特許第6486223号(P6486223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486223
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】エバポレータ
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20190311BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20190311BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20190311BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   F28F9/02 301D
   F28F9/02 301J
   F28F9/02 301Z
   F28F1/02 A
   F28D1/053 A
   F25B39/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-131515(P2015-131515)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-15310(P2017-15310A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 基之
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−034670(JP,A)
【文献】 特開2014−092321(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0066553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F25B 39/02
F28D 1/053
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んだ第1チューブ列および第2チューブ列と、第1チューブ列の熱交換チューブの上下両側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ第1チューブ列の全熱交換チューブが接続された第1ヘッダ部および第2ヘッダ部と、第2チューブ列の熱交換チューブの上下両側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ第2チューブ列の全熱交換チューブが接続された第3ヘッダ部および第4ヘッダ部とを備えており、第1チューブ列に、連続して並んだ複数の熱交換チューブからなる5以上の奇数のチューブ群が設けられ、第2チューブ列に、連続して並んだ複数の熱交換チューブからなりかつ第1チューブ列のチューブ群よりも2つ少ない数のチューブ群が設けられ、第1チューブ列および第2チューブ列の左右両端に位置するチューブ群における冷媒の流れ方向が同一であるとともに、当該両チューブ群によりそれぞれ1つのパスが構成されているエバポレータであって、
第1チューブ列および第2チューブ列の左右いずれか同一端のチューブ群により、冷媒が最初に流れる第1パスが構成され、第2チューブ列の第1パスとなるチューブ群に隣接するチューブ群により、冷媒が最後に流れる最終パスが構成され、第1チューブ列および第2チューブ列の第1パスとは反対側の端部のチューブ群、および残りのチューブ群によりそれぞれ1つの中間パスが構成され、冷媒が、第1パスからすべての中間パスを順次流れた後最終パスを流れるようになされているエバポレータ。
【請求項2】
第1ヘッダ部が、第1チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第2ヘッダ部が、第1チューブ列の第1パスのチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第3ヘッダ部が、冷媒入口が設けられるとともに第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、冷媒出口が設けられるとともに第2チューブ列の最終パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第4ヘッダ部が、第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の最終パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第1ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第3ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられ、第1ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第3ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられ、
第2ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第4ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられ、第2ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第4ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられている請求項1記載のエバポレータ。
【請求項3】
第1チューブ列に、第1〜第5の5つのチューブ群が、第1チューブ群が第1パスのチューブ群となるように、左右いずれか一端から他端に向かって順番に並んで設けられ、第2チューブ列に、第6〜第8の3つのチューブ群が、第6チューブ群が第1パスのチューブ群となるとともに、第7チューブ群が第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群となり、さらに第8チューブ群が左右方向中央に位置するともに最終パスのチューブ群となるように設けられ、
第1ヘッダ部に、第1チューブ群の熱交換チューブが通じる第1区画と、第2および第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第2区画と、第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第3区画とが設けられ、第2ヘッダ部に、第1および第2チューブ群の熱交換チューブが通じる第4区画と、第3および第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第5区画と、第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第6区画とが設けられ、第3ヘッダ部に、冷媒入口が設けられるとともに第6チューブ群の熱交換チューブが通じる第7区画と、第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第8区画と、冷媒出口が設けられるとともに第8チューブ群の熱交換チューブが通じる第9区画とが設けられ、第4ヘッダ部に、第6チューブ群の熱交換チューブが通じる第10区画と、第7および第8チューブ群の熱交換チューブが通じる第11区画とが設けられ、第11区画が、第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の最終パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを兼ねており、
第1ヘッダ部の第1区画と第3ヘッダ部の第7区画とが通じさせられ、第1ヘッダ部の第3区画における第5チューブ群の熱交換チューブが連通している部分と第3ヘッダ部の第8区画とが通じさせられ、第2ヘッダ部の第4区画における第1チューブ群の熱交換チューブが連通している部分と第4ヘッダ部の第10区画とが通じさせられ、第2ヘッダ部の第6区画と第4ヘッダ部の第11区画における第7チューブ群の熱交換チューブが連通している部分とが通じさせられ、
第1チューブ群および第6チューブ群により第1パスが構成され、第8チューブ群により最終パスが構成され、第5チューブ群および第7チューブ群と、第2〜第4チューブ群とによりそれぞれ中間パスが構成されている請求項2記載のエバポレータ。
【請求項4】
第1チューブ群および第6チューブ群の左右方向の幅が同一であり、第5チューブ群および第7チューブ群の左右方向の幅が同一であり、第2〜第4チューブ群の左右方向の合計幅が、第8チューブ群の左右方向の幅と同一である請求項3記載のエバポレータ。
【請求項5】
第1チューブ列、第1ヘッダ部および第2ヘッダ部が風下側に設けられ、第2チューブ列、第3ヘッダ部および第4ヘッダ部が風上側に設けられている請求項1〜4のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項6】
冷媒が、第1および第2チューブ列の左右両端チューブ群の熱交換チューブ内を上から下に流れるようになっている請求項1〜5のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルである車両用空調装置に好適に使用されるエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、各図面の上下、左右を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
車両用空調装置に使用されるエバポレータとして、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んだ風下側チューブ列および風上側チューブ列と、風下側チューブ列の熱交換チューブの上下両端側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ風下側チューブ列の全熱交換チューブが接続された風下側上ヘッダ部および風下側下ヘッダ部と、風上側チューブ列の熱交換チューブの上下両端側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ風上側チューブ列の全熱交換チューブが接続された風上側上ヘッダ部および風上側下ヘッダ部とを備えており、風下側上ヘッダ部の一端部に冷媒入口が設けられるとともに、風上側上ヘッダ部の冷媒入口と同一端部に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第3のチューブ群が、冷媒入口側端部から他端側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第4および第5のチューブ群が、冷媒出口と反対側の端部から冷媒入口側端部に向かって並んで設けられ、第1チューブ群が冷媒が最初に流れる第1パスになるとともに、第5チューブ群が冷媒が最後に流れる最終パスとなり、第1チューブ群、第3チューブ群および第4チューブ群において、冷媒が熱交換チューブ内を上から下に流れ、第2チューブ群および第5チューブ群において、冷媒が熱交換チューブ内を下から上に流れ、第1チューブ群と第2チューブ群とを合わせた左右方向の寸法が第5チューブ群の左右方向の寸法と等しくなっているとともに、第3チューブ群および第4チューブ群の左右方向の寸法が等しくなっており、第5チューブ群の左右方向の寸法が全体幅の1/2よりも大きくなり、風下側上ヘッダ部に、第1チューブ群の熱交換チューブが通じる第1区画と、第2および第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第2区画とが設けられ、風下側下ヘッダ部に、第1および第2チューブ群の熱交換チューブが通じる第3区画と、第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第4区画とが設けられ、風上側下ヘッダ部に、第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第5区画が設けられ、風上側上ヘッダ部に、第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第6区画と、第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第7区画とが設けられ、第2区画における第3チューブ群の熱交換チューブが通じている部分と第6区画とが相互に連通させられるとともに、第4区画と第5区画における第4チューブ群の熱交換チューブが通じている部分とが相互に連通させられているエバポレータが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のエバポレータによれば、スーパーヒート領域が生じる第5チューブ群での通路抵抗の増加を抑制することが可能になる。しかしながら、第5チューブ群にスーパーヒート領域が生じるので、圧縮機のオフ時に、第5チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した直後の空気の温度が、他のチューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した直後の空気の温度よりも高くなる。また、圧縮機のオフ時においても、第3および第4チューブ群の熱交換チューブ内には冷媒が残りやすいので、両チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した直後の空気の温度は比較的低くなる。したがって、エバポレータを通過した直後の空気の温度が左右方向に不均一になる。
【0005】
ところで、車両用空調装置においては、エバポレータの幅方向の一方の半部における車両中央部側を通過した空気が、ダクトを通して車両中央部に設けられた吹き出し口から運転席に向かって吹き出され、同じく窓側を通過した空気が、ダクトを通して窓側に設けられた吹き出し口から運転席に向かって吹き出されるようになっている。また、エバポレータの幅方向の他方の半部における車両中央部側を通過した空気が、ダクトを通して車両中央部に設けられた吹き出し口から助手席に向かって吹き出され、同じく窓側を通過した空気が、ダクトを通して窓側に設けられた吹き出し口から助手席に向かって吹き出されるようになっている。その結果、エバポレータを通過した空気を窓側に設けられた吹き出し口に導くダクトの長さが、車両中央部に設けられた吹き出し口に導くダクトの長さよりもかなり長くなり、しかもダクトを通過する間に空気は暖められるので、窓側に設けられた吹き出し口から吹き出される空気が暖められる度合いが、車両中央部に設けられた吹き出し口から吹き出される空気が暖められる度合いよりも高くなる。
【0006】
すなわち、特許文献1記載のエバポレータにおいては、第1チューブ群と第2チューブ群とを合わせた左右方向の寸法が第5チューブ群の左右方向の寸法と等しくなっているとともに、第3チューブ群および第4チューブ群の左右方向の寸法が等しくなっており、しかも第5チューブ群の左右方向の寸法が全体幅の1/2よりも大きくなるので、運転席または助手席のうちのいずれか一方に、第5チューブ群、第1チューブ群および第2チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した空気が、車両中央部および窓側の吹き出し口から吹き出され、運転席または助手席のうちのいずれか他方に、第5チューブ群および第2チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した空気が、車両中央部の吹き出し口から吹き出されるとともに、第3チューブ群および第4チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した空気が、窓側の吹き出し口から吹き出されることになる。したがって、特許文献1記載のエバポレータを通過した直後の空気の温度が左右方向に不均一であること、および車室内に吹き出される空気がダクトを通過する間に暖められるとともに、車両中央部および窓側の吹き出し口に空気を送るダクトを通過する際の暖められる度合いが異なることに起因して、4カ所から車室内に吹き出される空気の温度のばらつきが大きくなり、乗員の快適性を損なうおそれがある。
【0007】
そこで、このような問題を解決したエバポレータとして、本出願人は、先に、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んだ風下側チューブ列および風上側チューブ列と、風下側チューブ列の熱交換チューブの長手方向両端側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ風下側チューブ列の全熱交換チューブが接続された風下側下ヘッダ部および風下側上ヘッダ部と、風上側チューブ列の熱交換チューブの長手方向両端側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ風上側チューブ列の全熱交換チューブが接続された風上側下ヘッダ部および風上側上ヘッダ部とを備えたエバポレータであって、風下側チューブ列に、連続して並んだ複数の熱交換チューブからなる第1〜第5の5つのチューブ群が、第1チューブ群が左右方向中央に位置するとともに第2および第3チューブ群が第1チューブ群の左右両側に位置し、さらに第4および第5チューブ群が左右両端に位置するように設けられ、風上側チューブ列に、第6〜第8の3つのチューブ群が、第8チューブ群が左右方向中央に位置するとともに、第6および第7チューブ群が左右両端に位置するように設けられ、風下側チューブ列の第1チューブ群が、冷媒が最初に流れる第1パスになるとともに、風上側チューブ列の第8チューブ群が冷媒が最後に流れる最終パスとなり、風下側チューブ列において、第1チューブ群から左右両端の第4および第5チューブ群に向かって冷媒が順次流れるとともに、風上側チューブ列において、左右両端の第6および第7チューブ群から最終パスとなる第8チューブ群に向かって冷媒が順次流れるようになされ、風下側チューブ列および風上側チューブ列の左右両端に位置するチューブ群における冷媒の流れ方向が同一であるとともに、当該両チューブ群により1つのパスが構成され、風下側下ヘッダ部に、冷媒入口が設けられるとともに第1チューブ群の熱交換チューブが通じる第1区画と、第2および第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第2区画と、第3および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第3区画とが設けられ、風下側上ヘッダ部に、第1〜第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第4区画と、第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第5区画と、第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第6区画とが設けられ、風上側下ヘッダ部に、第6チューブ群の熱交換チューブが通じる第7区画と、第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第8区画と、冷媒出口が設けられるとともに第8チューブ群の熱交換チューブが通じる第9区画とが設けられ、風上側上ヘッダ部に、第6チューブ群の熱交換チューブが通じる第10区画と、第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第11区画と、第8チューブ群の熱交換チューブが通じる第12区画とが設けられるとともに、第10および第11区画と第12区画とが通じさせられ、風下側下ヘッダ部の第2区画における第4チューブ群の熱交換チューブが連通している部分と、風上側下ヘッダ部の第7区画とが通じさせられ、風下側下ヘッダ部の第3区画における第5チューブ群の熱交換チューブが連通している部分と、風上側下ヘッダ部の第8区画とが通じさせられ、風下側上ヘッダ部の第5区画と風上側上ヘッダ部の第10区画、および風下側上ヘッダ部の第6区画と風上側上ヘッダ部の第11区画とがそれぞれ通じさせられ、第1〜第3チューブ群の左右方向の合計幅が、第8チューブ群の左右方向の幅と同一であり、第4チューブ群および第6チューブ群の左右方向の幅が同一であり、第5チューブ群および第7チューブ群の左右方向の幅が同一であり、第4チューブ群と第6チューブ群、および第5チューブ群と第7チューブ群とが通風方向に並ぶとともに、通風方向に並んだ2つのチューブ群での冷媒の流れ方向が同一となり、第4チューブ群と第6チューブ群、および第5チューブ群と第7チューブ群によりそれぞれ1つの熱交換パスが構成され、他のチューブ群がそれぞれ1つの熱交換パスを構成しているエバポレータを提案した(特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2記載のエバポレータによれば、冷媒が最後に流れる最終パスとなる風上側チューブ列の左右方向中央部のチューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した比較的高温の空気が、比較的短いダクトを通して運転席および助手席の車両中央部に設けられた吹き出し口に送られ、風上側チューブ列の左右方向中央部のチューブ群における左右両端寄りの部分に位置する一部の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した空気、および風下側チューブ列および風上側チューブ列の左右両端に位置するチューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した比較的低温の空気が、比較的長いダクトを通して運転席および助手席の窓側に設けられた吹き出し口に送られる。したがって、運転席および助手席の窓側の吹き出し口から吹き出される空気のエバポレータ通過直後の温度が、運転席および助手席の車両中央部の吹き出し口から吹き出される空気のエバポレータ通過直後の温度よりも低くなる。そして、運転席および助手席の窓側の吹き出し口に送られる空気が暖められる度合いが、車両中央部の吹き出し口に送られる空気が暖められる度合いよりも高くなるのであるから、運転席の車両中央部および窓側の吹き出し口、ならびに助手席の車両中央部および窓側の吹き出し口から吹き出される空気の温度が均一化され、4カ所から車室内に吹き出される空気の温度のばらつきが低減されて、乗員の快適性の低下を抑制することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2記載のエバポレータの場合、圧縮機のオン時に、冷媒入口から第1区画内に流入した冷媒は、第1チューブ群からなる第1パスを流れた後に左右に分流し、左側においては第2チューブ群からなる熱交換パスと、第4および第6チューブ群からなる熱交換パスを順次流れた後に第9区画内に入り、右側においては第3チューブ群からなる熱交換パスと、第5および第7チューブ群からなる熱交換パスを順次流れた後に第9区画内に入り、冷媒出口から圧縮機に向けて流出するようになされているので、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、エバポレータを通過する空気の風速分布が左右方向に不均一である場合、風速が速い部分では冷媒の蒸発が促進されて気相冷媒が多くなり、チューブ群の熱交換チューブを流れる際の通路抵抗が増大するので、冷媒流量が減少する。一方、風速が遅い部分では冷媒の蒸発が遅れて液相冷媒が多くなり、チューブ群の熱交換チューブを流れる際の通路抵抗の増大が抑制される。したがって、冷媒は、通路抵抗が比較的小さくなっている風速が遅い部分のチューブ群の熱交換チューブ内を多く流れることになり、エバポレータの左側を通過した空気の温度と、同じく右側を通過した空気の温度とが不均一になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−156532号公報
【特許文献2】特開2015−34670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記問題を解決し、圧縮機のオン時に、エバポレータを通過してきた空気の温度である吐気温を均一化しうるエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んだ第1チューブ列および第2チューブ列と、第1チューブ列の熱交換チューブの上下両側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ第1チューブ列の全熱交換チューブが接続された第1ヘッダ部および第2ヘッダ部と、第2チューブ列の熱交換チューブの上下両側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ第2チューブ列の全熱交換チューブが接続された第3ヘッダ部および第4ヘッダ部とを備えており、第1チューブ列に、連続して並んだ複数の熱交換チューブからなる5以上の奇数のチューブ群が設けられ、第2チューブ列に、連続して並んだ複数の熱交換チューブからなりかつ第1チューブ列のチューブ群よりも2つ少ない数のチューブ群が設けられ、第1チューブ列および第2チューブ列の左右両端に位置するチューブ群における冷媒の流れ方向が同一であるとともに、当該両チューブ群によりそれぞれ1つのパスが構成されているエバポレータであって、
第1チューブ列および第2チューブ列の左右いずれか同一端のチューブ群により、冷媒が最初に流れる第1パスが構成され、第2チューブ列の第1パスとなるチューブ群に隣接するチューブ群により、冷媒が最後に流れる最終パスが構成され、第1チューブ列および第2チューブ列の第1パスとは反対側の端部のチューブ群、および残りのチューブ群によりそれぞれ1つの中間パスが構成され、冷媒が、第1パスからすべての中間パスを順次流れた後最終パスを流れるようになされているエバポレータ。
【0014】
2)第1ヘッダ部が、第1チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第2ヘッダ部が、第1チューブ列の第1パスのチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第3ヘッダ部が、冷媒入口が設けられるとともに第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、冷媒出口が設けられるとともに第2チューブ列の最終パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第4ヘッダ部が、第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の最終パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを有し、
第1ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第3ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられ、第1ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第3ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられ、
第2ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第4ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられ、第2ヘッダ部における第1チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第4ヘッダ部における第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とが通じさせられている上記1)記載のエバポレータ。
【0015】
3)第1チューブ列に、第1〜第5の5つのチューブ群が、第1チューブ群が第1パスのチューブ群となるように、左右いずれか一端から他端に向かって順番に並んで設けられ、第2チューブ列に、第6〜第8の3つのチューブ群が、第6チューブ群が第1パスのチューブ群となるとともに、第7チューブ群が第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群となり、さらに第8チューブ群が左右方向中央に位置するともに最終パスのチューブ群となるように設けられ、
第1ヘッダ部に、第1チューブ群の熱交換チューブが通じる第1区画と、第2および第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第2区画と、第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第3区画とが設けられ、第2ヘッダ部に、第1および第2チューブ群の熱交換チューブが通じる第4区画と、第3および第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第5区画と、第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第6区画とが設けられ、第3ヘッダ部に、冷媒入口が設けられるとともに第6チューブ群の熱交換チューブが通じる第7区画と、第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第8区画と、冷媒出口が設けられるとともに第8チューブ群の熱交換チューブが通じる第9区画とが設けられ、第4ヘッダ部に、第6チューブ群の熱交換チューブが通じる第10区画と、第7および第8チューブ群の熱交換チューブが通じる第11区画とが設けられ、第11区画が、第2チューブ列の第1パスのチューブ群とは反対側端部のチューブ群および当該チューブ群に隣接するチューブ群の熱交換チューブが通じる区画と、第2チューブ列の最終パスのチューブ群の熱交換チューブが通じる区画とを兼ねており、
第1ヘッダ部の第1区画と第3ヘッダ部の第7区画とが通じさせられ、第1ヘッダ部の第3区画における第5チューブ群の熱交換チューブが連通している部分と第3ヘッダ部の第8区画とが通じさせられ、第2ヘッダ部の第4区画における第1チューブ群の熱交換チューブが連通している部分と第4ヘッダ部の第10区画とが通じさせられ、第2ヘッダ部の第6区画と第4ヘッダ部の第11区画における第7チューブ群の熱交換チューブが連通している部分とが通じさせられ、
第1チューブ群および第6チューブ群により第1パスが構成され、第8チューブ群により最終パスが構成され、第5チューブ群および第7チューブ群と、第2〜第4チューブ群とによりそれぞれ中間パスが構成されている上記2)記載のエバポレータ。
【0016】
4)第1チューブ群および第6チューブ群の左右方向の幅が同一であり、第5チューブ群および第7チューブ群の左右方向の幅が同一であり、第2〜第4チューブ群の左右方向の合計幅が、第8チューブ群の左右方向の幅と同一である上記3)記載のエバポレータ。
【0017】
5)第1チューブ列、第1ヘッダ部および第2ヘッダ部が風下側に設けられ、第2チューブ列、第3ヘッダ部および第4ヘッダ部が風上側に設けられている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0018】
6)冷媒が、第1および第2チューブ列の左右両端チューブ群の熱交換チューブ内を上から下に流れるようになっている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【発明の効果】
【0019】
上記1)〜6)のエバポレータによれば、第1チューブ列および第2チューブ列の左右いずれか同一端のチューブ群により、冷媒が最初に流れる第1パスが構成され、第2チューブ列の第1パスとなるチューブ群に隣接するチューブ群により、冷媒が最後に流れる最終パスが構成され、第1チューブ列および第2チューブ列の第1パスとは反対側の端部のチューブ群、および残りのチューブ群によりそれぞれ1つの中間パスが構成され、冷媒が、第1パスからすべての中間パスを順次流れた後最終パスを流れるようになされているので、エバポレータを通過する空気の風速分布が左右方向に不均一であったとしても、圧縮機のオン時に、次のようにしてエバポレータを通過した空気の吐気温が左右方向に均一化される。すなわち、エバポレータを通過する空気の風速が速い部分では冷媒の蒸発が促進されて気相冷媒が多くなり、熱交換チューブを流れる際の通路抵抗が増大するが、冷媒が、第1パスからすべての中間パスを順次流れた後最終パスを流れるようになされていると、すべてのパスを構成するチューブ群の熱交換チューブを流れる冷媒の流量が均一化される。したがって、エバポレータの全部分を通過した空気の温度が均一化される。
【0020】
また、第2チューブ列における第1パスとなるチューブ群に隣接し、かつ冷媒が最後に流れる最終パスを構成するチューブ群にスーパーヒート領域が生じるので、圧縮機のオフ時に、最終パスとなる前記チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した直後の空気の温度が、他のチューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した直後の空気の温度よりも高くなる。また、第1チューブ列および第2チューブ列の左右いずれか同一端のチューブ群により、冷媒が最初に流れる第1パスが構成され、第1チューブ列および第2チューブ列の第1パスとは反対側の端部のチューブ群に1つの中間パスが構成され、前記第1パスおよび前記中間パスを構成する2つのチューブ群における冷媒の流れ方向が同一であるので、圧縮機のオフ時においても、両チューブ列の左右両端のチューブ群の熱交換チューブ内には冷媒が残りやすくなり、両チューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した直後の空気の温度は比較的低くなる。
【0021】
しかも、上記1)〜6)のエバポレータによれば、冷媒が最後に流れる最終パスを構成するチューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した比較的高温の空気が、比較的短いダクトを通して運転席および助手席の車両中央部に設けられた吹き出し口に送られ、最終パスを構成するチューブ群の左右両側のチューブ群の隣り合う熱交換チューブ間の通風間隙を通過した比較的低温の空気が、比較的長いダクトを通して運転席および助手席の窓側に設けられた吹き出し口に送られる。したがって、運転席および助手席の窓側の吹き出し口から吹き出される空気のエバポレータ通過直後の温度が、運転席および助手席の車両中央部の吹き出し口から吹き出される空気のエバポレータ通過直後の温度よりも低くなる。そして、運転席および助手席の窓側の吹き出し口に送られる空気が暖められる度合いが、車両中央部の吹き出し口に送られる空気が暖められる度合いよりも高くなるのであるから、運転席の車両中央部および窓側の吹き出し口、ならびに助手席の車両中央部および窓側の吹き出し口から吹き出される空気の温度が均一化され、4カ所から車室内に吹き出される空気の温度のばらつきが低減されて、乗員の快適性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明のエバポレータを具体的に示す一部切り欠き斜視図である。
図2】一部を省略した図1のA−A線拡大断面図である。
図3】一部を省略した図1のB−B線拡大断面図である。
図4図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下に述べる実施形態は、この発明によるエバポレータを車両用空調装置を構成する冷凍サイクルに適用したものである。この実施形態において、空気は、図面に矢印Xで示す方向に流れてエバポレータを通過し、車両用空調装置が搭載されている車両の車室内に送り込まれる。
【0024】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0025】
図1はこの発明のエバポレータを適用したエバポレータの全体構成を示し、図2および図3はその構成を概略的に示し、図4図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す。
【0026】
図1図3において、エバポレータ(1)は、幅方向を図1に矢印Xで示す通風方向に向けるとともに長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に等間隔で配置された複数のアルミニウム製熱交換チューブ(2)からなる風下側チューブ列(3)(第1チューブ列)および風上側チューブ列(4)(第2チューブ列)と、風下側チューブ列(3)の熱交換チューブ(2)の上下両端側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ風下側チューブ列(3)の全熱交換チューブ(2)が接続されたアルミニウム製風下側上ヘッダ部(5)(第1ヘッダ部)およびアルミニウム製風下側下ヘッダ部(6)(第2ヘッダ部)と、風上側チューブ列(4)の熱交換チューブ(2)の上下両端側に長手方向を左右方向に向けて配置され、かつ風上側チューブ列(4)の全熱交換チューブ(2)が接続されたアルミニウム製風上側上ヘッダ部(7)(第3ヘッダ部)および風上側下ヘッダ部(8)(第4ヘッダ部)とを備えている。風下側チューブ列(3)および風上側チューブ列(4)における熱交換チューブ(2)の数と、隣り合う熱交換チューブ(2)間の間隔は等しくなっている。
【0027】
両チューブ列(3)(4)の隣接する熱交換チューブ(2)どうしの間の通風間隙(9)および左右両端の熱交換チューブ(2)の外側に、それぞれ両チューブ列(3)(4)の熱交換チューブ(2)に跨って共有されるようにアルミニウム製コルゲートフィン(11)が配置されて両熱交換チューブ(2)にろう付され、左右両端のコルゲートフィン(11)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(12)が配置されてコルゲートフィン(11)にろう付されている。左右両端の熱交換チューブ(2)とサイドプレート(12)との間も通風間隙(9)となっている。両チューブ列(3)(4)の隣接する熱交換チューブ(2)どうしの間の通風間隙(9)を通過した空気は、車両用空調装置が搭載されている車両の車室内に送り込まれる。
【0028】
風下側チューブ列(3)に、連続して並んだ複数の熱交換チューブ(2)からなる5以上の奇数、ここでは第1〜第5の5つチューブ群(13)(14)(15)(16)(17)が設けられ、風上側チューブ列(4)に、連続して並んだ複数の熱交換チューブ(2)からなりかつ風下側チューブ列(3)のチューブ群(13)(14)(15)(16)(17)よりも2つ少ない数、ここでは第6〜第8の3つのチューブ群(18)(19)(21)が設けられている。
【0029】
風下側チューブ列(3)においては、第1〜第5チューブ群(13)(14)(15)(16)(17)は左端部から順に並んで設けられている。風上側チューブ列(4)においては、第6および第7チューブ群(18)(19)は左右両端部に設けられ、第8チューブ群(21)は左右方向の中央部に設けられている。第1チューブ群(13)および第6チューブ群(18)の左右方向の幅と、両チューブ群(13)(18)に含まれる熱交換チューブ(2)の数とは同一であることが好ましく、第5チューブ群(17)および第7チューブ群(19)の左右方向の幅と、両チューブ群(17)(19)に含まれる熱交換チューブ(2)の数とは同一であることが好ましい。また、第2〜第4チューブ群(14)(15)(16)の左右方向の合計幅およびこれらチューブ群(14)(15)(16)に含まれる熱交換チューブ(2)の合計数と、第8チューブ群(21)の左右方向の幅および第8チューブ群(21)に含まれる熱交換チューブ(2)の数とは同一であることが好ましい。さらに、風下側チューブ列(3)の5つのチューブ群(13)(14)(15)(16)(17)の幅および各チューブ群(13)(14)(15)(16)(17)に含まれる熱交換チューブ(2)の数は、第1チューブ群(13)から第5チューブ群(17)にかけて徐々に増大していることが好ましい。
【0030】
なお、第2〜第4の各チューブ群(14)(15)(16)の左右方向の幅が等しくなっているとともに含まれる熱交換チューブ(2)の数が等しくなっていてもよい。この場合にも、左右方向の幅は、第1チューブ群(13)が第2チューブ群(14)よりも狭くなっているとともに第5チューブ群(17)が第4チューブ群(16)よりも広くなっており、かつ含まれる熱交換チューブ(2)の数は、第1チューブ群(13)が第2チューブ群(14)よりも少なく、かつ第5チューブ群(17)が第4チューブ群(16)よりも多くなっていることが好ましい。
【0031】
風下側上ヘッダ部(5)と風上側上ヘッダ部(7)、および風下側下ヘッダ部(6)と風上側下ヘッダ部(8)とは、たとえば1つのタンク(22)(23)内を左右方向にのびる仕切部(22a)(23a)により通風方向に2つの空間に分割することにより設けられている。
【0032】
風下側上ヘッダ部(5)に、風下側上ヘッダ部(5)内を分割部(5a)により左右方向に並んだ複数の空間に分割することによって、第1チューブ群(13)の熱交換チューブ(2)が通じる第1区画(24)と、第2および第3チューブ群(14)(15)の熱交換チューブ(2)が通じる第2区画(25)と、第4および第5チューブ群(16)(17)の熱交換チューブ(2)が通じる第3区画(26)とが設けられている。
【0033】
風下側下ヘッダ部(6)に、風下側下ヘッダ部(6)内を分割部(6a)により左右方向に並んだ複数の空間に分割することによって、第1および第2チューブ群(13)(14)の熱交換チューブ(2)が通じる第4区画(27)と、第3および第4チューブ群(15)(16)の熱交換チューブ(2)が通じる第5区画(28)と、第5チューブ群(17)の熱交換チューブ(2)が通じる第6区画(29)とが設けられている。
【0034】
風上側上ヘッダ部(7)に、風上側上ヘッダ部(7)内を分割部(7a)により左右方向に並んだ複数の空間に分割することによって、冷媒入口(31)が設けられるとともに第6チューブ群(18)の熱交換チューブ(2)が通じる第7区画(32)と、第7チューブ群(19)の熱交換チューブ(2)が通じる第8区画(33)と、冷媒出口(34)が設けられるとともに第8チューブ群(21)の熱交換チューブ(2)が通じる第9区画(35)とが設けられている。冷媒入口(31)および冷媒出口(34)は風上側上ヘッダ部(7)の上壁部分に上向きに設けられている。
【0035】
風上側下ヘッダ部(8)に、風上側下ヘッダ部(8)内を分割部(8a)により左右方向に並んだ複数の空間に分割することによって、第6チューブ群(18)の熱交換チューブ(2)が通じる第10区画(36)と、第7および第8チューブ群(19)(21)の熱交換チューブ(2)が通じる第11区画(37)とが設けられている。
【0036】
風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(24)と、風上側上ヘッダ部(7)の第7区画(32)とが、仕切部(22a)に設けられた複数の連通穴(38)(連通部)を介して通じさせられ、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(26)における第5チューブ群(17)の熱交換チューブ(2)が連通している部分と、風上側上ヘッダ部(7)の第8区画(33)とが、仕切部(22a)に設けられた複数の連通穴(39)(連通部)を介して通じさせられ、風下側下ヘッダ部(6)の第4区画(27)における第1チューブ群(13)の熱交換チューブ(2)が通じている部分と、風上側下ヘッダ部(8)の第10区画(36)とが、仕切部(23a)に設けられた複数の連通穴(41)(連通部)を介して通じさせられ、風下側下ヘッダ部(6)の第6区画(29)と、風上側下ヘッダ部(8)の第11区画(37)における第7チューブ群(19)が通じている部分とが、仕切部(23a)に設けられた複数の連通穴(42)(連通部)を介して通じさせられている。
【0037】
風下側チューブ列(3)および風上側チューブ列(4)に上述したようにして第1〜第8チューブ群(13)〜(19)(21)が設けられるとともに、風下側両ヘッダ部(5)(6)および風上側両ヘッダ部(7)(8)に上述したようにして冷媒入口(31)、冷媒出口(34)および第1〜第11区画(24)〜(29)(32)(33)(35)〜(37)が設けられることによって、第1チューブ群(13)、第3チューブ群(15)、第5チューブ群(17)、第6チューブ群(18)および第7チューブ群(19)の熱交換チューブ(2)内を冷媒が上から下に流れるようになっているとともに、第2チューブ群(14)、第4チューブ群(16)および第8チューブ群(21)の熱交換チューブ(2)内を冷媒が下から上に流れるようになっており、第1および第6の2つのチューブ群(13)(18)により1つの熱交換パスが構成され、第5および第7の2つのチューブ群(17)(19)により1つの熱交換パスが構成され、第2〜第4チューブ群(14)〜(16)および第8チューブ群(21)によりそれぞれ1つの熱交換パスが構成されている。
【0038】
したがって、図4に示すように、減圧器により減圧された冷媒は、冷媒入口(31)から第7区画(32)内に流入し、次のように4つの経路を流れて第9区画(35)の冷媒出口(34)から圧縮機に向けて流出するようになされている。第1の経路は、第7区画(32)、連通穴(38)、第1区画(24)、第1チューブ群(13)、第4区画(27)、第2チューブ群(14)、第2区画(25)、第3チューブ群(15)、第5区画(28)、第4チューブ群(16)、第3区画(26)、第5チューブ群(17)、第6区画(29)、連通穴(42)、第11区画(37)、第8チューブ群(21)および第9区画(35)である。第2の経路は、第7区画(32)、連通穴(38)、第1区画(24)、第1チューブ群(13)、第4区画(27)、第2チューブ群(14)、第2区画(25)、第3チューブ群(15)、第5区画(28)、第4チューブ群(16)、第3区画(26)、連通穴(39)、第8区画(33)、第7チューブ群(19)、第11区画(37)、第8チューブ群(21)および第9区画(35)である。第3の経路は、第7区画(32)、第6チューブ群(18)、第10区画(36)、連通穴(41)、第4区画(27)、第2チューブ群(14)、第2区画(25)、第3チューブ群(15)、第5区画(28)、第4チューブ群(16)、第3区画(26)、第5チューブ群(17)、第6区画(29)、連通穴(42)、第11区画(37)、第8チューブ群(21)および第9区画(35)である。第4の経路は、第7区画(32)、第6チューブ群(18)、第10区画(36)、連通穴(41)、第4区画(27)、第2チューブ群(14)、第2区画(25)、第3チューブ群(15)、第5区画(28)、第4チューブ群(16)、第3区画(26)、連通穴(39)、第8区画(33)、第7チューブ群(19)、第11区画(37)、第8チューブ群(21)および第9区画(35)である。
【0039】
そして、第1および第6チューブ群(13)(18)により構成された熱交換パスが、冷媒が最初に流れる第1パスになり、第2〜第4チューブ群(14)(15)(16)の各チューブ群により構成された熱交換パスが、中間パスである第2〜第4パスになり、第5および第7チューブ群(17)(19)により構成された熱交換パスが、中間パスである第5パスになり、第8チューブ群(21)により構成された熱交換パスが、冷媒が最後に流れる第6パス(最終パス)になっている。したがって、冷媒が、前記4つの経路のうちのいずれの経路で流れたとしても、第1〜第6パスを順次流れる。
【0040】
上述したエバポレータ(1)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサおよび減圧器としての膨張弁とともに冷凍サイクルを構成し、車両用空調装置として車両、たとえば自動車に搭載される。そして、たとえばエバポレータ(1)の左半部における車両中央寄り(右側)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的短いダクトを通して車両中央部に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から運転席に向かって吹き出され、同じく左半部における窓側(左側)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的長いダクトを通して窓側に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から運転席に向かって吹き出されるようになっている。また、エバポレータ(1)の右半部における車両中央寄り(左側)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的短いダクトを通して車両中央部に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から助手席に向かって吹き出され、同じく右半部における窓側(右側)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的長いダクトを通して窓側に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から助手席に向かって吹き出されるようになっている。
【0041】
圧縮機のオン時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒が、冷媒入口(31)から第7区画(32)に流入し、上述した4つの経路を通って第1〜第6パスを順次流れ、冷媒出口(34)から流出する。冷媒が、風下側チューブ列(3)の熱交換チューブ(2)内、および風上側チューブ列(4)の熱交換チューブ(2)内を流れる間に、通風間隙(9)を通過する空気と熱交換をし、空気は冷却され、冷媒は気相となって流出する。エバポレータ(1)を通過した空気は、上述のようにして、車両中央部に設けられた吹き出し口および窓側に設けられた吹き出し口から運転席および助手席に吹き出され、車室内が冷房される。
【0042】
すなわち、エバポレータ(1)の左半部においては、第8チューブ群(21)の一部の通風間隙(9)を通過した後、第2チューブ群(14)および第3チューブ群(15)の少なくとも一部の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的短いダクトを通して車両中央部に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から運転席に向かって吹き出され、第6チューブ群(18)の通風間隙(9)を通過した後、第1チューブ群(13)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的長いダクトを通して窓側に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から運転席に向かって吹き出されるようになっている。また、エバポレータ(1)の右半部においては、第8チューブ群(21)の一部の通風間隙(9)を通過した後、第4チューブ群(15)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的短いダクトを通して車両中央部に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から助手席に向かって吹き出され、第7チューブ群(19)の通風間隙(9)を通過した後、第5チューブ群(17)の通風間隙(9)を通過した空気が、比較的長いダクトを通して窓側に設けられた吹き出し口に送られるとともに当該吹き出し口から助手席に向かって吹き出されるようになっている。
【0043】
ところで、圧縮機のオン時には、一般的に、エバポレータを通過する空気の風速が速い部分では冷媒の蒸発が促進されて気相冷媒が多くなり、熱交換チューブ(2)を流れる際の通路抵抗が増大する傾向にあるが、上記実施形態のエバポレータ(1)においては、冷媒が、第1パスから第5パスに順次流れた後最終パスである第6パスを流れるようになされているので、すべてのパスを構成するチューブ群(13)(14)(15)(16)(17)(18)(19)(21)の熱交換チューブ(2)を流れる冷媒の流量が均一化される。したがって、エバポレータ(1)の全部分を通過した空気の温度が均一化される。
【0044】
圧縮機のオフ時には、スーパーヒート領域を有する第8チューブ群(21)の通風間隙(9)を通過した直後の空気の温度が、第1〜第7チューブ群(13)〜(19)の通風間隙(9)を通過した直後の空気の温度よりも高くなる。また、第1チューブ群(13)と第6チューブ群(18)、および第5チューブ群(17)と第7チューブ群(19)においては、当該両チューブ群(13)(18)および(17)(19)により1つのパスが構成されているので、圧縮機のオフ時においても、これらのチューブ群(13)(18)および(17)(19)の熱交換チューブ(2)内には冷媒が残りやすく、その結果両チューブ群(13)(18)および(17)(19)の通風間隙(9)を通過した直後の空気の温度は比較的低くなる。したがって、運転席および助手席の窓側の吹き出し口から吹き出される空気のエバポレータ(1)通過直後の温度が、運転席および助手席の車両中央部の吹き出し口から吹き出される空気のエバポレータ(1)通過直後の温度よりも低くなっており、しかも運転席および助手席の窓側の吹き出し口に送られる空気が暖められる度合いが、車両中央部の吹き出し口に送られる空気が暖められる度合いよりも高くなるのであるから、運転席の車両中央部および窓側の吹き出し口、ならびに助手席の車両中央部および窓側の吹き出し口から吹き出される空気の温度が均一化され、4カ所から車室内に吹き出される空気の温度のばらつきが低減されて、乗員の快適性の低下を抑制することができる。
【0045】
この発明のエバポレータにおいて、上述した実施形態のエバポレータ(1)とは逆向き、すなわち第1チューブ群(13)、第3チューブ群(15)、第5チューブ群(17)、第6チューブ群(18)および第7チューブ群(19)の熱交換チューブ(2)内を冷媒が下から上に流れ、第2チューブ群(14)、第4チューブ群(16)および第8チューブ群(21)の熱交換チューブ(2)内を冷媒が上から下に流れるように、冷媒入口(31)、冷媒出口(34)および第1〜第11区画(24)〜(29)(32)(33)(35)〜(37)が設けられていてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態のエバポレータ(1)においては、風下側チューブ列(3)(第1チューブ列)に5つのチューブ群(13)〜(17)が設けられ、風上側チューブ列(4)(第2チューブ列)に3つのチューブ群(18)(19)(21)が設けられているが、風下側チューブ列(3)に5以上の奇数のチューブ群が設けられ、風上側チューブ列(4)に風下側チューブ列(3)のチューブ群よりも2つ少ない数のチューブ群が設けられていれば、チューブ群の数は上述した実施形態の数に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明によるエバポレータは、車両用空調装置を構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
(1):エバポレータ
(2):熱交換チューブ
(3):風下側チューブ列(第1チューブ列)
(4):風上側チューブ列(第2チューブ列)
(5):風下側上ヘッダ部(第1ヘッダ部)
(6):風下側下ヘッダ部(第2ヘッダ部)
(7):風上側上ヘッダ部(第3ヘッダ部)
(8):風上側下ヘッダ部(第4ヘッダ部)
(13)(14)(15)(16)(17)(18)(19)(21):第1〜第8チューブ群
(24)(25)(26)(27)(28)(29):第1〜第6区画
(31):冷媒入口
(32)(33):第7〜第8区画
(34):冷媒出口
(35)(36)(37):第9〜第11区画
(38)(39)(41)(42):連通穴
図1
図2
図3
図4