(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(c)は、水洗される対象となる前記アブラヤシの樹幹1質量部(乾燥質量)に対して、3質量部以上22質量部以下の水量で、前記アブラヤシの樹幹を水洗する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアブラヤシの樹幹の前処理方法。
前記工程(d)は、散水される対象となる前記アブラヤシの樹幹1質量部(乾燥質量)に対して、3質量部以上20質量部以下の散水量で、前記アブラヤシの樹幹を散水洗浄する工程であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアブラヤシの樹幹の前処理方法。
前記工程(h)と前記工程(i)との間に、前記工程(d)で使用された洗浄水が回収された後の水から油水分離機によって採取された油脂分、又は前記アブラヤシの樹幹以外のバイオマスの少なくとも一方からなる混合材を、前記アブラヤシの樹幹に混合する工程(k)を有することを特徴とする請求項8に記載のバイオマス燃料の製造方法。
前記工程(i)と前記工程(j)との間に、前記工程(d)で使用された洗浄水が回収された後の水から油水分離機によって採取された油脂分、又は前記アブラヤシの樹幹以外のバイオマスの少なくとも一方からなる混合材を、前記アブラヤシの樹幹に混合する工程(k)を有することを特徴とする請求項9に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アブラヤシの樹幹(OPT)は、アルカリ金属を約1.0質量%、塩素を約0.5質量%含む。このため、特許文献1に記載されているように、OPTを発電用燃料としてそのまま燃焼装置(発電ボイラ)に供給すると、OPT中のアルカリ金属や塩素によって燃焼装置を腐食させるおそれがある。更には、上記アルカリ金属や塩素に対して燃焼装置内で化学反応が生じることで生成された低融点物質が、燃焼装置の運転トラブルを引き起こすおそれがある。例えば、燃焼装置が流動層式燃焼装置の場合には、低融点物質が流動層の流れを妨げるおそれがある。
【0007】
かかる事情に鑑み、本発明者は、OPTをバイオマス燃料として有効活用するためには、OPTに対してアルカリ金属や塩素を除去するための前処理が必要であると考えた。具体的には、上述したように燃焼装置の腐食や運転トラブルの発生を抑制する観点から、OPT中のアルカリ金属含有量は0.2質量%以下とし、塩素含有量は0.1質量%以下とするのが好ましい。しかしながら、現時点において、OPTに含まれるアルカリ金属や塩素を効率的に除去する方法は知られていない。
【0008】
本発明は、アブラヤシの樹幹(OPT)から効率よくアルカリ金属及び塩素を除去することができる、アブラヤシの樹幹の前処理方法、及び、その前処理方法を経て得られたバイオマスを使ったバイオマス燃料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアブラヤシの樹幹の前処理方法は、
アブラヤシの樹幹を破砕する工程(a)と、
前記工程(a)によって破砕された前記アブラヤシの樹幹に、物理的衝撃を与えながら水洗する工程(c)と、
前記工程(c)によって水洗された前記アブラヤシの樹幹を、水切りした後に散水洗浄する工程(d)と、
前記工程(d)によって散水洗浄された前記アブラヤシの樹幹を、圧搾する工程(e)とを有することを特徴とする。
【0010】
上記工程(a)により、好ましくはアブラヤシの樹幹が最大寸法30mm以下のチップに破砕される。アブラヤシの樹幹が破砕されることで、その後に行われる工程(c)での物理的衝撃を与えながらの水洗において、アブラヤシの樹幹の植物細胞が破壊され易くなり、アルカリ金属及び塩素を効率よくアブラヤシの樹幹から除去することが可能になる。
【0011】
本発明のアブラヤシの樹幹の前処理方法では、工程(c)において、アブラヤシの樹幹のチップは物理的衝撃を与えられながら水洗される。すなわち、この工程(c)では、アブラヤシの樹幹中の植物細胞が破壊されながら水洗される。これにより、アブラヤシの樹幹中のアルカリ金属及び塩素を水洗水中に溶出させることができる。
【0012】
また、この工程(c)における物理的衝撃によって、アブラヤシの樹幹のチップは破砕されて、より小片のチップ、具体的には最大寸法が25mm以下のチップとなる。
【0013】
工程(c)における物理的衝撃は、継続的(連続的)な加圧によるものでも構わないが、衝撃による破砕によってアブラヤシの樹幹のチップをより小片化し易い観点から、瞬間的な衝撃を断続的に加える方法が好ましい。後者を採用することで、工程(c)におけるアブラヤシの樹幹からのアルカリ金属及び塩素の溶出が効率的に生じると共に、より小片化されることで後工程におけるバイオマス燃料のペレット成型が容易になる。
【0014】
本発明の方法では、工程(d)において、工程(c)が完了した後のアブラヤシの樹幹のチップは、水切りした後に散水洗浄される。この工程(d)により、アブラヤシの樹幹のチップに付着している水に溶解されているアルカリ金属及び塩素を除去することができる。
【0015】
なお、この工程(d)において、アブラヤシの樹幹のチップに散水された後の水(洗浄後の水)は、工程(c)における水洗に使用された後の水と比較して、溶解しているアルカリ金属量及び塩素量が少ない。このため、工程(d)で使用された水を回収した後、工程(c)の水洗水に利用するものとしても構わない。これにより、本発明の方法で使用される総水量が低減されると共に、工程(d)で使用された後の水の排水処理を省略又は簡略化することができる。
【0016】
上記方法において、工程(c)では、水洗される対象となる前記アブラヤシの樹幹のチップ1質量部(乾燥質量)に対して、3質量部以上22質量部以下の水量で、当該チップを水洗するものとしても構わない。同様に、工程(d)では、散水される対象となる前記アブラヤシの樹幹のチップ1質量部(乾燥質量)に対して、3質量部以上20質量部以下の散水量で、当該チップを散水洗浄するものとしても構わない。この範囲内の水量で水洗/散水洗浄が行われることで、水の使用量を一定の範囲内に抑制しながらも、アルカリ金属や塩素を除去する効果が発揮される。
【0017】
本発明のアブラヤシの樹幹の前処理方法は、前記工程(d)の後に、工程(d)から得られたアブラヤシの樹幹のチップを圧搾する工程(e)を有する。上述したように、工程(c)を経ることによって、アブラヤシの樹幹の植物細胞の破壊が進行する。このため、工程(c)及び工程(d)によってアブラヤシの樹幹に供給される水(水洗水/洗浄水)の一部が、アブラヤシの樹幹の植物細胞内に取り込まれる可能性がある。上記のように、工程(d)の終了後に、圧搾工程(e)が実行されることで、アブラヤシの樹幹の植物細胞に内包されている水が取り出されるため、当該水に溶解しているアルカリ金属や塩素が除去される。この結果、アブラヤシの樹幹からアルカリ金属や塩素を更に除去することができる。
【0018】
この工程(e)の実行に際し、一軸圧搾機(スクリュー型)等の加圧剪断式の圧搾装置が用いられることで、アブラヤシの樹幹のチップを更に小片化することができる。具体的には最大寸法が10mm以下のチップとなる。
【0019】
上記方法において、前記工程(e)の後に、前記アブラヤシの樹幹のチップを更に散水洗浄する工程(f)と、かかる工程(f)の後に、前記アブラヤシの樹幹のチップを更に圧搾する工程(g)とを有するものとしても構わない。この工程(f)及び工程(g)が実行されることで、アブラヤシの樹幹のチップの表面に付着しているアルカリ金属や塩素を更に除去することができると共に、破壊された植物細胞内等に残留する微量のアルカリ金属や塩素についても更に除去することができる。
【0020】
また、本発明に係るバイオマス燃料の製造方法は、
前記アブラヤシの樹幹の前処理方法の完了後、当該アブラヤシの樹幹に含まれる水分が20質量%以下になるまで乾燥させる工程(h)と、
前記工程(h)の後に、乾燥した前記アブラヤシの樹幹をペレットに成型する工程(i)を有することを特徴とする。
【0021】
上記方法によれば、アブラヤシの樹幹を、アルカリ金属や塩素が充分に除去された状態でバイオマス燃料として好適に用いることができる。なお、工程(i)において、ペレットの大きさを、かさ密度0.50kg/L以上とするものとしても構わない。このペレットの大きさは輸送効率やハンドリング性を考慮して適宜設定することができる。
【0022】
更に、前記工程(h)と前記工程(i)との間に、前記アブラヤシの樹幹を最大寸法10mm以下のチップになるまで破砕する工程(j)を有するものとしても構わない。この工程(j)が実行されることで、アブラヤシの樹幹のチップが確実に小片化されて工程(i)の実行が容易化される。
【0023】
更に、前記工程(h)と前記工程(i)との間、又は前記工程(i)と前記工程(j)との間に、前記工程(d)で使用された洗浄水が回収された後の水から油水分離機によって採取された油脂分、又は前記アブラヤシの樹幹以外のバイオマスの少なくとも一方からなる混合材を、前記アブラヤシの樹幹に混合する工程(k)を有するものとしても構わない。
【0024】
工程(i)に先行して、必要に応じて行われる工程(k)は、工程(i)におけるペレット状バイオマスの成型を容易化させるために実行される混合工程である。すなわち、工程(k)で導入される、別途得られたメソカープファイバーを初めとする他のバイオマスや、前記工程(c)又は前記工程(d)で回収されるアブラヤシの樹幹由来の油脂等からなる混合材は、前記工程(h)を経て生成される乾燥されたアブラヤシの樹幹のチップの成型助剤として使用される。この工程(k)を経ることにより、工程(i)で得られるペレット状のバイオマス燃料の機械的強度を増進させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法によれば、アブラヤシの樹幹(OPT)からアルカリ金属及び塩素を効率よく除去できるため、現時点で有効利用されていなかったアブラヤシの樹幹を、バイオマス燃料の利用に供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るアブラヤシの樹幹の前処理方法及びバイオマス燃料の製造方法の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明に係るアブラヤシの樹幹の前処理方法及びバイオマス燃料の製造方法の一態様を模式的に示すフローチャートである。また、
図2は、本発明に係るアブラヤシの樹幹の前処理方法及びバイオマス燃料の製造方法を実施する装置(以下、「バイオマス燃料化装置」と呼ぶ。)の一例を模式的に示すブロック図である。
図2において、バイオマス材料の流れを矢印付きの実線で示し、液体(水分や油分)の流れを矢印付き破線で示す。
【0029】
図1において、本発明に係るアブラヤシの樹幹の前処理方法はステップS10に、バイオマス燃料の製造方法はステップS20に対応する。
【0030】
図1に示される例では、アブラヤシの樹幹の前処理工程であるステップS10は、破砕工程S11、水洗工程S13、散水洗浄工程S14、及び圧搾工程S15を備える。また、バイオマス燃料の製造工程であるステップS20は、乾燥工程S21、破砕工程S22、混合工程S23、及び成型工程S24を備える。
【0031】
また、
図2に示されるように、本実施形態のバイオマス燃料化装置1は、アブラヤシの樹幹の前処理装置2と、バイオマス燃料の製造装置3とを有して構成される。アブラヤシの樹幹の前処理装置2は、破砕機11、ホッパ12、水洗装置14、振動篩15、振動篩16、洗浄水供給装置17、排洗浄水タンク18、送水ポンプ19、水洗水供給装置21、油水分離機22、排水処理装置24、及び圧搾機25を含んで構成される。バイオマス燃料の製造装置3は、乾燥機32、破砕機33、混合機34、成型機35、及び送油ポンプ36を含んで構成される。
【0032】
以下、それぞれの工程について、適宜
図2を参照しながら詳述する。
【0033】
[アブラヤシの樹幹の前処理工程]
まず、アブラヤシの樹幹の前処理工程S10について説明する。
【0034】
(破砕工程S11)
まず、プランテーション等から採取されたアブラヤシの樹幹e1が、破砕機11に投入され、同破砕機11において破砕される。破砕されるアブラヤシの樹幹e1は、特に限定されず、伐採直後のものでも廃棄古木でもよい。
【0035】
伐採直後のアブラヤシの樹幹e1は、長さ10m〜20m、直径30cm〜60cmの大きさを有し、70質量%〜90質量%の水分と、0.6質量%〜1.2質量%のアルカリ金属と、0.2質量%〜0.6質量%の塩素とを含んでいる。アルカリ金属の中では、特にカリウムが多く含まれる。
【0036】
破砕工程S11では、破砕機11によってアブラヤシの樹幹e1が破砕されて、アブラヤシの樹幹のチップe2(以後、「アブラヤシの樹幹のチップ」を「チップ」と略称する。)が得られる。破砕工程S11によって得られるチップe2の大きさは、最大寸法が好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下、特に好ましくは20mm以下である。
【0037】
好ましくは、破砕機11に投入される前に適当な長さに切断されて丸太化されたアブラヤシの樹幹e1が、破砕機11に投入される。破砕機11は、直径数十cmの丸太を破砕できるものであれば、装置態様や破砕原理には限定されず、一軸式や二軸式の破砕機、木材チップ製造機(木材チッパー)又はハンマーミル等の汎用の木材用破砕機を用いればよい。
【0038】
この破砕工程S11が、前記工程(a)に対応する。
【0039】
(水洗工程S13)
破砕工程S11で得られたチップe2は、ホッパ12に投入されて蓄えられる。そして、このチップe2は、ホッパ12から所定の流量(速度)で、適宜水洗装置14に送出され、この水洗装置14において水洗工程S13が実行される。水洗工程S13は、チップe2に物理的衝撃を与えてチップe2の植物細胞を破壊しながら、チップe2を水洗する工程である。水洗装置14は、水洗水供給装置21から水洗水W1が供給され、この水洗水W1を用いてチップe2を水洗する。水洗水供給装置21は、水洗水W1を貯水するためのタンクと、貯水された水洗水W1を所定の流量で水洗装置14に送出するための注水口とを備える。
【0040】
水洗装置14は、より好ましくは、チップe2に対して、瞬間的な物理的な衝撃を、断続的に繰り返し与えながら水洗を行うことができる構成が好ましい。例えば、水洗装置14は、水洗水供給装置21から水洗水W1が供給される円筒形状の装置であって、軸方向に回転する回転機構と、この装置内に収容されたチップe2に物理的衝撃を与える衝撃媒体とを備える構成を採用することができる。
【0041】
水洗装置14の一例として、デソルトセパレータを利用することができる。デソルトセパレータとは、水平方向に延設された軸線又は水平方向から若干傾斜した軸線回りに回転する、内面にリフターが付設されたドラム状の容器と、この容器内に移動可能に収容された複数本の鉄棒とを備え、ドラムウォッシャとロッドミルの両方の機能を併せ持つ装置である。リフターによって持ち上げられた後に落下する鉄棒の衝撃によってチップe2の植物細胞を破壊すると共に、かかる鉄棒の自重と容器の回転による撹拌効果により、チップe2を効率よく押しつぶすことができる。
【0042】
水洗装置14をデソルトセパレータで構成する場合、衝撃媒体としての鉄棒は、水洗装置14の試料室の容積Am
3に対して、長さが水洗装置14の試料室の長さとほぼ同じであって、体積が0.015Am
3〜0.04Am
3の棒状部材を4〜10本使用するのが好ましく、5〜8本使用するのがより好ましい。また、衝撃媒体を球状部材とすることも可能であり、この場合、φ25mm以上の部材を充填率7%〜15%で使用するのが好ましい。
【0043】
水洗装置14の他の一例として、パドルミキサを利用することもできる。パドルミキサは、内部に複数のパドルを備え付けた軸を有する円筒形状の装置であって、この軸が回転可能に構成されている。チップe2は、装置の一方の端部付近から同装置内に導入され、水洗水W1の流れに従って装置の他方の端部付近へと流れる。このようにチップe2がパドルミキサ内を移動中に、パドルの設置箇所を通過する時点で、パドルによって押しつぶされる。この結果、パドルが設けられている箇所を通過するたびに、連続的な剪断力を受けながら、チップe2は水洗処理が行われる。この態様では、パドルが衝撃媒体に対応する。
【0044】
この水洗工程S13において、チップe2は、瞬間的な物理的な衝撃等によって破断される。水洗工程S13が完了して得られるチップe4の最大寸法は、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。得られるチップe4が、このような大きさになるように、水洗装置14の運転条件が調整される。
【0045】
この水洗工程S13で使用される水洗水W1の量は、チップe2からアルカリ金属及び塩素を効率的に除去する観点、及び水洗水W1の使用量を抑制する観点から、洗浄対象であるチップe2の1質量部に対して、好ましくは2質量部〜13質量部(乾燥質量基準でのチップe2の1質量部に対して(以下、「ドライベース」という。)3質量部〜22質量部)であり、より好ましくは3質量部〜5質量部(ドライベースで5質量部〜8質量部)である。
【0046】
また、この水洗水W1は、チップe2が含有するアルカリ金属及び塩素を溶解して、除去するために用いられることから、アルカリ金属及び塩素を含まない水であることが最も好ましい。ただし、上述したように、チップe2内に含まれる水分中のアルカリ金属濃度及び塩素濃度は、それぞれ0.2質量%〜0.8質量%、0.1質量%〜0.5質量%と高いことから、水洗水W1のアルカリ金属含有量及び塩素含有量は、共に0.1質量%以下であればよい。そこで、後述される排水処理装置24での排水処理量を抑制する観点から、本実施形態では、次工程の散水洗浄工程S14で使用された後の排洗浄水W5を、水洗水W1として使用することができる。なお、後述されるように、排洗浄水W5のアルカリ金属含有量は0.1質量%以下、塩素含有量は0.05質量%以下であり、水洗水W1として利用できる範囲内である。
【0047】
この水洗工程S13が、前記工程(c)に対応する。
【0048】
(散水洗浄工程S14)
水洗工程S13が完了した後のチップe4は、水切りされた後に、散水洗浄が施される。より具体的には、以下の通りである。
【0049】
水洗工程S13が完了した後のチップe4は、水洗工程S13で使用された後の水(排水洗水W2)と共に、振動篩15に供給される。振動篩15は、チップe4は通過させず、水(排水洗水W2)は通過可能な範囲の大きさの孔部が複数設けられている。このため、振動篩15に供給された、チップe4と排水洗水W2の混合物は、振動篩15の篩上面に残存するチップe4と、振動篩15の篩下面に流出する排水洗水W2とに分離される。
【0050】
その後、振動篩15の篩上面に残存したチップe4は、この振動篩15に連接して設けられた振動篩16に移動される。振動篩16では、チップe4に対して、洗浄水供給装置17から供給される洗浄水W4が散水される。洗浄水供給装置17は、洗浄水W4を貯水するためのタンクと、貯水された洗浄水W4を振動篩16に向けて散水するための散水用注水口とを備える。
【0051】
この散水洗浄工程S14で使用される洗浄水W4には、アルカリ金属含有量及び塩素含有量が、共に0.01質量%以下のものを用いるのが好ましい。また、この洗浄水W4の散水量は、チップe4の1質量部に対して、好ましくは2質量部〜12質量部(ドライベースで3質量部〜20質量部)であり、より好ましくは3質量部〜5質量部(ドライベースで5質量部〜8質量部)である。
【0052】
この散水洗浄工程S14によって、水洗工程S13の完了後にチップe4の表面に付着した、アルカリ金属及び/又は塩素が溶解した水が洗い流される。この結果、散水洗浄工程S14の完了後、すなわち振動篩16から供給されるチップe5は、アルカリ金属含有量が0.3質量%以下であり、且つ塩素含有量が0.1質量%以下に低下する。
【0053】
振動篩16は、振動篩15と同様に、チップe4は通過させず、水(洗浄水W4又は排洗浄水W5)は通過可能な範囲の大きさの孔部が複数設けられている。これにより、チップe4の表面に付着した水(洗浄水W4又は排洗浄水W5)が、振動篩16によって振り落とされ、チップe5が得られる。振動篩16は、篩に載せたチップe4に振動を加えて、得られるチップe5に大きな水滴が残存しないことを目視で確認できる程度に水分を取り除けばよい。
【0054】
なお、振動篩15及び振動篩16の篩目は、水とアブラヤシの樹幹(チップe4,チップe5)とを分離して回収するため、より詳細には、排水洗水W2とチップe4、及び排洗浄水W5とチップe5をそれぞれ分離して回収するため、公称目開き4mm以下が好ましく、2.8mm以下が更に好ましい。
【0055】
また、本実施形態では、振動篩15及び振動篩16が相互に連接して設けられているものとして説明した。しかしながら、チップe4の水切りを確実に行うことができれば、1機の振動篩で実現しても構わない。すなわち、1機の振動篩の上流側でチップe4の水切りが行われ、下流側でチップe4に対する散水洗浄及び水切りが行われるものとしても構わない。
【0056】
本実施形態では、振動篩15で振り分けられた排水洗水W2は、油水分離機22に送出される。油水分離機22では、排水洗水W2を、水分W3と油脂分O1とに分離する。油水分離機22は、水分と油脂分とが混在する液体から、水分と油脂分とを分離する機能を実現することができる構成であれば、その形式には限定されず、例えば、油水分離桝や遠心脱油機が使用できる。ここで、排水処理後に系外排出される水分W3を清浄にする観点からは、高速遠心分離による遠心脱油機を使用するのが好ましい。
【0057】
また、本実施形態では、振動篩16で振り分けられた排洗浄水W5は、排洗浄水タンク18に回収・貯水される。排洗浄水タンク18に貯水された排洗浄水W5は、一部が、送水ポンプ19によって水洗水供給装置21に供給されて、水洗水W1として循環利用される。また、排洗浄水W5の他の一部は、排水処理装置24に供給される。送水ポンプ19は、液体用ポンプであれば特に制限はなく、渦巻きポンプやピストンポンプなどの汎用の装置を使用できる。
【0058】
この散水洗浄工程S14が、前記工程(d)に対応する。
【0059】
(圧搾工程S15)
散水洗浄工程S14が完了した後のチップe5は、圧搾機25に供給されて圧搾工程が実行される。圧搾機25は、チップe5を加圧して、チップe5に含まれている洗浄水W4又は排洗浄水W5を搾り出すために備えられる。圧搾機25は、圧搾後のチップe6の水分量を50質量%以下に圧搾できるものであれば特に限定されず、例えば、油圧プレス機(垂直型、水平型)、一軸圧搾機(スクリュー型)、二軸圧搾機(エクストルーダー)等の汎用の装置を使用できる。これらの中では、所要時間が短く、且つ連続式の処理が可能であるという理由により、二軸圧搾機(エクストルーダー)を使用するのが好ましい。
【0060】
ここで、圧搾機25として一軸圧搾機又は二軸圧搾機等の加圧剪断式の圧搾装置を用いることによって、剪断力によって破断されることでアブラヤシの樹幹由来のチップe5を更に小片化することができる。この場合、圧搾工程S15が完了して得られるチップe6の最大寸法は、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、特に好ましくは7mm以下である。
【0061】
この圧搾機25によって水分量が50質量%以下となったチップe6は、アルカリ金属含有量が0.2質量%以下、且つ塩素含有量が0.1質量%以下に低下する。
【0062】
なお、この圧搾機25から排出される排水(以下、「圧搾水」と呼ぶ。)SW2は、排水処理装置24に供給される。排水処理装置24には、油水分離機22によって分離された水分W3、及び排洗浄水タンク18に貯水されていた排洗浄水W5についても供給される。排水処理装置24に供給された水分W3、排洗浄水W5及び圧搾水SW2は、適切な排水処理を施した後、排水W6として系外に排出される。これにより、排水処理を排水処理装置24において一箇所でまとめて行うことができる。ここで、上記の水分W3、排洗浄水W5及び圧搾水SW2は、BOD(生物的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)及びSS(懸濁物質)が高く、またノルマルヘキサン抽出物質も含まれるので、排水処理装置24には、活性汚泥槽(曝気槽)を使用するのが好ましい。
【0063】
この圧搾工程S15は、工程(e)に対応する。
【0064】
上述したアブラヤシの樹幹の前処理工程S10によれば、少なくとも、アルカリ金属含有量が0.2質量%以下で、且つ塩素含有量が0.1質量%以下のチップe6を得ることができる。
【0065】
[バイオマス燃料の製造工程]
次に、バイオマス燃料の製造工程S20について説明する。
【0066】
(乾燥工程S21)
アブラヤシの樹幹の前処理工程S10が実行された後のチップe6は、乾燥機32に投入され、乾燥機32において、その水分が、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下になるように乾燥される。乾燥機32は、チップe6を水分量20質量%以下まで乾燥可能であれば、特にその型式等は限定されないが、連続運転が可能なロータリードライヤーを好適に用いることができる。また、後述する破砕工程S22で実行される破砕機能を備えた乾燥機である、アーム式打撃破砕乾燥機、ハンマー式打撃破砕乾燥機、チェーン式打撃破砕乾燥機等の強制粉砕乾燥機を用いても良い。この場合、乾燥工程S21を実行するための乾燥機32と、後述の破砕工程S22を実行するための破砕機33とが同一の機器で構成される。
【0067】
また、気温、湿度等の環境に依存するが、天日干しによっても水分量20質量%以下までチップe6を乾燥することが可能である。この場合、乾燥工程S21を実行するために乾燥機32を用いる必要はない。
【0068】
この乾燥工程S21を経て得られる乾燥後のチップe7によれば、含有する水分が少なくなっていることから、後段の破砕工程S22、混合工程S23及び成型工程S24の作業効率を向上させることができる。これにより、得られるバイオマス燃料の品質が均斉化されると共に、得られたバイオマス燃料の湿分による品質変化が抑制される。
【0069】
この乾燥工程S21が、前記工程(h)に対応する。
【0070】
(破砕工程S22)
乾燥工程S21が完了した後のチップe7は、必要に応じて、破砕機33に供給されて最大寸法が10mm以下のチップe8に確実に小片化される。破砕機33としては、汎用の木材チッパー、例えばナイフ式(チッパー式)、ハンマー式(シュレッダー式)又はハンマーナイフ式(チッパーシュレッダー式)が好適に使用できる。
【0071】
この破砕工程S22は、乾燥工程S21の完了後のチップe7を破砕して、後段の混合工程S23及び/又は成型工程S24の作業効率を向上させるための工程である。乾燥工程S21の完了後のチップe7には、最大寸法が10mmを超えるものが含まれている場合があるため、この破砕工程S22において、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下のチップe8に確実に小片化する。ただし、後述の成型工程S24において、乾燥工程S21の完了後のチップe7のままで成型が可能である場合には、この破砕工程S22を省略しても構わない。すなわち、バイオマス燃料の製造工程S20において、破砕工程S22を行うか否かは任意であり、この場合、バイオマス燃料の製造装置3が破砕機33を備えないものとしても構わない。
図3は、破砕工程S22が行われない場合のバイオマス燃料の製造方法の一態様を模式的に示すフローチャートであり、
図4はこのフローチャートに対応したバイオマス燃料化装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【0072】
この破砕工程S22が、前記工程(j)に対応する。
【0073】
(混合工程S23)
乾燥工程S21が完了した後のチップe7、又は破砕工程S22が完了した後のチップe8は、そのままでも後述される成型工程S24においてペレット(バイオマス燃料)化することが可能であるが、成型工程S24で得られるペレットの機械的強度を高めるために、チップe7同士又はチップe8同士のバインダーと成り得るアブラヤシ由来のその他のバイオマスQ1を混合した、チップe9としてもよい。すなわち、
図2及び
図4に示すように、チップe7又はチップe8を、その他のバイオマスQ1と共に混合機34に投入し、混合機34において混合することができる。
【0074】
混合工程S23で用い得るアブラヤシ由来のその他のバイオマスQ1としては、EFB、OPT、OPF、メソカープファイバー(MF:Mesocarp Fiber)、PKS、パーム核粕(PKC:Palm Kernel Cake)、又はパームオイル工場廃液(POME:Palm Oil Mill Effluent)などを用いることができる。また、混合工程S23においては、上記各工程からの排水に含まれ、上記油水分離機22で採取される油脂分O1を使用することもできる。具体的には、油水分離機22で分離されることで得られたスラッジ状の油脂分O1が、送油ポンプ36によって混合機34に供給される。混合機34に供給されるバイオマスQ1及び油脂分O1を、以下では「混合材」と総称する。なお、当該混合材は、未処理品であっても、チップe7又はチップe8同様にアルカリや塩素が除去されたものであってもよい。
【0075】
ここで、メソカープファイバーとは、アブラヤシの果実(フレッシュフルーツバンチ)を構成する小果の油分の多い多肉質の中果皮(メソカープ)に含まれ、パーム油採取後にファイバー状で得られるセルロース繊維質をいい、搾油工程で破砕されるために、その繊維長は50mm〜100mmであり、油脂分を含有するため約4500kcal/kgの発熱量を有する。
【0076】
チップe7又はチップe8(A)と、混合機34に導入される混合材(B)との混合割合(A:B)は、成型工程S24で得られるバイオマス燃料のペレットe10の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは50:50〜99:1であり、より好ましくは60:40〜99:1であり、特に好ましくは70:30〜99:1である。また、ペレットe10のアルカリ含有量を0.2質量%以下、且つ塩素含有量を0.1質量%以下とする観点からは、当該混合材(B)が含有するアルカリ金属含有量及び塩素含有量に依存するが、概ね、A:Bが好ましくは60:40〜99:1であり、より好ましくは70:30〜99:1であり、特に好ましくは80:20〜99:1である。
【0077】
混合工程S23で用いる混合機34には、比重や形状が異なる複数材料を混合可能な乾式混合装置が用いられ、例えば、解繊効果を有する羽根付き混合機が好適に用いられる。
【0078】
この混合工程S23が、前記工程(k)に対応する。なお、上述したように、バイオマス燃料の製造工程S20において、この混合工程S23を行うか否かは任意であり、この場合、バイオマス燃料の製造装置3が混合機34を備えないものとしても構わない。
図5は、混合工程S23が行われない場合のバイオマス燃料の製造方法の一態様を模式的に示すフローチャートであり、
図6はこのフローチャートに対応したバイオマス燃料化装置の構成を模式的に示すブロック図である。更に、
図5においてバイオマス燃料の製造工程S20が破砕工程S22を備えないものとしてもよい。この場合、
図6に示すバイオマス燃料の製造装置3は、破砕機33を備えず、乾燥機32から供給された乾燥後のチップe7が成型機35に導入されるものとしても構わない。
【0079】
なお、
図6に示すように、バイオマス燃料の製造工程S20において混合工程S23が実行されず、バイオマス燃料の製造装置3が混合機34を備えない場合には、成型機35内のペレットe10に対して、油水分離機22で分離されることで得られたスラッジ状の油脂分O1が、送油ポンプ36によって供給されるものとしても構わない。これにより、成型後のペレットe10の熱量を増加させることができる。
【0080】
(成型工程S24)
乾燥工程S21が完了した後のチップe7、破砕工程S22が完了した後のチップe8、又は混合工程S23が完了した後のチップe9は、成型機35に供給されて、ペレット(バイオマス燃料)e10に変形される。この成型工程S24により、かさ密度が0.50kg/L以上、圧壊強度が1.5N/mm
2以上、熱量が3500kcal/kg以上の、ペレット状のバイオマス燃料(ペレットe10)が生成される。なお、かさ密度は、JISZ 7302−9「廃棄物固形化燃料−第9部:かさ密度試験方法」に規定する試験方法に、圧壊強度は、JIS Z 8841「造粒物−強度試験方法」に規定する試験方法に、熱量は、JIS Z 7302−2「廃棄物固形化燃料−第2部:発熱量試験方法」に規定する試験方法にそれぞれ準拠した試験で得られた測定値である。
【0081】
ペレットe10の大きさは、輸送効率やハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。成型後のペレットe10は、発電用のCFB(循環流動層)ボイラ装置等で固形燃料として用いたり、セメント焼成装置等で石炭代替燃料として使用したりすることができる。
【0082】
この成型工程S24が、前記工程(i)に対応する。
【0083】
[実施例]
アブラヤシの樹幹の前処理装置2を用いたアブラヤシの樹幹の前処理方法の実施例について、表1を参照して説明する。なお、表1に示すカリウム含有量は、試料を酸で全溶解して得られた溶液をICP発光分光分析法で測定した結果である。また、塩素含有量は、JISZ 7302−6「廃棄物固形化燃料−第6部:全塩素分試験方法」の試験方法に準拠して得られた試験結果である。また、表1のカリウム及び塩素の除去率欄の括弧なしの値は各々の工程までの総除去率(質量%)を示しており、括弧内の値は前工程からの除去率(質量%)を示している。
【0085】
表1によれば、圧搾工程S15が完了した時点で、アブラヤシの樹幹(チップe6)のアルカリ含有量は0.11質量%、塩素含有量は0.038質量%である。
【0086】
以上により、本発明のアブラヤシの樹幹の前処理工程S10によれば、アブラヤシの樹幹のアルカリ含有量を0.2質量%以下、且つ塩素含有量を0.1質量%以下にまで低下させることができる。更に、この圧搾工程S15を経て得られたチップe6に対して、製造工程S20が実行されて生成された、ペレットe10(ペレット状のバイオマス燃料)においても、アルカリ含有量は0.2質量%以下、塩素含有量は0.1質量%以下に留まることが確認された。
【0087】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0088】
〈1〉
図7に示すように、アブラヤシの樹幹の前処理工程であるステップS10において、破砕工程S11と水洗工程S13の間に、圧搾工程S12を有するものとしても構わない。
図8は、
図7に示すフローチャートに対応したバイオマス燃料化装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図8に示すように、バイオマス燃料化装置1は、更に圧搾機13を備える。
【0089】
図8に示すバイオマス燃料化装置1では、破砕工程S11で得られたチップe2は、ホッパ12に投入されて蓄えられる。そして、このチップe2は、ホッパ12から所定の流量(速度)で、適宜圧搾機13へと供給される。
【0090】
圧搾機13は、投入されたチップe2に加圧することで、チップe2の植物細胞を破壊すると共に、同植物細胞に含まれていたアルカリ金属及び塩素を、水分と共に絞り出す。このとき、圧搾機13は、圧搾後のチップe3の水分量を60質量%以下に圧搾するのが好ましく、この範囲内で圧搾できるものであればその形式には限定されず、圧搾機25と同様に、油圧プレス機(垂直型、水平型)、一軸圧搾機(スクリュー型)、二軸圧搾機(エクストルーダー)等の汎用の装置を使用できる。
【0091】
ここで、圧搾機13に、一軸圧搾機又は二軸圧搾機等の加圧剪断式の圧搾装置を用いることによって、圧搾処理後に得られるアブラヤシの樹幹由来のチップe3を更に小片化することができ、その後の水洗工程S13において、チップe3からのアルカリ金属及び塩素の除去を効率的に行う上で好ましい。すなわち、加圧剪断式の圧搾装置を用いた場合の圧搾後のチップe3の大きさとしては、その最大寸法が好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下である。
【0092】
この圧搾工程S12により、チップe2の植物細胞に含まれていたアルカリ金属及び塩素の一部が溶け込んだ水が、チップe2から絞り出されて排出される。この結果、圧搾工程S12が完了した後のチップe3は、圧搾工程S12実行前のチップe2と比較して、アルカリ金属及び塩素の含有量が低下する。
【0093】
ところで、圧搾工程S12が完了した後のチップe3に含まれるアルカリ金属及び塩素は、そのほとんどがチップe3内に含まれる水分に溶解して存在する。従って、チップe3のアルカリ金属含有量及び塩素含有量は、チップe3の残存水分量に比例するといえる。つまり、チップe3の残存水分量を、チップe3に含まれるアルカリ金属の含有量又は塩素の含有量の指標とすることができる。更に、チップe3の残存水分量は、圧搾機13によるチップe2の植物細胞の破壊の程度の指標ともなり、この残存水分量が少ないほど、破壊された植物細胞の量が多いことを意味する。
【0094】
このチップe3の残存水分量は、アルカリ金属含有量及び塩素含有量を低下させる観点、及び植物細胞を多く破壊する観点から、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。チップe3の残存水分量が60質量%以下であれば、この後に行われる水洗工程S13、及び散水洗浄工程S14を経ることで、アルカリ金属含有量が0.2質量%以下であり、且つ塩素含有量が0.1質量%以下のアブラヤシの樹幹を得ることができる。なお、残存水分量が60質量%のチップe3のアルカリ金属含有量は0.2質量%〜0.8質量%であり、また塩素含有量は0.1質量%〜0.5質量%である。
【0095】
本実施形態では、圧搾工程S12が実行されることで得られる排出水(圧搾水)SW1が、油水分離機22に送られるものとしているが、これは任意である。
【0096】
この圧搾工程S12が、前記工程(b)に対応する。
【0097】
〈2〉アブラヤシの樹幹の前処理工程であるステップS10において、圧搾工程S15の実行後、更に散水洗浄工程S14と圧搾工程S15を1回又は複数回繰り返し実行するものとしても構わない。これにより、アブラヤシの樹幹(チップ)e6の内部に残留する微量のアルカリ金属や塩素を更に除去することができる。圧搾工程S15の実行後に再び実行される散水洗浄工程S14が工程(f)に対応し、その後に実行される圧搾工程S15が工程(g)に対応する。
【0098】
〈3〉上記の実施形態では、排洗浄水W5を水洗水供給装置21に循環供給することで、水洗水W1として利用するものとして説明したが、この態様は任意である。すなわち、排洗浄水W5を全て排水処理装置24に排出するものとしても構わない。
【0099】
〈4〉上記の実施形態において、圧搾機25から排出される圧搾水SW2を排水処理装置24に供給する構成としたが、
図8に示す圧搾水SW1と同様に、油水分離機22を経由して、水分W3を排水処理装置24に供給し、油脂分O1を送油ポンプ36を介して混合機34や成型機35に供給するものとしても構わない。
【0100】
〈5〉上記の実施形態において、油水分離機22で分離した油脂分O1を混合機34や成型機35に供給するか否かは任意である。
本発明に係るアブラヤシの樹幹の前処理方法は、アブラヤシの樹幹を破砕する工程(a)と、工程(a)によって破砕された前記アブラヤシの樹幹に、物理的衝撃を与えながら水洗する工程(b)と、記工程(b)によって水洗された前記アブラヤシの樹幹を、水切りした後に散水洗浄する工程(c)と、工程(c)によって散水洗浄された前記アブラヤシの樹幹を、圧搾する工程(d)とを有する。