特許第6486544号(P6486544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6486544
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】食品用手動ミル
(51)【国際特許分類】
   A47J 42/38 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   A47J42/38
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-210490(P2018-210490)
(22)【出願日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年11月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100098109
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】古田 樹也
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3206207(JP,U)
【文献】 実開昭55−143137(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3215558(JP,U)
【文献】 実開昭53−107690(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00−44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を粉砕する粉砕機構を内部に有するミル本体と、該ミル本体に着脱可能な回転ハンドルとから成り、前記粉砕機構は回転粉砕部を有し、使用時に、回転ハンドルを回転軸の上端部分に取り付けて回転させることにより回転粉砕部を回転させ、不使用時に、回転ハンドルを使用時の取り付け態様とは別の態様でミル本体に保持するミルであって、
回転ハンドルは、ハンドルレバーと操作部とを有し、操作部は、ハンドルレバーの一方の端部からそのハンドルレバーの長手方向と直角に交差する方向に突出するように固定されている支軸と、その支軸を中心に回転可能に取り付けられた回転操作部とから成り、ハンドルレバーの他方の端部には、前記回転軸の上端部分に嵌合する嵌合孔が設けられており、
回転操作部は,円筒形をなし、その胴部下半部を絞った形状をなして、その部分にくびれ部を有しており、回転操作部の基部と反対側を上側として、くびれ部よりも上の回転操作部の上面寄りに偏倚した外周面には孔部が設けられ、この孔部が回転軸の上端部分に掛止されることにより、回転ハンドルが、ミル本体が置かれた載置面から浮いた状態でミル本体に位置決め可能に構成されたことを特徴とする食品用手動ミル。
【請求項2】
回転操作部は、支軸を挿入するための挿入穴が長手方向に設けられ、さらに回転操作部の上面にはその挿入穴と連通する凹部が設けられ、この凹部は、支軸の頭部を受け入れるためのものであって、回転操作部の外周面に設けられた孔部は、凹部に至るまで延びている請求項1記載の食品用手動ミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に一般家庭で使用される茶葉等の食品用手動ミルに関する。
【背景技術】
【0002】
回転ハンドルを回転させることにより食品を粉砕するミルであって、回転ハンドルが着脱可能に構成されたものは従来から存在している。そして、取り外した回転ハンドルが邪魔にならないように、ミル内に立てて保管することができるミルも存在している。
【0003】
特許文献1の粉砕機は、ハンドルを使用しないときはハンドルを容器内の梁に引掛けておくものであり、ハンドルを浮かした状態に維持できるが、ハンドルの位置決め手段を有していないので、粉砕機を持ち運ぶ際にハンドルがすぐに落ちてしまう虞がある。また、特許文献2のコーヒーグラインダーは、ハンドルを浮いた状態に維持する構成は特許文献1と同じ構成であり、さらに、位置決めする手段として、筐体の内面に上下方向の貫通孔を設け、その貫通孔にハンドルを挿通し立てて保管するものである。すなわち、特許文献2のコーヒーグラインダーは、特許文献1において引掛けられて浮いた状態にある回転ハンドルの位置決めのために、筐体の内部に挿通孔を設けて、その挿通孔に回転ハンドルを通して移動を防止しようとするものであり、特許文献1に位置決め手段を単純に追加したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−198120号公報
【特許文献2】実用新案登録第3184678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特許文献2のコーヒーグラインダーは、ハンドルを位置決めする手段として、筐体の内面に上下方向の貫通孔を設け、その貫通孔にハンドルを挿通し立てて保管するものである。したがって、貫通孔を設けるためには、貫通孔を構成するための突出部を筐体の内面に設けなければならず、設計上や製造上邪魔な存在であり、すっきりした構成とならず製造に手間がかかるのである。貫通孔を筐体の外面に設ける場合も同様に突出部が邪魔な存在となり、すっきりとした構成にならないのである。また、特許文献2の筐体は断面が四角形であるから突出部を設けるべき内面が平面であり、薄板状のハンドルを挿通させるための挿通孔とそれを構成する突出部をそれぞれ細長い四角形に形成すればよい。しかし、筐体が円筒状であるときは内面が弧状の凹面であり、外面は弧状の凸面であるから、挿通孔を構成する突出部の突出度を大きくしなければ細長い四角形の挿通孔を形成することができず、さらに邪魔な存在となるのである。また、挿通孔が位置決め手段であるとしても、挿通孔のみではハンドルを浮いた状態に維持できないから、ハンドルを浮かせた状態で挿通孔を位置決め手段とするためには、位置決め手段である挿通孔とは別にハンドルを浮いた状態に維持するための手段が必要であり、結局2つの手段を設けなければならない。そこで、本発明は、不使用時に回転ハンドルをミル本体に保持したときに、回転ハンドルを浮いた状態に維持することと、回転ハンドルの位置決めとの2つの作用を同時に発揮させることができるミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、回転ハンドルが、ハンドルレバーと操作部とを有し、操作部は、ハンドルレバーの一方の端部からそのハンドルレバーの長手方向と直角に交差する方向に突出するように固定されている支軸と、その支軸を中心に回転可能に取り付けられた回転操作部とから成り、ハンドルレバーの他方の端部には、前記回転軸の上端部分に嵌合する嵌合孔が設けられており、回転操作部は,円筒形をなし、その胴部下半部を絞った形状をなして、その部分にくびれ部を有しており、回転操作部の基部と反対側を上側として、くびれ部よりも上の回転操作部の上面寄りに偏倚した外周面には孔部が設けられ、この孔部が回転軸の上端部分に掛止されることにより、回転ハンドルが、ミル本体が置かれた載置面から浮いた状態でミル本体に位置決め可能に構成されている構成である。
【0007】
請求項2記載の発明は、回転操作部が、支軸を挿入するための挿入穴が長手方向に設けられ、さらに回転操作部の上面にはその挿入穴と連通する凹部が設けられ、この凹部は、支軸の頭部を受け入れるためのものであって、回転操作部の外周面に設けられた孔部は、凹部に至るまで延びている構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、回転操作部の、くびれ部よりも上の回転操作部の上面寄りに偏倚した外周面には孔部が設けられ、この孔部が回転軸の上端部分に掛止されることにより、回転ハンドルが、ミル本体が置かれた載置面から浮いた状態でミル本体に位置決め可能に構成されている。したがって、回転ハンドルの保持手段によって、回転ハンドルを浮いた状態に維持することと、回転ハンドルの位置決めとの2つの作用を同時に発揮させることができるから、浮いた状態を維持する手段と位置決め手段を別々に設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】不使用時に回転ハンドルをミル本体に保持して保管する状態を示す一部断面正面図である。
図2】本発明の使用状態を示す正面図である。
図3】本発明の使用状態を示す斜視図である。
図4】回転操作部の側面図である。
図5】回転操作部の中央縦断面図である。
図6】受け容器の中央縦断面図である。
図7】不使用時に回転ハンドルをミル本体に保持して保管する状態を示す他の実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。本実施例のミル1は、茶葉を粉砕するためのミルである。ミル1は、ミル本体2と回転ハンドル3とを有する。ミル本体2は、円筒形の胴部4を有し、胴部4の上部に円形の蓋5が着脱可能に取り付けられ、胴部4の下部にほぼ円筒形の受け容器6が着脱可能に取り付けられている。
【0011】
蓋5の上面中央から回転軸7が突出している。この回転軸7は、蓋5から突出している上端部分8の断面が六角形で、それよりも下の部分は断面が円形である。胴部4内には粉砕機構(図示せず。)が設けられ、その粉砕機構を構成する回転粉砕部(図示せず。)が、回転軸7の下端部に取り付けられている。回転粉砕部は、具体的には茶葉を粉末にするための上臼やカッター等である。
【0012】
蓋5は円形の板状に形成され、その中央に回転軸7を挿通させるための軸孔(図示せず。)が形成されている。図1又は図2に示すように、蓋5の外径は胴部4の外径よりもやや大径に形成されており、蓋5の底面に設けられた嵌め込み部(図示せず。)を胴部4の中に嵌め込むことにより、蓋5は胴部4に取り付けられる。蓋5の外径が胴部4の外径よりもやや大径であるため、蓋5の縁に指を掛けることにより胴部4から容易に取り外すことができる。
【0013】
受け容器6は、粉砕機構により粉末状に粉砕された茶葉粉末を貯留するための容器であって、胴部4の下部にネジ部9によって着脱自在に取り付けられている。図6に示すように、茶葉粉末を受けるための受け部10は半卵状に形成されており、洗浄の際に受け部10に付着している茶葉粉末を容易に洗い流すことができる。また、受け容器6は、全体が透明なプラスチックで形成されており、受け部10に貯留されている茶葉粉末の量を確認することができる。
【0014】
図1又は図2に示すように、回転ハンドル3は、細長い板状のハンドルレバー11と、その一方の端部からハンドルレバーの長手方向と交差する方向に突出する操作部12を有する。操作部12は、ハンドルレバー11の一方の端部からそのハンドルレバーの長手方向と直角に交差する方向に突出するように固定されている支軸13と、その支軸13を中心に回転可能に取り付けられた回転操作部14を有する。なお、支軸13のハンドルレバー11に対する交差方向は直角でなくてもよい。また、ハンドルレバー11の他方の端部には断面六角形の嵌合孔20が設けられており、使用時にその嵌合孔20が回転軸7の上端部分8に嵌合して回転ハンドル3を回転させることができる。なお、嵌合孔20と上端部分8の断面形状は六角形に限定されるものでなく、例えば四角形や八角形等であってもよい。
【0015】
図4に示すように、回転操作部14は円筒形をなし、その胴部下半部を絞った形状をなし、くびれ部を有している。また、図5に示すように、回転操作部14は、支軸13を挿入するための挿入穴15が長手方向に設けられ、さらにその挿入穴15と連通する凹部16が設けられている。この凹部16は、支軸13の頭部17を受け入れるためのものである。また、回転操作部14の外周面から凹部16に至る孔部18が設けられている。
【0016】
次に、本発明の使用方法について説明する。茶葉を粉末にするときは、まず、蓋5を胴部4から取り外して茶葉を胴部4の中に投入する。次いで、ミル1を使用するときは、回転ハンドル3の嵌合孔20を回転軸7の上端部分8に嵌合することにより、図2に示すように回転ハンドル3をミル本体2に取り付け、回転ハンドル3を回転させる。回転ハンドル3を回転させることにより粉砕部(図示せず。)が回転し、茶葉を粉末にすることができる。
【0017】
茶葉を粉末にする作業が終了したときは回転ハンドル3をミル本体2から取り外し、図1に示すように、回転軸7の上端部分8に回転操作部14の孔部18を掛止する。すなわち、上端部分8と孔部18が、回転ハンドル3をミル本体2に保持する保持手段としての掛止部であって掛止作用をなす。このように、不使用時には、回転ハンドルを使用時とは別の取り付け態様でミル本体に取り付けて保管する。また、回転ハンドル3の保管時に、操作部12は蓋5の上面に置かれ、ハンドルレバー11は、ミル本体2の外周面に沿って下方に延びる。したがって、回転ハンドル3はミル1の内部に入る部分がなく全体が外側に保管されるので、回転ハンドル3の保管及び取り外しの際の操作がし易く、ミル1の内部を清潔に保つことができる。さらに、使用時に回転ハンドル3がミル本体3の外周よりも外側に大きく突き出ている方が使用し易いので、本実施例では、図2及び図3に示すように、特許文献1及び特許文献2に比べて回転ハンドル3の突き出し度が大きくなるように、回転ハンドル3がかなり長く形成されている。このため、回転ハンドル3を使用時の取り付け態様のまま保管すると、突き出した回転ハンドル3が邪魔になってしまうのである。そこで、本実施例のように、不使用時にハンドルレバー11がミル本体2の外周面に沿って下方に延びる状態で保管することにより、保管時に回転ハンドル3が邪魔になることがないのである。
【0018】
回転操作部14の孔部18は断面が円形であって、回転軸7の上端部分8が緩く嵌まる程度の内径を有している。回転操作部14の孔部18に回転軸7の上端部分8を遊嵌させることにより、不使用時に、ハンドルレバー11が胴部4の外周面に沿うように下方に延びた状態で回転ハンドル3をミル本体2に取り付け保管することができる。また、回転軸7の上端部分8に回転操作部14の孔部18が掛止されることにより、回転ハンドル3はその掛止位置に位置決めされる。本発明において位置決めとは、回転ハンドル3の移動が規制されるということであり、回転ハンドル3の全部が一体的に他の場所に移動しないということである。前述したように、孔部18は断面が円形であって、回転軸7の上端部分8が緩く嵌まる程度の内径を有しているので、回転ハンドル3は回転軸7の上端部分8を中心に回転可能である。したがって、回転ハンドル3の回転操作部14は回転軸7の上端部分8にあってそこから離れないから、回転ハンドル3の全体移動は規制されており、回転ハンドル3は位置決めされているのである。
【0019】
また、ハンドルレバー11の長さがミル本体2の長さよりも短いので、不使用時に回転ハンドル3はミル本体が置かれた載置面から浮いた状態で保管される。蓋5の外径は胴部4の外径よりもやや大径なので、回転ハンドル3の保管時には、ハンドルレバー11は、蓋5の外周に接触した状態で下方に延びるが、胴部4の外周面に接していない。また、図1に示すように、回転操作部14の基部19の外縁21は、蓋5の上面に接することなく浮いた状態となる。これにより、基部19の外縁21が蓋5の上面を傷付ける虞がない。
【0020】
図7は、本発明の他の実施例である。この実施例では、胴部4の外径が胴部4の上端から下端に行くに従ってわずかではあるが徐々に大きくなるように形成されている。また、蓋5の外径は、胴部4の下端の外径とほぼ等しく形成されている。したがって、保管状態の回転ハンドル3のハンドルレバー11は、蓋5の外周に接触すると共に、ハンドルレバー11の下端部は胴部4の外周面に接触している。これにより、保持された回転ハンドルが安定し、持ち運び等の際に保持された回転ハンドルがふらつくことを抑制することができる。また、回転操作部14の基部19の外縁21は、蓋5の上面に接している。
【0021】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、蓋5が存在しなくてもよいし、受け容器6が存在しなくてもよい。回転操作部14の外周面から凹部16に至る孔部18の断面を六角形にしてもよい。この場合、孔部18が嵌合される回転軸7の上端部分8も同様に断面が六角形であるから、回転ハンドル3が回転軸7を中心に回転することがない。ミル本体2は円筒形に限定されるものでなく、例えば角筒形であってもよい。また、茶葉以外の食品、例えば、コーヒー豆、塩あるいは香辛料等を粉砕してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ミル本体2と回転ハンドル3の保持手段により、不使用時に、回転ハンドル3が、ミル本体2が置かれた載置面から浮いた状態でミル本体2に位置決めされて保管されるので、1つの保持作用により浮いた状態と位置決め状態となることを可能とし、また、不使用時に回転ハンドル3が邪魔にならない。
【符号の説明】
【0023】
1 ミル、 2 ミル本体、 3 回転ハンドル、 4 胴部、 5 蓋、 6 受け容器、 7 回転軸、 8 回転軸の上端部分、 9 ネジ部、 10 受け部、 11 ハンドルレバー、 12 操作部、 13 支軸、 14 回転操作部、 15 挿入穴、 16 凹部、 17 支軸の頭部、 18 孔部、 19 基部、 20 嵌合孔、 21 基部の外縁
【要約】
【課題】 不使用時に、回転ハンドル3をミル本体2に保持したときに、回転ハンドル3を浮いた状態に維持することと、回転ハンドル3の位置決めとの2つの作用を同時に発揮させることができるミルを提供することを目的とする。
【解決手段】 不使用時に回転ハンドル3をミル本体2に保持して保管するための保持手段がミル本体2と回転ハンドル3のそれぞれに設けられ、それらの保持手段が協働することにより、回転ハンドル3が、ミル本体2が置かれた載置面から浮いた状態でミル本体2に位置決め可能に構成されたものである。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7