【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、
a)55〜98.9重量%の、式(1)
R−B−A−B−R(1)
の少なくとも1つのタイプのトリブロックコポリマー(A)と、
b)0.1〜15重量%の少なくとも1つの界面活性剤(B)と、
c)1〜30重量%の水と
を含む組成物であって、
Aが、100〜1,000Daの数平均分子量(Mn)を有する親水性ブロックであり、Bが、少なくともモノマーB1およびモノマーB2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックであり、B1およびB2が疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、かつB1がB2より低い分子量を有し、Rが、HまたはC1〜C30有機部分である末端基であり、組成物が0℃〜37℃の温度範囲で流体であり、重量%がa)、b)およびc)の合計に対するものであり、成分a)、b)およびc)の合計が組成物全体の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%である、組成物によって達成される。
【0007】
トリブロックコポリマー(A)のAブロックの比較的低いMnは、比較的疎水性のコポリマー(A)をもたらす。界面活性剤(B)を用いて、コポリマー(A)の連続相に分散された水性相の液滴のエマルションが形成される。
【0008】
本発明に係る組成物の利点は、比較的疎水性のトリブロックコポリマー(A)および界面活性剤を水とともに含有する安定したエマルションが得られることである。このようなエマルションは、低分子薬剤、ペプチド、タンパク質および遺伝物質などの親水性医薬品有効成分の担体として使用され得る。これらの場合、親水性医薬品有効成分がエマルションの水性相に完全に溶解された医薬組成物を得ることができる。
【0009】
本発明に係る組成物の利点は、粘度が、式1に従う「疎水性」トリブロックコポリマー自体よりもはるかに低く、それにより注入性(injectability)が著しく向上され得る配合物が得られることである。
【0010】
別の利点は、本発明の組成物が、水溶液中でのみ利用可能なAPIを組み込むのに使用され得ることである。
【0011】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、医薬品有効成分の放出が十分に制御され、投与の直後のバースト放出が先行技術の系と比較してかなり少ないか、またはほとんどないことである。
【0012】
本発明に係る組成物の別の利点は、ヒトまたは動物の身体内に注入されると、エマルションが(半)固体を形成し、それにより組織充填、組織分離または他の医療目的のための使用を可能にすることである。このような使用は、医薬品有効成分なしでも十分にあり得るが、治療法が医薬品有効成分を必要とする場合、治療活性物質または生物活性物質との組合せであり得る。
【0013】
a)RBABR疎水性トリブロックコポリマー(A)
生体吸収性ポリマーは、本明細書において、身体によって代謝されかつ/または身体から分泌され得るポリマーとして定義される。
【0014】
本発明に係る疎水性トリブロックコポリマー(A)は、好ましくは、0℃〜37℃の温度範囲全体で流体である。
【0015】
上記にもかかわらず、コポリマーは、この温度範囲外の流体挙動も示し得る。流体という用語はまた、液体に置き換えられてもよいが、本発明では、両方とも溶媒または可塑剤を用いずに流体状態であるポリマーを指す。
【0016】
本発明に係る疎水性トリブロックコポリマーの流体挙動は、せん断下でその動的粘度によって測定される。動的粘度は、コーンプレート型、タイプ40mmコーン、角度1:00:00度:分:秒のTA Instruments AR2000Exレオメータを用いて測定した。粘度測定時、温度は、300秒間にわたり5s
-1のせん断速度で20℃または37℃のいずれかに一定に保った。平均粘度値を、ソフトウェア(Trios software,TA Instruments)を用いて計算した。このようにポリマーの平均動的(せん断)粘度が測定される。37℃で測定される粘度は、好ましくは、30Pa.s未満、より好ましくは20Pa.s未満または10Pa.s未満、5Pa.s未満、3Pa.s未満、2Pa.s未満、または最も好ましくは1Pa.s未満の値を有する。典型的に、37℃における粘度は、0.1Pa.s超である。
【0017】
20℃で測定される粘度は、典型的に、0.1Pa.s超の値を有する。20℃で測定される粘度は、好ましくは、30Pa.s未満、より好ましくは20Pa.s未満または10Pa.s未満、最も好ましくは5Pa.s未満の値を有する。
【0018】
本発明に係る疎水性トリブロックコポリマー(A)の粘度は、20℃の温度で0.1〜30Pa.s、好ましくは0.2〜20Pa.s、最も好ましくは0.3〜10Pa.sの範囲である。
【0019】
本発明において使用される疎水性トリブロックコポリマー(A)は、好ましくは、低い乃至非常に低いガラス転移温度を有する。ガラス転移温度(T
g)は、示差走査熱量測定(DSC、2celc/分の加熱による第2の加熱曲線)によって測定され、温度遷移の中点として定義される。コポリマーは、好ましくは、−20℃未満、より好ましくは−30℃未満、最も好ましくは−40℃未満のT
g(中点)を有する。
【0020】
本発明のトリブロックコポリマーは、好ましくは、完全に非晶質であるか、または少なくとも好ましくは非常に低い溶融温度を有する。溶融温度(T
m)は、示差走査熱量測定(DSC、2celc/分の加熱による第2の加熱曲線))によって測定され、温度遷移の中点として定義される。コポリマーは、好ましくは、検出可能な溶融ピークを有さないか、または20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは0℃未満のT
m(中点)を有する。
【0021】
トリブロックコポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは、500〜5,000Da、より好ましくは600〜3,000Daの範囲内、最も好ましくは700〜2,500Daの範囲内である。本明細書において使用される数平均分子量(Mn)は、実験セクションにおいて規定されるように、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定され得る。
【0022】
本発明に関するブロック比は、末端基修飾を数に入れない両方の疎水性ブロックの数平均分子量(M
n)の合計(2つのBブロックの合計)と、親水性Aブロックとの間の比率である。所要のブロック比は、親水性Aブロックの組成、疎水性ブロックの組成(すなわちBブロック)、修飾度および有機末端基の性質に応じて決まる。
【0023】
本発明の一実施形態において、Bブロックの数平均分子量の合計と、Aブロックの数平均分子量との間の比率として定義されるブロック比は、0.3〜20、好ましくは0.5〜10の範囲である。
【0024】
本発明において、有機末端基は、トリブロックコポリマーの粘度を低下させ、それによりトリブロックコポリマーの注入性を向上させる。有機末端基はまた、充填される医薬品有効成分の放出速度の制御に著しい影響を与える。より具体的には、有機末端基は、充填される医薬品有効成分の放出を遅らせる。
【0025】
RBABRブロックコポリマー(A)の量は、組成物の総量に対して55〜98.9重量%の範囲である。典型的に、それは、組成物の少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%であり得る。それは、98重量%、95重量%または92重量%未満であり得る。
【0026】
A部分
疎水性トリブロックコポリマー(A)中のAブロックは、親水性ポリマーブロックである。好ましくは、Aブロックは、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、PEGおよびPPOのコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン](PHEG)またはポリ(2−オキサゾリン)からなる群から選択される。ポリエチレングリコールは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)としても知られているジオールであり、両方の名称は、本発明の趣旨で同義的に使用され得る。
【0027】
より好ましくは、AブロックはPEGであり、最も好ましくは、Aブロックは直鎖状PEGである。
【0028】
Aブロックは、少なくとも100Da、好ましくは少なくとも120Da、最も好ましくは少なくとも150Daの数平均分子量(Mn)を有する。Aブロックの数平均分子量は、好ましくは、最大で1,000Daである。例えば、Aブロックの数平均分子量は、180〜700Daである。PEGなどのAブロックの分子量は、本発明の疎水性トリブロックコポリマーの一部になると、結晶化しないかまたはゆっくりと結晶化するにとどまるように選択される。重要な態様は、PEGなどの特定のAブロックが、それにより得られる疎水性トリブロックコポリマーの粘度に与える結果である。
【0029】
B部分
疎水性トリブロックコポリマー(A)は、Aブロックに隣接する2つのBブロックを含む。Bブロックは、疎水性である。Bは、少なくともモノマーB1およびモノマーB2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックである。これは、Bが2つのモノマーから作製されるかまたは3つ以上のモノマーから作製され得ることを意味する。
【0030】
B1およびB2は、疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、すなわち、最大の量で疎水性ブロック中に存在するモノマーがB1およびB2と呼ばれる。疎水性ブロック中で最大の重量含量を有するモノマーのうち、より低い分子量を有するものはB1と呼ばれ、より高い分子量を有するモノマーはB2と呼ばれる。
【0031】
したがって、Bが2つのモノマーから作製される場合、これらの2つのモノマーは、B1およびB2と呼ばれる。例えば、Bがカプロラクトン(M=114)およびラクチド(M=144)から作製される場合、B1はカプロラクトンであり、B2はラクチドである。
【0032】
Bが3つ以上のモノマーから作製される場合、最大の量で存在するモノマーがB1およびB2と呼ばれる。例えば、Bが50重量%のカプロラクトン(M=114)、30重量%のラクチド(M=144)および20重量%のグリコリド(M=116)から作製される場合、B1はカプロラクトンであり、B2はラクチドであり、Bが20重量%のカプロラクトン、50重量%のラクチドおよび30重量%のグリコリドから作製される場合、B1はグリコリドであり、B2はラクチドである。
【0033】
モノマーB1およびB2は、環状モノマーであり得、Bブロックのそれぞれは、200〜1,500Daの数平均分子量範囲を有し得る。好ましくは、各Bブロックの数平均分子量は、225〜1,250Da、より好ましくは250〜1,000Da、または300〜800Daの範囲である。
【0034】
両方のBブロックは同じまたは異なる組成を有してもよく、好ましくは、両方のBブロックは同じ組成を有する。
【0035】
モノマーB1およびB2は、環状モノマーであり得、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、χ−ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−デカラクトン、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、2,5−ジケトモルホリン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オンからなる群から、または好ましくはグリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、1,3−ジオキサン−2−オン(炭酸トリメチレンとしても知られている)、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オンからなる群から選択され得る。
【0036】
モノマーB1およびB2は、最も好ましくは、グリコリド、ラクチド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、1,3−ジオキサン−2−オン(炭酸トリメチレンとしても知られている)および1,4−ジオキサン−2−オン(p−ジオキサノンとしても知られている)からなる群から選択される。
【0037】
上述されるモノマー単位を含有する疎水性ブロックは、主にエステルおよび/またはカーボネート結合を含有し、それにより加水分解可能になる。それらは、ある範囲の明確な分子量で調製され得る。
【0038】
モノマーB1およびB2の選択は、それらが、それにより得られる疎水性トリブロックコポリマーの粘度にどのように影響を与えるかに基づく。別の重要な態様は、それらが、インビボで疎水性トリブロックコポリマーを用いて達成しようとする生体吸収の速度およびプロファイルに与える影響である。上記のモノマーを組み合わせることによって作製されるポリエステルは、しばらくの間にわたって研究されており、組合せのいくつかは周知である。
【0039】
ほとんどの場合、組合せは、2つのみのモノマーB1およびB2を含むが、Bブロック中に3つの異なるモノマーを用いた例が可能であり、有益であり得る。
【0040】
好ましい実施形態において、各Bブロック(すなわちモノマーB1およびB2)は、ε−カプロラクトンと、ラクチド、グリコリド、δ−バレロラクトン、p−ジオキサノンもしくは炭酸トリメチレンのいずれか1つとの組合せ;またはδ−バレロラクトンと、ラクチド、グリコリド、p−ジオキサノンもしくは炭酸トリメチレンのいずれか1つとの組合せ;またはp−ジオキサノンと、ラクチド、グリコリドもしくは炭酸トリメチレンのいずれか1つとの組合せ;または炭酸トリメチレンと、ラクチドもしくはグリコリドのいずれか1つとの組合せ;またはラクチドと、δ−バレロラクトン、p−ジオキサノンのいずれか1つとの組合せである。
【0041】
本明細書において「X」によって示されることもある、モノマーB1およびモノマーB2の総重量に対するモノマーB1の量は、例えば、10〜90重量%、典型的に20〜80重量%、30〜70重量%、40〜60重量%または45〜55重量%であり得る。
【0042】
R末端基
本発明に係る組成物において使用される疎水性トリブロックコポリマー(A)は、2つのR末端基を含む。B−A−Bトリブロックは、Bブロックの末端ヒドロキシル基を用いることによって修飾される。好ましくは、Rは、独立して、HまたはC1〜C30有機部分であり、より好ましくは、Rは、C1〜C30有機部分である。有機部分は、直鎖状、環状または分枝鎖状であり得る。有機部分は、例えばO、NおよびIのようなヘテロ原子を含有し得る。有機部分の例は、脂肪酸残基、エーテル残基またはウレタン残基である。脂肪酸残基は、脂肪酸または活性化脂肪酸と、Bブロックの末端のヒドロキシル基との反応によって得られる。脂肪酸は、1〜30個の炭素原子、好ましくは2〜20個の炭素原子の飽和または不飽和脂肪酸の選択を含む。脂肪酸基は、例えばヨウ素のようなヘテロ原子を含有し得る。ヨウ素の存在は、動物またはヒト身体への注入中または注入後にデポーを可視化するのを補助し得る。
【0043】
C1〜C30脂肪酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、ステアリドン酸、ルーメン酸、β−カレンド酸、エレオステアリン酸、プニカ酸、パリナリン酸、ピノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ミード酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、またはエイコサペンタエン酸からなる群から選択され得る。
【0044】
好ましくは、Rは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ノナノイル基、ドデカノイル基、ペンタデカノイル基、2−n−ヘキシルデカノイル基、ステアロイル基またはベンゾイル基から選択され、ここで、各Rは、例えばヨウ素のようなヘテロ原子で任意選択的に置換され得る。Rは、直鎖状、分枝状または環状および飽和または不飽和であり得る。
【0045】
天然の脂肪酸は、アセチル−補酵素Aサイクルを通して容易に分解可能である。さらに、これらの酸は、本発明の範囲内で使用される量においてインビボで毒性を示すリスクがより低い。しかしながら、それらのいくつかは、有益または有害な生物学的活性を有し得る。当業者は、身体における適用および位置を考えて脂肪酸の選択を考慮する必要があるであろう。長鎖脂肪酸誘導体による修飾は、一般に、ポリマーの吸収時間を増加させる。
【0046】
B−A−Bトリブロックコポリマーへの脂肪酸のカップリングは、限定はされないが、イソシアネートのようなカップリング剤の使用または脂肪酸もしくはポリマー末端基のいずれかの誘導体化を含み得る。脂肪酸またはポリマーの官能基は、限定はされないが、カルボニルジイミダゾール、N−ヒドロキシスクシンイミド、パラ−ニトロフェニルクロロホルメート、無水コハク酸のような活性化剤を用いることにより、カップリングを促進するように活性化され得る。限定はされないが、酸塩化物、無水物、イソシアネートのような脂肪酸の直接の誘導体も、特にそれらのいくつかが市販品として容易に入手可能であるために使用され得る。
【0047】
これらのカップリング方法は、当業者に周知である。
【0048】
ある用途では、特殊な部分が、末端基修飾に使用される脂肪酸誘導体に導入される必要があり得る。例えば、不飽和脂肪酸の使用は、不飽和脂肪酸鎖間で化学反応を起こさせて、ポリマー架橋を達成し得る。架橋は、通常、ポリマーの機械的特性および分解プロファイルを変更するために行われる。それらの架橋性部分間の活性化および分子間反応は、通常、放射線源、外部の化学反応または刺激、またはそれらの組合せによって引き起こされる。放射線の例としては、限定はされないが、熱、赤外線源、紫外線源、電子線源、マイクロ波源、X線源、可視光源[単色か否かにかかわらず]およびγ線が挙げられる。外部の反応または刺激としては、限定はされないが、pH、酸化/還元反応、インビボで存在する化学物質(ガス、タンパク質、酵素、抗体など)との反応、二重系(例えば、2つ以上の反応性基を含有する分子)として知られている、身体への導入時に組成物に加えられる化学物質との反応が挙げられる。
【0049】
末端基はまた、例えば酸素、窒素またはヨウ素原子を含有するヘテロ原子アルキルの群から選択され得る。
【0050】
末端基の選択は、それらが、それにより得られる疎水性トリブロックコポリマーの粘度に与える影響に基づく。別の重要な態様は、それらがインビボでの(半)固体の形成およびその柔軟性に与える影響である。別の重要な態様は、治療活性物質が形成される(半)固体に組み込まれる場合、それらがこのような物質の放出速度に与える影響である。
【0051】
好ましいブロックコポリマー
一実施形態において、式1に従う疎水性トリブロックコポリマー(A)は、Aが、150〜1,000Daの数平均分子量(Mn)を有する直鎖状ポリエチレングリコール部分であり、Bが、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド、1,4−ジオキサン−2−オン(p−ジオキサノンとしても知られている)および1,3−ジオキサン−2−オン(炭酸トリメチレンとしても知られている)からなる群から、より好ましくはε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドの群から選択される少なくとも2つのタイプのモノマーB1およびB2を含むポリエステル部分を表し、Rが、独立して、Hまたはヘテロ原子を任意選択的に含有するC1〜C30脂肪酸残基であるコポリマーであり、トリブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)は、500〜5,000Da、好ましくは600〜3,000Da、より好ましくは700〜2,500Daの範囲内であり、20℃で測定されるせん断粘度は、30Pa.s未満、より好ましくは20Pa.s未満または10Pa.s未満、最も好ましくは5Pa.s未満の値を有し、このコポリマーは、−20℃未満、より好ましくは−30℃未満、最も好ましくは−40℃未満のT
g(中点)を有する。
【0052】
別の実施形態において、式1に従う疎水性トリブロックコポリマー(A)は、Bブロックの数平均分子量の合計と、Aブロックの数平均分子量との間の比率として定義されるブロック比が0.5〜10の範囲であり、Aブロックが直鎖状ポリエチレングリコールブロックであり、Rがアセチル基、プロピオニル基、ヘキサノイル基、ノナノイル基、ドデカノイル基、ペンタデカノイル基、ステアロイル基またはベンゾイル基から選択され、各Rが任意選択的に置換され得る、トリブロックコポリマーである。
【0053】
さらなる実施形態において、式1に従う疎水性トリブロックコポリマー(A)は、Aが、150〜700Daの数平均分子量(Mn)を有するポリエチレングリコールであり、各Bブロックが、ε−カプロラクトンと、ラクチド、グリコリド、δ−バレロラクトン、p−ジオキサノンもしくは炭酸トリメチレンのいずれか1つとの組合せ;またはδ−バレロラクトンと、ラクチド、グリコリド、p−ジオキサノンもしくは炭酸トリメチレンのいずれか1つとの組合せ;またはp−ジオキサノンと、ラクチド、グリコリドもしくは炭酸トリメチレンとの組合せ;または炭酸トリメチレンと、ラクチドもしくはグリコリドとの組合せであり、Rがアセチル基、プロピオニル基、ヘキサノイル基、ノナノイル基、ドデカノイル基、ペンタデカノイル基、ステアロイル基またはベンゾイル基から選択され、各Rが任意選択的に置換され得る、コポリマーであり、ブロックコポリマー全体の数平均分子量(Mn)は、750〜3,000Da、より好ましくは1,000〜2,500Daの範囲内であり、20℃で測定されるせん断粘度は、30Pa.s未満、好ましくは20Pa.s未満、より好ましくは10Pa.s未満、最も好ましくは5Pa.s未満の値を有し、このコポリマーは、−20℃未満、より好ましくは−30℃未満、最も好ましくは−40℃未満のT
g(中点)を有する。
【0054】
界面活性剤(B)
本発明において適用される界面活性剤(B)は、好ましくは、生体吸収性界面活性剤である。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性およびカチオン性界面活性剤などのいくつかの種類に分けられ得る。非イオン性界面活性剤の例は、ポロキサマー(商標Synperonics、PluronicsおよびKolliphorによっても知られている)およびポリソルベート(Tween−20およびTween−80のような)である。他の非イオン性界面活性剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルアルコール(PVA)である。アニオン性界面活性剤の例は、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、およびミレス硫酸ナトリウムである。カチオン性界面活性剤の例は、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウムおよびジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリドである。本発明は、両親媒性直鎖状、分枝鎖状、グラフト、くし形または星形ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロックまたはマルチブロックコポリマー)から構成される生体吸収性非イオン性界面活性剤(以後、「ポリマー界面活性剤(B)」とも呼ばれる)を開示する。
【0055】
組成物中に存在する界面活性剤の量は、少なくとも0.1重量%、0.2重量%または0.3重量%である。通常、界面活性剤の量は、全てa)、bおよびc)の合計に対して15重量%、10重量%または5重量%未満である。好ましくは、界面活性剤の量は、0.2〜15重量%、0.3〜10重量%または0.3〜5重量%の範囲である。
【0056】
好ましい生体吸収性界面活性剤(B)は、両親媒性分枝鎖状または直鎖状コポリマー(ジブロック、トリブロック、マルチブロック、グラフトおよび/または星形コポリマー)である。好ましい界面活性剤は、式2に従う分子(ポリマー界面活性剤(B):
Rs−Bs−As−Bs−Rs 式2
であり、式中、Asが、少なくとも1,000Daの数平均分子量(Mn)を有する親水性ブロックであり、Bsが、少なくともモノマーBs1およびモノマーBs2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックであり、Bs1およびBs2が疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、かつBs1がBs2より低い分子量を有し、およびRsが、HまたはC1〜C30有機部分である末端基である。
【0057】
ポリマー界面活性剤(B)(式2)は、ポリマー界面活性剤(B)のブロックAsの分子量が疎水性トリブロックコポリマー(A)のブロックAの分子量より高いことを除いて、疎水性トリブロックコポリマー(A)(式1)と同じタイプのブロックからなり得る。
【0058】
ポリマー界面活性剤(B)は、比較的高い分子量を有する親水性ブロックAsを有し、これは、比較的親水性の性質を有するトリブロックコポリマー(B)をもたらす。疎水性トリブロックコポリマー(A)および水を含む組成物へのポリマー界面活性剤(B)の添加が、疎水性トリブロックコポリマー(A)の連続相に分散された水性相の水滴のエマルションをもたらすことが意外にも分かった。したがって、理論に制約されることは意図しないが、親水性トリブロックコポリマー(B)が界面活性剤として作用するものと考えられる。
【0059】
Rsは、好ましくは、H、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ノナノイル基、ドデカノイル基、ペンタデカノイル基、2−n−ヘキシルデカノイル基、ステアロイル基またはベンゾイル基からなる群から選択される。
【0060】
好ましくは、ポリマー界面活性剤(B)は、Asが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,000〜3,000Daの数平均分子量(Mn)を有する直鎖状ポリエチレングリコールブロックであり、Bsが、ラクチド、ε−カプロラクトン、グリコリド、p−ジオキサノン、炭酸トリメチレン、δ−バレロラクトンからなる群から選択される少なくとも2つの環状モノマーを含む疎水性ブロックであり、各Bsブロックが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される400〜3,000Daの数平均分子量(Mn)を有し、Rsが、HまたはC1〜C20脂肪酸残基の末端基である、両親媒性トリブロックコポリマー(B)である。
【0061】
ポリマー界面活性剤(B)の別の好ましい実施形態は、室温で水溶性であり、30℃以上の高温で生体吸収性ヒドロゲルを形成する特性を有する直鎖状両親媒性トリブロックコポリマー(B)である。
【0062】
好ましくは、Asは、PEG部分である。好ましくは、As部分の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,000〜3,000Da、好ましくは少なくとも1,250Da、より好ましくは少なくとも1,500Daの範囲である。
【0063】
好ましい実施形態において、ポリマーブロックBおよびBsは、同じタイプのモノマーを含み、すなわち、モノマーB1およびモノマーBs1は同じであり、かつモノマーB2およびモノマーBs2は同じである。
【0064】
本明細書において「X」によって示される、モノマーB1およびモノマーB2の総重量に対するモノマーB1の量は、例えば、10〜90重量%、典型的に20〜80重量%、30〜70重量%、40〜60重量%または45〜55重量%であり得る。
【0065】
本明細書において「Xs」によって示される、モノマーBs1およびモノマーBs2の総重量に対するモノマーBs1の量は、例えば、10〜90重量%、典型的に20〜80重量%、30〜70重量%、40〜60重量%または45〜55重量%であり得る。
【0066】
好ましくは、XとXsとの差は、最大で40重量%、より好ましくは最大で20重量%、より好ましくは最大で10重量%、より好ましくは最大で5重量%であり、最も好ましくは、XはXsと同じである。
【0067】
BおよびBsブロック中に同じモノマー(すなわちB1=Bs1およびB2=Bs2)を有することの利点は、組成物からの親水性医薬品有効成分(API)の放出速度が意外にもかなりの程度まで低下されることである。前記APIの低いまたはさらに非常に低いバースト放出とともに、非常に長い放出時間が報告され得る。特に、実質的に同じ比率の各BおよびBsブロック中の同じモノマーの存在は、APIのさらに増加した放出時間をもたらす。換言すると、ポリマー界面活性剤が、エマルションの連続相を形成するように疎水性トリブロックコポリマーに合わせて調整された化学組成である場合、前記APIの放出は、意外にも十分に制御され得る。
【0068】
ポリマー界面活性剤(B)の好ましい一実施形態は、Asが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,250〜1,750Daの数平均分子量(Mn)を有する直鎖状ポリエチレングリコールブロックであり、Bsが、ラクチド、ε−カプロラクトンおよびグリコリドからなる群から選択される少なくとも2つの環状モノマーを含む疎水性ブロックであり、各Bsブロックが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,100〜1,800Daの数平均分子量(Mn)を有し、Rsが、Hまたはアセチル、プロピオニル、ヘキサノイルまたはドデカノイル基の末端基である、直鎖状両親媒性トリブロックコポリマー(B)である。
【0069】
ポリマー界面活性剤(B)の別の好ましい実施形態は、Asが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,450〜1,550Daの数平均分子量(Mn)を有する直鎖状ポリエチレングリコールブロックであり、Bsが、ラクチド、ε−カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも2つの環状モノマーを含む疎水性ブロックであり、各Bsブロックが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,500〜1,750Daの数平均分子量(Mn)を有し、Rsが、アセチルまたはプロピオニル基の末端基である、直鎖状両親媒性トリブロックコポリマー(B)である。
【0070】
ポリマー界面活性剤(B)の別の好ましい実施形態は、Asが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,450〜1,550Daの数平均分子量(Mn)を有する直鎖状ポリエチレングリコールブロックであり、Bsが、ラクチド、ε−カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも2つの環状モノマーを含む疎水性ブロックであり、各Bsブロックが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,300〜1,400Daの数平均分子量(Mn)を有し、Rsが、Hまたはアセチルまたはプロピオニル基の末端基である、直鎖状両親媒性トリブロックコポリマー(B)である。
【0071】
ポリマー界面活性剤(B)の別の好ましい実施形態は、Asが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,000〜3,000Daの数平均分子量(Mn)を有する直鎖状メトキシポリエチレングリコールブロックであり、Bsが、ラクチド、ε−カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも2つの環状モノマーを含む疎水性ブロックであり、Bsブロックが、サイズ排除クロマトグラフィーで測定される1,000〜2,000Daの数平均分子量(Mn)を有し、Rsが、Hまたはアセチルまたはプロピオニル基の末端基である、直鎖状両親媒性ジブロックコポリマー(B)である。
【0072】
一実施形態において、少なくとも2つのポリマー界面活性剤(B)が組成物中に存在する。第2のポリマー界面活性剤(B)の添加は、特に1〜8℃のより低い温度で組成物の長期安定性をさらに向上させ得る。
【0073】
含水量
本発明に係る組成物は、水を含む。水の量は、好ましくは、少なくとも1重量%、2重量%または4重量%である。一般に、水の量は、成分a)、b)およびc)の合計に対して30重量%、20重量%または10重量%未満である。水の量は、好ましくは1〜30重量%、2〜20重量%または4〜10重量%の範囲である。
【0074】
組成物の粘度
本発明に係る組成物は、0℃〜37℃の温度範囲全体で流体である。
【0075】
上記にもかかわらず、組成物は、この温度範囲外の流体挙動も示し得る。流体という用語はまた、液体に置き換えられてもよいが、本発明では、両方とも溶媒または可塑剤を用いずに流体状態である組成物を指す。
【0076】
本発明に係る組成物の流体挙動は、せん断下でその動的粘度によって測定される。動的粘度は、コーンプレート型、タイプ40mmコーン、角度1:00:00度:分:秒のTA Instruments AR2000Exレオメータを用いて測定した。粘度測定時、温度は、300秒間にわたり5s
-1のせん断速度で20℃または37℃のいずれかに一定に保った。平均粘度値を、ソフトウェア(Trios software,TA Instruments)を用いて計算した。このように組成物の平均動的(せん断)粘度が測定される。37℃で測定される粘度は、好ましくは、30Pa.s未満、より好ましくは20Pa.s未満または10Pa.s未満、5Pa.s未満、3Pa.s未満、2Pa.s未満、または最も好ましくは1Pa.s未満の値を有する。典型的に、37℃における粘度は、0.1Pa.s超である。
【0077】
20℃で測定される粘度は、典型的に、0.1Pa.s超の値を有する。20℃で測定される粘度は、好ましくは、30Pa.s未満、より好ましくは20Pa.s未満または10Pa.s未満、最も好ましくは5Pa.s未満の値を有する。
【0078】
本発明に係る組成物の粘度は、20℃の温度で0.1〜30Pa.s、好ましくは0.2〜20Pa.s、最も好ましくは0.3〜10Pa.sの範囲である。
【0079】
本発明の好ましい組成物
一実施形態において、本発明は、
a)70〜97.8重量%の、式(1)
R−B−A−B−R(1)
の少なくとも1つのタイプの疎水性トリブロックコポリマー(A)と、
b)0.2〜10重量%の、式(2)
Rs−Bs−As−Bs−Rs(2)
に従う少なくとも1つのタイプのポリマー界面活性剤(B)と、
c)2〜20重量%の水と
を含む組成物であって、
Aが、100〜1,000Daの平均分子量(Mn)を有する親水性ブロックであり、Bが、少なくともモノマーB1およびモノマーB2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックであり、B1およびB2が疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、かつB1がB2より低い分子量を有し、Rが、HまたはC1〜C30有機部分である末端基であり、
Asが、少なくとも1,000Daの数平均分子量(Mn)を有する親水性ブロックであり、Bsが、少なくともモノマーBs1およびモノマーBs2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックであり、Bs1およびBs2が疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、かつBs1がBs2より低い分子量を有し、およびRsが、HまたはC1〜C30有機部分である末端基であり、
B1、B2、Bs1およびBs2が、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド、1,4−ジオキサン−2−オン(p−ジオキサノンとしても知られている)および1,3−ジオキサン−2−オン(炭酸トリメチレンとしても知られている)からなる群から選択され、
疎水性トリブロックコポリマー(A)が0℃〜37℃の温度範囲で流体であり、重量%がa)、b)およびc)の合計に対するものである、組成物に関する。好ましくは、RおよびRsが、独立して、H、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、ドデカノイル、およびベンゾイルからなる群から選択される。
【0080】
別の実施形態において、本発明は、
a)85〜95.7重量%の、式(1)
R−B−A−B−R(1)
の少なくとも1つのタイプの疎水性トリブロックコポリマー(A)と、
b)0.3〜5重量%の、式(2)
Rs−Bs−As−Bs−Rs(2)
に従う少なくとも1つのタイプのポリマー界面活性剤(B)と、
c)4〜10重量%の水と
を含む組成物であって、
Aが、100〜1,000Daの平均分子量(Mn)を有する親水性ブロックであり、Bが、少なくともモノマーB1およびモノマーB2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックであり、B1およびB2が疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、かつB1がB2より低い分子量を有し、Rが、HまたはC1〜C30有機部分である末端基であり、
Asが、少なくとも1,000Daの数平均分子量(Mn)を有する親水性ブロックであり、Bsが、少なくともモノマーBs1およびモノマーBs2を含むモノマーから作製される疎水性ブロックであり、Bs1およびBs2が疎水性ブロック中で最大の重量含量を有し、かつBs1がBs2より低い分子量を有し、およびRsが、HまたはC1〜C30有機部分である末端基であり、
B1、B2、Bs1およびBs2が、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド、1,4−ジオキサン−2−オン(p−ジオキサノンとしても知られている)および1,3−ジオキサン−2−オン(炭酸トリメチレンとしても知られている)からなる群から選択され、
疎水性トリブロックコポリマー(A)が0℃〜37℃の温度範囲で流体であり、重量%がa)、b)およびc)の合計に対するものである、組成物に関する。
【0081】
好ましくは、RおよびRsが、独立して、H、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、ドデカノイル、およびベンゾイルからなる群から選択される。
【0082】
医薬組成物
好ましくは、本発明に係る組成物は、少なくとも1つの医薬品有効成分(API)をさらに含む。この場合、本発明に係る組成物は、医薬組成物として使用され得る。医薬品有効成分の量は、好ましくは、医薬組成物の総重量に対して0.01〜15重量%である。
【0083】
好ましくは、医薬組成物は、上に定義される組成物のいずれか1つを含む。医薬組成物の粘度は、大部分がポリマーエマルションによって決定される一方、治療活性物質は、配合される組成物の注入性にわずかな影響を与えるに過ぎないことが意外にも分かった。これは、さらに、治療活性物質の分子量および医薬品有効成分の性質と無関係である。さらに、本発明の医薬組成物の利点は、例えばリゾチームのような親水性医薬品有効成分でさえ遅い乃至非常に遅い放出を示したことである。
【0084】
1つもしくは複数の医薬品有効成分(API)、または当業者により治療活性物質もしくは生物活性物質とも呼ばれるものは、処置されたヒトまたは動物において疾患を予防、減速、緩和もしくは治癒させることが可能であるか、または所望の治療効果をもたらすことが可能な任意の組の分子、細胞または細胞物質を指す。ヒト疾患も、世界保健機関(World Health Organization)によってWHO ICD−10(2007)分類資料において定義されるように呼ばれる。
【0085】
本発明の組成物中の医薬品有効成分は、任意の治療有効成分、および任意の診断剤、および任意の造影剤などの有効成分であり得、かつヒトを含む動物に予防効果のある医薬品有効成分、およびヒトを含む動物から疼痛、膨張もしくは炎症などの疾患の症状、もしくは原因、もしくは結果または疾患を緩和するか、抑制するか、またはさらに完全になくす効果を有する治療有効成分を含む。例えば、医薬品有効成分は、身体に通常送達される広い種類の化合物を含み得る。例えば、これらの医薬品有効成分としては、限定はされないが、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、殺真菌剤、殺疥癬虫剤または殺シラミ剤を含む);消毒剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェニド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルゾールなど);鎮痛薬および併用鎮痛薬;食欲抑制薬;駆虫薬、抗関節炎薬、抗ぜんそく薬;抗けいれん薬;抗鬱薬;抗糖尿病薬;止瀉薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬、抗片頭痛薬;抗嘔吐薬;抗新生物薬;抗パーキンソン病薬;かゆみ止め薬;抗精神病薬;解熱薬、鎮痙薬;抗コリン作用薬;交感神経様作用薬;キサンチン誘導体;カリウムおよびカルシウムチャネル遮断薬を含む心臓血管薬;β遮断薬;α遮断薬および抗不整脈薬;抗高血圧薬;利尿薬および抗利尿薬;全身、冠状、末梢および脳血管拡張薬を含む血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;血管収縮薬;鬱血除去薬を含む咳止めおよび風邪薬;ホルモンおよびステロイド(例えば、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイド、コルチコステロイドなど);睡眠薬;免疫抑制剤;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静剤および精神安定剤、麻酔薬(例えば、モルヒネ、メペリジン、コデインなど)、局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどのアミド型またはアニリド型局所麻酔薬);制吐薬(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミドなど);抗血管新生薬(例えば、コンブレスタチン、コントルトロスタチン、抗VEGF薬など)、多糖類、免疫調節剤、抗血栓性化合物、跛行治療薬(anti−claudicating drug)、アテローム性動脈硬化症治療薬、抗ヒスタミン薬、抗癌剤(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ストレプトゾシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、パクリタキセル、エピルビシン、マイトマイシンC、シスプラチン、カルボプラチンなど、および光線力学的治療法に使用される光増感剤、血管治療薬、眼科用薬、アミノ酸、ビタミン、神経伝達物質、神経ホルモン、シグナル伝達分子、向精神薬、合成薬、半合成薬、天然薬およびこれらに由来する物質、または上記の組合せが挙げられる。医薬品有効成分はまた、限定はされないが、(組み換え)タンパク質、PEG化タンパク質およびペプチド(例えば、インスリン、エリスロポエチン、エキセナチド、グルカゴン様ペプチド−1、形態形成タンパク質(例えば、骨形態形成タンパク質、形質転換増殖因子、線維芽細胞増殖因子、腫瘍壊死因子)、受容体拮抗薬(例えば、インターロイキン−1受容体拮抗薬)、抗癌タンパク質(例えば、ネオカルジノスタチン、L−アスパラギナーゼ、インターロイキン−2、ベバシズマブおよび他の抗VEGF薬)、予防用ワクチン、治療用ワクチン、遺伝物質(例えば、核酸配列、ポリヌクレオチド、(アンチセンス)オリゴヌクレオチド、プラスミド、DNA、RNA、siRNA、マイクロRNA)、アプタマー、酵素、抗原、抗体、抗体フラグメント、ウイルス、ウイルスベースの物質、細胞、細胞部分構造など)を含む生物学的製剤であってもよく、本明細書に記載される治療有効成分のプロドラッグ、代謝物、誘導体、インビボまたはインビトロ化学修飾産物、インビボまたはインビトロ酵素修飾産物および治療的に有効な分解産物が本発明の範囲に含まれる。
【0086】
好ましくは、有効成分は、免疫調節薬、抗炎症薬または増殖因子の群から選択される治療有効成分である。
【0087】
好ましくは、有効成分は、免疫調節薬、例えばシクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムスまたはラパマイシンの群から選択される治療有効成分である。
【0088】
好ましくは、有効成分は、ステロイド系抗炎症薬、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロベタゾールまたはベタメタゾンの群から選択される治療有効成分である。
【0089】
好ましくは、有効成分は、非ステロイド性抗炎症薬、例えばアスピリン、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェンまたは選択的COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、バルデコキシブ、エトリコキシブまたはロフェコキシブの群から選択される治療有効成分である。
【0090】
好ましくは、有効成分は、抗癌剤、例えばベバシズマブ、タモキシフェンまたはインターロイキン−2の群から選択される治療有効成分である。
【0091】
好ましくは、有効成分は、抗ウイルス剤、例えばアシクロビルまたはオセルタミビルの群から選択される治療有効成分である。
【0092】
好ましくは、有効成分は、抗細菌剤、例えばアモキシシリンの群から選択される治療有効成分である。
【0093】
好ましくは、有効成分は、抗糖尿病薬、例えばインスリン、グルカゴン様ペプチド−1、およびエキセナチドの群から選択される治療有効成分である。
【0094】
好ましくは、有効成分は、ワクチンの群から選択される治療有効成分である。
【0095】
好ましくは、有効成分は、眼科用薬、例えばトリアムシノロンおよびベバシズマブの群から選択される治療有効成分である。
【0096】
好ましくは、有効成分は、アポモルヒネ、リバスチグミン、プラミペキソール、ピオグリタゾン、メマンチンおよびサフィナミドなど、神経変性疾患に対して有効な治療有効成分である。
【0097】
好ましくは、有効成分は、限定はされないが、整形外科、特に椎間板、または軟骨、または骨の疾患の予防または治療に利用するのに非常に好適な増殖因子を含む生物学的製剤の群から選択される治療有効成分である。このような増殖因子の例としては、限定はされないが、形質転換増殖因子3、線維芽細胞増殖因子18、骨形成タンパク質1、骨形態形成タンパク質2、骨形態形成タンパク質6、骨形態形成タンパク質7、インターロイキン−1受容体拮抗薬が挙げられる。
【0098】
好ましくは、有効成分は、小児および成人の両方の成長障害、十分な筋肉組織の維持、および老化防止用途に適用され得る、ヒト成長ホルモンおよびそのバイオシミラー(biosimilar)誘導体の種類に属する。
【0099】
好ましくは、有効成分は、内耳およびその結合組織の炎症または微生物感染(鼓膜内疾患)に対して有効な治療有効成分である。
【0100】
好ましくは、有効成分は、各種の糖尿病に対して有効な治療有効成分、例えばインスリンおよびグルカゴン様ペプチド−1、およびそれらの誘導体、例えばエキセンジン−4およびリラグルチドである。
【0101】
水溶性の有効成分の場合、薬剤は、好ましくは、20℃および大気圧(1バール)で測定される少なくとも20μg/ml、例えば少なくとも100μg/ml、例えば少なくとも500μg/ml、例えば少なくとも1,000μg/ml、例えば少なくとも5,000μg/mlの水への溶解度を有する。
【0102】
水溶性有効成分の例としては、(5,000Daまでの)低分子、(10,000Daまでの)中程度のサイズの分子だけでなく、タンパク質などの(少なくとも10,000Daの)高分子も挙げられる。これらの水溶性の活性薬剤は、化学的に合成され得るが、限定はされないが、(組み換え)タンパク質およびペプチド(例えば、インスリン、エリスロポエチン、エキセナチド、グルカゴン様ペプチド−1、形態形成タンパク質(例えば、骨形態形成タンパク質、形質転換増殖因子、線維芽細胞増殖因子、腫瘍壊死因子)、受容体拮抗薬(例えば、インターロイキン−1受容体拮抗薬)、抗癌タンパク質(例えば、ネオカルジノスタチン、L−アスパラギナーゼ、インターロイキン−2、ベバシズマブおよび他の抗VEGF薬)、予防用ワクチン、治療用ワクチン、遺伝物質(例えば、核酸配列、ポリヌクレオチド、(アンチセンス)オリゴヌクレオチド、プラスミド、DNA、RNA、siRNA、マイクロRNA)、アプタマー、酵素、抗原、抗体、抗体フラグメント、ウイルス、ウイルスベースの物質、細胞、細胞部分構造など)を含む生物学的製剤であってもよい。
【0103】
したがって、本発明は、有効成分が、水溶性薬剤、すなわち、本明細書に記載される方法を用いて測定した際に少なくとも20μg/mlの水への溶解度を有する薬剤の群から選択される治療有効成分である、本発明に係る組成物にも関する。
【0104】
本発明は、上述される医薬品有効成分のいずれかを収容したナノ粒子および/または微粒子(リポソームおよびミクロスフェアなど)をさらに含む組成物にも関する。
【0105】
医薬品有効成分としては、限定はされないが、栄養素、薬剤(低分子体)、タンパク質およびペプチド、ワクチン、遺伝物質(ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、プラスミド、DNAおよびRNAなど)、診断剤、造影剤、酵素、核酸配列、抗原、抗体、抗体フラグメント、ウイルス、ウイルスベースの物質、細胞、細胞部分構造、増殖因子、抗生物質、抗炎症性化合物、免疫調節剤、抗血栓性化合物、跛行治療薬、抗不整脈薬、アテローム性動脈硬化症治療薬、抗ヒスタミン薬、抗癌剤、血管治療薬、眼科用薬、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、神経伝達物質、神経ホルモン、酵素、シグナル伝達分子、向精神薬、合成薬、半合成薬、天然薬およびこれらに由来する物質または上記の組合せが挙げられる。
【0106】
医薬品有効成分(API)は、目的の用途に応じてあらゆる種類の活性を示し得る。活性薬剤は、生物学的応答を刺激、遮断または抑制することが可能であり得る。
【0107】
医薬品有効成分は、ヒトおよび動物の多くの異なる疾患および病態において持続送達に使用され得る。
【0108】
さらに、デポー形成ポリマーは、その機能を完了した後、完全に吸収される。これは、代謝活性の少ない椎間板の領域への適用において特に重要である。
【0109】
さらに別の実施形態において、医薬品有効成分は、感染症を回避、防御、抑制するかまたはなくすための薬剤である。
【0110】
医薬品有効成分は、組成物またはエマルションの総重量に対して0.01〜15重量%の量でポリマー組成物またはエマルション中に存在し得る。好ましくは、医薬品有効成分は、0.02〜10重量%の量で、より好ましくは0.05〜8重量%の量で存在する。
【0111】
本発明は、治療、手術またはインビボ診断に使用するための薬剤として使用するための組成物にも関する。
【0112】
本発明は、注入後に動物またはヒト身体内に軟物質を形成するための、本発明に係る組成物または本発明に係る医薬組成物の使用にも関する。
【0113】
本発明は、注入後に動物またはヒト身体内にデポーを形成するための、本発明に係る組成物または本発明に係る医薬組成物の使用にも関する。
【0114】
本発明は、医療機器としての、本発明に係る組成物または本発明に係る医薬組成物の使用にも関する。
【0115】
本発明は、医薬組成物を調製するための方法であって、成分a)、b)、cおよび医薬品有効成分を混合する工程を含む方法にも関する。
【0116】
組織工学
本発明に係る組成物を含む組織工学デバイスの用途としては、限定はされないが、神経成長または修復、軟骨成長または修復、骨成長または修復、筋肉成長または修復、皮膚成長または修復、分泌腺修復、眼修復が挙げられる。軟物質は、そのまままたはより大きいインプラント、足場もしくは構造の一部として使用され得ることが強調されるべきである。
【0117】
本発明に係る組成物はまた、矯正および再建手術の待機中または非待機中、損傷組織の癒着および瘢痕組織形成を防ぐために、重大な外傷の場合の一時的な空隙充填剤として使用され得る。空隙充填は、本発明に係る組成物を注入することによって容易に実施され得る。本発明に係る前記組成物を空隙充填剤として使用することの他の利益としては、限定はされないが、外部からの汚染の予防、感染予防、周囲組織壊死または変性の予防、特定の組織形成の誘導(骨、軟骨、筋肉、神経、皮膚など)、単独または他の公知の足場もしくは構造との組合せによる周囲組織の構造的完全性の維持の補助、特定の天然または外部分子の捕捉が挙げられる。
【0118】
本発明に係る組成物はまた、生体吸収性皮膚充填剤として使用され得る。
【0119】
本発明が、例示目的で詳細に説明されてきたが、このような詳細は、この目的のためのものに過ぎず、特許請求の範囲に規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに当業者によって変更形態がなされ得ることが理解される。
【0120】
本発明は、本明細書に記載される特徴の全ての可能な組合せに関し、特許請求の範囲に存在する特徴の組合せが特に好ましいことがさらに留意される。
【0121】
「含む」という用語は、他の要素の存在を除外しないことがさらに留意される。しかしながら、特定の構成要素を含む生成物についての説明は、これらの構成要素からなる生成物も開示することも理解されるべきである。同様に、特定の工程を含む方法についての説明は、これらの工程からなる方法も開示することも理解されるべきである。
【0122】
以下では、本発明が以下の実施例によって説明されるが、これらに限定されない。