(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486597
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】盛立工事における転圧管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20190311BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
G01C15/00 102C
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-44845(P2014-44845)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-168991(P2015-168991A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】石突 寿啓
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅義
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝威
(72)【発明者】
【氏名】羽間 義晃
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−129546(JP,A)
【文献】
特開2008−014018(JP,A)
【文献】
特開2003−138569(JP,A)
【文献】
特開2003−239287(JP,A)
【文献】
特開平11−323895(JP,A)
【文献】
特開平09−151446(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0150147(US,A1)
【文献】
特開2000−352044(JP,A)
【文献】
松尾健二 他,ロックフィルダム盛立におけるICT土工管理システム導入の効果分析,前田技術研究所報,2013年11月 1日,Vol.54,pp.1-8
【文献】
松尾健二,土工を合理化するシステム 前田建設「ICT土工管理システム」,北海道開発技術研究発表会 特別セッション,2014年 2月18日,pp.1-18
【文献】
松尾健二 他,ロックフィルダム盛立におけるICT土工管理システム導入の効果分析,前田技術研究技法,2013年,Vol.54,p.1
【文献】
江田正敏 他,億首ダムのIT施工を“四次元”管理,建設の施工企画,2012年11月,pp.71-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00−17/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛立工事現場を移動して転圧する振動ローラから送信される三次元座標による位置情報を取り込んで出来形情報を得る現場管理システムにおいて、
前記盛立工事現場を予め所定の単位面積に分割された基盤形状として設定しておき、
前記振動ローラから送信される前記単位面積ごとの前記三次元座標による位置情報と転圧情報を取得し、その位置情報の標高データと転圧情報の転圧回数データに基づいて前記単位面積ごとに、任意標高に対応した転圧完了結果を出力する、盛立工事における転圧管理システムであって、
仕上り厚が異なるコア・フィルターエリア、ロックエリア、及びその間の境界ロックエリアからなる堤体盛立工事において、
前記任意標高に対応した前記転圧完了結果として、
前記エリアの各々における前記任意標高と一致する前記標高データが存在する場合はその標高データに対応した前記転圧回数データを出力し、
前記任意標高と一致する前記標高データが存在しない場合は前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力するものであり、
前記境界ロックエリアとロックエリアまたはコア・フィルターエリアが混在する混在エリアにおいては、
前記任意標高に対応した前記転圧完了結果として、
前記ロックエリアまたはコア・フィルターエリアにおける前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力するとともに、
前記境界ロックエリアにおける前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力することを特徴とする盛立工事における転圧管理システム。
【請求項2】
前記コア・フィルターエリアの所定角度の水勾配を有するコアゾーンにおいて、
前記任意標高に対応した前記転圧完了結果として、
前記コアゾーンにおける前記任意標高を含む前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力するとともに、
前記コアゾーンとフィルターゾーンを跨いだゾーンにおける前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力することを特徴とする請求項1に記載の盛立工事における転圧管理システム。
【請求項3】
前記ロックエリアの外側の法面側において、
前記法面の外側まで撒き出されて転圧した盛土部分における前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力することを特徴とする請求項1に記載の盛立工事における転圧管理システム。
【請求項4】
演算処理装置に組み込まれたプログラムに従って、前記標高データと前記転圧回数データに基づいた前記単位面積ごとの前記任意標高に対応した前記転圧完了結果が出力処理されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の盛立工事における転圧管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICTを用いた盛立工事における転圧管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
盛土工事における「施工品質の見える化」を実践する上で、ブルドーザ・振動ローラ・バックホウなどの施工重機にICT(情報通信技術)を用いて効率化を図り、かつ品質保証をする試みは多くなされてきた。
また、盛土工事では、施工仕様基準に則した転圧管理をすることが最も重要な項目であり、既転圧箇所の判別が困難な転圧管理において「施工品質の見える化」は品質保証する上で非常に有効となった。
【0003】
例えば、特許文献1において、建設工事現場で作業を行う複数の建設作業機械のそれぞれのGPS三次元座標を、簡単な構成によって一つの場所の装置で画面表示し、土量施工出来高などを迅速かつ正確に管理する建設工事現場管理システムが提案される。
この建設工事現場管理システムは、建設工事現場を移動する複数の建設機械に設置される移動局からGPS測位によるGPS三次元座標データが無線送信される。固定局からもGPS測位によるGPS三次元座標データが無線送信される。このそれぞれのGPS三次元座標データを中央管理局が受信する。これらのGPS三次元座標データ及び固定局を設置した予め既知の地図上の三次元座標(緯度、経度、標高)から中央管理局の移動局位置演算装置がGPS干渉計測位におけるキネマティック測量による地図上の三次元座標を算出し、移動局の移動地点における地図上の三次元座標を同時に画面表示する。
この建設工事現場管理システムによれば、建設工事現場において移動する建設機械等の複数の移動体それぞれのGPS三次元座標や地図上の三次元座標が、簡単な構成によって一つの場所に設置した装置に同時に画面表示して判明できるようになる。したがって、例えば、建設工事現場における土量施工出来高、盛土や舗装の転圧、各種構造物の設置作業、埋立地の地盤沈下及び無人化施工等の管理が迅速かつ正確にできるようになる。
【0004】
しかし、ICTと共に「可視化」は進歩したものの、出来形測定の省力化に伴う「日々の施工数量の把握」には未だ至っていない。
現在、大規模土工事を施工する際、「日々の施工数量の把握」は施工計画・進捗管理・工程管理を行う上で精度の向上を図れ、より効率的な施工管理を実施するために望まれてきた。
【0005】
例えば、ダムや大規模造成工事において、日々の施工数量を算出する際、現地の出来形測量による算出、ダンプトラックの運搬台数からの推定、測線及び標高ごとの概算数量の算出、などが行われている。
【0006】
図18は従来の転圧管理として盛立工事中の堤体の上下流方向に沿った縦断面を例示したもので、図示のように、30cm厚で転圧を行う(A)コア・フィルターエリア、90cm厚で転圧を行う(B)境界ロックエリア、100cm厚で転圧を行う(C)ロックエリアの3種類で転圧エリアを作成し、施工を行っている。
そして、帳票自体は、施工当日のエリア毎に作成し、印刷後、提出していた。
【0007】
図19は同じく盛立工事中の堤体の長手方向に沿った縦断面を例示したもので、図示のように、施工時期が異なり、同じゾーン内でも同じ日にレベルに仕上がらない。
【0008】
そして、従来の転圧管理では、
1.(B)境界ロックエリアと(C)ロックエリアの転圧が同一標高でないため、確実に転圧できているかわからない。
2.(B)境界ロックエリア、(C)ロックエリアの区分けがゾーンではないため、不明瞭であり、未転圧エリアが発生しても見抜けない。
3.施工当日の転圧状況は確認できるが、全域で転圧完了しているかわからない。
という問題点があった。
【0009】
以上の問題点1〜3を解決するために、従来は、堤体を任意標高でスライスした際の平面図を手作業で時間をかけて作成し、(A)コア・フィルターエリア、(B)境界ロックエリア、(C)ロックエリアの全ゾーンを網羅した転圧結果をわかりやすく表記した帳票としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−26529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の技術では、測量機器の進歩により省力化は進んだものの、日々の作業量としては負担が大きい、ダンプ台数の日報管理が必要であり、1台当りの土量は推定値を使用する、代表的な測線・標高の数量は正確であるが、任意形状(仕上がり標高が凸凹など)での数量は概算数量になる、など日々の作業量を考慮して、精度を犠牲にした管理が行われ、効率と精度を満足した施工管理には至っていなかった。
【0012】
特に、転圧管理の帳票作成について、
図18及び
図19に示したように、
1)各エリアの施工が異なる。
2)(A)コア・フィルターエリアと(C)ロックエリアで同一の転圧仕様(回数・機械)ではない。
3)(A)コア・フィルターエリア、(B)境界ロックエリア、(C)ロックエリアが縦断的には同じ日に同一標高にならない。
4)手作業による帳票作成のため、帳票作成に長時間を要し、施工した任意標高の転圧完了結果を短時間で判定できない。
という問題点があった。
【0013】
本発明の課題は、ダム等の盛立工事において、最終出来形となる振動ローラの転圧後、その施工結果及び位置情報を可視化するだけでなく、施工した任意標高の転圧完了結果を短時間で判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
盛立工事現場を移動して転圧する振動ローラから送信される三次元座標による位置情報を取り込んで出来形情報を得る現場管理システムにおいて、
前記盛立工事現場を予め所定の単位面積に分割された基盤形状として設定しておき、
前記振動ローラから送信される前記単位面積ごとの前記三次元座標による位置情報と転圧情報を取得し、その位置情報の標高データと転圧情報の転圧回数データに基づいて前記単位面積ごとに、任意標高に対応した転圧完了結果を出力する、盛立工事における転圧管理システムを特徴とする。
【0015】
そして、請求項1に記載の発明は、
盛立工事現場を移動して転圧する振動ローラから送信される三次元座標による位置情報を取り込んで出来形情報を得る現場管理システムにおいて、
前記盛立工事現場を予め所定の単位面積に分割された基盤形状として設定しておき、
前記振動ローラから送信される前記単位面積ごとの前記三次元座標による位置情報と転圧情報を取得し、その位置情報の標高データと転圧情報の転圧回数データに基づいて前記単位面積ごとに、任意標高に対応した転圧完了結果を出力する、盛立工事における転圧管理システムであって、
仕上り厚が異なるコア・フィルターエリア、ロックエリア、及びその間の境界ロックエリアからなる堤体盛立工事において、
前記任意標高に対応した前記転圧完了結果として、
前記エリアの各々における前記任意標高と一致する前記標高データが存在する場合はその標高データに対応した前記転圧回数データを出力し、
前記任意標高と一致する前記標高データが存在しない場合は前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力するものであり、
前記境界ロックエリアとロックエリアまたはコア・フィルターエリアが混在する混在エリアにおいては、
前記任意標高に対応した前記転圧完了結果として、
前記ロックエリアまたはコア・フィルターエリアにおける前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力するとともに、
前記境界ロックエリアにおける前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力することを特徴とする盛立工事における転圧管理システム。
【0016】
請求項
2に記載の発明は、
請求項
1に記載の盛立工事における転圧管理システムであって、
前記コア・フィルターエリアの所定角度の水勾配を有するコアゾーンにおいて、
前記任意標高に対応した前記転圧完了結果として、
前記コアゾーンにおける前記任意標高を含む前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力するとともに、
前記コアゾーンとフィルターゾーンを跨いだゾーンにおける前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力することを特徴とする。
【0018】
請求項
3に記載の発明は、
請求項1に記載の盛立工事における転圧管理システムであって、
前記ロックエリアの外側の法面側において、
前記法面の外側まで撒き出されて転圧した盛土部分における前記任意標高より上で、かつ直近の前記標高データに対応した前記転圧回数データを出力することを特徴とする。
【0019】
請求項
4に記載の発明は、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の盛立工事における転圧管理システムであって、
演算処理装置に組み込まれたプログラムに従って、前記標高データと前記転圧回数データに基づいた前記単位面積ごとの前記任意標高に対応した前記転圧完了結果が出力処理されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ダム等の盛立工事において、最終出来形となる振動ローラの転圧後、その施工結果及び位置情報を可視化するだけでなく、施工した任意標高の転圧完了結果を短時間で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した現場管理システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】盛立工事の土量算出を説明する概念図である。
【
図3】帳票作成の自動化として日報例を示した図表である。
【
図4】
図2に対応する盛立工事のメッシュ例及び位置情報の取得を説明する平面図である。
【
図5】位置データから得られる面データ例を示した平面図である。
【
図6】基盤形状と取得データの仕上がり面の関係を示した斜視図である。
【
図7】本発明の転圧管理による帳票作成の自動化として日報の表示例を示した図である。
【
図8】同じく帳票作成の自動化として総括図の出力表示例を示した図である。
【
図9】堤体盛立工事の転圧管理を説明する概念図である。
【
図10】本発明の転圧管理を例示するもので、盛立工事中の堤体の上下流方向に沿った縦断面図である。
【
図11】高さ方向のデータ抽出としてコア・フィルターエリアを例示した図である。
【
図14】水平方向のデータ抽出としてロックエリアと境界ロックエリアの混在エリアを例示したもので、盛立順序を時系列に並べて表記した図(a)〜(c)である。
【
図16】ロックエリア外側の法面側の盛立工事を例示した図である。
【
図18】従来の転圧管理を例示するもので、盛立工事中の堤体の上下流方向に沿った縦断面図である。
【
図19】同じく盛立工事中の堤体の長手方向に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0023】
(概要)
ダムや大規模造成の盛立工事において、最終出来形となる振動ローラの転圧後、その施工結果及び位置情報を可視化するだけでなく、取得した位置情報の標高データと転圧情報の転圧回数データに基づいて単位面積ごとに、任意標高に対応した転圧完了結果として、3つのエリアの各々における任意標高と一致する標高データが存在する場合はその標高データに対応した転圧回数データを出力し、任意標高と一致する標高データが存在しない場合は任意標高より上で、かつ直近の標高データに対応した転圧回数データ(転圧回数に関するデータ)を出力することで、出来形測定を実施せず、作業の省力化を図りながら、施工した任意標高の転圧完了結果を短時間で判定できる「転圧管理システム」である。
【0024】
(実施形態)
図1は本発明を適用した現場管理システムの一実施形態を示すもので、例えばダム堤体の施工において、図示のように、管理事務所1の管理PC2及びデータサーバ3と、ブルドーザ4と、振動ローラ5と、図示しないバックホウと、GNSS移動局6と、GNSS基準局7と、各所に設置された図示しないアクセスポイントとが、現場内の無線LAN8でデータ通信可能に接続されている。
すなわち、ブルドーザ4、振動ローラ5、及びバックホウには、図示しないモニタ、無線LAN通信用アンテナ、及びGNSS受信用アンテナがそれぞれ搭載されている。なお、ブルドーザ4には傾斜計も搭載されている。また、バックホウには、バケットセンサ、アームセンサ、及びブームセンサも搭載されている。
【0025】
この現場管理システムにおいて、具体的には、
1)GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した振動ローラ5の転圧回数管理、
2)ブルドーザ4のMG(マシンガイダンス)を利用した敷均し、
3)バックホウのMGを利用した法面整形、
4)GNSS移動局6による位置出し、出来形測量、
5)転圧回数・盛立土量など、日々の帳票作成の自動化、
が行われる。
【0026】
すなわち、ブルドーザ4のMGシステムにより、丁張レス施工、均一な敷均し厚が管理される。
【0027】
そして、振動ローラ5のGPS締固め管理システムにより、締固め回数が管理され、さらに、αシステムにより、振動ローラ加速度応答による面的な地盤剛性が評価される。
【0028】
また、GNSS移動局6等を用いたGPS測量により、詳細が測量され、出来形データが得られる。
【0029】
さらに、管理PC2及びデータベース3の3D−CADによる統合DBシステムにより、施工指示データ、品質管理データ、出来高管理データ、各種帳票類作成が行われる。
【0030】
そして、施工指示データ・施工実績データ・GNSS補正データ等の情報は、全て無線LAN8を介して送受信して、堤体全域+αをカバーしている。
以上の現場管理システムによる処理を以下に説明する。
【0031】
1)GNSSを利用した振動ローラ5の転圧回数管理
振動ローラ5による転圧回数が可視化されて、転圧対象EL(標高)の平面図やゾーン境界線が背景図として表示される。これにより、ゾーン境界部、盛土端部、先行・後行ジョイント部等の踏み残し防止が図れる。
【0032】
2)ブルドーザMGを利用した敷均し
ブルドーザ4による設定高からの高低が可視化されて、ゾーン境界線が背景図として表示される。これにより、撒出し厚、ゾーン境界の測量レスが図れ、敷均し施工の効率化、高精度化が図れる。
【0033】
3)バックホウMGを利用した法面整形
バックホウによる設計形状からの高低が可視化される。これにより、丁張レス、法面整形の効率化が図れる。
【0034】
4)GNSS移動局6による位置出し、出来形測量
測量業務の労力低減が図れる。
【0035】
5‐1)帳票作成の自動化(日報)
日毎の施工結果平面図が自動作成される。
従って、簡易なカスタマイズで他地点へ適用可となる。
【0036】
5‐2)帳票作成の自動化(総括図)
任意標高における施工結果の水平断面図が自動作成される。
【0037】
5‐3)帳票作成の自動化(土量自動算出システム)
【0038】
図2は本発明の土量自動算定システムによる盛立工事の土量算出を説明するもので、所定の単位面積ごと、すなわち、図示のように、50cm×50cmのメッシュごとに対応した施工結果の位置情報から求められる土柱体積を積算し、土量を自動算出する。
なお、盛土、切土に適用可である。
【0039】
図3は帳票作成の自動化として日報例を示した図表である。
図示のように、日盛立数量と累計盛立数量が表示される。
【0040】
図4は
図2に対応する盛立工事のメッシュ例及び位置情報の取得を説明するもので、振動ローラ転圧後、図示のように、取得した位置データ(x,y,z)を活用して出来形測定の省力化を図る。
【0041】
図5は位置データから得られる面データ例を示した平面図である。
【0042】
図6は基盤形状と取得データの仕上がり面の関係を示したもので、図示のように、メッシュごとに分割された基盤形状に対し、取得データの仕上がり面との差に基づいて、すべての取得データについて基盤データとの差分から体積を算出する。
【0043】
図7は本発明の転圧管理システムによる帳票作成の自動化として日報の表示例を示したもので、図示のように、
図3と同様の図表による日報、施工位置図(平面部)、及び日毎の転圧回数に対応した施工結果平面図を自動作成して表示し、必要に応じてプリントする。
【0044】
図8は同じく帳票作成の自動化として総括図の出力表示例を示したもので、図示のように、任意標高における施工結果の水平断面図を自動作成して表示し、必要に応じてプリントする。
このように、任意ELでのスライス平面図において、任意ELなので、近接エリアからデータを抽出する。
そして、コア・フィルター・ロックは、転圧回数がそれぞれ8回、4回、4回なので、転圧回数ではなく、規定転圧回数、規定転圧回数−N回といった表記とする。
【0045】
次に、転圧管理帳票総括について具体的に説明する。
【0046】
1.堤体盛立工事 転圧管理
1)エリア
・コア・フィルターエリア(仕上り厚30cm)
・境界部ロックエリア(仕上り厚90cm)
・ロックエリア」仕上り厚100cm)
2)層(例:EL440.0、EL440.3・・・)
毎に転圧エリアを設け施工。
【0047】
図9は堤体盛立工事の転圧管理の概念を説明するもので、図示のように、1つのエリアは50cm×50cmメッシュの集合体で、そのメッシュ毎に情報(転圧回数、標高、加速度など・・・)が記録されて、データベースに蓄積される。
【0048】
そして、転圧後の結果を「転圧日報」として
1)作業当日の転圧エリア毎
2)作業当日の転圧結果全体、すなわち、1)を全て重ねた全体図にして提出する。
なお、日常提出日報には、50cm×50cmメッシュの転圧回数結果が色塗りされている。
【0049】
2.転圧結果総括図の作成
任意標高の転圧完了結果を判定するため、総括図には全てのゾーン・エリアの結果を反映する。
【0050】
図10は本発明の転圧管理を例示するもので、図示のように、施工の現状から(A)コア・フィルターエリア、(B)境界ロックエリア、(C)ロックエリアの転圧仕上がり標高が同一にならないため、任意標高で作成した転圧結果帳票を作成する。
【0051】
ここで、具体的には、(A)コア・フィルターエリアのコア材料としては、例えば150mm以下の土質材料が用いられ、フィルター材料としては、例えば150mm以下の礫質材料が用いられ、(B)境界ロックエリアのロック材料としては、例えば800mm以下の礫質材料が用いられ、(C)ロックエリアのロック材料としては、同じく例えば800mm以下の礫質材料が用いられる。
【0052】
3.データ抽出の定義
3−1 高さ方向のデータ抽出
(例:コア・フィルターエリア)
【0053】
図11は高さ方向のデータ抽出としてコア・フィルターエリアを例示したもので、図示のように、上下流方向で3%程度の排水勾配を有するため、高さ方向のエリアを3つまたぐ可能性がある。
従って、エリアの各々における任意ELと一致する標高データが存在する場合はその標高データに対応した転圧結果を採用し、任意ELと一致する標高データが存在しない場合は任意ELより上で、かつ直近の標高データに対応した転圧結果を採用する。
【0054】
図12は
図11の結果選定方法を説明するもので、図示のように、「任意標高を含む層の転圧結果」を採用する。すなわち、任意ELより+側で直近の転圧面結果を採用する。
こうして、高さ方向のエリアをまたいだ抽出を実施する。
【0055】
図13は
図12の具体的な抽出方法を説明するもので、図示のように、任意ELの上位標高メッシュで一番近いメッシュを選ぶ。すなわち、任意ELより+側で直近の標高メッシュの自動選定を行う。
【0056】
3−2 水平方向のデータ抽出
(例:境界ロック・ロックエリア)
【0057】
図14は水平方向のデータ抽出としてロックエリアと境界ロックエリアの混在エリアを例示したもので、盛立順序を時系列に並べて表記した
図14(a)〜(c)に示すように、ロックゾーン内では(B)境界ロックエリア、(C)ロックエリアが混在する。
この混在エリアにおいて、
図14(a)に示すように、ロックエリアで転圧済みの端部を、
図14(b)に示すように、サイドカットし、再び礫質材料を撒き出して境界ロックエリアの転圧を行うため、その前の境界ロックエリアの実際の転圧結果は採用せずに、
図14(c)に示すように、サイドカット部に再び行った転圧結果を採用する。
【0058】
こうして、水平方向のエリアをまたいだ抽出を実施する。
【0059】
図15は
図14の具体的な抽出方法を説明するもので、(A)コア・フィルター境界内の標高だけのメッシュ選定に加え、図示のように、(B)境界ロックエリア、(C)ロックエリアの両エリアを含んだ平面的な近接メッシュ選定を行い抽出する。
【0060】
なお、コア・フィルターエリアと境界ロックエリアの混在エリアにおいても、同様に水平方向のエリアをまたいだ抽出を実施する。
【0061】
3−3 まとめ
高さ方向、水平方向にエリアがまたがる可能性があるため、転圧結果総括に使用する転圧結果は、任意標高より上で、かつ直近の施工結果を採用する。
この際、施工(転圧)に使用したエリアは(高さ、水平方向)全て抽出対象とする。
【0062】
このように、高さ方向、水平方向のエリアをまたいだ抽出方法を採用するため、日常提出している標高毎の転圧日報とは一部(コア水勾配箇所、ロック内境界部)一致しない。
【0063】
なお、以上のメッシュ採用手法で行えば、上位標高の結果を採用するため、上下流リップラップ・ロック境界部付近が抽出できなくなる。
従って、上下流リップラップ・ロック境界部付近の抽出と施工を次のように行う。
【0064】
図16はロックエリア外側の法面側の盛立工事を例示したもので、図示のように、ロック設計盛立線(図示では下流ロック設計盛立線)の外側までリップ材料を所定幅まで撒き出してからロックエリアを転圧し、そのロック転圧完了後、リップラップ設計盛立線の外側のリップ材料を掘削して撤去する。
【0065】
なお、リップ材料としては、例えば800mm程度の礫質材料が用いられる。
【0066】
図17は
図16の具体的な抽出方法を説明するもので、図示のように、リップラップゾーンではリップラップ設計盛立線にかかるリップ材料の転圧が不足するため、ロックエリアの+側で直近の転圧結果を採用する。
【0067】
このように、ロックエリアの外側の法面側においては、その法面の外側まで撒き出されて転圧した盛土部分における任意標高より上で、かつ直近の標高データに対応した転圧結果を採用する。
【0068】
以上、実施形態によれば、管理PC2及びデータベース3の3D−CADによる統合DBシステムの演算処理装置に組み込まれたプログラムに従って、仕上り厚が異なる(A)コア・フィルターエリア、(C)ロックエリア、及びその間の(B)境界ロックエリアからなる堤体盛立工事現場を予め所定の単位面積に分割された基盤形状として設定しておき、振動ローラ5から送信される単位面積ごとの三次元座標による位置情報(x,y,z)と転圧情報を取得し、その位置情報の標高データ(z1)と転圧情報の転圧回数データに基づいて単位面積ごとに、任意標高に対応した転圧完了結果として、3つのエリアの各々における任意標高と一致する標高データが存在する場合はその標高データに対応した転圧回数データを出力し、任意標高と一致する標高データが存在しない場合は任意標高より上で、かつ直近の標高データに対応した転圧回数データ(転圧回数に関するデータ)を出力することができる。
【0069】
従って、ダムの盛立工事において、最終出来形となる振動ローラ5の転圧後、その施工結果及び位置情報を可視化するだけでなく、施工した任意標高の転圧完了結果を表示して、さらに必要に応じてプリントして、短時間で判定することができる。
【0070】
(変形例)
以上の実施形態の他、具体的な手法等について適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
1 管理事務所
2 管理PC
3 データサーバ
4 ブルドーザ
5 振動ローラ
6 GNSS移動局
7 GNSS基準局
8 無線LAN