成長するのを防ぐことができる。
【0067】
(5) この第1実施形態では、のり面4aの穴部15dと固定ボルト15aとの間に充填された状態でこの固定ボルト15aを定着剤層15eが定着させる。このため、定着剤Cを穴部15dに注入して、アンカー材として機能する固定ボルト15aを太くすることができ、固定ボルト15aの抵抗力を簡単に増大させることができる。その結果、従来の遮水防草シートのようなのり肩やのり尻における掘削や埋戻し作業を省略することができるとともに、固定ボルト15aの本数を減少させることができるため、施工の省力化や経済化を図ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
以下では、図1図12に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図13に示す接合構造6は、図3図5及び図6に示す表面側積層部材8とは異なり、図13に示すように表面側積層部材8の両端部を略直角に折り曲げた挟み込み部8bを備えている。図14に示す固定構造11は、図7図9及び図10に示す表面側積層部材13とは異なり、図14に示すように表面側積層部材13の両端部を略直角に折り曲げた挟み込み部13bを備えている。表面側積層部材13は、例えば、金属製又は合成樹脂製の屈曲板であり、金属製の場合には平鋼の両縁部を略直角にプレス加工して形成され、合成樹脂製の場合には一体成型によって形成される。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0069】
(第3実施形態)
図15に示す固定部材15は、隙間調整部15fを備えている。隙間調整部15fは、表面側積層部材13と裏面側積層部材12とが一定の間隔をあけて被覆シート5の縁部5aを挟み込むように、この表面側積層部材13とこの裏面側積層部材12との間の隙間を調整する部材である。隙間調整部15fは、被覆シート5と略同じ厚さを有する金属製又は合成樹脂製の帯状部材であり、表面側積層部材13と裏面側積層部材12との間の隙間を一定にするスペーサとして機能する。隙間調整部15fは、例えば、被覆シート5を帯状に切断した帯状部材がダミーとして利用される。隙間調整部15fは、被覆シート5の縁部5aが挟み込まれる側とは反対側の表面側積層部材13の縁部と裏面側積層部材12の縁部との間に挟み込まれている。
【0070】
この第3実施形態に係る被覆シートの固定構造には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第3実施形態では、表面側積層部材13と裏面側積層部材12とが一定の間隔をあけて被覆シート5の縁部5aを挟み込むように、この表面側積層部材13とこの裏面側積層部材12との間の隙間を隙間調整部15fが調整する。このため、表面側積層部材13と裏面側積層部材12とが傾いた姿勢で被覆シート5の縁部5aを挟み込むのを防止し、表面側積層部材13と裏面側積層部材12との間に被覆シート5の縁部5aを均等に挟み込み、被覆シート5をのり面4aに確実に固定することができる。
【0071】
(第4実施形態)
図16に示す接合構造6は、図5及び図13に示す締結ボルト9aとは異なり、図16に示すように締結ボルト9aの頭部が裏面側積層部材7の表面に溶接などによって固定されている。同様に、図17に示す固定構造11は、図9及び図14に示す締結ボルト14aとは異なり、図17に示すように締結ボルト14aの頭部が裏面側積層部材12の表面に溶接などによって固定されている。この第4実施形態では、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、図5図9図13及び図14に示すような裏面側積層部材7,12の貫通孔7a,12aに締結ボルト9a,14aを作業員が挿入する作業が必要ないため、組立作業を短時間で実施することができる。
【0072】
(第5実施形態)
図18及び図19に示す接合構造6は、図6に示す固定ボルト10aとは構造が異なる。図20及び図21に示す固定構造11は、図10に示す固定ボルト15aとは構造が異なる。図18図21に示す固定ボルト10a,15aは、例えば、中空鋼管の端部又は全長に雄ねじ部が形成されている。固定ボルト10a,15aは、図19及び図21に示す注入口10g,15gと、図18図21に示す排出口10h,15hなどを備えている。図19及び図21に示す注入口10g,15gは、固定ボルト10a,15aの内部に定着剤Cを注入する部分である。注入口10g,15gは、固定ボルト10a,15aの端部に形成されている。図18図21に示す排出口10h,15hは、固定ボルト10a,15aの内部に注入される定着剤Cをこの固定ボルト10a,15aの外部に排出する部分である。排出口10h,15hは、固定ボルト10a,15aと穴部10d,15dとの間の隙間に定着剤Cを充填するための吐出穴として機能し、固定ボルト10a,15aの側面を貫通して形成されている。
【0073】
次に、この発明の第5実施形態に係る被覆シートの接合方法とその固定方法について説明する。
図19及び図21に示す穴部10d,15dをのり面4aに作業員が削孔した後に、固定ボルト10a,15aを穴部10d,15dに作業員が挿入する。次に、図中二点鎖線で示す注入装置側の注入口の雌ねじ部を、固定ボルト10a,15a側の注入口10g,15gの雄ねじ部と噛み合わせて、注入口10g,15gを密閉した状態で注入装置から固定ボルト10a,15aに定着剤Cが加圧注入される。その結果、注入口10g,15gから注入された定着剤Cが固定ボルト10a,15a内に流入すると、この定着剤Cが排出口10h,15hから流出し、固定ボルト10a,15aと穴部10d,15dとの間の隙間に定着剤Cが流入し定着剤Cが充填される。
【0074】
この発明の第5実施形態に係る被覆シートの接合構造とその固定構造には、第1実施形態〜第4実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第5実施形態では、固定ボルト10a,15aの内部に注入される定着剤Cをこの固定ボルト10a,15aの外部に排出口10h,15hが排出する。このため、固定ボルト10a,15aを穴部10d,15dに挿入した状態で定着剤Cを最適な量だけ穴部10d,15dに注入することができる。
【0075】
(第6実施形態)
図22に示す接合構造6は、図6図18及び図19に示す固定ボルト10aとは異なり、図22に示すように固定ボルト10aをのり面4aに直接打ち込む構造である。同様に、図23に示す固定構造11は、図10図20及び図21に示す固定ボルト15aとは異なり、図23に示すように固定ボルト15aをのり面4aに直接打ち込む構造である。この第6実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態に加えて、穴部10d,15d及び定着剤層10e,15eを形成する必要がなく、固定作業を短時間に終了することができる。
【0076】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、被覆シート5によってのり面4aを被覆する場合を例に挙げて説明したが、原地盤を切り取った土構造物である切取(切土)を被覆シート5によって被覆する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、鉄道の盛土4を例に挙げて説明したが、道路、宅地造成地などの盛土についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、被覆シート5によって傾斜面を被覆する場合を例に挙げて説明したが、被覆シート5によって水平面を被覆する場合についてもこの発明を適用することができる。
【0077】
(2) この実施形態では、のり面4aの左右方向で隣接する被覆シート5を接合構造6によって接合する場合を例に挙げて説明したが、のり面4aの上下方向で隣接する被覆シート5を接合構造6によって接合することもできる。また、この実施形態では、裏面側積層部材7,12が平板であり、表面側積層部材8.13が板ばねである場合を例に挙げて説明したが、裏面側積層部材7,12が板ばねであり、表面側積層部材8.13が平板である場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、表面側積層部材8,13が湾曲板又は屈曲板である場合を例に挙げて説明したが、表面側積層部材8,13を複数折り曲げた板に形成することもできる。
【0078】
(3) この第1実施形態では、現場組立時に裏面側積層部材7,12の貫通孔7a,12aから締結ボルト9a,14aを挿入する場合を例に挙げて説明したが、工場出荷時に裏面側積層部材7,12の貫通孔7a,12aから締結ボルト9a,14aを予め挿入した状態で、裏面側積層部材に締結ボルト9a,14aを溶接などによって固定しておくこともできる。また、この第5実施形態及び第6実施形態では、接合構造6の固定ボルト10aに定着剤Cを加圧注入する場合を例に挙げて説明したが、固定構造11の固定ボルト15aについても固定ボルト10aと同一構造にして定着剤Cを加圧注入することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 車両
2 軌道
3 路盤
4 盛土
4a のり面(地表面)
4b のり肩
4c のり尻
5 被覆シート
5a 縁部
6 接合構造
7 裏面側積層部材
8 表面側積層部材
9 締結部材
9a 締結ボルト
9b 締結ナット
10 固定部材
10a 固定ボルト
10b 固定ナット
10d 穴部
10e 定着剤層
10g 注入口
10h 排出口
11 固定構造
12 裏面側積層部材
13 表面側積層部材
14 締結部材
14a 締結ボルト
14b 締結ナット
15 固定部材
15a 固定ボルト
15b 固定ナット
15d 穴部
15e 定着剤層
15f 隙間調整部
15g 注入口
15h 排出口
A 被覆領域
1 隣接領域
2 周縁領域
C 定着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図19
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