【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明に係る拘束装置では、該拘束装置が、以下の特徴:すなわち、乗員の少なくとも一身体領域を取り巻くために形成された、乗員の衣類に少なくとも部分的に組込み可能なまたは組み込まれた拘束ベルトと、乗員を車両に解除可能に繋ぐために形成された、拘束ベルトに結合可能なまたは結合された結合エレメントと:を有している。
【0007】
本発明に係る拘束装置の好ましい態様では、拘束ベルトが、身体領域としての乗員の肩領域および/または胸領域および/または骨盤領域を取り巻くために形成されている。
【0008】
本発明に係る拘束装置の好ましい態様では、結合エレメントが、拘束装置を車両に連結するための連結システムのベルトバックルまたは差込みタングを有している。
【0009】
本発明に係る拘束装置の好ましい態様では、結合エレメントが、少なくとも1つの第1の電気的な接点接続部を有している。
【0010】
本発明に係る拘束装置の好ましい態様では、結合エレメントが、少なくとも1つの別の第1の電気的な接点接続部を有しており、第1の電気的な接点接続部が、拘束装置のエネルギ供給線路に接続されているように形成されており、別の第1の電気的な接点接続部が、拘束装置のデータ伝送線路に接続されているように形成されている。
【0011】
本発明に係る拘束装置の好ましい態様では、拘束装置が、送出接点接続部を有しており、該送出接点接続部が、第1の電気的な接点接続部および/または別の第1の電気的な接点接続部により受け取られた電圧を、拘束装置に連結されたかまたは連結可能なかつ第1の電気的な接点接続部および/または別の第1の電気的な接点接続部から間隔を置いて配置された乗員保護装置に送電するか、または拘束装置に連結されたかまたは連結可能なかつ第1の電気的な接点接続部および/または別の第1の電気的な接点接続部から間隔を置いて配置された通信装置に送電するために形成されている。
【0012】
本発明に係る拘束装置の好ましい態様では、拘束装置が、乗員を付加的に車両に解除可能に繋ぐために形成された別の結合エレメントを有している。
【0013】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る衣類では、車両の乗員用の衣類において、該衣類に本発明に係る拘束装置が組み込まれている。
【0014】
本発明に係る衣類の好ましい態様では、衣類が、ジャケットまたはベストとして形成されており、拘束装置が、乗員によるジャケットまたはベストの着用によって適切な位置にもたらされるようになっていて、ジャケットまたはベストの閉鎖装置の閉鎖によって閉鎖されるようになっている。
【0015】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る安全システムでは、該安全システムが、該安全システムを本発明に係る拘束装置に連結するための車両側結合エレメントを有しており、該車両側結合エレメントが、少なくとも1つの第2の電気的な接点接続部を有している。
【0016】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る方法では、該方法が、以下のステップ:すなわち、乗員の少なくとも一身体領域を、乗員の衣類に少なくとも部分的に組込み可能なまたは組み込まれた拘束ベルトによって取り巻くステップと、拘束ベルトに結合可能なまたは結合された結合エレメントによって乗員を車両に解除可能に繋ぐステップと:を有している。
【発明の効果】
【0017】
シミュレーションおよび衝突試験において、すでに、特に正面事故の際のかつエアバッグに関連した、原動機付きの二輪に用いられるベルトシステムの有効性を示すことができた。このようなシステムは、たとえば乗員の衣類に組み込まれたベルト結合システムを有している。
【0018】
乗員の衣類に完全にまたは部分的に組み込まれた、乗員の少なくとも一身体領域を取り巻くベルトシステムの形態の拘束装置は、快適性の利点に加えて、事故の際の怪我に対するより高い防護性を提供している。
【0019】
本発明において提案された解決手段の改良態様では、拘束装置のベルト結合システムを介して、衣類内の複数の電子的な構成要素への給電と、これらの電子的な構成要素との通信とを実現することができる。給電のために必要となる電気的な接点は、たとえば、拘束装置のベルトバックルまたはベルトタングもしくは差込みタングに組み込まれていてよい。
【0020】
乗員の衣類へのベルトシステムの組込みによって、快適な使用が可能となると同時に拘束システムの作用を改善することができる。衣類には、骨盤ベルトのほかに、拘束作用をさらに十分に改善するために、たとえば肩ベルト等が組み込まれてもよい。安全ベルトの、場合により面倒な着用は不要となり、「締結動作」が、乗用車に類似して、ベルトバックルの閉鎖に限定される。
【0021】
本発明において提案されたコンセプトの更なる利点は、車両給電源への拘束装置の提案された接続によって、電子的な構成要素への給電のために乗員の身体にまたは身体付近に必要となるバッテリまたはこれに類するものを省略することができるかもしくはより小さくすることができる点にある。この場合、電子的な構成要素とは、たとえばパッシブセーフティのシステムであってもよいし、乗員の移動電話であってもよい。給電源をもはや衣類に組み込む必要がないという利点に加えて、衣類に組み込まれたシステムを全走行期間にわたって安全確実に運転することができることにより、安全性を十分に獲得することができるという事実は、特にパッシブセーフティのシステム、たとえばエアバッグジャケットに関して重要となる。
【0022】
さらに、通信インタフェースの組込みによって、相応の車両システム、たとえばジャケットエアバッグを作動させるための制御機器、車両通信システムまたは車両エンタテインメントシステム、HMI等への、無線システムと比較してそれほど手間がかからずかつ故障しにくい頑強な接続が可能となる。
【0023】
前述した快適性の利点は、原動機付きの二輪に用いられるベルトシステムに対して場合により存在する顧客の保留態度を取り除く良い機会となり、これによって、衝突時に拘束システムによってモータサイクルライダの安全を確保する可能性を将来的に十分に利用することができる。
【0024】
車両の乗員用の拘束装置は、以下の特徴:すなわち、
乗員の少なくとも一身体領域を取り巻くために形成された、乗員の衣類に少なくとも部分的に組込み可能なまたは組み込まれた拘束ベルトと、
乗員を車両に解除可能に繋ぐために形成された、拘束ベルトに結合可能なまたは結合された結合エレメントと:
を有している。
【0025】
車両は、道路交通において使用可能な車両であって、その上に運転中に人ひとりが乗っていて、この人の身体が車両のハウジングもしくは車体によって全く取り囲まれていないかまたは部分的にしか取り囲まれていない車両であってよい。たとえば、車両は、原動機付きの二輪、たとえばモータサイクルであってよい。これに相応して、車両を使用するかもしくは運転する人を「乗員」と呼ぶことができる。拘束装置とは、たとえば、ある対象物への車両の衝突の際に、車両に対する乗員の、衝突における衝突エネルギに起因した相対運動を阻止することができるように、乗員を車両に繋ぎとめておくために適した器具を意味している。こうして、乗員が対象物に衝突し、その際に怪我してしまうことを回避することができる。衣類は、たとえばジャケットまたはベストであってよい。拘束ベルトは一体的にまたは複数の部分から形成されていて、衣類内で長手方向にかつ/または横方向に全周にわたってまたは全周の一部にわたって延びていて、乗員の少なくとも一身体領域を安全確実に取り巻くために適した一種のループを形成するように互いに結合することができる少なくとも1つの第1の端部と第2の端部とを有しているように、衣類に組み込まれていてもよいし、組込み可能であってもよい。この場合、拘束ベルトが衣類の内側領域に延びていると好適である。結合エレメントは、拘束ベルトに固く結合されていてもよいし、たとえば拘束装置の使用者によって、必要な場合に拘束ベルトに結合され、必要に応じて再び解除することができるように形成されていてもよい。結合エレメントは、これに衣類の外側から達して操作することができるように、拘束ベルトに結合されていてもよいし、結合されてもよい。結合エレメントは、特に車両に設けられた適切な対応片に連結することができるように形成されており、これによって、拘束ベルトと車両とを解除可能に繋ぐことができる。車両への乗員の繋ぎの解除可能性とは、乗員が、拘束装置により提供された保護機能をもはや必要としない場合に、乗員が自ら繋ぎを解除することができることを意味している。択一的には、繋ぎは、解除が必要となる事故の発生中の、たとえば側方への車両のスリップ時の規定の状況で、乗員の関与なしに自動的に解除されるように特殊化されていてもよい。
【0026】
拘束装置の1つの態様によれば、拘束ベルトが、身体領域としての乗員の肩領域および/または胸領域および/または骨盤領域を取り巻くために形成されていてよい。このためには、拘束装置が、対応する領域に沿って、ジャケットまたはベストとして形成された衣類内に延在していてよい。乗員の身体に対する拘束ベルトのこのような有利な配置態様によって、人体に最小の負荷をかけると同時に最も効果的な拘束機能を有するように、衝突に起因した乗員の運動を遅らせることが可能となる。
【0027】
たとえば、結合エレメントが、拘束装置を車両に連結するための連結システムのベルトバックルまたは差込みタングを有していてよい。この態様では、結合エレメントは、連結システムの相応の車両側の対応片が差込みタングを有している場合には、ベルトバックルを有していてよく、また、相応の車両側の対応片がベルトバックルを有している場合には、差込みタングを有していてよい。乗員を車両に繋ぐこの態様は、少ない製造コスト、豊富な製品多様性および使用者に対する簡単な操作可能性の点で優れている。
【0028】
特に結合エレメントが、少なくとも1つの第1の電気的な接点接続部を有していてよい。この第1の電気的な接点接続部は、連結システムの連結状態において、車両に割り当てられた第2の電気的な接点接続部に対するインタフェースを成すように形成されていてよい。こうして、結合エレメントが、有利には、機械的な連結のほかに、さらに、付加的な構成部材を必要とすることなしに、送電の第2の機能を提供することができる。
【0029】
拘束装置の1つの態様によれば、結合エレメントが、少なくとも1つの別の第1の電気的な接点接続部を有していてよい。この態様では、第1の電気的な接点接続部が、拘束装置のエネルギ供給線路に接続されているように形成されていてよく、別の第1の電気的な接点接続部が、拘束装置のデータ伝送線路に接続されているように形成されていてよい。こうして、車両と拘束装置との間で情報を伝送することができ、同時に、拘束ベルトに連結された機器への一定の給電を保証することができる。エネルギ供給線路もデータ伝送線路も、拘束ベルトに沿って延びているかまたは拘束ベルトの内部に延在しているように形成されていてよい。この態様では、特にデータ伝送のために、無線伝送よりも極めて故障しにくい頑強な物理的な結合を利用することができるという事実が有利である。
【0030】
たとえば、拘束装置が、送出接点接続部を有していてよい。この送出接点接続部は、電気的な接点接続部および/または別の電気的な接点接続部により受け取られた電圧を、拘束装置に連結されたかまたは連結可能なかつ電気的な接点接続部および/または別の電気的な接点接続部から間隔を置いて配置された乗員保護装置に送電するか、または拘束装置に連結されたかまたは連結可能なかつ電気的な接点接続部および/または別の電気的な接点接続部から間隔を置いて配置された通信装置に送電するために形成されている。送出接点接続部は、適切な機器に電流を供給しかつ/または情報を提供するために相応に形成されていてよい。このためには、送出接点接続部が、たとえば短い線路を介して相応の機器に接続されていてよい。機器としての乗員保護装置は、たとえば、乗員を衝突から守るために衣類に組み込まれたエアバッグであってよい。機器としての通信装置は、たとえば、衣類の適切な内側ポケットに差し込まれる移動電話であってよい。この態様によって、安全性および快適性に関して高い要求を満たすことができる。なぜならば、たとえば移動電話用の付加的なバッテリおよびエアバッグ用の持運び可能なエネルギ供給源を省略することができるからである。
【0031】
1つの別の態様によれば、拘束装置が、乗員を付加的に車両に解除可能に繋ぐために形成された別の結合エレメントを有していてよい。この別の結合エレメントの使用によって、拘束装置の保持機能をさらに十分に改善することができる。
【0032】
車両の乗員用の衣類は、この衣類に組み込まれた、前述した複数の態様のうちの1つに係る拘束装置を有している。この拘束装置は、たとえば衣類の内側裏地への縫込みによって、衣類に組み込むことができる。択一的には、拘束装置が、生地通路内への押込みによって衣類内に挿入され、不要になるかまたは交換したい場合には、引出しによって再び衣類から取り出されてもよい。
【0033】
1つの態様によれば、衣類が、ジャケットまたはベストとして形成されていてよい。相応して、拘束装置が、乗員によるジャケットまたはベストの着用によって適切な位置にもたらされ、ジャケットまたはベストの閉鎖装置の閉鎖によって閉鎖されてよい。こうして、有利には、外側の拘束ベルトもしくは安全ベルトの、専門的に見て、場合によっては適正に行われない複雑な着用を省略することができる。
【0034】
乗員を車両に解除可能に繋ぐための安全システムは、この安全システムを、上述した複数の態様のうちの1つに係る拘束装置に連結するための車両側結合エレメントを有しており、この車両側結合エレメントが、少なくとも1つの第2の電気的な接点接続部を有している。車両側結合エレメントは、結合エレメントに類似して、この結合エレメントがどのように形成されているかに応じて、ベルトバックルまたは差込みタングとして形成されていてよい。安全システムは、車両側結合エレメントが、車両内に配置された巻上げ可能なウェビングの一端に固定されているように形成されていてよく、これによって、拘束ベルトの結合エレメントへの車両側結合エレメントの連結時に、乗員に対して、適切な範囲内での運動自由度を保証することができる。第2の電気的な接点を介して、車両と拘束装置との間で電圧の送電を保証することができる。
【0035】
車両の乗員用の拘束装置を使用する方法は、以下のステップ:すなわち、
乗員の少なくとも一身体領域を、乗員の衣類に少なくとも部分的に組込み可能なまたは組み込まれた拘束ベルトによって取り巻くステップと、
拘束ベルトに結合可能なまたは結合された結合エレメントによって乗員を車両に解除可能に繋ぐステップと:
を有している。
【0036】
方法としての本発明のこの変化態様によっても、本発明の根底にある課題を迅速かつ効率よく解決することができる。
【0037】
さらに、本発明は、本発明に係る方法のステップを相応の装置において実施するかもしくは実現するために形成された制御機器を提供している。制御機器としての本発明のこの変化態様によっても、本発明の根底にある課題を迅速かつ効率よく解決することができる。
【0038】
制御機器とは、本発明では、センサ信号を処理して、このセンサ信号に関連して制御信号および/またはデータ信号を送出する電気機器を意味している。制御機器は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアに関連して形成することができるインタフェースを有していてよい。ハードウェアに関連した構成では、インタフェースが、たとえば、制御機器の種々異なる機能を内蔵する、いわゆる「システムASIC」の一部であってよい。しかし、インタフェースが固有の集積回路であるかまたは少なくとも部分的に個別の構成素子から成っていることも可能である。ソフトウェアに関連した構成では、インタフェースが、たとえば、別のソフトウェアモジュールのほかに、マイクロコントローラに存在するソフトウェアモジュールであってよい。