(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
窯業系基材及び該基材上に配置された樹脂組成物で形成されるインキ受理層を含み、表面に高低差が1.5mmを超える凹凸模様を有する建築板を、該建築板の印刷面の垂直方向に対して±15〜60°の角度で傾斜したバーナーから噴射される火炎で表面処理した後、活性光線硬化型インキでインクジェット印刷することを含む、窯業系化粧建築板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明により製造される化粧建築板は、
図2で示されるように、建築板1の表面を、特定の角度Rに傾斜させたバーナーから噴射される火炎で表面処理(フレーム処理)し、その後、活性光線硬化型インキでインクジェット印刷されることで得られる。
【0016】
本発明の建築板は、建材として使用される建築板であれば、その用途は特に限定されない。具体的には、壁材、床材、屋根材などが挙げられる。
【0017】
本発明の建築板に使用される窯業系基材の例には、素焼陶板、施釉および焼成した陶板、セメント板、セメント質原料や繊維質原料などを用いて板状に成形したものが含まれる。具体的な製造例としては、セメントを主成分として、シリカやフライアッシュなどの無機成分、任意にパルプ等の補強短繊維を配合した組成物の水性混練物や水性スラリーを、押出成形、注型成形、プレス成型あるいは抄造法などの成型方法で成形し、板状に硬化させる。さらに必要に応じて、エンボス加工等の凹凸加工を施して、基材の表面をタイル調、レンガ調、木目調などにすることができる。
【0018】
窯業系基材は、例えば以下のような方法で製造することができる。
まず、セメント成分と繊維質を混ぜた軟らかい水性混練物を板状に押し出し、その板状混練物をベルトコンベアに乗せて、エンボス形状が掘り込まれたロールを押し付けて表面に凹凸を付けると同時に巾と端部を整える。この形状が整えられた板状の基材を適当な長さに切断してから、高温、高圧のオートクレーブ内で数時間焼成して、本発明で使用可能な窯業系基材を得ることができる。
【0019】
本発明の窯業系基材は高低差が1.5mmを超える凹凸模様を形成する。ここで、「高低差が1.5mmを超える凹凸模様」とは、窯業系基材が高低差dが1.5mmを超える凹凸を少なくとも1つ以上有し、その凹凸が模様を構成していることを意味する。従って、高低差が1.5mm以下の凹凸が存在してもよく、これらの凹凸が組み合わされて、タイル調や木目調などの模様を窯業系基材に形成することができる。
なお、高低差dに関し、インキ受理層の厚さも考慮されるべきであるが、下記の通り、インキ受理層の厚みは通常3〜100μmの範囲内であるため、インキ受理層の厚みは考慮しなくてもよい。
【0020】
また、本発明の効果が奏される限り、窯業系基材の高低差の上限は特に規定されないが、通常、窯業系基材の凹凸の高低差は10mm以下であり、5mm以下が好ましい。窯業系基材の凹凸の高低差が最大10mmであれば、建築材として十分な意匠性を有する模様を形成することができるためである。また、窯業系基材の凹凸の高低差が10mmを超えると、火炎を凹部に存在する異物にあてることができず除去することが難しい場合がある。
【0021】
本発明で使用するインキ受理層は、樹脂組成物を硬化させて形成される塗膜であり得る。ここでは、上記基材に塗膜を形成できる塗料として一般的に使用されている高分子化合物の樹脂を使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フェノール樹脂等の高分子化合物が挙げられる。中でも本発明に用いられる高分子化合物としては、高耐候性で、インキとの密着性に優れることからポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
なお、従来の水性インキのインキ受理層として使用されてきた多孔質なインキ受理層を形成するような塗料は使用しないことが好ましい。このような多孔質なインキ受理層は耐水性、耐候性に問題がある場合があり、建築材の使用に適さない場合がある。
【0022】
上記の高分子化合物の樹脂において、その性状や物性を調整するために、硬化剤を使用することができる。ポリエステル樹脂を使用する場合は、メラミン系硬化剤(メラミン樹脂硬化剤)を用いることが望ましい。例えば、メチル化メラミン(メチロールメラミンメチルエーテル)、n−ブチル化メラミン(メチロールメラミンブチルエーテル)、およびメチルとn−ブチルとの混合エーテル化メラミン等が挙げられる。このように硬化剤を用いて架橋密度を高めたインキ受理層は、非水性インキが浸透しないことから耐水性、および耐候性に優れるため特に好ましい。インキ受理層が活性光線硬化型インキに対して非浸透性であることは、インキ受理層およびインキ層の断面を100〜200倍の倍率で顕微鏡観察することにより、確認することができる。インキ受理層が非浸透性の場合は、インキ受理層とインキ層との界面を明確に識別することができるが、浸透性の場合は、界面が不明確となり識別することが困難である。
【0023】
上記高分子化合物として、ポリエステル樹脂を使用する場合、その分子量はGPCで測定した場合の数平均分子量が2,000〜8,000であることが好ましい。分子量が2,000より小さくなると加工性が低下して塗膜ワレが発生しやすくなる場合がある。また、分子量が8,000より大きくなると架橋密度の低下により耐候性が低下する場合がある。加工性と耐候性のバランスから数平均分子量は3,000〜6,000が特に好ましい。
また、上記高分子化合物として、アクリル樹脂エマルションを使用する場合、その分子量はGPCで測定した場合の数平均分子量が20万〜200万であることが好ましい。
【0024】
本発明のインキ受理層は、有機もしくは無機の固形粒子を含んでいてもよい。当該粒子の平均粒子径が4〜80μm、好ましくは10〜60μmである。
上記無機粒子としては、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスビーズ、ガラスフレークが挙げられる。また、有機粒子として、アクリル樹脂ビーズ、ポリアクリロ二トリル樹脂ビーズが挙げられる。これらの樹脂ビーズは、公知の方法を用いて製造したものでもよいし、市販品を利用してもよい。市販のアクリル樹脂ビーズの例には、東洋紡株式会社の「タフチック AR650S(平均粒径18μm)」、「タフチック AR650M(平均粒径30μm)」、「タフチック AR650MX(平均粒径40μm)」、「タフチック AR650MZ(平均粒径60μm)」、「タフチック AR650ML(平均粒径80μm)」、「タフチック AR650L(平均粒径100μm)」および「タフチック AR650LL(平均粒径150μm)」が含まれる。また、市販のポリアクリロニトリルビーズの例には、東洋紡株式会社の「タフチック A−20(平均粒径24μm)」、「タフチック YK−30(平均粒径33μm)」、「タフチック YK−50(平均粒径50μm)」および「タフチック YK−80(平均粒径80μm)」が含まれる。
【0025】
このときの、有機、無機粒子は、通常、塗膜質量の2〜40質量%、好ましくは、10〜30質量%である。
上記固形粒子や着色顔料の平均粒径は、コールターカウンター法により求められる。
【0026】
さらに、前記インキ受理層は着色顔料を含んでいてもよい。このときの着色顔料の平均粒子径は、通常0.2〜2.0μmである。このような着色顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、黄色酸化鉄、フタロシアニンブルー、カーボンブラック、コバルトブルーなどが挙げられる。着色顔料を加える場合、通常、塗膜質量の40〜60質量%となるように塗料に添加する。
【0027】
インキ受理層の膜厚は、特に限定されないが、通常3〜100μmの範囲内である。塗膜が薄すぎる場合、塗膜の耐久性および隠蔽性が不十分となるおそれがある。一方、塗膜が厚すぎる場合、製造コストが増大するとともに、焼付け時にワキが発生しやすくなるおそれがある。
【0028】
本発明の活性光線硬化型インキは、当該技術分野で一般的に使用しているインキを使用し、これには、ラジカル重合型インキとカチオン重合型インキが存在し、いずれも使用することができる。
活性光線硬化型インキは、通常、モノマーもしくはオリゴマー、光重合開始剤、色材、分散剤、界面活性剤、その他の添加剤を含む。本発明では、当該技術分野で一般的に使用されている材料を用いる。カチオン重合型インキはラジカル重合型インキと比較して体積収縮率が少なく、架橋密度を高めた非浸透性のインキ受理層に対しても高い密着性が得られることから特に好ましい。
【0029】
図2は、本発明の一実施態様を示したものである。この図では、建築板1がベルトコンベア等の搬送機4により、矢印の方向(図面2の左から右方向)に搬送されている。バーナー2は、火炎が噴射される炎口21、バーナーヘッド22、空気と燃料ガスが混合された混合ガスが供給されるガス供給部(図示せず)、バーナーヘッドを所定の位置で固定する支持部(図示せず)及びバーナーヘッド22の傾斜角度を調整可能にする調整手段(図示せず)を有する。調節手段は炎口21を搬送機4上に所定の角度に回動できるようにして、その傾斜角度を固定して保持できる構造を有する。
【0030】
本発明では、バーナーからの火炎を±5〜60°(これは、5〜60°及び−60〜−5°の範囲を含むことを意味する。以下も同様である。)の角度で傾斜させて噴射する。この傾斜角度は以下のように定義できる。つまり、火炎の傾斜角度は、建築板1の印刷面に対して垂直に伸びる線(破線α)とバーナー2の炎口21に対して垂直に伸びる線(破線β)が形成する角度Rである(
図2)。
また、バーナーの炎口21が搬送方向に向かって傾斜しているときは、角度Rの値を正の数値とする。一方、バーナーの炎口21が搬送方向と逆方向に向かって傾斜しているときは、角度Rの値を負の数値とする。
【0031】
バーナーからの火炎を±5〜60°、好ましくは±5〜45°、更に好ましくは±5〜40°、最も好ましくは15〜30°の角度Rで傾斜させ、火炎3を傾斜させて照射することで、火炎3が常に一定方向に照射することができるため、建築板1に形成された凹部に対して均一に火炎を当てることができる。そのため、凹部でも、均一なインキの濡れ広がりが認められる。
また、建築板1の搬送時に生じる気流を考慮すると、
図2のようにバーナーの炎口21が搬送方向に向かって傾斜していること、つまり、正の角度に傾斜していることが好ましい。
【0032】
角度Rが−5°を超え+5°未満であると、バーナーからの火炎が凹部で堰き止められて反射するため、十分な火炎の照射が行われない。また、角度Rが−60°より小さい、又は60°よりも大きくなると、火炎の傾きが大きくなる。後述の通り、バーナー2と建築板1の表面との距離Hは一定の距離離れている必要があり、火炎の傾きが大きいと火炎自体が建築板1の表面に届かなくなる。
【0033】
バーナー2は、建築板1の印刷面からの距離Hの位置に設定する。Hは、バーナー2の印刷面からの最短の距離を意味する。つまり、Hは通常バーナーヘッド22と印刷面との距離を示すが、炎口21がバーナーヘッド22から大きく突き出した構造で炎口21と印刷面との距離がバーナーヘッド22と印刷面との距離よりも近い場合、Hは炎口21と印刷面との距離を示す。
【0034】
通常、距離Hは5〜120mm、好ましくは、10〜80mm、さらに好ましくは20〜50mmの範囲になるように設定する。建築板1の窯業系基材1はエンボス加工などの成形加工を経ることがある。このため、窯業系基材11に反りが生じてしまう場合がある。前記距離Hが5mm未満であると、窯業系基材1の反りのために、バーナー2と建築板1が接触してしまう場合がある。なお、建築板1はその長さが数メートル(3〜4m)に及ぶ場合があり、このときに窯業系基材11では反りが5〜20mm生じ得る。そのため、距離Hは、窯業系基材11の長さ、つまり、建築板1の長さに応じて距離Hを調整する必要がある。
また、距離Hが120mmを超えると、フレーム処理の効果を奏するために高いエネルギーの火炎を照射する必要があり、非効率的であり好ましくない。
【0035】
本発明の一実施形態を、
図3を参照してより具体的に説明する。この実施形態では、建築板1のインキ受理層で形成される印刷面1−1を本発明で規定する範囲に傾斜させたバーナー2の火炎を照射してフレーム処理を行う。また、使用するインクジェット記録装置は4色のインキ(イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック(黒))の4色のインクジェット印刷が可能なライン式インクジェット記録装置Mである。そして、使用するインキは活性光線硬化型インキである。
【0036】
図3における、ライン式インクジェット記録装置Mは、インクジェット記録ヘッド6(61〜64)、その記録ヘッドに接続するインキ供給タンク7(71〜74)及び印刷制御システム8を備えたインクジェット式塗装機5、並びに搬送機4を備える。さらに、このライン式インクジェット記録装置Mに、フレーム処理を行うためのバーナー2、活性光線照射機9が設置されている。
【0037】
建築板1の印刷面(インキ受理面)1−1は、搬送機4の搬送面4−1に接する面と反対側の面である。ここに、インクジェット記録ヘッドから吐出される活性光線硬化型インキで着色され、所望の画像をインキ受理層の上に形成することができる。
【0038】
図3に示されるように、建築板1の印刷面1−1はインクジェット印刷の前にバーナー2から吐出される火炎3によりフレーム処理される。
バーナーの出力は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常、バーナーの炎口の幅10mmあたり250kJ/時〜12000kJ/時、好ましくは、400kJ/時〜7500kJ/時、さらに好ましくは600kJ/時〜5000kJ/時、なお更に好ましくは1200kJ/時〜5000kJ/時の出力である。バーナーの炎口の幅10mmあたり250kJ/時未満であると、建築板1の表面に存在する汚れ(異物)の焼却が十分に行われない場合がある。また、バーナーの炎口の幅10mmあたり12000kJ/時以下で、火力は十分であり、これを超えると経済的にも非効率である。
【0039】
図4(a)は、バーナー2の側面の概略図を表し、
図4(b)はバーナー2の正面の概略図である。
図4(a)で示されるLは、炎口21の長さを表す。炎口21は、
図3又は4における搬送方向に平行の向きにその長さLを変更することが可能である。通常、Lは3〜40mmである。なお、建築板1の搬送速度が大きくなると建築板1の移動に伴う気流が発生する。Lの値が小さいほどバーナーの火炎3がその気流の影響を受けやすくなるため、火炎3が均一に照射できない場合がある。そのため、最適条件を考慮しながら、Lと搬送速度を調整することが好ましい。
【0040】
また、
図4(b)は、
図2又は
図3のバーナー2の正面概略図である。バーナー2の炎口21の幅をWで表している。バーナーヘッド22には、支持部23及びガス供給部24が備えられている。このWは建築板1の大きさを考慮して選択されるが、通常、40〜50cmである。また、炎口の態様について特に限定されないが、通常、リボン形状や丸穴形状のバーナーを用いることができる。
また、上記の「バーナーの炎口の幅10mmあたり」記載は、
図4(b)のW´が10mmであることを意味する。
【0041】
このような構造のバーナーヘッドを有するバーナーは市販されており、例えば、Flynn Burner社(米国)の製品名F−3000、Finecom I&T社(韓国)の製品名FFP250などが存在する。
【0042】
搬送機4による建築板1の移動速度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、固定されているバーナー2に対し、通常、5〜70m/分である。好ましくは、10〜40m/分であり、更に好ましくは、15〜30m/分である。5m/分未満であると、作業効率が悪くなる。また、70m/分を超えると、バーナー2の火炎3が建築板1の移動により生じる気流の影響を受けてしまい、印刷面1−1に均一に火炎を照射することができず、汚れ(異物)の除去が十分にできない場合がある。
【0043】
バーナー2の燃料ガスとしては、特に制限されないが、通常、水素、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、アセチレンガス、プロパンガス、又はブタン等が使用され、またその助燃ガスとしては、空気、又は酸素が使用される。燃焼エネルギーを考慮するとLPGやLNGを使用することが好ましい。上記の燃料ガスと助燃ガスを予め混合して、ガス供給部24より、バーナーヘッド22に供給することができる。
【0044】
火炎により表面処理(フレーム処理)された建築板1は、インクジェット式塗装機5でインクジェット印刷される。インキは4色使用し、インクジェット記録ヘッド61からイエロー、62からシアン、63からマゼンダ、64からブラック(黒色)のインキがそれぞれ吐出される。これらのインクジェット記録ヘッドにそれぞれインキ供給タンク(71〜74)が接続されている。上記インキは市販されている活性光線硬化型インキを使用することが可能である。
【0045】
各色のインクジェット記録ヘッドから吐出されたインキ滴は、印刷面1−1に向けて鉛直方向に飛翔する。インキ滴の初速は、一般に、3m/sec〜9m/sec、好ましくは4m/sec〜7m/secに設定される。インキ滴の初速とは、記録ヘッドからの吐出時におけるインキ滴の速度である。例えば、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインキ滴がインキ吐出部から鉛直方向に1mmの距離と、この1mmの距離を進むのに要する時間とで算出(所定の距離/時間)される。
インキ滴の初速が3m/sec未満では液滴の速度が遅すぎるため、インキ滴の着弾精度が大幅に低下する場合がある。また、9m/secを超える場合は、着弾精度は良いものの、インキのサテライトが発生して画質が低下するという問題が生じる場合がある。
【0046】
インクジェット記録ヘッドのノズルから印刷面1−1に吐出される一滴のインキ滴の体積は、特に限定されないが、一般には60pl(ピコリットル)未満、好ましくは、10pl以上45pl未満に設定する。
【0047】
活性光線照射機9は、インクジェット式塗装機5に対して搬送方向下流側の所定の位置に設置されている。ここで、本発明における「活性光線」とは、電子線、紫外線、α線、γ線、エックス線等が挙げられる。本発明において、安全性やハンドリング性を考慮すると電子線、紫外線を用いることが好ましく、紫外線を用いることが最も好ましい。
活性光線照射機9は、搬送機4の搬送面4−1に向けて設置された活性光線を照射するランプを備え、搬送面4−1の方向に活性光線を照射する。
印刷面1−1に着弾したインク滴を活性光線照射機9からの活性光線で硬化させる。通常、インク滴が着弾してから1.0秒以上、好ましくは2.0秒以上、さらに好ましくは2.2秒以上経過した後に活性光線を照射するように、搬送機4の搬送速度及びインクジェット式塗装機5から活性光線照射機9までの距離を調整する。また、空気中の水分がインキの重合を阻害することがあるため、インキが着弾後30秒以内に活性光線を照射する。
【0048】
制御部8は、インクジェット記録装置Mで形成される画像の記録による模様付けやインクジェット記録ヘッドの温度調節を含む各種処理を制御する。制御部8は、電子部品が搭載された回路基板及び電気配線等を含む。制御部8に含まれる少なくとも一部の構成は、
図4に示すようにインクジェット記録ヘッドの上部に設置されている。
【0049】
ライン式インクジェット記録装置Mは、ネットワークインターフェース等の所定のインターフェース(図示せず)を備える。インクジェット記録装置Mは、インターフェースを介して、パーソナルコンピュータ等の外部装置と通信可能に接続されている。外部装置は、インクジェット記録装置Mに対し、印刷面1−1への画像の記録指令及び記録する画像を示すデータ等を入力する。記録指令が入力されたインクジェット記録装置Mでは、所定の処理が実行され、上記のインキがインクジェト記録ヘッドから吐出され、所望の画像が印刷面1−1に形成され、本発明の窯業系化粧建築板の製造方法が実行される。
【実施例】
【0050】
以下に実施例および試験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0051】
以下の実施例では、建築板として窯業サイディング材を調製し、評価した。
1.窯業サイディング材(建築板)の製造
窯業系基材として、JIS A 5422に準拠して製造された、木繊維または木片を補強剤として使用した繊維補強セメント板系窯業サイディングを準備した。該基材の製造時に、エンボス形状が掘り込まれたロールを押し付けて表面に高低差2mmの凹凸を付した。
【0052】
窯業サイディングの表面にアクリルエマルション系ベース塗料(IMコート4100 : 関西ペイント株式会社)に平均粒径0.28μmの酸化チタン(テイカ製 JR−603) 49質量%、平均粒径10μmのマイカ(株式会社ヤマグチマイカ製 SJ−010)13質量%、平均粒径5.5μmの疎水性シリカ(サイシリア456;富士シリシア株式会社)6質量%、平均粒径12μmの疎水性シリカ(富士シリシア化学株式会社製 サイリシア476)2質量%を添加して、スプレー塗装により乾燥膜厚18μmになるように塗布して、到達板温130℃で2分間焼き付けることでインキ受理層を形成した。
【0053】
なお、上記マイカ、疎水性シリカ及び酸化チタンの平均粒径はコールターカウンター法により求めた。
具体的には以下のように測定した。測定装置として、コールターカウンター(米国コールターエレクトロニクス社製)TA−II型を用いた。試料約0.5gを200mlのビーカーに取り、純水約150mlを加え、超音波(ULTRASONIC CLEANER B-220)で60〜90秒分散させた。付属の電解液(ISOTON II:0.7%高純度NaCl水溶液)150mlに上記分散液をスポイトで数滴加え入れ、上記装置を用いて粒度分布を求めた。
但し、上記JR−603(酸化チタン)及びサイシリア456(疎水性シリカ)は30μmのアパッチャーチューブを使用した。また、SJ−010(マイカ)は50μmのアパッチャーチューブを使用した。平均粒径は累積粒度分布図の50%径を読み取り求めた。
【0054】
2.フレーム処理のためのバーナー
フレーム処理を行うためのバーナーとして、FFP200(Finecom I&T(韓国)社製を使用した。燃焼ガスとしてLPガスを用い、バーナーの炎口の幅10mmに対し、LPガスは0.41L/分、クリーンドライエアー10.25L/分をガスミキサーで混合した後に、バーナーで燃焼させてフレーム処理を行った。また、バーナーの炎口における搬送方向に平行な向きの長さ(
図4(a)におけるL)が20mmのものを用いた。
また、バーナーの傾斜角度は、0°、5°、±15°、±30°、40°、45°、60°及び65°でフレーム処理を行った。
なお、フレーム処理時の搬送速度は20m/分又は30m/分で行った。
【0055】
3.活性光線硬化型インキによるインクジェット印刷
(3−1)
活性硬化型インキとして、ラジカル重合型紫外線硬化性黒色インキ及びカチオン重合型紫外線硬化性黒色インキを用いた。各インキの具体的な組成は以下の通りである。
【0056】
(i)ラジカル重合型紫外線硬化性黒色インキ
ラジカル重合型紫外線硬化性黒色インキを、以下の成分を混合することにより調製した。具体的な組成は以下の通りである。
【0057】
顔料分散液
1)(顔料分:10質量%) 10質量部
反応性オリゴマー
2) 25質量部
反応性オリゴマー
3) 57質量部
光重合開始剤
4) 5質量部
光重合開始剤
5) 3質量部
【0058】
1)顔料:NIPex 35、カーボン デグサジャパン(株)製、分散媒:SR9003、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート サートマージャパン(株)製
2)CN985B88、2官能脂肪族ウレタンアクリレート88質量%、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12質量%の混合物 サートマージャパン(株)製
3)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
4)イルガキュア184、ヒドロキシケトン類 チバ・ジャパン(株)製
5)イルガキュア819、アシルフォスフィンオキサイド類 チバ・ジャパン(株)製
【0059】
(ii)カチオン重合型紫外線硬化性インキ
高分子分散剤(味の素ファインテクノ社製 PB821) 9質量部とオキセタン化合物(東亜合成社製 OXT211) 71質量部にブラック:Pigment Black 7を20質量部加えて、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して、ブラックの顔料分散体を調整した。
上記分散体14質量部に、以下の光重合性化合物、塩基性化合物、界面活性剤、相溶化剤、光酸発生剤を混合して、カチオン重合型紫外線硬化性インクジェットインキを作製した。
【0060】
【表1】
【0061】
インキ液滴の体積を42plとし、インクジェット印刷機(株式会社トライテック製、パターニングジェット)を用いて黒色インキでドット印刷を行った。この時の印刷条件は以下のとおりである。ドット同士が重ならないようにドット間の距離は500μmとして窯業サイディング材全体にブラックインキによるドット印刷を行った。ドット径はオリンパス株式会社製走査型共焦点レーザ顕微鏡 LEXT OLS3000を用いて測定した。1ドットのみが見える範囲に拡大して(200倍)、8個のドットのドット径を測定し、その平均値を示した。ドットの広がりが楕円に近い場合は、長径と短径の平均値をドット径とした。フレーム処理する前の窯業サイディングのドット径は汚れの付着度合いによって変化し、汚れ付着が多い箇所のドット径が約130μmであるのに対して、汚れ付着がほとんどのない箇所は約180μmと約50μmの差があった。
【0062】
ラジカル重合型紫外線硬化インキのインクジェット印刷条件
(a)ノズル径 :35μm
(b)印加電圧 :11.5V
(c)パルス幅 :10.0μs
(d)駆動周波数 :3,483Hz
(e)解像度 :360dpi
(f)インキ液滴の体積 :42pl
(g)ヘッド加熱温度 :45℃
(h)インキ塗布量 :8.4g/m
2
(i)ヘッドと記録面の距離 :5.0mm
(j)インキ滴の初速 :5.9m/sec
【0063】
カチオン重合型紫外線硬化インキのインクジェット印刷条件
(a)ノズル径 :35μm
(b)印加電圧 :13.2V
(c)パルス幅 :10.0μs
(d)駆動周波数 :3,483Hz
(e)解像度 :360dpi
(f)インキ液滴の体積 :42pl
(g)ヘッド加熱温度 :45℃
(h)インキ塗布量 :8.4g/m
2
(i)ヘッドと記録面の距離 :5.0mm
(j)インキ滴の初速 :6.1m/sec
【0064】
本実施例では、活性光線として紫外線を用いた。インクジェット印刷後の以下の条件でインキの紫外線硬化を行った。紫外線照射はインク滴が着弾した5秒後に行った。
(1)ランプの種類:高圧水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製 Hバルブ)
(2)ランプの出力:200W/cm
(3)積算光量:600mJ/cm
2(オーク製作所製紫外線光量計UV−351−25を使用して測定)
【0065】
窯業サイディング材表面の汚れ付着の多少に係らず、特定条件でフレーム処理することにより、均質かつ十分なインキの濡れ広がりを見せる。本実施例では、フレーム処理によりラジカル重合型紫外線硬化性インキのドット径が190〜210μmとなったものを○と評価した。また、カチオン重合型紫外線硬化性インキに関し、そのドット径が200〜220μmとなったものを○と評価した。
【0066】
上記サイディング材を、上記のバーナーを用いてフレーム処理し、上記印刷条件で印刷を行った。このサンプルの黒色インキのドット径を測定した。試験の結果を以下に示す。
なお、下記表の実施例1は参考例である。
【0067】
【表2】