特許第6486568号(P6486568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6486568
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】無線遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20190311BHJP
   H04W 4/33 20180101ALI20190311BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   H04M11/00 301
   H04W4/33
   B66B5/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-540169(P2018-540169)
(86)(22)【出願日】2018年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2018017203
【審査請求日】2018年8月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】松枝 豊
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−141724(JP,A)
【文献】 特開2018−14027(JP,A)
【文献】 特開2012−175575(JP,A)
【文献】 特開2013−255173(JP,A)
【文献】 特開2000−330815(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/042858(WO,A1)
【文献】 特開平8−194879(JP,A)
【文献】 特開2017−013936(JP,A)
【文献】 再公表特許第2016/157628(JP,A1)
【文献】 特開2016−72647(JP,A)
【文献】 特表2018−504834(JP,A)
【文献】 再公表特許第2014/054595(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2012/104939(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M11/00
B66B5/00
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターに接続されて前記エレベーターの運行状態を監視するエレベーター監視装置と、
前記エレベーター監視装置に接続され、LTE回線網の中の1のアクセスポイントに常時接続され、常時接続しているアクセスポイント以外のアクセスポイントからの通信を受信できないLTE端末と、
前記LTE回線網の前記1のアクセスポイントに接続されて前記エレベーター監視装置との間でデータの授受を行う1の監視センターと、を含み、
前記LTE回線網を介して前記エレベーターの遠隔監視を行う無線遠隔監視システムであって、
前記エレベーター監視装置は、前記1の監視センターとの間の接続が確立できない場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行い、
前記1の監視センターは、前記エレベーター監視装置との間の接続が確立できない場合に、SMSで常時接続先切換え指令のショートメールを前記LTE端末に発信し、
前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が前記ショートメールを受信した場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから前記他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行うこと、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線遠隔監視システムであって、
前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末の常時接続先を前記他のアクセスポイントに切換えた場合には、前記他のアクセスポイントとの常時接続を所定期間だけ保持すること、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線遠隔監視システムであって、
前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末の常時接続先を前記他のアクセスポイントに切換えた後、所定のインターバルで前記LTE端末と前記1のアクセスポイントとの間の接続状態を確認し、前記1のアクセスポイントとの間の接続が確立できた場合には、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントに戻すこと、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線遠隔監視システムにおいて、
前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が所定回数だけ前記1の監視センターとの間の接続の確立に失敗した場合、前記LTE端末の常時接続先を切換えること、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線遠隔監視システムであって、
前記エレベーター監視装置は、前記エレベーターのかごの中に乗客が閉じ込められた状態で、前記LTE端末が前記1の監視センターとの間の接続の確立に失敗した場合、前記LTE端末の常時接続先を切換えること、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線遠隔監視システムであって、
前記エレベーター監視装置は、地震が発生した際には、前記LTE端末の常時接続先を切換えずに、前記1のアクセスポイントおよび前記他のアクセスポイントと異なる第3アクセスポイントを介して地震時のエレベーター状態信号を地震時データ受信サーバに送信すること、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項7】
第1国に設置されたエレベーターに接続されて前記エレベーターの運行状態を監視するエレベーター監視装置と、
前記エレベーター監視装置に接続され、LTE回線網の中の1のアクセスポイントに常時接続され、常時接続しているアクセスポイント以外のアクセスポイントからの通信を受信できないLTE端末と、
前記第1国に設置され、前記LTE回線網の前記1のアクセスポイントに接続されて前記エレベーター監視装置との間でデータの授受を行う1の監視センターと、を含み、
前記LTE回線網を介して前記エレベーターの遠隔監視を行う無線遠隔監視システムであって、
前記エレベーター監視装置は、前記1の監視センターとの間の接続が確立できない場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから、前記第1国と異なる第2国に設置された他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記第2国の前記他の監視センターとの間でデータの授受を行い、
前記1の監視センターは、前記エレベーター監視装置との間の接続が確立できない場合に、SMSで常時接続先切換え指令のショートメールを前記LTE端末に発信し、
前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が前記ショートメールを受信した場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから前記他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行うこと、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【請求項8】
請求項に記載の無線遠隔監視システムであって、
前記他の監視センターは、前記第2国の電話通信網を介して前記LTE回線網に接続されていること、
を特徴とする無線遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LTE回線網を用いたエレベーターの無線遠隔監視システムの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの遠隔監視システムは、無線通信によってエレベーター監視装置と監視センターとの間のデータ授受を行うものが用いられている。無線通信回線としてはLTE回線と3G回線とを併用して用い、電波強度或いは基地局障害等により、LTE回線の接続が確立できない場合にはLTE回線を3G回線に切換えてデータの授受を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−208296号公報
【特許文献2】特許第6153902号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LTE回線網を通じて監視センターとエレベーター監視装置との間の通信を行う場合、エレベーター監視装置側のLTE端末は1つのアクセスポイントに常時接続されるので、LTE端末と1つのアクセスポイントとの間で接続障害が発生すると、LTE端末と監視センターとの間の通信を行うことができなくなってしまい、エレベーターの遠隔監視を行うことができなくなってしまう。
【0005】
この場合、複数のアクセスポイントを用いてLTE端末と監視センターとの通信のバックアップを行うことが考えられる。しかし、LTE端末は、常時接続しているアクセスポイント以外のアクセスポイントからの信号を受信できないので、他のアクセスポイントを用いて通信のバックアップを行うことが難しかった。
【0006】
また、エレベーター監視装置に複数のLTE端末を接続し、監視センターとの間の通信回線を二重化して通信のバックアップを行うことが考えられるが、システムが複雑になってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、LTE回線網を用いた遠隔監視システムにおいて、LTE回線に異常が発生した場合に、簡便な方法で遠隔監視のバックアップを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線遠隔監視システムは、エレベーターに接続されて前記エレベーターの運行状態を監視するエレベーター監視装置と、前記エレベーター監視装置に接続され、LTE回線網の中の1のアクセスポイントに常時接続され、常時接続しているアクセスポイント以外のアクセスポイントからの通信を受信できないLTE端末と、前記LTE回線網の前記1のアクセスポイントに接続されて前記エレベーター監視装置との間でデータの授受を行う1の監視センターと、を含み、前記LTE回線網を介して前記エレベーターの遠隔監視を行う無線遠隔監視システムであって、前記エレベーター監視装置は、前記1の監視センターとの間の接続が確立できない場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行い、前記1の監視センターは、前記エレベーター監視装置との間の接続が確立できない場合に、SMSで常時接続先切換え指令のショートメールを前記LTE端末に発信し、前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が前記ショートメールを受信した場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから前記他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行うこと、を特徴とする。
【0009】
これにより、LTE端末と常時接続先のアクセスポイントとの間の接続障害の発生によりエレベーター監視装置と1の監視センターとの間のデータ授受ができない場合でも、常時接続先のアクセスポイントを切換えることにより、エレベーター監視装置と他の監視センターとの間でデータ授受が可能となり、他の監視センターによりエレベーターの遠隔監視をバックアップすることができる。
【0010】
本発明の無線遠隔遠視システムにおいて、前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末の常時接続先を前記他のアクセスポイントに切換えた場合には、前記他のアクセスポイントとの常時接続を所定期間だけ保持すること、としてもよい。
【0011】
常時接続先のアクセスポイントを切換えたら所定期間その状態を保持することにより、他の監視センターからエレベーター監視装置へのアクセスを確保し、遠隔監視のバックアップ状態が解除されることを抑制できる。
【0012】
本発明の無線遠隔遠視システムにおいて、前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末の常時接続先を前記他のアクセスポイントに切換えた後、所定のインターバルで前記LTE端末と前記1のアクセスポイントとの間の接続状態を確認し、前記1のアクセスポイントとの間の接続が確立できた場合には、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントに戻すこと、としてもよい。
【0013】
このように、通常の監視センターからの遠隔監視に戻すことにより、他の監視センターの遠隔監視の負荷を通常状態に下げることができる。
【0014】
本発明の無線遠隔監視システムにおいて、前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が所定回数だけ前記1の監視センターとの間の接続の確立に失敗した場合、前記LTE端末の常時接続先を切換えること、としてもよい。
【0015】
これにより、煩雑に常時接続先のアクセスポイントの切換えが発生することを抑制できる。
【0016】
本発明の無線遠隔監視システムにおいて、前記エレベーター監視装置は、前記エレベーターのかごの中に乗客が閉じ込められた状態で、前記LTE端末が前記1の監視センターとの間の接続の確立に失敗した場合、前記LTE端末の常時接続先を切換えること、としてもよい。
【0017】
これにより、閉じ込めの発生とLTE端末と常時接続先のアクセスポイントとの間の接続障害の発生とが重なった場合に、エレベーター監視装置と監視センターとの間のデータの授受を短時間で回復させることができる。
【0018】
本発明の無線遠隔監視システムにおいて、前記エレベーター監視装置は、地震が発生した際には、前記LTE端末の常時接続先を切換えずに、前記1のアクセスポイントおよび前記他のアクセスポイントと異なる第3アクセスポイントを介して地震時のエレベーター状態信号を地震時データ受信サーバに送信すること、としてもよい。
【0019】
地震発生の場合には多くのLTE端末とアクセスポイントとの間の接続障害が発生することが想定される。この場合、多くのLTE端末のアクセスポイントを一度に切換えてしまうと他の監視センターの監視能力を超えてしまう場合がある。このため、地震時にはアクセスポイントの切換を行わずに第3のアクセスポイントを介してデータを地震時データ受信サーバに送信し、無線遠隔監視システム全体の機能が低下することを抑制できる。
【0020】
本発明の無線遠隔監視システムにおいて、前記1の監視センターは、前記エレベーター監視装置との間の接続が確立できない場合に、SMSで常時接続先切換え指令のショートメールを前記LTE端末に発信し、前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が前記ショートメールを受信した場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから前記他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行うこと、としてもよい。
【0021】
通常、LTE端末の常時接続先の切換えは、エレベーター監視装置が行い、監視センターから直接切換えることができないが、これにより、監視センターからアクセスポイントの切換えを行うことが可能となる。
【0022】
本発明の無線遠隔監視システムは、第1国に設置されたエレベーターに接続されて前記エレベーターの運行状態を監視するエレベーター監視装置と、前記エレベーター監視装置に接続され、LTE回線網の中の1のアクセスポイントに常時接続され、常時接続しているアクセスポイント以外のアクセスポイントからの通信を受信できないLTE端末と、前記第1国に設置され、前記LTE回線網の前記1のアクセスポイントに接続されて前記エレベーター監視装置との間でデータの授受を行う1の監視センターと、を含み、前記LTE回線網を介して前記エレベーターの遠隔監視を行う無線遠隔監視システムであって、前記エレベーター監視装置は、前記1の監視センターとの間の接続が確立できない場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから、前記第1国と異なる第2国に設置された他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記第2国の前記他の監視センターとの間でデータの授受を行い、前記1の監視センターは、前記エレベーター監視装置との間の接続が確立できない場合に、SMSで常時接続先切換え指令のショートメールを前記LTE端末に発信し、前記エレベーター監視装置は、前記LTE端末が前記ショートメールを受信した場合に、前記LTE端末の常時接続先を前記1のアクセスポイントから前記他の監視センターが接続されている他のアクセスポイントに切換えて、前記他の監視センターとの間でデータの授受を行うこと、を特徴とする。また、本発明の無線遠隔監視システムにおいて、前記他の監視センターは、前記第2国の電話通信網を介して前記LTE回線網に接続されていること、としてもよい。
【0023】
これにより、他の国に設置された監視センターでエレベーターの遠隔監視のバックアップを行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、LTE回線網を用いた遠隔監視システムにおいて、LTE回線に異常が発生した場合に、簡便な方法で遠隔監視のバックアップを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の無線遠隔監視システムの構成を示す系統図である。
図2】実施形態の無線遠隔監視システムの動作を示すフローチャートである。
図3】アクセスポイントの切換え後の無線遠隔監視システムを示す系統図である。
図4】実施形態の無線遠隔監視システムの他の動作を示すフローチャートである。
図5】他の動作によるアクセスポイントの切換え後の無線遠隔遠視システムを示す系統図である。
図6】他の実施形態の無線遠隔監視システムの構成を示す系統図である。
図7】アクセスポイント切換え後の他の無線遠隔監視システムを示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<無線遠隔監視システムの構成>
以下、図面を参照しながら実施形態の無線遠隔監視システム100について説明する。図1に示すように、第1、第2エレベーター11,21の遠隔監視を行う無線遠隔監視システム100は、第1、第2エレベーター監視装置12,22(以下、MOP1,MOP2という)と、第1、第2LTE端末13,23(以下、LTE1、LTE2という)と、LTE回線網30と、第1、第2監視センター41、42と、第1、第2地震時データ受信サーバ43,44とを含んでいる。
【0027】
第1地域、第2地域に設置されている第1、第2監視センター41,42は、それぞれ、第1地域、第2地域に設置されている第1、第2エレベーター11,21の監視を行う。なお、第1、第2監視センター41,42は、それぞれ複数台のエレベーター11,21を監視してもよい。ここで、第1地域、第2地域とは、例えば、東日本と西日本とであってもよい。この場合、東日本に設置されているエレベーターの遠隔監視は東日本に設置されている監視センターが行い、西日本に設置されているエレベーターの遠隔監視は西日本に設置されている監視センターが行う。第1、第2監視センター41,42は、第1、第2エレベーター11,21の各データを格納するサーバと操作盤などで構成されてもよい。
【0028】
MOP1,NOP2は、それぞれ第1、第2エレベーター11、21に接続されて第1、第2エレベーター11,21の各制御装置から第1、第2エレベーター11,21の運行状態を示すデータ、或いは故障信号等を取得し、格納する。MOP1,MOP2には、それぞれLTE1、LTE2が接続されている。MOP1,MOP2は内部に情報処理を行うCPUとメモリとを含むコンピュータで構成してもよい。
【0029】
LTE回線網30は、APN1〜APN4の4つのアクセスポイントを含んでいる。LTE1は1のアクセスポイントであるAPN1に、LTE2は他のアクセスポイントであるAPN2に常時接続されている。第1監視センター41、第2監視センター42は、それぞれ、APN1,APN2に接続されている。また、第1、第2監視センター41,42には、それぞれ、LTE1、LTE2にショートメールを発信するショートメールシステム(以下、SMSという)が取付けられている。
【0030】
第1地域、第2地域に設置されている第1地震時データ受信サーバ43、第2地震時データ受信サーバ44は、それぞれ、APN3、APN4に接続されている。
【0031】
LTE回線の接続状態が正常の場合には、図1の一点鎖線91に示すように、MOP1は、第1エレベーター11の運行状態を示すデータ或いは故障信号等をエレベーター11の制御装置から取得し、格納すると共に、そのデータをLTE1、APN1を介して第1監視センター41に送信する。また、第1監視センター41は、ポーリングによってAPN1、LTE1を介してMOP1にアクセスし、MOP1から第1エレベーター11の運転データ等を取得する。また、第1監視センター41は、APN1、LTE1を介して第1エレベーター11のかごの中のインターホンに接続し、かごの中の乗客と通話する。このように、MOP1と第1監視センター41とは、APN1を介してデータの授受を行う。
【0032】
同様に、MOP2は、図1の一点鎖線92に示すようにAPN2を介して第2監視センター42とデータの授受を行う。
【0033】
地震が発生した場合には、MOP1は、図1の二点鎖線93に示すようにLTE1をAPN4に接続し、図1の破線94に示すように第2地震時データ受信サーバ44に地震発生時の運転データや故障信号などのエレベーター状態信号を出力する。同様に、MOP2は、図1の二点鎖線95に示すようにLTE2をAPN3に接続し、図1の破線96に示すように第1地震時データ受信サーバ43に地震発生時の運転データや故障信号などのエレベーター状態信号を出力する。このように、MOP1,MOP2は地震発生時には、第1、第2エレベーター11,21が設置されている地域と異なる地域に設置されている地震時データ受信サーバにデータを送信する。なお、APN3,APN4は第3アクセスポイントに相当する。
【0034】
<MOP1の動作>
次に、図2図3を参照しながらLTE1とAPN1との間の接続障害が発生した場合の無線遠隔監視システム100の動作について説明する。なお、以下の説明では、MOP1の動作について説明する。なお、MOP2の動作はMOP1の動作と同様である。
【0035】
図2のステップS101に示すように、MOP1は起動時にLTE1の常時接続先をAPN1とする。MOP1は,起動時にLTE1の常時接続先がAPN1となっていない場合には、LTE1の常時接続先をAPN1としてLTE1を再起動してLTEの常時接続先をLTE1とする。
【0036】
図2のステップS102に示すように、MOP1は、LTE1とAPN1との接続が確立しているかどうかを判断する。APN1との接続が確立している場合には接続障害が発生していないと判断して、図2のステップS103に進み、LTE1とAPN1との常時接続を保持し、ステップS104に示すように、1の監視センターである第1監視センター41との間でデータの授受を行う。
【0037】
一方、MOP1は、図2のステップS102で、LTE1とAPN1との接続が確立できない場合には通信障害が発生していると判断して、図2のステップS105に進む。ステップS105において、MOP1は、例えば、第1エレベーター11のインターホンボタンが押し続けられている、或いは、戸開ボタンが押し続けられているようにかごの中に乗客が閉じ込められている状態が発生していると判断した場合には、図2のステップS108に進んでLTE1の常時接続先をAPN1からAPN2に切換える。これにより、図3に示すように、LTE1はAPN2と常時接続される。MOP1は図2のステップS109に進んで、図3の一点鎖線91aに示すようにAPN2に接続されている他の監視センターである第2監視センター42との間でデータの授受を行う。
【0038】
これにより、かごの中の乗客は、インターホンを通じて第2監視センター42の監視員と通話することができるようになる。このように、閉じ込めが発生とAPN1と接続障害の発生とが重なった場合に、MOP1と監視センターとの間のデータの授受を短時間で回復させることができる。
【0039】
また、MOP1は、図2のステップS105でNOと判断した場合には、図2のステップS106に進んで、所定回数だけ接続回復動作をしたかどうかを確認する。そして、図2のステップS106でNOと判断した場合には、図2のステップS107に進んで、LTE1にAPN1との接続動作を行わせ、図2のステップS102に戻ってAPN1との接続が確立したかどうか確認する。ここで、所定回数は、自由に設定できるが、例えば、3回、5回、10回等に設定してもよい。
【0040】
MOP1は、接続回復動作でAPN1との接続が確立された場合には、図2のステップS102でYESと判断して図2のステップS103、S104に進み、APN1を介して第1監視センター41との間でデータの授受を行う。
【0041】
一方、所定回数だけ接続回復動作を行ってもAPN1との接続を確立できず、接続障害の状態が続く場合には、MOP1は、図2のステップS102、S106でYESと判断して図2のステップS108に進んでLTE1の常時接続先を図3に示すようにAPN1からAPN2に切換え、図2のステップS109に進んで図3の一点鎖線91aに示すように、APN2に接続されている他の監視センターである第2監視センター42との間でデータの授受を行う。
【0042】
MOP1は、図2のステップS109で第2監視センター42との間でデータの授受を行ったら、図2のステップS110に示すように、所定の期間が経過するまで、LTE1とAPN2との常時接続状態を保持する。ここで、所定の期間は、例えば、30分、或いは、1時間などに設定することができる。
【0043】
このように、所定回数だけ接続回復動作を行っても接続障害が継続する場合に常時接続先のアクセスポイントの切換えを行い、所定期間だけ切換え状態を保持するので、煩雑に常時接続先のアクセスポイントの切換えが発生することを抑制できる。また、アクセスポイントをAPN2に切換えた際の第2監視センター42からMOP1へのアクセスを確実に行うことができる。
【0044】
MOP1は、所定期間が経過し図2のステップS110でYESと判断したら、図2のステップS111に進んでLTE1とAPN1との接続動作を実行する。そして、図2のステップS112でLTE1とAPN1との接続が確立したら、図2のステップS113に進み、LTE1の常時接続先をAPN2からAPN1に戻し、図2のステップS103に進んでLTE1をAPN1と常時接続する。すると、無線遠隔監視システム100は、図1に示す系統構成にもどる。そして、MOP1は、図2のステップS104に進んで第1監視センター41との間でデータの授受を行う。
【0045】
一方、MOP1は、図2のステップS112でLTE1とAPN1との接続が確立できない場合には、図2のステップS113に進んで、所定のインターバルだけ待機し、所定のインターバルだけ時間が経過したら、図2のステップS111に戻ってLTE1とAPN1との接続動作を実行する。ここで、所定のインターバルは、例えば、10分、或いは30分程度とすることができる。
【0046】
MOP1は、LTE1とAPN1との接続が確立するまで、図2のステップS111からステップS113の動作を繰り返し、LTE1とAPN1との接続が確立したら、図2のステップS113でLTE1の常時接続先をAPN2からAPN1に戻し、図2のステップS103、S104に進んでLTE1をAPN1と常時接続して第1監視センター41との間でデータの授受を行う。
【0047】
このように、MOP1はLTE1の所定期間経過後にAPN1との接続を確立する動作を所定のインターバルで継続して行い、LTE1とAPN1との接続が確立したら、常時接続先をAPN2からAPN1に戻して第1監視センター41との間でデータの授受を行うので、遠隔監視のバックアップで高くなっていた第2監視センター42の負荷を下げて、通常の状態に戻すことができる。
【0048】
<第1、第2監視センターの動作>
次に図4図5を参照しながら第1監視センター41の動作について説明する。なお、第2監視センター42の動作は、第1監視センター41の動作と同様である。
【0049】
第1監視センター41は、図4のステップS201に示すようにMOP1にポーリング信号を発信し、MOP1に第1エレベーター11の運転データ等を発信させる。従って、図5に示すように、第1監視センター41とAPN1との間の接続が不良となった場合、MOP1は第1監視センター41からポーリング信号を受信せず、データの発信を行わないので、第1監視センター41との間に接続障害が発生していること検知できない場合がある。この場合、MOP1は常時接続先の切換えを行わない。一方、第1監視センター41は、直接、LTE1にアクセスしてLTE1の常時接続先を切換えることはできない。このため、MOP1と第1監視センター41との間のデータ授受ができない状態が継続してしまう場合がある。
【0050】
そこで、第1監視センター41は、図4のステップS201のMOP1へのポーリング動作の際にポーリング信号の送受信を行えない場合には、図4のステップS202でMOP1との接続が確立していないと判断して図4のステップS204に進んで所定回数だけポーリング動作に失敗したかどうかを判断する。そして、所定の回数だけポーリング動作に失敗した場合には、図4のステップS204でYESと判断して図4のステップS205に進み、図5に示すように、LTE回線網において通信のバックアップを行うには、SMS45からLTE1に常時接続先切換え指令のショートメールを送信する。LTE1は、このショートメールを受信したら所定の信号をMOP1に出力する。MOP1は、この所定の信号が入力されたら、図2のステップS108、S109を実行し、図5に示すように常時接続先のアクセスポイントをAPN1からAPN2に切換える。この常時接続先のアクセスポイントの切換えには1〜2分程度の時間がかかる。
【0051】
第1監視センター41がSMSでLTE1にショートメールを発信した2〜3分後で常時接続先のアクセスポイントの切換えが終了した頃に、第2監視センター42は、図2のステップS206に示すように、MOP1へのポーリング動作を行い、図2のステップS207、S208、図5の一点鎖線91aに示すように、MOP1から第1エレベーター11の運転データ等を取得する。第2監視センター42は、図4のステップS207、S208に示すように、所定期間だけMOP1との間のデータ授受を行った後、図4のステップS209に進んでMOP1との間のデータ授受を停止し、図4のステップ201に戻って第1監視センター41からMOP1へのポーリング動作を行う。そして、図4のステップS202で、MOP1との接続が確立したら図4のステップS203に進み、第1監視センター41とMOP1との間でデータの授受を行う。
【0052】
以上のような動作により、第1監視センター41からLTE1の常時接続先のアクセスポイントを切換えることができるので、第1監視センター41とAPN1との間で接続障害が発生した場合でも、遠隔監視のバックアップを行うことができる。
【0053】
<地震発生の場合の動作>
地震発生の場合には多くのLTE1とAPN1との間の接続障害が発生することが想定される。この場合、多くのLTE1のアクセスポイントをAPN1からAPN2一度に切換えてしまうと第2監視センター42の監視能力を超えてしまう場合がある。そこで、MOP1は、地震が発生によりLTE1とAPN1との間に接続障害が発生した場合には、LTE1の常時接続先をAPN1からAPN2に切換えずにAPN4を介して地震時のエレベーター状態信号を第2地震時データ受信サーバ44に送信する。これにより、無線遠隔監視システム100全体の機能が低下することを抑制する。地震時のMOP2の動作は、MOP1の動作と同様である。
【0054】
<他の実施形態の無線遠隔監視システム>
図6図7を参照しながら、他の実施形態の無線遠隔監視システム200について説明する。先に図1を参照して説明した無線遠隔監視システム100と同様の部分には、同様の符号を付して説明は省略する。
【0055】
無線遠隔監視システム200は、図6に示すように、第1エレベーター11、第1監視センター41が第1国に設置されており、第2エレベーター21、第2監視センター42が第1国と異なる第2国に設置されているものである。通常は、第1国に設置されている第1エレベーター11の遠隔監視は第1国に設置されている第1監視センター41が行い、第2国に設置とされている第2エレベーター21の遠隔監視は、第2国の第2監視センター42が行っている。
【0056】
図7に示すようにLTE1とAPN1との間の接続が確立できいな場合には、MOP1は,LTE1の常時接続先のアクセスポイントを第2監視センター42が接続されているAPN2に切換える。そして、第1国に設置されている第1エレベーター11の遠隔監視を第2国に設置されている第2監視センター42によって実行する。
【0057】
これにより、より広範囲に設置されている多くのエレベーターの遠隔監視のバックアップを行うことができる。
【0058】
なお、第2監視センター42は、第2国の電話通信網を介してLTE回線網30に接続されているように構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11,21 エレベーター、12,22 エレベーター監視装置(MOP1,MOP2)、13,23 LTE端末(LTE1,LTE2)、30 LTE回線網、41,42 監視センター、43,44 地震時データ受信サーバ、45,45 SMS 100,200 無線遠隔監視システム。
【要約】
エレベーター監視装置(12)と、LTE回線網(30)のAPN1に常時接続されるLTE端末(13)と、APN1に接続されてエレベーター監視装置(12)との間でデータの授受を行う第1監視センター(41)と、を含み、LTE回線網(30)を介して第1エレベーター(11)の遠隔監視を行う無線遠隔監視システム(100)であって、エレベーター監視装置(12)は、第1監視センター(41)との間の接続が確立できない場合に、LTE端末(13)の常時接続先をAPN1から第2監視センター(42)が接続されているAPN2に切換えて、第2監視センター(42)との間でデータの授受を行う。これにより、LTE回線に異常が発生した場合に簡便な方法で遠隔監視のバックアップができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7