(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、重ね合わせるとフィルム同士が密着して剥がれ難くなる(ブロッキングし易い)という性質を有しているため、アンチブロッキング剤が配合されている。即ち、アンチブロッキング剤の配合により、密着したフィルム同士が剥がれ易くなるというものであるが、このようなアンチブロッキング剤には、透明性(Haze)、滑り性、耐傷付き性などの特性も要求される。このようなアンチブロッキング剤としては、非晶質シリカの粉末が代表的である。
【0003】
一方、近年では、アンチブロッキング剤として、シランカップリング剤により表面処理されたシリカを使用することも行われており、このような表面処理シリカの使用により、樹脂に対する分散性を向上させ、アンチブロッキング性やその他の特性向上を図っている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
アンチブロッキング剤を含む樹脂フィルムは、一般に、基材樹脂(フィルム成形用樹脂)のペレットとアンチブロッキング剤との混合物を押出機中で溶融混練し、押し出された溶融物(ストランド)を冷却したのち、ペレタイズすることによりマスターバッチを得、このマスターバッチを基材樹脂で希釈して成形用樹脂組成物を調製し、該組成物をフィルム成形に供することにより成形される。
【0005】
ところで、本発明者等の研究によると、従来公知の非晶質シリカ(表面処理されていない非晶質シリカ)は、包装材等の用途に広く使用されているポリオレフィンやポリエステルのフィルムを製造するにあたってマスターバッチを成形する際、押出機からストランドが押し出されるダイリップに目ヤニが生成したり或いはストランドに発泡が生じるという問題があり、操作性の低下をもたらしていた。このような問題は、ポリオレフィン、中でもポリプロピレンフィルムを製造する際に特に顕著である。
【0006】
加えて、従来公知の非晶質シリカを延伸フィルムの製造に供する場合には、樹脂と非晶質シリカ粒子との間にボイドが発生するという問題もあった。ボイドの発生は、フィルムから非晶質シリカを落下させ、また、フィルムのガスバリア性や透明度を低下させる。
【0007】
上記のような目ヤニの発生や発泡の問題および延伸フィルムにおけるボイド発生の問題を改善するために、表面処理シリカをアンチブロッキング剤として使用すると、表面処理剤の種類によっては、このような不都合を改善できるものの、そうすると、押出スクリューへのアンチブロッキング剤による粉付着あるいは押出機投入口での粉立ちなどを生じ、マスターバッチの組成にバラつきを生じるなどの新たな問題が生じることが判った。このような粉付着や粉立ちは、マスターバッチ中のアンチブロッキング剤の配合量の変動をもたらし、目的とするフィルムのアンチブロッキング性にバラつきを生じさせることとなる。更に、従来の表面処理シリカには、製造コストが高いという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、マスターバッチ加工性が改善され、即ち、マスターバッチを成形する際の目ヤニの発生や発泡が有効に抑制され、且つ、押出スクリューへの粉付着や押出機投入口での粉立ちなどが有効に解決されており、更には、製造コストが抑えられたポリオレフィン及びポリエステル用アンチブロッキング剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のアンチブロッキング剤が基材樹脂であるポリオレフィンまたはポリエステルに配合されたマスターバッチを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、上記アンチブロッキング剤が配合されたポリオレフィン樹脂組成物や、該組成物から形成されたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、シリカ粒子のアンチブロッキング性と共に、ポリオレフィンやポリエステルを基材樹脂とするマスターバッチを調製する際のマスターバッチ加工性について検討した。その結果、極めて意外なことに、種々のシランカップリング剤の中でも特に、ポリオレフィンやポリエステルに対する反応性の官能基を有していないアミノアルキルアルコキシシランを選択し、このシランカップリング剤を用いて表面処理されたシリカ粒子は、マスターバッチ加工性が大幅に改善されるという極めて意外な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明によれば、アミノアルキルアルコキシシランで表面処理されたシリカ粒子からなり、未反応シランの含有量が3mg/kg以下に抑制されているポリオレフィン及びポリエステル用アンチブロッキング剤が提供される。
【0012】
本発明のアンチブロッキング剤においては、シリカ粒子100質量部当たり6〜14質量部の量でアミノアルキルアルコキシシランによる表面処理が行われていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、また、上記のアンチブロッキング剤が基材樹脂に配合されているマスターバッチであって、該基材樹脂がポリオレフィンまたはポリエステルであるマスターバッチが提供される。
【0014】
かかるマスターバッチにおいては、
(1)前記基材樹脂100質量部当たり1〜30質量部の量で前記アンチブロッキング剤が配合されていること、
(2)前記基材樹脂がポリオレフィンであること、
(3)前記基材樹脂がポリプロピレンであること、
が好ましい。
【0015】
更に、本発明によれば、前記アンチブロッキング剤が配合されているポリオレフィン樹脂組成物であって、該ポリオレフィン樹脂組成物100質量部あたり前記アンチブロッキング剤が0.001〜1.0質量部配合されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【0016】
更にまた、本発明によれば、少なくとも表面が前記ポリオレフィン樹脂組成物から形成されているフィルムが提供される。本発明のフィルムは、一軸方向または二軸方向に延伸されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアンチブロッキング剤は、シリカ粒子がアミノアルキルアルコキシシランにより表面処理されたものであるが、かかるアンチブロッキング剤(表面処理シリカ)は、未処理のシリカ粒子や従来の表面処理シリカ粒子と同等のアンチブロッキング性を示すばかりか、ポリオレフィンやポリエステルでのマスターバッチ加工性が大幅に改善されている。例えば、後述する実験例に示されているように、本発明のアンチブロッキング剤は、マスターバッチ成形時におけるダイリップでの目ヤニの発生や発泡を有効に抑制できるばかりか、押出スクリューへの粉付着や押出機投入口での粉立ちまでもが有効に防止される。即ち、マスターバッチ加工性の全般にわたって優れた特性を示す。
例えば、表面処理されていないシリカ粒子では、押出スクリューへの粉付着や押出機投入口での粉立ちは抑制されているが、目ヤニや発泡を生じている。また、メタクリルシランやシリコーンオイルで表面処理されているシリカ粒子では、目ヤニや発泡は抑制されているものの、押出スクリューへの粉付着や押出機投入口での粉立ちを生じてしまう。
【0018】
ところで、シリカ等の粒子の表面処理剤としてアルコキシシランなどのシランカップリング剤は周知であるが、アミノアルキルアルコキシシランは、シランカップリング剤としては極めて特殊な化合物である。即ち、樹脂に配合される無機粒子などへの表面処理は、樹脂に対する分散性を向上させることを目的としているため、ポリオレフィンやポリエステルに配合する粒子の表面処理剤として使用された例はなく、例えば、前述した特許文献2に記載されているように、ポリアミドなどに配合されるシリカ粒子についての表面処理剤として提案されている例が散見される程度である。何故ならば、アミノアルキルアルコキシシランが有しているアミノ基は、ポリオレフィンやポリエステルに対する親和性を高めるような官能基として機能するものではないからである。
このように、本発明によれば、アミノアルキルアルコキシシランによって表面処理されたシリカ微粒子をアンチブロッキング剤として使用することにより、マスターバッチ加工性の全般にわたって顕著な改善が認められるということは、極めて予想外であるということができる。このような予想外の事実が発現する理由については、明確に解明されていない。
しかしながら、目ヤニや発泡は粒子の樹脂に対する分散性に起因するものと考えられるが、押出スクリューへの粉付着や押出機投入口での粉立ちなどは樹脂に対する分散状態以外の要因も影響していると考えられ、且つアミノアルキルアルコキシシラン中のアミノ基は、ポリオレフィンやポリエステルの分散性向上には寄与するものではないことから、おそらく、アミノアルキルアルコキシシランを用いての表面処理により、シリカ粒子の樹脂に対する分散性に加えて、他の性質、例えば荷電特性などが変化しているために、上記のようなポリオレフィンやポリエステルのマスターバッチ加工性が全般にわたって改善されるのではないかと、本発明者等は推定している。
【0019】
また、本発明のポリオレフィン及びポリエステル用アンチブロッキング剤(表面処理シリカ)は、未反応シランの含有量が3mg/kg以下に抑制されている。このため、表面処理剤(アミノアルキルアルコキシシラン)が環境に与える影響も無視することができ、従って、このアンチブロッキング剤が配合されたポリオレフィンフィルム或いはポリエステルフィルムは、用途に制限を受けず、例えばパウチ等の食品用包装材としての用途にも何ら制限なく使用することができるという利点がある。
【0020】
更に、本発明のアンチブロッキング剤をポリオレフィンやポリエステル樹脂中に分散してフィルムを成形し、かかるフィルムを延伸工程に供したとき、粒子と樹脂との密着性が優れていること等に起因して、ボイドの発生が有効に抑制される。加えて、アミノアルキルアルコキシシランは、メタクリルシラン等の従来公知のシランカップリング剤に比べて非常に安価であるので、表面処理非晶質シリカの大量生産が可能であり、製造コストを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<非晶質シリカ粒子>
本発明において、表面処理される非晶質シリカ粒子(未処理シリカ)としては、アンチブロッキング性を有するものであれば、特に制限なく使用することができるが、特に、アンチブロッキング性が優れているものとして知られている特許第4521477号に開示されているものが好適に使用される。
【0023】
即ち、この非晶質シリカは、上記特許に記載されているように、X線小角散乱法で測定した一次粒子径が18〜50nmの範囲にあり、電子顕微鏡で観察した個々の二次粒子の円形度が0.70〜0.85の範囲にある。このようなシリカは、ケイ酸ソーダを酸で部分中和することにより生成した球状の非晶質シリカ粒状物の上に、さらなる中和反応によって非晶質シリカを析出させることにより製造され(詳細な製造条件は同特許参照)、X線小角散乱法で測定した一次粒子径が他のシリカに比して大きく、且つ一次粒子が結合して得られる二次粒子(電子顕微鏡で観察される粒子)の円形度もやや低く、真球状からやや変形した形状を有している。
また、上記の形態に関連して、かかる非晶質シリカは、一般に、レーザー回折散乱法で測定した二次粒子の中位径が1〜10μmの範囲にあり、高い吸油量(40ml/100g以上)と低い嵩密度(0.25〜0.70g/cm
3)を有している。
【0024】
<表面処理剤>
本発明において、上記の非晶質シリカ粒子の表面処理剤としては、アミノアルキルアルコキシシランが使用される。アミノアルキルアルコキシシランは、メタクリルシラン等の従来公知のシランカップリング剤に比べて安価に入手でき、且つ、優れたマスターバッチ加工性、アンチブロッキング性、透明性および滑り性を付与することができるからである。
【0025】
このアミノアルキルアルコキシシラン(以下、単にアミノシランと略すことがある)は下記一般式(1):
X
n−Si(R)
m(OR)
4−n−m (1)
式中、
nは、1〜3の整数であり、
mは、0〜2の整数であり、
Rは、メチル基、エチル基もしくはイソプロピル基であり、
Xは、アミノアルキル基であり、該アミノ基は、アルキル基やフェニル基等の置換
基を有していてもよく、該置換基は、さらにアミノ基を有していてもよく、
X及びRが複数存在するとき、複数のX及びRは互いに異なっていてもよい、
で表される。
【0026】
アミノシランの具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などが挙げられる。これらの中でも、特に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)が好適である。
【0027】
かかるアミノシランによる表面処理量は、前述した未処理の非晶質シリカ100質量部当り、6〜14質量部の量とするのがよい。この量が少ないと、ポリオレフィンやポリエステルを基材樹脂として含むマスターバッチのペレット調製に際して、用いる押出機スクリューへの粉付着や該基材樹脂とアミノシランで表面処理されたシリカ粒子(以下、単に表面処理シリカ粒子と呼ぶ)と混合物を投入する押出機投入口への粉立ちに問題はないものの、目ヤニの発生を防止することが困難となり、また、押出機から押し出されるストランドの発泡を防止する効果も希薄となる傾向がある。さらに、必要以上に多量のアミノシランを用いての表面処理は、目ヤニやストランドの発泡防止はできたとしても、押出機スクリューへの粉付着防止や押出機投入口での粉立ち防止には効果がほとんどなくなってしまう。
【0028】
上記のアミノシランを用いての表面処理は、乾式法、スラリー法、スプレー法等の公知の手法を用いて容易に行うことができるが、未反応シランの量を抑制するために、乾式法で表面処理を行うことが好適である。
例えば、未処理の非晶質シリカと所定量のアミノシランとをスーパーミキサー等の乾式混合機を用いて100〜150℃程度の加熱下で混合することにより容易に行うことができる。反応の終点は、エタノール等のアルコール蒸気の生成が停止することで確認できる。アルコール蒸気の生成は、時計皿等の表面が曇ることで認識される。
【0029】
<アンチブロッキング剤>
上記のようにして調製される本発明のアンチブロッキング剤(即ち、表面処理シリカ)は、ポリオレフィンやポリエステルを基材樹脂とするマスターバッチを調製する際の加工性に優れている。また、未処理のシリカや従来の表面処理シリカと同等のアンチブロッキング性、透明性(Haze、clarity)および滑り性を示し、また、延伸フィルムにおけるボイドの発生も有効に抑制する。更に、未処理シランの含有量も抑制されているため、本発明のアンチブロッキング剤を用いて製造されたフィルムは種々の用途に使用される。
【0030】
かかる特徴を有する本発明のアンチブロッキング剤は、基材樹脂であるポリオレフィンまたはポリエステルに配合されて樹脂組成物の調製に供され、得られた樹脂組成物から、フィルムなどの種々の物品が成形される。樹脂組成物の調製にあたっては、本発明のアンチブロッキング剤を直接溶融樹脂中に混合してもよいが、本発明の効果を最大限発揮できるという観点から、本発明のアンチブロッキング剤を基材樹脂中に配合したマスターバッチ(以下、本発明のマスターバッチと呼ぶことがある)を調製し、このマスターバッチを更に基材樹脂に配合(即ち、基材樹脂による希釈)することが望ましい。
【0031】
基材樹脂として使用されるポリオレフィン及びポリエステルとしては、フィルムの成形に使用されている従来公知のものを、何ら制限なく使用することができる。例えば、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、さらには環状オレフィン共重合体などが代表的であり、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が代表的であり、所謂フィルムグレードの分子量、成形加工性を有するものが基材樹脂として使用される。
【0032】
本発明のアンチブロッキング剤は、上記の中でもポリオレフィン、特にポリプロピレン或いはプロピレン共重合体がマスターバッチの調製に際して最も効果的である。ポリオレフィン、中でもポリプロピレンは、シリカ粒子と混合してマスターバッチを調製する際、目ヤニの発生が特に顕著であるが、本発明では、アンチブロッキング性を損なわず、しかも、粉付着や粉立ちなどの他の加工性の問題を生じることなく、目ヤニの発生を防止することができるからである。
【0033】
マスターバッチの調製に当ってのアンチブロッキング剤の使用量は、最終的にフィルムに配合される量を考慮して適宜の量に設定される。一般的には、マスターバッチの基材樹脂100質量部当り1〜30質量部の量で使用される。本発明のアンチブロッキング剤がかかる量で使用されることにより、マスターバッチの調製にあたって、目ヤニや発泡の抑制と粉付着・粉立ちの抑制が両方同時に実現され、特に優れたマスターバッチ加工性が示される。更に、フィルムとしたときのアンチブロッキング性、滑り性および透明性も優れた値を示すことができる。
【0034】
この量が必要以上に多いと、フィルム成形用の樹脂組成物を調製する際に、希釈のために多量の基材樹脂を使用しなければならず、アンチブロッキング剤の分散性が悪くなる。さらに、その使用量が少なすぎると、マスターバッチの使用量が多くなる。何れにしろ、成形作業を効率よく簡便に行うというマスターバッチ本来の目的が損なわれてしまう。
【0035】
マスターバッチの調製も、従来公知の手法で行われる。例えば、基材樹脂(ポリオレフィン或いはポリエステル)のバージンペレットと、このアンチブロッキング剤とを乾式混合し、この混合物を押出機中に投入口から投入し、該押出機中で溶融混合し、押出機のダイから押出し、押し出された溶融物(ストランド)を冷却し、次いで、ペレタイザーで所定の大きさに切断し、ペレット化することによりアンチブロッキング剤が配合されたマスターバッチペレットが得られる。
また、基材樹脂の重合前のモノマーと、このアンチブロッキング剤とを混合しておき、その後重合を行ってマスターバッチを調製してもよい。
【0036】
<樹脂組成物およびフィルム>
最終成形品をフィルムとする場合、本発明のアンチブロッキング剤を直接、あるいは、上記のようにして調製されたマスターバッチの状態にして、基材樹脂と溶融混合し、得られた樹脂組成物を用いて、用途に応じてフィルム成形を行い、目的とするポリオレフィンフィルム或いはポリエステルフィルム(以下、本発明のフィルムと呼ぶことがある)を得ることができる。溶融混合は、それ自体公知の方法で行えばよく、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、バンバリミキサー、リボンブレンダー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機により行えばよい。フィルムの成形は、それ自体公知の方法により行えばよく、例えば、本発明の樹脂組成物を押出機で溶融混練した後、ダイを通して押し出し、インフレーション製膜法、T−ダイ法等により行うことができる。
【0037】
マスターバッチと混合する希釈用の基材樹脂の量は、マスターバッチ中の基材樹脂と希釈用基材樹脂との合計量100質量部当りのアンチブロッキング剤の量が0.001〜1.0質量部になるような量に設定される。このような量でフィルム中に混合された本発明のアンチブロッキング剤は、優れたアンチブロッキング性や透明性、滑り性を安定に発揮する。具体的な数値範囲は、フィルムの組成や構造、厚み、延伸倍率等によって変化するが、例えば実験例記載のPP単層の二軸延伸フィルム(BOPPフィルム)であれば、20cN以下のブロッキング力を示すことができる。また、0.2〜5.0%のHaze、95.0〜99.7%のClarityを示すことができる。
【0038】
また、本発明のフィルムには、それ自体公知の各種の添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、滑剤などが配合されていてもよく、このような添加剤は、マスターバッチ中に配合することもできるし、フィルム成形時に希釈用の基材樹脂と共に配合することもできる。
なお、先にも簡単に述べたが、本発明のアンチブロッキング剤は、フィルムに対する馴染みが良好であり、このフィルムが延伸されている場合には、フィルムから脱落しないという利点を有している。
【0039】
かかるフィルムは、本発明の効果を最大限に発揮することができるという観点から、一軸或いは二軸延伸されていることが好ましい。また、延伸倍率は、要求するフィルム物性により、任意に変えられる。ボイドは、一般に、厳しい延伸を行う場合に発生しやすいため、ボイドの発生を有効に抑制するという本発明の効果が顕著に発揮される。例えば、後述の実験例に示されているように、本発明のフィルムが6×6倍で二軸延伸したものである場合のボイド個数は51〜55個/0.30mm
2であり、フィルム観察面積に対するボイド面積割合は0.815〜0.907%であるので、未処理のシリカ粒子を配合した場合に比べて著しく少ない。
【0040】
本発明のフィルムは、単層構造であってもよいが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、少なくとも一方の表面が本発明の樹脂組成物から形成されており、さらに他の層を有している積層構造であってもよい。本発明のフィルムが積層構造を有する場合、かかるフィルムは、共押出や熱ラミネート、ドライラミネート等の公知の方法により得られる。また本発明のフィルムの厚みは、用途等に応じて適宜決定されるが、一般的には、フィルム全体として5〜100μmが好ましい。
【実施例】
【0041】
本発明を次の実験例により更に説明する。なお、各種物性は、以下の方法で測定した。
【0042】
(1)未反応シランの含有量分析
試料約3gをジクロロメタン30mLで5時間撹拌して抽出を行った。抽出液を下記条件でガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)測定を行い、抽出可能な未反応シランの残存量(含有量)を定量した。なお、単位はmg/kgフィラーであるが、請求項及び明細書ではmg/kgと表記している。
GC/MS分析条件
装置:サーモサイエンティフィック社製 TRACE DSQ
カラム:Rtx―5Amine(30m×0.25mm×0.25μm)
注入モード:スプリット(スプリット比10:1)
カラム流量:1.0mL/min
GC温度条件
注入口:250℃
昇温条件:50℃〜280℃
MSインターフェース:280℃
MS条件
イオン源温度:250℃
イオン化電圧:70eV
測定モード:SIM
定量イオン:163m/z
【0043】
(2)嵩密度
JIS.K.6220−1 7.7:2001に準拠して測定した。
【0044】
(3)中位径(D
50)
実験例1〜4,7〜9については、Marvern社製Mastersizer Sを使用し溶媒に水を用いてレーザー回折散乱法で体積基準での中位径(D
50)を測定した。
実験例5及び6については、Marvern社製Mastersizer 2000を使用し溶媒にエタノールを用いてレーザー回折散乱法で体積基準での中位径(D
50)を測定した。
【0045】
(4)吸油量
JIS.K.5101−13−1:2004に準拠して測定した。
【0046】
(実験例1)
特許第4521477号の製造例1に記載の方法で得た非晶質シリカ(非晶質シリカA)を使用した。
【0047】
(実験例2)
カワタ(株)製スーパーミキサーSMV−20に非晶質シリカAを110℃乾燥ベースで1.75kg投入し撹拌した。撹拌中にシランカップリング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(表面処理剤A)を87.5g滴下し,140℃まで加熱した。排気口に時計皿をかざした時に揮発分であるエタノールによって曇らなくなるまで撹拌した。
【0048】
(実験例3)
表面処理剤Aの量を175gに変更した以外は、実験例2と同様にして表面処理シリカを得た。
【0049】
(実験例4)
表面処理剤Aの量を262.5gに変更した以外は、実験例2と同様にして表面処理シリカを得た。
【0050】
(実験例5)
表面処理剤Aを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(表面処理剤B)とした以外は実験例3と同様にして表面処理シリカを得た。
【0051】
(実験例6)
表面処理剤Aをメチルハイドロジェンシリコーンオイル(表面処理剤C)とした以外は実験例3と同様にして表面処理シリカを得た。
【0052】
(実験例7)
W.R.グレース社製サイロブロック45を使用した。
【0053】
(実験例8)
表面処理剤Aの量を122.5gに変更した以外は、実験例2と同様にして表面処理シリカを得た。
【0054】
(実験例9)
表面処理剤Aの量を210.0gに変更した以外は、実験例2と同様にして表面処理シリカを得た。
【0055】
各実験例で得られた試料について物性測定をそれぞれ行い、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
<アンチブロッキング剤(AB剤)としての評価>
ポリプロピレン樹脂(ランダムPP、MFR=7g/10分)100質量部あたり、2質量部になるように各AB剤を添加し、二軸押出機(φ26mm)を用いて230℃溶融混合し、トータル押出量2.7kg/hrで押出し、マスターバッチ(MB)を得た。作製したマスターバッチについて、以下の評価を行った。その評価結果を表2に示した。尚、AB剤以外の成分は添加していない。
【0058】
このマスターバッチに、上記ポリプロピレン樹脂を溶融混合して、ポリプロピレン100質量部あたりのアンチブロッキング剤の配合量が0.2質量部となるようにし、Tダイフィルム製造装置を使用して25μm厚のCPPフィルムを作製した。作製したCPPフィルムについて、以下の評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0059】
更には、このマスターバッチに、上記ポリプロピレン樹脂を溶融混合して、ポリプロピレン100質量部あたりアンチブロッキング剤の配合量が0.1質量部となるようにし、Tダイフィルム製造装置を使用して約375μm厚のPPシートを作製した。次いで、東洋製機製二軸延伸装置EX−10Bを用いて延伸スピード26m/min、延伸温度133℃で、縦×横=6×6倍で同時延伸を行い、約11μm厚の単層BOPPフィルムを作製した。作製したBOPPフィルムについて、以下の評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0060】
(1)目ヤニ評価
二軸押出機(φ26mm)を用いて1時間連続してマスターバッチを成形し、ダイリップ部への目ヤニ付着状況を評価した。評価は目視で行い、目ヤニの付着有りを×、付着ほとんど無しを○、付着無しを◎とした。
【0061】
(2)発泡評価
二軸押出機(φ26mm)を用いて1時間連続してマスターバッチを成形し、ストランドの発泡状況を評価した。評価は目視で行い、発泡有りを×、発泡少し有りを△、発泡無しを○とした。
【0062】
(3)スクリューへの粉付着評価
二軸押出機(φ26mm)を用いて1時間連続してマスターバッチを成形し、スクリューへの粉付着状況を評価した。評価は目視で行い、粉の付着有りを×、付着ほとんど無しを○とした。
【0063】
(4)粉立ち評価
二軸押出機(φ26mm)を用いて1時間連続してマスターバッチを成形し、投入口の粉立ち状況を評価した。評価は目視で行い、粉立ち有りを×、粉立ちほとんど無しを○とした。
【0064】
(5)Haze(曇り度)
ASTM D 1003−00−procedure Aに準拠してHaze(%)を測定した。Hazeの値が小さいほど透明性に優れる。測定装置はBYK−Gardner社製 haze−gard plusを用いた。
【0065】
(6)Clarity(像鮮明度)
ASTM D 1044−94に記載の測定装置にてClarityを測定した。Clarityの値が大きいほど鮮明性に優れる。測定装置はBYK−Gardner社製haze−gard plusを用いた。
【0066】
(7)静摩擦係数(SCOF)
ISO 8295−1995に準拠し、フィルム外表面同士の静摩擦係数(SCOF)を評価した。SCOFの値が低いほど滑り性に優れる。測定装置は東洋精機製摩擦測定機TR−2を用いた。
【0067】
(8)ブロッキング力
ISO 11502−1995 method Bに準拠した方法でフィルムのブロッキング力を測定した。フィルム同士の熱圧着条件は、CPPフィルムでは6kgf/100cm
2、60℃、15時間とし、BOPPフィルムでは6kgf/100cm
2、60℃、3日間とした。測定装置は島津製作所製オートグラフ AGSH20Nを用いた。
【0068】
(9)ボイド個数、ボイド面積割合の評価
菱化システム社製表面粗さ計VertScan2.0を用いて観察範囲630μm×470μmのフィルム表面形状を観察した。凹凸の無い平滑な面を基準とし、深さ0.25μm以上、平滑面での面積5μm
2以上の凹みをボイドと規定し、その個数(個/0.30mm
2)及び観察面積に対するボイド面積割合(%)を計測した。
【0069】
マスターバッチ及びフィルムの評価結果を表2に示した。
またCPPフィルムのHazeとブロッキング力のバランスを
図1に、HazeとSCOFのバランスを
図2にそれぞれ示した。いずれにおいても、各パラメーターのバランスが原点Oに近いほど、アンチブロッキング剤としての性能が優れていることを示す。
【0070】
【表2】