(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電線を貫通させる側から見て2つの貫通孔を有し、前記2つの貫通孔にそれぞれ電流の向きが同じ電線を同じ方向から貫通させたとき前記2つの貫通孔のそれぞれの電線の電流により発生する磁束が互いに打ち消される磁気回路を形成する閉じた鉄心を備え、
前記鉄心の前記貫通孔は前記電線を貫通させる側から見て四辺形で形成され、前記貫通孔の四辺のうちの三辺は同一平面に位置し、残りの一辺は背面側の別の平面に位置するように立体的に形成され、前記貫通孔の四辺のうちの三辺は正面側に位置し、残りの一辺は背面側に位置することにより前記鉄心は立体的に形成され、
前記電線としてn(n=2、3、4、…)条の電線の2つの電線の組合せnC2のうちから必ずn条の各条の電線を含む少なくともn−1個の組合せを選択し、選択した2つの電線を組にして電流の向きが同じ方向にそれぞれ組ごとに別の前記鉄心の貫通孔に貫通させることを特徴とする電線インピーダンス整合装置。
n(n=2、3、4、…)条の電線の2つの電線の組合せnC2のうちから選択する2つの電線の組み合わせは、必ずn条の各条の電線を含み、1条目からn条目までを輪環の順に2つの電線を選択したn−1個またはn個の組合せの2つの電線であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電線インピーダンス整合装置。
n(n=2、3、4、…)条の電線の2つの電線の組合せnC2のうちから選択する2つの電線の組み合わせは、必ずn条の各条の電線を含み、1条目からn条目までのいずれかの条の電線を共通で選択したn−1個の組合せの2つの電線であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電線インピーダンス整合装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置に用いられる鉄心の実施例1の説明図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は斜視図、
図1(c)は正面図である。
【0015】
図1において、鉄心11は電線を貫通させる側から見て2つの貫通孔12a、12bを有し、この2つの貫通孔12a、12bに、組となる2つの電線13a、13bを電流の向きが同じ方向に貫通する。
図1では電線13a、13bに流れる電流の向きを矢印で示している。
【0016】
鉄心11は、2つの貫通孔12a、12bにそれぞれ電流の向きが同じ電線13a、13bを同じ方向から貫通させたとき、2つの貫通孔12a、12bのそれぞれの電線13a、13bの電流により発生する磁束が互いに打ち消される磁気回路を形成するように構成されている。
【0017】
図1(b)に示すように、貫通孔12a、12bは電線を貫通させる側から見て四辺形で形成され、貫通孔12a、12bの四辺のうちの三辺は同一平面に位置し、残りの一辺は別の平面に位置するように立体的に構成されている。すなわち、貫通孔12a、12bの四辺のうちの三辺は正面側に位置し、残りの一辺は背面側に位置する。これにより、鉄心11は立体的に捻られた形状となっている。
【0018】
貫通孔12aを貫通する電線13aの電流は、鉄心11に矢印Xa方向の磁束を発生する。一方、貫通孔12bを貫通する電線13bの電流は、鉄心11に矢印Xb方向の磁束を発生する。矢印Xa方向の磁束と矢印Xb方向の磁束とは、互いに打ち消す方向の磁束である。これは、鉄心11が捻られた形状となっているためである。
図1に示す実施例1の鉄心11は、平面図の右側形状がL字状であるので、L型鉄心と呼ぶことにする。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置に用いられる鉄心の実施例2の説明図であり、
図2(a)は鉄心の構成部材である円環部材の平面図、
図2(b)は実施例2に係る鉄心の斜視図、
図2(c)は実施例2に係る鉄心の平面図である。
【0020】
図2(b)に示すように、鉄心11は4個の半円環部材14a〜14dから構成される。半円環部材14a〜14dは、
図2(a)に示す円環部材14を2個用意し、2個の円環部材14を2分割して得られる。
【0021】
4個の半円環部材14a〜14dのうち、半円環部材14a、14cの円弧側を上にし、半円環部材14b、14dの円弧側を下にして接続し、
図2(c)に示すように、平面形状が正方形になるように鉄心11を形成する。すなわち、半円環部材14aの一方端に半円環部材14bの他方端を接続し、半円環部材14bの一方端に半円環部材14cの他方端を接続し、半円環部材14cの一方端に半円環部材14dの他方端を接続し、半円環部材14dの一方端に半円環部材14aの他方端を接続する。
【0022】
これにより、鉄心11は、電線を貫通させる側から見て2つの貫通孔12a、12bを有した捻られた形状となる。
図2(c)の矢印Y1方向から見た形状はU字状であるので、実施例2の鉄心11をU型鉄心と呼ぶことにする。
【0023】
図2(b)に示すように、貫通孔12aを貫通する電線13aの電流は、鉄心11に矢印Xab方向の磁束を発生する。一方、貫通孔12bを貫通する電線13bの電流は、鉄心11に矢印Xcd方向の磁束を発生する。矢印Xab方向の磁束と矢印Xcd方向の磁束とは、互いに打ち消す方向の磁束である。これは、鉄心11が捻られた形状となっているためである。これにより、2つの貫通孔12a、12bに、組となる2つの電線13a、13bを電流の向きが同じ方向に貫通するだけで、それぞれの電線13a、13bの電流により発生する磁束は互いに打ち消される。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置に用いられる鉄心の実施例3の説明図であり、
図3(a)は鉄心の構成部材である円環部材の平面図、
図3(b)は実施例3に係る鉄心の斜視図、
図3(c)は実施例3に係る鉄心の平面図である。この実施例3の鉄心11は、
図2に示した実施例2のU型の鉄心11に対し、平面形状が菱形になるように鉄心11を形成するようにしたものである。
【0025】
図3(a)に示す円環部材14を2個用意し、2個の円環部材14を2分割して4個の半円環部材14a〜14dを得る。そして、
図3(b)に示すように、4個の半円環部材14a〜14dのうち、半円環部材14a、14cの円弧側を上にし、半円環部材14b、14dの円弧側を下にして接続し、
図3(c)に示すように、平面形状が菱形になるように鉄心11を形成する。
【0026】
すなわち、半円環部材14aの一方端に半円環部材14bの他方端を接続し、半円環部材14bの一方端に半円環部材14cの他方端を接続し、半円環部材14cの一方端に半円環部材14dの他方端を接続し、半円環部材14dの一方端に半円環部材14aの他方端を接続する。
【0027】
これにより、鉄心11は、電線を貫通させる側から見て2つの貫通孔12a、12bを有した捻られた形状となる。
図3(c)の矢印Y2方向から見た形状は∞字状であるので、実施例3の鉄心11を∞型鉄心と呼ぶことにする。
【0028】
図3(b)に示すように、貫通孔12aを貫通する電線13aの電流は、鉄心11に矢印Xab方向の磁束を発生する。一方、貫通孔12bを貫通する電線13bの電流は、鉄心11に矢印Xcd方向の磁束を発生する。矢印Xab方向の磁束と矢印Xcd方向の磁束とは、互いに打ち消す方向の磁束である。これは、鉄心11が捻られた形状となっているためである。これにより、2つの貫通孔12a、12bに、組となる2つの電線13a、13bを電流の向きが同じ方向に貫通するだけで、それぞれの電線13a、13bの電流により発生する磁束は互いに打ち消される。
【0029】
図4は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置に用いられる鉄心の実施例4の説明図であり、
図4(a)は実施例4に係る鉄心の正面図、
図4(b)は実施例4に係る鉄心の斜視図である。
【0030】
この実施例4の鉄心11は、
図1に示した実施例1のL型の鉄心11に対し、貫通孔12a、12bの四辺のうちの三辺は、それぞれ別の同一平面に位置し、残りの一辺は他方の貫通孔の三辺が位置する平面に位置するようにしたものである。
【0031】
図4(a)に示すように、貫通孔12a、12bは電線を貫通させる側から見て四辺形で形成される。また、
図4(b)に示すように、貫通孔12a、12bの四辺のうちの三辺は別の同一平面に位置し、残りの一辺は他方の貫通孔の三辺が位置する平面に位置する。
【0032】
これにより、2つの貫通孔12a、12bにそれぞれ電流の向きが同じ電線13a、13bを同じ方向から貫通させたとき、2つの貫通孔12a、12bのそれぞれの電線13a、13bの電流により発生する磁束が互いに打ち消される磁気回路を形成するように構成されている。
図4では電線13a、13bに流れる電流の向きを矢印で示している。
【0033】
すなわち、貫通孔12aを貫通する電線13aの電流は、鉄心11に矢印Xa方向の磁束を発生する。一方、貫通孔12bを貫通する電線13bの電流は、鉄心11に矢印Xb方向の磁束を発生する。矢印Xa方向の磁束と矢印Xb方向の磁束とは、互いに打ち消す方向の磁束である。
図4に示す実施例4の鉄心11は、平面図の中央で貫通孔12a、12bの一片が交差する形状がX字状であるので、X型鉄心と呼ぶことにする。
【0034】
このように、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置に用いられる鉄心11は、2つの貫通孔12a、12bにそれぞれ電流の向きが同じ電線を同じ方向から貫通させたとき、2つの貫通孔12a、12bのそれぞれの電線の電流により発生する磁束が互いに打ち消される磁気回路を形成する閉じた鉄心である。
【0035】
次に、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が2条である電路に適用した場合の構成図である。
【0036】
電源15から負荷16までの電線13が2条の電線13a、13bであり、電線13a、13bは、インダクタンスLa、Lb、抵抗Ra、Rbを有している。電線インピーダンス整合装置は、
図1乃至
図4に示した鉄心11のいずれかの鉄心を用いる。すなわち、鉄心11abの2つの貫通孔12a、12bにそれぞれ電流の向きが同じ電線13a、13bを同じ方向から貫通させたとき、2つの貫通孔12a、12bのそれぞれの電線13a、13bの電流により発生する磁束が互いに打ち消される。
【0037】
電源15からの負荷電流I0は、電線13aに流れる電流Iaと電線13bに流れる電流Ibとに分流する。この場合、電線13a、13bのインダクタンスLa、Lb、抵抗Ra、Rbなどの影響により、電線13aに流れる電流Iaと電線13bに流れる電流Ibとの間に差分ΔI(=Ia−Ib)が発生するが、2つの電線13a、13bの電流により発生する磁束が互いに打ち消されるので、その差分ΔI(=Ia−Ib)は最終的に零に近づく。従って、電線13a、13bに流れる電流がバランスするように各電線のインピーダンスを整合させることができ、電線13a、13bに流れる電流Ia、Ibのアンバランスを抑制できる。
【0038】
次に、
図6は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が3条である電路に適用した場合の構成図であり、
図6(a)は2つの鉄心11ab、11bcを設けた場合、
図6(b)は3つの鉄心11ab、11bc、11caを設けた場合を示している。
【0039】
図6(a)において、電源15から負荷16までの電線13が3条の電線13a、13b、13cであり、電線13a、13b、13cは、インダクタンスLa、Lb、Lc、抵抗Ra、Rb、Rcを有している。電線インピーダンス整合装置は、2つの鉄心11ab、11bcからなり、鉄心11abは、貫通孔12a、12bを有し、鉄心11bcは、貫通孔12b、12cを有している。
【0040】
鉄心11abの貫通孔12aには電線13aが貫通し、貫通孔12bには電線13bが貫通している。同様に、鉄心11bcの貫通孔12bには電線13bが貫通し、貫通孔12cには電線13cが貫通している。すなわち、3条の電線13a、13b、13cの2つの電線の組合せは、
3C
2により、3個の組合せ(13aと13b、13bと13c、13cと13a)となる。この3個の組合せ(13aと13b、13bと13c、13cと13a)のうちから、2個の組合せを選択する。
【0041】
図6(a)では、2個の組合せ(13aと13b、13bと13c)を選択した場合を示している。そして、選択した2個の電線の組合せのうち、鉄心11abの貫通孔12aには電線13aを、貫通孔12bには電線13bを貫通させ、同様に、鉄心11bcの貫通孔12bには電線13bを、貫通孔12cには電線13cを貫通させている。なお、2つの電線の組合せは、(13aと13b、13bと13c)に代えて、(13aと13b、13cと13a)または(13cと13a、13bと13c)の組合せであってもよい。
【0042】
2つの電線13a、13b(13b、13c)を鉄心11ab(11bc)の貫通孔12a、12b(12b、12c)に貫通することにより、その2つの電線13a、13b(13b、13c)の電流により発生する磁束が互いに打ち消される。電源15からの負荷電流I0は、電線13aに流れる電流Ia、電線13bに流れる電流Ib、電線13cに流れる電流Icに分流する。この場合、電線13a、13b、13cのインダクタンスLa、Lb、Lc、抵抗Ra、Rb、Raなどの影響により、電線13aに流れる電流Ia、電線13bに流れる電流Ib、電線13cに流れる電流Icの間に差分ΔIab(=Ia−Ib){ΔIca(=Ic−Ia)}が発生するが、2つの電線13a、13b(12a、12c)の電流により発生する磁束が互いに打ち消されるので、その差分ΔIab(=Ia−Ib){ΔIca(=Ic−Ia)}は最終的に零に近づく。従って、電線13a、13b、13cに流れる電流がバランスするように各電線のインピーダンスを整合させることができ、電線13a、13b、13cに流れる電流Ia、Ib、Icのアンバランスを抑制できる。
【0043】
図6(b)において、電源15から負荷16までの3条の電線13a、13b、13cは、インダクタンスLa、Lb、Lc、抵抗Ra、Rb、Rcを有している。電線インピーダンス整合装置は、鉄心11ab、11bc、11caからなり、鉄心11abは、貫通孔12a、12bを有し、鉄心11bcは、貫通孔12b、12cを有し、鉄心11caは、貫通孔12c、12aを有している。
【0044】
鉄心11abの貫通孔12aには電線13aが貫通し、貫通孔12bには電線13bが貫通している。鉄心11bcの貫通孔12bには電線13bが貫通し、貫通孔12cには電線13cが貫通している。同様に、鉄心11caの貫通孔12cには電線13cが貫通し、貫通孔12aには電線13aが貫通している。
【0045】
前述したように、3条の電線13a、13b、13cの2つの電線の組合せは、3個の組合せ(13aと13b、13bと13c、13cと13a)となるが、
図6(b)では、この3個の組合せ(13aと13b、13bと13c、13cと13a)を選択する。2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13a、13c)}は、鉄心11ab{(11bc)、(11ca)}の貫通孔12a、12b{(12b、12c)、(12c、12a)}に貫通することにより、その2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13c、13a)}の電流により発生する磁束が互いに打ち消される。
【0046】
電源15からの負荷電流I0は、電線13aに流れる電流Ia、電線13bに流れる電流Ib、電線13cに流れる電流Icに分流する。この場合、電線13a、13b、13cのインダクタンスLa、Lb、Lc、抵抗Ra、Rb、Raなどの影響により、電線13aに流れる電流Ia、電線13bに流れる電流Ib、電線13cに流れる電流Icのそれぞれの間に差分が発生するが、2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13c、13a)}の電流により発生する磁束が互いに打ち消されるので、それらの差分は最終的に零に近づく。従って、電線13a、13b、13cに流れる電流がバランスするように各電線のインピーダンスを整合させることができ、電線13a、13b、13cに流れる電流Ia、Ib、Icのアンバランスを抑制できる。
【0047】
図7は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の構成図であり、
図7(a)は3つの鉄心11ab、11ac、11adの貫通孔12aに特定の電線13aを共通に貫通させた場合、
図7(b)は3つの鉄心11ab、11bc、11cdの貫通孔12に輪環の順で選択した2つの電線を貫通させた場合を示している。
【0048】
図7(a)において、電源15から負荷16までの電線13が4条の電線13a、13b、13c、13dであり、電線13a、13b、13c、13dは、インダクタンスLa、Lb、Lc、Ld、抵抗Ra、Rb、Rc、Rdを有している。電線インピーダンス整合装置は、3つの鉄心11ab、11ac、11adからなり、鉄心11abは、貫通孔12a、12bを有し、鉄心11acは、貫通孔12a、12cを有し、鉄心11adは、貫通孔12a、12dを有している。
【0049】
鉄心11abの貫通孔12aには共通の電線13aが貫通し、貫通孔12bには電線13bが貫通している。鉄心11acの貫通孔12aには共通の電線13aが貫通し、貫通孔12cには電線13cが貫通している。同様に、鉄心11adの貫通孔12aには共通の電線13aが貫通し、貫通孔12dには電線13dが貫通している。すなわち、鉄心11abの貫通孔12a、鉄心11acの貫通孔12a、鉄心11adの貫通孔12aには、電線13aが共通に貫通している。
【0050】
4条の電線13a、13b、13c、13dの2つの電線の組合せは、
4C
2により、6個の組合せ(13aと13b、13aと13c、13aと13d、13bと13c、13bと13d、13cと13d)となるが、
図7(a)では、このうちから、電線13aが共通に貫通する3個の組合せ(13aと13b、13aと13c、13aと13d)を選択した場合を示している。そして、2つの電線13a、13b{(13a、13c)、(13a、13d)}は、鉄心11ab{(11bc)、(11ca)}の貫通孔12a、12b{(12a、12c)、(12a、12d)}に貫通することにより、その2つの電線13a、13b{(13a、13c)、(13a、13d)}の電流により発生する磁束が互いに打ち消される。
【0051】
電源15からの負荷電流I0は、電線13aに流れる電流Ia、電線13bに流れる電流Ib、電線13cに流れる電流Ic、電線13dに流れる電流Idに分流する。この場合、電線13a、13b、13c、13dのインダクタンスLa、Lb、Lc、Ld、抵抗Ra、Rb、Rc、Rdなどの影響により、電線13aに流れる電流Ia、電線13bに流れる電流Ib、電線13cに流れる電流Ic、電線13dに流れる電流Idのそれぞれの間に差分が発生するが、2つの電線13a、13b{(13a、13c)、(13a、13d)}の電流により発生する磁束が互いに打ち消されるので、それらの差分は最終的に零に近づく。従って、電線13a、13b、13c、13dに流れる電流がバランスするように各電線のインピーダンスを整合させることができ、電線13a、13b、13c、13dに流れる電流Ia、Ib、Ic、Idのアンバランスを抑制できる。
【0052】
図7(b)において、鉄心11abの貫通孔12aには電線13aが貫通し、貫通孔12bには電線13bが貫通している。鉄心11bcの貫通孔12bには電線13bが貫通し、貫通孔12cには電線13cが貫通している。同様に、鉄心11cdの貫通孔12cには電線13cが貫通し、貫通孔12dには電線13dが貫通している。すなわち、鉄心11abの貫通孔12a、12bb、鉄心11bcの貫通孔12b、12c、鉄心11cdの貫通孔12c、12dには、輪環の順で選択した2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13c、13d)}が貫通している。
【0053】
前述したように、4条の電線13a、13b、13c、13dの2つの電線の組合せは、6個の組合せ(13aと13b、13aと13c、13aと13d、13bと13c、13bと13d、13cと13d)となるが、
図7(b)では、このうちから、輪環の順で選択した2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13c、13d)}を選択した場合を示している。
【0054】
2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13c、13d)}は、鉄心11ab{(11bc)、(11cd)}の貫通孔12a、12b{(12b、12c)、(12c、12d)}に貫通することにより、その2つの電線13a、13b{(13b、13c)、(13c、13d)}の電流により発生する磁束が互いに打ち消されるので、それらの差分は最終的に零に近づく。従って、電線13a、13b、13c、13dに流れる電流がバランスするように各電線のインピーダンスを整合させることができ、電線13a、13b、13c、13dに流れる電流Ia、Ib、Ic、Idのアンバランスを抑制できる。
【0055】
以上の説明では、1つの電線13aが共通する2つの電線の3個の組合せ(13aと13b、13aと13c、13aと13d)、輪環の順で選択した2つの電線の3個の組合せ(13aと13b、13bと13c、13cと13d)について説明したが、必ず4条の各条の電線13a、13b、13c、13dを含む2つの電線の3個の組合せを選択するようにする。
【0056】
例えば、4条の各条の電線13a、13b、13c、13dの2個の組合せは、6個の組合せ(13aと13b、13aと13c、13aと13d、13bと13c、13bと13d、13cと13d)となるが、このうち、例えば、2つの電線の3個の組合せ(13bと13c、13bと13d、13cと13d)は電線13aが含まれていないので、この組合せは除外する。以下同様に、電線13bが含まれていない組み合わせ(13aと13c、13aと13d、13cと13d)、電線13cが含まれていない組み合わせ(13aと13b、13aと13d、13bと13d)、電線13dが含まれていない組合せ(13aと13b、13aと13c、13bと13c)は除外し選択しない。
【0057】
また、以上の説明では、2つの電線の3個の組合せを選択する場合について説明したが、3個の組合せに代えて、4個の組合せを選択するようにしてもよい。
図8は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の他の一例の構成図である。
図8では、必ず4条の各条の電線13a、13b、13c、13dを含む2つの電線の4個の組合せを選択した場合を示している。輪環の順で選択した2つの電線の4個の組合せ(13aと13b、13bと13c、13cと13d、13dと13a)を選択する。
【0058】
このように、n(n=2、3、4、…)条の電線の2つの電線の組合せは、
nC
2のうちから必ずn条の各条の電線を含む少なくともn−1個の組合せを選択し、選択した2つの電線を組にして、
図1乃至
図4に示した鉄心11に、電流の向きが同じ方向にそれぞれ組ごとに別の鉄心の貫通孔に貫通させる。これにより、2つの電線の電流により発生する磁束を互いに打ち消す。
【0059】
図9は、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を1相の電線が4条である電路に適用した場合の電流のアンバランス抑制の説明図であり、
図9(a)は、
図1に示したL型鉄心11を用いた場合の電流波形図、
図9(b)は本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を用いなかった場合の電流波形図である。
【0060】
図9(b)に示すように、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を用いなかった場合には、4条の各電線に流れる電流は大きさ及び位相がずれているが、本発明の実施形態に係る電線インピーダンス整合装置を用いた場合には、4条の各電線に流れる電流は大きさ及び位相はほぼ同じとなり、各電線に流れる電流のアンバランスを抑制できることがわかる。
【0061】
ここで、4条の電線を各相別に一列に並べ各電線に電流を通電してみたところ、電流不平衡はほとんど発生しなかった。これは、各電線13a〜13dのインピーダンスは抵抗分が支配的であり、リアクタンス分が少なく、多少の電磁誘導によるリアクタンス分の変化では、インピーダンスがほとんど変化しなかったためであると考えられる。
【0062】
そこで、本発明の実施形態では、多条敷設で電流不平衡になる原因が各電線の配置の関係による僅かなインダクタンスの影響であることを考え、鉄心11として、一般に電源に挿入されているコモンモードチョークコイル(フェライトコア)と同じような機能を応用することとした。この機能は、同相の電流の向きを逆にすることで電流差がなければ、零相変流器のように磁束が打ち消し合い影響を及ぼさないが、電流差がある場合には、その差分の磁束が発生しそのコアにより電流が抑制される機能である。
【0063】
フェライトコアと同様な機能を持つ電流バランサ鉄心の開発にあたり、インダクタンスは鉄心11の断面積に比例するので、平準化精度を上げる場合は断面積を大きくすればよいことが判明した。鉄心仕様の電流バランサは、電路を接続することなく鉄心の中を挿入するだけである。通常、挿入する2条の電線は、鉄心内の発生磁束が打消し合うように異なる方向から挿入することになるが、本発明の実施形態では、電流の向きが同じ電線を同じ方向から貫通させたとき、それぞれの電線の電流により発生する磁束が互いに打ち消される磁気回路を形成する閉じた鉄心11とした。具体的には、
図1乃至
図4に示す鉄心11とした。
【0064】
これにより、電流の向きが同じ電線を同じ方向から鉄心11に貫通させるだけで磁束が互いに打ち消されるので電流がバランスするので、電線の施工性が大幅に改善した。また、鉄心11内の磁束は無くなるので、励磁のための損失が殆ど無い。さらに、施工性が高く事故リスクも殆どなく、大幅な軽量化及び小型化が図れる。
【0065】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。