【実施例1】
【0021】
[全体概要構成]
図1は、加熱攪拌装置を一部省略し一部を断面にして示す概略図、
図2は、攪拌部を示す概略平面図である。以下の説明において、上下とは、重力方向の上下を意味する。
【0022】
図1、
図2のように、攪拌装置としての本実施例1の加熱攪拌装置1は、平釜状の攪拌容器としての平釜3と、攪拌主駆動軸5と、攪拌旋回部7と、攪拌駆動軸9と、掻取羽根11と、外周公転部13とを備えている。
【0023】
前記平釜3は、細長い食材を投入して加熱しながら攪拌調理するためのものであり、鉄又はステンレス等で形成され、胴部3aが浅く、底部3bが比較的平坦な形状に形成されている。細長い食材としては、中華麺、うどん、そば、スパゲティー、春雨、ビーフンなどがある。但し、細長い食材であれば、これらには限定されない。
【0024】
この平釜3は、加熱部15に着脱自在に嵌め込まれ、加熱部15に備えられたガス加熱装置等(図示せず。)により加熱することができる。
【0025】
前記攪拌主駆動軸5は、平釜3の上部に備えられて駆動ボックス17に支持され、駆動ボックス17内の駆動源であるギヤードモータにより回転駆動される構成となっている。
【0026】
前記攪拌旋回部7は、支持ケース状に形成され、攪拌主駆動軸5に一端が支持されている。この攪拌旋回部7は、攪拌主駆動軸5の回転半径方向にアーム状に伸び、前記平釜3に対し攪拌主駆動軸5の軸心回りに旋回する構成となっている。
【0027】
前記攪拌駆動軸9は、攪拌主駆動軸5の周りで攪拌旋回部7の他端部に回転可能(自転可能)に支持されて下方に延設され、その下端側が平釜3内に至っている。この攪拌駆動軸9は、攪拌主駆動軸5に連動構成されて自転し、前記攪拌旋回部7の旋回により公転する構成となっている。
【0028】
前記掻取羽根11は、例えばフッ素樹脂製であり、前記攪拌駆動軸9の下部に設けられ前記平釜3内面を前記自転及び公転により掻き取り移動するものである。この掻取羽根11は、返し防止板である取付板19の下縁部に支持され平釜3の底部3bに沿って攪拌移動する形状となっている。前記取付板19は、略三角形板状に形成され、攪拌駆動軸9に頂部側が支持されている。取付板19には、攪拌駆動軸9の軸心を挟む両側で該取付板19の両上縁部に、食材を乗り越えさせる弧状面部19a、19bが備えられている。
【0029】
前記掻取羽根11は、外羽根21及び内羽根23を有している。外羽根21及び内羽根23は、略長尺平板状に形成され攪拌駆動軸9の軸心を挟む両側で回転半径方向に沿って配置されている。
【0030】
前記長尺平板状の外羽根21及び内羽根23の長さは、駆動回転軸から羽根におろした垂直線との交点を挟んで両側にある。
【0031】
前記外羽根21及び内羽根23の外端部側には、補助羽根25、27が取り付けられている。補助羽根25、27は、パイプ棒状に形成され、前記攪拌駆動軸9の自転方向の後方上方に傾斜して配置されている。
【0032】
前記外周公転部13は、攪拌旋回部7側に支持され掻取羽根11の外周側に配置され前記平釜3内を公転移動するものである。外周公転部13は、攪拌旋回部7に一体的に設けられた軸受筒部47に一端が結合され外周公転軸31の他端部側で構成されている。本実施例では、外周公転軸31の他端部側に側羽根33が取り付けられ、公転により平釜3内面の外周部を掻き取り移動する。この側羽根33は、平釜の外周部において胴部3a及び、底部3bに渡って掻き取り移動する。
【0033】
平釜の外周部において胴部3aが公転中心から円とのずれ、底部3bの水平からのずれがあると側羽根33の胴部3a及び底部3bの壁面の掻き取りが不十分となるので、公転軸31と側羽根33の接合部は、屈折可能でコイルばねにより、底部外周方向に羽根33を器壁に押し付けることで、公転により平釜3内面の外周部を精度良く掻き取り移動する。
【0034】
なお、外周公転部13は、自公転する掻取羽根11の外周側で公転し、掻取羽根11との協働により細長い食材を解すことができれば良く、側羽根33は必ずしも必要とするものではない。したがって、外周公転部13は、単に棒状に存在するものでも良い。
[自転公転機構]
図3は、駆動機構を示す概略断面図、
図4は、駆動機構を示す概略平面図である。なお、
図3には、補助羽根25、27が正面、側面の双方から見た状態を重ねて図示している。しかし、側面から見た補助羽根25、27の重ねた図示は、補助羽根25、27の形状把握のために参考として表したものである。同じく
図4には、取付板19が単独で併設図示されているが、取付板19の形状把握のために参考として表したものである。また、前記
図2を含めて、側羽根33の縁部を平釜3の外部に突出して示しているのは、ばねによる可動範囲を想像的に示したものである。
【0035】
前記駆動源を備えた駆動ボックス17を含めて、自転、公転の駆動機構は、エピサイクロイド型であり、
図3、
図4のようになっている。但し、ハイポサイクロイド型に構成することもできる。
【0036】
図3、
図4のように、前記駆動ボックス17は、支柱(図示省略)の上部に軸を介して回転待避可能に支持されている。駆動ボックス17と支柱との間には、駆動ボックス17の回転待避を行う油圧シリンダ装置(図示せず。)が設けられている。
【0037】
前記駆動ボックス17の基端部内には、ギヤードモータ35が備えられている。ギヤードモータ35の出力軸37には、スプロケット39が設けられている。駆動ボックス17の先端部には、前記攪拌主駆動軸5が設けられている。攪拌主駆動軸5には、スプロケット41が設けられている。スプロケット39、41間に、チェーン43が掛け回されている。
【0038】
前記攪拌主駆動軸5に前記攪拌旋回部7の一端部が一体回転可能に取り付けられている。攪拌旋回部7は、回転半径方向に偏心部45を備えている。偏心部45には、軸受筒部47が一体的に設けられ、攪拌駆動軸9が軸受により回転自在に支持されている。この支持により攪拌駆動軸9は、攪拌主駆動軸5の回りで自転、公転可能となる。
【0039】
前記攪拌主駆動軸5には、歯車49が取り付けられ、歯車49は、攪拌駆動軸9の上端部には、歯車51が設けられている。歯車49、51は噛み合い、攪拌主駆動軸5から攪拌駆動軸9に回転駆動力を伝達する。
【0040】
前記攪拌駆動軸9には、コイルスプリングを内蔵した羽根パイプセット9aが設けられ、掻取羽根11を平釜3の底部3bに押し付けるようになっている。
【0041】
かかる自転、公転の駆動機構において、ギヤードモータ35を駆動させるとチェーン43を介してその駆動力が攪拌主駆動軸5に伝達される。この伝達により攪拌主駆動軸5が回転すると攪拌旋回部7が攪拌主駆動軸5の軸心回りに一体的に回転する。この回転により偏心部45の攪拌駆動軸9が攪拌主駆動軸5の軸心回りである平釜3の中心回りに公転する。
【0042】
同時に歯車49、51の噛み合いを介して攪拌主駆動軸5から攪拌駆動軸9に回転駆動力が伝達される。この伝達により攪拌駆動軸9が軸心回りに自転駆動される。
【0043】
すなわち、攪拌駆動軸9は、攪拌主駆動軸5の軸心回りで自転、公転駆動され、外周公転部13が、自転する掻取羽根11の外周囲で掻取羽根11と供に攪拌主駆動軸5の軸心回りに公転駆動される。
【0044】
[取付板及び掻取羽根]
図5は、取付板を示す正面図、
図6は、取付板を示す平面図、
図7は、取付板を示す一部省略側面図、
図8は、取付板に対する掻取羽根の取り付けを示す拡大側面図である。
【0045】
図5〜
図8のように、前記取付板19は、略三角形板状の本体部19cを備え、頂部側に取付ボス部19caが設けられている。この取付ボス部19caに対する振り分けで底辺部の一方側19cbは、同他方側19ccよりも同程度もしくは若干長く形成され、左右非対称にも設定されている。
【0046】
底辺部の一方側19cb及び他方側19ccには、羽根締結部19cba、19ccaが設けられている。羽根締結部19cba、19ccaは、相互に逆方向に傾斜設定され、相互内外周間に隙間19dが形成されている。
【0047】
弧状面部19a、19bは、底辺部19cb、19ccの傾斜方向に対する後方側にそれぞれ半円状に湾曲形成されている。この弧状面部19a、19bは、
図5の平面方見て上部が取付ボス部19caの両側で対峙するように延設され、下部が底辺部19cb、19ccの端部に対向するように延設されている。
【0048】
前記底辺部19cb、19ccには、羽根取付板53a、53bを介して掻取羽根11の外羽根21と内羽根23とがそれぞれ羽根締結部19cba、19ccaで締結結合されている。外羽根21及び内羽根23の下縁21a、23aには、逃げ面21aa、23aaが回転方向の後方上方に傾斜するように形成されている。
【0049】
前記棒状の補助羽根25、27は、攪拌駆動軸9の自転による外羽根21と内羽根23との旋回半径方向の外周側となる部分に取り付けられ、旋回方向の後ろ側に傾斜設定されている。補助羽根25、27の上部25a、27aは、僅かに滑らかに屈曲形成され、さらに上方に指向している。
【0050】
前記外周公転部13の外周公転軸31は、パイプ材で形成され、攪拌駆動軸9の軸方向で複数段階に屈曲し、公転軸基部31a、公転軸中間部31b、及公転軸先端部31cを備えている。
【0051】
公転軸基部31aは、主体が攪拌駆動軸9に平行に上下に延設され、上端部が屈曲されて軸受筒部47に一体に結合されている。公転軸中間部31bは、公転軸基部31aの下端に直交して配置され、平釜3の胴部3a側に至るように延設されている。公転軸先端部31cは、公転軸中間部31bに着脱自在に結合され、本実施例では、胴部3aに向かって下降傾斜且つ攪拌駆動軸9を中心とした回転円の接線方向回転前方へ下降傾斜するように配置されている。
【0052】
この公転軸先端部31cには、側羽根取付板55が着脱自在に取り付けられ、この側羽根取付板55に前記側羽根33が着脱自在に取り付けられている。
【0053】
外周公転軸31の公転軸中間部31b及び公転軸先端部31c間には、継手機構が設けられ、公転軸先端部31cには、コイルばね等を用いたばね機構が介設され、側羽根33が公転軸先端部31cの傾斜方向に付勢されている。この付勢により、側羽根33の掻取縁部は、平釜3の胴部3a及び底部3bに弾接するように支持されている。この側羽根33の平釜3内周面に対する弾接により、平釜3の成形歪に応ずることができるようになっている。但し、このばね機構は、省略することもできる。
[撹拌調理]
攪拌駆動軸9の自転と攪拌駆動軸9及び外周公転軸31の公転とにより平釜3内で焼きそば等の食材を加熱撹拌調理することができる。
【0054】
平釜3の底部3b内面は自転、公転する掻取羽根11により掻取運動を受ける。底部3b内面の隅部及び側面は公転する側羽根33により掻取られる。この二つの羽根により、底部3b全面が掻取られ、食品の焦げ付きが防止される。
【0055】
底部3b上にある食材は、掻取羽根で掻取られた時、掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23の傾斜上に乗るような方向にすくい力を受ける。
【0056】
掻取羽根11の傾斜上に乗るように移動する麺は、攪拌駆動軸9側で取付板19の弧状面部19a、19bを滑らかに乗り越えて移動することができる。
【0057】
自転公転する攪拌駆動軸9及び外周公転軸31(側羽根33)間では、掻取羽根11及び側羽根33が相対回転するから、攪拌駆動軸9(掻取羽根11)及び外周公転軸31(側羽根33)間に存在する麺が掻き出され、底部3b全面に再配置される。硬い面の塊りに外力を作用させ解すと共に、再び羽根と接触し麺が移動されるまで一定時間、接触する鍋面から、加熱することが出来、焦がさずに麺を徐々に加熱し解して行くことが出来る。
【0058】
鍋上にある麺は大部分が自転公転する撹拌羽根底部の掻取羽根21又は23と接触し羽根と共に動く。羽根の運動方向に蓄積した麺は、槽の外周方向、内部方向、羽根を乗り越える方向に移動し、鍋面全体にほぼ均一に分配される。鍋面上にある麺は、再び掻取羽根に接触するまで、その位置に留まり、鍋面から、加熱される。このようにして、鍋面全体から麺は効果的に一定時間加熱されるので、焦げ付くことなく、効果的に麺を加熱し、温度上昇と共に麺の解れを加速できる。
【0059】
そして調味液を加える事で、炒め感のある高温(80℃以上)の麺調理ができる。
[麺類炒め時の機能]
次に、上記加熱攪拌装置1を用いた焼きそばの調理について説明する。なお、焼きそばの調理方法は一例であり、特に限定されるものではない。
【0060】
麺類は通常、一定の量が一塊として冷蔵保管されており、これを加熱攪拌釜である平釜3にいれて調理する場合、温度の低い間は大きな塊として攪拌され、伝熱は底部3b等の面に接触する部位のみで起こる。温度が上がると麺は柔軟になり、麺の塊りが解れ、混合が可能となる。
【0061】
本発明実施例で行う麺類の調理手順は凡そ、以下のようになる。
【0062】
(1)ガス加熱装置に点火する。
【0063】
(2)平釜の壁面が150℃に達温したら油を投入する。
【0064】
(3)平釜の壁面が200℃に達温したら、麺を投入し、攪拌駆動軸9を27r/minで回転駆動し、2分30秒間加熱攪拌を継続する。
【0065】
(4)次いで消火し、攪拌駆動軸9を27r/minで回転駆動し、2分30秒間攪拌を継続する。
【0066】
(5)攪拌駆動軸9を35r/minで回転駆動し、約1分間の間に平釜に調味液を投入(分割手投入)する。
【0067】
(6)攪拌駆動軸9の回転数を27r/minに落とし、1分程回転駆動を継続する。
【0068】
(7)攪拌駆動軸9を27r/minで回転駆動を続け、30秒間冷却ミストを噴霧し、釜を底部から冷却する。(掻取撹拌を停止しても焦げ付きが発生しない温度まで釜の壁温を低下させる。)
(8)攪拌羽根を跳ね上げ、羽根上の麺を落とす。
【0069】
(9)ミストを終了し、釜を傾動させる。((7)でミスト噴霧による釜冷却を開始し30秒経過後に羽根の回転を止めるが、釜のミスト冷却は継続させ、この時点で冷却をとめる)
(10)釜の傾動により仕上がった麺を取り出す。
【0070】
(11)釜を洗浄(お湯で)する。
【0071】
つまり、先ず平釜3を加熱し、壁温150℃となった時点で油を入れる。焦げ付き抑制の観点から、麺を炒める時釜の壁温は130〜230℃、好ましくは150〜210℃が良い。
【0072】
加熱を続け、壁温200℃となった時に麺を全量入れる(1200φの鍋で40kg)。麺の加熱攪拌を行う。麺は大きなブロック状で混合されながら高温の鍋壁面と接触し温度が上がって次第に柔軟になり、少しずつ解れていく。ガス加熱を停止するが、平釜3の蓄熱により麺の加熱は継続される。
【0073】
上記のように、麺が羽根と供回りせずに、鍋面全体に広がるような動きで、麺のほぐれ・混合が進む。
【0074】
より詳しく説明すると、次のようになる。
【0075】
平釜3内に投入された低温(10℃程度)の麺の塊りは自転、公転する掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23の前面が接触する。そして平釜3の底部3bで加熱されながら、釜内面を滑り、掻取羽根11等と共に動く。
【0076】
当初麺は温度が低く柔軟性が乏しく、平釜3と接触している部分、或いは掻取羽根11等と接触する部分で外力を受け、変形を若干起しながら一つの塊りとして挙動する。このようにして掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23の前面には麺の塊りが蓄積する。
【0077】
自転、公転する掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23の回転前面に蓄積した麺は、平釜3の外周側方向と、中心側方向と、掻取羽根11を乗り越える方向との3方向に移動する。 掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23を乗り越えて移動した麺は、補助羽根25、27に接触し、釜面と補助羽根25、27との間の相対運動により麺は自転方向に引っ張られ、直線状になり、麺の混合が進む。
【0078】
自転、公転する掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23の前面から平釜3の外周側方向に移動した麺は、側羽根33の公転速度より速い自転速度の掻取羽根11が側羽根3に対して回転が先行し、この部分にある麺が引きずられ、塊りの解れが促進される。
【0079】
なお、ハイポサイクロイドの場合は掻取羽根11の自転方向が側羽根33の公転方向に対して逆方向になるので混合力が強く、麺等の条件により、エピサイクロイド、ハイポサイクロイドの回転のタイプを選択することになる。
【0080】
平釜3の中心側に移動した麺は、自転、公転する掻取羽根11により補足され、再び掻取羽根11の外羽根21及び内羽根23の前面に集まる。
【0081】
このような動きの繰り返しにより麺の塊りは加熱され、徐々に解されて行く。
【0082】
鍋上にある麺は大部分が自転公転する撹拌羽根底部の掻取羽根21又は23と接触し羽根と共に動く。羽根の運動方向に蓄積した麺は、槽の外周方向、内部方向、羽根を乗り越える方向に移動し、鍋面全体にほぼ均一に分配される。鍋面上にある麺は、再び掻取羽根に接触するまで、その位置に留まり、鍋面から、加熱される。このようにして、鍋面全体から麺は効果的に一定時間加熱され、鍋面は完全に周期的に掻取られるので、焦げ付くことなく、効果的に麺を加熱し、温度上昇と共に麺の解れを加速できる。
【0083】
麺がある程度解れ、麺に炒め感が出たら、次に調味液を入れると、調味液は高温の平釜3に触れ沸騰する。発生した蒸気は麺と接触し凝縮する。このようにして麺の温度が更に上がり、表面が湿潤されるので、麺の流動性が良くなり、混合が急速に良くなると共に麺の温度が上昇する。
【0084】
更に混合を促進するため、攪拌速度を高める。麺の滑りがよくなっているので、麺が切れることはない。
【0085】
回転を下げ1分ほど調理を継続する。
【0086】
平釜3の底部3bにミストを噴霧して冷却し、平釜3の温度を100℃近辺に下げる。
【0087】
調味液を入れると、焦げ付き易くなり、釜温110℃以上で攪拌/掻取を止めると焦げ付きが発生する。
【0088】
調理を終了し攪拌駆動を止め、駆動ボックス17を上げる。この時羽根に付着した麺を鍋に回収する。(手作業)
ミスト冷却を終了し、鍋を傾動させ、調理された食品 (麺)を取り出す。麺の平均温度86℃で炒め感のある麺が得られた。
【0089】
このように、鍋面及び壁面への焦げ付き防止、撹拌軸への絡みつき防止、鍋面への食材の均一な分配による効率的な加熱などの効果もあり、加熱条件、調理条件を選択することにより、80℃以上の炒め感のある麺類に仕上げることができる。さらに、食材としては、麺等の長尺のものに限らず、他の一般的な食材においても、掻取羽根11により食材を加熱攪拌調理しながら外周公転部13との間で食材を十分に撹拌混合させることができる。
【0090】
すなわち、食材の混合が良い。食材を平釜3内面にほぼ均一に分散でき、材料が偏在する場合に比べ、効率良く(短時間で)加熱できる。公転の掻取羽根11による胴部3a及び外周側底部3bの掻取を2段関節の複段付勢機構を採用することにより、完全化し、回数の多い自転公転の掻取羽根11の掻取と合せて、平釜3内面全体を十分に掻取ることができる。食材の分散不良(過小)部が殆どなく、そこでの過熱が防がれることも重なり、焦げの発生を防止できる。
【実施例2】
【0091】
図9〜
図13は、本発明の実施例2に係り、
図9は、外周公転軸と平釜との関係の平面図、
図10は、外周公転軸の側羽根側の一部を平釜の概略断面との関係で示す説明図、
図11は、外周公転軸の2段関節ばね機構を示す一部を断面にした平面視の説明図、
図12は、2段関節ばね機構の第1関節部を示す説明図、
図13は、2段関節ばね機構の第2関節部を示す断面図である。なお、基本的な構成は実施例1と同様であり、同一構成部分には同符号を付し、対応した構成部分に同符号にAを付し、重複した説明は省略する。また、
図11〜
図13に示されていない他の構造及び符号は、
図1〜
図10を参照する。
【0092】
自転公転型掻取型の平釜は掻取により焦げを防止できるが、釜の歪みが大きいと掻取が不十分となり、焦げが発生する。また羽根で食材を釜面で移動させるが、釜面に食材が均一には分散できず、食材の少ない釜面の箇所があり、その分、加熱が有効に行われない。そこで、本実施例2では、いわゆる2段関節ばね機構を採用した。
【0093】
図9、
図10に要部のみ概略的に示す本実施例2の加熱攪拌装置1は、2段関節ばね機構を備えている。2段関節ばね機構は、公転軸中間部31b及び公転軸先端部31c間の第1関節部57、公転軸先端部31c及び側羽根取付板55間の第2関節部59からなり、第1、第2関節部57、59共にコイルばね61、63が設けられている。
【0094】
したがって、コイルばね61の付勢により、側羽根33の掻取縁部が、平釜3の胴部3a側内周面に弾接し、コイルばね63の付勢により底部3bに弾接するように側羽根33は外周公転軸31に支持されている。
【0095】
図11、
図12のように、公転軸中間部31b及び公転軸先端部31c間の第1関節部57は、ブラケット部65を備えている。ブラケット部65は、基部67を備えている。基部67は、インロウ形成により公転軸中間部31bの端部に外面に段部なく固定されている。基部67には、穴部69が設けられ、穴部69の前方に回転支持部71が設けられている。穴部69の軸心C1は、公転軸中間部31bの軸心C2に平行に設定されている。穴部69には、前記コイルばね61が挿入され、同じく挿入されているビュレット73を突出方向に付勢している。
【0096】
回転支持部71は、
図12のように二股に形成され、回転部75を軸77により回転自在に支持している。回転支持部71に対する回転部75の回転中心C3は、穴部69の軸心C1に対し公転軸中間部31bの軸心C2を挟んで配置され、回転部75の回転中心C3は、攪拌駆動軸9に平行に配置され、穴部69の軸心C1に直交している。
【0097】
軸77は、先端に回転及び固定可能のロック部77aを備え、基端に頭部77bを備えている。軸77の取付は、ロック部77aを軸77に真直に伸ばして行なう。ロック部77aを真直に伸ばした軸77を、ロック部77a側から回転支持部71及び回転部75の中心孔に貫通させ、頭部77bが回転支持部71の一側外面に係合した状態でロック部77aを回転により折曲げる。このロック部77aの折曲げにより
図12のように回転支持部71の他側外面にロック部77aが係合し、軸77の抜け止めを行なう。ロック部77aのロック位置固定は、摩擦力、割りピンなど、適宜の手段により行なわれる。このロック部77aによる軸77の抜け止めにより回転部75が回転支持部71に回転自在にワンタッチで支持される。
【0098】
回転部75には、弾接係合部75aが突設され、この弾接係合部75aにビュレット73がコイルばね61の付勢により弾接している。回転部75は、公転軸先端部31cに一体に形成されている。
【0099】
公転軸先端部31cは、上部79及び下部81が直角状に一体に形成され、上部79の軸心が公転軸中間部31bの軸心C2に一致しているとき下部81の軸心は、攪拌駆動軸9及び平釜3の胴部3aに平行になり、且つ攪拌駆動軸9を中心とした回転円の接線方向回転前方へ下降傾斜するように配置されている。
【0100】
図13のように、公転軸先端部31c及び側羽根取付板55間の第2関節部59は、前記第1関節部57と同一構成となっている。同符号で説明すると、第2関節部59もブラケット部65、軸77、回転部75を備えている。ブラケット部65は、基部67、穴部69、回転支持部71を備えている。穴部69には、コイルばね61及びビュレット73が挿入されている。
【0101】
第2関節部59において穴部69の軸心C4、公転軸先端部31cの下部81の軸心C5、回転部75の回転中心C6とすると、第2関節部59の軸心C4は、第1関節部57の軸心C1に、同軸心C5は、同軸心C2に、同回転中心C3は、同回転中心C6に対応する。
【0102】
図13の形状がシンプルで製作上、使用上、衛生上良い。回転中心C6等が前記のように傾斜しているので、底部3b方向に側羽根33をアジャストさせた時、軸方向にも変位が生じる。この変位は第1関節部57で吸収されるので、結果的に、回転中心C6を平釜3の底部3bに水平においた場合と同様の性能が得られる。
【0103】
回転部75は、側羽根取付板55側に一体に設けられ、側羽根取付板55に側羽根33が取り付けられている。
【0104】
側羽根33の羽根縁は、平釜3の内壁形状に応じて形成されており、本実施例において平釜3の胴部3a及び底部3b間のアールを持ったコーナー部において胴部3a及び底部3bに渡って接触し、掻き取り摺動するようになっている。
【0105】
このような側羽根33の掻取摺動に際して、第1関節部57では、コイルばね61の付勢によりビュレット73が弾接係合部75aに弾接して回転部75を回転中心C3周りに回転させる。回転部75のこの回転により公転軸先端部31cが公転軸中間部31bに対して相対回転し、側羽根33を平釜3の径方向外側に付勢移動させ、側羽根33が胴部3a側に押し付けられる。
【0106】
同時に第2関節部59では、コイルばね61の付勢によりビュレット73が弾接係合部75aに弾接して回転部75を回転中心C6周りに回転させる。回転部75のこの回転により側羽根取付板55が公転軸先端部31cに対して相対回転し、側羽根33を攪拌駆動軸9の軸方向で下方に付勢移動させ、側羽根33が底部3b側に押し付けられる。
【0107】
このような第1、第2関節部57,59の協働により側羽根33は、胴部3a及び底部3bの双方に押し付けられることになり、側羽根33による胴部3aから底部3bにかけての確実な掻き取り摺動を行なわせることができる。
【0108】
特に、平釜3は、精度よく成型されているが、精度にも限界があり、側羽根33の回転に対し平釜3の胴部3a内周面の真円度がずれることがある。また、このようなずれは、平釜3の精度が高くても、組み付け誤差として生ずることもある。
【0109】
かかるずれを生じても、前記のように第1、第2関節部57,59の協働による側羽根33の付勢で側羽根33の羽根縁を胴部3a及び底部3bにセルフアライニングにより的確に接触させることができ、外周公転部13の側羽根33による平釜3内壁面の掻き取りを的確に行なわせることができる。