(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、そのような通信システムにおけるシステム性能を改善するための通信方法、構成要素、およびシステムを提供する必要があり、または代替として、少なくとも、有益な代替策をユーザに提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、複数のスロットを含むフレームを使用して通信する複数の端末とマルチアクセス受信機とを備える多元接続スロッテド(multiple access slotted)無線通信システムにおける端末の動作のための方法が提供され、各端末は、送信を行うためのアクティブ状態と、その間は端末が送信を行うことを差し止められる非アクティブ状態とを有し、マルチアクセス受信機は、第1の視野を有し、フレームの各スロットにおいて視野内の端末からの最大でm個の送信を正常に復号するように構成され、方法は、
フレームのスロットの間にメッセージを送信するステップと、
1つまたは複数の送達確認メッセージを受信するステップと、
受信された1つまたは複数の送達確認メッセージを使用して、送信されたメッセージがマルチアクセス受信機によって正常に受信されたかどうかを判定するステップと、
送信したメッセージが正常に受信されたと端末が判定した場合、少なくとも送信遅延時間の間、非アクティブ状態に入るステップと
を含む。
【0011】
一形態では、送信遅延時間は、少なくとも、端末がマルチアクセス受信機の視野内にある残留時間である。
【0012】
一形態では、1つまたは複数の送達確認メッセージは、すべて肯定応答(ACK)メッセージであり、送信したメッセージがマルチアクセス受信機によって正常に受信されたかどうかを判定するステップは、端末に向けられた送達確認メッセージを受信するステップを含む。
【0013】
一形態では、1つまたは複数の送達確認メッセージは、すべて否定応答(NACK)メッセージであり、送信したメッセージがマルチアクセス受信機によって正常に受信されたかどうかを判定するステップは、端末に向けられた送達確認メッセージを受信しないステップを含む。
【0014】
一形態では、1つまたは複数の送達確認メッセージは、フレームの次のスロットにおいて送信を開始する前に送信される。
【0015】
一形態では、少なくとも1つの送達確認メッセージは、スロット内のすべての送信に共通の送達確認状態を含むスロット送達確認メッセージである。スロット送達確認メッセージは、スロット識別子を含むことができる。一形態では、フレームは、n個のスロットを含み、1つまたは複数の送達確認メッセージは、L個のスロット送達確認メッセージを含み(ここで、L≦n)、L個の各スロット送達確認メッセージは、各ビットがスロットに対応する、nビットのメッセージ、送達確認されるL個のスロットの各々についてのlog
2nビットの識別子を含む、Llog
2nビットのメッセージ、または送達確認されるスロットの数Lと、その後に続く、L個のスロットの特定のサブセットの識別子とを含む、
【数1】
ビットのメッセージを含み、端末は、メッセージがその中で送信されたスロットのスロット識別子が、受信されたスロット送達確認メッセージの1つの中に存在するかどうかを判定することによって、送信されたメッセージがマルチアクセス受信機によって正常に受信されたかどうかを判定する。
【0016】
一形態では、送信されたメッセージは、端末識別子を含み、1つまたは複数の送達確認メッセージの少なくとも1つは、端末識別子を含む端末固有の送達確認メッセージであり、端末は、端末固有の送達確認メッセージを使用して、送信されたメッセージがマルチアクセス受信機によって正常に受信されたかどうかを判定する。
【0017】
一形態では、1つまたは複数の送達確認メッセージを受信するステップは、
端末識別子を提供されたときに2進値出力を生成するハッシュ関数hを受信するステップであって、ハッシュ関数は、送達確認される1組の端末のうちの端末識別子が入力されたときに、第1の2進値を出力し、入力された端末識別子が送達確認される1組の端末のうちに存在しない場合、相補的な2進値出力を生成するように生成され、1つまたは複数の送達確認メッセージを送信するステップは、ハッシュ関数を送信するステップを含み、送信されたメッセージがマルチアクセス受信機によって正常に受信されたかどうかを判定するステップは、端末識別子をハッシュ関数に提供するステップと、送信されたメッセージが正常に受信されたかどうかを判定するために2進値出力を使用するステップとを含む、ステップ
をさらに含む。
【0018】
一形態では、第1の2進値は、0であり、システムがK
total個の端末を備える場合、ハッシュ関数は、2を法とする行列ベクトル乗算がMb(i)=0となるような、log
2K
total列、l行の2進行列Mであり、ここで、b(i)は、整数iの2進展開を含む、長さがlog
2K
totalの2進ベクトルであり、右辺は、すべての要素が0の長さがlのベクトルであり、端末識別子は、整数iである。
【0019】
一形態では、方法は、フレームのスロットの間にメッセージを送信するステップの前に、以下のステップ、すなわち、
フレーム内でメッセージを送信するべきかどうかを判定するステップと、
フレーム内のスロットを選択するステップであって、フレームのスロットの間にメッセージを送信するステップが、フレームの選択されたスロット内でメッセージを送信するステップを含む、ステップと
をさらに含む。
【0020】
一形態では、フレーム内でメッセージを送信するべきかどうかの判定は、送信の確率pを使用して判定される。送信の確率pは、成功しなかった各送信の後に増加し得る。送信の確率pは、送信遅延時間の間、0に設定され得、送信の確率pは、送信遅延時間が終了した後、時間とともに増加し得る。
【0021】
一形態では、フレーム内のスロットを選択するステップは、
端末が先行フレームのスロット内でメッセージの送信に成功しなかったかどうかを判定し、端末が成功しなかった場合、次のフレーム内の対応するスロットを選択するステップ
を含む。
【0022】
一形態では、送達確認メッセージは、NACKメッセージであり、フレーム内のスロットを選択するステップは、
スロットがその中で選択されるフレームの前の先行フレーム内で送信された1つまたは複数のNACKメッセージを受信するステップと、
フレーム内のすべてのスロットからなる1組を取得し、NACKメッセージが先行フレーム内の対応するスロットに関連付けられた、フレーム内の各スロットを除外することによって、スロットがその中で選択されることになるフレーム内で1組の利用可能なスロットを決定するステップと、
1組の利用可能なスロットからスロットを選択するステップと
を含む。
【0023】
一形態では、端末は、ウェイト状態をさらに備え、方法は、
端末がマルチアクセス受信機の視野内にあるかどうかを判定するために、通信チャネルをモニタリングするステップであって、ウェイト状態にある間に端末によってマルチアクセス受信機が検出されると、端末は、端末がマルチアクセス受信機に送信するメッセージを有する場合はアクティブ状態に、または端末がマルチアクセス受信機に送信するメッセージを有さない場合は非アクティブ状態に入り、アクティブ状態または非アクティブ状態にある端末が、マルチアクセス受信機を検出しない場合、端末は、ウェイト状態に入る、ステップ
をさらに含む。
【0024】
一形態では、マルチアクセス受信機は、通信チャネルにおいてビーコン信号を送信し、通信チャネルをモニタリングするステップは、
ビーコンの有無について通信チャネルをモニタリングするステップ
をさらに含む。
【0025】
一形態では、マルチアクセス受信機は、知られた軌道を辿り、方法は、
現在時刻、端末の位置、およびマルチアクセス受信機の知られた軌道に基づいて、端末がマルチアクセス受信機の視野内にあるかどうかを判定するステップであって、端末が、それ自体が視野内にあると判定し、端末がウェイト状態にある場合、端末は、マルチアクセス受信機に送信するメッセージを有する場合はアクティブ状態に、またはマルチアクセス受信機に送信するメッセージを有さない場合は非アクティブ状態に入り、非アクティブ状態にある端末が、それ自体が視野内にないと判定した場合、端末は、ウェイト状態に入る、ステップ
をさらに含む。
【0026】
第2の態様によれば、複数の端末を備える多元接続無線通信システムにおけるマルチユーザ受信機の動作のための方法が提供され、マルチユーザ受信機は、フレームの各スロットにおいて複数の端末からのm個の送信を同時に受信するための受信機と、受信された送信を復号するためのマルチユーザ復号器とを備え、方法は、
1つまたは複数の端末から1つまたは複数の送信を受信するステップと、
受信された1つまたは複数の送信を復号しようと試み、受信された各送信を正常に復号する尤度の推定を獲得するステップと、
1つまたは複数の送達確認メッセージを送信するステップであって、送達確認メッセージの1つまたは複数は、尤度推定に基づいた予想送達確認である、ステップと
を含む。
【0027】
一形態では、受信された送信の完全な復号は、予想送達確認メッセージを送信した後まで遅延させられる。
【0028】
第3の態様によれば、複数の端末を備える多元接続無線通信システムにおけるマルチユーザ受信機の動作のための方法が提供され、マルチユーザ受信機は、フレームの各スロットにおいて複数の端末からのm個の送信を同時に受信するための受信機と、受信された送信を復号するためのマルチユーザ復号器とを備え、フレームは、n個のスロットを含み、
方法は、
1つまたは複数の端末から1つまたは複数の送信を受信するステップと、
受信された1つまたは複数の送信を復号しようと試みるステップと、
1つまたは複数の圧縮された送達確認メッセージを生成するステップと、
1つまたは複数の圧縮された送達確認メッセージを送信するステップと
を含む。
【0029】
さらなる形態では、1つまたは複数の圧縮された送達確認メッセージを生成するステップは、
L個のスロット送達確認メッセージを生成するステップであって(ここで、L≦n)、L個の各スロット送達確認メッセージは、各ビットがスロットに対応する、nビットのメッセージ、送達確認されるL個のスロットの各々についてのlog
2nビットの識別子を含む、Llog
2nビットのメッセージ、または送達確認されるスロットの数Lと、その後に続く、L個のスロットの特定のサブセットの識別子とを含む、
【数2】
ビットのメッセージを含み、1つまたは複数の圧縮された送達確認メッセージを送信するステップは、L個のスロット送達確認メッセージを送信するステップを含む、ステップ
を含む。
【0030】
さらなる形態では、各送信は、端末識別子を含み、1つまたは複数の圧縮された送達確認メッセージを生成するステップは、
端末識別子を提供されたときに2進値出力を生成するハッシュ関数hを生成するステップであって、ハッシュ関数は、送達確認される1組の端末のうちの端末識別子が入力されたときに、第1の2進値を出力し、入力された端末識別子が送達確認される1組の端末のうちに存在しない場合、相補的な2進値出力を生成するように生成され、1つまたは複数の圧縮された送達確認メッセージを送信するステップは、ハッシュ関数を送信するステップを含む、ステップ
を含む。
【0031】
さらなる形態では、第1の2進値は、ゼロであり、システムがK
total個の端末を備える場合、ハッシュ関数は、2を法とする行列ベクトル乗算がMb(i)=0となるような、log
2K
total列、l列の2進行列Mであり、ここで、b(i)は、整数iの2進展開を含む、長さがlog
2K
totalの2進ベクトルであり、右辺は、すべての要素が0の長さがlのベクトルである。
【0032】
さらなる形態では、ハッシュ関数のサイズは、衝突閾値未満のハッシュ衝突確率に基づいて選択され、ハッシュ衝突確率は、受信機の視野内にある端末の予想数に基づいて推定される。
【0033】
第4の態様によれば、複数の端末を備える多元接続無線通信システムにおいて使用するためのマルチユーザ受信機が提供され、マルチユーザ受信機は、フレームの各スロットにおいてm個の送信を同時に受信するための受信機と、受信された送信を復号するためのマルチユーザ復号器とを備え、マルチユーザ受信機は、第1の態様の方法を実行するように構成される。
【0034】
第5の態様によれば、複数の端末を備える多元接続無線通信システムにおいて使用するための端末が提供され、端末は、送信機を備え、マルチユーザ受信機は、フレームの各スロットにおいてm個の送信を同時に受信するための受信機と、受信された送信を復号するためのマルチユーザ復号器とを備え、端末は、第2の態様の方法を実行するように構成される。
【0035】
第6の態様によれば、第3の態様に従って構成される複数の端末と、第2の態様に従って構成されるマルチアクセス受信機とを備える多元接続無線通信システムが提供される。
【0036】
第7の態様によれば、複数のスロットを含むフレームを使用して通信する複数の端末とマルチアクセス受信機とを備える多元接続無線通信システムにおける1組のネットワーク・パラメータのうちのネットワーク・パラメータを最適化するための方法が提供され、各端末は、送信を行うためのアクティブ状態と、その間は端末が送信を行うことを差し止められる非アクティブ状態とを有し、マルチアクセス受信機は、第1の視野を有し、フレームの各スロットにおいて視野内の端末からの最大でm個の送信を正常に復号するように構成され、ネットワーク・パラメータは、(p,n,m,ε)を含み、pは、アクティブ端末がフレーム内で送信することに決定する確率であり、nは、フレーム当たりのスロットの数であり、mは、単一のスロットにおいてマルチユーザが正常に復号できる同時送信の数であり、εは、マルチアクセス受信機の視野内にある間に端末がメッセージを正常に送信することに失敗する確率であり、ネットワーク・パラメータを最適化する方法は、
ネットワーク・パラメータを選択し、λ
*を最適化するように、q=1−pQ(m,λ)、および
【数3】
を数値的に解くステップであって、qは、フレーム内での送信に成功した端末の比率であり、Qは、ガンマ関数であり、K
0は、各フレームにおいて視野内に入った新しい端末の数であり、Fは、端末がその間視野内にあるフレームの数であり、λ=k/n、k=pKであり、Kは、視野内のアクティブ端末の数である、ステップ
を含む。
【0037】
一形態では、方法は、受信機によって実行され、受信機は、システム・パラメータに対する変更を複数の端末に送信する。加えて、または代替として、方法は、分散された最適化方法として、複数の端末各々において実行される。一形態では、受信機は、視野内のアクティブ端末の数Kを端末に送信し、または代替として、各端末は、フレームの間に送信された送達確認メッセージの数をカウントすることによって、視野内のアクティブ端末の数Kを推定する。一形態では、送信確率は、失敗した送信の試みの数に依存する。
【0038】
第8の態様によれば、複数の端末を備える多元接続無線通信システムにおいて使用するためのマルチユーザ受信機が提供され、マルチユーザ受信機は、フレームの各スロットにおいてm個の送信を同時に受信するための受信機と、受信された送信を復号するためのマルチユーザ復号器とを備え、マルチユーザ受信機は、第6の態様の方法を実行するように構成される。
【0039】
第9の態様によれば、複数の端末を備える多元接続無線通信システムにおいて使用するための端末が提供され、端末は、送信機を備え、マルチユーザ受信機は、フレームの各スロットにおいてm個の送信を同時に受信するための受信機と、受信された送信を復号するためのマルチユーザ復号器とを備え、端末は、第6の態様の方法を実行するように構成される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明では、同じ参照文字は、どの図においても同じ部分または対応する部分を示す。
【0042】
次に、パケット(またはメッセージ)が正常に受信されたかどうかを端末に伝えるために、マルチユーザ受信機からのフィードバックが使用される、マルチユーザ通信システムの実施形態を説明する。このフィードバック信号または送達確認メッセージは、そのパケットが正常に受信された端末に送信される信号などの肯定応答(ACK)、またはそのパケットが正常に受信されなかった端末に送信される否定応答(NACK)とすることができる。その後、そのような情報は、端末が再送できるかどうか、またいつ再送できるかを制御するアクティビティ状態を設定するために、ユーザ端末によって使用することができる。たとえば、アクティブ端末が、メッセージを送信し、送達確認メッセージを受信した(ACKを受信した、またはNACKを受信しなかった)場合、アクティブ端末は、非アクティブ状態に移行し、それ以降、視野内にある間は再送を行わない。ビーコンの使用、またはシステム最適化のための方法など、他の態様も説明する。
【0043】
共用される物理通信媒体は、多数のチャネルに分割することができる。これらのチャネルは、時分割多元接続システムではタイム・スロット、周波数分割多元接続システムでは周波数スロット、直交周波数分割多元接続システムでは副搬送波、または符号分割多元接続システムでは拡散シーケンスとすることができる。より一般的には、スロットは、これらのいずれかの混成とすることができ、(複数の送信アンテナおよび/または受信アンテナの使用からもたらされる自由度を含む)システムの全自由度の何らかのサブセットに対応する。媒体をチャネルに分割する基礎的な方法にかかわらず、これらのチャネルを「スロット」と呼ぶものとする。スロットが直交することを要求はしないが、多くの場合、スロットは直交するように選択される。時間が長さT秒のフレームに分割され、フレーム当たりn個の利用可能なスロットが存在すると仮定する(上で提供されたスロットについての非常に汎用的な定義を念頭におかれたい)。フレームおよびスロット境界に合意できるほど端末は十分に同期が取れていると仮定する(スロット境界は時間、周波数、または他の何らかのシグナリング次元において定義され得ることに留意されたい)。
【0044】
マルチアクセス受信機は、フレームの各スロットにおける送信(すなわち、メッセージまたはパケット)を同時に受信するための受信機と、同じスロット内で異なる端末によって行われたいくつかの同時送信を正常に復号することが可能なマルチユーザ復号器とを備える。マルチユーザ受信機は、ソフト復号器(たとえば、ビタビまたはトレリスに基づいたものなど)を使用して実施することができる。すなわち、受信機は、スロット内におけるいくつかの衝突をうまく処理することができる。実際には、正常に復号できるスロット内の同時送信の数は、受信信号対雑音比、各端末と受信機との間の無線チャネル伝搬特性、および使用されているマルチユーザ復号器の種類を含む、様々なシステム・パラメータに依存する。説明を簡単にするために、マルチユーザ受信機は、単一のスロット内でm個(m≧1)の同時送信を正常に復号できると仮定する。より詳細な受信機特性が分かっている場合、それらを容易に考慮することができる。占有者(occupant)の合計がm個以下であるスロット内で端末が送信を行う場合、送信は成功であると言われ、それ以外の場合、送信は失敗であると言われる。
【0045】
一実施形態による通信システム1のアーキテクチャの概略図が、
図1に示されている。通信システム1は、ラベルTXで表される複数の端末20と、ラベルRXで表される少なくとも1つのマルチユーザ受信機10とを含む。受信機は、システム内の端末のいくつかを含むことができるが、一般にすべてを含むことはできない視野30を有する。ラベルTXで表される端末は、メッセージまたはパケット(2つの用語は交換可能に使用される)を受信機RXに送信すること、および任意選択で互いに送信し合うことを望む。近くの端末は、互いのローカル通信22を受信できることがある。そのような端末のグループをローカル・グループと呼ぶ。
図1では、2つのローカル・グループ(31、32)が視野内に配置され、第3のローカル・グループ33は視野外に配置されている。受信機は、(ローカル・グループを形成する端末の通信範囲内にあり得たとしても)ローカル・グループの一部ではない個別の端末20’とも通信することができる。
【0046】
各フレームにおいて、1つまたは複数の端末は、受信機10にメッセージ21またはデータを送信し、受信機は、端末に1つまたは複数の送達確認メッセージ11を送信(またはブロードキャスト)する。一実施形態では、送達確認メッセージは、すべて肯定応答(ACK)メッセージであり、否定応答(NACK)メッセージは、送信されない。したがって、この実施形態では、端末は、送信が受信機によって正常に受信されたかどうかを常に判定して、パケット・ロスを回避することができる。端末からのすべての送信に送達確認を行う必要がない場合、帯域幅がさらに効率的に使用される。別の実施形態では、すべての送達確認メッセージは、否定応答(NACK)メッセージであり、肯定応答メッセージは、送信されない。
この場合、端末は、NACKメッセージを受信しない限り、メッセージが正常に受信されたと仮定する。受信されなかった送信にだけ送達確認が行われるので、やはり、これも帯域幅を効率的に使用する利点を有する。しかしながら、送信が行われたことを受信機が検出することができず、そのため、NACKメッセージが送信されない場合など、状況によっては、これはパケット・ロスを引き起こし得る。いくつかの実施形態では、ACKメッセージとNACKメッセージの両方が、受信機によって送信される。すべてのメッセージに(肯定または否定の)送達確認が行われるので、これは追加のオーバヘッドを生じさせるが、端末は、ACKまたはNACKを受信しない場合、メッセージが正常に受信されなかったと仮定することができ、再送を試みることができるので(すなわち、ACKまたはNACKのないことはNACKを意味する)、パケット・ロスのないことが保証される。
図1に示される例示的な実施形態では、システム1は、肯定応答(ACK)メッセージ11をもっぱら生成するように構成される。送達確認のタイプ(ACK/NACK)が問題ではない場合、これらを単に送達確認メッセージと呼ぶことにする。送達確認メッセージは、この目的専用の論理チャネル上で、または別の既存の制御チャネルもしくはフィードバック・チャネル上で送信することができる。送達確認メッセージは、フレームの次のスロット内で送信が開始される前に(たとえば、スロットの終了時もしくはスロット境界の間など、多かれ少なかれ直ちに)送信することができ、またはフレームの終了時に、もしくは次のフレームの一部としてさえ送信することができる。いくつかの実施形態では、端末が成功しなかった場合、現在(次)のフレーム内の同じ(または対応する)スロットを再利用できるように、送達確認は、次のフレーム内で送信が開始される前に送信され、または次のフレームの対応するスロットが開始する直前にさえ送信される。送達確認メッセージは、スロット固有とすることができ(すなわち、送達確認タイプもしくは状態がスロット内のすべての送信に適用され)、または端末固有とすることができる。送達確認メッセージは、送達確認メッセージを受信した端末によって、送達確認メッセージに関連付けられたスロットまたは端末が決定できるように、送達確認タイプ(たとえば、1=ACK、0=NACKである1ビット)、スロット識別子、および/または端末識別子を含むことができる。送達確認メッセージは、フレームの指定されたスロット内で(すなわち、フレームと同期を取って)、またはフレームとは独立に送信することができる。送達確認メッセージは、送信と同じチャネル内で送信することができ、または(専用送達確認チャネルを含む)異なる制御チャネル上で送信することができる。
【0047】
上で説明されたように、マルチユーザ受信機は、最大でm個の同時送信を正常に復号することが可能である。すなわち、受信機は、スロット内における最大でm個の衝突をうまく処理することができる。スロット内にm個よりも多くの送信が存在した(すなわち、m個よりも多くの端末がパケットを送信しようと試みた)場合の受信機の挙動は、受信機の構成、復号アルゴリズム、送信特性またはチャネル特性(例えば、雑音レベル)などに基づいて様々であり得る。いくつかの場合、受信機は、これらの送信のうちのm個は正常に復号できるが、残りの送信を復号できないことがある。他の場合には、受信機が正常に復号できる送信の実際の数は、m個よりも小さいことがあり、他のいくつかの場合には、受信機は、スロット内の送信のいずれも完全に復号に失敗する(すなわち、すべての送信が失敗する)ことがある。正常に復号できる送信の数にかかわらず、いくつかの実施形態では、受信機は、送信を行ったすべての端末識別子を依然として決定できることがあるが、端末からのすべての送信のうちのいくつかについては、メッセージまたはパケットの残りのデータ部を正常に復号できないことがある。そのような場合、受信機は、送信が正常に復号できなかった端末に否定応答メッセージを依然として送信できることがある。他の実施形態では、受信機は、他の送信が行われたことを検出できることがあるが、これらの送信の識別子を決定できないことがある。そのような場合、受信機は、スロット・ベースの送達確認を送信することができる。たとえば、受信機は、送信が正常に復号された端末には、端末固有の肯定応答を送信することができ、スロット内で送信を行ったすべての残りの端末が、送信の送達確認ステータス(失敗)を通知されるように、スロット・ベースの否定応答を送信することができる(明快にするため、端末固有の肯定応答は、スロット全体についての否定応答よりも優先され、またはそれを無効にする)。
【0048】
図2は、一実施形態による、第1のフレーム構造200を示している。この実施形態では、フレーム210は各々、n個のスロット220に分割される(実施形態では、n=3)。各スロット230は、その間に(1...jで指定される)複数の端末がメッセージ(またはデータ・パケット)21をマルチアクセス受信機に送信するデータ部231と、その間にマルチアクセス受信機が送達確認メッセージ11を端末に送信する送達確認部232とを含む。送達確認は、スロット固有または端末固有とすることができる。スロット固有の送達確認メッセージは、そのスロット内で送信した端末から受信したすべての送信について共通の送達確認メッセージである。これは、たとえば、マルチユーザ受信機が、そのスロット内のいずれかの端末のパケットを正常に復号することに失敗した場合に適用される。端末固有の送達確認は、特定の各端末を宛先とする送達確認メッセージである。たとえば、受信機は、特定のスロット内において端末のサブセットだけを正常に復号することがあり、その場合、(システム構成に応じて)、ACKメッセージが、それらの端末だけに送信され、または代替として、NACKメッセージが、そのスロット内において送信が復号されなかった端末にだけ送信される。送達確認メッセージが別のチャネル上で送信され、データ・チャネルと同期していない場合、端末が送達確認メッセージを受信するまでに、1つまたは複数のフレーム分の遅延が存在することがある。すなわち、端末がフレームのスロット内で送信を行う場合、次のフレーム内の対応するスロットまでに、端末は送信の成功について知らないことがある。
【0049】
図3は、別の実施形態による、第2のフレーム構造300を示している。先のように、各フレーム210は、n個のデータ・スロット310に分割され、n個のデータ・スロット310の間に、(1...kで指定される)複数の端末20は、n個のスロットのうちの1つを選択し、メッセージ21(またはデータ・パケット)をマルチアクセス受信機に送信する。フレームの間に送信を行ったk個の端末20に、すべての送達確認メッセージ11をブロードキャストするための追加の送達確認スロット312が、フレームの末尾に提供される。先に説明されたように、送達確認メッセージは、スロット固有または端末固有とすることができる。
【0050】
図4は、一実施形態による、送達確認スロット構造400である。送達確認スロット410は、送達確認タイプ420(たとえば、ACKもしくはNACK)、および/または1つもしくは複数の識別子422(たとえば、ID1、ID5、ID8)を含むことができる。これらは、スロット識別子、もしくは端末固有の識別子とすることができ、またはたとえば、送達確認メッセージがデータ・チャネルと同期が取れていない別のチャネル上で送信される場合、フレーム識別子とすることさえできる。システムがACKだけを送信するように、またはNACKだけを送信するように構成される場合、送達確認タイプ・フィールドは省くことができる。代替として、スロットのフォーマットは、送達確認タイプと、それに続く識別子とを含む、フィールドの組が反復したものとすることができ、または組は、入れ替える(すなわち、識別子の後に送達確認タイプが続く)ことができる。他のフィールド(たとえば、プリアンブル、CRCなど)も含まれ得る。
【0051】
端末の各々は、ウェイト状態、アクティブ状態、および非アクティブ状態と呼ばれる、いくつかの主な動作モードまたは状態を有する。ウェイト状態の間、端末は、ローカル・グループ内の他の端末と通信することができ、したがって、ウェイト状態は、代替送信/ウェイト状態とも呼ばれる。つまり、マルチアクセス受信機10の視野30内にない端末は、(ウェイト状態と呼ばれる)代替送信/ウェイト状態にある。それらがマルチアクセス受信機の視野内にあり、送信するべきメッセージ(たとえば、データ・パケット)をいったん有すると、それらは、アクティブ状態に入る。それらがメッセージの送信に一度成功すると、それらは、視野から出るまで、非アクティブ状態に入り、視野から出た後、ウェイト状態に戻る。いくつかの実施形態では、端末が送信するべき別のメッセージを有し、他の基準が満たされる場合、端末は、非アクティブ状態からアクティブ状態に再び入ることが可能になる。特定のマルチアクセス受信機の視野を出た後、ある時間が過ぎてから(たとえば、次回の衛星通過時に)、端末が視野に再び入った場合、または端末が別の受信機の視野に入った場合、端末は、アクティブになることが可能になる。一実施形態による、これらの状態間における端末の動作の方法のフローチャートが、
図5Aに示されており、動作モードおよびそれらの間の遷移についてのさらなる詳細を以下で説明する。
【0052】
便宜的に、端末20が最初にウェイト状態502にあると仮定する。このモードでは、端末20は、視野30の外にあり、マルチユーザ受信機10が出現するのを待っている。このモードにある端末のローカル・グループ(例えば、31)は、任意選択で、何らかの既存のプロトコルに従って互いに通信することができる。したがって、このモードは、代替送信/ウェイト状態と呼ばれることもあり、端末が、それ自体がマルチユーザ受信機の視野内にないと判定した場合、端末が別のプロトコルに従って動作(および送信)できることを示す。したがって、ウェイト状態502にある間、端末20は、視野(FOV)内にあるかどうかを判定しようと試みることができる(504)。端末は、FOV内にあると判定した場合、アクティブ状態に入ることができ(506)、FOV内にないと判定した場合、再びウェイト状態502を取る。
図5Bは、端末が視野内にあるかどうかを判定する(504)ための方法の一実施形態のフローチャートである。
【0053】
それ自体が視野30内にあるかどうかを端末が判定するのを支援するために、マルチアクセス受信機10は、その存在を視野内の端末に伝えるビーコン12を送信する(すなわち、任意選択で送信する)ことができる。このビーコン12は、この目的で特に送信される信号とすることができ、または何にせよ送信されることが必要とされる他の何らかの信号とすることができる(すなわち、端末によるこの信号の観測は、それ自体が受信機10のFOV内にあることを端末に示す)。特定のビーコン・チャネルであるか、それとも既存の送信であるかにかかわらず、そのような送信をどれもビーコン信号12と呼ぶものとする。ウェイト・モードでは、端末は、視野に入ったかどうかを判定するために、ビーコン・チャネルをモニタリングすることを定期的に(すなわち、時々)選択することができる。このビーコン・チェックは、定期的に、もしくはタイマに基づいて、もしくはスケジュールされた時間に基づいてトリガすることができ(すなわち、時間ソース566によって時間トリガ558を提供することができ)、または代替として、端末は、ビーコン・チャネルを継続的にモニタリングすることができる。したがって、
図5Bに示されるように、ビーコン・チェックがトリガされ(550)、ビーコンまたはフィードバック・チャネル554をモニタリングすることなどによって、ビーコンを検出する試みが行われる(552)。ビーコンが検出されない場合、端末は、次のビーコン・チェックがトリガされるまで(550)、ウェイト・モードに留まる。ビーコンが検出された場合(559)、端末は、視野内にあると判定する(570)。
【0054】
加えて、または代替として、端末が、それ自体がいつFOV内にあるかを推定できるように(560)、端末20に受信機の軌道を事前プログラムすることができ、または他の方法で(たとえば、制御チャネルを介して)受信機の軌道を提供することができる。この手法は、その天体暦データ562を提供できる、計画された(すなわち、知られた)飛行経路または知られた軌道を辿る低軌道衛星または長距離無人飛行機(UAV)によって運搬されるマルチアクセス受信機に特に適している。その後、端末は、自らの位置564および/または時刻566を使用して、視野内にあるかどうか、またはその間に視野内にある可能性が高い時間を(たとえば、天体暦データに基づいて)決定することができ、その後、視野内にある可能性が高い時間は、時間ソース566によって提供される現在時刻と比較することができる。一実施形態では、位置は、GPS受信機などの衛星測位受信機を使用して、または別の端末(たとえば、GPS受信機を有する近くの端末)から受信される信号、もしくはモバイル・ネットワークからなど、別のソースから受信される信号(例えば、セルID)を使用して決定される。代替として、端末が固定される場合、位置は、構成の間に事前プログラムすることができる。一実施形態では、端末は、オンボード・クロックを有し、またはGPS受信機を介して、もしくはたとえば、モバイル・ネットワークからのブロードキャスト時刻サービスを介して時刻を決定し、それは、ローカル・クロックを同期させるために使用することができる。一実施形態では、たとえば、端末がFOV内にあるという推定を、ビーコン・チェックを実行する(550)ためのトリガ568として使用することによって、端末は、ビーコン探索を、視野内にあると判定した時間に制限することができ、他の実施形態では(たとえば、ビーコンが送信されない場合)、端末は、視野内にある可能性が高いか(または高くないか)について自ら判定を行い(569)、適切に動作状態を変更する。
【0055】
その後、端末は、送信するべきデータまたはパケット508を有し、ビーコン信号を検出することなどによって受信機の視野内にあると判定した(504)場合、(まだアクティブ状態になければ)アクティブ状態に入る(506)。アクティブ状態にある(510)場合、各端末は、次のフレームでメッセージ(またはパケット)を送信するべきかどうかを(各フレームにおいて)判定する(512)。いくつかの実施形態では、端末は、送信の確率p(または送信確率)514を事前プログラムされ、または他の方法で決定し、これを使用して、次のフレームで送信を行うべきかどうかを判定する。各フレームにおいて、端末は、送信確率を乱数発生器から獲得された0と1との間の乱数と比較することができる。乱数が記憶または事前決定された送信確率以下である場合、端末は、送信を行うことに決定する。他の実施形態では、端末は、次のスロットで常に送信するように構成することができる(すなわち、p=1)。端末が送信しないことに決定した場合(516)、次のフレームにおいて、端末は、後続フレームで送信を行うべきどうかを判定するために、テスト512を再び繰り返す(すなわち、テストは独立である)。
【0056】
送信の確率pは、変更することができる。これは、(たとえば、フィードバック・チャネルを使用して)端末によって、または受信機によって変更することができ、フレームごとに(すなわち、時間とともに)変更することができる。以下で説明するように、値は、ある基準に基づいて最適値を決定する最適化方法によって獲得することができ、これは、適応パラメータ最適化プロセスにおいて端末によって実行することができ(522)、またはそれは、受信機によって、もしくは中央最適化プロセスの一環としてネットワーク運営センタにおいて実行することができる。異なる端末は、異なる送信の確率を使用することができる。確率は、システム負荷、先の送信の試みが成功しなかったかどうか、送信される情報の緊急性またはプライオリティ、データが生成されてから経過した時間、端末がどれだけ長く視野内にあり続けると予想されるか、次の衛星通過までの時間など、様々なネットワーク上および他の要因または情報を考慮することができる。たとえば、パケットが1つもしくは複数の先行フレームにおいて送信されなかった場合、またはパケットの送信が成功しなかった(すなわち、ACKが受信されない、もしくはNACKが受信された)場合、確率を増加させることができる。さらに、様々な要因または情報が組み合わされて、送信の確率になることができる。たとえば、システム負荷が中位の負荷範囲の間にあり、データが生成されてから経過した時間が(おそらく、その重要性のわりには)長期間である場合、送信するべきという決定を行うことができる。相対的な重要性に基づいて異なる要因に重み付けを行うために、重み付けを使用することができる。送信の尤度を低下させるために、負の重みまたは係数を使用することもできる。たとえば、端末が、衛星通過の間にすでに一度送信している(たとえば、パス536を介してテスト512に入る)場合、送信する機会を他の端末に提供するために、後続の送信を止めさせることができる。この場合、送信の確率は、送信後に0に設定することができ、最小送信遅延時間の間は0に維持することができ、または代替として、何らかのレートまたはレート関数(たとえば、減衰パラメータを有する指数関数)に従って時間とともに増加し得るようにすることができる。
【0057】
代替として、送信するべきかどうかの決定を行うために(512)、他の方法、閾値、または基準を使用することもできる。たとえば、ある状況(高プライオリティ・データ)において送信を行うことを保証するために、または高システム負荷など、ある状況において送信を行わないことを保証するために、または端末が衛星の通過当たり一度だけ送信する(すなわち、一度送信すると、送信の確率は0に設定され、端末がウェイト状態に入るまで、0に維持する)ことを保証するために、オーバライド基準を使用することができる。閾値ベースの手法では、1つまたは複数のシステム・パラメータまたは情報が、特定の閾値と比較され、そのような比較の結果は、送信するべきかどうかの判定を行うために使用される。たとえば、システム負荷がある閾値を上回る場合、端末は、送信しないことに決定することができる。
【0058】
端末は、次のフレームで送信することに決定すると、次のフレーム(または後続フレーム)内のスロットを選択しなければならない(520)。スロット選択は、多くの異なる方法で行うことができる。すべての端末は、同じ選択方法を使用することができ、端末のローカル・グループは、同じ選択方法を使用することができ、または端末は各々、独立に選択方法を選択することができる。この最後の場合、選択は、ランダムなもの、(たとえば、時間および/もしくは位置に依存した)決定論的なもの、またはマルコフ連鎖もしくは類似の過程などに基づいた確率的なものとすることができる。スロット選択は、適応パラメータ最適化情報522、フレーム送達確認メッセージ524、他のローカル端末送信525、または位置情報526に基づいて実行することができる。スロットがいったん選択されると、端末は、続いて、選択されたスロット内でパケット(またはメッセージ)を送信する(528)。その後、端末は、たとえば、フレーム送達確認メッセージ532の使用によって、パケットが受信されたかどうかを判定する(530)。その後、(システムの構成に応じて)、端末が肯定応答を受信した場合、または否定応答を受信しなかった場合、端末は、非アクティブ状態540に移行し、端末が視野内にあり続ける間、パケット、またはさらなるどのようなパケットも再送しようと試みない。送信が成功しなかった(すなわち、NACKあり、またはACKなしの)場合(534)、(任意選択で、端末が依然としてFOV内にあると判定された後)、端末は、次のフレームで送信するべきかどうかを再び決定することができる(512)。一代替実施形態では、パケットの送信に成功した後、非アクティブ状態に入る代わりに、端末は、代わりに、さらなるパケットを送信しようと試みることができる(536)。この場合、端末は、FOV内にあるかどうかを再び判定し(504)、任意選択で、(その状態にまだ入っていなければ)アクティブ状態に入り(506)、その後、次のフレームで送信するべきかどうかを判定する(512)。上で説明したように、端末がさらなるパケットを送信しようと試みている場合、送信の確率は、低い値に設定され、時間とともに増加し得るようにすることができる。別の実施形態では、端末は、パケットを送信した後、ある期間の間、(実際上、送信の確率を0に設定して)非アクティブ状態に入ることができ、何らかのタイム・アウトまたは遅延期間の後、依然としてFOV内にある場合、さらなるパケットを送信しようと試みる(すなわち、ブロック540からパス536に入る)ことができる。
【0059】
一実施形態では、スロット選択は、乱数発生器の結果に基づいて、ランダムに実行される。別の実施形態では、スロットを選択するために、南オーストラリア大学によって2013年8月14日に出願された「CHANNEL ALLOCATION IN A COMMUNICATION SYSTEM」と題する同時係属中の国際特許出願第PCT/AU2013/000895号において説明されるような、位置データ526を使用する地理ベースの手法が使用され、その出願の内容のすべては、参照により本明細書に含まれる。たとえば、地理的なスロット選択は、複数の地理的領域を含む、スロット計画データベースを使用することができ、各地理的領域は、1つまたは複数のスロットからなる組に関連付けられる。割り当ては、端末の地理的位置を含む地理的領域を決定し、決定された地理的領域に関連付けられた1つまたは複数のスロットからなる組からスロットを選択することによって実行することができる。割り当ては、グラフ彩色アルゴリズムを使用して実行することができる。地理的情報の使用は、視野内で使用される同じスロットが、重なり合わない視野内の他のどこかで再利用される、空間的再利用を可能にする。さらなる再利用を可能にするために、ドップラ情報を使用することができる。地理ベースのスロット割り当ては、送信機のローカル・グループのための1組のスロットを獲得するために使用することができ、端末による1組のスロット内でのスロットの選択は、端末のローカル・グループとローカルに調整される。
【0060】
スロット選択は、送達確認メッセージ524(フレームACK)に基づいて実行することができる。これは、端末による先行する送信、または他の端末による先行する送信に関する送達確認メッセージとすることができる。一実施形態では、端末は、別のフレーム(判定がいつ行われるかに応じて、先行するフレームまたは現在のフレーム)のスロット内での先行する送信が成功しなかったと判定した場合、次のフレーム内の同じスロットまたは対応するスロットを選択する。別の実施形態では、端末は、先行するフレームに応答して、または現在のフレームに応答して送信される送達確認メッセージに基づいてスロットを選択するが、どちらに基づくかは、スロット選択が、フレームの送信部分(例えば、中央)の間に行われるか(先行する送達確認を使用)、または現在のフレームの送信部分の後、かつ次のフレームの最初の送信スロットの前に(すなわち、フレーム境界で、またはフレーム境界周辺で)行われるかに依存する。この実施形態では、端末は、送信に応答して送信された肯定応答または否定応答のすべてを使用して、スロット利用可能性を判定する。これは、他の端末がどのように構成されるかについての知識と併せて使用することができる。たとえば、システムが肯定応答を送信するように構成され、送信に成功した端末が送信後に非アクティブ状態に入る場合、肯定応答が関連付けられたスロットは次のフレームにおいて利用可能である可能性が高いので(成功した端末は送信していないので)、端末はこれらのスロットを優先的に選択することができる。代替として、システムが否定応答を生成するように構成され、端末が、同じ(または対応する)スロットを優先的に選択して、後続のフレームにおける再送の試みのために使用する場合(たとえば、以下で説明するSOTDMAおよびその変形)、特定のスロットについての(または関連付けられた)否定応答が観測されたならば、(そのスロットで成功しなかった端末は次のフレーム内の同じスロットを使用することを選択する可能性が高いので)次のフレームにおけるそれ自体の送信を考慮して、端末はそのスロットを含まないことを選択することができる。
【0061】
より一般的に、送信を行うためのスロットを選択するステップは、1組の利用可能なスロットを生成するステップと、次に1組の利用可能なスロットからスロットを選択するステップとを含むことができる。1組の利用可能なスロットを生成するステップは、フレーム内のすべてのスロットを選択するステップと、次に何らかの基準または情報に基づいてスロットを除外するステップとを含むことができる。たとえば、上述の場合、第1のフレーム内で送信を行うためのスロットを選択するステップは、第1のフレームの前の先行フレームにおいて送信された1つまたは複数のNACKメッセージを受信するステップと、第1のフレーム内のすべてのスロットからなる組を取得し、NACKメッセージが先行フレーム内の対応するスロットに関連付けられた第1のフレーム内の各スロットを除外することによって、第1のフレーム内の1組の利用可能なスロットを決定するステップと、1組の利用可能なスロットからスロットを選択するステップとを含むことができる。他の場合、1組の利用可能なスロットは、送達確認メッセージ524(たとえば、NACKが受信されたスロット、またはACKが送信されなかったスロット)、端末の地理的位置526、ローカル端末の挙動についてのローカル調整もしくは知識525、または(たとえば、フィードバック・チャネルを介する)受信機からの他の情報などに基づくことができる。これは、様々な方法で実施することができる。たとえば、インデックスを各スロットに割り当てることができ、利用可能なスロットのインデックスを記憶するために、ベクトルまたは配列を使用することができる。スロットは、利用可能であると判定された場合、追加することができ、または利用可能でない、もしくは避けられるべきと判定された場合、ベクトルから削除することができる。2値論理を使用する他の効率的な方法を使用することもできる。
【0062】
加えて、または代替として、適応パラメータ最適化プロセス522などから得られる1つまたは複数の最適化パラメータ523を使用するスロット選択に対して、確率または統計ベースの手法を取ることができる。この実施形態では、たとえば、(すべてのスロットとすることができる)1組の利用可能なスロットからのランダム選択が使用される場合、スロットが選択される尤度を変更または設定するために、各スロットには重み付け係数が割り当てられる。避けられるべきスロットには、選択される尤度を低下させる重みを与えることができ、選択されるべきスロットには、選択される尤度を増加させる重みを与えることができる。この手法は、複数の端末がすべて、(たとえば、肯定応答が受信されたスロットに基づいて)同じ利用可能なスロットを選択する尤度を低下させるために使用することができる。重み付けは一般に相対的なものであり、一実施形態では、1の重みが基準であり、1よりも大きい値は大きな重みであり(可能性がより高い)、1よりも小さい値は低い重みである(可能性がより低い)ことに留意されたい。別の実施形態では、重みは0と1との間に制限することができ、0の重みは影響力なし(可能性が低い)を示し、1の重みは最大限の影響力(可能性が高い)を示す。他の重み付け方式も可能である。
【0063】
説明したように、端末は、メッセージ(またはパケット)の送信に成功したといったん判定すると、非アクティブ・モード540に入る。非アクティブ・モードでは、端末は、依然として視野内にあり、先に送信された端末のパケットは、受信機によって送達確認されている。一実施形態では、端末は、視野の外に出るまで、サイレントであり続ける。したがって、端末は、端末がFOV内にあるかどうかの判定を行うことができる(542)。端末は、たとえば、ビーコンを追跡することによって、または天体暦データを使用することによって、
図5Bに示された、ステップ504において使用されたものと同じプロセスを実行することができる。この手順は、端末が、それ自体がもはやFOV内にないと判定するまで(546)、継続的に、定期的に、または随時、繰り返して実行することができる(たとえば、ループ544)。端末は、いったん視野を出ると、代替送信/ウェイト・モード502に戻り、次回、端末が受信機(同じマルチアクセス受信機または別のマルチアクセス受信機)の視野内にあることを検出したとき(504)、アクティブ・モードに再び入ることができる。この動作モードは、各端末が、視野内にある時間当たり(たとえば、衛星通過当たり)1つのパケットを送信することを可能にし、利用可能な帯域幅を1つまたは少数の端末が支配する代わりに、視野内のすべての端末がデータを送信する機会を与えられる尤度を最大化するために使用することができる。この手法は、衛星通過の持続時間は10分などと短いけれども、通過が相対的に頻繁である、低軌道衛星またはUAV上に受信機が配置される場合に使用することができる。そのような動作モードでは、送信されるデータをどのように優先付けするかは、端末が内部で決定することができる。たとえば、いくつかのデータは、ある期間の間だけ関連性があることがあり、したがって、定められた収集期間内に送信されない場合、廃棄することができる。同様に、時間ベースの重み付け係数または関数を適用することができる。たとえば、データの重み(重要性)が時間とともに何らかの最大値まで増加し、その後、減少する、ガウス関数を使用することができる。ピークは、データ存続期間の中盤から終盤の付近に配置することができる。重要性が時間とともに緩やかに増加し、いったん満了時間に達すると急速に減少するように、非対称の重み付け関数を使用することができる。
【0064】
別の実施形態では、非アクティブ端末が、送信するべき新しいパケットを有する場合、それらは、多くの基準に応じて、一度(すなわち、まだ視野内にある間は)アクティブになることを許可され得る。たとえば、最小送信遅延時間の間、端末を強制的に非アクティブ期間に入れることができる。遅延時間の後、端末は、パス545を辿り、まだFOV内にあるかどうかを判定し(542または504)、まだある場合、アクティブ状態に入ることなどができる(506)。別の実施形態では、同じ視野内で端末が2回送信する尤度を低下させるために、送信の確率を制御することができる。たとえば、送信が成功した後、送信の確率は、0に設定することができ、その後、何らかのレートまたはレート関数(たとえば、減衰パラメータを有する指数関数)に従って、時間とともに増加し得るようにすることができる。送信の確率が0である期間の長さは、予想される通過時間の分数(たとえば、1/4、1/2など)に設定することができる。代替として、端末は、システム負荷、またはシステム負荷の変化率をモニタリングすることができる。たとえば、一実施形態では、受信機が、現在のシステム負荷(すなわち、視野内にある端末の数K)を示す信号をブロードキャストする。代替として、端末は、各フレームにおける肯定応答(または否定応答)524の数をカウントすることを介して、システム負荷Kを暗黙的に推定することもできる。システム負荷が閾値よりも低下した場合、またはシステム負荷が低下して行くレートが利用可能なシステム容量を示した場合、端末は、非アクティブ・モードからアクティブ・モードに再び入ることを許可され得る。別の例では、重なり合う視野を有することができる複数のマルチアクセス受信機が存在する場合、端末は、第2のマルチアクセス受信機の視野に入ったならば、アクティブ・モードに入り、第2のマルチアクセス受信機に送信することを許可され得る。いくつかの実施形態では、非アクティブ・モードに入る代わりに、端末は、ある期間の間、送信の確率を0に設定でき、または非アクティブ・モードは、0の送信の確率によって定義することができる。
【0065】
以下で提示するように、そのような通信システムにおける送達確認メッセージの使用は、開ループ通信システムと比較して、システム容量(したがって、効率)を改善するために使用することができる。さらに、送信後に端末を強制的に非アクティブ・モードに入れることによって、かつ/または視野内にある時間当たり一度(例えば、衛星通過当たり一度)だけ送信することを端末に許可することによって、システムは、スループットを増加させるように、かつ/またはデータを送信する機会をすべてのセンサが与えられる可能性を保証するように設計することができる。これは、所望のサービス品質基準が満たされ、または維持されることを保証するために使用することができる。
【0066】
さらに、以下で説明するように、送達確認メッセージは、たとえば、端末識別番号のハッシュを使用して、任意選択で圧縮することができる。ハッシュのサイズは、視野内にあると予想される端末の一群においてハッシュ衝突の確率が十分に小さくなることを保証するように選択することができる。これは、送達確認の送信に必要とされるリソースを削減する効果があり、端末の一群が大きい場合に有益である。
【0067】
フレーム当たりのスロットの数n、その間端末が視野内にあるフレームの数F、および送信の確率pは、事前決定もしくは事前プログラムされ、マルチアクセス受信機から端末に伝達され(521)、または先の送達確認もしくは他の情報の観測に基づいて端末によって適応的に最適化することができる(522)。これらのネットワーク・パラメータの最適化は、以下でより詳細に説明し、失敗確率の低下など、様々なサービス品質要件を満たすために、または与えられた端末の一群をサポートするのに必要とされるスロットの数を削減することなどによって、全体的なシステム効率を高めるために使用することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、マルチアクセス受信機は、特定のスロット内にある端末のパケットを実際に復号せずに、それらの復号に成功できる尤度を決定できることがある。この場合、受信機によって送信される送達確認メッセージは、関連する送信の復号に成功する尤度の推定に基づいた、予想送達確認とすることができる。
【0069】
これは、たとえば、初期時刻、周波数、および位相オフセットの推定を決定する、受信メッセージの初期捕捉構成要素だけを実行することによって達成することができる。受信機は、これらの推定を、復号尤度の記憶された受信機動作特性テーブルと比較することができる。このテーブルは、たとえば、分析またはコンピュータ・シミュレーションを使用して、事前決定し、受信機内に事前プログラムしておくことができる。代替として、それは、先行する復号の試みの結果に応じて、オンライン方式で更新することもできる。
【0070】
これを達成できる別の方法は、マルチユーザ復号器が復号を開始したときの、マルチユーザ復号器の内部パラメータの早期試験によるものである。たとえば、反復復号器では、反復につれての対数尤度値の変化(または残留雑音/干渉の変動)は、復号が成功する最終的な尤度を示すことができる。受信された送信の復号に後で成功できる可能性が非常に高いと受信機が確信している場合、受信機が(たとえば、現在のフレームにおいて)送達確認を送信し、送達確認メッセージを送信した後まで復号を遅らせることができるように、(一定または動的な)閾値を設定することができる。
【0071】
これは、信号を完全に復号するのに長い時間がかかり得る状況、またはエネルギー制約が原因で低電力/低速モードで受信機を動作させることが望ましい状況において有利である。別の動機は、(負荷バランシングまたは宇宙船バス・デューティ・サイクルが理由で)視野内により僅かな端末しか有さない場合には、信号を記憶しておいて後で復号することを受信機が望むことがある衛星システムにある。
【0072】
L個の成功した端末に肯定応答を(またはL個の成功しなかった端末に否定応答を)送信するために、受信機は、
Llog
2(K
total)ビット (1)
の情報を送信しなければならないと予想することができ、ここで、K
totalは、システム内の可能な端末の総数である。この素朴な手法では、受信機は、問題の端末に関連付けられた一意的な識別番号の2進展開を形成するために、log
2K
totalビットを使用し、通知されなければならない端末は、L個存在する。いくつかのアプリケーションでは、K
totalは、いずれか1つの時間に視野内にある端末の数であるKよりも著しく(数桁)大きいことがある。
【0073】
したがって、いくつかの実施形態では、必要とされる肯定応答または否定応答を送信するのに必要とされるフィードバックのビット数を削減することによって、ブロードキャストされる送達確認を圧縮するために、様々な圧縮方法を使用することができる。
【0074】
一実施形態では、スロット・ベースの送達確認が使用される。たとえば、いくつかのマルチユーザ復号アルゴリズムでは、復号器がスロット内のすべての端末の復号に成功できるか、またはスロット内のどの端末の復号にも成功できないのが一般的である。したがって、個々の端末を宛先とする送達確認を送信する代わりに、受信機は、送達確認の宛先を特定のスロット内のすべての端末にすることができる。すなわち、送達確認メッセージは、フレームのスロット内で受信されたすべての送信についての送達確認を行うために使用できるスロット送達確認メッセージである。スロット送達確認メッセージは、フレームのスロット内で受信されたすべての送信に共通の送達確認メッセージを含むことができ、任意選択で、スロット識別子(またはスロット・インデックス)を含むことができる。log
2K
totalと比較して、スロット送達確認は、
【数4】
を用いて達成することができる。
【0075】
(a)n個のスロットの各々のための1ビットのACK/NACK、または(b)L個のスロットの各々についてlog
2nビットの識別子を送信すること、または(c)最大でlog
2nビットを要する、肯定応答(もしくは否定応答)が行われるスロット数Lがいくつかを識別し、その後にL個のスロットからなる特定のサブセットの識別情報を付け加えることのいずれかを使用できるという事実から最小化が行われる。(c)の後半は、最大で
【数5】
ビットを要する。多くのアプリケーションでは、(2)は、log
2K
totalよりもはるかに小さくなり得る。
【0076】
別の実施形態では、送達確認メッセージのサイズを圧縮するために、端末識別番号(または端末識別子)のハッシュを使用することができる。ハッシュのサイズは、視野内にあると予想される端末の一群においてハッシュ衝突の確率が十分に小さくなることを保証するように選択することができる。これは、送達確認の送信に必要とされるリソースを削減する効果を有し、端末の一群が大きい場合に有益である。端末識別子のハッシュは、端末固有の送達確認メッセージが使用される(すなわち、送達確認メッセージが端末識別子を含む)場合に、最も大きい利益を提供する。しかしながら、ハッシュは、スロット識別子を圧縮するためにも使用できることに留意されたい。しかしながら、一般に、スロットよりも数桁多い端末が存在し(たとえば、システム内には100万以上の端末がある一方で、フレーム当たりのスロットはせいぜい1000程度であることがあり)、したがって、スロット識別子の圧縮から得られる利得は、端末識別子の圧縮から得られる利得ほどは大きくない。
【0077】
K
total個の端末が、整数i=0、1、2、...、K
total−1によってインデックス付けされるものとする。視野内にK個の端末が存在し、これらの端末のL個に肯定応答(または否定応答)が送信されなければならないと仮定する。これらL個の端末(または上で説明したように、L個のスロット)の各々を個々に識別する代わりに、送達確認を必要とする端末(またはスロット)に属するどのインデックスiでもh(i)=0となる性質を有する、ハッシュ関数h(・)を送信することができる。それは、2進値出力(1または0、真または偽)を生成するハッシュ関数hである。ハッシュ関数は、送達確認を行うべき1組の端末内にある端末識別子が入力された場合、ハッシュ関数が第1の2進値(たとえば、真または偽)を出力し、送達確認を行うべき1組の端末内に入力された端末識別子がない場合、ハッシュ関数が相補的な2進値出力(偽または真)を生成するように、受信機によって生成される。ハッシュ関数の1つの可能な例は、2を法とする行列ベクトル乗算が、
Mb(i)=0 (3)
となるような、log
2K
total個の列と、l<<Lであるl個の行とを有する2進行列Mであり、ここで、b(i)は、整数iの2進展開を含む、長さがlog
2K
totalの2進ベクトルであり、右辺は、すべての要素が0の長さがlのベクトルである。そのような行列Mは、対象とするL個の端末(またはスロット)に対応するL個の2進ベクトルが張る零空間の基底として見出すことができる。R.AhlswedeおよびG.Dueck、「Identification via channels」、IEEE Trans. Inform. Theory、vol.35、no.1、15〜29ページ、1989年において説明されている手法など、他のハッシュおよび識別方法も可能である。ハッシュ関数がいったん生成されると、それは、送達確認メッセージの一部として送信することができる。その後、ハッシュ関数を受信した端末は、端末識別子をハッシュ関数に入力し、送達確認がそれらに対するものかどうかを2進値出力に基づいて判定することができる。
【0078】
いくつかのアプリケーションでは、端末は、マルチユーザ受信機への伝達を望むだけでなく、他の近くの端末との通信も望むことがある。たとえば、端末は、環境センサに関連付けることができ、環境センサは、情報を交換し、ネットワーク全体のセンシング精度を高めることを可能にする目的で、ローカル無線センサ・ネットワークを形成する。端末間のデータ交換は、センサ・フュージョン・ハブ(sensor fusion hub)に返信する必要があるデータの量を低減することも可能にする。そのようなセンサ・ネットワークの動作および通信を制御するための既存のプロトコルが数多く存在する。
【0079】
いくつかの実施形態では、マルチユーザ受信機は、センサ・ネットワークから測定値を収集することを望む、移動データ収集器または断続的に利用可能なデータ収集器に対応することができる。たとえば、それは、低軌道衛星、または飛行機もしくはUAV上に搭載することができる。いくつかの実施形態では、端末は、互いに通信するための既存のプロトコルを有することができる。端末のローカル・グループは、マルチユーザ受信機との送信を(分散方式で、または何らかの中央制御ノードによって)調整できることがある。しかしながら、
図1に示されるように、視野は、多くのそのような分離されたローカル・グループを含むことができ、その各々はローカルには送信を調整するが、グローバルな調整はその中では行われない。
【0080】
1つの選択肢は、端末が、それ自体が視野内にあるときは、マルチユーザ受信機に送信するために既存のプロトコルを使用し続けることである。しかしながら、既存のプロトコルは、視野内に見え得る端末の数が増加したときに、それらをサポートするようには設計されていないことがある。したがって、全体的なシステム性能を改善する(たとえば、容量を増加させる、または失敗確率を低下させる)ために、端末は、マルチユーザ受信機の視野内にあることがいったん検出されると、任意選択で、異なる動作モードに入ることができる。このモードでは、端末は、上で説明したスロット・ベースの送信方式に従うことができる。端末は、いったん視野を出ると、他の動作モードに戻ることができる。
【0081】
端末のグループのローカル調整のための1つの方法は、自己組織化時分割多元接続(SOTDMA)として知られている。この方法は、自動船舶識別(Automatic Identification of Ships)海上システムにおいて使用される。SOTDMAでは、時間は、フレームに分割され、各フレームは、多数のタイム・スロットからなる(すなわち、上で説明したフレーム/スロット構造の特殊な場合)。SOTDMAグループに入ると、端末は、どのスロットが他の端末によってすでに要求されているかを判定するために、1つのフレームをリスンする。端末は、未使用スロットのプールから自らのスロットを選択する。その後、端末は、後続の各フレームにおいて、このスロットを使用して、自らの送信を行う。これは、SOTDMAグループのメンバが、スロット衝突を回避するのに役立つ。
【0082】
しかしながら、
図1に示されるように、受信機が低軌道(LEO)などのプラットフォーム上に配置される場合、受信機の視野内には、複数のローカルSOTDMAグループが存在し得る。しかしながら、各SOTDMAグループは独立に行動する(すなわち、グループ間で通信が調整されない)ので、これは、衛星上に搭載されたマルチユーザ受信機において、望ましくないスロット衝突を引き起こすことがある。この問題を回避し、マルチユーザ受信機における失敗率を低下させるために、端末は、衛星によってブロードキャストされる送達確認を使用して、フレーム内におけるスロットの選択を追加的に通知することができる。SOTDMAの下では、特定のスロットについての否定応答は、対応する端末が次のフレーム内の同じスロット内で再送を行うことを意味する。したがって、端末は、受信した否定応答を使用して、SOTDMAの原理を視野全体に拡張することができる。端末は、スロットまたはフレーム内で送信されたすべての送達確認をモニタリングして、SOTDMAグループを超える情報を獲得することができ、その後、この情報は、スロットを選択するときに端末によって利用することができる。システムがNACKを生成するように構成されるこの実施形態では、リスンする端末は、否定応答が返されたスロットを回避する(すなわち、選択しない)ことを選択することができる。端末は、いったん視野を出ると、ローカル・グループ内での標準的なSOTDMA動作に戻ることができる。
【0083】
メッセージの送信に成功した端末が非アクティブ状態に入るシステムとの関連では、この原理は、さらに一般的に、肯定応答と否定応答の両方を使用するように拡張することができる。端末は、スロットまたはフレーム内で送信されたすべての送達確認をモニタリングして、視野全体におけるスロット使用についての情報を獲得することができ、その後、この情報は、スロットを選択するときに端末によって利用することができる。特に、特定のスロットについての肯定応答は、対応する端末からの送信が正常に復号され、端末が次のフレームにおいて送信を行わず、したがって、使用するスロットが入手可能であることを意味する。したがって、システムがACKを生成するように構成される実施形態では、リスンする端末は、肯定応答が返されたスロットを優先的に選択するように構成することができる。
【0084】
無線通信ネットワークでは、一般に、構成可能なネットワーク・パラメータ、または実施固有のネットワーク・パラメータが数多く存在する。これらは、アクティブ端末がフレーム内で送信することに決定する確率p(送信の確率)、フレーム当たりのスロットの数n、単一のスロットにおいてマルチユーザが正常に復号できる同時送信の数m、マルチアクセス受信機の視野内にある間にメッセージを正常に送信することに端末が失敗する確率ε、その間端末が視野内にあるフレームの数F、システム内の端末の総数K
totalなどを含む。さらに、満たされる、または維持される必要がある、サービス品質、容量、およびシステム効率要件の範囲がしばしば存在し、したがって、コスト効率に優れたシステムを提供するために、ネットワーク・パラメータを最適に選択することが望ましい。さらに、ネットワークは動的であり、システム構成要素の移動性と組み合わされて、端末および受信機の数は時間とともに変化するので、ネットワーク・パラメータの値を定期的に更新して、または継続的にさえ更新して、システムの効率的な動作が継続するように保証することが望ましい。次のセクションでは、本明細書で説明したシステムの実施形態のためのネットワーク・パラメータの間の理論的な関係が開発され、開ループ・システムにまさるシステムの利点を説明し、かつ(p,n,m,ε)などのネットワーク・パラメータを最適化するための方法を開発するために、それが使用される。
【0085】
システムは、多数のスロット(時間、周波数、拡散シーケンス、組み合わせなど)に分割できる共用物理通信媒体を使用する。さらに、システムは、単一のスロット内でm個(m≧1)の同時送信を正常に復号できるマルチユーザ受信機を備える。
【0086】
視野内にk個の送信端末があり、n個の利用可能なスロットがあると仮定する。ランダム・アクセス手法の下では、各送信端末は、スロットをランダムに一様に選択する。その場合、m個の端末によって特定のスロットが選択される確率は、
【数6】
である。
【0087】
これは、
【数7】
によって良好に近似されることが知られている。
【0088】
これは、2項分布に対するよく知られたポアソン近似である。この近似を使用すると、スロットがm個より多くの端末を有する確率は、
1−Q(m+1,λ) (6)
であり、ここで、
【数8】
は、正規化不完全ガンマ関数である。
【0089】
ポアソン近似を維持しながら、P
succを、m個以下の端末によって占有されるスロット内に端末がある確率とする。次に、
【数9】
であることを確認することができる。
【0090】
m個以下の端末によって占有されるスロット内には、k
succ個(k
succ=kP
succ)の端末が存在する。P
fail=1−P
succを、m個よりも多くの占有者を有するスロット内に端末がある確率であると定義する。
【0091】
時間が長さT秒のフレームに分割され、フレーム当たりn個の利用可能なスロットが存在すると仮定する(上で提供されたスロットについての非常に汎用的な定義を念頭におかれたい)。フレームおよびスロット境界に合意できるほど端末は十分に同期が取れていると仮定する(スロット境界は時間、周波数、または他の何らかのシグナリング次元において定義され得ることに留意されたい)。
【0092】
単一のスロット内でm個以下の端末を復号する能力を有するマルチユーザ受信機の視野内にK個のアクティブ端末が存在するものとする。各フレームは、各端末に確率pで送信することを独立に選択させ、すなわち、
k≒pK (9)
である(実際に、E{k}=pKであり、近似はKが大きいと良好である)。p=1が有効であることに留意されたい。その場合、端末は、フレームごとに送信を行う。
【0093】
開ループ・システムでは、各送信端末は、送信が成功したのかどうかが分からず、アクティブであり続け、視野内にあるF個のフレームの各々において送信を繰り返す。これは、利用可能な物理媒体の非効率的な使用をもたらし、マルチユーザ受信機の失敗が原因で受信されないパケットの数を著しく増加させ得る。さらに、端末は、いつ受信機の視野内にあるのかさえ分からないことがあり、どの受信機によってもまったく受信され得ない信号を無益に送信することがある。これは、端末がバッテリ給電される場合に重要になり得る、端末のエネルギー効率を低下させる。本明細書で説明するシステムの実施形態では、これらの問題は、パケットが正常に受信されたかどうかを端末に伝えるためにマルチユーザ受信機からのフィードバック(すなわち、ACKまたはNACK)を使用することによって、またマルチユーザ受信機の存在を視野内にある端末に伝えるためにビーコンの送信を使用することによって対処される。端末は、肯定応答を受信した(または否定応答を受信しなかった)場合、非アクティブ状態に移行し、視野内にある間は再送を行わないように構成され、または視野内にある間は再送の尤度を低下させるように構成される。これは、視野内にあるたびごとに(たとえば、衛星通過のたびごとに)、すべての端末が少なくとも1つのパケットを送信する機会を与えられることを保証するように試みるシステム設計手法を促進する。すなわち、すべての端末に最低レベルのサービスを提供することの方が、特定の端末のスループットを保証することよりも好まれる。
【0094】
K
f、f=0、1、...、F−1を、f回失敗した端末の数とする。端末がf回失敗した場合、端末は状態fにあると言われる。したがって、状態fには、K
f個の端末が存在する。各フレームの開始時に、K
0個の新しい端末が視野に入る。その場合、K
0/T[端末/秒]は、視野内に入る端末の「到着率」と見なされ得る。端末は、いくつかの理由で視野内に到着すること(および後で出て行くこと)ができる。たとえば、端末は、移動性を有することがある。代替として、端末は、断続的にしかアクティブ化されず、またはスイッチをオンにされないことがある。別の例では、(たとえば、受信機が低軌道衛星または飛行機であり)、視野自体が移動することがある。視野内には、
【数10】
個の端末が存在する(上で説明したように、各端末は、視野外に移動するまでに、最大でF回の試みを有する)。
【0095】
各フレームにおいて、状態f=0、1、...、F−1にある端末は、3つの事柄のうちの1つを行うことができる。端末は、送信に成功できた場合、その後、成功状態に移行し、非アクティブになる。これは、確率pP
succで起こる。代替として、端末は、送信に成功できなかった場合、状態f+1に移行し、またはf=F−1ならば失敗状態に移行する。これは、確率p(1−P
succ)=pP
failで起こる。代替として、端末は、送信しない場合、状態f+1に移行し、またはf=F−1ならば失敗状態に移行する。これは、確率(1−p)で起こる。そのため、状態f=0、1、...、F−2にある端末は、確率
q@1−pP
succ=(1−p)+pP
fail (11)
で、状態f+1に移行する。
【0096】
送達確認を有さない開ループ・システムは、(視野内にある間は、すべての端末がアクティブに留まるので)q=1によってモデル化される。P
succについての上記の定義を用いると、qはmおよびλ=k/n=pK/nの関数であることが分かる。
図6は、平衡している各状態における端末の数を示している(600)。ノード610は、端末がある1組の第1の状態を表し、端末が移動できる1組の第2の状態も表す。各状態fにある端末の数K
fが、各ノードの隣に示されており(614、616)、視野に入る新しい端末の数K
0も示されている。F−2に対応する例示的な状態620を取り上げると、端末が存在し、送信後、端末は、送信が成功した場合、成功状態602に遷移し(624)、または確率qで送信が成功しなかった場合、次の状態F−1に遷移する(628)。安定した状態平衡では、K
fは、どのフレームでも同じであり続ける(したがって、これらの数量すべてからフレーム・インデックスを省いてある)。その場合、
K
f=qK
f−1=q
fK
0 (12)
であり、
【数11】
であり、これは、q<1の場合、
(1−q)K=(1−q
F)K
0 (14)
であることを意味する。
【0097】
1−qは、与えられたフレーム内で成功した端末の比率であることに留意されたい。同様に、1−q
Fは、視野内にある間にどこかの時点で成功した端末の比率である。k=pK、λ=k/nであることに留意すると、(14)を
(1−q)λn=(1−q
F)pK
0 (15)
ここで、q=1−pQ(m,λ)
と書き直すことができる。
【0098】
そのように、m、n、p、λ、およびK
0を結び付ける等式が得られる。qのp、m、λに対する依存を強調するために、q(p,m,λ)と書くことにする。有益な数値的結果を獲得ためにこの表現を使用できる、いくつかの方法が存在する。たとえば、p、m、および失敗確率εを固定した場合、(15)を解いて、最適なλ
*を、
λ
*=Q
−1(m,1−ε
1/F) (16)
として獲得するために、Mathematicaなどの標準的な数値ソフトウェアを使用することができ、ここで、Q
−1は、(Mathematicaなどのソフトウェアを使用して数値的に計算され得る)逆正規化ガンマ関数である。
図7は、一実施形態に従って、p=1、ε=10
−4、m=1、2、...、10について計算された、Fに対するλの最適値を表す曲線710のグラフ700である。
【0099】
p、m、εに対する依存を強調する必要がある場合、λ
*(p,m,ε)と書くことにする。さらに、nが固定されると仮定すると、各フレームにおいて視野内に到着する新しい端末の最大数として、
【数12】
が得られる。失敗の確率をこのように固定した場合、肯定応答(または否定応答)を有さないシステムが、λ
*n人のユーザをサポートできることに留意されたい。したがって、送達確認の使用を通して獲得される相対的な改善は、
【数13】
である。
【0100】
これは、一実施形態による、Fの関数としての相対利得を表す曲線810を10
−1から10
−5にわたる失敗確率εについて示すグラフ800である、以下の
図8に描かれている。Fが増加するにつれて、以下の漸近的な相対利得が得られる。
【数14】
【0101】
ε=10
−eである場合、この漸近線は、eln10によって良好に近似される。
【0102】
図6は、低軌道衛星との通信を必要とする例示的なシナリオについての数値的結果を示している。例では、衛星通過持続時間(すなわち、地球上の固定地点の上空のある高度に
衛星が見える時間の長さ)は、T
pass=600[秒]である。通過当たりのフレームの数F=T
pass/Tは、通過持続時間T
passと、再送間隔T[秒]とから計算される。フレーム当たりの利用可能なスロットの数は、n=T/0.025であり、これは、持続時間が25ミリ秒のタイム・スロットを有するシングル・キャリア・システムをモデル化している。等価的に、これは、10個の周波数チャネルを有する、持続時間が250ミリ秒のタイム・スロットをモデル化している。
【0103】
図9は、再送間隔Tに対する、サービスされる端末の最大数FK
0を表すグラフ900である。曲線の2つのグループが存在する。実線/破線曲線からなる各ペアは、ラベルm=1、2、...、5で表され、それは、衛星のマルチユーザ復号能力である。破線曲線910は、肯定応答または否定応答が使用されず、すべての端末がフレームごとに再送を行う、開ループ・システムに対応する。実線曲線920は、肯定応答または否定応答の使用を通して獲得される著しい改善を示している。曲線の両方のグループについて、p=1であり、送達確認が得られない端末は、確率1で再送を行うことを意味する。
【0104】
システム最適化は、オフラインで実行することができ、または様々なシステム・パラメータが変化したときに随時オンラインで更新することができる。これは、受信機、もしくは受信機と通信するネットワーク運営センタによって実行され、フィードバック・チャネルを介して端末に伝達することができ(521)、または以下で説明する方法の1つを使用して端末によって分散方式で実行することができる(522)。様々なネットワーク(またはシステム)・パラメータ(たとえば、F、n、p)は、最適化することができる。一実施形態では、システムは、サポート可能なユーザの数K=FK
0を最大化するように最適化される。これは、式(15)および式(17)を使用して達成することができる。たとえば、p、n、m、εを与えた場合、λ
*(p,m,ε)の最適値を数値的に解くことができ、その後、最適なFを決定することができる。
【0105】
関心のある多くのケースで、フレーム当たりのスロットの数nとフレームの数Fとの積は、一定のFn@Nになり得る。たとえば、時分割多元接続(TDMA)に基づくシステムでは、Nは、1回の衛星通過の間に利用可能なタイム・スロットの数とすることができる。複数の周波数チャネルを有するTDMAシステムでは、Nは、利用可能なタイム・スロットの数と利用可能な周波数チャネルの数との積とすることができる。
【0106】
図9は、N=T
pass/.025である、まさにそのような一例を示している。mの各値についての最適なフレーム持続時間T
pass/F(したがって、通過当たりのフレームの最適な数)は、
図9から読み取ることができる。N=nFと固定した場合、以下のように(17)からK=K
0Fを最大化することによって、フレームの数Fを最適化することができる。
【数15】
【0107】
上では、最大化を行う際の変数に依存しなかった項を除外した。α=1−ε
1/Fと定める場合、mの各整数値ついて
【数16】
を等価的に見出すことができ(これは、Mathematicaなどのソフトウェアを使用して数値的に容易に達成することができ)、これから、
【数17】
として、最適なF
*を決定することができる。
【0108】
これは、ネットワーク(またはシステム)・パラメータの数値的な最適化の一例に過ぎない。固定パラメータの他の組を与えた場合、残りの自由パラメータを最適化することが等しく可能である。たとえば、特定のユーザ数Kを与えて、失敗確率εを最小化することが望ましいことがある。別の例は、与えられた失敗確率およびユーザ数をサポートするのに必要とされる、マルチユーザ復号能力mを最小化する。当業者には、そのような最適化がいずれも、式(15)および式(17)を使用して達成できることが明らかである。
【0109】
上で説明した理論では、各アクティブ端末が同じ確率pで送信を行うことが仮定された。異なるアクティブ端末が異なる確率で送信できるようにすることで、システム最適化の柔軟性の程度が高まる。1つの可能性は、送信確率を端末の状態に依存させることであり、すなわち、(これまでにi回失敗した)状態iにある端末には、今度は確率p
iで送信させる。(15)に類似しているが、今度は、
【数18】
を、そのフレーム内で送信することを選択した端末がk個存在するときに、状態iにある端末が失敗する確率とする。上で提供されたものと同様の展開を使用して、以下の1組の関係、すなわち、
【数19】
を導出することができるが、以前は、εは、全体的な失敗確率(端末がF回の試みの後も失敗している確率)であり、kは、各フレームにおいて送信しようと試みる端末の数であり、K
iは、状態iにある端末の数である。
【0110】
今や、様々な有利なシステム最適化を実行することができる。たとえば、K
0を最大化すること、またはεを最小化することを選択することができる。しかしながら、q
iがkに依存し、kがp
iおよびK
iに依存し、p
iおよびK
iが今度はq
iに依存する関係は、後退代入の「永久ループ」を生じるので、これは簡単ではない。
【0111】
発明者らは、このループを破る方法を見出した。たとえば、失敗確率εを固定して(かつm、nを固定して)、K
0(視野内に到着した新しい端末の数)を最大化したい場合、数値的な方法を使用して、
【数21】
という制約の下で、
【数20】
を解く。
【0112】
追加の最適化変数kの導入が、望ましくない「ループ」を破る。(29)の右辺は失敗確率の代替表現であることが示され得るので、(27)は、
【数22】
によって置き換え得ることに留意されたい。同様に、固定された
【数23】
:について、失敗確率を最小化することも、すなわち、
【数25】
という制約の下で、
【数24】
を解くこともできる。
【0113】
発明者らが確立したフレームワークによって、多くの他の最適化が可能にされることが当業者には明らかであろう。たとえば、正常に復号されたパケットの平均「エイジ(age)」である
【数26】
を最小化しようとすることができる。
【0114】
ネットワーク・パラメータの最適化が端末によって分散方式で実行される実施形態では、マルチユーザ受信機は、端末を支援する情報を(たとえば、フィードバック・チャネル上で)提供することができる。一実施形態では、マルチユーザ受信機は、視野内の端末の数Kなど、現在のシステム負荷を示す信号をブロードキャストする。これは、フレームの数F、フレーム当たりのスロットの数n、または送信の確率pなど、様々なシステム・パラメータを適合させるために端末によって使用することができる。上で説明したように、これらはすべて、式(15)および式(17)に従って、または(21)および(22)の(任意選択で一覧にされた)解を介して、多様なシステム目的のために最適化することができる。利点は、これらのパラメータが、事前に一度だけ設定される代わりに、システム動作中にオンラインで最適化され得ることである。代替として、端末は、フレーム内で送信された肯定応答(または否定応答)の数をカウントすることを介して、システム負荷Kを暗黙的に推定することもできる。上で説明したように、この情報は、ネットワーク(またはシステム)・パラメータを適合させるために使用することができる。
【0115】
上で説明したように、システム・パラメータは、事前にオフラインで、またはオンライン・モードの適合で最適化することができる。最適化は、集中化され、受信機とともに配置されて行うことができ、または分散化され、端末において行うことができる。分散最適化を用いる場合、各端末は、異なる値のFおよびnを有し得ることに留意されたい。しかしながら、スロット境界は、依然として同じであり、各端末は、その識別番号または特定のスロット番号を宛先とする送達確認を依然として解釈できるので、これがシステムに悪影響を与える可能性は低い。むしろ、影響は、(すべての端末が同じ値を使用したシステムと比較して)最適性がごく僅か低下したシステムになること、および異なる端末が失敗パケットを異なる期間を用いて繰り返すことに結局はなり得ることになる可能性が高い。
【0116】
システムは、2012年9月21日に出願された「COMMUNICATION SYSTEM AND METHOD」と題するオーストラリア仮特許出願第2012903489号において説明される、システム・アーキテクチャに従って構成することができる。説明されたシステムの様々な特徴は、様々なハードウェア構成要素を使用して実施することができ、既存のハードウェア構成要素およびデバイスに組み込むこと、または既存のハードウェア構成要素およびデバイスに追加することができる。
【0117】
図10は、一実施形態による、通信システムの構成要素の概略図である。マルチアクセス受信機10は、m個の送信を同時に受信するための受信機、送信機(送受信機に組み合わされ得る)、1つまたは複数のアンテナを備える、通信モジュール18と、マルチユーザ復号器14と、符号化器16と、信号の復号、送達確認の生成、システム最適化の実行、および他の任意の支援動作など、マルチユーザ受信機の動作を制御するための、プロセッサ12および関連するメモリとを備える。マルチアクセス受信機は、スタンドアロン・モジュールもしくはデバイスとすることができ、または既存のプラットフォームもしくはデバイス30と統合することができる。マルチアクセス受信機は、LEO衛星、UAV、飛行機、または他の船舶などのプラットフォーム上に搭載することができる。支援プラットフォームは、(たとえば、最適化のための)処理支援など、システム・リソースを提供することができ、または他のデバイスもしくはシステム32と通信することができる。
【0118】
端末20は、送信機、受信機(送受信機に組み合わされ得る)、および1つまたは複数のアンテナを備える、通信モジュール28と、符号化器24と、復号器26と、端末の動作モードの制御、送達確認メッセージの処理、使用するべきスロットの選択、システム最適化の実行、および他の任意の支援動作のための、プロセッサ22および関連するメモリとを備える。端末は、データを送信し、外部センサもしくはデバイスからデータを受信するための通信手段、センサもしくはデバイスに接続するためのモジュールもしくはボードを有する、スタンドアロン・デバイスとすることができ、またはセンサもしくはデバイスがシステムを介して通信することを可能にする、プロトコル、データ、コード、命令などを記憶する通信チップセットなどの形態を取る、既存のセンサもしくはデバイス40に統合することができる。センサまたはデバイス40は、他のセンサ42または他のデバイス44に接続することができる。
【0119】
マルチアクセス受信機と端末は各々、受信機と送信機とを備え、合意されたプロトコルを使用して通信することができる。受信機は、ダウン・コンバージョン、フィルタリング、同期、初期捕捉、チャネル推定、復調、デインターリービング、および復号など、受信機関連機能を実行する。反復復号を含む反復技法が、チャネル・パラメータおよび送信シンボルの改善された推定を獲得するために実行され得る。マルチアクセス受信機は、2013年8月21日に出願された「MULTIUSER COMMUNICATION SYSTEM」と題するオーストラリア仮特許出願第2013903163号において説明されるような、反復ソフト干渉除去などの技法を実施することができ、その出願の内容のすべては、参照により本明細書に組み込まれる。反復ソフト干渉除去は、残留信号において1つまたは複数のユーザを捕捉しようと試みるステップと、捕捉された新しい各ユーザについて、ユーザについての1組のチャネル・パラメータを推定するステップと、新しいユーザを1組の捕捉されたユーザに追加するステップとを含むことができる。その後、受信機は、ユーザからの信号寄与のソフト推定およびユーザについての更新されたチャネル・パラメータを生成するために、1組の捕捉されたユーザのうちの各ユーザについて、ユーザについての現在のチャネル・パラメータを使用して、残留信号を復号しようと試みることができる。その後、残留信号から各ユーザについての信号寄与のソフト推定を差し引くことによって、残留信号を更新することができ、プロセスは、終了条件が満たされるまで繰り返すことができる。送信機は、信号の初期捕捉において受信機を支援するために、捕捉信号を追加することができる。送信機は、デジタル・アナログ変換、フィルタリング、適切な変調技法(PSK、QAM、GMSK、OFDMなど)を使用する選択された搬送波上への変調など、送信関連機能を実行する。送信機は、チャネル効果、干渉、および他の雑音源に対する送信のロバスト性を増加させる助けとなる、誤り制御コーディング、インターリービング、パイロット・データなどの挿入などの機能も実施することができる。一実施形態では、送信は、相対的に短く、VHFまたはUHF帯域内の相対的に狭い帯域幅(たとえば、1、2、5、10、20、40kHzなど)を占有する。
【0120】
マルチユーザ受信機からのフィードバックを使用して、パケットの受信に成功したかどうかを端末に伝える、通信システムの実施形態。この信号は、肯定応答(そのパケットの受信が成功した端末に送信される信号)、または否定応答(そのパケットの受信が成功しなかった端末に送信される信号)とすることができる。さらに、端末の動作モードは、端末が肯定応答を受信した(または否定応答を受信しなかった)場合、端末が非アクティブ状態に移行し、視野内にある間は再送を行わないように、またはやはり視野内にある間は引き下げられた送信の確率を有するように構成される。さらに、ビーコンまたは天体暦データの使用によって、端末は、視野内にあるかどうかを判定することができる。端末は、視野外にある間はウェイト状態に入ることができ、受信機(または別の受信機)の視野に再び入り、送信するべきパケットを有する場合、アクティブ状態に再び入ることができる。
【0121】
上で説明した数学的展開は、システム容量を増加させるために、または失敗確率を低下させるために、または与えられた端末の一群をサポートするのに必要とされるスロットの数を減少させるために、送達確認を使用する利点を明らかに示している。特に、式(18)は、固定された失敗確率について、送達確認が使用されない場合と比較した容量改善を定量化する。この改善の絶対量は、
図8および
図9に示されるように、相当なものであり得る。さらに、システムは、使用中に最適化することができ、異なるネットワーク・パラメータを最適化するように再構成することができる。
【0122】
システムは、異なるアプリケーションをサポートするためにも変更することができる。たとえば、一実施形態では、マルチユーザ受信機を有するLEO衛星は、100万以上の分散端末をサポートするために使用することができる。各フレームは、1000個の25msタイム・スロットから構成することができ、各端末は、約10分(600秒)の期間の間、視野内にあり続けることができる。他の実施形態では、受信機は、機上プラットフォーム(たとえば、UAV)または海上プラットフォーム上に配置することができる。そのような場合、視野内にある時間は、より長く(30分、60分、2時間、5時間、10時間、24時間など)、またはより短く(1分、2分、5分)することができる。スロット時間の長さも、変更することが可能である(たとえば、1ms、10ms、20ms、25ms、30ms、40ms、50ms、100ms、250ms、500ms、1sなど)。送達確認メッセージは、予想することができ、圧縮することができ(たとえば、スロット固有、またはハッシュされた端末識別子)、システム負荷を決定するために、またはスロット選択を支援するために、他の端末によって使用することができる。
【0123】
地上および海上のフィールド・センサ、ならびに産業用オートメーションおよび制御機器など、広い範囲に分散するセンサおよびデバイスをサポートするのに特に適した、マルチアクセス通信システムの実施形態が説明された。そのようなデバイスおよびセンサをサポートする能力は、気候変動、水、採掘、農業、防衛、および国家安全保障のための環境モニタリングなどの分野において、大きな経済的および環境的利益をもたらす可能性を有している。たとえば、潜在的なアプリケーションは、環境的、経済的、および国家安全保障の理由での、長距離海洋環境モニタリングとの通信のサポートを含む。そのようなセンサにとって、衛星通信または機上通信は、命令を出し、制御し、そのようなセンサ・データを抽出するための唯一の実行可能なソリューションである。別のアプリケーションは、リモート・モニタリングのための管理されていない接地センサをサポートするためのものである。そのようなセンサは、問い合わされた場合に、通過する衛星に報告を行うことができる。さらなるアプリケーションは、鉱業用の遠隔資産のモニタリングおよび制御である。リモート・ロケーションにある多数の採掘装置の一群は、主に既存の通信システムのコストが高いせいで、外界とのつながりを現在はほとんどまたはまったく有していない。これらの装置のリモート制御およびモニタリングは、事業上の決定および最適化(たとえば、燃料消費の削減、計画された保守の可視化、故障時間の短縮など)をサポートする。
【0124】
これらの高価値アプリケーションの多くは、中程度のデータ転送速度要件(キロビット毎秒)を有し、待ち時間が最大で数時間の、または数日にさえなる、断続的な通信を許容することができる。しばしば、アプリケーションは、地上通信ソリューションが存在しない、高い信頼性を有さない、(たとえば、防衛との関連で)否定される、または安全ではない、非常に遠く離れた地域にあるセンサを含む。これらの制約は、衛星通信または機上通信の使用を都合のよいものにする。既存の商用衛星サービスは、一般に他のアプリケーションのために設計されたものなので、そのようなセンサおよびデバイスにコスト効率の優れたサポートを提供しない。対照的に、説明した通信システムの実施形態は、そのようなセンサおよびデバイスとの改善された通信を可能にするために、または少なくとも提供するために使用することができる。
【0125】
当業者は、情報および信号が、様々な技術および技法のいずれかを使用して表され得ることを理解するであろう。たとえば、上の説明において言及され得た、データ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは磁気粒子、光学場もしくは光学粒子、またはそれらの任意の組み合わせによって表すことができる。
【0126】
当業者は、本明細書で開示した実施形態との関連で説明した、様々な説明的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズム・ステップが、電子的ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェア、または両方の組み合わせとして実施され得ることをさらに理解するであろう。ハードウェアとソフトウェアのこの交換可能性を明瞭に示すために、様々な説明的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップは、上では一般にそれらの機能に関して説明した。そのような機能がハードウェアとして実施されるか、またはソフトウェアとして実施されるかは、特定のアプリケーションと、システム全体に課される設計上の制約とに依存する。当業者は、特定の各アプリケーションについて様々な方法で、説明した機能を実施することができるが、そのような実施の決定が、本発明の範囲から逸脱すると解釈されるべきではない。
【0127】
本明細書で開示した実施形態との関連で説明した、方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接、プロセッサによって実行されるソフトウェア・モジュールで、または2つの組み合わせで具体化することができる。ハードウェア実施の場合、処理は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラム可能論理デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本明細書で説明した機能を実行するように設計された他の電子ユニット内で、またはそれらの組み合わせで実施され得る。入力/出力インターフェースと、入力/出力インターフェースを通して入力および出力用のデバイスまたはモジュールと通信する、算術および論理ユニット(ALU)ならびに制御ユニットおよびプログラム・カウンタ要素と、メモリとを含む、中央処理装置(CPU)を使用することができる。コンピュータ・プログラム、コンピュータ・コード、または命令としても知られる、ソフトウェア・モジュールは、多くのソース・コードまたはオブジェクト・コード・セグメントまたは命令を含むことができ、RAMメモリ、フラッシュ・メモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハード・ディスク、着脱可能ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、または他の任意の形態のコンピュータ可読媒体などの、任意のコンピュータ可読媒体内に存在することができる。代替形態では、コンピュータ可読媒体は、プロセッサと一体化することができる。プロセッサおよびコンピュータ可読媒体は、ASICまたは関連デバイス内に存在することができる。ソフトウェア・コードは、メモリ・ユニット内に記憶することができ、プロセッサによって実行することができる。メモリ・ユニットは、プロセッサ内またはプロセッサ外で実施することができ、外で実施される場合、当技術分野において知られるような様々な手段を介して、プロセッサに通信可能に結合することができる。
【0128】
本明細書および以下の請求の範囲のどこにおいても、文脈上別段の要求がない限り、単語「comprise」および「include」、ならびに「comprising」および「including」など、その変化形は、述べられた整数または整数のグループの包含を意味するが、他の任意の整数または整数のグループの排除を意味しないことが理解されよう。
【0129】
本明細書におけるいずれの先行技術についての言及も、そのような先行技術が共通の一般的知識の一部を形成することを何らかの形で示唆していることを認めたものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0130】
本発明は、その使用が、説明した特定のアプリケーションに制限されないことを当業者は理解するであろう。本発明は、好ましい実施形態において、本明細書で説明した、または示した特定の要素および/または特徴に関して制限されることもない。本発明は、開示した1つまたは複数の実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、数々の再構成、変更、および置換が可能であることが理解されよう。本発明の完全な理解を提供するために、上述の説明では、例示の目的で、数々の具体的な細部を説明した。本発明は、これらの具体的な細部のいくつかまたはすべてを用いずとも、請求の範囲に従って実施することができる。本発明が不必要に曖昧にされないように、明快にする目的で、本発明に関連する技術分野において知られている技術項目は、詳細には説明していない。