(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のリギングラインの一端はフックになっており、前記樹木の一端はアイプレートが取り付けられており、当該フックが当該アイプレートに接続可能であることを特徴とする、請求項1に記載の学習方法。
前記第2のリギングラインの他端は、前記施工技術習得装置の地上付近に配置される、制動力の発生が可能な落下制御装置に接続するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の学習方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道の架線や線路等の至近まで伸びた樹木を、鉄道運行を妨げず伐採する技術のような、樹木を安全に伐採する技術のことを特殊伐採技術という。
【0003】
特殊伐採は、通常高所作業車が進入しにくいような場所で実施されるので、道具を利用しながら人の力で行うことが通常であり、また、伐採した樹木が線路や架線に落下したり接触したりしないよう制御することが必要となる。また、伐採した樹木が、その樹木の幹に接触したり、地面に落下したり、作業者に衝撃を加えることも防ぐ必要がある。このように、特殊伐採技術においては、樹木の形態のみならず、物理法則からリスク管理に至るまで様々な技術領域に跨る知識やスキルが必要とされる。
【0004】
例えば、特殊伐採において、切断した枝・幹の落下を制御することができ、それにより作業者への衝撃、あるいは、進入禁止領域への落下や、電線類との接触・切断といった事故を防止することが可能な樹木の伐採方法等を提供する技術が開示されている。(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、低コストで利用でき、作業者一人で様々なロープワークを実現できる特殊伐採用道具も開示されている(例えば、特許文献2)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法のうち、樹木を投下させる工程の一例を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法のうち、樹木の投下角度を制御させる工程の一例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法のうち、樹木のトワリングを行う工程の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法のうち、樹木がリギングラインから取り外される様子を説明する模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態による落下対象となる樹木をフックに取り付けるための器具の一例を説明する模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態による落下対象となる樹木をフックに取り付けるための器具の他の一例を説明する模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法を説明するフローチャート図である。
【
図8】本発明による第1の実施形態による、樹上からの落下速度と時間並びに制動と幹への衝撃と地上(工作物)への衝撃による6ファクターグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による特殊伐採技術の学習方法は以下のとおりである。
[項目1]
特殊伐採技術の学習方法であって、
地面に対して略直立して設置される施工技術習得装置に設置される第1のリギング滑車に通される第1のリギングラインの一端に樹木の一端を取り付けるステップと、
当該樹木を投下させるステップと、
前記樹木を投下角度制御装置に接触させることにより、前記樹木を前記第1のリギングラインに一端から取り外すステップであって、前記樹木の他端は、第2のリギング滑車に通される第2のリギングラインの一端に接続され、当該第2のリギング滑車は、前記施工技術習得装置の、前記第1のリギング滑車に対して下方に固定される、ステップと、
所定の角度で樹木を投下させるステップと、を含む学習方法。
[項目2]
第1のリギングラインの他端は、地上付近に配置されるウィンチに接続されることを特徴とする、項目1に記載の学習方法。
[項目3]
前記第1のリギングラインの一端はフックになっており、前記樹木の一端はアイプレートが取り付けられており、当該フックが当該アイプレートに接続可能であることを特徴とする、項目1に記載の学習方法。
[項目4]
前記樹木が前記投下角度制御装置に接触した弾みにより、前記アイプレートが前記フックから取り外されることを特徴とする、項目3に記載の学習方法。
[項目5]
前記第2のリギングラインの他端は、前記施工技術習得装置の地上付近に配置される、制動力の発生が可能な落下制御装置に接続するステップを含むことを特徴とする項目1に記載の学習方法。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法のうち、樹木を投下させる工程の一例を示す図である。
図1(a)及び
図1(b)は、各々施工技術学習システム1を開示している。
【0016】
まず、
図1(a)において、施工技術学習システム1は、地面に対して略直立して設置される施工技術学習装置11と、施工技術学習装置11の上端付近において設置されるリギング滑車13と、リギング滑車13より下方であって、施工技術学習装置の中段付近に設置される投下角度制御装置16と、投下角度制御装置16より下方に設置されるリギング滑車17とを有するように構成される。
【0017】
施工技術学習装置11は、例えば、樹木とすることができる。前述のとおり、リギング滑車等様々な装置を設置する都合上、十分な太さと強度を有することが好ましく、また、ロアリングの学習を図るうえで十分な高さを有することが好ましい。
【0018】
リギング滑車13は、施工技術学習装置11の上端付近において設置される。リギング滑車13は、施工技術学習装置が樹木である場合、上端付近の幹や枝にラチェット付のベルトを巻き付けることで設置させることができる。上端付近でなくとも、少なくとも、落下対象となる樹木より上方であり、ロアリングの学習を図るうえで十分な高さであればよい。また、リギング滑車13は、落下対象となる樹木による衝撃を吸収可能であることが好ましい。
【0019】
投下角度制御装置16は、施工技術学習装置11に、リギング滑車13より下方において設置される。投下角度制御装置16は、上方に設置されるリギング滑車13の方向から投下する、落下対象の樹木を受け止める。投下角度制御装置16としては、例えば、樹木から生成された丸太のような部材を使用することが考えられる。投下角度制御装置16の、施工技術学習装置11に対する取り付け位置や角度に応じて、投下角度制御装置16は、落下対象の樹木の跳ね返り速度や角度を調整することができる。
【0020】
リギング滑車17は、施工技術学習装置11に、投下角度制御装置16よりさらに下方に設置される。リギング滑車17は、施工技術学習装置11が樹木である場合、幹や枝にラチェット付のベルトを巻き付けることで設置させることができる。
【0021】
図1(a)に示すように、リギング滑車13にリギングライン14を通して、リギングライン14の一端に、落下対象となる樹木20の一端を取り付ける。リギングライン14の他端は、図示しないが、地上付近に設置された制動装置(例えば、エンジンウィンチ)に接続され、作業者が制動装置を操作することで、樹木20の高さを調整する。
【0022】
リギングライン14の一端と樹木20の一端は、例えば、
図4(a)に示すように、リギングライン14側に設けられたフック22を、樹木20側に設けられたアイプレート23に引っ掛けることで接続される。アイプレート23は、例えば、
図5に示すように、ステンレス製で、フックとの接続部分を環状にし、樹木との固定部分をプレート状にすることができる。
【0023】
または、樹木20をフックに接続する部材の他の例として、
図6に示すように、樹木20の上端をすり鉢状に切削し、切削することによりできた凹部に、フックに接続する環状部分と環状部分を固定し、かつ、樹木20に嵌め込まれる逆円錐状の部分とからなる部材24を使用することができる。本例においては、部材24の環状部分の上端が、樹木20の上端と同じ平面に位置するか、それ以下に位置するように部材24が樹木20に固定されるため、落下する樹木20が地面に落下し、環状部分が地面に接触するとしても、周囲が樹木20に覆われているため、環状部分の破損を防ぐことができる。
【0024】
このようにフック22をアイプレート23の環状部分に接続させることで、リギングライン14によって樹木20を吊り上げることができる。リギングライン14と樹木20の接続方法は、これに限定されず、後述するように、リギングライン14と樹木20との接続が自動的に解除される構成であれば他の公知の方法を用いることもできる。
【0025】
図1(a)に戻り、樹木20の他端は、リギングライン15の一端に接続される。前述のリギングライン14と樹木20との接続と異なり、リギングライン15と樹木20は常に固定されるよう接続される。接続方法としては、リギングライン15の一端を樹木20に結びつける方法や、樹木20の他端にアイプレート等を固定して、アイプレートの環状部分にリギングライン15を結びつける等の方法が考えられる。
【0026】
また、リギングライン15は、リギング滑車17に通され、
図3に示すように、施工技術学習装置11の地上付近に設置された落下制御装置18に接続される。落下制御装置18として、制動力の発生が可能なポータラップを樹木に固定し、作業者19がポータラップに巻き付けられたリギングラインを操作することで、樹木20の落下の制動と巻上げを行うことができる。
【0027】
以下、
図7のフローチャート図を参照しながら、本発明の第1の実施形態による特殊伐採技術の学習方法を説明する。
【0028】
まず、特殊伐採技術を学習するにあたり、樹木20を所定の位置に設定する(S101)。例えば、作業者が(図示しない)地上付近に設置された制動装置(例えば、エンジンウィンチ)を操作することで、リギングライン14に接続された樹木20を、
図1(a)に示すような所定の高さまで引き上げ、引き上げた状態で、(図示しない)バックアップ装置でリギングライン14を固定する。所定な高さとは、ロアリングの学習を図るうえで必要な高さ(例えば、地上15メートル程度)をいう。
【0029】
次に、樹木20を投下させる(S102)。例えば、作業者が、(図示しない)バックアップ装置をリギングライン14から外すことで、
図1(b)に示すように、リギングライン14に接続された樹木20を、下方に設置される投下角度制御装置16に向けて落下させる。
【0030】
次に、樹木20を投下角度制御装置16に接触させることにより、樹木20の投下角度の制御を行う(S103)。例えば、前述のステップにおいて、樹木20を投下させると、
図2(a)に示すように、その樹木20は、重力により投下角度制御装置16に接触する。樹木20が投下角度制御装置16に接触すると、その反発作用により、樹木20は、これまでの落下方向とは異なる方向に反動する。すなわち、投下角度制御装置16に対して、跳ね上がるような挙動を示す。同時に、
図4(b)に示すように、樹木20に固定されたアイプレート23の環状部分が浮き上がることでフックに対する荷重が失われ、また、フック22に取り付けられたばねによる引っ張り力もあいまって、所定の範囲に回動する機構を有するフック22が回動することで、リギングライン14が樹木20から取り外され、これにより、リギングライン14と樹木20との接続が自動的に解除される。これにより、樹木20は、リギングライン14からリリースされ、所定の角度で落下し続ける。この状態は、特殊伐採においてチェーンソーや鋸で切断された切断対象部(例えば、樹木の幹や枝)が落下する状態に類似しており、実地でのロアリング環境を再現したものといえる。
【0031】
次に、樹木20の落下速度を制御する(S104)。例えば、
図2(b)に示すように、樹木20は、リギングライン15に接続されたまま、所定の角度で落下する。前述のとおり、
図3に示すように、地上の作業者19は、落下制御装置18(例えば、ポータラップ)を用いることで、樹木20の落下の制動と巻上げを行うことができる。
【0032】
ここで、
図8を用いて、ロアリングの学習において考慮すべき要素について検討する。
図8は、樹上からの落下速度と時間ならびに制動と幹への衝撃と地上(工作物)への衝撃による6ファクターグラフである。主な要素としては、1)落下速度、2)落下時間、3)幹への衝撃、4)地上から樹上への高さ、5)地上及び工作物ライン、6)地上及び工作部への衝撃等が挙げられる。
【0033】
落下速度について、
図8に示すように、切断した樹木の、樹上レベルから地上レベルへの落下速度が速いほど、工作物(例えば、線路等)への衝撃は大きく、最悪のケース、破壊に至ることもある。特に、自由落下に近い状態では、工作物への衝撃は極大となる。逆に、自由落下に近い状態は、切断した樹木に取り付けられるロープへの制動がかかっていない状態にあたるので、したがって、樹冠は揺れないのでクライマーの安全性は高い。
【0034】
一方で、落下速度を急激に下げるために、ロープへの制動を急激に強めると、樹冠の揺れは極大になり、クライマーの落下の危険度が重大になる。そこで、減速制動を中程度から徐々に弱めて、落下速度を徐々に下げることで、樹冠の揺れを抑えながら、落下速度を下げることができ、工作物への衝撃を抑えながら、クライマーの安全性を確保することができる。
【0035】
このように、工作物への影響とクライマーの安全性はトレードオフ関係となり、これらのバランスを実現するために、落下速度と減速制動の調整は、特殊伐採のロアリングという段階において特に重要な作業となる。
【0036】
したがって、本実施の形態における特殊伐採の学習方法を通じて、樹木の落下を何度も体感しながら、ロアリングの作業にあたる地上作業者は、樹木の落下速度を適正に調整するための落下制御装置の設定や操作を習得することが可能となる。例えば、作業者は、ポータラップにロープを巻く最適な巻数を、本学習方法を通じて習得することができる。また、初期設定の高さや落下対象となる樹木の重さ、投下角度調整装置の設定等を調整することにより、様々な実作業環境を想定しながら、学習を重ねることが可能となる。
【0037】
図8の6ファクターグラフは、作業者の学習効果を高めるためのツールとして、例えば、作業者が携帯する端末のディスプレイ装置上に表示させることができ、作業者が本学習方法によりロアリングを実施した際に計測した落下距離、落下速度、減速量等を本グラフ上にプロットさせて、作業者の習熟度がグラフ上のいずれの矢印上に位置するかを確認することができる。
【0038】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【解決手段】特殊伐採技術の学習方法であって、地面に対して略直立して設置される施工技術習得装置11に設置される第1のリギング滑車13に通される第1のリギングラインの一端に樹木20の一端を取り付けるステップと、当該樹木20を投下させるステップと、前記樹木20を投下角度制御装置16に接触させることにより、前記樹木20を前記第1のリギングラインに一端から取り外すステップであって、前記樹木20の他端は、第2のリギング滑車17に通される第2のリギングライン15の一端に接続され、当該第2のリギング滑車17は、前記施工技術習得装置11の、前記第1のリギング滑車13に対して下方に固定される、ステップと、所定の角度で樹木20を投下させるステップと、を含む。