(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態に係るスケートボード1を図面に基づいて詳細に説明する。以下では、特に断りのない限り、走行面が水平面であるとして説明し、走行方向を「前方向」、その反対方向を「後方向」と定義し、前方向及び後方向を併せて「前後方向」という場合がある。また、前後方向に直交し、かつ水平面に沿う2方向を「左右方向」として定義する。ただし、これらの方向の定義は、本実施形態に係るスケートボード1の使用態様を限定する趣旨ではない。
【0013】
本実施形態に係るスケートボード1は、デッキ2と、複数(ここでは二つ)のスケートボード用トラック3(以下、トラック3)と、複数(ここでは四つ)のウィール4と、を備える。
(1.2)デッキ
【0014】
デッキ2は、ユーザが乗る部分であり、板体で構成される。デッキ2は、
図1に示すように、上方向に向く面(上面)と、走行面に対向する面(下面)とを備える。デッキ2は、本実施形態では、前後方向に延びており、平面視長円形に形成されている。ただし、本開示では、デッキ2の形状は、平面視長円形に限らず、平面視円形状、三角形状、平面視四角形状、五角形状等であってもよい。
【0015】
デッキ2は、本実施形態では、前方向の端部であるノーズ22と、後方向の端部であるテール21と、中央部23と、を備える。ノーズ22は、中央部23の前側の端部から平面視で前方向に突出しており、詳しくは、前方向に行くに従って上方向に行くように、走行面に対して傾斜している。テール21は、中央部23の後側の端部から平面視で後方向に突出しており、詳しくは、後方向に行くに従って上方向に行くように、走行面に対して傾斜している。ノーズ22、中央部23及びテール21は、一体であり、少なくとも上面が滑らかに続くように連続している。
【0016】
デッキ2の素材には特に制限はない。デッキ2は、例えば、木、プラスチック、カーボン、金属等が適宜用いられる。また、デッキ2の上面には、滑り止め用のデッキテープが貼られてもよい。
(1.3)トラック
【0017】
トラック3は、
図2に示すように、ウィール4が取り付けられた状態で、デッキ2の下面に取り付けられる部材である。トラック3は、本実施形態では、一つのデッキ2に対して、前後方向に離れて二つ取り付けられている。ただし、一つのデッキ2に対して、三つ以上取り付けられてもよい。また、複数のトラック3として、本実施形態に係るトラック3と、本実施形態とは異なる構造のトラックとを混ぜてもよい。本実施形態では、二つのトラック3は同じ構造のトラック3であり、前後方向の中央を中心にして対称に取り付けられる。以下では、デッキ2の前側に取り付けられたトラック3について詳細に説明する。
【0018】
トラック3は、
図2に示すように、ベース31と、ピボット軸342を有するハンガ32と、球面軸受け36と、ブッシング37(
図4)と、キングピン38(
図4)と、を備える。
【0019】
ベース31は、デッキ2の下面に取り付けられる。ベース31は、ハンガ32の取付け台となる部材であり、例えば、金属、合成樹脂等で構成される。ベース31は、本実施形態では、アルミダイキャストで形成されている。ベース31は、
図4に示すように、キングピン38が取り付けられる第一取付け部311と、後述のピボット軸342が取り付けられる第二取付け部312と、を備える。
【0020】
第一取付け部311は、本実施形態では、第二取付け部312に対して、デッキ2の前後方向において内側(ここでは後側)に配置される。ここでいう「前後方向の内側」とは、デッキ2において前側に配置されるトラック3においては、後側を意味し、デッキ2において後側に配置されるトラック3においては、前側を意味する。したがって、本実施形態では、デッキ2において前側に配置されるトラック3は、後側に第一取付け部311が位置し、前側に第二取付け部312が位置する。また、デッキ2において後側に配置されるトラック3は、前側に第一取付け部311が位置し、後側に第二取付け部312が位置する。第一取付け部311の下面は、前後方向のうちの内側(ここでは後側)に行くに従って下方向に位置するように、走行面に対して傾斜している。
【0021】
第二取付け部312は、第一取付け部311に対して、デッキ2の前後方向において外側(ここでは前側)に配置される。第二取付け部312には、ピボット軸342が、球面軸受け36を介して取り付けられる。第二取付け部312の下面は、前後方向のうちの外側(ここでは前側)に行くに従って下方向に位置するように、走行面に対して傾斜している。第二取付け部312は、本実施形態では、第一取付け部311と一体である。ただし、本開示では、第一取付け部311と第二取付け部312とは、別体であってもよく、この場合、デッキ2を介して互いに固定される。
【0022】
ブッシング37は、第一取付け部311とハンガ32とキングピン38との各部材間に取り付けられ、ベース31に対するハンガ32の一定の弾性的な移動を許容する。ブッシング37は、本実施形態では、所定の弾性を有する合成ゴムであるが、本開示では、例えば、軟質樹脂、天然ゴム、ばね等であってもよい。ブッシング37は、本実施形態では、複数ある。複数のブッシング37として、本実施形態では、第一ブッシング371と、第二ブッシング372と、を備える。第一ブッシング371は、第一取付け部311とハンガ32(詳しくは、後述の舌片334)との間に配置される。第一ブッシング371は円筒状に形成されている。第二ブッシング372は、ハンガ32とキングピン38にねじ込まれるナット381との間に配置される。第二ブッシング372は、円錐台状に形成されている。第二ブッシング372には、その中心軸に沿って、キングピン38が通される貫通穴が形成されている。
【0023】
キングピン38は、ベース31に対して、ハンガ32を取り付けるための軸状の部材である。キングピン38は、本実施形態では、ボルトで構成されている。キングピン38の軸方向は、下方向に行くに従って、前後方向の外側(ここでは前側)に位置するように、走行面に対して傾斜している。キングピン38には、第一ブッシング371、ハンガ32及び第二ブッシング372が通された状態で、ナット381が締め付けられる。
【0024】
ハンガ32は、
図2に示すように、ウィール4が左右方向に沿った回転軸5回りに回転可能に取り付けられる部材である。ハンガ32は、
図4に示すように、第一部材33と、第二部材34と、を備える。
【0025】
第一部材33は、キングピン38によって第一取付け部311に取り付けられる部分である。第一部材33は、
図2に示すように、第一本体331と、第一本体331に設けられた支持部332と、一対のシャフト333と、を備える。第一本体331は、
図4に示すように、第一ブッシング371と第二ブッシング372との間に配置された舌片334を有する。舌片334は、キングピン38が通される貫通孔335を有する。貫通孔335の内周面とキングピン38の外周面との間には所定の隙間がある。
【0026】
支持部332は、
図3に示すように、一対のウィール4を支持する部分である。支持部332は、本実施形態では、円柱状に形成されている。第一本体331と支持部332とは、例えば、アルミダイキャストで一体に形成されている。
【0027】
各シャフト333は、支持部332の左右方向の端面から左右方向の外側に向かって突出している。一対のシャフト333は、支持部332に対して固定されている。各シャフト333の外径は、支持部332の外径よりも小さい。各シャフト333には、一つのウィール4が、シャフト333の中心軸回りに回転可能に取り付けられる。シャフト333の中心軸は、ウィール4の回転中心となる回転軸5である。したがって、回転軸5は、左右方向に沿って延びている。
【0028】
第二部材34は、
図4に示すように、第二本体341と、ピボット軸342と、を備える。第二本体341は、第一本体331に対し、左右方向に延びた軸35回りに回転可能に取り付けられている。言い換えると、第二部材34は、第一部材33に対して、回転軸5に平行な軸35回りに回転可能に取り付けられている。
【0029】
ピボット軸342は、軸状の部材であり、第二本体341に設けられている。ピボット軸342の中心軸(軸方向)は、スケートボード1の前後方向の外側(ここでは前側)に行くに従って上方向に行くように走行面に対して傾斜している。したがって、ピボット軸342は、左右方向に見てキングピン38に対して交差する方向に延びている。ピボット軸342は、ベース31に対して、球面軸受け36を介して、取り付けられている。
【0030】
球面軸受け36は、ピボット軸342を、第二取付け部312の下面に対して、直交する方向と傾斜する方向とで受ける軸受けである。球面軸受け36は、
図5Aに示すように、内輪361と、外輪362と、を備える。外輪362は、第二取付け部312に対して固定されている。内輪361は、外輪362に対して、球面接触している。ここでいう「球面接触」には、内輪361と外輪362とが直接的に接触する場合と、ボール、円柱体等の転動体や、テフロン(登録商標)等の摺動部材を介して間接的に接触する場合とを含む。要するに、本開示でいう「球面軸受け36」には、内輪361と外輪362との間に複数の転動体が無い球面滑り軸受けだけでなく、内輪361と外輪362との間に複数の転動体がある球面転がり軸受けも含む。
【0031】
これによって、球面軸受け36は、
図5Bに示すように、ベース31に対して、ピボット軸342を揺動可能に受けることができる。ここでいう「揺動可能」とは、ピボット軸342が、第二取付け部312の下面に直交する仮想線に平行な軸に対して傾いたままで移動可能であることを意味する。
【0032】
また、ピボット軸342は、第一位置(
図4における実線の位置)と、第二位置(
図4における想像線の位置)との間で移動可能である。第二位置は、第一位置よりも、ピボット軸342の軸方向において、ウィール4がデッキ2に近づいた位置である。ピボット軸342は、キングピン38及びブッシング37によって、常時、第一位置に向かう力が与えられており、ピボット軸342の軸方向に沿って弾性的に変位可能である。要するに、ピボット軸342は、ベース31に対して、ピボット軸342の軸方向に沿って弾性的に移動可能に取り付けられている。本実施形態では、ピボット軸342と内輪361との間の摩擦係数を低減するために、ピボット軸342と内輪361との間に滑り軸受け363を介在している。滑り軸受け363は、より具体的には、オイレスブッシュが採用されている。
【0033】
このため、本実施形態に係るハンガ32は、
図5Cに示すように、一対のウィール4に対して、同時に上下方向に力が掛かった場合に、ピボット軸342は、球面軸受け36に対して、ピボット軸342の軸方向に移動することができる。したがって、本実施形態に係るスケートボードによれば、例えば、走行面に凹凸があった場合や、ウィール4に外力が掛かった場合等に、クッション性がよい。
【0034】
また、本実施形態に係るハンガ32では、ピボット軸342を球面軸受け36で受ける。このため、
図6Bに示すように、デッキ2の左右方向の動きにスムーズに追従することができ、ユーザの重心移動に対する追従性を高くすることができる。そのうえ、本実施形態に係るスケートボード1では、ピボット軸342が、ベース31に対して、ピボット軸342の軸方向に沿って弾性的に移動可能に取り付けられていることと、球面軸受け36であることとが相まって、ユーザの重心移動に対する追従性が高く、急転回、急カーブ等のユーザの急な操作にも対応できる。これにより、本実施形態に係るスケートボード1では、追従性の高さを実現できる。
(1.4)ウィール
【0035】
ウィール4は、ハンガ32に対し、左右方向に延びた回転軸5回りに回転可能に取り付けられた車輪である。ウィール4は、本実施形態では、四つある。スケートボード1では、一つのハンガ32に対して、二つのウィール4が取り付けられる。ウィール4は、例えば、ゴム、ウレタン、木、鉄、陶器、合成樹脂等が用いられるが、本開示では特に制限はない。本実施形態では、ウィール4に対して、左右方向の内側にワッシャ(不図示)が配置され、左右方向の外側にナット(不図示)がねじ込まれる。
(2)変形例
【0036】
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
(2.1)変形例
【0037】
上記実施形態に係るスケートボード1では、デッキ2の下面に対して、直接的にトラック3が取り付けられたが、本開示では、デッキ2の下面とトラック3との間にゴムスペーサが介在してもよい。要するに、デッキ2にトラック3が取り付けられることには、デッキ2に対し、トラック3が直接的又は間接的に取り付けられることも含まれる。
【0038】
上記実施形態では、トラック3は、デッキ2に対して、前後方向の中央において対称となるように配置されたが、対称でなくてもよい。例えば、前側のトラック3と後側のトラック3とが、同じ向きに配置されていてもよい。また、上記実施形態では、キングピン38に対して、ピボット軸342が前後方向の外側に位置していたが、ピボット軸342は、キングピン38に対して前後方向の内側に配置されていてもよい。
【0039】
上記実施形態では、ベース31はアルミダイキャストで形成されたが、ベース31は、例えば、鋳造、削り出し等で形成されてもよく、成形方法は限定されない。また、ベース31は、アルミニウム合金に限らず、例えば、マグネシウム合金、亜鉛合金、胴合金等の金属や、合成樹脂であってもよい。
【0040】
上記実施形態では、第一ブッシング371は、円柱状に形成されたが、例えば、円錐台状、角柱状、角錐台状等、その他の形状であってもよく、形状は特に限定されない。
【0041】
上記実施形態では、第二ブッシング372は、円錐台状に形成されたが、例えば、円柱状、角柱状、角錐台状等、その他の形状であってもよく、形状は特に限定されない。
【0042】
上記実施形態では、支持部332は、円柱状に形成されたが、角柱状、その他の形状であってもよく、形状は特に限定されない。
【0043】
上記実施形態では、第一本体331と支持部332とは、例えば、アルミダイキャストで一体に形成されたが、例えば、削り出し等であってもよい。また、第一本体331と支持部332とは、アルミニウム合金に限らず、例えば、マグネシウム合金、亜鉛合金、胴合金等の金属や、合成樹脂であってもよい。
【0044】
上記実施形態では、滑り軸受け363は、オイレスブッシュが採用されたが、本開示では、転がり軸受け等その他の部品であってもよく、これに限定されない。
(3)態様
【0045】
以上説明したように、第1の態様に係るスケートボード用トラック3は、デッキ2に取り付けられるベース31と、ベース31に対して、キングピン38によって取り付けられたハンガ32と、を備える。ハンガ32は、一対のウィール4を左右方向に沿って延びる回転軸5回りに回転可能に支持する。ハンガ32は、キングピン38に対し、左右方向に見て傾斜したピボット軸342を有する。ピボット軸342は、ベース31に対して、ピボット軸342の軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。
【0046】
この態様によれば、一対のウィール4に対して、同時に上下方向に力が掛かった場合に、ベース31に対して、ピボット軸342が軸方向に移動する。したがって、例えば、走行面に凹凸があった場合や、ウィール4に外力が掛かった場合等にもピボット軸342に衝撃が掛かりにくい。
【0047】
第2の態様に係るスケートボード用トラック3では、第1の態様において、ピボット軸342は、ベース31に対して、球面軸受け36を介して取り付けられている。
【0048】
この態様によれば、ユーザの重心移動に対する追従性を高くすることができる。とくに、ピボット軸342が、ベース31に対して、ピボット軸342の軸方向に沿って移動可能に取り付けられていることと、球面軸受け36を介して取り付けられていることと相まって、ユーザの重心移動に対する追従性が高く、急転回、急カーブ等のユーザの急な操作にも対応しやすい。
【0049】
第3の態様に係るスケートボード用トラック3では、第1又は第2の態様において、ピボット軸342は、ベース31に対して、ピボット軸342の軸方向に沿って弾性的に移動可能に取り付けられている。
【0050】
この態様によれば、ウィール4から掛かる外力に対してクッション性を高くすることができる。
【0051】
第4の態様に係るスケートボード用トラック3では、第1〜第3のいずれか一つの態様において、ハンガ32は、キングピン38に取り付けられ回転軸5を有する第一部材33と、ピボット軸342を有する第二部材34と、を備える。第二部材34は、第一部材33に対して、回転軸5に平行な軸35回りに回転可能に取り付けられる。
【0052】
この態様によれば、ピボット軸342をスムーズに、ベース31に対して移動させることができ、ピボット軸342に掛かる衝撃をより緩和させることができる。
【0053】
第5の態様に係るスケートボード1は、第1〜第4のいずれか一つの態様のスケートボード用トラック3と、スケートボード用トラック3が取り付けられたデッキ2と、を備える。
【0054】
この態様によれば、一対のウィール4に対して、同時に上下方向に力が掛かった場合に、ピボット軸342に衝撃が掛かりにくいスケートボード1とすることができる。
【0055】
第2〜第4の態様に係る構成については、スケートボード用トラック3に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【解決手段】スケートボード用トラック3は、デッキ2に取り付けられるベース31と、ベース31に対して、キングピン38によって取り付けられたハンガ32と、を備える。ハンガ32は、一対のウィール4を左右方向に沿って延びる回転軸回りに回転可能に支持する。ハンガ32は、キングピン38に対し、左右方向に見て傾斜したピボット軸342を有する。ピボット軸342は、ベース31に対して、ピボット軸342の軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。