特許第6486571号(P6486571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6486571
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】電子部品用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20190311BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190311BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20190311BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20190311BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20190311BHJP
   C09J 163/10 20060101ALI20190311BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J11/06
   C09J11/08
   C09J11/04
   C08G59/18
   C09J163/10
   G02F1/1339 505
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-548156(P2018-548156)
(86)(22)【出願日】2018年5月25日
(86)【国際出願番号】JP2018020226
【審査請求日】2018年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-111973(P2017-111973)
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−116112(JP,A)
【文献】 特開2012−122045(JP,A)
【文献】 特開2007−199135(JP,A)
【文献】 特表2010−527339(JP,A)
【文献】 特開2001−233842(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106569388(CN,A)
【文献】 特開2005−154494(JP,A)
【文献】 特開2014−141583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
G02F 1/133−1/1334、1/1339−1/1341、
1/1347
C08G 59/00−59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にオキシムエステル構造及びチオキサントン構造を併せ持つ化合物と、(メタ)アクリル化合物と、を含有する電子部品用接着剤。
【請求項2】
ポキシ化合物を含有する請求項に記載の電子部品用接着剤。
【請求項3】
有機フィラーを含有する請求項1又は2に記載の電子部品用接着剤。
【請求項4】
前記有機フィラーが、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される少なくとも1種の有機フィラーである請求項に記載の電子部品用接着剤。
【請求項5】
無機フィラーを含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の電子部品用接着剤。
【請求項6】
シランカップリング剤を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の電子部品用接着剤。
【請求項7】
熱硬化剤を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の電子部品用接着剤。
【請求項8】
前記熱硬化剤が有機酸ヒドラジド化合物である請求項に記載の電子部品用接着剤。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電子部品用接着剤を硬化して得られる硬化物で接着された電子部品。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電子部品用接着剤を用いた液晶表示セル用接着剤。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電子部品用接着剤を用いた液晶シール剤。
【請求項12】
請求項10に記載の液晶表示セル用接着剤又は請求項11に記載の液晶シール剤を用いて接着された液晶表示セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、並びにそれを用いた電子部品用接着剤、電子部品、液晶表示セル用接着剤、液晶シール剤、及び液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性組成物は、ディスプレイ用封止剤、太陽電池用封止剤、半導体封止剤等の電子部品用接着剤用途で広く用いられている。ディスプレイ用封止剤としては、例えば、液晶ディスプレイ用シール剤、有機ELディスプレイ用封止剤、タッチパネル用接着剤等を挙げることができる。これらのディスプレイ用封止剤には、優れた硬化性を有しながら、アウトガスが少なく、表示素子にダメージを与えないという特性が要求される。
【0003】
しかし、光硬化性組成物は、光の届かない部分で硬化反応が進行しないため、使用できる部分に制限がある。
【0004】
特に、液晶滴下工法用液晶シール剤(以下、単に「液晶シール剤」ともいう。)においては、液晶表示素子のアレイ基板の配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリクス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部が生じ、シール近傍の表示不良の問題が以前よりも深刻なものとなっている。遮光部の存在によって光による一次硬化が不十分になると、液晶シール剤中に未硬化成分が多量に残存してしまう。この状態で熱による二次硬化工程に進んだ場合、当該未硬化成分の液晶への溶解が熱によって促進され、シール近傍の表示不良を引き起こすことになる。
【0005】
この課題を解決するため、液晶シール剤の熱反応性を改良する様々な検討がなされている。すなわち、遮光部において、光によって十分に硬化していない液晶シール剤を、低温から速やかに反応させ、液晶汚染を抑えようという試みである。例えば、特許文献1及び2では、熱ラジカル重合開始剤を用いる方法が開示されている。また、特許文献3〜5では、硬化促進剤として多価カルボン酸を用いる方法が開示されている。
【0006】
しかし、熱ラジカル重合開始剤に効率よくラジカルを発生させるためには、ある程度分子量の小さいものでなければならないが、低分子化合物は液晶に溶解し易く、反応性には優れるものの、熱ラジカル重合開始剤自身による液晶汚染性が問題となる。また、多価カルボン酸を用いた場合、耐湿信頼性を損なう可能性があり、用途によっては使用できない場合もある。
【0007】
以上述べたように、液晶シール剤の開発は非常に精力的に行われているにも関わらず、優れた遮光部硬化性を有しながら、低液晶汚染性である液晶シール剤は未だ実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−126211号公報
【特許文献2】特開2009−8754号公報
【特許文献3】国際公開第2007/138870号
【特許文献4】特開2008−15155号公報
【特許文献5】特開2009−139922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、紫外光線や可視光線といった光照射によって硬化する光硬化性組成物であって、光に対する感度が高く、低エネルギー光によっても十分硬化する光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分子内にオキシムエステル構造及びチオキサントン構造を併せ持つ化合物が、水素引抜型光開始剤かつ分解型開始剤として非常に優れ、低エネルギーの光照射でも十分な硬化性を有することを見出し、以下の[1]〜[15]に記載の本発明を完成するに至った。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」を意味する。
【0011】
[1] 分子内にオキシムエステル構造及びチオキサントン構造を併せ持つ化合物を含有する光硬化性組成物。
[2] 硬化性化合物を含有する[1]に記載の光硬化性組成物。
[3] 前記硬化性化合物が(メタ)アクリル化合物である[2]に記載の光硬化性組成物。
[4] 前記硬化性化合物が、(メタ)アクリル化合物とエポキシ化合物との混合物である[2]に記載の光硬化性組成物。
[5] 有機フィラーを含有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
[6] 前記有機フィラーが、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される少なくとも1種の有機フィラーである[5]に記載の光硬化性組成物。
[7] 無機フィラーを含有する[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
[8] シランカップリング剤を含有する[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
[9] 熱硬化剤を含有する[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
[10] 前記熱硬化剤が有機酸ヒドラジド化合物である[9]に記載の光硬化性組成物。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を用いた電子部品用接着剤。
[12] [11]に記載の電子部品用接着剤を硬化して得られる硬化物で接着された電子部品。
[13] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を用いた液晶表示セル用接着剤。
[14] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を用いた液晶シール剤。
[15] [13]に記載の液晶表示セル用接着剤又は[14]に記載の液晶シール剤を用いて接着された液晶表示セル。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性組成物は、光が十分に当たらない部分における硬化性も高く、また他の部材へのダメージを考慮した低エネルギーの光照射でも十分な硬化性を有するため、遮光部分を有する電子部品や可視光によって硬化させる必要のある電子部品の製造に用いられる電子部品用封止剤又は電子部品用接着剤、特にディスプレイ用封止剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<光硬化性組成物>
[分子内にオキシムエステル構造及びチオキサントン構造を併せ持つ化合物]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、分子内にオキシムエステル構造及びチオキサントン構造を併せ持つ化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を含有する。この特定化合物は、低エネルギー光に対する感度が非常に高い光重合開始剤として機能する。特定化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
特定化合物が有するオキシムエステル構造は、例えば、下記式(1)で表される構造である。
【0015】
【化1】
【0016】
上記式(1)中、Rは(C1−C8)アルキル基、又は(C1−C8)アルコキシ基を表し、Rは水素原子、(C1−C8)アルキル基、(C2−C8)アルケニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
【0017】
上記式(1)中のRにおける(C1−C8)アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の非置換のものが挙げられ、直鎖状のものが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖状のもの;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の分岐鎖状のもの;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のもの;などが挙げられる。(C1−C8)アルキル基は、3−シクロペンチルプロピル基等のように、鎖状のアルキル基と環状のアルキル基とが結合したものであってもよい。これらの中でも、硬化性化合物や溶剤との相溶性の観点から(C1−C3)アルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられ、メチル基がより好ましい。
【0018】
上記式(1)中のRにおける(C1−C8)アルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状の非置換のものが挙げられ、直鎖状のものが好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の直鎖状のもの;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の分岐鎖状のもの;などが挙げられる。これらの中でも、メトキシ基が好ましい。
【0019】
上記式(1)において、Rとしてはメチル基が好ましい。
【0020】
上記式(1)中のRにおける(C1−C8)アルキル基は、好ましいものを含め、上記Rにおける(C1−C8)アルキル基と同じ意味を表す。
【0021】
上記式(1)中のRにおける(C2−C8)アルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の非置換のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基等が挙げられる。
【0022】
上記式(1)中のRにおけるアリール基及びヘテロアリール基としては、フェニル基、ピリジル基、チエニル基等が挙げられる。アリール基及びヘテロアリール基は、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アセチルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基等の少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい。このような置換基を有するものとしては、例えば、4−ニトロフェニル基が挙げられる。
【0023】
上記式(1)において、Rとしては水素原子又はメチル基が好ましい。
【0024】
上記式(1)中の*は結合位置を表し、下記式(2)で表されるチオキサントン構造との結合位置でもよく、他の結合基を介してチオキサントン構造と結合する場合の、当該結合基との結合位置でもよい。結合基としては、アルキレン基、アルキリデン基、アルキレンオキシド基等が挙げられる。
【0025】
特定化合物が有するチオキサントン構造は、下記式(2)で表される構造である。
【0026】
【化2】
【0027】
上記式(2)中の*は結合位置を表し、上記式(1)で表されるオキシムエステル構造との結合位置でもよく、他の結合基を介してオキシムエステル構造と結合する場合の、当該結合基との結合位置でもよい。結合基としては、アルキレン基、アルキリデン基、アルキレンオキシド基等が挙げられる。
【0028】
上記式(2)で表されるチオキサントン構造は、上記式(1)で表されるオキシムエステル構造以外に、他の置換基を有していてもよい。他の置換基としては、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アセチルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、(C1−C8)アルキル基、(C1−C8)アルコキシ基等が挙げられる。
【0029】
上記式(2)で表されるチオキサントン構造が他の置換基を有する場合、当該置換基は、上記式(1)中のRと結合して環状構造を形成していてもよい。
【0030】
特定化合物の具体的としては、例えば、以下の化合物番号1〜20の化合物が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。化合物番号1〜20の化合物の中では、化合物番号1〜17、20の化合物が好ましく、化合物番号1の化合物がより好ましい。
【0031】
【化3】
【0032】
特定化合物のうち、例えば化合物番号1及び化合物番号20の化合物は、後述する合成例1に記載の方法で合成することができる。
【0033】
特定化合物は、紫外光線や可視光線といった光照射によってラジカルを発生させるものであり、光に対する感度が高く、低エネルギー光によっても十分な反応性を示す。また、良好な熱安定性、低い揮発性、良好な貯蔵安定性、及び良好な溶解性を有し、空気(酸素)の存在下での光重合にも適している。したがって、特定化合物は、ラジカル重合可能な硬化性化合物を重合させる光重合開始剤として有用である。
【0034】
特定化合物の含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常0.001〜10質量%であり、好ましくは0.002〜5.0質量%であり、より好ましくは0.1〜3.0質量%である。特定化合物の含有率が0.001質量%以上であると、光硬化性組成物の光重合が十分に進行する傾向にある。一方、特定化合物の含有率が10質量%以下であると、未反応の化合物が少なくなる。その結果、光硬化性組成物の耐光性及び保存安定性の悪化や、光硬化性組成物を表示素子用封止剤として用いた場合における表示特性への悪影響が抑えられる傾向にある。
【0035】
[光重合開始剤]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、上記の特定化合物以外に、他の光重合開始剤を含有していてもよい。他の光重合開始剤としては、紫外光線や可視光線の照射によってラジカル、酸、塩基等を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されない。
【0036】
他の光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルフィド等が挙げられる。市販品としては、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、396、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM 1173、LUCIRINRTM TPO(以上、BASF社製);セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(以上、精工化学株式会社製);等が挙げられる。なお、本明細書において上付きの「RTM」は登録商標を意味する。
【0037】
これらの中でも、幅広い波長の光吸収を利用し、光硬化性組成物の硬化性を高める観点から、200〜300nmの波長領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度が400以上である光重合開始剤が好ましく、200〜300nmの波長領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度が500以上である光重合開始剤がより好ましく、200〜300nmの波長領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度が1500以上である光重合開始剤がさらに好ましい。200〜300nmの波長領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度が500以上である光重合開始剤としては、例えば、IRGACURERTM 651、184、2959が挙げられる。また、200〜300nmの波長領域における極大吸収波長(λmax)の吸光度が1500以上である光重合開始剤としては、例えば、IRGACURERTM 2959が挙げられる。
【0038】
また、光重合開始剤としては、アウトガス防止の観点から、分子量150〜1000のものが好ましい。同様に、アウトガス防止の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものが好ましく、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は、国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造することができる。
【0039】
本実施形態に係る光硬化性組成物が他の光重合開始剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0040】
[光開始助剤]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、硬化性をさらに高めるため、三級アミン類等の光開始助剤を含有していてもよい。三級アミン類としては、特に限定されないが、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン等が挙げられる。また、一分子内に複数の三級アミン類を多価アルコール等で分岐させた高分子量化合物も適宜使用することができる。
【0041】
本実施形態に係る光硬化性組成物が光開始助剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、0.005〜20質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましい。
【0042】
[硬化性化合物]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、硬化性化合物を含有することが好ましい。硬化性化合物としては、光、熱等によって硬化する化合物であれば特に限定されないが、(メタ)アクリルエステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリル化合物が好ましい。(メタ)アクリル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(メタ)アクリルエステル化合物としては、例えば、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフロフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのエステルジアクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのエステルのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。2官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、二官能フェノール類(カテコール、レゾルシノール等)のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物又は水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る光硬化性組成物を液晶シール剤として用いる場合には、液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレート化合物におけるエポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は特に限定されず、工程適合性の観点から適切に選択される。
【0045】
本実施形態に係る光硬化性組成物は、(メタ)アクリル化合物に加えて、エポキシ化合物(ただし、(メタ)アクリル化合物を除く)を含有することが好ましい。エポキシ化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。2官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、二官能フェノール類(カテコール、レゾルシノール等)のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物又は水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る光硬化性組成物を液晶シール剤として用いる場合には、液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。
【0047】
本実施形態に係る光硬化性組成物が硬化性化合物を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常10〜80質量%であり、好ましくは20〜70質量%である。
また、本実施形態に係る光硬化性組成物がエポキシ化合物を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常5〜50質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。
【0048】
[有機フィラー]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、有機フィラーを含有していてもよい。有機フィラーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
有機フィラーとしては、例えば、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子が挙げられる。シリコーン微粒子としては、KMP−594、KMP−597、KMP−598(以上、信越化学工業株式会社製);トレフィルRTME−5500、9701、EP−2001(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)が好ましい。ウレタン微粒子としては、JB−800T、HB−800BK(以上、根上工業株式会社製)が好ましい。スチレン微粒子としては、ラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(以上、三菱化学株式会社製)が好ましい。スチレンオレフィン微粒子としては、セプトンRTMSEPS2004、SEPS2063(以上、株式会社クラレ製)が好ましい。これらの有機フィラーは、2種以上の材料を用いたコアシェル構造の有機フィラーであってもよい。
【0050】
これらの有機フィラーの中でも、アクリル微粒子及びシリコーン微粒子が好ましい。
【0051】
アクリル微粒子としては、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムが好ましく、コア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものがより好ましい。コア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるアクリル微粒子は、ゼフィアックRTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
【0052】
また、シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体、シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆した複合シリコーンゴム等が挙げられる。これらのシリコーン微粒子のうち、好ましいものとしては、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉末のシリコーンゴム、又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋物粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状がよい。
【0053】
本実施形態に係る光硬化性組成物が有機フィラーを含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常5〜50質量%であり、好ましくは5〜40質量%である。
【0054】
[無機フィラー]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム等の粒子が挙げられ、シリカ、アルミナ、タルク等の粒子が好ましい。
【0056】
無機フィラーの平均粒子径は、2000nm以下が適当であり、好ましくは1000nm以下、より好ましくは300nm以下である。無機フィラーの平均粒子径を2000nm以下とすることで、例えば、本実施形態に係る光硬化性組成物を液晶滴下工法用液晶シール剤として用いて狭ギャップの液晶セルを製造する際に、上下のガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできる傾向にある。また、好ましい下限は10nm程度であり、より好ましくは100nm程度である。粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。
【0057】
本実施形態に係る光硬化性組成物が無機フィラーを含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常5〜50質量%であり、好ましくは5〜40質量%である。無機フィラーの含有量を5質量%以上とすることで、ガラス基板に対する接着強度が向上し、また耐湿信頼性も向上するために、吸湿後の接着強度の低下が抑えられる傾向にある。無機フィラーの含有量を50質量%以下とすることで、例えば、本実施形態に係る光硬化性組成物を液晶滴下工法用液晶シール剤として用いて液晶セルを製造する際に、無機フィラーが潰れやすくなり、うまくできる傾向にある。
【0058】
[シランカップリング剤]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、接着強度や耐湿性の向上を図るため、シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、KBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されているため、市場から容易に入手可能である。
【0060】
本実施形態に係る光硬化性組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、0.05〜3質量%が好適である。
【0061】
[熱硬化剤]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、熱硬化剤を含有していてもよい。熱硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
熱硬化剤は、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであり、例えば、多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げることができる。これらの中でも、有機酸ヒドラジド化合物が好適に用いられる。
【0063】
有機酸ヒドラジド化合物のうち芳香族ヒドラジド化合物としては、例えば、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等が挙げられる。また、有機酸ヒドラジド化合物のうち脂肪族ヒドラジド化合物としては、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0064】
有機酸ヒドラジド化合物の中でも、硬化反応性と潜在性とのバランスから、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、及びトリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートが好ましく、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートがより好ましい。
【0065】
本実施形態に係る光硬化性組成物が熱硬化剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常0.1〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%である。
【0066】
[熱ラジカル重合開始剤]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、硬化速度及び硬化性を向上するため、熱ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。熱ラジカル重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されず、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。
【0068】
有機過酸化物の市販品としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP−30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(以上、化薬アクゾ株式会社製);パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(以上、日油株式会社製);等が挙げられる。
【0069】
また、アゾ化合物の市販品としては、VA−044、086、V−070、VPE−0201、VSP−1001(以上、和光純薬工業株式会社製)等が挙げられる。
【0070】
本実施形態に係る光硬化性組成物が熱ラジカル重合開始剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常0.0001〜10質量%であり、好ましくは0.0005〜5質量%であり、より好ましくは0.001〜3質量%である。
【0071】
[その他の成分]
本実施形態に係る光硬化性組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0072】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、有機酸、イミダゾール等が挙げられる。
有機酸としては、有機カルボン酸、有機リン酸等が挙げられ、有機カルボン酸が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0073】
本実施形態に係る光硬化性組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常0.1〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%である。
【0074】
(ラジカル重合防止剤)
ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等のラジカル重合防止剤が挙げられる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(いずれも株式会社アデカ製)等が挙げられる。これらの中でも、ナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系、ピペリジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)がより好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)がさらに好ましい。
【0075】
本実施形態に係る光硬化性組成物がラジカル重合防止剤を含有する場合、その含有率は、光硬化性組成物の総量中、通常0.0001〜1質量%であり、好ましくは0.001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.01〜0.2質量%である。
【0076】
[光硬化性組成物の粘度]
本実施形態に係る光硬化性組成物の25℃における粘度は、150〜500Pa・sが好ましく、200〜500Pa・sがより好ましい。特に、本実施形態に係る光硬化性組成物を液晶シール剤として用いる場合、光硬化性組成物の25℃における粘度は、250〜400Pa・sが好ましく、280〜320Pa・sがより好ましい。粘度を250Pa・s以上とすることで、液晶の差し込みの発生が抑えられ、セル化が容易になる傾向にある。粘度を400Pa・s以下とすることで、液晶シール剤の塗布が容易になる傾向にある。
【0077】
[光硬化性組成物の調製方法]
本実施形態に係る光硬化性組成物の調製方法の一例としては、次に示す方法が挙げられる。まず、硬化性化合物に、上記特定化合物を加熱溶解する。次いで、室温まで冷却した後、必要に応じて、有機フィラー、無機フィラー、シランカップリング剤、熱硬化剤、熱ラジカル重合開始剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤等を添加する。そして、3本ロール、サンドミル、ボールミル等の公知の混合装置により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより、本実施形態に係る光硬化性組成物を調製することができる。
【0078】
<光硬化性組成物の用途等>
本実施形態に係る光硬化性組成物は、電子部品用封止剤又は電子部品用接着剤として非常に有用である。電子部品用封止剤又は電子部品用接着剤としては、フレキシブルプリント配線板用接着剤、TAB用接着剤、半導体用接着剤、各種ディスプレイ用接着剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
また、本実施形態に係る光硬化性組成物は、液晶表示セル用接着剤として、特に液晶シール剤として非常に有用である。本実施形態に係る光硬化性組成物を液晶シール剤として用いた場合の液晶表示セルについて、以下に例を示す。
【0080】
液晶表示セル用接着剤を用いて製造される液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。基板は、ガラス、石英、プラスチック、シリコーン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。
【0081】
液晶表示セルの製造方法は、例えば以下のとおりである。
まず、液晶シール剤にスペーサ(間隙制御材)を添加する。スペーサとしては、グラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。スペーサの直径は目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、液晶シール剤100質量部に対し、通常0.1〜4質量部であり、好ましくは0.5〜2質量部であり、より好ましくは0.9〜1.5質量部程度である。
【0082】
次いで、一対の基板の一方にディスペンサー、スクリーン印刷装置等を用いて液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて80〜120℃で仮硬化を行う。その後、液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより、液晶表示セルを得ることができる。また、光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500〜6000mJ/cm、より好ましくは1000〜4000mJ/cmである。その後、必要に応じて90〜130℃で1〜2時間硬化することにより、液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良がなく、接着性及び耐湿信頼性に優れたものである。
【0083】
本実施形態に係る光硬化性組成物は、遮光部を有する設計の電子部品や可視光のような低エネルギー光で硬化する必要のある接着剤用途の使用に非常に適するものである。例えば、配線遮光部下で用いられる液晶表示用シール剤、有機EL用封止剤、タッチパネル用接着剤として好適である。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特別の記載のない限り、本文中「%」とあるのは質量基準である。
【0085】
<合成例1>
[2−アセチルチオキサントンの合成]
【0086】
【化4】
【0087】
2−アセチルチオキサントンは、先行文献(Material Technology,Vol.27,No.6(2009),pp.242−251)記載の合成手順に従い合成した。
【0088】
[TX−OXE(化合物番号1)の合成]
【0089】
【化5】
【0090】
200mLの4つ口反応容器に温度計及び冷却管を設置し、流速30mL/minで窒素フローを開始した。反応容器に2−アセチルチオキサントン(0.50g)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.20g)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(60mL)を加え、80℃で4時間反応を行った。水50mLを加えて反応を停止させ、メチルイソブチルケトン(200mL)で抽出し、水50mLで3回水洗した。エバポレータを用いて溶剤を除去し、2−アセチルチオキサントンのオキシム化体(TX−OX/黄色固体)を得た。ここで得られた黄色固体(粗結晶)をそのままオキシムエステル化反応に用いた。
【0091】
【化6】
【0092】
200mLの4つ口反応容器に温度計及び冷却管を設置し、流速30mL/minで窒素フローを開始した。反応容器にTX−OXの全量、無水酢酸(0.24g)、及び酢酸ブチル(30mL)を加え、90℃で5時間反応を行った。水50mLを加えて反応を停止させ、メチルイソブチルケトン(200mL)で抽出し、水50mLで3回水洗した。エバポレータを用いて溶剤を除去し、黄色固体を得た。ここで得られた黄色固体をアセトン及び水で再結晶し、2−アセチルチオキサントンのオキシムエステル体(TX−OXE/黄色固体)を0.35g(2段階反応の収率:57%)得た。
H―NMR(400MHz,DMSO―d6);δ(ppm)2.30(s,3H),2.51(s,3H),7.53(ddd,1H)7.59−7.6(m,2H),7.64−7.68(m,1H),8.25(dd,1H),8.60−8.66(m,1H),8.85(d,1H)
【0093】
[TX−OXE−2(化合物番号20)の合成]
【0094】
【化7】
【0095】
200mLの4つ口反応容器に温度計及び冷却管を設置し、流速30mL/minで窒素フローを開始した。反応容器にTX−OX(0.5g)、塩化ベンゾイル(0.52g)、トリエチルアミン(0.47g)、及びテトラヒドロフラン(30mL)を加え、55℃で8時間反応を行った。水30mLを加えて反応を停止させ、析出した固体を濾過で分取した。ここで得られた黄色固体をジメチルスルホキシド及び水で再結晶し、2−アセチルチオキサントンのオキシムエステル体(TX−OXE−2/黄色固体)を0.28g(収率:40%)得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d6);δ(ppm)2.65(s,3H),7.58−7.67(m,3H),7.72−7.85(m,2H)7.89−8.28(m,5H),8.51(d,1H),8.85(s,1H)
【0096】
<実施例1及び2>
下記表1に示す硬化性化合物(B−1、B−2、B−3)を混合し、下記表1に示す特定化合物(A−1)を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却した。次いで、下記表1の残りの成分を添加して撹拌した後、3本ロールミルにて分散させた。その後、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過することにより、実施例1及び2の光硬化性組成物を調製した。なお、表1中の各成分の数値は質量部を表す。
【0097】
<比較例1及び2>
特定化合物(A−1)の代わりに下記表1に示すその他の成分(O−2、O−3)を用いたほかは実施例1及び2と同様にして、比較例1及び2の光硬化性組成物を調製した。
【0098】
<評価>
[遮光部硬化幅(紫外線照射)]
実施例1及び2、比較例1及び2の各光硬化性組成物に4μmのグラスファイバー(日本電気硝子株式会社製)を1質量%添加し、液晶シール剤を調製した。クロムをエッチングすることによって100μmのライン及びスペースを設けたガラス基板に液晶シール剤を塗布し、対向基板としてブラックマトリクス基板を貼り合わせた。次いで、ライン/スペースを設けた基板側から波長365nmの紫外光を3000mJ/cm(100mW/cmで30秒)の照射量で照射し、顕微鏡にて硬化幅を測定した。結果を下記表1に示す。
【0099】
[遮光部硬化幅(可視光照射)]
実施例1及び2、比較例1及び2の各光硬化性組成物に4μmのグラスファイバー(日本電気硝子株式会社製)を1質量%添加し、液晶シール剤を調製した。クロムをエッチングすることによって100μmのライン及びスペースを設けたガラス基板に液晶シール剤を塗布し、対向基板としてブラックマトリクス基板を貼り合わせた。次いで、ライン/スペースを設けた基板側から波長405nmの可視光を3000mJ/cm(100mW/cmで30秒)の照射量で照射し、顕微鏡にて硬化幅を測定した。結果を下記表1に示す。
【0100】
[粘度]
E型粘度計(R115型粘度計(東機産業株式会社製))により実施例1及び2、比較例1及び2の各光硬化性組成物の25℃における粘度(Pa・s)を測定した。結果を下記表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示されるように、特定化合物としてTX−OXEを用いた実施例1及び2の光硬化性組成物は、類似構造を有する化合物を用いた比較用の光硬化性組成物に比べて、紫外線でも可視光でも深部(低エネルギー照射部分)での硬化性が良好であった。すなわち、実施例1及び2の光硬化性組成物は、低エネルギーでの優れた硬化性を有することが確認された。

【要約】
分子内にオキシムエステル構造及びチオキサントン構造を併せ持つ化合物を含有する光硬化性組成物、並びにそれを用いた電子部品用接着剤、電子部品、液晶表示セル用接着剤、液晶シール剤、及び液晶表示セルを提供する。