特許第6486587号(P6486587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486587
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】水分・電解質補給用冷菓
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20190311BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20190311BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20190311BHJP
【FI】
   A23G9/00 101
   A23L33/16
   A23L33/15
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-178385(P2013-178385)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-43758(P2015-43758A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 泰代
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/082390(WO,A1)
【文献】 米国特許第05869459(US,A)
【文献】 特表2001−514022(JP,A)
【文献】 特表平11−512604(JP,A)
【文献】 静脈経腸栄養年鑑2000製剤・器具一覧,2000年 5月15日,p. 44
【文献】 静脈経腸栄養,2001年 1月10日,Vol. 16, No. 1,p. 130
【文献】 経腸栄養剤の種類と選択,2005年11月10日,p. 27
【文献】 Nutrition Care,2009年 9月10日,第2巻5号,p. 91-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/00
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100mL当たりたんぱく質を0〜5gおよび炭水化物を0〜30g含むカロリーが1〜30kcal/100mLの冷菓であって、100mL当たり、40150mgのナトリウム、20130mgのカリウム、1〜100mgのカルシウムおよび80mgのマグネシウムを含有することを特徴とする水分・電解質補給用冷菓。
【請求項2】
100mL当たり、ビタミンB1を0.1〜15mg、ビタミンCを10〜100mgを含有することを特徴とする請求項1に記載の水分・電解質補給用冷菓。
【請求項3】
ビタミンB1及びビタミンC以外の他のビタミンを含有する請求項1または2に記載の水分・電解質補給用冷菓。
【請求項4】
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム以外のミネラル及び微量元素の少なくとも一方を含有する請求項1から3のいずれかに記載の水分・電解質補給用冷菓。
【請求項5】
前記微量元素が、亜鉛及び銅の少なくとも一方である請求項4に記載の水分・電解質補給用冷菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口から水分・電解質を補給するための冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴い、高齢者における脱水のリスクが懸念されている。高齢者は、加齢に伴う細胞内水分量の減少(細胞数が減少し、特に筋肉、皮下組織などにおける備蓄水分量の減少が生じる)、代謝水の産生低下(利尿薬等の影響も含む)、水分摂取量の減少、腎臓におけるNa保持能の低下等により、成人よりも比較的脱水症を引き起こしやすい状況に陥っている。
【0003】
特に、猛暑下では、皮膚温と環境温との差が縮まり、身体活動によって熱産生量が増加するため、熱放散反応として皮膚血管の拡張と発汗が生じる。猛暑下では大量の発汗が蒸発せずに流れ落ちるため、熱放散を伴わない無効な発汗となり、より脱水のリスクが増加する。
【0004】
さらに、脱水は、熱中症、脳梗塞、心筋梗塞など、さまざまな健康障害(しょうがい)のリスク要因となっていることから最近では厚生労働省からも積極的に「健康のための水を飲もう」推進運動が啓蒙されている。
【0005】
このような状況を受け、日常の食生活で、特に高齢者に不足しがちな水分、電解質を補給するための健康栄養食品・飲料が注目されており、これまでに種々の栄養補給食品・飲料が提案され市販されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−304775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの食品・飲料では、必要な水分や電解質が摂取されると共に、食味が良好で食べやすい・飲みやすいものとして提供されることが重要である。特に栄養素の中でも、ミネラル、ビタミン、微量元素を補強する場合には、これらのもつ特有の味により食品が不自然な食味のものとなりやすい。
【0008】
さらに、高齢者は、いっぺんに大量の水分を補給することが難しい場合もあり、少量ずつ徐々に補給できるように考慮する必要もある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、必要な水分、電解質を、電解質等の特有の味による悪影響を妨げながら補給でき、また少量ずつ徐々に補給できる氷菓、シャーベット、アイスクリーム等の冷菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
【0011】
(1)本発明は、100mL当たりたんぱく質を0〜5gおよび炭水化物を0〜30g含むカロリーが1〜30kcal/100mLの冷菓であって、100mL当たり、40150mgのナトリウム、20130mgのカリウム、1〜100mgのカルシウムおよび80mgのマグネシウムを含有することを特徴とする水分・電解質補給用冷菓である。
【0012】
(2)本発明は、100mL当たり、ビタミンB1を0.1〜15mg、ビタミンCを10〜100mgを含有することを特徴とする上記(1)に記載の水分・電解質補給用冷菓である。
【0013】
(3)本発明は、ビタミンB1及びビタミンC以外の他のビタミンを含有する上記(1)または(2)に記載の水分・電解質補給用冷菓である。
【0014】
(4)本発明は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム以外のミネラル及び微量元素の少なくとも一方を含有する上記(1)から(3)のいずれかに記載の水分・電解質補給用冷菓である。
【0015】
(5)前記微量元素が、亜鉛及び銅の少なくとも一方である上記(4)に記載の水分・電解質補給用冷菓である。
【0016】
(6)機能成分として、ポリグルタミン酸、グルコサミン、フコイダン、コラーゲン、ヒアルロン酸、食物繊維、オリゴ糖、EPA、DHAの少なくとも一つを含有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の水分・電解質補給用冷菓である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、必要な水分、電解質を、電解質等の特有の味による悪影響を妨げながら補給することができる。また、本発明の水分・電解質補給用冷菓は、口の中で溶かしながら、必要な水分、電解質を、少量ずつ徐々に補給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、電解質として、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの少なくとも一つを含有し、その含有量は、100mL当たり、ナトリウムが好ましくは30〜160mg、より好ましくは40〜150mg、さらに好ましくは40〜145mg、カリウムが好ましくは10〜160mg、より好ましくは20〜130mg、さらに好ましくは30〜100mg、カルシウムが好ましくは1〜150mg、より好ましくは1〜100mg、さらに好ましくは1〜80mg、マグネシウムが好ましくは1〜100mg、より好ましくは5〜80mg、さらに好ましくは5〜60mgである。
【0019】
本発明の水分・電解質補給用冷菓においては、水分補給を主目的とし、カロリーの補給を目的とするものではないため、そのカロリーは、120kcal/100mL以下、好ましくは100kcal/100mL以下であって、より好ましくは60Kcal以下、さらに好ましくは1〜30kcal/100mL、よりさらに好ましくは1〜20kcal/100mLである。
【0020】
多少のカロリーを含む場合、そのカロリー源としては、たんぱく質、炭水化物が挙げられ、その含有量は、たんぱく質が0〜5g、好ましくは1〜4g、より好ましくは1〜3.8g、炭水化物が0〜30g、好ましくは0〜23g、より好ましくは2〜22gであり、またこれを組み合わせ所定のカロリー量とすることもできる。また、場合によっては、脂質を適量配合しても良い。
【0021】
たんぱく質としては、特に制限されず、乳、乳製品(乳脂肪分、無脂乳固形分)、植物性たんぱく質や動物性タンパク質などの公知のものが用いられうる。なお、本発明において、たんぱく質とは、アミノ酸やペプチドも含む概念である。
【0022】
炭水化物としては、特に制限はなく、例えば、単糖、二糖、および多糖が挙げられる。単糖の具体例としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等が挙げられる。二糖の具体例としては、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース等が挙げられる。
【0023】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、ビタミンB1及びビタミンCの少なくとも一つを含有しても良い。その含有量は、100mL当たり、ビタミンB1は好ましくは0.1〜15mg、より好ましくは0.2〜10mg、さらに好ましくは0.2〜8mg、ビタミンCは好ましくは10〜100mg、より好ましくは20〜80mg、さらに好ましくは20〜60mgである。
【0024】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、亜鉛及び銅の少なくとも一つを含有しても良い。亜鉛の含有量は、好ましくは1〜55mgであり、より好ましくは1〜10mgである。銅の含有量は、好ましくは0.01〜10mgであり、より好ましくは0.06〜6mgである。
【0025】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンC、亜鉛及び銅以外に他の電解質、ミネラル、ビタミン、微量元素を適選配合することができる。
【0026】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、上述した材料以外は水であり、これを冷やすことによって冷菓とすることができる。本発明の氷菓、シャーベット、アイスクリーム等の冷菓は、好ましくは氷菓である。本発明は、冷菓とすることで、その冷感により電解質等の特有の味による悪影響を妨げながら補給することができ、また口の中で溶かしながら徐々に補給することができる。
【0027】
本発明の水分・電解質補給用冷菓は、通常行われている公知の方法によって製造することができる。得られた冷菓は、カップ、アルミパウチ等の成形容器に充填する以外に、バータイプのような形態にして1つずつ包装紙に包むか、もしくは、型をとった後、そのまま包装する等、任意形態に包装して提供することが可能である。
【0028】
(実施例)
以下、表1に記載の実施例1〜3の冷菓を作成した。各実施例とも電解質等の特有の味による悪影響を受けることなく水分の補給ができた。
【0029】
【表1】