(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
わが国において3人に1人は花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患を発症していると言われており、先進国においてアレルギーは最も頻度が高い疾患の一つである。アレルギーの発症機構は通常、I型からIV型の4つに分類される。食物アレルギーの発症には、I型、II型及びIV型が関与するとされており、環境アレルギー、即ち花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギーは、主としてI型の発症機構を持つことが知られている。
【0003】
上記I型アレルギーは、アレルゲン特異的IgEの誘導とヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターの放出をその特徴としている。免疫応答は、様々な細胞による相互作用により生じるが、これに関わる細胞の一種としてヘルパーT細胞(Th)が存在する。ヘルパーT細胞は、そのサイトカイン産生能からTh1細胞とTh2細胞に分類される。Th1細胞は免疫賦活を亢進する一方、Th2細胞は抗体産生などの液性免疫をつかさどり、両者は拮抗することで生体の免疫バランスを保っている。事実、アレルギー患者のリンパ球は通常保たれているTh1/Th2バランスが崩れ、Th2細胞過多に偏向していることが報告されている。
【0004】
IgEやケミカルメディエーターを介するアレルギーの予防や治療方法としては、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤、減感作療法等が存在している。しかしながら、いずれもが副作用が問題視されている上、効果について決定的なものではない。
【0005】
近年、IgEを抑制するために、Th2サイトカインの産生を調節する方法が注目されており、乳酸菌などのある種の細菌はTh1免疫を増強することにより、Th2免疫を抑制し、結果としてIgEを低下させることが報告されている。しかしながら、全ての乳酸菌にTh1免疫を増強させる強い効果があるわけではなく、有用な株を選択することが必須となってくる。例えば、強いTh1免疫増強作用とTh2免疫抑制作用を有する乳酸菌として選抜されたラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) KW3110株は、花粉症・気道炎症モデルマウスの症状改善やアトピー性皮膚炎モデルマウスの症状改善、花粉症患者の自覚症状の改善効果などが報告されている(特許文献1、非特許文献1)。
【0006】
また、その他、抗アレルギー効果のある乳酸菌として、L. rhamnosus LGG株は妊婦に摂取させることにより子供のアトピー性皮膚炎発症が抑制されることが(非特許文献2)、L. acidophilus L-92は摂取により通年性アレルギー性鼻炎患者の鼻・目症状スコアが改善されることなどが(非特許文献3)、それぞれ報告されている。
【0007】
乳酸菌等が、Th1免疫を増強することはIL-12やIFN-γ等の産生を介してマクロファージやキラーT細胞、NK細胞の細胞性免疫の活性化を意味している。具体的には、マクロファージが産生するIL-12は、未分化のヘルパーT細胞のTh1細胞への分化、単球、マクロファージ、NK細胞の活性化を通して、外敵、癌に対する抵抗性を獲得させる。したがって、強いIL-12産生を誘導することができる乳酸菌株は免疫賦活剤として使用できることが示唆されている。
【0008】
抗アレルギー効果を有する飲食品の成分として、特定の乳酸菌を用いたヨーグルトや乳酸菌飲料が、抗アレルギー効果を有する飲食物として一部実用化されている。それらの中でも、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株は特に抗アレルギー機能が高いと報告されているが、ラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌については、抗アレルギー作用を有するとの報告はない。
【0009】
ラクトバチルス属の新種であるラクトバチルス・クンキーをワインから単離したことが非特許文献4において報告されている。また、非特許文献5では、フルクトースが豊富な場所(花)から好フルクト性乳酸菌株を単離し、その菌株にはラクトバチルス・クンキーが含まれていたことが、特許文献2では、ラクトバチルス・クンキーをミツバチから単離したことが報告されている。さらに、特許文献3では、高いIgA産生促進作用を有し、且つ免疫学的に安全であるという優れた特性を有したラクトバチルス・クンキーを花粉荷から単離したことが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように抗アレルギー作用に優れた、即ちTh1活性化(IL-12の産生促進)とTh2の活性化阻害(IL-4の産生抑制)をバランスよく行うことができる乳酸菌は有用性が高く、その開発が望まれている。
【0013】
そこで、本発明は、高いIL-12産生促進能及びIL-4産生抑制能を有するラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該乳酸菌又はその菌体処理物を含有する、抗アレルギー及び/又は免疫調節剤、IL-4産生抑制及び/又はIL-12産生促進剤、食品組成物、医薬組成物、並びに化粧品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、蜜蜂が作る花粉荷から分離したラクトバチラス・クンキーに属する乳酸菌の中に、前述するラクトバチルス・パラカゼイKW3110よりもIL-12産生促進能が高い菌株が存在することを見出した。
【0015】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下の乳酸菌、並びに該乳酸菌又はその菌体処理物を含有する食品組成物、医薬組成物、化粧品組成物等を提供するものである。
【0016】
(I) 乳酸菌
(I-1) ラクトバチルス・パラカゼイKW3110よりも高いIL-12産生促進能を有しており、且つIL-4産生抑制能を有するラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌。
(I-2) グルコース、フルクトース、トレハロース、マンニトール及びグルコン酸塩に対する資化性を示すことを特徴とする、(I-1)に記載の乳酸菌。
(I-3) 花粉荷を分離源とし、且つMRS培地を分離培地として分離される、(I-1)又は(I-2)に記載の乳酸菌。
(I-4) ラクトバチルス・クンキーBPS362 (NITE P-01835)である、(I-1)〜(I-3)のいずれか一項に記載の乳酸菌。
【0017】
(II) 抗アレルギー剤等
(II-1) (I-1)〜(I-4)のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその菌体処理物を含有する、抗アレルギー及び/又は免疫調節剤。
(II-2) (I-1)〜(I-4)のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその菌体処理物を含有する、IL-4産生抑制及び/又はIL-12産生促進剤。
【0018】
(III) 組成物
(III-1) (I-1)〜(I-4)のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその菌体処理物を含有する食品組成物。
(III-2) (I-1)〜(I-4)のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその菌体処理物を含有する医薬組成物。
(III-3) (I-1)〜(I-4)のいずれか一項に記載の乳酸菌又はその菌体処理物を含有する化粧品組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明のラクトバチラス・クンキーに属する乳酸菌は、高いIL-12産生促進能及びIL-4産生抑制能を有し、即ちTh1免疫を強く増強し、Th2免疫を強く抑制できるという優れた特性を有している。
【0020】
本発明の乳酸菌は上記特性を有していることから、花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の予防及び/又は治療等に効果が期待される。それ故、本発明の乳酸菌は、食品、医薬、化粧料などの分野において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
乳酸菌
本発明のラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイKW3110よりも高いIL-12産生促進能を有することを特徴とする。さらに、本発明の乳酸菌は、IL-4産生抑制能を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の乳酸菌は、好ましくは、グルコース、フルクトース、トレハロース、マンニトール及びグルコン酸塩に対する資化性を示す乳酸菌である。また、本発明の乳酸菌は、好ましくは、分離源がミツバチ又は養蜂産品(ミツバチ産品)である乳酸菌である。本発明において養蜂産品とは、蜜蜂を飼育することにより得られる生産品を意味し、そのようなものとしては、例えば、蜂蜜、ローヤルゼリー、プロポリス、ミツロウ、蜂パン、花粉荷、蜂の子、それらの加工品(例えば抽出エキスなど)などが挙げられるが、本発明の乳酸菌としては、ミカン科サンショウ属カラスザンショウ、バラ科シャリンバイ属シャリンバイ、キク科ムカシヨモギ属ヒメジョオン、ブナ科クリ属クリ、ミズキ科ミズキ属クマノミズキ、トウダイグサ科アカメガシワ属アカメガシワ、モクセイ科イボタノキ属トウネズミモチ、キク科ヒマワリ属ヒマワリ、タデ科ソバ属ソバ、イネ科イネ属イネ、ウコギ科ウコギ属ヤマウコギ、カキノキ科カキノキ属カキノキ、ウルシ科ウルシ属ヤマハゼ、アブラナ科アブラナ属セイヨウアブラナ、ツバキ科ツバキ属チャノキ、イネ科トウモロコシ属トウモロコシ、ハンニチバナ科ゴジアオイ属シスタス、フトモモ科ユーカリノキ属ジャラ、フトモモ科ユーカリノキ属マリ、マメ科ハリエンジュ属ニセアカシア、アブラナ科アブラナ属アブラナ、マメ科ゲンゲ属レンゲソウなどの花粉荷を分離源とするものが特に好ましい。また、本発明の乳酸菌は、好ましくは、分離培地としてMRS (DE MAN, ROGOSA, SHARPE)培地を使用して分離される乳酸菌である。
【0025】
ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株(FERM BP-08634、乳業技術協会ラクトバチルス・カゼイL14株と同一)は、高いIL-12産生促進能とIL-4産生抑制能を有すること、即ち高抗アレルギー活性を有することについての多くの報告がある(特許第3585487号公報等)。そのため、当該ラクトバチルス・パラカゼイKW3110株よりIL-12産生促進能が高ければ、Th1活性化とTh2活性化阻害が顕著に優れ、高い抗アレルギー作用を有すると考えられる。
【0026】
それ故、本発明のラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌は、顕著にTh1を活性化しTh2の活性化を阻害することによりIgE抗体産生を抑制するという作用機序に基づき抗アレルギー作用を発揮すると考えられる。
【0027】
本発明のラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌の具体例は、本発明者らが花粉荷から単離及び同定したラクトバチルス・クンキーBPS362株である(以下、単にBPS362株と称することもある)。この乳酸菌の菌株は、2014年3月24日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818))に、受託番号NITE P-01835として寄託されている。
【0028】
BPS362株の菌学的性質及び遺伝学的性質は以下の通りである。
【0029】
・ラクトバチルス・クンキーBPS362株
<菌学的性質>
A.形態的性状
細胞形態:桿菌(0.7-0.8×1.5-2.0μm)
グラム染色:陽性
コロニー色調:淡黄色
MRS寒天平板培地による48時間培養(30℃)
B.糖類発酵性(api 50CHを使用) 48時間培養後に判定(陽性:+、陰性:−)
0 コントロール −
1 グリセロール −
2 エリスリトール −
3 D-アラビノース −
4 L-アラビノース −
5 D-リボース −
6 D-キシロース −
7 L-キシロース −
8 D-アドニトール −
9 メチル-β-D-キシロピラノシド −
10 D-ガラクトース −
11 D-グルコース +
12 D-フルクトース +
13 D-マンノース −
14 L-ソルボース −
15 L-ラムノース −
16 ズルシトール −
17 イノシトール −
18 D-マンニトール +
19 D-ソルビトール −
20 メチル-α-D-マンノピラノシド −
21 メチル-α-D-グルコピラノシド −
22 N-アセチルグルコサミン −
23 アミグダリン −
24 アルブチン −
25 エスクリン クエン酸第二鉄 −
26 サリシン −
27 D-セロビオース −
28 D-マルトース −
29 D-ラクトース −
30 D-メリビオース −
31 D-スクロース +
32 D-トレハロース +
33 イヌリン −
34 D-メレジトース −
35 D-ラフィノース −
36 スターチ −
37 グリコーゲン −
38 キシリトール −
39 ゲンチオビオース −
40 D-ツラノース −
41 D-リキソース −
42 D-タガトース −
43 D-フコース −
44 L-フコース −
45 D-アラビトール −
46 L-アラビトール −
47 グルコネート +
48 2-ケト-グルコネート −
49 5-ケト-グルコネート −
【0030】
<遺伝学的性質>
BPS362株の16S rDNAの塩基配列を配列表の配列番号1に示す。BPS362株の16S rDNAの配列は、既知種の基準株であるラクトバチルス・クンキーYH-15(JCM16173)株と99.8%の高い相同性を示した。また、簡易分子系統解析の結果、ラクトバチルス・クンキーとクラスターを形成し、両者は同一の分子系統学的位置を示した。これらの結果から、BPS362株はラクトバチルス・クンキーに属する乳酸菌であると判断された。
【0031】
上記のBPS362株とラクトバチルス・クンキー(JCM16173)の糖類発酵性試験のデータをまとめたものを以下の表1に示す。
【0033】
ランダム増幅多型DNA(RAPD)分析を、プライマー5'-TGCTCTGCCC-3'を使用して次の反応条件で行った。プリインキュベーション:94℃2分間、増幅:94℃1分間、30℃1分間、72℃1.5分(40サイクル)、プライマー伸張:74℃5分間(1サイクル)
結果を
図1に示す。
図1及び表1の結果から、BPS362株の糖資化性及びRAPDパターンが、ラクトバチルス・クンキーの基準株と異なることが分かる。
【0034】
この菌株の培養方法は常法に従って行うことができる。培地は、これらの菌株が培養できるものであれば特に制限はなく、天然培地、合成培地、半合成培地などの培地を使用することができるし、牛乳やローヤルゼリーなどを培地として使用することもできる。培地としては、窒素源及び炭素源を含有するものを使用することができ、窒素源としては、肉エキス、ペプトン、カゼイン、酵母エキス、グルテン、大豆粉、大豆加水分解物、アミノ酸等が挙げられ、炭素源としては、グルコース、ラクトース、フラクトース、イノシトール、ソルビトール、水飴、澱粉、麹汁、フスマ、バカス、糖蜜等が挙げられる。その他、無機質(例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、炭酸カルシウム、鉄、マンガン、モリブデン等)、各種ビタミン類などを添加することができる。
【0035】
培養温度は通常4〜45℃、好ましくは30〜37℃であり、培養時間は通常8〜72時間程度であり、通気振盪又は通気撹拌してもよく、培地のpHは通常4.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0である。
【0036】
培養方法としては、例えば、MRS培地に1%の菌体を植菌し、37℃で24時間培養することが挙げられる。
【0037】
抗アレルギー剤等
本発明の抗アレルギー剤、免疫調節剤、IL-4産生抑制剤及びIL-12産生促進剤(以下、抗アレルギー剤等と称する)は、上記乳酸菌又は菌体処理物を必須成分として含有する。
【0038】
免疫調節作用とは、Th1/Th2バランスを改善する作用のことを意味し、本発明の乳酸菌は、前述するようにTh1/Th2バランスを改善する作用を有しているので、免疫調節剤の有効成分として有用である。
【0039】
本発明の抗アレルギー剤等は、食品組成物、医薬組成物、化粧品組成物等の分野で好適に使用することができる。
【0040】
本発明の抗アレルギー剤等における上記乳酸菌又は菌体処理物の含量は、食品組成物、医薬組成物、化粧品組成物等に含有されたときの最終的な上記乳酸菌又は菌体処理物の含量が重要であるため特に限定されないが、通常、1×10
-7〜100重量%程度、好ましくは1×10
-5〜100重量%、より好ましくは1〜100重量程度である。
【0041】
食品組成物
本発明の食品組成物は、上記乳酸菌又は菌体処理物を必須成分として含有する。当該食品組成物には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる食品組成物が含まれる。
【0042】
本発明の食品組成物において乳酸菌は、生菌体又は死菌体のいずれの状態でも使用することができる。乳酸菌としては、単離した菌体を用いてもよいし、菌体の培養物及び発酵物を用いてもよい。
【0043】
乳酸菌の菌体処理物としては、乳酸菌が、例えば、加熱、ペースト化、乾燥(凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥など)、凍結、溶菌、破砕、抽出等されたものが挙げられる。さらに、菌体処理物としては、超音波などにより破砕処理を行った菌体破砕物に除タンパクを行った後の上清、菌体培養物及び発酵物の固形分を除去した上清等も含まれる。
【0044】
上記乳酸菌は単体で使用することもできるが、他の微生物と混合して使用してもよい。
【0045】
本発明の食品組成物には、上記乳酸菌又は菌体処理物をそのまま使用することもできるが、必要に応じて、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0046】
本発明の食品組成物の種類は、特に限定されず、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、ローヤルゼリー等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ローヤルゼリー等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0047】
本発明の食品組成物の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、前記のような食品組成物の製造工程における中間製品、又は最終製品に、上記乳酸菌又は菌体処理物を混合又は噴霧等することにより食品を得ることができる。また、上記乳酸菌を用いて牛乳などの獣乳や乳原料等の発酵を行うことにより発酵製品、乳酸菌飲料、及び乳酸菌入り飲料を製造することができる。また、上記乳酸菌によりローヤルゼリーの発酵を行うことで、ローヤルゼリーの発酵食品も製造することができる。
【0048】
また、本発明の食品組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品又はプロバイオティック製品としても使用できる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0049】
本発明の食品組成物における上記乳酸菌又は菌体処理物の含量は、食品組成物全量中1×10
-7〜100重量%、好ましくは1×10
-5〜100重量%、より好ましくは1〜100重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0050】
本発明の食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができるが、例えば、乳酸菌の菌数で表すと、一日当たりの摂取量としては1×10
6個以上、好ましくは1×10
9個以上、より好ましくは1×10
12個以上を挙げることができる。
【0051】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、上記乳酸菌又は菌体処理物を必須成分として含有する。本発明の医薬組成物は、乳酸菌製剤と称することができる。また、本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対して投与される。
【0052】
本発明の医薬組成物において乳酸菌は、生菌体又は死菌体のいずれの状態でも使用することができる。乳酸菌としては、単離した菌体を用いてもよいし、菌体の培養物及び発酵物を用いてもよい。
【0053】
乳酸菌の菌体処理物としては、前述するものが挙げられる。
【0054】
また、上記乳酸菌は単体で使用することもできるが、他の微生物と混合して使用してもよい。
【0055】
医薬組成物として調製する場合、上記乳酸菌又は菌体処理物をそのまま使用するか、又は医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液や電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)などの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。
【0056】
本発明の医薬組成物における上記乳酸菌又は菌体処理物の含量は、医薬組成物全量中1×10
-7〜100重量%、好ましくは1×10
-5〜100重量%、より好ましくは1〜100重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0057】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができるが、例えば、乳酸菌の菌数で表すと、一日当たりの服用量としては1×10
10個以上、好ましくは1×10
11個以上、より好ましくは1×10
12個以上を挙げることができる。
【0058】
本発明の食品又は医薬組成物は、花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の予防及び/又は治療に有用である。また、Th1免疫増強作用に基づきウイルス感染、細菌感染、ガン等の抑制作用も期待される。
【0059】
化粧品組成物
本発明の化粧品組成物は、上記乳酸菌又は菌体処理物を必須成分として含有する。
【0060】
本発明の化粧品組成物において乳酸菌は、生菌体又は死菌体のいずれの状態でも使用することができる。乳酸菌としては、単離した菌体を用いてもよいし、菌体の培養物及び発酵物を用いてもよい。
【0061】
乳酸菌の菌体処理物としては、前述するものが挙げられる。
【0062】
また、上記乳酸菌は単体で使用することもできるが、他の微生物と混合して使用してもよい。
【0063】
本発明の化粧品組成物には、動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等に適用されるあらゆる化粧品組成物が含まれる。
【0064】
本発明の化粧品組成物における上記乳酸菌又は菌体処理物の含量は、化粧品組成物全量中1×10
-10〜100重量%、好ましくは1×10
-6〜50重量%、より好ましくは1×10
-2〜10重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0065】
本発明の化粧品組成物には、上記乳酸菌又は菌体処理物以外に、通常化粧品に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0066】
本発明の化粧品組成物の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。
【0067】
本発明の化粧品組成物の用途も任意であり、例えば基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク等が挙げられ、メークアップ化粧品であれば、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等が挙げられ、ネイル化粧料であれば、マニキュア、ベースコート、トップコート、除光液等が挙げられ、その他、洗顔料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、ヘアートニック剤、育毛剤、制汗剤、入浴剤等が挙げられる。
【0068】
本発明の化粧品組成物は、抗アレルギー作用などが期待できる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0070】
ラクトバチルス・クンキーBPS362株のスクリーニング
菌の分離に用いた培地は、MRS培地(又はROGOSA培地)であり、必要に応じてリンゴジュース、オレンジジュース、トマトジュース又はグレープジュースのいずれかを最終濃度25%となるように混ぜ、酢酸と水酸化ナトリウムを用いてpH4.5に調整した。調製した培地に、岡山県鏡野町で採取した花粉荷を適宜希釈し、インキュベータ内にて、25〜37℃で培養を開始した。2〜3日間培養後、炭酸カルシウム入りのMRS寒天培地に画線法にて広げ、更に、同様の温度にて2〜3日間培養し、乳酸産生によりクリアゾーンを有するシングルコロニーを複数株得た。得られたコロニーを、MRSにて培養後、10%グリセロールストックとして、-80℃にて凍結保存した。
【0071】
特に、今回の試験例では、IL-12産生量がKW3110 (FERM BP-08634)よりも高く、且つIL-4産生量が低いことをスクリーニングの指標とした。なお、IL-12の産生能についてはKW3110添加時の産生量を100とし、IL-4については乳酸菌未添加時の産生量を100とした。
【0072】
試験例
<実験方法>
・試料の調製
乳酸菌の各菌株をMRS (de Man, Rogosa, Sharpe)培地(OXOID)で24時間前培養した後、48時間本培養したものを、滅菌水で3回洗浄し、滅菌水に懸濁後90℃で30分処理して殺菌後、凍結乾燥した。使用した乳酸菌は表2に記載する。比較例1〜26は、BPS362と同様のスクリーニングにて単離された。
【0073】
【表2】
【0074】
・動物の飼育、飼養
検疫、検収の終了後、1週間予備飼育を行った7週齢のBALB/c雌マウスを使用した。初回感作として、卵白アルブミン(OVA)及びアジュバントであるALUMの混合液を腹腔内投与し、この日をday0とした。day6に追加感作としてOVA及びALUM混合液を腹腔内に再度投与してOVAによる全身感作を行った。
【0075】
・細胞の調製
実験動物の飼育と飼養に関する法律に則り、day13に麻酔処理した動物より採血を行い、放血させた。放血後、脾臓を採取した。脾臓より採取したプール脾細胞を96穴プレートに4×10
5 cell/wellずつ播種した後、OVAと乳酸菌をそれぞれ終濃度0.3 mg/ml, 10μg/mlとなるように添加し、7日間培養した。培養後、培養上清を回収した。
【0076】
・IL-12、IL-4の測定
培養上清中のIL-12、IL-4の測定は、IL-12(p70), Mouse, ELISA Kit, QuantikineとIL-4, Mouse, ELISA Kit, Quantikine M, 2nd Generation (R&D Systems, Inc)を用いて測定した。
【0077】
<結果および考察>
(IL-12産生能)
Th1サイトカイン、IL-12の各乳酸菌による生成能を
図2及び
図3に示す。データは全てKW3110株によるIL-12産生量を100%としたときの比率で示されている。
【0078】
30菌株のL. kunkeeiの内、KW3110株よりも高いIL-12産生量を示したのはBPS362の1菌株のみであった。また同菌株は、抗アレルギー乳酸菌LGGと比較しても高い産生能を有していた。
【0079】
(IL-4産生抑制能)
Th2サイトカイン、IL-4の各乳酸菌による生成抑制能を
図4及び
図5に示す。
【0080】
データは全て乳酸菌未添加時のIL-4産生量を100%としたときの比率で示されている。
【0081】
30菌株のL. kunkeeiの内19菌株が、乳酸菌の未添加時の50%までIL-4産生量を抑制した。中でもBPS362の抑制作用が一番強かった。また同菌株は、抗アレルギー乳酸菌LGGと比較しても高いIL-4産生抑制能を有していた。
【0082】
製造例
以下本発明の組成物の製造例を示す。
【0083】
(乳酸菌カプセルの製造例)
乳酸菌BPS362粉末400 gとショ糖脂肪酸エステル20 gを混合し、充填機にてハードカプセルに充填し、2,000粒の乳酸菌BPS362カプセルを得た。
【0084】
(乳酸菌発酵エキスの製造例)
ローヤルゼリーを終濃度5%に希釈した希釈液1,000 mLを、pH6.5に調整した後、既に前培養しておいたBPS362培養液を1%植菌した。30℃にて、48時間培養後、遠心分離によって残渣を除き、ローヤルゼリー発酵エキス800 mLを得た。
【0085】
(乳酸菌発酵エキス化粧水の製造例)
クエン酸ナトリウム0.1%、ピロリドンカルボン酸ナトリウム1.0%、1,3-ブチレングリコール5.0%となるように、精製水にそれぞれを50℃で混合した溶液1,000 mLに、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル(NIKKOL PEN-4630)を0.6%配合して100 mLとしたエタノールを、撹拌しながら徐々に加えて可溶化した。撹拌しながら冷却し30℃まで下げ、最後に0.5%となるよう、上記の乳酸菌発酵エキスを加え、1,000 mLの乳酸菌発酵エキス化粧水を得た。