特許第6486596号(P6486596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486596
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】指定範囲監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20190311BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   G08B21/02
   H04N7/18 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-44621(P2014-44621)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-170141(P2015-170141A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茂
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勇
(72)【発明者】
【氏名】藤田 岩勇
(72)【発明者】
【氏名】畠山 義隆
(72)【発明者】
【氏名】中井 光也
【審査官】 永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0141238(US,A1)
【文献】 特開2011−024283(JP,A)
【文献】 特開2001−204007(JP,A)
【文献】 特開2012−128574(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00− 1/64
E02F 9/00− 9/18
E02F 9/24− 9/28
G08B 1/00−15/02
G08B 19/00−31/00
G08G 1/00−99/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置と、制御装置と、警報装置とを有し、作業用バケットが装備された架線工事用の高所作業車の車両周囲の指定範囲への人や他の車両の侵入を監視する指定範囲監視システムであって、
前記撮影装置が、前記車両の周囲を上方から俯瞰して撮影し、
前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた設定手段が、前記撮影装置による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定し、
前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた検知手段が、前記設定した指定範囲内に人や他の車両が侵入したことを検知して侵入情報を発信し、
前記警報装置が、前記侵入情報を受信して警報するとともに、
前記撮影装置が、撮影装置を装備していない前記車両に搭載可能で伸縮可能な支持物に取り付けられていることを特徴とする指定範囲監視システム。
【請求項2】
撮影装置と、制御装置と、警報装置とを有し、作業用バケットが装備された架線工事用の高所作業車の車両周囲の指定範囲への人や他の車両の侵入を監視する指定範囲監視システムであって、
前記撮影装置が、前記車両の周囲を上方から俯瞰して撮影し、
前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた設定手段が、前記撮影装置による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定し、
前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた検知手段が、前記設定した指定範囲内に人や他の車両が侵入したことを検知して侵入情報を発信し、
前記警報装置が、前記侵入情報を受信して警報するとともに、
前記設定手段が、前記撮影範囲内に配置されたセーフティコーンを認識して指定範囲を設定することを特徴とする指定範囲監視システム。
【請求項3】
撮影装置と、制御装置と、警報装置とを有し、作業用バケットが装備された架線工事用の高所作業車の車両周囲の指定範囲への人や他の車両の侵入を監視する指定範囲監視システムであって、
前記撮影装置が、前記車両の周囲を上方から俯瞰して撮影し、
前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた設定手段が、前記撮影装置による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定し、
前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた検知手段が、前記設定した指定範囲内に人や他の車両が侵入したことを検知して侵入情報を発信し、
前記警報装置が、前記侵入情報を受信して警報するとともに、
前記撮影装置が、前記車両に装備された作業用バケットに取り付けられており、前記作業用バケットの移動に伴い前記撮影装置が移動しても、前記設定した指定範囲が維持されることを特徴とする指定範囲監視システム。
【請求項4】
前記車両が作業用車両であって、前記車両上の作業者の作業状況を撮影する第2の撮影装置を有し、地上の作業者が作業状況を監視可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1つに記載の指定範囲監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周囲の指定範囲への人や他の車両等の侵入を監視する指定範囲監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、架線工事用の高所作業車や建設・土木作業車等の車両を用いて作業を行う場合には、車両周囲の危険エリアへの人や他の車両等の侵入を防止する必要があり、監視員を配置して監視していた。
【0003】
また、侵入者等を監視する手法として、予め設置した通電線、超音波、赤外線等を検知物が断線、遮蔽等することにより検知するものや、赤外線カメラを用いて不審者を温度差異により検知するものがあった。
【0004】
一方、建設・土木作業車両の作業安全監視システムとして、特許文献1には、作業車両周囲のカメラ映像データをカメラで取得するとともに、操作者による操作ミスを想定した最大可動域を危険領域と判定し、判定された危険領域をカメラ映像データに重ね合わせて画像モニターに映し出すようにした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−121053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、監視員を配置して監視する場合には、人件費によるコスト面の問題や、人為的ミスによる安全面の問題があった。
【0007】
また、通電線、超音波、赤外線等の断線、遮蔽等による検知や、赤外線カメラを用いた温度差異による検知の場合、機器が高価であったり、設置が面倒であったり、検出エリアに制限があったりした。
【0008】
また、特許文献1に記載された発明の場合、操作者による旋回操作やアーム操作のミスを想定した最大可動域を危険領域と判定するにようしているため、監視範囲を自由に設定することができない。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、車両周囲の指定範囲への人や他の車両等の侵入を監視するための指定範囲監視システムを、簡単なシステム構成で低コストに実現するとともに、監視範囲を自由に設定することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の指定範囲監視システムは、撮影装置と、制御装置と、警報装置とを有し、車両周囲の指定範囲への人や他の車両等の侵入を監視する指定範囲監視システムであって、前記撮影装置が、前記車両の周囲を上方から俯瞰して撮影し、前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた設定手段が、前記撮影装置による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定し、前記撮影装置又は前記制御装置に備えられた検知手段が、前記設定した指定範囲内に人や他の車両等が侵入したことを検知して侵入情報を発信し、前記警報装置が、前記侵入情報を受信して警報することを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記撮影装置、前記制御装置及び前記警報装置が、ネットワークに接続されていることを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記撮影装置が、前記車両に装備された作業用バケットに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、前記撮影装置が、前記車両に搭載可能な支持物に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
また好ましくは、前記車両に搭載可能な支持物が、伸縮可能であることを特徴とする。
【0015】
また好ましくは、前記設定手段が、操作者の操作に基づいて指定範囲を設定することを特徴とする。
【0016】
また好ましくは、前記設定手段が、前記撮影範囲内に配置された設定標識を認識して指定範囲を設定することを特徴とする。
【0017】
また好ましくは、前記作業用バケットの移動に伴い前記撮影装置が移動しても、前記設定した指定範囲が維持されることを特徴とする。
【0018】
また好ましくは、前記警報装置が、前記指定範囲の境界部分に配置されていることを特徴とする。
【0019】
また好ましくは、前記警報装置が表示灯であって、警報時に発色を切り替えることを特徴とする。
【0020】
また好ましくは、前記車両が作業用車両であって、前記車両上の作業者の作業状況を撮影する第2の撮影装置を有することを特徴とする。
【0021】
なお、「車両」には、架線工事用の高所作業車や建設・土木作業車(ショベルカー等)の他、輸送用のトラックや乗用車等も含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の指定範囲監視システムは、撮影装置が車両の周囲を上方から俯瞰して撮影し、撮影装置又は制御装置に備えられた設定手段が撮影装置による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定するので、使用状況に応じて監視範囲を自由に設定することができる。また、撮影装置又は制御装置に備えられた検知手段が指定範囲内に人や他の車両等が侵入したことを検知して侵入情報を発信するので、侵入を検知するために通電線、超音波や赤外線の発生装置、赤外線カメラ等を設置する必要がなく、簡単なシステム構成で低コストに実現することができる。そして、警報装置が侵入情報を受信して警報するので、指定範囲への人や他の車両等の侵入を確実に知らせることができる。
【0023】
また、撮影装置、制御装置及び警報装置をネットワークに接続することにより、各装置を使用状況に応じて自由に配置することができる。
【0024】
また、撮影装置を車両に装備された作業用バケットに取り付けることにより、作業用バケットの上昇に合わせて撮影装置を上昇させることができ、上昇させた撮影装置により車両の周囲を上方から俯瞰して撮影することができる。
【0025】
また、撮影装置を車両に搭載可能な支持物に取り付けることにより、撮影装置を装備していない車両であっても、撮影装置を取り付けた支持物を搭載することにより本システムを利用することができる。
【0026】
また、車両に搭載可能な支持物を伸縮可能にすることにより、支持物の伸びに合わせて撮影装置を上昇させることができ、上昇させた撮影装置により車両の周囲を上方から俯瞰して撮影することができる。
【0027】
また、設定手段が操作者の操作に基づいて指定範囲を設定することにより、操作者が任意の位置に指定範囲を設定することができる。
【0028】
また、設定手段が撮影範囲内に配置された設定標識を認識して指定範囲を設定することにより、設定標識を配置するだけで指定範囲を容易に設定することができる。
【0029】
また、作業用バケットの移動に伴い撮影装置が移動しても、設定した指定範囲が維持されるようにすることにより、作業が進行してバケットが移動しても監視対象の指定範囲が変化しないようにすることができる。
【0030】
また、警報装置を指定範囲の境界部分に配置することにより、指定範囲への人や他の車両等の侵入を、より確実に知らせることができる。
【0031】
また、警報装置が表示灯である場合に、警報時の発色を切り替えることにより、指定範囲への人や他の車両等の侵入を、より確実に知らせることができる。
【0032】
また、車両が作業用車両である場合に、第2の撮影装置により車両上の作業者の作業状況を撮影することにより、指定範囲の監視に加えて作業者の作業状況も監視することができ、より安全面に配慮することができる。
【0033】
以上、本発明によれば、車両周囲の指定範囲への人や他の車両等の侵入を監視するための指定範囲監視システムを、簡単なシステム構成で低コストに実現するとともに、監視範囲を自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る指定範囲監視システムの構成図である。
図2】実施形態1に係る指定範囲監視システムを適用した高所作業車を示す図である。
図3】車両上方から俯瞰して撮影した撮影範囲と指定範囲を示す図である。
図4】車両上方から俯瞰して撮影した撮影範囲と指定範囲を示す図である。
図5】指定範囲に警報装置を配置した状態を示す図である。
図6】警報装置を示す正面図である。
図7】車両上方から俯瞰して撮影した撮影範囲と指定範囲を示す図である。
図8】実施形態2に係る指定範囲監視システムを適用した高所作業車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、図1乃至図8を参照して、本発明の実施形態に係る指定範囲監視システムについて説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る指定範囲監視システム100の構成について説明する。
【0036】
本実施形態に係る指定範囲監視システム100は、車両周囲の指定範囲への人や他の車両等の侵入を監視するシステムであって、撮影装置1、制御装置2及び警報装置3から構成されている。撮影装置1、制御装置2及び警報装置3は、ネットワーク4に接続されており、ネットワーク4を介して情報を送受信することができるようになっている。ネットワーク4は、有線でも無線でもよいが、システムの使用状況に合わせて適宜選択することができる。
【0037】
撮影装置1は、車両の周囲を上方から俯瞰して撮影するものであり、撮影装置1により撮影された画像情報は、ネットワーク4を介して制御装置2に送信されるようになっている。
【0038】
制御装置2は、例えばタブレット端末のような表示画面を備えた端末装置であり、撮影装置1から送信された画像情報は、制御装置2の表示画面に表示される。また、制御装置2は画像処理機能を有するプログラムを内蔵しており、操作者が入力操作することにより、表示された撮影範囲内に監視対象の指定範囲を任意に設定することができるようになっている。なお、撮影範囲内への指定範囲の設定は、従来公知の画像処理プログラムにより行うことができる。このように、制御装置2には、撮影装置1による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定する設定手段が備えられている。
【0039】
さらに、制御装置2は、内蔵されたプログラムの画像処理機能により、撮影装置1から送られた画像情報に基づいて、設定した指定範囲内に人や他の車両等が侵入したことを検知することができるようになっている。なお、設定した指定範囲内への人や他の車両等の侵入の検知は、従来公知の画像処理プログラムにより行うことができる。そして、人や他の車両等が侵入したことを検知すると、ネットワーク4を介して警報装置3に侵入情報を送信する。このように、制御装置2には、設定した指定範囲内に人や他の車両等が侵入したことを検知して侵入情報を発信する検知手段が備えられている。
【0040】
なお、撮影装置1による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定する設定手段については、制御装置2ではなく撮影装置1に備えるように構成することもできる。設定手段を撮影装置1に備える場合には、設定手段の機能を実現可能な従来公知の画像処理プログラムを内蔵した専用カメラを用い、制御装置2から送信される操作者の操作情報に基づいて指定範囲を設定する。一方、設定手段を制御装置2に備える場合には、設定手段の機能を実現可能な従来公知の画像処理プログラムを制御装置2に内蔵し、撮影装置1としては一般的なカメラを用いて、撮影した画像情報を制御装置2に送信する構成とする。
【0041】
同様に、設定した指定範囲内に人や他の車両等が侵入したことを検知して侵入情報を発信する検知手段についても、制御装置2ではなく撮影装置1に備えるように構成することができる。検知手段を撮影装置1に備える場合には、検知手段の機能を実現可能な従来公知の画像処理プログラムを内蔵した専用カメラを用い、警報装置3に向けて侵入情報を発信する。一方、検知手段を制御装置2に備える場合には、検知手段の機能を実現可能な従来公知の画像処理プログラムを制御装置2に内蔵し、撮影装置1としては一般的なカメラを用いて、撮影した画像情報を制御装置2に送信する構成とする。
【0042】
警報装置3は、制御装置2からの侵入情報を受信すると、表示灯、ブザー、音声等により警報する。なお、警報の種類は特に限定されないが、表示灯による視覚的効果とブザーや音声による聴覚的効果とを組み合わせることが好ましい。
【0043】
次に、図2乃至図7を参照して、本実施形態に係る指定範囲監視システム100の具体的な適用例について説明する。図2は、実施形態1に係る指定範囲監視システムを適用した高所作業車を示す図である。
【0044】
高所作業車10は、例えば架線工事用の車両であって、ターンテーブル上に旋回式伸縮移動ブーム11が設けられている。旋回式伸縮移動ブーム11の先端には、作業者が乗り込んで作業を行うためのバケット12が取り付けられている。バケット12の下部底面には撮影装置1(カメラ)が取り付けられており、高所作業車10の周囲を上方から俯瞰して撮影するようになっている。なお、撮影装置1は防水カメラとすることが好ましい。
【0045】
バケット12の上部には、防水ボックス13が取り付けられている。防水ボックス13の内部には、図1におけるネットワーク4の中継用通信機器としての無線ルーターと、撮影装置1及び無線ルーターに電源供給するバッテリーが格納されている。撮影装置1とボックス13内部の無線ルーターとは、LANケーブルにより接続されている。
【0046】
旋回式伸縮移動ブーム11が伸びると作業用のバケット12が上昇し、バケット12の上昇に合わせて撮影装置1が上昇する。そして、上昇した撮影装置1が、高所作業車10の周囲を上方から俯瞰して撮影するようになっている。
【0047】
また、ボックス13内部の無線ルーターには、制御装置2(タブレット端末)及び警報装置3が通信可能となっており、撮影装置1、制御装置2(タブレット端末)及び警報装置3が、無線ルーターを介してネットワーク接続されている。
【0048】
制御装置2(タブレット端末)は、通信機能を備えており、撮影装置1から送信された画像情報を表示する表示画面を有している。また、表示された撮影範囲内に操作者の操作に基づいて監視対象の指定範囲を任意に設定するとともに、設定した指定範囲内に人や他の車両等が侵入したことを検知することができるような画像処理機能を有している。また、侵入を検知すると侵入情報を発信する機能を有している。
【0049】
警報装置3は、通信機能を備えており、制御装置2からの侵入情報を受信して、表示灯及びブザーにより警報するようになっている。なお、警報の種類は特に限定されるものではないが、表示灯による場合には、警報時に発色を切り替える(通常時と侵入時の色を変化させる)ことにより、より確実に侵入を知らせることができる。
【0050】
次に、実施形態1に係る指定範囲監視システム100の使用方法について説明する。使用する状況としては、道路沿いの架線工事を行う場合に、歩道や車道の一定範囲を監視対象の指定範囲として設定し、人や車等の侵入を監視する場面を想定する。
【0051】
高所作業車10が工事現場に到着して工事の準備が整うと、まずバケット12に作業者が乗り込み、旋回式伸縮移動ブーム11を伸ばして、バケット12を所定の位置に上昇させる。バケット12とともに上昇した撮影装置1は、高所作業車10の周囲を上方から俯瞰して撮影し、撮影した画像情報をボックス13内の無線ルーターを介して、制御装置2に送信する。
【0052】
地上の作業者(制御装置2の操作者)は、制御装置2の表示画面に示された映像を確認し、制御装置2を操作して、撮影装置1による撮影範囲内に監視対象の指定範囲を設定する。指定範囲は、工事の安全面を考慮して決定する。図3及び図4は、撮影装置1が車両上方から俯瞰して撮影した撮影範囲と、制御装置2による指定範囲を示す図である。
【0053】
図3は、円形の撮影範囲5の内側に、四角形の指定範囲6を設定した状態を示すものである。また図4は、四角形の撮影範囲7の内側に、四角形の指定範囲6を設定したものである。なお、撮影範囲や指定範囲の形状は特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0054】
次に、警報装置3を配置する。警報装置3の配置場所は特に限定されるものではなく、作業者や侵入者に危険を知らせることができればよく、監視対象の指定範囲6の近傍に設置する。例えば図5は、指定範囲6に警報装置3を配置した状態を示す図であるが、ここでは監視対象として設定した指定範囲6の境界部分に配置してある。このようにすれば、指定範囲への人や他の車両等の侵入を、より確実に知らせることができる。なお、監視対象の指定範囲6の近傍以外にも、例えば離れた監視施設等がある場合には、その場所に設置してもよい。
【0055】
また、警報装置3として図6に示すような、セーフティコーン8の上部に警報装置3を取り付けたものを用いることにより、警報装置3の配置を容易にするとともに、視認性を向上させることができる。
【0056】
図6に示すようなセーフティコーン8を用いる場合には、表示灯による警報装置3を上部に配置して警報時に発色を切り替える(通常時と侵入時の色を変化させる)とともに、例えばセーフティコーン8の下部に音声式の警報装置を取り付けて、音声やメロディにより認識性を向上させることもできる。
【0057】
なお、指定範囲を設定する方法として、上記のように操作者の操作に基づいて行うものの他に、次のように行うことができる。まず、指定範囲を設定するための複数の設定標識を撮影範囲内に配置する。そして、撮影装置1による撮影画像において設定標識を認識し、認識した設定標識の範囲内を指定範囲として指定する。例えば、セーフティコーン8を設定標識とする場合には、指定範囲の境界部分にセーフティコーン8を設置し、撮影装置1による撮影画像において、セーフティコーン8とその他の部分との色や形の違いを認識する画像処理を行うことなどにより実現することができる。また、セーフティコーン8に、制御装置2において認識可能な発信機を取り付けてもよい。このような設定方法によれば、設定標識を配置するだけでよいので、設定が容易である。
【0058】
以上により、設定した指定範囲6の監視態勢が整う。次に、人や車両等が指定範囲6に進入した場合について説明する。監視中において、撮影装置1により撮影された映像の画像情報は、ボックス13内の無線ルーターを介して、常に制御装置2に送信されている。監視中に人や車両等が監視対象の指定範囲6に侵入すると、制御装置2は、撮影装置1から送られた画像情報に基づいて指定範囲6内に人や他の車両等が侵入したことを検知する。そして、制御装置2は、警報装置3に向けて侵入情報を発信する。
【0059】
制御装置2から発信された侵入情報は、ボックス13内の無線ルーターを介して警報装置3に送信され、侵入情報を受信した警報装置3は、表示灯やブザー等により警報する。以上により、作業者や侵入者に危険を知らせることができる。
【0060】
なお、高所作業車10のバケット12は、作業の進行具合によって移動することが考えられるが、その際にはバケット12に取り付けられた撮影装置1も移動する。このような場合に備えて、既に設定した指定範囲6が維持されるような補正機能を有することが好ましい。図7を用いて説明すると、まず図7(a)の実線で示すように、撮影装置1による当初の撮影範囲5において監視対象の指定範囲6を設定する。次にバケット12の移動に伴い、撮影装置1による撮影範囲が破線で示す撮影範囲5´に移動したとする、その場合であっても、図7(b)に示すように、撮影範囲内における指定範囲6の表示が補正されることにより、指定範囲6は当初の位置に維持される。
【0061】
このような補正機能は、種々の方法により実現することができる。例えば、セーフティコーン8を設定標識として認識し、撮影装置1による撮影範囲5内におけるセーフティコーン8の位置情報を常時取得する。そして、バケット12が移動した場合には、撮影範囲5内におけるセーフティコーン8の位置情報にズレが生じるので、所定の値以上のズレと判断された場合に、新たな撮影範囲5´内に正しい指定範囲6を表示するようにすればよい。また、他の方法としては、GPS等で撮影装置1の絶対的な位置情報を収集しながら、撮影装置1が移動した分だけ指定範囲6の表示を補正していくこともできる。
【0062】
また、撮影装置1に加えて、車両上の作業者の作業状況を撮影する第2の撮影装置を設けることが好ましい。第2の撮影装置は、例えばバケット12の内部に設置して、撮影した映像を、無線ルーターを介して制御装置2に送信する。これにより、指定範囲の監視に加えて、地上の作業者が作業者の作業状況を監視することができ、より安全面に配慮することができる。
【0063】
次に、図8を参照して、本実施形態に係る指定範囲監視システム100の他の具体的な適用例について説明する。図8は、実施形態2に係る指定範囲監視システムを適用した高所作業車を示す図である。
【0064】
実施形態2に係る指定範囲監視システムは、実施形態1に係る指定範囲監視システムとほぼ同様の構成であるが、撮影装置の取付位置が異なっている。図8に示すように、実施形態2においては、撮影装置9が高所作業車10に搭載された伸縮移動ポール14の上部に取り付けられている。そして、撮影装置9は、実施形態1における撮影装置1と同様に高所作業車10の周囲を上方から俯瞰して撮影するようになっている。
【0065】
伸縮移動ポール14の上部には、防水ボックス15が取り付けられている。防水ボックス15は、実施形態1における防水ボックス14と同様の構成である。
【0066】
実施形態2に係る指定範囲監視システムを使用する場合には、高所作業車10が工事現場に到着して工事の準備が整うと、伸縮移動ポール14を伸ばして撮影装置9を上昇させる。その後の操作は、実施形態1と同様である。
【0067】
なお、撮影装置9を取り付けるポールは伸縮可能なものが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば使用しないときには寝かせておいて、使用時に垂直に立たせるようにしてもよい。また、ポール状のものでなくても、撮影装置を支持できるような支持物であれば形状は問わない。
【0068】
さらに、撮影装置9を取り付ける支持物は、必ずしも元から車両に装備されている必要はなく、撮影装置を取り付けた支持物を、装備されていない車両に搭載して使用することもできる。例えば、撮影装置を取り付けた支持物を、軽トラックの荷台に搭載して使用することも可能である。
【0069】
また、撮影装置9を取り付ける支持物は、多くの種類の車両に取り付けることができるように、汎用的な固定金具を備えるように構成することが好ましい。また、例えば支持物の下部に踏み板部を形成し、踏み板部を車両のタイヤ等で踏むことにより支持物を固定するような構成としてもよい。
【0070】
本実施形態に係る指定範囲監視システムは、撮影装置1が車両10の周囲を上方から俯瞰して撮影し、撮影装置1又は制御装置2に備えられた設定手段が撮影装置1による撮影範囲5内に監視対象の指定範囲6を設定するので、使用状況に応じて監視範囲を自由に設定することができる。また、撮影装置1又は制御装置2に備えられた検知手段が指定範囲6内に人や他の車両等が侵入したことを検知して侵入情報を発信するので、侵入を検知するために通電線、超音波や赤外線の発生装置、赤外線カメラ等を設置する必要がなく、簡単なシステム構成で低コストに実現することができる。そして、警報装置3が侵入情報を受信して警報するので、指定範囲6への人や他の車両等の侵入を確実に知らせることができる。
【0071】
また、撮影装置1、制御装置2及び警報装置3をネットワークに接続することにより、各装置を使用状況に応じて自由に配置することができる。
【0072】
また、撮影装置1を車両10に装備された作業用バケット12に取り付けることにより、作業用バケット12の上昇に合わせて撮影装置1を上昇させることができ、上昇させた撮影装置1により車両10の周囲を上方から俯瞰して撮影することができる。
【0073】
また、撮影装置9を車両10に搭載可能な支持物14に取り付けることにより、撮影装置9を装備していない車両10であっても、撮影装置9を取り付けた支持物14を搭載することにより本システムを利用することができる。
【0074】
また、車両10に搭載可能な支持物14を伸縮可能にすることにより、支持物14の伸びに合わせて撮影装置9を上昇させることができ、上昇させた撮影装置9により車両10の周囲を上方から俯瞰して撮影することができる。
【0075】
また、設定手段が操作者の操作に基づいて指定範囲6を設定することにより、操作者が任意の位置に指定範囲6を設定することができる。
【0076】
また、設定手段が撮影範囲5内に配置された設定標識を認識して指定範囲6を設定することにより、設定標識を配置するだけで指定範囲6を容易に設定することができる。
【0077】
また、作業用バケット12の移動に伴い撮影装置1が移動しても、設定した指定範囲6が維持されるようにすることにより、作業が進行してバケット12が移動しても監視対象の指定範囲6が変化しないようにすることができる。
【0078】
また、警報装置3を指定範囲6の境界部分に配置することにより、指定範囲6への人や他の車両等の侵入を、より確実に知らせることができる。
【0079】
また、警報装置3が表示灯である場合に、警報時の発色を切り替えることにより、指定範囲6への人や他の車両等の侵入を、より確実に知らせることができる。
【0080】
また、車両10が作業用車両である場合に、第2の撮影装置により車両上の作業者の作業状況を撮影することにより、指定範囲6の監視に加えて作業者の作業状況も監視することができ、より安全面に配慮することができる。
【0081】
以上、本実施形態に係る指定範囲監視システムによれば、車両周囲の指定範囲への人や他の車両等の侵入を監視するための指定範囲監視システムを、簡単なシステム構成で低コストに実現するとともに、監視範囲を自由に設定することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態に係る指定範囲監視システムについて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、車両に関して、上記実施形態では、車両を架線工事用の高所作業車としたが、その他にも建設・土木作業車(ショベルカー等)、輸送用のトラックや乗用車等に適用することも可能である。
【0084】
また、ネットワークに関して、上記実施形態では、撮影装置の近傍である防水ボックス内に中継用通信機器である無線ルーターを設置したが、中継用通信機器の設置場所は限定されない。また、各装置と中継用通信機器との間は、有線・無線のいずれの接続で構成してもよい。さらに、中継用通信機器がいずれかの装置と一体化したような構成としてもよい。
【0085】
また、制御装置に関して、上記実施形態ではタブレット端末を用いたが、例えば、車両内に設置したパソコン等や、離れた監視施設に設置したパソコン等を利用してもよい。ただし、現場での操作性の観点からは、タブレット端末が好適である。
【0086】
また、制御装置からの侵入情報を送信する先に関して、警報装置以外の、例えば工事会社の本社や営業所などの遠方の管理部門等にも送信するようにしてもよい。
【0087】
また、制御装置が持つ位置情報(内蔵するGPSによるもの、使用する回線の位置情報提供サービスによるもの等)を、撮影装置からの画像情報に付加するようにしてもよい。そして、例えば近隣地域における架線工事等、複数の現場で連携した作業を行う場合に、各々の現場に配置された制御装置が持つ位置情報を、連携作業時の位置確認に使用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 撮影装置
2 制御装置
3 警報装置
4 ネットワーク
5 撮影範囲
6 指定範囲
7 撮影範囲
8 セーフティコーン
9 撮影装置
10 高所作業車
11 旋回式伸縮移動ブーム
12 バケット
13 防水ボックス
14 伸縮移動ポール
15 防水ボックス
100 指定範囲監視システム
図1
図2
図3
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図8