【実施例】
【0042】
本発明を以下の実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0043】
<赤外線センサーを用いた行動量の測定>
赤外線センサーを用いた行動量測定装置(室町機械社製、スーパーメックスPYS−001)下にマウスを設置し、該装置を用いて、該装置が有するレンズによってマウスの体温(遠赤外線)を感知して1時間毎の回数をカウントし、そのカウント数を行動量とした。また、測定した行動量を1時間単位で積算した値を、積算行動量とした。
【0044】
<回転車を用いた自発運動量の測定>
回転車(マウス回転式運動量測定装置、室町機械社製、イグルー・ファストトラックFT−713)をマウスの飼育環境内に設置し、マウスが回転車を回す1時間毎の回数をカウントし、そのカウント数を自発運動量とした。また、測定した自発運動量を1時間単位で積算した値を、積算自発運動量とした。
【0045】
<血中アルコール濃度の測定>
被験動物から採血し、血中アルコール濃度の測定にはF−キットエタノール、(J.K.インターナショナル社製、176290)を使用した。
【0046】
<エタノール経口投与マウスの血中エタノール消失時間>
(試験例1)
マウス飼育条件として、マウスの飼育室内を12時間の明暗サイクル(明期:7:00〜19:00)に設定した。
ICRマウスに30%(w/v)エタノール水溶液を3g/kg b.w.又は40%(w/v)エタノール水溶液を4g/kg b.w.となるように経口投与した。エタノール投与前(0時間目)及び、エタノール投与後0.5、2、4、6時間目の血中エタノール量を測定した。測定結果を
図1に示す。
図1は、N=4の、Mean±SD(平均値±標準偏差)の値を示す。
図1の結果から、30%(w/v)エタノール水溶液をマウスに3g/kg b.w.投与する際は約4時間で、また40%(w/v)エタノール水溶液をマウスに4g/kg b.w.投与する際は約6時間で、血中エタノール濃度が実質的にゼロになる。
すなわち、30%(w/v)エタノール水溶液をマウスに3g/kg b.w.投与する際は、好ましくは、マウスの活動期(19:00〜7:00)に血中エタノール濃度が実質的にゼロになるように、該活動期の4時間前に投与し、さらに好ましくは、暗期開始時に血中エタノール濃度が実質的にゼロになるように、暗期開始の4時間前に投与する。また、40%(w/v)エタノール水溶液をマウスに4g/kg b.w.投与する際は、好ましくは、マウスの該活動期の6時間前に投与し、さらに好ましくは、暗期開始の6時間前に投与する。
【0047】
<エタノール経口投与ラットの血中エタノール消失時間>
(試験例2)
SDラットに40%(w/v)エタノール水溶液を2g/kg b.w.となるように経口投与した。エタノール投与前(0時間目)及び、エタノール投与後1、2、3、4時間目の血中エタノール量を測定した。
測定結果を
図2に示す。
図2は、N=5の、Mean±SD(平均値±標準偏差)の値を示す。
図2の結果から、40%(w/v)エタノール水溶液をラットに2g/kg b.w.投与する際は約4時間で、血中エタノール濃度が実質的にゼロになる。
すなわち、40%(w/v)エタノール水溶液をラットに2g/kg b.w.投与する際は、好ましくは、ラットの活動期(19:00〜7:00)に血中エタノール濃度が実質的にゼロになるように、該活動期の4時間前に投与し、さらに好ましくは、暗期開始時に血中エタノール濃度が実質的にゼロになるように、暗期開始の4時間前に投与する。
【0048】
<測定に使用するマウスの選択>
(試験例3)
下記種類のマウスを、回転車の入ったプラスチックケージにいれ14日間飼育した。飼育開始から12日目までは、マウスに餌及び水を自由摂取させた。飼育13日目に下記スケジュールに沿って処置した。
試験動物:マウス(近交系:C57BL/6N(B6N)、BALB/cA(BALB/c)、C3H/HeN(C3H)、クローズドコロニー:ICR)を用いた。
スケジュール:12:30から15:00までマウスを絶食及び絶水させ、15:00に30%(w/v)エタノール水溶液をマウスに3g/kg b.w.となるように経口投与した。
飼育12、13、14日目の行動量及び自発運動量を測定した。
【0049】
飼育12日目(エタノール投与前日)の、暗期開始から3時間(19:00〜22:00)の積算行動量及び積算自発運動量の結果を表1に示す。 表1の結果から、B6N、BALB/c、C3Hの近交系マウスがCVが少なく、本発明の方法に適している。
【0050】
【表1】
【0051】
また、飼育13日目(エタノール投与当日)の、暗期開始から3時間(19:00〜22:00)の積算行動量及び積算自発運動量について、上記表1の12日目の積算行動量、積算自発運動量に対する該13日目の積算行動量、積算自発運動量の割合(%)を算出した値を表2に示す。表1及び表2において、Meanとは平均値を示し、SDとは標準偏差を示し、CVとは変動係数を示し、A.U.とは任意単位を示す。
表2の結果から、B6Nマウスの行動量と自発運動量が最も低下しており、ばらつきも少ないため、本発明の方法に使用するマウスとしてB6Nマウスが最適である。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例1:1回投与)
B6Nマウスを3日間金網ケージで馴化させた後、回転車の入ったプラスチックケージに移して14日間飼育した。飼育13日目に下記スケジュールに沿って処置した。
図3に、本実施例1の飼育13日目のスケジュールを示す。
図3において「測定」とは、行動量及び/又は自発運動量の測定を示す。
スケジュール:12:30から15:00までマウスを絶食及び絶水させ、14:30に、二日酔い抑制成分としてウコンエキスを20mg/kg b.w.になるように経口投与した。尚、投与液は0.2%(w/v)ウコンエキス分散液を使用した。対照群のマウスには、溶媒(0.5w/v% メチルセルロース400溶液)のみを経口投与した。暗期開始の4時間前である15:00に、15%(w/v)エタノール溶液を、マウスに3g/kg b.w.となるように経口投与した。飼育12日目と13日目の行動量及び自発運動量を測定した。
【0054】
(実施例2:2回投与、1週間間隔)
実施例1と同様にしてB6Nマウスを14日間飼育した後、さらにそのまま1週間飼育した。飼育13日目及び20日目に下記スケジュールに沿って処置した。飼育13日目及び20日目以外は、マウスに餌及び水を自由摂取させた。
図4に、本実施例2のマウスのスケジュールを示す。
図4において「測定」とは、行動量及び/又は自発運動量の測定を示す。
スケジュール:飼育13日目の12:30から15:30までマウスを絶食及び絶水させ、15:00に、二日酔い抑制成分としてウコンエキスを20mg/kg b.w.になるように経口投与した。尚、投与液は0.2%(w/v)ウコンエキス分散液を使用した。対照群のマウスには、溶媒(0.5w/v% メチルセルロース400溶液)のみを経口投与した。その後、15:30に、30%(w/v)エタノール溶液を、マウスに2g/kg b.w.となるように経口投与した(1回目投与)。
さらに、飼育20日目の12:30から16:00までマウスを絶食及び絶水させ、15:30に、二日酔い抑制成分としてウコンエキスを20mg/kg b.w.になるように経口投与した。尚、投与液は0.2%(w/v)ウコンエキス分散液を使用した。対照群のマウスには、溶媒のみを経口投与した。16:00に、30%(w/v)エタノール溶液を、マウスに3g/kg b.w.となるように経口投与した(2回目投与)。飼育12日目と13日目の行動量及び自発運動量及び、19日目と20日目の行動量及び自発運動量を測定した。
【0055】
(実施例3:2回投与、4時間間隔)
実施例1と同様にしてB6Nマウスを14日間飼育した。飼育13日目に下記スケジュールに沿って処置した。
図5に、本実施例3の飼育13日目のスケジュールを示す。
図5において「測定」とは、行動量及び/又は自発運動量の測定を示す。
スケジュール:8:30から11:00まで絶水、及び15:00まで絶食させ、10:30に、ウコンエキスを20mg/kg b.w.になるように経口投与した。尚、投与液は0.2%(w/v)ウコンエキス分散液を使用した。対照群のマウスには、溶媒のみを経口投与した。11:00に(1回目投与)と15:00(2回目投与)に、15%(w/v)エタノール溶液を、マウスに2.5g/kg b.w.、あるいは3g/kg b.w.となるように経口投与した。飼育12日目と13日目の行動量及び自発運動量を測定した。
【0056】
上記実施例1〜3について、暗期開始から3時間(19:00〜22:00)の積算行動量及び積算自発運動量について、エタノール投与前日に対するエタノール投与当日の積算行動量、積算自発運動量の割合(%)を算出した値及び、ウコンエキス投与群(ウコンエキス有り)と対照群(ウコンエキス無し)の比較をt検定で行った結果を表3及び表4に示す。
尚、実施例1及び3については、エタノール投与前日として12日目の値を、エタノール投与当日として13日目の値を使用し、実施例2については、エタノール投与前日として飼育19日目の値を、エタノール投与当日として飼育20日目の値を使用した。また、表3及び表4において、P値とは、有意確率を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表3及び表4の結果から明らかなように、エタノール投与前日に比べて投与当日の積算行動量及び積算自発運動量が低下していたことから、エタノール投与によってマウスの行動量及び/又は自発運動量が実質的に低下したことがわかる。該行動量及び自発運動量は、2回投与のうち4時間間隔の投与(実施例3)によってさらに低下していた。また、試験例1の結果から、マウスにエタノール3g/kg b.w.を投与すると約4時間で血中エタノール濃度が実質的にゼロになることから、実施例3の暗期開始時点において血中エタノール量が実質的にゼロなっていることがわかる。従って、本発明の方法は、被検動物の二日酔いを誘発することができる。
【0060】
また、表3及び表4において、ウコンエキス有りの場合と無しの場合とを比較することにより、エタノール投与前日に対する投与当日の積算行動量及び積算自発運動量の低下は、ウコンエキスの投与により抑制されることがわかった。従って、本発明の方法は、二日酔いの程度を測定することができ、二日酔い症状抑制効果を測定することができる。また、本発明の方法は、種類の異なる二日酔い抑制剤を投与した被検動物を使用することにより、強い該剤を選別することができ、また、種類の異なる任意の食品、医薬品、化合物もしくは組成物等などを投与した被検動物を使用することにより、二日酔い抑制剤のスクリーニングを行うこともできる。
【0061】
特に、実施例3の2回投与(4時間間隔)のうち、エタノールの2回目投与量が2.5g/kg b.w.の場合に、積算行動量及び積算自発運動量が、ウコンエキス無しに比べて、ウコンエキス有りで有意に高値を示しており、本発明の方法として適している。
また、当該条件における行動量及び自発運動量の経時変化を
図6〜9に示す。
図6〜9の値は、N=7の、Mean(平均値)の値を示す。
図6及び7は、飼育12日目の行動量及び自発運動量の経時変化を示し、
図8及び9は、飼育13日目の行動量及び自発運動量の経時変化をそれぞれ示す。これらの結果からも、
図6及び
図8の行動量、及び/又は
図7及び
図9の自発運動量を比較することにより、二日酔い抑制剤の効果を測定することができる。
【0062】
さらに、表3及び表4の結果から、二日酔い抑制剤の評価は、ウコンエキス無し(二日酔い抑制剤非投与)のエタノール投与前日に対するエタノール投与当日の積算行動量及び自発運動量の割合(%)が、積算行動量で25〜62%、積算自発運動量で13〜33%の範囲で、特に好適に行うことができる。