【実施例】
【0020】
まず、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を合成する為の容器を用意し、この容器内を脱気する作業を行う。
当該脱気工程について、何ら制限はないが、例えば、脱気コンプレッサー、真空ポンプなどを用い、繰り返し脱気し、容器内を真空にすることが好ましい。
【0021】
次いで、容器内の水分を除去する工程が行われる。該工程には、不活性ガスであるアルゴンあるいは窒素が用いられる。
例えば、真空にした前記容器を暖め、容器内の水分を完全に除去し、真空の容器内にアルゴンあるいは窒素を注入する。
例えば、真空でのアルゴン注入操作は複数回行い、容器内のアルゴン置換を行う。
【0022】
ここで、容器内を脱気する経路と不活性ガスを注入する経路とは容器において別々に設けてあるのが好ましい。同じ経路を使用すると、接続の切り替え時にコック内の穴に残っていた空気が容器内に逆流し、厳密に容器内を不活性ガスに置換するには何回も置換を行わなくてはならないからである。
上記の脱気工程及び水分除去工程を行う目的は、後述するメチル化反応、還元反応の反応確実性及び反応促進性を図るためである。
【0023】
次に、前記容器内に没食子酸メチルに、例えば、ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒を加えた溶液に還元剤を加え約85℃で約1時間撹拌する工程を行う。
ここで、還元剤としては、炭酸カリウムが挙げられる。本実施例では、没食子酸メチル(5.00g、27.2mmol)のジメチルホルムアミド溶液に炭酸カリウム(4.50g、32.6mmol)を加え、約85℃で約1時間撹拌した。
【0024】
その後、当該容器を氷浴させるなどして約0℃程度の冷却状態に保ち、その状態でヨウ化メチル(1.7ml)を徐々に滴下しつつ約30分間撹拌し、さらに常温で約24時間撹拌して反応させた。
ここで、前記ヨウ化メチルの滴下についてであるが、少量ずつ時間をかけて滴下するものとする。
【0025】
次いで、該反応液をろ過し、それに精製水を加え、また酢酸エチルを加えて上下方向に振るなどしての撹拌を行う。
【0026】
すると、容器内で水層と酢酸エチル層とに分離する。上側に酢酸エチル層、そして、下側に水層と明確に分離する。下側に分離した水層部分は取り除き、容器内には酢酸エチル層のみとする。
【0027】
そして、酢酸エチル層のみとなった溶液に、例えば飽和食塩水を加えて酢酸エチル層の溶液を洗浄する。すなわち、飽和食塩水を加えて、水と水に溶解している硫酸などの不純物を除去するのである。その後、硫酸ナトリウムで水分を取り除くことにより乾燥させ、濃縮していく。尚、硫酸ナトリウムの代替として、CaCl2、MgSO4、CaSO4、Na2SO4等を使用しても構わない。
【0028】
さらに、前記濃縮した濃縮物を濾過器、例えばシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルムあるいはクロロホルム-酢酸エチル(3:1、v/v)を用いて精製し、没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体を得るのである。
【0029】
ついで、容器内を脱気し、窒素パージを行う。さらに、容器について冷媒を使用して0℃乃至−10℃の冷却状態にし、該容器内に水素化リチウムアルミニウムのテトラヒドロフラン溶液(代替としては2-メチルヒドロフランなどの溶媒が挙げられる)を貯留すると共に、前記得られた没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合していく。
【0030】
該没食子酸、没食子酸プロピルあるいは没食子酸メチルの4位メトキシ体のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、混合、撹拌するのは、約0℃の状態で約1時間ほどである。
【0031】
その後、約0℃の状態から約65℃に昇温させる。
そして、前記の混合液を60℃乃至80℃で約6時間以上、好ましくは7時間以上撹拌し還元反応させる。
その後、温度を60℃乃至80℃から約−10℃に冷却する。該冷却操作を行うことにより、還元反応を速やかに停止させることに寄与できる。
【0032】
その後、酢酸エチルと硫酸水溶液を加えて前記の還元反応を停止させる。
しかして、前記反応停止を確実にするため、約−10℃で一晩程度静置させておくのが好ましい。
【0033】
さらに、前記還元反応を停止させた反応液に精製水を加え、それを酢酸エチルで上下に振るなどして撹拌を行う。
すると、上方に酢酸エチル層、下方に水層とに見事に分離する。そして、下方の水層部分は取り除き、容器内を酢酸エチル層のみとする。
【0034】
そして、酢酸エチル層のみとなった溶液に、例えば飽和食塩水を加えて酢酸エチル層の溶液を洗浄する。すなわち、飽和食塩水で水および水に溶解している硫酸などの不純物を除去するのである。
この工程、すなわち、飽和食塩水での洗浄は約6回程度繰り返すのが好ましい。これにより、pH=4乃至5の範囲に収めることが出来る。
【0035】
その後、硫酸ナトリウムで水を取り除いて乾燥させて濃縮していく。
または、トルエンなどを用い、いわゆる共沸脱水を行い、水分除去を行う。
そして、前記濃縮物を濾過器、例えばシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム-メタノール(50:1、v/v)→クロロホルム-メタノール(50:3、v/v)を用いて精製する。
【0036】
ここで、精製にされた3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihdroxy-4- methoxybenzyl alcohol)をメタノールと酢酸エチルの混合溶液に溶かし、その後、再結晶化を行い、さらに、精製する。
しかして、この精製の繰り返しを4回ほど行う。
この精製の繰り返しを行うことでピュアーな3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を得ることが出来る。
【0037】
そして、還元体、すなわち、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)を前述した没食子酸メチルの4位メトキシ体から収率約58%、すなわち、約2kg得ることが出来たのである。
【0038】
ここで、
図1には、本発明によって、原料の没食子酸メチルからいかなる数値の、またいかなる収率で没食子酸メチル4位メトキシ体が得られたかを示し、
図2には前記得られた没食子酸メチル4位メトキシ体より、いかなる数値の、またいかなる収率でE6、すなわち、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4- methoxybenzyl alcohol)が得られたかを説明してある。