【実施例】
【0029】
1.オルニチンの分析
試料0.5gを精秤後、10w/v%スルホルサリチル酸溶液25mLを加え、更に3mol/L水酸化ナトリウム溶液を加え混和する。その後、クエン酸ナトリウム緩衝液でpH2.2に調製し、100mLに定容したものを、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク13A,孔径0.2μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、アミノ酸自動分析に供する。
【0030】
アミノ酸自動分析計操作条件
・機種:JLC−500/V(日本電子株式会社)
・カラム:LCR−6,φ4mm×120mm(日本電子株式会社)
・移動相:クエン酸リチウム緩衝液(P−12〜P−15,P−21)(日本電子株式会社)
・反応液:日本電子用ニンヒドリン発色液キット−II(和光純薬工業株式会社)
・流量:移動相0.50mL/min,反応液0.30mL/min
・測定波長:570nm
【0031】
2.カフェイン及び非重合体カテキン類の分析
純水で溶解希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定する。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行う。なお、グラジエント条件は以下の通りである。
【0032】
濃度勾配条件(体積%)
時間 A液濃度 B液濃度
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0033】
3.重合カテキンの分析
試料中の重合カテキン量の測定は、酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として「総ポリフェノール」の含有量を求める(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10、初版、出版社:社団法人 菓子総合センター)。そして、「総ポリフェノール」の含有量から、上記非重合体カテキン類の分析にて求めた「非重合体カテキン類」の含有量を差し引くことにより、重合カテキンの含有量を求める。
【0034】
総ポリフェノールの測定
試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線から総ポリフェノール量を求める。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとする。
リン酸緩衝液の調製:1/15mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整する。
【0035】
(i)試薬の調製
1)酒石酸鉄試薬の調製 500mLメスフラスコに硫酸第一鉄七水塩0.50gと(+)酒石酸ナトリウム・カリウム四水和物2.50gを採取し、イオン交換水でメスアップする。
2)リン酸バッファーの調製 2000mLメスフラスコにリン酸水素二ナトリウム・二水和物20.00gとリン酸 二水素カリウム2.90gを採取し、イオン交換水でメスアップする。この溶液のpHが 7.5〜7.6になるように調整する。pH7.6を超える場合、リン酸二水素カリウム ・二水和物0.9g/100mL水溶液を添加し、pH7.5未満の場合、リン酸二水素 カリウム1.2g/100mL水溶液を添加し調整する。
(ii)装置及び器具
1)分光光度計(U−2010;日立製作所製)
2)石英製セル(10mm×10mm)
3)25mL、100mL、200mL、500mL、2000mLのメスフラスコ
4)1mL、5mL、10mL、20mL、30mLのホールピペット
5)1mL、3mL、5mLのマイクロピペット
(iii)分析条件
1)測定波長:540nm
2)温度 :20℃±2℃
(iv)操作
1)検量線作成
i)没食子酸エチル約0.5gを使用前に2〜3時間乾燥させる。
ii)200mLメスフラスコに乾燥した没食子酸エチル0.2gを採取し、イオン交換水 でメスアップする。(100mg/100mL標準液)
iii)100mLメスフラスコに、ii)の標準液を用い、5mg/100mL、10mg /100mL、20mg/100mL、30mg/100mLの各標準液を調製する。
iv)25mLメスフラスコに、iii)の標準液をそれぞれ5mL採取し、酒石酸鉄試薬5 mLを加えリン酸バッファーでメスアップする。また、ブランクとして標準液を加えないものを調製する。
v)分光光度計にて吸光度を測定し検量線を作成する。 なお、検量線については下記を目安にし、逸脱した時は再調整する。
R2 :0.9995〜1.0000
検量線傾き:34.5±0.4
切片 :0.3以下
2)試料測定
i)イオン交換水にて分光光度計をゼロ補正する。
ii)25mLメスフラスコに試料を所定量採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした後、吸光度を測定する。なお、吸光度の測定は、発色後40分以内とする。
【0036】
4.ケルセチン配糖体の分析
(1)イソクエルシトリン及びその糖付加物
イソクエルシトリン及びその糖付加物の分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法により、次に示す方法にしたがって行う。
分析機器は、LC-10AD(島津製作所社製)を使用する。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :紫外可視吸光光度計 SPD-10AV(島津製作所社製)
・カラム :YMC-Pack ODS-A AA12S05-1506WT、φ6mm×150mm(ワイエムシィ社製)
【0037】
分析条件は次のとおりである。
・カラム温度:40℃
・移動相 :水、アセトニトリル、2−プロパノール及び酢酸の混液(200:38:2:1)
・流量 :1.0mL/min
・試料注入量:10μL
・測定波長 :360nm
【0038】
以下の手順にて分析用試料を調製する。
検体1gを量りとり、メタノール1mLを加え、更にメタノール及び水の混液(1:1、体積比)を加えて10mLに定容し、試料溶液とした。調製した試料溶液を高速液体クロマトグラフ分析に供する。
【0039】
また、イソクエルシトリンの標準品を用いて濃度既知の溶液を調製し、高速液体クロマトグラフ分析に供することにより検量線を作成し、イソクエルシトリンを指標として、前記試料溶液中のイソクエルシトリン及びその糖付加物の定量を行う。そして、前記検量線から、イソクエルシトリン及びその糖付加物について、それぞれモル濃度を求め、そのモル濃度にイソクエルシトリンの質量を乗ずることにより、イソクエルシトリン及びその糖付加物のイソクエルシトリン換算量を算出する。
【0040】
(2)ルチン及びその糖付加物の分析
試料0.5gを採取し、メタノール及び2.5%酢酸の混液(8:2)20mLを加えて5分間超音波抽出した後、25mLに定容する。次いで、1mLを分取し、25mLに定容した後、高速液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計を用いて分析する。
【0041】
分析条件は次のとおりである。
・カラム :Unison UK-C18、φ4.6mm×250mm(インテクト社製)
・移動相 :水、アセトニトリル及び酢酸の混液
・流量 :1.0mL/min
・カラム温度 :40℃
・イオン化法 :エレクトロスプレー(正イオン検出モード)
・コーン電圧 :20V
・コリジョンエネルギー:25eV
・設定イオン数:m/z 611.2→303.2
【0042】
また、ルチンの標準品を用いて濃度既知の溶液を調製し、高速液体クロマトグラフ分析に供することにより検量線を作成し、ルチンを指標として、前記試料溶液中のルチン及びその糖付加物の定量を行う。そして、前記検量線から、ルチン及びその糖付加物について、それぞれモル濃度を求め、そのモル濃度にルチンの質量を乗ずることにより、ルチン及びその糖付加物のルチン換算量を算出する。
【0043】
5.pHの測定
飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、20℃に温度調整をして測定した。
【0044】
6.酸度の分析
1)滴定
試料5〜15gを200mL容三角フラスコに正確に量り取り、水で適宜希釈して1%フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、25mLビューレットに入れた0.1M水酸化ナトリウムで振り混ぜながら滴定する。30秒間赤色が持続する点を終点とする。水素イオン濃度計を用いる場合には、マグネティックスターラーでかき混ぜながら同様に滴定し、pH8.1になったときを終点とする。
【0045】
2)計算
下記式(1)により酸度を求める。
【0046】
酸度(質量%)=A×f×100/W×0.0064 (1)
〔式(1)中、Aは0.1M水酸化ナトリウム溶液による滴定量(mL)、fは0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価、Wは試料質量(g)、をそれぞれ示す。〕
【0047】
7.ナトリウムイオンの分析
試料2gに10%塩酸5mLを加え、水浴上で蒸発乾固する。さらに10%塩酸5mLを加え、加温した後、全量をメスフラスコに濾過し、水で定容する。1%塩酸を用いて、検量線の範囲内に入るように、適当な濃度に希釈し、20000ppmのストロンチウム液2.5mLを加え、定容したものを試験溶液とする。原子吸光光度計を用いて、試験溶液の吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線からナトリウムの定量を行う。
・原子吸光光度計:AA−7000(島津製作所製)
・フレーム:空気−アセチレン
・測定波長:589.0nm
【0048】
9.官能評価
各飲料組成物の「酸味のキレ」、「香りの強さ」又は「苦味」について、専門パネル3名が下記の基準にしたがって飲用試験した。その後、専門パネル3名が協議して「0.5」刻みで決定した点数を最終評点とした。
【0049】
酸味のキレの評価基準
酸味のキレの評価は、酸味を感じた後に、その酸味が舌に残らない否かを観点に、下記の5段階により評価した。
5:酸味のキレがよい
4:酸味のキレがややよい
3:酸味のキレが僅かによい
2:酸味のキレがやや悪い
1:酸味のキレが悪い
【0050】
香りの強さの評価基準
香りの強さの評価は、香料を含有する飲料について、香りが十分に感じられるか否かを観点に、下記の5段階により評価した。
5:香りを非常によく感じる
4:香りをよく感じる
3:香りを感じる
2:香りを感じにくい
1:香りを非常に感じにくい
【0051】
苦味の評価基準
苦味の評価は、下記の5段階により評価した。
5:苦味を感じない
4:苦味をほとんど感じない
3:苦味をやや感じる
2:苦味を感じる
1:苦味を強く感じる
【0052】
実施例1〜7及び比較例1
[ストレート飲料の製造]
表1に示す各成分を配合して飲料を調製した後、容量200mLのPETボトルに充填し加熱殺菌した(ポストミックス方式)。殺菌条件は、65℃、20分で行った。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を表1に併せて示す。得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、酸味のキレの評価は、実施例3の飲料の酸味のキレを評点「4.0」とし、比較例1の飲料の酸味のキレを評点「1.0」として、上記の5段階により評価した。また、苦味の評価は、実施例1の飲料の苦味を評点「5.0」とし、実施例7の飲料の苦味を評点「2.0」として評価した。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例8〜14、参考例1及び比較例2
[ストレート飲料の製造]
表2に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を表2に併せて示す。得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、香りの強さの評価は、参考例1の飲料の香りの強さを評点「5.0」とし、比較例2の飲料の香りの強さを評点「1.0」として評価した。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例15〜17及び比較例3〜5
[ストレート飲料の製造]
表3に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を実施例10及び比較例2の結果とともに表3に併せて示す。得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、酸味のキレ及び香りの強さの評価は、各オルニチン濃度においてカフェイン含有量が0質量%の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」とし、実施例10の飲料の酸味のキレを評点「4.0」、香りの強さを評点「4.5」として評価した。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例18、19及び比較例6、7
[ストレート飲料の製造]
表4に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を実施例10及び比較例2の結果とともに表4に併せて示す。なお、酸味のキレ及び香りの強さの評価は、各pHにおいてカフェイン含有量が0質量%の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」とし、実施例10の飲料の酸味のキレを評点「4.0」、香りの強さを評点「4.5」として評価した。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例20〜22及び比較例8〜10
[ストレート飲料の製造]
表5に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を実施例10及び比較例2の結果とともに表5に併せて示す。なお、酸味のキレ及び香りの強さの評価は、各酸度においてカフェイン含有量が0質量%の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」とし、実施例10の飲料の酸味のキレをを評点「4.0」、香りの強さを評点「4.5」として評価した。
【0061】
【表5】
【0062】
実施例23
[ストレート飲料の製造]
表6に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を実施例10及び比較例2の結果とともに表6に併せて示す。得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、酸味のキレ及び香りの強さの評価は、各重合カテキン含有量においてカフェイン含有量が0質量%の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」とし、実施例10の飲料の酸味のキレを評点「4.0」、香りの強さを評点「4.5」として評価した。
【0063】
【表6】
【0064】
実施例24〜35
[ストレート飲料の製造]
表7に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を実施例10及び比較例2、8、9の結果とともに表7に併せて示す。得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、評価については、実施例10の酸味のキレを評点「4.0」、飲料の香りの強さを評点「4.5」とし、比較例2の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」として評価した。
【0065】
【表7】
【0066】
実施例36〜39
[ストレート飲料の製造]
表8に示す各成分を配合して飲料を調製したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰飲料を得た。得られた各容器詰飲料について分析及び評価を行った。その結果を実施例10及び比較例2、8、9の結果とともに表8に併せて示す。得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、評価については、実施例10の酸味のキレを評点「4.0」、香りの強さを評点「4.5」とし、比較例2の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」として評価した。
【0067】
【表8】
【0068】
実施例40及び比較例11
[インスタント粉末飲料の製造]
表9に示す各成分を混合し、インスタント粉末飲料(還元飲料)10gを調製した。得られたインスタント粉末飲料(還元飲料)をイオン交換水で全量100mLに希釈し、得られた各飲料について分析及び評価を行った。その結果を表9に示す。なお、得られた飲料は、(G)ナトリウムイオンの含有量が0.0384質量%であり、酸度が0.14質量%であった。なお、評価については、実施例10の酸味のキレを評点「4.0」、香りの強さを評点「4.5」とし、比較例2の飲料の酸味のキレ及び香りの強さを評点「1.0」として評価した。
【0069】
【表9】
【0070】
表1〜9から、オルニチン強化飲料組成物にカフェインを特定量比で含有させると、酸味のキレが改善され、また香料を含有させた場合にはフレーバー感を十分に楽しむことができる飲料組成物が得られることが分かる。