(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0060】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。いくつかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0061】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0062】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、395巻、151〜154、1998;(「Baldo−I」)及びBaldoら、「Very high−efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4〜6(1999)(「Baldo−II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5〜6段において更に詳細に記述されている。
【0063】
有機発光デバイス及びプリントノズルについて、
図1〜18を参照して以下に記載する。本明細書中に開示されるプリントノズル構造に関する実験結果は、「実験」の項において、
図19〜21B及び25〜30を参照して記載する。プリントノズル構造の使用、及び堆積材料の開始及び停止操作の制御の例は、
図22〜24を参照して記載する。
【0064】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第一の導電層162及び第二の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6〜10段において更に詳細に記述されている。
【0065】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板−アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p−ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm−MTDATAにF
4−TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n−ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を持つMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0066】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることがある。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、いくつかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0067】
図1及び2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。1つの実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び2に関して記述されている通りの異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0068】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されている通りのメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されている通りのくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0069】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法のいくつかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、且つ好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、小分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を持つ材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける小分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0070】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている通りの、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を構成する前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。ポリマー材料対非ポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作成され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0071】
本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、種々の電子製品又は中間部品に組み込まれることができる多種多様な電子部品モジュール(又はユニット)に組み込まれることができる。このような電子製品又は中間部品としては、エンドユーザーの製品製造者によって利用されることができるディスプレイスクリーン、照明デバイス(離散的光源デバイス又は照明パネル等)が挙げられる。このような電子部品モジュールは、駆動エレクトロニクス及び/又は電源を任意に含むことができる。本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、組み込まれた1つ以上の電子部品モジュール(又はユニット)を有する多種多様な消費者製品に組み込まれることができる。このような消費者製品は、1つ以上の光源及び/又は1つ以上のある種の表示装置を含む任意の種類の製品を含む。このような消費者製品の幾つかの例としては、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、3−Dディスプレイ、車、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、或いは看板を含む。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御機構を使用して、本発明に従って製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20℃〜25℃)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が意図されているが、この温度範囲外、例えば、−40℃〜+80℃で用いることもできる。
【0072】
本明細書において記述されている材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検出器等の他の光電子デバイスが、該材料及び構造を用い得る。より一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、該材料及び構造を用い得る。
【0073】
本願が優先権を主張し、参照により援用する米国特許仮出願62/016,709号は、本願と異なる用語を使用している場合があるが、用語の意味において違いはない。例えば、本願において、パージガスを閉じ込めガス、キャリアガスを搬送ガス、排気チャネルを排出チャネル、キャリアガスノズルを搬送開口部、スイープガスを閉じ込めガス、ノズルオリフィスをノズル開口部又は搬送チャネル、真空孔を排出チャネルと呼ぶことがある。
【0074】
本明細書で使用される、用語「閉じ込め流」及び/又は「閉じ込めガス」は、堆積領域の外部から入ることができ、搬送ガス流の基板面内運動を妨げることにより有機蒸気の広がりを低減するガス及びガス流を意味する。閉じ込め流及び/又は閉じ込めガスは、排出チャネルに連結される排出開口部に余剰の有機材料を導くことができる。即ち、閉じ込め流は、通常、搬送ガスよりも高い分子量を有する閉じ込めガスを含むことができる。
【0075】
閉じ込めガスは、チャンバの周囲から引かれる、又は専用ノズル(例えば、閉じ込めチャネルに連結される閉じ込め開口部)から導入される。閉じ込めガスがチャンバから導かれると、閉じ込めチャネルがノズルアレイの下で、フライハイトのギャップとなることができ、これがノズルと基板との間のギャップになることができる。
【0076】
搬送開口部は、搬送チャネルと、プリントヘッドの基板に近い側の端部とが交わる箇所であることができる。搬送開口部は、より小さな開口部に細分化することができる。
【0077】
搬送流及び/又は搬送ガスは、供給源オーブン(source ovens)からの有機蒸気を運搬することができ、搬送チャネルを通って、プリントヘッドチップに近い側の基板上の堆積領域に運ぶ。前記搬送流は、多数の供給源オーブンからの流れの混合物であることができる。前記搬送ガスは、ヘリウム及び/又は任意の他の好適なガスであることができる。前記搬送ガスは、1つ以上のガスであってもよいし、複数のガスの混合物であってもよい。前記搬送ガスの前記1つ以上のガス及び/又は前記複数のガスの混合物は、1つ以上の供給源から供給することができる。
【0078】
搬送チャネルは、1つ以上の供給源から基板に向けて有機蒸気を導くことができる。前記搬送チャネルは、通常、基板の法線に沿って配向させることができるが、角度をつけることもできる。プリントヘッドエッジと前記搬送チャネルとが交わる箇所が、前記搬送開口部を形成してもよい。
【0079】
排出開口部及び/又は排出チャネルは、前記搬送チャネルを囲んでいてもよい。前記搬送チャネルと平行又はそれに対して角度をつけて配向させることができる。通常、排出部(exhaust)は、堆積領域から搬送ガスを除去するように構成される。閉じ込めガスが存在すると、閉じ込め流源と排出チャネルとの間に生成した閉じ込め流が、前記堆積領域から余剰の有機蒸気を除去する。前記閉じ込めガスは、1つ以上のガスであってもよいし、複数のガスの混合物であってもよい。前記閉じ込めガスの前記1つ以上のガス及び/又は前記複数のガスの混合物は、1つ以上の供給源から供給することができる。前記排出チャネルとプリントヘッド端部とが交わる箇所が、前記排出開口部を画定する。
【0080】
ノズルは、搬送及び排出開口部と、存在する場合には、閉じ込め開口部とを含むノズルアセンブリの、単一の微細加工されたユニットであることができる。
【0081】
ノズルブロックは、1つ以上のノズルを有する一体の微細加工アセンブリであることができる。前記ノズルブロックは、加熱されたクランプで基板上に保持することができる。
【0082】
プリントヘッドは、前記ノズルブロック、前記ノズルブロックを供給源オーブンなどの1つ以上の供給源に結合させるのに必要な流体接続部を含む加熱されたホルダー、チャンバの外部への排出ライン、及び閉じ込めガス源を含むことができる。
【0083】
前記したように、OLED及び他の類似デバイスを作製するために、有機気相ジェットプリンティング(OVJP)などの各種技術を用いることができる。OVJPでは、パターン化されたアレイ状の有機薄膜形成要素を、液体溶媒、シャドーマスクを使用することなく堆積させることができる。不活性な搬送ガスが、有機蒸気を蒸着源からノズルアレイに運ぶ。前記ノズルアレイは、基板に衝突するガス−蒸気混合物の噴流を発生させる。前記有機蒸気は、特定のスポットにおいて前記基板上で凝縮する。形成要素は、前記プリントヘッドに対して前記基板を動かすことにより描くことができる。リン光OLEDで望ましい場合がある、ホストとドーパントの共堆積を、前記ノズルの上流の異なる供給源からの蒸気を混合することにより行うことができる。微細加工ノズルアレイは、ディスプレイとしての応用に求められるプリント解像度に匹敵するプリント解像度を達成することが示されている。
【0084】
プリントされる形成要素の意図した境界線を越えて有機材料が堆積すること、即ち、オーバースプレーは、OVJPで頻繁に生じる問題である。基板と接触するように導かれた有機蒸気の分子は、不可逆的に基板に吸着することができる、又は基板から跳ね返されることができる。吸着した材料は、凝縮してプリントされる形成要素の一部になる。凝縮しない材料は、散乱して周囲のガス環境中に戻る。付着係数αは、有機蒸気の分子の基板との1回の接触当たりに凝縮する確率として定義される。0.8〜0.9の付着係数がOLED材料では典型的である。
【0085】
有機蒸気の分子は、基板に吸着せずに、基板から跳ね返されることがある。これにより、意図した境界線を越える堆積が生じ、蒸気が、隣りの形成要素を汚染する可能性を有する。各種の輸送機構が、低濃度の有機蒸気をノズルから遠去かる方向に運ぶことができる。ガス流の分子間相互作用が優勢である場合、即ち、クヌーセン数Knが1未満(Kn=λ/l、式中λは、搬送ガス場における平均自由工程であり、lは、ノズルアセンブリの特性長である)、ノズルから生じる有機蒸気噴流は、対流及び拡散の両方により広げられる。Knが1超の場合、プリントされる形成要素は、基板の法線を横断する蒸気分子の弾道運動により広げられる。いずれの場合も、有機分子が基板との接触時に吸着しない場合、形成要素の広がりが悪化する場合がある。
【0086】
対流及び拡散による広がりは、例えば、10
−4Torr未満の非常に低いバックグラウンド圧力で、OVJPプロセスを行うことにより最小限にすることができる。しかしながら、
図3に示されるように、オーバースプレーは、αが不均一であることに起因して持続することがある。例えば、加熱したノズルアレイ301を基板302の近くに置くことにより、微細な形成要素をOVJPでプリントすることができる。前記基板302に吸着しない有機分子は、前記ノズルアレイ301の下側に跳ね返され、所望のプリント領域303を超えて散乱することがある。前記基板302に最初に吸着できる有機分子(例えば、分子304)は、所望のプリント領域303内に留まるが、吸着しない分子(例えば、分子305)は、更に外れて散乱することがある。有機分子(例えば、分子305)がノズルの下側に付着させずに、前記基板302に再度方向を変えて、所望の堆積領域(例えば、所望のプリント領域303)の外部に落ちることができるように、前記ノズルアレイ301のノズルを加熱することができる。このように、本明細書中に更に詳細に記載されるように、基板に吸着しない材料を迅速に除去し、形成要素の広がりを最小限にする及び/又は防止することが望ましい。
【0087】
図4は、開示する主題の実施形態に係る堆積構造(例えば、ノズルアセンブリ400)の断面図を示す。搬送チャネル401は、1つ以上の排出チャネル402に隣接する又は囲まれることができる。基板302に堆積される材料を輸送する搬送ガスは、搬送チャネル401の開口部から基板302に向けて吐出することができる。前記基板に吸着しない有機分子(例えば、分子305)は、前記排出チャネル402を通して除去することができる。閉じ込めガス403は、ノズルの搬送チャネルの開口部から吐出される材料の流れと反対方向に提供される。前記閉じ込めガス403は、ノズルなどの供給源、周囲の供給源、などにより、ノズルの下(即ち、ノズルの開口部と基板302との間)で且つノズル及び/又は排出チャネル402に隣接する位置から提供することができる。幾つかの構成においては、前記閉じ込めガスは、ノズルブロックの一部と一体になっているノズルを介して提供することができる。このようなノズルは、前記閉じ込めガス流が周囲環境から提供される場合でも、使用することができる。例えば、ノズルブロックは、その底部にエッチングされた1つ以上のチャネルを含むことができ、該チャネルを通して閉じ込めガス403の指向させることができる。1つ以上の外部ノズル(即ち、ノズルブロックと一体化していない)を、閉じ込めガスを堆積領域に向けるために使用することができる。ノズルアセンブリ400と基板302との間の領域に提供された閉じ込めガスを堆積が行われるチャンバの周囲温度よりも低い平均温度を有するように冷却してもよい。前記閉じ込めガスは、周囲温度又は周囲よりも高い温度で提供することもできる。
【0088】
前記閉じ込めガスは、堆積領域の外側から内側に向けて流れ、余剰な材料を排出るチャネル402へ導くことができる。閉じ込めガス流の大部分が、主に、ノズルから吐出される材料の大部分が流れる方向と逆向きの平行方向である場合、閉じ込めガス流は、ノズルから吐出される材料の流れに対向することができる。堆積領域におけるノズル(例えば、搬送チャネル401)からの流れは、ノズル自体の幾何学的形状ではなく、主に、ノズルブロックと基板301との間のギャップにより決めることができる。したがって、基板302の平面における閉じ込めガス流は、ノズルの配向に関わらず、ノズルの流れ(例えば、搬送チャネル401の開口部からの流れ)に対向すると考えられる。例えば、ノズル(例えば、搬送チャネル401の開口部)を、基板302の面に直交する方向に材料を吐出するように配向する場合、ノズルから吐出された材料は、基板302により向きを変えられて、基板302の面内を移動する。その後、吐出された材料は、基板302の面から、更にノズル(例えば、搬送チャネル401の開口部)の下流に方向を変えられ、そこで、反対方向へ移動する閉じ込めガス流と交わる。閉じ込めガス流は、チャンバ周囲又は外部のガス供給源に接続されている専用ノズルから供給することができる。
【0089】
排出チャネル402は、真空源、即ち、ノズル(例えば、搬送チャネル401の開口部)と基板302との間の領域よりも低い圧力源に接続することができる。前記真空源は、堆積構造(例えば、ノズルアセンブリ400)の外部にあることができる。例えば、ノズルブロック又は他の堆積機構は、外部の真空源に排出チャネル402を接続するように構成されたコネクタを含むことができる。排出チャネル402は、搬送チャネル401に対し角度を付けて、ノズルブロック内の排出チャネル402と搬送チャネル401との間に十分量の材料が存在するようにすることができる。この構成によれば、チャネル間(例えば、搬送チャネル401と排出チャネル402との間)のノズルブロックに十分量の材料を提供することができ、ノズルブロックを構造的に合理的なものとすることができる。ノズルブロック内の排出チャネル402は、搬送チャネル401に対して角度を付けることができる。このような構成により、基板上の堆積材料の均一性を改善することができる。本明細書に開示する実施例及びシミュレーションに更に詳細に示されるように、基板に対して法線方向の流れの軸を有する「直線の」排出チャネル流路に比べて、角度の付いた流路は、閉じ込めガス、搬送ガス、及び/又は堆積しない材料が流れて行く必要がある鋭角の形成を最小限にする及び/又は防止することができる。
【0090】
排出チャネル402は、ノズルブロック(例えば、ノズルアセンブリ400)内のノズル流路(例えば、搬送チャネル401)を囲むことができる。例えば、排出チャネル402は、ノズルブロック(例えば、ノズルアセンブリ400)内で十分な幅を有しており、搬送チャネル401と排出チャネル402との最短距離が、ノズルに対する少なくとも2つの方向で同じとすることができる。幾つかの構成においては、ノズル開口部は、ノズルブロックの平面状端部と、ノズルブロック内のチャネルとにより画定することができる。即ち、本明細書に開示するノズルは、ノズルブロックの下面を越えて延びる、更に先細りとされた及び/又は他の延在する物理的部分を必要としない。
【0091】
ノズル開口部(例えば、搬送チャネル401)は、搬送チャネルセパレータ404により分割又は別の態様で分割して、多数の開口部(例えば、
図4に示すように多数の搬送チャネル401)を含むことができる。搬送チャネルセパレータ404により分割される搬送チャネル401は、堆積領域内の基板302上への有機材料フラックスの均一性を改善することができる。例えば、分割がなければ(例えば、搬送チャネルセパレータ404が存在しなければ)、盛り上がった又は丸みを帯びた堆積形状となる。これに対して、ノズルが分割している場合(例えば、搬送チャネル401が搬送チャネルセパレータ404によって分割されている場合)、ノズルの中心のブロックにより、材料の堆積領域中央への堆積を防ぐことができ、より平らな「プラトー」型の堆積形状となる。より一般的には、本明細書に開示するノズルは、多数の開口部を含むことができる。
【0092】
本明細書に開示するノズルは、垂直方向に配向させることができる。即ち、ノズルから吐出した材料が堆積する基板に対して、搬送チャネルの軸が垂直になるように位置させることができる。これに代えて又はこれに加えて、1つ以上のノズルを、基板に対して角度をもって、例えば、0°〜90°の角度で位置させることができる。
【0093】
本明細書に開示するノズルブロックは、多数の搬送開口部及び/又は多数の排出チャネルを含むことができ、これらは、ノズルブロック内に任意の好適な配列で配置することができる。例えば、多数の搬送開口部をノズルブロック内に配置し、排出チャネルを隣り合うノズル間に配置することができる。1つのノズルブロック内に多数のノズルを用いる場合、これらのノズルは、任意の好適な配列、例えば、線状、ジグザグ状、又は層状の配列で配置することができる。各配列のノズルを用いて、異なる順序で又は同時に堆積することができる。例えば、線状配列では、1つの基板が線状配列の各ノズルを順に通り過ぎて移動することで、各ノズルが基板上に異なる層を堆積することができる。
【0094】
開示する主題の幾つかの実施形態においては、ノズルブロック又はノズルブロックの一部を、ノズルにより吐出される搬送ガス中の最も揮発性が低い有機材料の蒸発点(evaporation point)より高い温度に加熱することができる。これにより、堆積装置の様々な部分で材料が凝縮することを、更に最小限にする及び/又は防止することができる。
【0095】
本明細書に開示する堆積システムは、また、ノズル(例えば、搬送チャネル401)の下に基板302を位置させるように構成された基板ホルダー又は他の配列を含むこともできる。幾つかの構成において、基板ホルダに載置された基板302がノズル開口部の約10〜1000μm下方に位置するように、基板ホルダーをノズルに対して位置させることができる。
【0096】
開示する主題の幾つかの実施形態においては、冷却プレート(例えば、熱電冷却器)又は他の低温装置若しくは領域を、ノズルブロック(例えば、ノズルアセンブリ400)のノズル表面(例えば、搬送チャネル401の開口部を有する表面)に隣接して配置することができる。例えば、基板302に対向するノズルブロックの下表面に隣接して、且つ1つ以上のノズルに隣接して、冷却プレートを配置することができる。冷却プレートは、また、ノズルブロックに隣接して配置されるが、ノズルブロックと物理的に接触しないようにすることができる。
【0097】
開示する主題の幾つかの実施形態においては、本明細書に開示する堆積システム及び技術を、堆積チャンバ内で行うことができる。前記チャンバは、既に開示したように閉じ込めガス流を提供するために用いることができる1種以上のガスで満たすことができる。幾つかの実施形態においては、前記堆積チャンバを1種以上のガスで満たして、チャンバ内の周囲環境が、本明細書に開示の、使用される閉じ込めガス及び/又は搬送ガス若しくは複数の搬送ガスと異なる組成を有するようにすることができる。上で詳細に述べたように、閉じ込めガス及び/又は搬送ガスは、1つ以上の供給源から供給される1種以上のガスであることができる。堆積チャンバは、任意の好適な圧力で維持することができ、例えば、10Torr、100Torr、760Torrなどで維持することができる。
【0098】
本明細書に開示する堆積システムを用いて、既に開示したようにOLED又は類似デバイスの各種コンポーネントを堆積することができる。これに代えて又はこれに加えて、前記堆積システムを基板を横切って走査させて、前記基板上に材料の均一膜を堆積させることができる。例えば、前記堆積システムは、基板上の基準マークの存在及び位置に基づいて1つ以上のノズルを走査させるアラインメントシステムを含むことができる。
【0099】
図5は、開示する主題の実施形態に係る搬送ガス流の例示的なストリームラインを示す。搬送流501は、搬送チャネル401の開口部と排出チャネル402をつなぐストリームラインに沿う。閉じ込めガス流502は、ガス入口403と排出チャネル402をつなぐストリームラインに沿う。
【0100】
閉じ込めガス流502は、通常、搬送流501に対向する。これらの流れは503で交わり、排出チャネル402の方向に向かう。続いて、これは、基板(例えば、
図4の基板302)の面に沿った有機材料を広がりに対するバリアを形成する(該バリアは、「ガスカーテン」と呼ぶことができる)。領域504におけるノズルの下の基板に凝縮しない有機蒸気は、排出部(例えば、
図4の排出チャネル402)に入る搬送ガス流505中を依然として運搬される。その後、この流れが排出部(例えば、
図4に示される排出チャネル402)を通り過ぎるに伴い、堆積領域から材料が除去される。
【0101】
図6は、流れ場における有機蒸気の濃度のプロットを示す。図示するように、高濃度の有機蒸気を含む噴流601は、搬送開口部から生じ得る。該噴流中の材料は、濃度勾配602を横切って基板に向かって拡散的に移動する。蒸気の残りは、噴流の一部と共に基板から運ばれ、603を介して排出孔から排出される。ストリームラインを横切って閉じ込めガス流に拡散する有機蒸気は、閉じ込めガスが排出されるにつれて、排出チャネルを通して除去することができる。閉じ込めガス流からの対流は、有機蒸気を上方且つ基板から遠去かる方向に運ぶ。したがって、閉じ込めガス流に覆われている基板領域への有機蒸気の輸送を僅かにすることができる。
【0102】
ペクレ数Peは、このような流れにおける、対流輸送と拡散輸送との比を記述するために使用することができる。
Pe=lu/D
式中、lは、特性長であり、uは、特性速度であり、Dは、ガス環境中での有機蒸気の拡散率である。
図3〜6に関して記載される構成において、Peは、ノズルの下で約1〜10、閉じ込めガス流においては10〜100である。したがって、対流輸送は、閉じ込めガス流において優勢であり、排出チャネルを通しての有機蒸気の効果的な除去を可能にする。
【0103】
対流輸送技術の有効性、特に、付着係数が1未満の有機成分を堆積するときの有効性について、
図7A及び7Bに示す。
図7Aに示すように、α=1のときに、非常にシャープに形成された形成要素701を得ることができる。α=0.5(702)及びα=0.l(703)のときには、著しい広がりがあり、目的とする形成要素が、広範囲に亘るオーバースプレーのテール部で囲まれている(
図7Aに示す)。
図7Bに示すように、本明細書に開示するガスカーテン技術は、平易なノズルの場合よりも、α=1(704)の場合に、より広い形成要素形状となるが、α=0.5(705)及びα=0.1(706)のときには、その堆積形状は、殆ど変わらない。即ち、ガスカーテンのオーバースプレー軽減力は、付着係数からほぼ独立しており、より広範なOLED材料の堆積に好適である。
【0104】
開示する主題の実施形態の堆積システムは、任意の好適な技術を用いて作製することができる。例えば、ノズルブロックの構成部分は、フォトリソグラフィー、反応性イオンエッチング等を用いて、シリコンウェハにエッチングすることができる。例えば、多数のウェハにチャネルをエッチングし、次いで、該ウェハを、ウェハボンディング及び/又は光学アラインメント技術を用いて互いに結合させて、所望の三次元構造を形成することにより、前記構造を作製することができる。好適なウェハボンディング技術としては、例えば、陽極、金属共晶、はんだ、Si接合などが挙げられる。他の例としては、ステルスダイシング等によって、個々のダイを分離させてウェハ構造を形成し、ダイエッジによって画定されるノズルブロック上にノズルチップ、排出チャネル、及びその他のポートを形成することができる。
【0105】
OLEDディスプレイの製造に用いられる有機材料は、通常、真空熱蒸着(VTE)によりシャドーマスクを通して堆積される。シャドーマスクは、フレーム上で延伸され、次いで、基板上のパターンに沿って配置される薄い金属シートから作製することができる。シャドーマスク中の孔は、堆積により覆われる基板領域を画定することができる。大面積ディスプレイの場合には、通常、歩留まりに悪影響を及ぼし得るマスクの加熱及びたるみのために、シャドーマスクを使用することが困難である。
【0106】
有機気相ジェットプリンティング(OVJP)は、シャドーマスクを使用せずに大面積に細い画素幅線をプリントすることができる蒸気堆積技術である。不活性搬送ガス中を運搬される有機蒸気は、ノズルから吐出され、蒸気が凝縮する基板上に衝突し、堆積膜となることができる。ノズルを設計することにより、堆積物のサイズと形状を決めることができる。
【0107】
図8は、サイズが直径約0.3mmに制限された、金属又はガラスに形成した丸いノズルを用いる第1世代のOVJPシステムを示し、幅が数mmの線を堆積することができる。このようなノズルに関する断面厚みプロファイルを
図9に示す。1つのOVJPノズルを用いて線を堆積するためには、例えば、大面積ディスプレイを製造する又は二次元パターンを形成するためには、通常、基板上にノズルを走査させる、又は固定したノズルの下に基板を走査させる。具体的な例として、高解像度の4K HDディスプレイは、通常、3840列の垂直画素を有する。このようなディスプレイを、1つのノズルで一回に1列プリントすることは、非常に時間がかかることがある。各ディスプレイ工程を完了させるための望ましい時間(タクトタイム)は、約2〜5分である。タクトタイムの要件を満たすために、ノズルアレイが必要とされる。
【0108】
個々の又は分離されたOVJPノズルを用いた堆積について分析されているが、このような分析は、通常、ガス流の作用及び隣りのノズルによって引き起こされる堆積パターンを無視している。分離されたノズルからの堆積パターンは、
図9に示すようなガウシアン厚みプロファイルを示す。パターンの幅は、ノズル直径、ノズルと基板との間の距離、堆積チャンバ圧力、及び搬送ガス及び有機蒸気の流れの関数であることができる。このようなノズルが1つタイプの場合、堆積プロファイル幅は、通常、ノズル直径よりも遥かに広い。1つのノズル又はノズルアレイにおいて、ノズルが2mm以上分離されていると隣接作用を排除するとの実験結果が得られている。ノズルが隣接して配置される場合(例えば、数百ミクロンの範囲で)、1つのノズルから流れるガスが、隣りのノズルの堆積パターンを変えることがある。所望のタクトタイムを達成し、大面積ディスプレイを製造するためには、多くのノズルを用いる必要がある。所望の画素寸法を達成するためには、隣接効果が堆積プロファイルに対して優勢となる、互いの近くにノズルを配置する必要がある。
【0109】
有機材料は、基板表面に凝縮しない搬送ガス中を、昇華源からノズルに運搬されることができる。真空チャンバ内の二次元ノズルアレイにおいて、アレイの中心にあるノズルは、基板とノズルアレイとの間の小さなギャップの伝導制限により、周囲のノズルよりも高いバックグラウンド圧力を受け得る。大きなアレイ(例えば、約5以上のノズルを有するアレイ)で、基板−ノズルアレイギャップがノズルブロックの厚みよりも遥かに小さい場合には、圧力変化は、アレイの中心でかなりになり得る。OVJPノズルは、通常、限られた圧力及び流れの範囲で操作された場合にのみ、最も細い線幅を生成する。ノズルが流れ込む圧力を上げることにより、線幅が変わり、堆積速度が低下することがある。即ち、開示する主題の実施形態のノズル設計の場合には、圧力範囲を100〜200Torrとしてもよいが、ノズルは、10〜760Torrで駆動するように構成できた。OVJPノズルは、広範囲の堆積圧力で駆動するように構成することができるが、隣接効果により、アレイのサイズと、圧力を操作するためのノズル間間隔が制限されることがある。
【0110】
図10A〜10Bは、500ミクロン離間された30ミクロン幅の単純ノズル4個の従来型線状アレイの、数値流体力学(CFD)によりモデル化された堆積(厚み)プロファイルを示す。このシミュレーションの搬送ガス圧力は、15,000Paであり、チャンバ圧力は、10,000Paである。
図10Aは、4つのノズルから生じるストリームラインを示す。2番目のノズルと3番目のノズルとの間に流れは存在しない。2番目と3番目のノズルからの流れは、ノズルアセンブリのエッジの低圧力領域により、1番目と4番目のノズルにそれぞれ向けられる。
図10Bは、得られた堆積プロファイルを示す。2つの内側のノズルは、外側のノズルよりも堆積速度が低く、ノズルアセンブリの外側エッジに向けられたノズル間のガス流により、いずれの堆積プロファイルも非常に広い。
【0111】
不所望の堆積を低減する及び/又は排除するためには、ノズル間のガス流の広がりを低減する及び/又は排除する必要がある。開示する主題の実施形態は、
図11に示すように、最も近い隣接効果を低減及び/又は排除し、高密度に充填されたOVJPノズルアレイを可能とするノズルを提供する。各ノズルアセンブリにバランスのとれた供給及び排出をもたらすことにより、ノズル間の圧力及びガス流の正味の変化を排除する。各ノズルアセンブリは、次の3つの流れ要素を含む:搬送ガス及び有機材料のための搬送チャネル、排出チャネル、及び閉じ込めガスチャネル(例えば、3要素ノズル)。搬送ガスとパージガスとが組み合わせられた流れは、排出チャネルを通して等価な流れを排出することによってバランスがとられる。搬送ガス、閉じ込めガス、及び排出流チャネルそれぞれの開口部は、基板に衝突する有機材料により生じた堆積物を閉じ込めるように配置され、且つ基板に吸着しない余剰の有機材料を除去するように配置される。
図11は、角度を付けた排出チャネルを含む流れチャネルの一構成を示す。流れチャネルの他の構成も可能である。
【0112】
図12は、開示する主題の実施形態に係る、各供給源から入り、プリントヘッドとノズルアセンブリとの間の領域513を横切り、排出チャネル514を通って排出する搬送ガス流511及び閉じ込めガス流512のモデル化したストリームラインを示す。搬送ガスの広がりは、対向する閉じ込めガス流により制限することができる。
【0113】
図11に示すように、各ノズルは、ノズルアセンブリの中心に搬送チャネルを設けて構成することができる。排出チャネルは、搬送開口部の側部近くに位置させることができる。2つの閉じ込めチャネルを、排出チャネルに隣接して、ノズル中心からより離れた箇所に配置することができる。
【0114】
チャネルは、5つの流れチャネル(例えば、搬送チャネル、2つの排出チャネル、及び2つの閉じ込めガスチャネル)が非流れ領域により分離された層状構造を形成することができる。エッジ側から見ると、チャネルは、5つの開口部を形成している。前記開口部は、閉じ込めガスチャネル、排出チャネル、及び搬送チャネルに連通可能に連結される開口部を含むことができる。
図13は、分割された搬送チャネルを示し、一対の狭い開口部となっている。
図13の基板側図において、各開口部は、短軸が基板上への移動方向に直交する略矩形形状で示されている。
図13に示すように、搬送開口部は、排出及び閉じ込め開口部よりも長手方向の長さ(ノズルの長軸)が短い。各チャネルにおける開口部及びガス流の間隔及び形状は、オーバースプレーが制限されて又はオーバースプレーなしに、所望のプリント線幅を作製するように構成することができる。プロセス条件は、各ノズルアセンブリからの正味の流れがゼロで、ノズルアセンブリに流入する流れとノズルアセンブリから流出する流れとが等しく、隣り合うノズル間の正味の圧力変化がないように設定することができる。
【0115】
図14A〜14Dは、単純ノズルの線状アレイの概略図、及び堆積パターンに対する最も近い隣接効果の数値流体力学(CFD)分析を示す。
図14Aは、3要素ノズルアセンブリ(例えば、搬送チャネル、排出チャネル、及び閉じ込めガスチャネル)の開口部形状を示し、
図14Bは、ノズルアセンブリの流れチャネルを示す断面図である。
図14C(即ち、「バランスのとれた流れ」)は、4つのノズルの3要素ノズルアレイ(即ち、4ノズルアレイの各ノズルは、3つの要素を有する)をモデル化するのに用いられるノズル構成を示し、ノズルアレイを用いて得られたモデル化厚み分布を
図14Dに示す。
図14A〜14Dのプロセス条件を表1に示す。開示する主題の他の実施形態を
図14Eに示すが、同図では、1つ以上の排出チャネル又は閉じ込めチャネルが、ノズルアセンブリの線状アレイの各側の外側部分に位置している。部分的ノズルアセンブリ1402は、搬送開口部を有さない。排出及び/又は閉じ込めチャネルは、これらの部分的ノズルアセンブリにおいて、単独で、対をなして、又は多数で存在することができる。排出及び/又は閉じ込めチャネルは、アレイの中心により近いノズルアセンブリ1401で堆積を行う流れ場に対するエッジ効果を低減させることができる。
【表1】
図14A〜14Dのモデル化結果を得るために用いられるプロセス条件
【0116】
図10B及び
図14Dは、単純ノズルの4ノズルアレイ(
図10B)及び3要素ノズルの4ノズルアレイ(
図14D)から得られたモデル化結果の比較を示す。単一ノズルのストリームラインの比較から、隣りのノズルにより生じる流れが堆積パターンを、ガス流がノズルアレイの外周に向かう方向にシフトさせることが分かる。このシフトは、2つの効果を有する:(1)堆積物の中心を移動させること、及び(2)堆積を広げること、である。3要素堆積プロファイルは、幅150μmのよく揃ったピーク形状を示す(
図14D)。単純ノズルプロファイル(
図10B)は、堆積が広い不規則形状のピークを示す。2つの内側ノズル由来の堆積は、外側ノズル由来の分布と一体になっている。ディスプレイの画素は、一定間隔で離間させることができ、各画素の有機材料は、当該画素由来の材料が、隣りの画素に侵入しないように堆積させる必要がある。ノズルからのフラックスが隣りのノズルのためにシフトする場合、堆積分布のテール部が隣りの画素に移動することがある。材料が隣りの画素に堆積すると、色、効率、寿命に悪影響が出ることがある。各画素内において、堆積した有機材料は、均一な厚み及び組成プロファイルを有している必要がある。ノズルからのフラックスが変わると、厚みプロファイルに均一度が低くなり、各画素から発せられる光の質が等価ではなくなる。
【0117】
線状アレイノズルに加えて、
図15及び
図16に示すように、二次元アレイとすることもできる。
図15は、連続する列の開口部からの堆積が、1番目の列からの堆積を付け加えるように配列された堆積開口部を有する二次元アレイを示す。
図16は、配列された堆積ノズル及び交互になっている堆積ノズルの両方を有する二次元アレイを示す。この構成では、ノズルが交互になっているので、
図15のアレイの間隔の半分のラインをプリントすることができ、
図15に示すような、2つの配列されたノズルを有する各ラインを、2重にプリントすることができる。
【0118】
前記に鑑みて、開示する主題の実施形態は、ノズルと、前記ノズルと流体連通する基板に堆積される材料源と、前記ノズルで堆積される前記材料源と流体連通する搬送ガス源と、前記ノズルに隣接して配置される排出チャネルと、前記ノズル及び前記排出チャネルと流体連通し、前記排出チャネルに隣接して配置される閉じ込めガス源とを有するデバイスを含むことができる。
【0119】
本明細書に開示する堆積デバイス又はシステムは、外部の真空源に接続されるように構成されたコネクタを含むことができる。前記コネクタは、外部の真空源と接続されて、排出チャネルに連結される排出開口部を、前記外部の真空源と流体連通させる。
【0120】
デバイスの排出チャネルは、搬送ガス開口部が搬送ガス源と流体連通する搬送ガス開口部から遠去かる方向に角度を付けることができる。
【0121】
閉じ込めガス源からの閉じ込めガスは、搬送ガス温度より低い温度で提供することができる。前記閉じ込めガスは、閉じ込めガス源より、ノズルの更なる開口部を通る搬送ガスと同温で提供することができる。或いは、閉じ込めガス源からの閉じ込めガスは、搬送ガス温度より高い温度で提供することができる。
【0122】
前記デバイスのノズルは、複数の開口部を含むことができる。前記ノズルは、搬送チャネル開口部内に配置される搬送チャネルセパレータを含むことができ、前記搬送チャネルセパレータは、前記搬送開口部を2つ以上の別の開口部に分け、搬送チャネル開口部は、搬送ガス源と流体連通する。
【0123】
前記デバイスは、搬送開口部及び排出開口部を有するノズルブロックを含むことができ、前記搬送開口部は、前記搬送ガス源と流体連通し、前記排出開口部は、前記排出チャネルと流体連通する。1つ以上の排出開口部は、ノズルブロック内の搬送開口部の少なくとも一部を囲むことができる。前記搬送開口部は、ノズルブロックのエッジとノズルブロックのチャネルとにより画定することができる。前記排出開口部は、ノズルブロックの前記チャネルの少なくとも一部を囲むことができる。
【0124】
前記ノズルブロックは、閉じ込めガス源と流体連通する1つ以上の閉じ込めガス開口部を含むことができる。前記ノズルブロックは、前記ノズルに隣接して配置される冷却プレートを含むことができる。前記ノズルブロックは、複数のノズルを含むことができる。幾つかの実施形態においては、前記複数のノズルは、ノズルブロック内に線状配列で配置することができる。或いは、前記複数のノズルは、ノズルブロック内に交互配列で配置することができる。
【0125】
閉じ込めガス源からの閉じ込めガスは、搬送ガス源からの搬送ガスと、少なくとも同じ平均モル質量を有する。或いは、閉じ込めガス源からの閉じ込めガスは、搬送ガス源からの搬送ガスよりも高い平均モル質量を有する。閉じ込めガス源は、デバイスの外部にある外部閉じ込めガス源と流体連通することができる。上で述べたように、閉じ込めガスは、純粋なガス(例えば、単一ガス)又は2種以上のガスの混合物であることができる。
【0126】
前記デバイスは、例えば、
図11に示されるように、基板の下に配置される基板ホルダーを含むことができる。前記基板ホルダーは、前記基板の装填及び取り出しを可能にし、プリント中、前記基板をノズルアセンブリに対して移動させる。前記基板ホルダーは、基板が前記ノズルから10〜1000μm離れて位置するのに十分に、前記ノズルから離れた距離に配置することができる。前記基板ホルダーを温度制御して、プリント中に前記基板に移動した熱を除去すると共に、有機材料をプリントするための最適温度に基板を維持することができる。温度制御は、前記基板ホルダーの内部の冷却ループにより達成することができ、これは、熱交換流体が、前記基板ホルダーとヒートシンクとの間の閉回路を流れることを可能にするものである。温度制御は、熱電デバイス及び/又はヘリウムバックサイド冷却で行える。
【0127】
開示する主題の実施形態は、搬送ガスと、基板上に堆積される材料とを、ノズルから吐出することと、前記ノズルから吐出される前記搬送ガスの流れ方向と反対の流れ方向を有する閉じ込めガスを提供することと、前記ノズルの搬送ガス開口部に隣接する真空源を提供することとを含む方法も提供する。
【0128】
前記方法は、また、前記ノズルの下の周囲温度より低い温度で、前記閉じ込めガスを提供することを含むことができる。
【0129】
前記方法は、前記ノズルの別の開口部を通して、搬送ガスと同じ温度で前記閉じ込めガスを提供することを含むことができる。或いは、前記方法は、搬送ガス温度より高い温度で前記閉じ込めガスを提供することができる。前記閉じ込めガスは、周囲のチャンバから提供することができる。
【0130】
前記閉じ込めガスは、前記ノズルが配置されているプロセスチャンバの外部にある閉じ込めガス源と流体連通している1つ以上のノズルから提供することができる。前記閉じ込めガスは、前記ノズルの一対の開口部を通して提供することができる。前記方法は、前記閉じ込めガスを冷却することを含むことができる。
【0131】
前記方法は、前記ノズルに隣接して配置される基板上に前記ノズルを走査させて、前記基板の上に連続膜を形成することを含むことができる。
【0132】
前記方法は、1つ以上の開口部を有する前記ノズルを介して、複数の搬送ガスと、基板に堆積される複数の材料を提供することを含むことができる。
【0133】
開示する主題の実施形態は、各ノズルが少なくとも3つの別の種類の流路を含む複数のノズルを有するノズルアセンブリを提供することができ、前記3つの流路は、有機材料を含む搬送ガスを提供する搬送チャネル、前記搬送チャネルに隣接して配置され、前記ノズルアセンブリと基板との間の領域からガスを排出する排出チャネル、前記排出チャネルに隣接して配置され、閉じ込めガス流を供給する閉じ込めガスチャネルを含む。
【0134】
前記ノズルアレイの前記ノズルは、線状アレイを形成するように配置することができる。或いは、前記ノズルアセンブリの前記ノズルは、二次元アレイを形成するように配置することができる。
【0135】
前記搬送チャネル及び前記閉じ込めガスチャネルからのガス流の合計は、前記排出チャネルからのガス流に等しくてもよい。前記排出チャネルからのガス流が、前記ノズルアセンブリの前記搬送チャネル及び前記閉じ込めガスチャネルからのガス流の合計より多くてもよい。或いは、前記排出チャネルからのガス流が、前記ノズルアセンブリの前記搬送チャネル及び前記閉じ込めガスチャネルからのガス流の合計より少なくてもよい。
【0136】
前記ノズルアセンブリは、線状又は二次元(2D)アレイ状に配置される複数のノズルと、その底面に配置されるガスチャネルとを有するノズルブロックを含むことができる。
【0137】
図17に示すように、ノズルアセンブリのノズルブロックは、閉じ込め流通チャネルを含むことができる。前記閉じ込め流通(分配:distribution)チャネルは、プロセスチャンバの周囲又は別体のガス供給源から各ノズルアセンブリの閉じ込めチャネルへの閉じ込めガス流の低抵抗流路を提供する。この場合、前記閉じ込め流通チャネルは、搬送及び排出開口部の下の堆積領域に隣接するノズルアセンブリと基板との間の領域であることができる。前記閉じ込め流通チャネルにより、チャンバ周囲を各ノズルアセンブリと流体連通させることができる。閉じ込め流通チャネルは、前記ノズルブロック内で一体にすることができる、又は基板に隣接する前記ノズルブロックの表面の凹部とすることができる。ダイ表面の凹部と基板との間に形成された広げられたガス流路は、閉じ込め流通チャネルを形成する。開示する主題の実施形態においては、前記閉じ込め流通チャネルは、前記ノズルブロックの面と平行な面に一定の断面を有する、ノズルブロックの基板側エッジの凹部から形成することができる。前記閉じ込め流通チャネルは、1つが各ノズルの各側と隣接するように配置することができる。
【0138】
前記搬送ガスは、前記閉じ込めガスより低い分子量を有することができる。幾つかの実施形態においては、前記搬送ガス及び前記閉じ込めガスは、同じガスであることができる。前記搬送ガスの分子量は、前記閉じ込めガスの分子量より高くてもよい。
【0139】
開示する主題の幾つかの実施形態においては、前記ノズルアセンブリの各ノズルからの堆積パターンは、互いに等価であることができる。
【0140】
開示する主題の実施形態は、各ノズルが少なくとも3つの別の種類の流路を含む複数のノズルを形成することを提供することができ、有機材料を含む搬送ガスを提供する第1のチャネルを形成することと、前記第1のチャネルに隣接して配置され、前記ノズルアセンブリと基板との間の領域からガスを排出する複数の第2のチャネルを形成することと、前記複数の第2のチャネルに隣接して配置され、閉じ込めガス流を供給する複数の閉じ込めガスチャネルを形成することとを含む。
【0141】
開示する主題の実施形態は、また、各ノズルが少なくとも3つの別の種類の流路を含む複数のノズルを有するノズルアセンブリを有する堆積システムを提供し、前記流路は、有機材料を含む搬送ガスを提供する第1のチャネルと、前記第1のチャネルに隣接して配置され、前記ノズルアセンブリと基板との間の領域からガスを排出するる複数の第2のチャネルと、前記複数の第2のチャネルに隣接して配置され、閉じ込めガス流を供給する一対の閉じ込めガスチャネルとを含む。
【0142】
開示する主題の実施形態は、更に、ノズルアセンブリを用いて有機材料を堆積するして作製されたディスプレイを提供し、前記ノズルアセンブリは、各ノズルが少なくとも3つの別の種類の流路を含む複数のノズルを有し、前記流路は、有機材料を含む搬送ガスを提供する第1のチャネルと、前記第1のチャネルに隣接して配置され、前記ノズルアセンブリと基板との間の領域からガスを排出する複数の第2のチャネルと、前記複数の第2のチャネルに隣接して配置され、閉じ込めガス流を供給する複数の閉じ込めガスチャネルとを含む。
【0143】
図1〜21に関連して上述したOVJP堆積ノズルは、例えば、ディスプレイデバイスなどの堆積プリンティングに用いることができる。前記堆積プリンティングは、平面基板などの平面上、及び/又は湾曲基板などの非平面基板上、及び/又はロール・ツー・ロール堆積プロセスで用いられるフレキシブル基板で行うことができる。一般に、従来のOVJPプリントヘッド設計では、キャリアガス流を止めることによりプリンティングを停止させている。これは、一般に、キャリアガス流を止めた後もシステムに残存する、プリントヘッドと昇華源バルブとの間の大量キャリアガスにより効果的ではない。従来のOVJPプリントヘッドにおいては、プリントノズルが、流量制限器として作用し、滞留ガスラインにトラップされたガス及び有機蒸気は、キャリアガスがなくなるまで、ノズルを通ってゆっくりと流れ、その結果、基板上に不所望の材料堆積が生じ得る。プリンティングを停止させる他の従来技術は、該源を真空にし、素早くガスラインを空にすること、又はキャリアガス源を遮断することにより行っている。一般に、これらの技術ではいずれの場合も、良好に制御された迅速なプリンティングの再開とならないことがある(例えば、Digital−Mode Organic Vapor Jet Printing(D−OVJP):Advanced Jet−on−Demand Control of Organic Thin film deposition, Yun et.al, Adv. Mater. 2012参照)。対照的に、開示する主題の実施形態は、1つ以上のプロセスパラメータを調節することにより、迅速な開始及び停止能を有するプリントヘッドを提供する。幾つかの実施形態においては、アクチュエータによりノズルのフライハイトを調節して、プリンティングを迅速に停止及び開始させることができる。
【0144】
本明細書で開示するOVJP堆積ノズルは、比較的に小さい形成要素(例えば、細い線幅)を作製することができ、目的のプリンティング領域を超える有機材料のオーバースプレー堆積を最小にする。一般に、オーバースプレーとは、プリントしようとする基板の領域の周りにあることがある、不所望のプリント材料の薄いコーティングを意味する。例えば、形成要素の5%ピーク高さにおける全幅(FW5M)の10%を超えて広がる堆積は、オーバースプレーと考えられる。オーバースプレーにより、意図しない領域に材料がプリントされ、望ましくない結果をもたらす。
【0145】
前記ノズルは、所定の低質量キャリアガス、堆積チャネルに隣接する排出チャネル、及び堆積及び排出チャネルの狭い領域に堆積物を閉じ込める更なるガスの供給源との組合せを用いることができる。
【0146】
開示する主題の実施形態の例において、システムは、前述したノズルと、前記ノズルと流体連通する基板に堆積される材料源と、前記ノズルで堆積される前記材料源と流体連通する搬送ガス源と、前記ノズルに隣接して配置される排出チャネルと、前記ノズル及び前記排出チャネルと流体連通し、前記排出チャネルに隣接して配置される閉じ込めガス源と、前記ノズルの堆積ノズル開口部と堆積ターゲットとの間のフライハイト分離を調節するアクチュエータとを含むことができる。前記フライハイト分離の調節により、前記ノズルから材料の堆積を停止させることができる。即ち、フライハイトの調節により、搬送ガス流が前記基板に衝突することを防ぐことができる。有機材料の堆積の停止に十分ではないが必要な条件は、所定のフライハイトにおいて、排出開口部を通る流れがノズルアセンブリの搬送開口部を通る流れと等しい又はそれを超えることである。そのようなシステムを、例えば、
図22及び
図23に示すことができる。具体的には、
図22は、
図4に示す上述のノズルアセンブリと同様の、ノズルアセンブリの断面図である。即ち、
図22は、材料が基板に堆積されるときに通るチャネルと、プリントヘッドを有するチャンバの真空及び閉じ込めチャネルを示す。
【0147】
図23Aは、実施形態に係るノズルアレイ301の例を示し、これは、1つ以上のノズルを含んでいてもよい。例えば、ノズルアレイ301は、
図11〜13を参照して前述した1つ以上のノズルであることができる、又は
図14A、14B、15、及び16を参照して記載したようなノズルアレイ又は他の配列の多数のノズルの配列であることができる。前記ノズルアレイ301は、前記ノズルアレイ301のフライハイトに従って、材料を前記基板302の上に堆積することができ、ここで「フライハイト」とは、前記ノズルアレイ301の堆積ノズル開口部と堆積ターゲット(例えば、前記基板302)との間の距離を意味する。前記ノズルアレイ301の前記フライハイトは、アクチュエータ310によって調節することができ、前記アクチュエータは、コントローラ320によって制御される。変位センサ330は、前記ノズルアレイ301と前記基板302との間の距離を測定することができる。前記変位センサ330によって検出された距離は、前記コントローラ320に提供され、前記アクチュエータ310を制御することができる。即ち、前記変位センサ330は、例えば、前記ノズルアレイ301の堆積ノズル開口部と平行な面内を動く堆積ターゲット(例えば、前記基板302)上の前記フライハイトを測定するセンサであることができる。
【0148】
前記コントローラ320は、前記アクチュエータ310の動作を制御する任意のプロセッサー、集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、及び/又はプログラマブル論理装置であることができる。前記コントローラ320によって制御される前記アクチュエータ310は、前記ノズルアレイ301のフライハイトを調節して、基板上の材料堆積をオン又はオフすることができる。即ち、前記フライハイトが増大し、前記ノズルアレイが前記基板からの第1の距離になると、前記材料が前記基板に堆積しないようにすることができる。前記フライハイトが低下し、前記ノズルアレイが前記基板からの第2の距離になると、前記材料を前記基板に堆積させることができる。材料が基板に堆積される又は堆積されない距離は、プロセスパラメータの特定のセットとして予め測定することができ、迅速且つ簡単に堆積を開始及び停止させることができる。一般に、前記フライハイトが特定の値を超えると、堆積を停止させることができる。その理由は、前記フライハイトが特定の値を超えると、閉じ込め流は、排出により材料を除去すると共に、材料が基板に到達することを防ぐことができるからである。ノズルアレイと基板との間のフライハイトを増加させることにより、搬送流が横切って基板に到達する長さを長くすることができ、排出により補捉される有機蒸気部分を増大させる。フライハイトを増加させることは、また、排出に向かう閉じ込めガス流を増加させることができ、堆積領域からの有機蒸気の除去効率を更に増加させることができる(
図23B〜23Cに示す)。1つ以上の変位センサ330は、ノズルアレイ301に隣接して位置させて、前記ノズルアレイと基板302との間の距離を感知することができる。このフライハイト分離は、プリントヘッドに対する基板の位置を変えるアクチュエータ310によって制御することができる。
図23Bに示すように、前記基板とプリントヘッドが隣接している場合、搬送流501のストリームラインは、基板にまで延びる。有機蒸気を基板に輸送することができる。閉じ込め流502は、基板上の堆積領域の周りを流れることができる。
図23Cに示すように、プリントヘッドを基板から遠去けて保持すると、搬送流のストリームラインは、基板まで延びず、基板表面に有機材料が輸送されない。閉じ込めガス流502のストリームラインは、搬送ガス流と基板との間に存在する。フライハイトが規定値を超えると、搬送流中の有機蒸気を排出チャネルによって回収することができ、プリンティングのオン又はオフを、フライハイトを制御することにより行うことができる。
【0149】
前記コントローラ320及び前記アクチュエータ310により、フライハイトを調節することができ、搬送ガス流を、排出チャネルからの排出流より少ない又はこれと等しくする。堆積を停止させるために調節される、ノズルアレイ301のノズルの堆積ノズル開口部と堆積ターゲット(例えば、前記基板302)との間のフライハイト分離は、例えば、材料堆積時のフライハイト分離の5〜10倍とすることができる。幾つかの実施形態においては、堆積を停止させるために調節されるフライハイト分離は、材料堆積時のフライハイト分離の10倍超とすることができる。コントローラ320は、アクチュエータ310を制御して、前記ノズルアレイ301のノズルの堆積ノズル開口部と平行な面内を動く堆積ターゲット(例えば、前記基板302)の位置に応じてフライハイトを変えることができる。
【0150】
前記ノズルアレイ301の1つ以上のノズルは、コントローラ320によって制御され、チャンバ圧力、排出圧、排出流、搬送流、及びフライハイトのうち少なくとも1つに従って、形成要素を堆積させることができる。幾つかの実施形態においては、前記センサ330は、フライハイトだけでなく、チャンバ圧力、排出圧、排出流、及び/又は搬送流の1つ以上を検出することができる。幾つかの実施形態においては、コントローラ320は、フライハイトを調節して、搬送ガス流が、排出チャネルからの排出流より少なくする又はこれと等しくすることができる。
【0151】
幾つかの実施形態において、センサ330によって測定される、25〜1000Torrのチャンバ圧力は、ノズルアレイ301のノズルからの材料堆積を停止させることができる。25〜500Torr及び/又は100〜200Torrのチャンバ圧力は、ノズルアレイ301のノズルからの材料堆積を停止させることができる。幾つかの実施形態においては、材料がノズルアレイ301のノズルによって堆積される場合、フライハイト分離を25μm〜75μm、チャンバ圧力を50〜200Torrとすることができる。一般に、チャンバ圧力を高くすればするほど、基板上への材料堆積を防止又は遮断すること、或いは一定のプロセスパラメータを可能にする、より小さなフライハイト分離を許容する。これについては、以下により詳細に記載する。
【0152】
ノズルアレイ301によって堆積された形成要素は、例えば、パターン化されたOLED又は他のデバイスで使用される、線、画素又はサブ画素、及び/又はパターンであることができる。基板を横切る形成要素の幅は、1,000μm未満又はこれと等しくすることができる。例えば、正方形又は長方形の画素又はサブ画素を堆積する場合、基板を横切る前記画素又はサブ画素の最も長い幅は、1,000μm以下とすることができる。線を堆積する場合、基板を横切る線の幅は、1,000μm以下とすることができるが、任意の長さの線を、例えば、基板及びノズルの相対的な並進運動により堆積させることができる。幾つかの実施形態においては、形成要素は、50μm未満の半値全幅(FWHM)であることができる。即ち、前記コントローラ320は、チャンバ圧力、排出圧、排出流、搬送流、及びフライハイトの少なくとも1つに応じて、ノズルアレイ301を制御して、FWHMが50μm未満である形成要素を堆積することができる。
【0153】
コントローラ320は、フライハイト、ガス流、及びチャンバ圧力の少なくとも1つを変えることによりノズルアレイ301を制御して、材料の排出を停止させることができる。
【0154】
図24は、シリコンダイ(例えば、MEMSノズル(基板側からノズルを見たとき))の、本明細書に開示するノズル開口部(例えば、
図23のノズルアレイ301のノズル開口部)の一例の底面図を示す。基板に材料を堆積するために使用される場合、ノズルアセンブリ又はプリントヘッドは、約10〜1,000ミクロンのギャップを空けて、基板上方に位置させることができる(例えば、
図22を参照)。
【0155】
堆積流は、キャリアガスに伴われる有機材料を含むことができ、真空は、チャンバ周囲圧より低い圧力で動作する真空ポンプにより提供される。例えば、
図13〜14を参照しつつ前述した通り、閉じ込めガスは、周囲のチャンバガスによって提供される、又はプリントヘッドを通して別のチャネルから供給することができる。
【0156】
OVJPを用いてOLEDディスプレイ又は類似デバイスをプリンティングするために、画素又はサブ画素を線状の列に配置して、着色線及び/又は縞をディスプレイ上に形成することができる。前記画素は、アクティブ(画素化された領域)の一端から他端に連続的な形成要素(例えば、線)としてプリントすることができる。このようなプリンティングは、各線に沿って連続的であることができ、OLED材料を、該線に沿って画素間の分離領域に堆積する。通常、従来のOVJP技術の欠点の1つは、アクティブディスプレイ領域の始めと終わりとでプリンティングを迅速に開始又は停止させることができない点である。
【0157】
プリントされた有機形成要素(例えば、線、縞、画素、パターンなど)が連続的で、カバーガラスシールの領域の外部にまで延びると、製造されたディスプレイは、露出した有機物を通って水分及び酸素が浸透することにより、寿命が短くなる。
実施例
【0158】
ガスカーテンのパラメータ空間を、二次元DSMC技術及び数値流体力学(CFD)技術の両方を用いて調べた。構造体は、
図4に示されるように断面として扱い、その面内が無限であるものとして扱った。エッジ効果の重要性を、3次元CFDを用い、同様の構造体をシミュレートすることにより評価した。これを用いて、
図18に示す、基板平面への有機物フラックスのマップを生成した。高い有機物フラックス801の領域は、ノズルアセンブリの下の、プリントされるスポットサイズの予想サイズ及び形状と相関する。有機物フラックスの強度は、グレースケール802で与えられる。シミュレーションにより、全体的なプリンティング性能を損なわせることがないと予期される、良好に制御されたエッジ効果が予測された。
【0159】
ガスカーテンデポジタを含む1組のダイを、一対のSiウェハから、ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて、直線状の側壁を有する溝を形成することにより作製した。前記ウェハのエッチング面上の鏡像構造を互いに対向させて配置し、前記ウェハ対をAu−Geはんだを用いて接合した。このプロセスにより、前記ダイの内部にチャネルが形成された。溝の垂直の側壁は、チャネル側面になった。1つのSiウェハの研磨表面と他のウェハのエッチング溝の底面との間のレリーフにより、幾つかのチャネルの深さが画定された。
【0160】
より深いチャネルを、チャネル深さがエッチング深さの合計であるように、エッチング溝を合わせることにより形成した。チャネルの上流端に対するビアを、DRIEで接合したウェハ対の外側面にエッチングした。ウェハの一方の側にあるビアを、有機蒸気及び搬送ガスチャネルとした。他方の側のビアを排出チャネルとした。DRIE又はステルスダイシングのいずれかを用いて前記ウェハ対からダイを1つにし、最小の切り口を有する非常に(<10μm)精密に配置された切り込みを形成した。ノズル(例えば、搬送チャネル)及び排出チャネルのいずれの開口部も、ダイ内の内部チャネルと、ダイシングプロセスによって形成されたその下端とが交わる点により画定された。構造体は、5つのノズルの組を含み、各ノズルは、跳ね返った有機材料を除去する排出チャネルの側面に置かれた中央の有機供給チャネルを含む。
【0161】
図19は、ウェハ対の一方の側にエッチングした形成要素の走査電子顕微鏡像を示し、開示する主題の実施形態に係るダイの一例の内部構造を示す。搬送チャネル901は、下側を画定する前記ダイの底部で、幅広のフィードチャネル902からブレークアウトライン903に走る。ノズルの両側にある排出開口部904により、余剰の有機蒸気及び搬送ガスが排出チャネル905を通してチャンバ外部の低圧領域に逃すことができる。ダイ906の下側にエッチングされた凹部は、閉じ込めガスのチャンバ周囲からノズルアセンブリの下側への流れを促し、それにより生じたガスカーテンの均一性を改善する閉じ込め流通チャネルとして機能する。
図19に示す構造を配列し、構造904及び905の鏡像を含む第2のSiウェハに接合した。これにより、ノズルが効果的に排出開口部で囲まれた封止構造が得られた。
【0162】
ダイをエッジ側から見ると、ノズルアセンブリの形成要素が外部から視認できる。操作中に基板に対向するダイの下端を
図20Aに示す。有機蒸気は、搬送開口部1001を通って基板に吐出される。ノズルアセンブリは、基板と相対的に、搬送開口部の長軸に平行な方向に動く。搬送開口部は、排出チャネル開口部1002によって、その両方の長辺で囲まれている。排出チャネルの排出開口部は、過剰な有機蒸気を回収し、目的の堆積領域の外部にある基板上で凝縮することを防ぐ。排出チャネルの排出開口部の長軸は、搬送開口部の長軸を越えて延び、中央ノズルの端部近傍のエッジ効果による有機蒸気の広がりを防ぐ。
【0163】
閉じ込めガスは、ノズルアセンブリの底面のエッジに沿って入る。チャンバ周囲からの閉じ込めガスの流れは、ノズルアセンブリ1003の下側に切られた閉じ込め流通チャネルにより促される。これらのチャネルは、ノズルアセンブリの両側にあり、ノズル開口部(例えば、搬送チャネルの開口部)の長軸に平行して走る。これらは、内側のエッジから排出チャネルへの均一な閉じ込めガスの流れを生成し、目的の堆積領域の外部への有機蒸気の移動を防ぐガスカーテンを生成する。閉じ込めガスは、また、ノズル開口部1004の短軸に平行のダイエッジに沿って入ることもできる。搬送及び排出開口部に接続しているダイの内部のチャネルは、
図19に示されるような形成要素を有する2つのSiウェハのエッチング表面を対にすることで作製される。これらから得られるウェハ及び1つにされたダイは、その開示内容の全体を参照によって援用する、米国特許公開2014/0116331に記載されるようなAu−Ge共晶はんだで互いに接合する。はんだ接合部1005は、ダイの中央部分を通って水平に走る。
【0164】
次の実験に先立ち、好ましいプロセス条件を確認するためにシミュレーションを行った。
図4中の入口403などの閉じ込めガス入口では、100Torrの圧力が、ほぼ最適であると予想される。10Torr未満での拡散係数及び有機分子平均自由行程の増加は、ガスカーテンの効果を制限する。反対に、300Torr超の著しく高い圧力で動作させることは、基板への有機蒸気の拡散輸送を制限する傾向にある。有機蒸気の凝縮防止のために、ノズルアセンブリを加熱する。前記ノズルアセンブリは、その上流にある蒸発及び混合設備と同様に、約300℃で動作する。ノズルアセンブリの基部は、基板上方50μmの保持される。
【0165】
最初の実験におけるように、閉じ込めガスは、専用ノズルを通して、又はチャンバ周囲から引くことによって、堆積領域に供給することができる。有機蒸気ジェット搬送ガス及び閉じ込めガスは、同一の供給源に由来する必要はないので、異種のガスを用いることができる。ヘリウムなどの軽い搬送ガスは、ノズルの下の有機蒸気の拡散速度を増加させるために用いることができる。アルゴン又は六フッ化硫黄などのより重いガスは、閉じ込めガスにおける基板への有機蒸気拡散及び熱移動のいずれをも抑制することができる。軽い搬送ガス及び重い閉じ込めガスを用いると、好適な周囲動作圧力範囲が、場合により大気圧まで広がる。大気圧でOVJPを行う能力は、これまでに実証されているが、非常に粗い解像度での実証である。
【0166】
有機蒸気分子及び搬送ガスの相互作用をBirdの直接シミュレーションモンテカルロ法を用いてモデル化した。最初に、搬送ガス流れ場を計算した。その後、有機蒸気を表すトレーサーをこの流れ場に導入した。それらの軌跡は、搬送ガス分子との相互作用により決定される。ヘリウム搬送ガスを、直径2.8×10
−10m、質量0.004kg/molを有する硬い球としてモデル化した。有機分子は、直径1×10
−9m、質量0.5kg/molとしてモデル化した(これらは、OLED材料に典型的な値である)。
【0167】
この方法は、Knが0.1超、分子が容器に比べて大きい平均自由行程を有する流れに対して、最も広く用いられている。これは、当該検討においては、最もよく動作する条件に当てはまらなかったが、有機蒸気分子によって伴われる流路に対する付着係数の効果を決定するために、原子論的な取り扱いが必要であった。不均一な付着は、付着係数αを、ガス分子と境界との間の熱的相互作用をモデル化するためによく用いられる適応係数として扱うことによりモデル化することができる。基板の境界を横切る有機分子は、境界と熱運動する確率αを有する。基板が分子の昇華温度より低いので、熱運動化した分子が吸着する。反対に、入射する有機分子は、境界と熱運動化しない確率1−αを有する。その場合、当該分子は、気相中に残り、勢いよく基板境界から跳ね返される。
【0168】
ノズルアセンブリによって形成された形成要素の厚み分布が付着係数と相対的な関係がないことが分かったので、数値流体力学ソフトウェア(COMSOL、Burlington、MA)を用いて、ガス流及びそれを通る有機蒸気の伝播をモデル化した。窒素ガス中の有機蒸気の輸送性を気体分子運動論から計算した。
図5〜7に示するように、ノズルアセンブリを断面として扱う二次元シミュレーションを用いて、その動作のパラメータ空間を調べた。より計算集約的な3次元モデルを用いて、最も有望な場合のより簡単なモデル結果を確認した。
図18は、このようなシミュレーションの一例の結果を示す。
【0169】
図20Aに関して本明細書に記載する堆積システムの実施形態を、
図20Bに示す構造体を作製し、リン光OLEDの発光層1012を成長させることにより試験した。発光層には、開示する主題の実施形態の有機蒸気ジェトプリンティングで堆積させた有機ホストと混合された緑色発光有機電子リン光性化合物を含有させた。OLEDは、ガラス基板1011上に作製され、標準的な方法で発光層の下に堆積させた、アノード層、ホール注入層、ホール輸送層1013を含んだ。電子輸送層及び電子注入層1014は、発光層の上に堆積させ、その上にカソード1015も堆積させた。電流を印加すると、層1013と1014との間に電子リン光性材料を僅か0.2Å含有する領域が明るく発光し、この構造は、堆積材料の運命を決定するために比較的効果的なものとなる。
【0170】
図21A〜21Bは、2種類の有機蒸気ジェットノズルアセンブリによってプリントされた線の例を示す。
図21Aの線は、
図20A〜20Bに示す構造体と同様に、実施形態に係るカーテンノズルアセンブリによりプリントした。チャンバ周囲は、100TorrのN
2とした。有機蒸気を運ぶヘリウム搬送ガスは、ダイの各20×150μmノズルを通して4sccmで供給し、ノズルの側面に位置する40×450μm排出チャネル(例えば、前記搬送チャネル)の各対を通して、約10sccmのガスを引いた。得られたプリント形成要素は、明るくリン光発光する幅約195μmの中央部分1101を有した。それは、プリント材料によって汚染された形跡がない暗色のフィールド1102によって囲まれていた。これら2つの領域1103間の移行幅は、25μmであった。対照的に、
図21Bは、ガスカーテン無しで得た従来の結果を示す。プリントされた線部分1104の中央は、幅が162μmであるが、その各側で、130μm幅の発光ボーダー1105で囲まれており、これは、外来材料の存在を示している。この外来材料をガスカーテンで除去すると、46%幅が狭い形成要素が得られる。
【0171】
OVJPプリンティングの場合、重要な堆積結果としては、プリントされた形成要素の幅(例えば、プリント線幅、プリント画素幅、プリントパターン幅など)、形成要素プロファイル又は形状(例えば、線、画素及び/又はパターンプロファイル及び/又は形状)、オーバースプレー(及び/又は隣り合う画素間、パターン間、線間、及び/又は形成要素間のクロストーク)、堆積速度、及び堆積を迅速に開始及び停止させる能力(例えば、堆積の開始及び停止の制御)が挙げられる。重要なプロセスパラメータは、フライハイト(例えば、ノズル開口部の面とプリント表面との間の距離、或いは、ノズルの堆積ノズル開口部と堆積ターゲットとの間の距離であるフライハイト分離としても知られる)、プリント表面温度、プリント速度、チャンバ圧力、閉じ込めガス種、堆積流速度、搬送ガス種、排出チャネルの真空レベル、堆積チャネルの幅、排出チャネルの幅、堆積チャネルと排出チャネルとの間の分離幅、及び搬送圧力(例えば、供給源に由来する)である。少なくとも前述したプロセスパラメータの1つ以上は、プリントされる形成要素幅(例えば、線幅、画素幅、パターン幅など)、プロファイル、及び堆積速度に影響を及ぼし得る。望ましい形成要素幅は、各種パラメータを組み合わせることにより得ることができる。開示する主題の実施形態においては、オーバースプレー、形成要素(例えば、線、画素、パターンなど)の幅を横切る堆積膜の厚みプロファイル、及び堆積速度が、各種組合せにおいて、等価とならない場合がある。
【0172】
図29は、開示する主題の実施形態に係る、所定のノズル形状の場合の傾向を示す。具体的には、チャンバ圧力が上昇するにつれて(例えば、150Torrから175Torr、200Torrなど)、搬送ガス流が一定である場合(例えば、16毎分標準立方センチメートル(SCCM)など)、堆積速度が低下する。フライハイトが上昇するにつれて(例えば、25μmから40μm、50μmなど)、搬送ガス流が一定である場合(例えば、16SCCMなど)、堆積速度が低下する。しかしながら、幾つかの実施形態においては、ノズルが基板から所定距離(例えば、1〜2μmなど)未満に位置する場合、堆積速度も低下する場合がある。一般に、搬送ガス流が一定である場合、チャンバ圧力が上昇するにつれて(例えば、150Torrから175Torr、200Torrなど)、プロファイル幅は低下し得る。しかしながら、この一般的な傾向は、全ての条件において当てはまる訳ではない。
【0173】
開示する主題のノズル形状の場合における他の一般的な傾向としては、フライハイトとチャンバ圧力とが一定である場合、堆積流の増大に伴って堆積速度が上昇することが挙げられる。他の傾向としては、フライハイトと搬送ガス流とが一定である場合、チャンバ圧力の低下に伴って形成要素幅(例えば、線幅、画素幅、パターン幅など)が上昇することが挙げられる。
【0174】
他の傾向としては、堆積膜厚みの半値全幅(FWHM)として測定される形成要素幅(例えば、線幅、画素幅、パターン幅など)が、他の全ての条件が等しければフライハイトの変化によって変化することがない。
【0175】
開示する主題の実施形態においては、プロセスパラメータとプリントヘッド形状とを組み合わせて、ディスプレイプリンティング又は所望の形成要素形状又は寸法のプリンティングに用いることができる。例えば、プロセスパラメータ及び形状としては、プリントヘッド形状20:20:20(即ち、堆積チャネル幅:堆積チャネル−排出チャネル分離:排出チャネル幅、単位ミクロン)、チャンバ圧力175Torr、キャリアガス流16SCCM、及びフライハイト40μmが挙げられる。これらの条件により、約90μmのプリント幅を得ることができる。これは、50μmグリッドにより囲まれて単離される50μm幅の形成要素(例えば、画素)を満たすのに適切であり得る。フライハイトを350μm超にすることにより、堆積を停止させることができ、残留する堆積、即ちオーバースプレーは、殆ど又は全く生じない。堆積ガス及び有機蒸気は、閉じ込めガス及び排出ノズルの作用により除去することができる。一例として、堆積を迅速に開始させるために、フライハイトを350μmに設定及び/又は調整し、プリンティングが開始する点である40μmまでフライハイトを低下させることができる。350μm以上のフライハイトは、システムのアイドリングのために用いることができ、フライハイトを低下させることにより迅速に再開することができる(例えば、アクチュエータがフライハイトを低下させる)。
図25は、シリコン基板上にプリントされた100μm幅の形成要素(例えば、線)を示し、ノズル設計のオン及びオフ能を示している。
図25に示す画像は、UV顕微鏡を用いて得た。
【0176】
図26は、X−方向(例えば、プリンティング方向に直交する方向)に沿う流れ線及び重力を示し、「リフトオフ」を達成する、即ちプリンティングをオフにする条件を示すノズルアセンブリのCFDモデルにより発生させたものである。中央(堆積)ノズルに由来する流れは、閉じ込めガス流と交わり、いずれも排出チャネルに送られる。閉じ込め流は、堆積流より大きくすることができ、その結果、基板に到達し得る堆積流をなくすことができる。
【0177】
図27は、
図26と同一のプロセス条件における流れ線を示すが、Y−方向(例えば、プリンティング方向と平行な方向)に沿う流れ線である。垂直チャネル(9つのチャネルが図示されている)の中央部分に示す堆積チャネルからの流れは、排出に送られると、即座にその方向を反転させる。閉じ込め流線は、排出に送られる前に基板と接触していることを示す。
図28は、リフトオフ条件の3次元(3D)図であり、基板の表面に到達する堆積ガスが最小量である又はゼロであることを示す。
【0178】
リフトオフ又は非プリンティング条件からプリンティング条件に変えるためには、3つの変更を行うことができる。1つ目として、フライハイトを低下させることができる。2つ目として、堆積流を増やすことができる。3つ目として、チャンバ圧力を上げることができる。これらのパラメータは、それぞれ独立して変更することができ、また、任意の組合せで変更して、堆積の所望の停止及び再開を達成することができる。リフト条件を変える3つの変更について記載したが、リフト条件の変更には、これより多い又は少ない変更があり得る。
【0179】
最も迅速に変更することができるパラメータは、フライハイトであり、この技術が、堆積を停止及び開始するために用いられている(
図25に示す)。即ち、アクチュエータ(例えば、
図23に示すアクチュエータ310)が、プリントヘッドのフライハイトを変えることができ、その結果、フライハイトが大きくなると、堆積を停止させることができ、フライハイトが小さくなると、堆積を開始させることができる。
【0180】
基板から搬送流をリフトオフする及び堆積を完全に停止させるために必要なフライハイトは、搬送ガス流速度及びチャンバ圧力などの、1つ以上の他のプロセスパラメータに依存し得る。
図30は、100TorrのArで満たされたチャンバで動作している20:40:40(堆積チャネル幅:堆積チャネル−排出チャネル分離:排出チャネル幅、単位ミクロン)ノズルの場合の、堆積開口部中心線に沿って測定される有機材料の堆積速度を示す。堆積速度の依存度は、フライハイトに関してほぼ線形であり得る。フィッティング線の水平軸との交点は、リフトオフが生じる高さにほぼ対応する。これは、
図25に一致しており、フライハイトがリフトオフに必要な高さより大きい場合、堆積が完全に停止することを示している。フィッティング線の傾きは、搬送ガス流速度に依存し得る。5sccm/ノズルの場合の線は、10sccm/ノズルの場合の線よりも急な負の傾きを有する。したがって、リフトオフは、搬送流が10sccm/ノズルである場合よりも5sccm/ノズルである場合の方がより小さいフライハイトで生じうる。
【0181】
チャンバ圧力は、また、リフトオフの振る舞いにも影響を与え得る。16sccm/ノズルの搬送ガス流速度で15:10:20ノズルアレイ(例えば、ノズルボック(bock)301)を用いてプリントされた線の幅に沿う膜厚プロファイルを
図29に示す。より高いチャンバ圧力でのより遅い堆積速度とより幅狭な形成要素に対する前述した傾向に加えて、40μmのフライハイトと50μmのフライハイトとの間の堆積速度の分別変化(fractional change)は、150Torr及び175Torrにおける場合より、200Torrで著しく増加し得る。このことは、200Torrでのリフトオフのフライハイトは、約50μmであるが、より低い圧力ではより大きくすることができることを示唆している。
【0182】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば本明細書において記述されている材料及び構造の多くは、本発明の趣旨から逸脱することなくほかの材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求されているとおりの本発明は、当業者には明らかになるように、本発明において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。