(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態の全体構成>
次に、本発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯機について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のヒートポンプ式給湯機Sの概略構成図である。
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯機Sは、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とを備えている。
【0010】
ヒートポンプユニット1においては、熱交換器6(第1の熱交換器)、圧縮機3、液体熱交換器4(第2の熱交換器)、および減圧弁5の順で冷媒が循環するように、これらの構成要素3〜6は、配管で環状に連結されている。本実施形態においては、冷媒は二酸化炭素であり、当該冷媒の臨界圧力以上となる超臨界蒸気圧縮式の冷凍サイクルを用いている。圧縮機3は、モータと該モータに駆動される圧縮機構とを有し、熱交換器6から戻ってきた冷媒を圧縮するとともに、圧縮によって加熱された高温のガス冷媒(以下、ホットガスということがある)を液体熱交換器4に向かって吐出する。
【0011】
液体熱交換器4は、凝縮器として機能するものであり、圧縮機3から吐出されたホットガス(冷媒)を流通させる冷媒伝熱管4aと、被加熱液体を流通させる液体伝熱管4bとを備えている。なお、本実施形態において「被加熱液体」とは「水」である。これらの冷媒伝熱管4aおよび液体伝熱管4bは、冷媒と被加熱液体(水)とが相互に熱交換するよう密着して設けられている。また、各伝熱管4a,4bの流れは対向するように構成されている。減圧弁5は、液体熱交換器4と熱交換器6との間に配置される配管の途中に設けられており、ここでは電動膨張弁が使用されている。この減圧弁5は、液体熱交換器4から流出する中温高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低圧冷媒として熱交換器6に吐出する。
【0012】
熱交換器6は、蒸発器として機能する。すなわち、送風機7によって吸入された外気が熱交換器6に当たると、熱交換器6においては外気が有する熱が冷媒に吸収され、冷媒が気化する。気化した冷媒は、再び圧縮機3に戻される。温度センサ8は、熱交換器6から吐出された冷媒の温度を測定する。送出配管36は、液体熱交換器4の液体伝熱管4bの出口に接続されている。冷媒によって加熱された水(湯)は、送出配管36を介してタンクユニット2に供給される。タンクユニット2には、タンク16が設けられており、送出配管36はタンク16の頂部に接続されている。
【0013】
供給配管35は、冷媒で加熱される水を液体熱交換器4に供給するものである。供給配管35の一端は、液体熱交換器4の液体伝熱管4bの入口に接続され、他端はタンク16の底部に接続されている。供給配管35の途中には、ポンプ13が挿入され、ポンプ13は、タンク16から液体伝熱管4bの入口側に水を送り込むように駆動される。
【0014】
また、タンク16の底部には、冷水(水道水、井戸水等)を供給する給水配管34が接続されており、タンク16の頂部には、湯を家屋内の給湯端末(図示せず)に供給する給湯配管37が接続されている。給湯配管37の途中には、湯水混合弁17が挿入されており、湯水混合弁17と給水配管34とは分岐配管38によって接続されている。湯水混合弁17は、その開口度合いに応じて、分岐配管38から給湯配管37に流入する冷水の量を調節することにより、給湯端末に供給される湯の温度を調節する。
【0015】
<ヒートポンプユニット1>
次に、
図2を参照し、ヒートポンプユニット1の機械的構造を説明する。なお、
図2は、開扉状態のヒートポンプユニット1の正面図である。
図2において、ヒートポンプユニット1の中央やや右寄りには、鉛直方向(縦方向)に仕切板102が延設されており、これによってヒートポンプユニット1の内部の空間は、送風室104と、機械室106とに区切られている。そして、仕切板102の上端部には、各種電気部品を収納した電気品ケース20が固定されている。これにより、電気品ケース20は、仕切板102から送風室104および機械室106の双方の上部に向かって突出している。送風室104においては、その背面から左側面に渡って熱交換器6が配置されており、熱交換器6の前方には送風機7が配置されている。また、機械室106には、圧縮機3、液体熱交換器4等が配置されている。
【0016】
<電気品ケース20の回路構成>
次に、電気品ケース20の回路構成を
図3に示すブロック図を参照し説明する。電気品ケース20の受電端子202,204には、単相の商用電源である交流電源22から電力が供給される。受電端子202と交流電源22との間には、リアクトル24が挿入されている。なお、リアクトル24は、発熱量が大きいため、電気品ケース20の外部に設置される。ダイオードモジュール(整流回路モジュール)220は、ブリッジ接続された4個のダイオード222を有し、全波整流回路として機能する。すなわち、受電端子202,204における交流電圧はダイオードモジュール220によって直流に変換され、電解コンデンサ240,242に印加される。
【0017】
インバータモジュール230は三相に対応する三個のレグを有するが、
図3においては一相あたりのレグのみ図示する。一相あたりのレグは、トランジスタ232,234およびダイオード236,238を有しており、トランジスタ232,234のオン/オフ状態を切り替えることによって、電解コンデンサ240,242から出力される直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)変調する。同様のレグが三相分設けられることにより、インバータモジュール230は、三相交流電圧を生成する。生成された三相交流電圧は、圧縮機3に含まれる永久磁石型同期電動機であるモータ32に供給される。
【0018】
ダイオード複合モジュール(短絡モジュール)210は、全波整流回路を構成する4個のダイオード212と、その出力を短絡/解放するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)214とを有している。IGBT214がオン状態になると、受電端子202,204が短絡状態になる。これにより、交流電源22から供給された電流のエネルギーが磁束としてリアクトル24に蓄積される。また、IGBT214がオフ状態になると、リアクトル24に磁束として蓄えられたエネルギーが電流として、ダイオードモジュール220に供給される。リアクトル24およびダイオード複合モジュール210は、電解コンデンサ240,242の端子電圧を安定化させるために設けられている。
【0019】
制御回路256は、IGBT214のオン/オフ状態を指定する制御信号をドライブ回路252に供給し、ドライブ回路252はこの制御信号に基づいてIGBT214をオン/オフ制御する。また、制御回路256は、モータ32に設定すべき回転速度に応じて、各トランジスタ(232,234等)のオン/オフ状態を指定する制御信号をドライブ回路254に供給する。ドライブ回路254は、この制御信号に基づいて、トランジスタ232,234等をオン/オフ制御する。また、制御回路256は、温度センサ8(
図1参照)によって検出される冷媒の温度が所定温度以上になるように、送風機7の回転速度を制御する。従って、外気温度が高くなるほど、少ない風量によって冷媒の温度を該所定温度以上にできるため、送風機7の回転速度は低くされる。
【0020】
<電気品ケース20の外観構成>
次に、
図4を参照し、電気品ケース20の外観構成を説明する。なお、
図4は、電気品ケース20の分解斜視図である。電気品ケース20は、略矩形状の底板262を有している。底板262の後端部からは上方向に背面板263が突出している。背面板263は、矩形板の左上部分を矩形状に切り欠いた形状を有しており、この切り欠いた部分を切欠部263aという。また、底板262の前端部からは上方向に前面板266が突出している。前面板266は、背面板263に対称な形状を有し、その左上部分には矩形状の切欠部266aが形成されている。
【0021】
切欠部263a,266aの水平部分には、両者を繋ぐようにヒートシンク取付板268が形成されており、ヒートシンク取付板268の中央部分には、矩形の貫通孔270が形成されている。また、切欠部263a,266aの垂直部分には、両者を繋ぐように、矩形状の左上部側面板276が形成されている。
【0022】
また、底板262の左端部と、ヒートシンク取付板268の左端部との間には、両者を繋ぐように、矩形状の左下部側面板272が形成されている。そして、左下部側面板272の前端部および後端部には、略L字状に形成された一対の取付金具274が上方に向かって突出している。これら取付金具274は、電気品ケース20をヒートポンプユニット1の筐体に取り付けるために設けられている。また、底板262の右端部からは、上方向に右側面板264が突出している。右側面板264は、略矩形状の板の上端部に、複数の矩形状の凹部264aを形成した形状を有している。これら凹部264aは、信号ケーブル、電力ケーブル等を導入するために形成されている。
【0023】
底板262の上面には、回路基板290が装着されている。回路基板290には、種々の電気部品が搭載されるが、
図4においては、一部の部品のみを図示する。回路基板290の左端部には、
図3に示したダイオード複合モジュール210、ダイオードモジュール220、およびインバータモジュール230が前後方向に沿って配列されている。これらモジュール210,220,230は発熱量が大きいため、ヒートシンク280が装着される。
【0024】
ヒートシンク280は、略水平に設置される矩形板状のベース板282と、ベース板282と一体に形成されベース板282から上方向に突出する矩形板状の複数のフィン284とを有している。ベース板282がネジ286によってヒートシンク取付板268に螺合されることにより、ヒートシンク280は、ヒートシンク取付板268に装着される。
【0025】
上述したモジュール210,220,230には、それぞれ一または複数の貫通孔210a,220a,230aが形成されている。また、ヒートシンク280のベース板282の下面には、これら貫通孔210a,220a,230aに対向する位置にネジ穴が形成されている(図示せず)。従って、モジュール210,220,230の下方から貫通孔210a,220a,230aにネジ(図示せず)を挿通し、ヒートシンク280に螺合させることにより、各モジュール210,220,230とヒートシンク280とが隙間なく密着する。
【0026】
電気品ケース20をヒートポンプユニット1(
図3参照)の筐体に取り付けた際における仕切板102の位置を、
図4において二点鎖線で示す。上述したように、電気品ケース20のうち、仕切板102より右側の部分は機械室106内に突出し、仕切板102より左側の部分は送風室104内に突出する。
【0027】
回路基板290には、
図3に示した電解コンデンサ240,242も装着されるが、
図4に示すように、これらは回路基板290のうち、送風室104に突出する部分に装着される。そこで、その理由を説明しておく。
図2に示したように、機械室106において電気品ケース20の下方には液体熱交換器4が配置される。液体熱交換器4は、例えば90℃付近の温度になるため、それによって機械室106の温度は送風室104よりも高くなり、電気品ケース20のうち機械室106に突出する部分の温度は送風室104に突出する部分の温度よりも高くなる。ここで、電解コンデンサ240,242は、熱によって劣化しやすい傾向がある。そこで、本実施形態においては、電解コンデンサ240,242を、電気品ケース20の内部にて、比較的温度が低い送風室104側に配置している。
【0028】
次に、完成状態の電気品ケース20の斜視図を
図5に示す。
上述したように、ヒートシンク280は電気品ケース20に装着されている。また、電気品ケース20の上面の開口部は、蓋292によって塞がれている。ここで、電気品ケース20の下面に沿って流れるエアフローをF1とし、ヒートシンク280に沿って流れるエアフローをF2とする。送風機7(
図2参照)を回転駆動させると、電気品ケース20の下面は送風機7に対向しているため、エアフローF1の速度は、エアフローF2の速度よりも速くなる。このように、速度が低い側のエアフローF2に向けてヒートシンク280のフィン284を突出させたことも本実施形態の特徴の一つである。
【0029】
送風機7の回転速度が比較的速い場合には、エアフローF1の速度も速くなるため、エアフローF1に沿ってフィン284を配置すると、比較的高い冷却効果を期待できる。しかし、上述したように、外気温度が高い場合には送風機7の回転速度は遅くなるため、電気品ケース20の冷却を送風機7のみに頼ると、冷却能力が足りなくなるという問題が生じる。そこで、本実施形態においては、フィン284をエアフローF2に当てるように上方向に突出させている。エアフローF2の速度は、エアフローF1よりも遅いものの、フィン284を上方向に突出させたことにより、対流による自然冷却効果を得ることができる。このように、本実施形態においては、送風機7による強制冷却と、対流による自然冷却とを組み合わせることにより、送風機7の回転速度の変動に対する冷却能力の変動幅を抑制することができ、送風機7の様々な回転速度に対応して、各種電気部品に対する十分な冷却能力を確保することができる。
【0030】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0031】
(1)上記実施形態のヒートポンプ式給湯機Sにおいては、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とを別筐体にしたが、これらを共通の筐体内に配置してもよい。
【0032】
(2)また、上記実施形態においては、液体熱交換器4にて加熱される被加熱液体は「水」であり、高温の被加熱液体(湯)をタンクユニット2に貯留し、タンクユニット2に貯留された高温の被加熱液体(湯)を給湯端末(図示せず)に供給するものとして説明した。しかし、被加熱液体は「水」以外の液体であってもよい。この場合、タンクユニット2に貯留された高温の被加熱液体と給湯端末に供給される水との間で熱交換可能な熱交換器(図示せず)をさらに設け、タンクユニット2に貯留された高温の被加熱液体で水を加熱して給湯端末に給湯する構成にするとよい。
【0033】
(3)また、本実施形態においては、被加熱液体(水)を一旦タンクユニット2に取り入れた後、供給配管35を介してヒートポンプユニット1に供給する構成としたが、これに限らず、例えば給水口(給水管)から直接ヒートポンプユニット1に被加熱液体を供給するようにしてもよい。