特許第6486070号(P6486070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社渡辺オイスター研究所の特許一覧

特許64860703、5−ジヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール(3、5−dihydroxy−4−methoxybenzyl alcohol)の合成方法
<>
  • 特許6486070-3、5−ジヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール(3、5−dihydroxy−4−methoxybenzyl  alcohol)の合成方法 図000002
  • 特許6486070-3、5−ジヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール(3、5−dihydroxy−4−methoxybenzyl  alcohol)の合成方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486070
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】3、5−ジヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール(3、5−dihydroxy−4−methoxybenzyl alcohol)の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/26 20060101AFI20190311BHJP
   C07C 41/40 20060101ALI20190311BHJP
   C07C 41/36 20060101ALI20190311BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C07C41/26
   C07C41/40
   C07C41/36
   C07C43/23 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-224234(P2014-224234)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-88881(P2016-88881A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596161031
【氏名又は名称】株式会社渡辺オイスター研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貢
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀明
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−153852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/26
C07C 41/36
C07C 41/40
C07C 43/23
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)の合成に使用する容器内を脱気コンプレッサーあるいは真空ポンプを用いて、繰り返し脱気して該容器内を真空にし、真空にした前記容器を暖めて容器内の水分を除去し、前記真空の容器内にアルゴンあるいは窒素を注入して容器内のアルゴンあるいは窒素置換を繰り返し行ってなり、
容器内で水分を除去する経路と容器内にアルゴンあるいは窒素を注入する経路は、同じ経路を使用した場合に接続の切り替え時にコック内の穴に残っていた空気が前記容器内に逆流し容器内をアルゴンあるいは窒素に置換するには何回も置換を行わなくてはならないため別経路として構成してなり、
次いで前記容器内に没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルのジメチルホルムアミド溶液にジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドの溶媒を加え、それに炭酸カリウムの還元剤を加え約85℃で約1時間撹拌し、
前記撹拌物を容器に貯留し、攪拌物を貯留した容器を氷浴させて約0℃程度の冷却状態に保ち、その冷却状態でヨウ化メチルを徐々に少量ずつ時間をかけて前記容器内に滴下しつつ30分撹拌し、さらに常温状態で約24時間撹拌して反応させ、
該反応液をろ過して水を加え、酢酸エチルを加えて上下方向に振る撹拌を行い、上下方向に振る攪拌を行った容器内で上側に酢酸エチル層、下側に水層に分離させ、下側に分離した水層部分は取り除いて前記容器内を酢酸エチル層のみとし、該酢酸エチル層を塩水で洗浄して水と水に溶解している不純物を除去した後、硫酸ナトリウムで水を取り除くべく乾燥させて濃縮し、
濃縮後に濾過器としてシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム-酢酸エチル(3:1、v/v))を用いて精製し、没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体を得てなり、
次いで、脱気し、窒素パージを行った後、0℃乃至−10℃の冷却状態にした容器内に水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液あるいは2-メチルヒドロフランを貯留し、貯留した容器内に前記得られた没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合し、撹拌して混合液を生成し、生成された混合液を65℃に昇温させ、前記昇温させた混合液を60℃乃至80℃で6時間以上撹拌し還元反応させ、還元反応後は、還元反応停止に寄与させるべく約−10℃に冷却し、次いで、酢酸エチルと硫酸水溶液を加えて還元反応を停止させ、還元反応停止を確実にすべく−10℃で一晩静置させてなり、
還元反応停止後の反応液に精製水を加え、酢酸エチルを加え、上下に振る攪拌を行って、上方に酢酸エチル層、下方に水層とに分離し、下方の水層部分を除いて容器内を酢酸エチル層のみとし、
酢酸エチル層を塩水で6回程度洗浄して、pH=4乃至5の範囲とし、次いで、硫酸ナトリウムで水分除去して濃縮し、前記濃縮された濃縮液を濾過器であるシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム-メタノール(50:1、v/v)→クロロホルム-メタノール(50:3、v/v)を用いて濾過して3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を精製し、
精製にされた3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に溶かして、再結晶化を行って再度の精製することを4回繰り返し行い、
ピュアーな3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を得る、
ことを特徴とした3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)の合成方法。
【請求項2】
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)の合成に使用する容器内を脱気コンプレッサーあるいは真空ポンプを用いて、繰り返し脱気して該容器内を真空にし、真空にした前記容器を暖めて容器内の水分を除去し、前記真空の容器内にアルゴンあるいは窒素を注入して容器内のアルゴンあるいは窒素置換を繰り返し行ってなり、
容器内で水分を除去する経路と容器内にアルゴンあるいは窒素を注入する経路は、同じ経路を使用した場合に接続の切り替え時にコック内の穴に残っていた空気が前記容器内に逆流し容器内をアルゴンあるいは窒素に置換するには何回も置換を行わなくてはならないため別経路として構成してなり、
次いで前記容器内に没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルのジメチルホルムアミド溶液にジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドの溶媒を加え、それに炭酸カリウムの還元剤を加え約85℃で約1時間撹拌し、
前記撹拌物を容器に貯留し、攪拌物を貯留した容器を氷浴させて約0℃程度の冷却状態に保ち、その冷却状態でヨウ化メチルを徐々に少量ずつ時間をかけて前記容器内に滴下しつつ30分撹拌し、さらに常温状態で約24時間撹拌して反応させ、
該反応液をろ過して水を加え、酢酸エチルを加えて上下方向に振る撹拌を行い、上下方向に振る攪拌を行った容器内で上側に酢酸エチル層、下側に水層に分離させ、下側に分離した水層部分は取り除いて前記容器内を酢酸エチル層のみとし、該酢酸エチル層を塩水で洗浄して水と水に溶解している不純物を除去した後、硫酸ナトリウムで水を取り除くべく乾燥させて濃縮し、
濃縮後に濾過器としてシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム-酢酸エチル(3:1、v/v))を用いて精製し、没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体を得てなり、
次いで、脱気し、窒素パージを行った後、0℃乃至−10℃の冷却状態にした容器内に水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液あるいは2-メチルヒドロフランを貯留し、貯留した容器内に前記得られた没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合し、撹拌して混合液を生成し、生成された混合液を65℃に昇温させ、前記昇温させた混合液を60℃乃至80℃で6時間以上撹拌し還元反応させ、還元反応後は、還元反応停止に寄与させるべく約−10℃に冷却し、次いで、酢酸エチルと硫酸水溶液を加えて還元反応を停止させ、還元反応停止を確実にすべく−10℃で一晩静置させてなり、
還元反応停止後の反応液に精製水を加え、酢酸エチルを加え、上下に振る攪拌を行って、上方に酢酸エチル層、下方に水層とに分離し、下方の水層部分を除いて容器内を酢酸エチル層のみとし、
酢酸エチル層を塩水で6回程度洗浄して、pH=4乃至5の範囲とし、次いで、硫酸ナトリウムで水分除去して濃縮し、前記濃縮された濃縮液を濾過器であるシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム-メタノール(50:1、v/v)→クロロホルム-メタノール(50:3、v/v)を用いて濾過して3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を精製し、
精製にされた3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に溶かして、再結晶化を行って再度の精製することを4回繰り返し行い、
ピュアーな3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を収率58%で得る、
ことを特徴とした3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)の合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カキ肉から各種の有効成分を含む抽出物を抽出し、該カキ肉の有効成分抽出物を含む健康食品を製造する方法が各種創案されている。
【0003】
カキ肉有効成分抽出物を含む健康食材は、いわゆる健康補助食品として認知されており、有益物質を多く含んだ極めて優れた製品であると一般的にも注目されている。
【0004】
そして、現在では多種多様な製法による多種多様なカキ肉有効成分抽出物に関する健康補助食品の商品が販売されるに至っている。
【0005】
ここで、カキ肉の抽出物に関する食料品については、カキ肉有効成分抽出物を含有する液体抽出物をたとえば所定のドラム状の乾燥体に噴霧し、前記ドラム状の乾燥体自体を熱して乾燥させたり、あるいはカキ肉の抽出物を含有する液体抽出物を凍結させて乾燥したりして製造したものが従来から一般的に知られている。
【0006】
このカキ肉有効成分抽出物の抽出、製造に際しては、前述したように、グリコーゲンやタウリンあるいは蛋白質等の有益な栄養源及び亜鉛等を含むいわゆる血小板凝集抑制作用物質を多量に含有できて、かつ効率よくカキ肉抽出物を回収できる様抽出し、製造することが望ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−193756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かくして、本発明は、上記従来からの創案にはない発明として位置づけられるものである。
【0009】
従来、発明者は、タウリン、グリコーゲン、蛋白質、あるいは亜鉛を含有し、いわゆる血小板の凝集を抑制する作用を有する物質、活性度の高いビタミンDなどの脂溶性ビタミン、その他有益な物質の含有率、抽出度が高いのみならず、近年にわかに注目されてきた、いわゆる抗酸化性能を有する抗酸化剤、抗酸化剤組成物及びその製造法、例えばカキ肉から生成される抗酸化剤、抗酸化剤組成物および当該抗酸化剤組成物を含有するカキ肉抽出物を効率よく抽出でき、多量に含有させて製造できるカキ肉抽出物からの抗酸化剤、抗酸化剤組成物及びその製造方法を創案してきている。
【0010】
ところで、活性酸素の生成は好気性の生活に起因し、脂質、タンパク質、核酸の酸化を生じ、細胞に障害を与えることが一般に知られている。
通常、生体の酸化レベルは活性酸素産生系と抗酸化物質による消去系のバランスでほぼ一定に保たれているが、薬物、放射線、虚血などの様々な要因によりこのバランスが崩れ、活性酸素産生系へ傾くのが酸化ストレスといわれている。
この酸化ストレスの蓄積が、がん、動脈硬化性疾患、虚血/再灌流障害、慢性関節リウマチ、糖尿病、アルツハイマー病やパーキンソン病の神経障害などの様々な疾患や老化の一因であると考えられているのである。
【0011】
いわゆる抗酸化物質は構造から大きく二群に分類される。酵素性抗酸化物質としては、スーパーオキシドジスムターゼ(superoxidedismutase、SOD)、カタラーゼ(catalase、CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathioneperoxidase、GPx)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathioneS-transferase、GST)、グルタチオンリダクターゼ(glutathionereductase)、ペルオキシレドキシン(peroxiredoxin、Prx)などが挙げられる。一方、非酵素性抗酸化物としては、アスコルビン酸(ascorbicacid)、α-トコフェロール(α-tocopherol)、グルタチオン(glutathione、GSH)、カロテノイド(carotenoids)、フラボノイド(flavonoids)、メタロチオネイン(metallothionein)などを含む。
【0012】
カキ、たとえばマガキ(Crassostreagigas)はウグイスガイ目イタボガキ科に属する二枚貝で、その生息地は日本を初めとして東アジア全域に及んでいる。近年では、フランスやオーストラリアでもマガキが養殖されており、世界で最も食用に供さるカキとして名高い。
【0013】
カキは、栄養価が高いことから古代より食用にされてきたが、前述したとおりグリコーゲンやタンパク質の他、カルシウム、亜鉛、セレニウム、銅、マンガンなどのミネラルを多量に含むといわれている。
【0014】
また、カキ由来の抗酸化物として報告されているのは、酵素性抗酸化物質としてSOD、CAT、GPx、及びPrx6があり、非酵素性抗酸化物質としてはメタロチオネイン、uncouplingprotein5(UCP5)、アスコルビン酸、α-トコフェロール、β-カロテンがあった。
【0015】
しかして、本件発明の発明者は、カキからの優れたいわゆる新規抗酸化物質を見出すことに成功し、さらにその化学構造を決定し、すでに特許出願している。
さらに、今回、発明者は前記カキに由来しない優れたいわゆる新規抗酸化剤及び抗酸化剤組成物である3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)の効率のよい、そして純度の高い合成方法を創案することに成功したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)の合成に使用する容器内を脱気コンプレッサーあるいは真空ポンプを用いて、繰り返し脱気して該容器内を真空にし、真空にした前記容器を暖めて容器内の水分を除去し、前記真空の容器内にアルゴンあるいは窒素を注入して容器内のアルゴンあるいは窒素置換を繰り返し行ってなり、
容器内で水分を除去する経路と容器内にアルゴンあるいは窒素を注入する経路は、同じ経路を使用した場合に接続の切り替え時にコック内の穴に残っていた空気が前記容器内に逆流し容器内をアルゴンあるいは窒素に置換するには何回も置換を行わなくてはならないため別経路として構成してなり、
次いで前記容器内に没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルのジメチルホルムアミド溶液にジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドの溶媒を加え、それに炭酸カリウムの還元剤を加え約85℃で約1時間撹拌し、
前記撹拌物を容器に貯留し、攪拌物を貯留した容器を氷浴させて約0℃程度の冷却状態に保ち、その冷却状態でヨウ化メチルを徐々に少量ずつ時間をかけて前記容器内に滴下しつつ30分撹拌し、さらに常温状態で約24時間撹拌して反応させ、
該反応液をろ過して水を加え、酢酸エチルを加えて上下方向に振る撹拌を行い、上下方向に振る攪拌を行った容器内で上側に酢酸エチル層、下側に水層に分離させ、下側に分離した水層部分は取り除いて前記容器内を酢酸エチル層のみとし、該酢酸エチル層を塩水で洗浄して水と水に溶解している不純物を除去した後、硫酸ナトリウムで水を取り除くべく乾燥させて濃縮し、
濃縮後に濾過器としてシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム-酢酸エチル(3:1、v/v))を用いて精製し、没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体を得てなり、
次いで、脱気し、窒素パージを行った後、0℃乃至−10℃の冷却状態にした容器内に水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液あるいは2-メチルヒドロフランを貯留し、貯留した容器内に前記得られた没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合し、撹拌して混合液を生成し、生成された混合液を65℃に昇温させ、前記昇温させた混合液を60℃乃至80℃で6時間以上撹拌し還元反応させ、還元反応後は、還元反応停止に寄与させるべく約−10℃に冷却し、次いで、酢酸エチルと硫酸水溶液を加えて還元反応を停止させ、還元反応停止を確実にすべく−10℃で一晩静置させてなり、
還元反応停止後の反応液に精製水を加え、酢酸エチルを加え、上下に振る攪拌を行って、上方に酢酸エチル層、下方に水層とに分離し、下方の水層部分を除いて容器内を酢酸エチル層のみとし、
酢酸エチル層を塩水で6回程度洗浄して、pH=4乃至5の範囲とし、次いで、硫酸ナトリウムで水分除去して濃縮し、前記濃縮された濃縮液を濾過器であるシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム-メタノール(50:1、v/v)→クロロホルム-メタノール(50:3、v/v)を用いて濾過して3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を精製し、
精製にされた3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に溶かして、再結晶化を行って再度の精製することを4回繰り返し行い、
ピュアーな3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を得る、
ことを特徴とし、
または、
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)の合成に使用する容器内を脱気コンプレッサーあるいは真空ポンプを用いて、繰り返し脱気して該容器内を真空にし、真空にした前記容器を暖めて容器内の水分を除去し、前記真空の容器内にアルゴンあるいは窒素を注入して容器内のアルゴンあるいは窒素置換を繰り返し行ってなり、
容器内で水分を除去する経路と容器内にアルゴンあるいは窒素を注入する経路は、同じ経路を使用した場合に接続の切り替え時にコック内の穴に残っていた空気が前記容器内に逆流し容器内をアルゴンあるいは窒素に置換するには何回も置換を行わなくてはならないため別経路として構成してなり、
次いで前記容器内に没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルのジメチルホルムアミド溶液にジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドの溶媒を加え、それに炭酸カリウムの還元剤を加え約85℃で約1時間撹拌し、
前記撹拌物を容器に貯留し、攪拌物を貯留した容器を氷浴させて約0℃程度の冷却状態に保ち、その冷却状態でヨウ化メチルを徐々に少量ずつ時間をかけて前記容器内に滴下しつつ30分撹拌し、さらに常温状態で約24時間撹拌して反応させ、
該反応液をろ過して水を加え、酢酸エチルを加えて上下方向に振る撹拌を行い、上下方向に振る攪拌を行った容器内で上側に酢酸エチル層、下側に水層に分離させ、下側に分離した水層部分は取り除いて前記容器内を酢酸エチル層のみとし、該酢酸エチル層を塩水で洗浄して水と水に溶解している不純物を除去した後、硫酸ナトリウムで水を取り除くべく乾燥させて濃縮し、
濃縮後に濾過器としてシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム-酢酸エチル(3:1、v/v))を用いて精製し、没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体を得てなり、
次いで、脱気し、窒素パージを行った後、0℃乃至−10℃の冷却状態にした容器内に水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液あるいは2-メチルヒドロフランを貯留し、貯留した容器内に前記得られた没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合し、撹拌して混合液を生成し、生成された混合液を65℃に昇温させ、前記昇温させた混合液を60℃乃至80℃で6時間以上撹拌し還元反応させ、還元反応後は、還元反応停止に寄与させるべく約−10℃に冷却し、次いで、酢酸エチルと硫酸水溶液を加えて還元反応を停止させ、還元反応停止を確実にすべく−10℃で一晩静置させてなり、
還元反応停止後の反応液に精製水を加え、酢酸エチルを加え、上下に振る攪拌を行って、上方に酢酸エチル層、下方に水層とに分離し、下方の水層部分を除いて容器内を酢酸エチル層のみとし、
酢酸エチル層を塩水で6回程度洗浄して、pH=4乃至5の範囲とし、次いで、硫酸ナトリウムで水分除去して濃縮し、前記濃縮された濃縮液を濾過器であるシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム-メタノール(50:1、v/v)→クロロホルム-メタノール(50:3、v/v)を用いて濾過して3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を精製し、
精製にされた3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に溶かして、再結晶化を行って再度の精製することを4回繰り返し行い、
ピュアーな3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を収率58%で得る、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カキに由来しない3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)の高効率で純度の高い合成方法を提供できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によって、原料の没食子酸メチルからどの程度の数値、またどの程度の収率で没食子酸メチル4位メトキシ体が得られたかを示す説明図である。
図2】本発明によって、得られた没食子酸メチル4位メトキシ体より、どの程度の数値、またどの程度の収率でE6、すなわち、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)が得られたかを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示す一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
まず、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を合成する為の容器を用意し、この容器内を脱気する作業を行う。
当該脱気工程について、何ら制限はないが、例えば、脱気コンプレッサー、真空ポンプなどを用い、繰り返し脱気し、容器内を真空にすることが好ましい。
【0021】
次いで、容器内の水分を除去する工程が行われる。該工程には、不活性ガスであるアルゴンあるいは窒素が用いられる。
例えば、真空にした前記容器を暖め、容器内の水分を完全に除去し、真空の容器内にアルゴンあるいは窒素を注入する。
例えば、真空でのアルゴン注入操作は複数回行い、容器内のアルゴン置換を行う。
【0022】
ここで、容器内を脱気する経路と不活性ガスを注入する経路とは容器において別々に設けてあるのが好ましい。同じ経路を使用すると、接続の切り替え時にコック内の穴に残っていた空気が容器内に逆流し、厳密に容器内を不活性ガスに置換するには何回も置換を行わなくてはならないからである。
上記の脱気工程及び水分除去工程を行う目的は、後述するメチル化反応、還元反応の反応確実性及び反応促進性を図るためである。
【0023】
次に、前記容器内に没食子酸メチルに、例えば、ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒を加えた溶液に還元剤を加え約85℃で約1時間撹拌する工程を行う。
ここで、還元剤としては、炭酸カリウムが挙げられる。本実施例では、没食子酸メチル(5.00g、27.2mmol)のジメチルホルムアミド溶液に炭酸カリウム(4.50g、32.6mmol)を加え、約85℃で約1時間撹拌した。
【0024】
その後、当該容器を氷浴させるなどして約0℃程度の冷却状態に保ち、その状態でヨウ化メチル(1.7ml)を徐々に滴下しつつ約30分間撹拌し、さらに常温で約24時間撹拌して反応させた。
ここで、前記ヨウ化メチルの滴下についてであるが、少量ずつ時間をかけて滴下するものとする。
【0025】
次いで、該反応液をろ過し、それに精製水を加え、また酢酸エチルを加えて上下方向に振るなどしての撹拌を行う。
【0026】
すると、容器内で水層と酢酸エチル層とに分離する。上側に酢酸エチル層、そして、下側に水層と明確に分離する。下側に分離した水層部分は取り除き、容器内には酢酸エチル層のみとする。
【0027】
そして、酢酸エチル層のみとなった溶液に、例えば飽和食塩水を加えて酢酸エチル層の溶液を洗浄する。すなわち、飽和食塩水を加えて、水と水に溶解している硫酸などの不純物を除去するのである。その後、硫酸ナトリウムで水分を取り除くことにより乾燥させ、濃縮していく。尚、硫酸ナトリウムの代替として、CaCl2、MgSO4、CaSO4、Na2SO4等を使用しても構わない。
【0028】
さらに、前記濃縮した濃縮物を濾過器、例えばシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルムあるいはクロロホルム-酢酸エチル(3:1、v/v)を用いて精製し、没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体を得るのである。
【0029】
ついで、容器内を脱気し、窒素パージを行う。さらに、容器について冷媒を使用して0℃乃至−10℃の冷却状態にし、該容器内に水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液(代替としては2-メチルヒドロフランなどの溶媒が挙げられる)を貯留すると共に、前記得られた没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合していく。
【0030】
該没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合、撹拌するのは、約0℃の状態で約1時間ほどである。
【0031】
その後、約0℃の状態から約65℃に昇温させる。
そして、前記の混合液を60℃乃至80℃で約6時間以上、好ましくは7時間以上撹拌し還元反応させる。
その後、温度を60℃乃至80℃から約−10℃に冷却する。該冷却操作を行うことにより、還元反応を速やかに停止させることに寄与できる。
【0032】
その後、酢酸エチルと硫酸水溶液を加えて前記の還元反応を停止させる。
しかして、前記反応停止を確実にするため、約−10℃で一晩程度静置させておくのが好ましい。
【0033】
さらに、前記還元反応を停止させた反応液に精製水を加え、それを酢酸エチルで上下に振るなどして撹拌を行う。
すると、上方に酢酸エチル層、下方に水層とに見事に分離する。そして、下方の水層部分は取り除き、容器内を酢酸エチル層のみとする。
【0034】
そして、酢酸エチル層のみとなった溶液に、例えば飽和食塩水を加えて酢酸エチル層の溶液を洗浄する。すなわち、飽和食塩水で水および水に溶解している硫酸などの不純物を除去するのである。
この工程、すなわち、飽和食塩水での洗浄は約6回程度繰り返すのが好ましい。これにより、pH=4乃至5の範囲に収めることが出来る。
【0035】
その後、硫酸ナトリウムで水を取り除いて乾燥させて濃縮していく。
または、トルエンなどを用い、いわゆる共沸脱水を行い、水分除去を行う。
そして、前記濃縮物を濾過器、例えばシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム-メタノール(50:1、v/v)→クロロホルム-メタノール(50:3、v/v)を用いて精製する。
【0036】
ここで、精製にされた3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に溶かし、その後、再結晶化を行い、さらに、精製する。
しかして、この精製の繰り返しを4回ほど行う。
この精製の繰り返しを行うことでピュアーな3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を得ることが出来る。
【0037】
そして、還元体、すなわち、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を前述した没食子酸メチルの4位メトキシ体から収率約58%、すなわち、約2kg得ることが出来たのである。
【0038】
ここで、図1には、本発明によって、原料の没食子酸メチルからいかなる数値の、またいかなる収率で没食子酸メチル4位メトキシ体が得られたかを示し、図2には前記得られた没食子酸メチル4位メトキシ体より、いかなる数値の、またいかなる収率でE6、すなわち、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)が得られたかを説明してある。
図1
図2